• 血断

【血断】風の英霊、死線を駆ける

マスター:ことね桃

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
  • relation
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
3~12人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2019/07/17 19:00
完成日
2019/07/31 17:13

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●蠢きはじめる死体達

 ハンターが「邪神ファナティックブラッド」との最終決戦に向かった日。
 フリーデリーケ・カレンベルク(kz0254)は四大精霊の守りのもと
 激戦地であるグラウンド・ゼロへ跳び大戦斧を振るっていた。
 彼女は本来ならば帝国の外に出た時点で信仰の力を失う英霊だが、
 四大精霊の加護によりその力は高く維持されている。
 そんな中で彼女とともにグラウンド・ゼロに残ったハンターが術を紡ぎ、歪虚の動きを封じた。
「今だ、フリーデ! 叩けっ!!」
『了解したッ!!』
 ――どぉッ!
 目の前で無数の触手をうねらせていた巨大なシェオル型歪虚に斧を力いっぱい叩きつける。
 たちまち歪虚は砂の塊となりぼろぼろと崩れていった。
 相手が強力なシェオル型といえど、
 ハンターと連携すればどのような能力を持っていようとも戦える。
 油断はしない。ただ仲間を信じ、自分の役目を果たすだけだ。
 彼女も同行するハンター達もそれまではずっとそう思っていた。
 だがある瞬間――フリーデが突然肌が蝕まれるような怖気に襲われた。
 死の香りが漂う風、魂まで喰らわんとする亡者の声、そして心を漆黒に塗り潰す絶対的な絶望。
 それは歪虚王ハヴァマールとその眷属がこの地に出現したことを意味していた。
「くそっ、暴食の連中も来やがったか!」
 ハンターが銃を構え、死体どもの胸や頭を次々と撃ち抜く。
 剣の使い手も迷うことなく眷属を両断した。
 だがフリーデの腕の震えが止まらない。
 風のマテリアルの塊である彼女は
 例え相手が暴食であれ雑魔から中位歪虚程度ならその膂力で叩き潰すことができる。
 しかし上位歪虚が複数、しかもハヴァマールの力を直接受けている者となると圧倒的に分が悪い。
『こんな時に体が……くっ!』
 ぼろぼろと零れる涙、喉からこみ上げる嘔吐感。
 斧を構えねば、目の前の敵を倒さなければと思いながらも立ち続けるのが精一杯だ。
「フリーデ、しっかりしろ!
 体が辛いなら一旦後退し、四大精霊の力に縋れ!! ハヴァマールは俺達がやるっ!」
 仲間の声にフリーデは一度頷きかけた。
 自分に相性の良いイクタサの元に行けば少しは精神が安定するかもしれない。
 それにイクタサのもとには自分と同じ風の精霊が集まり、力を合わせているという。
 だが――その状況は決して芳しいものとは言えなかった。


●死線を越えるために、前へ

 四大精霊の加護を受けながらハンターと帝国軍、
 そして精霊達が無数の歪虚と戦う中で突如悲鳴が響き渡った。
 ハヴァマールの眷属が主の力を受け肥大化、その剛力を揮い始めたのだ。
 ハンマーのような巨大な腕、そして巨木のように膨張した足。
 巨大なスケルトンが軍人や精霊を蹴散らす。
 同時に今まで長い爪でハンター達を斬り裂いてきた女吸血鬼のマントが巨大な風の翼となった。
 奴が飛行するたび周囲が負の風で斬り裂かれ、風の力に弱い土の精霊は逃げ惑うばかり。
 そこに――腐乱したジャイアントが巨躯をますます肥大化させ、地中から出現。
 軍人や精霊を鷲掴みにするとその巨大な口に放り込み――何の表情も浮かべることなく咀嚼した。
『あ、ああ……仲間達が……!』
 フリーデが斧を地に突き立て、再び立ち上がる。
 今まで自分は何をしていたのだ。
 力なき者のために戦うと決意し、ここに来たのではなかったか。
 ここで身を竦めては何のための絶火の騎士か。何のためにフリーデリーケの名を継いだのか!
『貴様ら……赦さん。必ず駆逐してやる!』
 斧を構え、駆け出すフリーデ。
 ハンター達が彼女を案じる声が聞こえたが、それでも足を止めることはない。
 どの道、奴らを倒さねばハヴァマールの討伐もままならない。
 ならばその恐怖を乗り越えて――勝つしかないのだ。
 死線を越えて、ようやく辿り着けるものがある。フリーデは涙を拭い、大きく地を蹴った。
(万が一の場合はここで私の力全てを使う。
 死狂の境地とはここにある、身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ!)
 彼女に続き、ハンター達も得物を再度構える。
 ハヴァマールの本格的な出現の前に奴らを倒さんと、彼らは一斉に駆け出した。

リプレイ本文

●赤き地をより紅く染める者たち

 グラウンド・ゼロの戦場を揺るがす3体の暴食型歪虚。
 彼らの存在は精霊や軍人に甚大な被害を与えると同時に、
 暴食王ハヴァマールの濃密な気配を漂わせ――ハンター達を震撼させた。
(このままでは多くの同志が命を落とす、何としても止めねば!)
 歪虚らに向けて駆けだそうとするフリーデリーケ・カレンベルク(kz0255)。
 だがその前にコンフェッサーに搭乗したフィロ(ka6966)が立ち塞がった。
『フィロ、止めてくれるな! このままでは!』
「いいえ、なりません! 此方も長時間の戦で深手を負っております。
 フリーデ様もかなり消耗されているご様子。このままでは良くて共倒れでしょう。どうかご自重を!」
『……くっ』
「たしかにこの地にハヴァマールの干渉が始まっているようです。
 しかし歪虚の強化のみに留まっているとなればまだ対応が可能と考えます。
 落ち着いて一戦ずつこなしていきましょう、フリーデ様」
『……承知した』
「それに私の機体は損傷が軽微、敵の動きを封じる策もございます。
 私が先に対処致しますのでどうかご辛抱くださいませ!」
 そう言い残し、コンフェッサーを飛行させるフィロ。
 彼女はまっすぐにジャイアントの死体に向かっていった。
 続いてアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)が
 フリーデの肩を軽く叩いてイェジドのイレーネを連れ、前に踏み出した。
「私達が先行し、敵を引きつける。その間にお前達は戦闘態勢を整えてから前に出るべきだ。今はな」
 彼女は焔のオーラを身体に宿すと踏鳴で強く地を蹴り、
 北西で斧を振るっては地ごと叩き割るスケルトンの元へ駆け出す。
(ハヴァマールが来る前に片付けろ、か。
 確かに奴が出現してからでは厄介だ。ならばこそ出し惜しみせずに初めから全力で行く!)
 普段なら散華で道中の敵も斬り捨てるアルトだが、
 目の前でハンターが斧で薙ぎ倒される様を見てはその余裕さえないと悟る。
 だから彼女は前方を行き交う歪虚らに笑みを浮かべ挑発した。
「歪虚らよ、お前達に私が倒せるか!?」
 アルトの放つ鮮烈な焔色のマテリアル。その苛烈な正の力に惹かれ、歪虚たちが彼女を追い始める。
 それが死を招く罠だとも気づかずに。
 一方でアルマ・A・エインズワース(ka4901)は焦るフリーデの前に立つと、両手を広げた。
「わぅっ!? フリーデさん、僕の事おいてっちゃやですー!? ひとりにしないでくださいですー!?」
「アルマ……」
「僕が皆さんの傷を治療しますから、それまで突出だけはしないでください!
 治療が終わったら一緒に突撃するですっ!」
 超覚醒で守護者としての力を解き放つアルマ。そう、負傷者はフリーデだけではないのだ。
 だがジャイアントの死体は放置できないと、
 鞍馬 真(ka5819)がユグディラのシトロンをバイクに乗せてアクセルを開けた。
「私がジャイアントの動きを食い止めてみせる。
 それとフリーデさん……無理はしないようにね。大丈夫、私達も頑張るから」
 真の背とバイクがあっという間に視界から小さくなっていく。
 そこで歯噛みしたのがボルディア・コンフラムス(ka0796)。
 目の前で吸血鬼が宙を舞い、
 ハンターや軍人らを玩具のように蹴散らしているというのに傷ついた体がひどく重い。
(ヴァンと突撃してぇが、この体じゃ返り討ちにされちまう。
 だったらせめてこっちに来る奴だけでも!)
 彼女の戦働きは凄まじく、先ほどまで数多のシェオル型歪虚を地に沈めてきた。
 しかしその代償に多くの傷も負わされている。
 彼女はイェジドのヴァーミリオンとともに
 アルマの治癒魔法が届く限界まで移動し、迫る歪虚を魔斧「モレク」で叩き割った。
 その傍らでマリィア・バルデス(ka5848)は魔導ママチャリ「銀嶺」を一心に走らせる。
 彼女は吸血鬼とゾンビが新式魔導銃「応報せよアルコル」の射程内に入るポイントを目指しているのだ。
「あんまり広いと嫌になるわね……。
 でもどちらも撃ち抜くのが私の役目、手を抜くつもりなど端からないわ」
 猟撃士の特徴は他の追随を許さないロングレンジ攻撃だ。
 敵の手が届かぬ位置から広範囲をフォローできる。
(フリーデが消失したらフィーがきっと悲しむ。私はそんなことにさせたくないの)
 迫る敵を巧みなハンドル捌きで躱しながら彼女はひたすら戦場を駆ける。
 リアリュール(ka2003)は馬を走らせる前にフリーデへ紫色の瞳を向けた。
「フリーデ様は、まずいと思ったら避けるのです。この前の訓練を思い出して、冷静に対処すれば大丈夫」
『う、うむ。冷静に……だな』
「そう、諦めないで。真の力は先々の為にお使いください。
 ……私はフィー様や他の皆を悲しませたくないのです」
『……ああ』
「それと己を大切にできない人は、本当の意味で周りを幸せにすることはできないと思います。
 ……そのことは忘れないでください。フィー様のためにも、アルマさんや私達のためにも」
 ユグディラのティオーを背に、馬を駆るリアリュール。
 ハンター達の正のマテリアルに気づいた雑魔が迫るのを見とめるや、
 彼女は弓を構え光の雨を降らせて一瞬で駆逐した。
「いつものように優しく歌って、ティオー。
 あなたは私が守る。誰にも邪魔はさせない……誰も傷つけさせないんだから!」
 その頃、エレストリア・フーガのコクピットで
 キヅカ・リク(ka0038)は戦場に奔る昏い冷気を感じ取っていた。
(この感じ、やっぱりハヴァマールが近くに居る。
 ……これからって時に、何時も最悪のタイミングで来るんだよなぁ)
 メインカメラを操作し、フリーデの顔を一時的にアップさせる。
 その優れぬ顔色に彼は小さくため息を吐いた。
(そもそもアイツは精霊に対して絶対的なアドバンテージを有してる。
 強化された高位相手でフリーデもこうなっちゃうって事は、あんま長く時間かけてらんないな)
 このままではハヴァマールが顕現した際にフリーデが昏倒、もしくは消失しかねない。
 そのような状況にありながら、彼女の目があまりにもまっすぐなことにリクは危機感を抱いた。
(……フリーデのあの顔、ありゃなんか覚悟を決めたな。
 でもやめときなって言っても聞く相手じゃないからなぁ。そうなる前に潰すしかないか)
 魔導インカムを通し、フリーデに通信を繋ぐリク。
 言葉こそいつもと同様に軽妙だが、トーンがいつもより落ち着いている。
「それじゃ先に行かせてもらうよ。ちょっと回転数あげなきゃいけないしね。
 ……お前の力はこんな中ボスで使うもんじゃない。
 僕のライバルを名乗るなら、これくらいは超えてもらわないとね?」
『お前はまたそんなことを言って!』
 フリーデが声を荒げかけた瞬間、エレストリア・フーガが北へ向かってまっすぐに飛翔する。
「まぁ、こっちは任せてよ。お前が命をかけるべき時は今じゃない。
 ね……皆に言われたこと、もっとよく考えるべきだと思うよ?」
 それっきり通信がぷつりと切れる。
 その様子を眺めたアウレール・V・ブラオラント(ka2531)は
 ふっと笑うと自身が騎乗するグリフォンを飛翔させた。
 空中から一望できる戦場はまさに地獄絵図。
 無数の死者が蔓延る地で人類と精霊が必死に抵抗し続けている。
(……ふふ、楽しい。そうそう、こうでなくては。地獄のような戦況に苦しむ同志達には悪いがな)
 彼もリクを追うように北上する。目指すは戦場を掻き回し嗤い続ける吸血鬼だ。
(狂気、憤怒、強欲、シェオル。色々狩ってきたが、やはり暴食が一番だ。
 外道の法理で地を這うモノ共。眠らぬ死人、愛しき我が仇敵!)
 長らく敵対し続けてきた外道との戦に心が躍る。
 その喜びを術式に紡ぎ込み、彼は体内を巡るマテリアルを一気に解き放った。
「其は霊長、而して全衆生の藩屏。身に星の器を、心に聖き祈を。
 三千世界に旌旗を翻し、六趣輪廻の正義を奉ず。
 今、天に誓い地に告ぐ。人に理有らば来りて応えよ! 我等は星を継ぐもの――阿頼耶の守護者!」
 身体能力が上昇すると同時に透徹になっていく感覚。
 何度も味わっているとはいえ、やはり奇妙であり心地よくもある。
 彼は不敵に戦場を見下ろすと皇帝より賜った金の輝きを湛える剣を強く握りしめた。
 その頃、濡羽 香墨(ka6760)は澪(ka6002)と共にアルトを追うべく馬で駆けだそうとした。
 だがミグ・ロマイヤー(ka0665)の愛機ヤクト・バウ・PCの酷い損傷に気づき、アンチボディで傷を埋める。
 ミグが「すまぬの、助かった」と応じれば、彼女はこくりと頷いた。
「ん、これで少しはもつはず。無理はしないで。フリーデも。ね。あまり良いこと。考えてないでしょ」
『……っ、そんなこと……』
 香墨達はフリーデと長い付き合いだ。顔つきを見るだけで何を考えているのかぼんやりとわかる。
「フリーデは。嘘をつくのが下手。……私、怒ってる。
 せっかくあの日。助かった命を。こんなところで散らしたら……絶対赦さないから」
 香墨はそう言い切るとスケルトンに向かい馬を走らせる。澪が続いた。
「皆で帰る。これは、ぜったい」
 言葉こそ短くとも否定を拒む強い感情が込められている。
 ここで失うわけにはいかないのだ、恋人も戦友も誰一人として。
(フリーデ…この前の特訓が役に立ってくれるといいけど。私も出来る限りの事をしよう)
 澪は銀嶺のペダルを踏みながら、
 隣で懸命に走行するオートソルジャー・シロガネに「一緒に頑張ろ」と励ますように告げた。
 ――ミグは少女たちの背を見送りながら「やれやれ、若人に気を遣わせてしまったのう」と呟く。
 何しろヤクト・バウ・PCは度重なる戦で全壊直前という危機的状況にあったのだ。
 最後方で移動せずに砲撃支援の役目を担うといえど、その状態での戦闘行為継続は命取りになりかねなかった。
「……まぁ、これで姿勢も安定しよう。
 ミグらが来たからにはもう高位歪虚どもには好き勝手はさせぬぞ。
 距離が微妙にいやらしいがモーマンタイ。ヤクトバウの敵ではないのじゃー!」
 戦場を支える戦女神としての風格を露わに、
 基礎となったダインスレイブの面影が全くない巨大な機体を手足のように操るミグ。
 全長8mの大型プラズマキャノン「アークスレイ」が重厚な音と共に吸血鬼に向けられる。
(本来ならグランドスラムで焼き払いたいところじゃが、
 友軍をも巻き込む可能性があるならば已むを得まい)
 シューティングサイトを通して俊敏な吸血鬼を視界に捉え、トリガーを引く。
 魔力装置「咆哮せし火竜」の炎の力を弾に込めて。
 そこで無粋な「遊び」に興じていた吸血鬼は火を宿す脅威が迫っていることに気づかず、
 背中に「みしり」と硬質な物体がめり込む感覚を悟った瞬間に地に叩きつけられた。
 ――風の翼が炎で消える。
(これで少しは時間を稼げよう。
 後は他のデカブツを燃やし尽くすだけじゃ。歪虚どもよ、全て……伊達にして帰してやろうぞ)
 ミグは静かに笑うと再びキャノンの操作に集中した。
 最早ここまで来たのだ。歪虚など帰しもしない、誰も逃すものかと。


●癒しと血戦

「傷を負っている皆さん、集まってくださーい!」
 アルマはそう叫ぶとミグ、ボルディア、フリーデ、そして負傷した人々と精霊達に「仰ぎし福音」を施した。
 柔らかな光が傷を塞ぎ、強い守りの力を与える。――これでまた戦えると全員が戦場に戻っていった
 一方ボルディアは早速ヴァーミリオンの背に跨ると、アルマ達に向けて振り返った。
「ありがとな、アルマ。それと前に言ったよなぁ、フリーデ?
 テメェ一人で敵わねぇなら誰かを頼りゃいいんだって。その言葉忘れてンじゃねェよ。
 いちいち独りで全部背負おうとすンな、俺達もやる」
『……そうだったな。また力を借りるぞ、皆。……いつもありがとう』
「それでいい。そンじゃ、吸血鬼退治と行ってくるか!」
 ヴァーミリオンが力強く戦場を突進する。
 ミグも「これでもう不安要素はない。存分に焼き尽くそうぞ!」と笑い、巨大スケルトンを射撃。
 頭蓋骨の一部を吹き飛ばした。
(本来はグランドスラム乱舞といきたいところじゃがのぅ、
 広範囲を焼き尽くすゆえ友軍を巻き込む危険性が高いのが難点じゃな)
 せめて友軍をこの戦域から避難するよう伝えられればよいのだが、と
 彼女はやや苦い感情を覚えつつ再び照準を合わせる。
 そんな中で、アルマはフリーデの手を取って走りだした。
「ねえ、フリーデさん。僕は今すっごく怒ってます。あなたを泣かせた奴がいることに。
 ……全員一瞬にして消滅させてやりたいところですが、まずどれから殺りましょうか」
 彼はひたすら前を見つめ、振り向かない。
 それはいつもの子犬のような無垢な顔ではなく――殺意に満ちた貌をしているから。
 目を三日月の如く細め、口角を亀裂のように吊り上げた。己の中に潜む狂気。
 それを愛する妻に見せたくないと彼の内面に潜む優しさが願う。
 その時、破裂音が響いた。
 どうやらジャイアントの死体が何らかの行動に出たようだが、澱んだ目を丸くして空中に手を泳がせる。
 奇妙な光景だが――
 いずれにせよ、奴に喰われた者達の絶望に満ちた顔だけは忘れようもない。フリーデの心が、揺れた。
『アルマ、私は奴が憎い。何の躊躇もなく命を喰らう奴が……!』
「わかりました。まずはあの死体を倒せばいいんですね? 僕にお任せください」
 いつもと違う、底冷えのする冷たい声。
 フリーデはそれにどこか恐れを感じながらも――彼の傍から離れるまいと必死で走り続けた。

 アルマ達が戦場を駆け始めてから30秒後のこと。
 真は巨大な死体を前にタクティカルヘッドセットを通してフィロに囁いた。
「……どうやらこの死体は身体こそ頑丈でも知能はないようだね」
「ええ。マテリアルバルーンと生者の区別がつかないようです。
 これならば犠牲者を出さずに戦闘を進められるかもしれません」
 先ほどの破裂音はフィロのコンフェッサーがマテリアルバルーンによるものだった。
 暴食は本能に忠実であるがゆえに、思考能力が薄い者が多い。
 そしてこのジャイアントの死体も例外ではなかった。
 ――奴は微かにマテリアル反応を示す巨大な物体を見て「食べられる物」と認識したのだろう。
 全く動かない偽物のコンフェッサーを掴み、両腕に力を入れた瞬間に破裂。
「食べ物」が消失したことに唖然としたのだった。
 今もマテリアルバルーンが放出されては困惑し、拳を揮っては驚くばかり。
 その隙に真が大きく踏み出す。
「さぁ、絡繰りを見破られる前に倒すよ! シトロン、森の宴の狂詩曲を!」
 相棒が奏でる愛らしい音色に合わせ、真が星影の唄を歌う。
 途端に死体の身を守る力が抜け、まずは両手に携えた剣で二連撃。
 そして剣にマテリアルを集中させ、三連撃として鋭利なオーラを放つ!
 シトロンの歌で強化されたアスラトゥーリはジャイアントの死体のみではなく、雑魔達も斬り裂く。
 続いてフィロのコンフェッサーが黄龍神楽舞を機体に施し、
 鎧徹しで腐乱した頭を機爪で力いっぱい振り抜けば死体がどしんと音を立てて腰を落とす。
 だが歪虚王に与えられた力は伊達ではないらしい。
 頭をぶるぶると横に振ると奴はのたりと立ち上がり、ふたりを睨みつけた。
(知能がない分、自己防衛する思考もない。……文字通り力尽きるまで全力で戦う、か。厄介なものだね)
 真はシトロンを庇うようにして再び剣を構えた。

 スケルトンのもとへ向かったアルトは
 自分の後を追ってきた雑魔達をちらりと見ると(そろそろ頃合いか)と判断した。
 後詰の少女たちもしっかりとついてきている。今が好機か。
「あまり遊んでる時間はないようだ、とっとと終わらせよう……イレーネ、吼えろ!」
 勇壮かつ威圧的な声が戦場に轟き、雑魔達の動きを鈍くさせる。
 続いて焔舞を纏ったアルトが踏鳴を重ねた超高速の散華で周囲の雑魔を斬り、
 同時に巨大スケルトンを石膏細工の如く切り刻む。
「これで終わるものか、散れっ!!」
 アルトが脚を止めた瞬間、もう一度刃を振るえば。
 死体からは血が。スケルトンからは無数の骨片が散る!
 それは吹雪の中に赤い椿が散るが如き凄まじさだった。
 足の骨を大きくと削られよろめくスケルトン。
 そこに馬に乗った香墨が追いつき、16mほど離れた位置から術式を紡ぐ。
「大きいけど。動けなければ……ジャッジメント……!」
 しかしハヴァマールの加護だろうか、聖なる力はスケルトンを地に貫くこと叶わず。
 むしろスケルトンが香墨に向けて片膝をつきながら前のめりの姿勢で斧を振り上げた。
「香墨、危ないっ! シロガネ、力を貸して!!」
 澪がスケルトンの全身に斬撃を加えると同時に、
 シロガネがフォトンチャージで射撃能力を強化しライトマシンガンを敵を撃つ。
 穴を穿つことはできなくとも衝撃で姿勢が不安定になり、スケルトンが斧を落とす。
 その隙に香墨は槍を掲げ、祈りを捧げた。
「正しき祈りを。今こそ力に……!」
 コール・ジャスティスの光が巨大スケルトンと周辺に残った僅かな雑魔達を照らし出す。
 今はただ、暴力という言葉ををカタチにしたこの死者の骨を土に還すため全力を尽くすしかない。
 アルトは次こそはと試作法術刀「華焔」を握る手に力を込めた。

 それと時を同じくして、リクは吸血鬼の頭上に陣取ると相手の体勢を崩すためブレイズウィングを放った。
 その翼ひとつひとつに願いという名の力が宿る。
(フリーデとアルマを別つわけにはいかないわ。
 フリーデ、この戦いを生き抜いて幸せになって。アルマの手を離しちゃダメよ。
 貴女は軍人で英霊だけど、愛し愛される一人の女性でもあるのだから)
 複雑な軌道を描きながら6枚の翼が舞い、地上を駆ける吸血鬼を斬りつける。
(リク、フリーデの幸せを守って……!)
 しかし吸血鬼の動きは蝶のように不規則かつ俊敏で、
 ブレイズウィングの直撃を受けて地べたに何度倒れようとも怯まない。
(奴はミグの砲撃で翼を失っている。
 それに俺だってオールマイティで戦闘能力をキープして、渾身の連撃を叩き込んだ。
 それなのに動きに澱みを見せないなんて……これがハヴァマールの加護か!)
 リクの戸惑いに答えるように吸血鬼が
「キャハッ、アンタってさァ……その大きさでアタシを倒せるのォ?」と嘲笑うと黒い翼を顕現させた。
 負の風がエストレリア・フーガを包み、鋭い爪が脚部に深く突き刺さり装甲を裂いていく。
「嘘だろ、翼の再顕現なんて! ……確かに高位だ。
 だけど、俺だってオルクスおばさんと遣り合ってきたんだ。この程度!」
 咄嗟に脚部を蹴るように振り上げ、吸血鬼を爪先で払う。
 そこで上空の自由を得た吸血鬼は再び空を自由に舞おうとしたが、
 それよりも上から雄々しい影が彼女の顔に落ちた。
 フライングファイトをグリフォンに施したアウレールが吸血鬼をより上空から圧迫したのだ。
「リクよ、私が奴を引きつける。お前は攻撃に専念しろ!」
「あ、ああ!」
 アウレールは剣に意識を集中させる。心に浮かぶは隻腕の英雄がその腕に備えた十字架の盾。
「語り継がれた御伽噺……聖盾剣。
 祈りは時を越えて背表紙を打ち貫き、鋼の十字架はついに癒しの魔法を宿した。
 刮目せよ、我が護りこそ最古の次章にして最新の終章である!」
 彼の持つ聖盾剣「アレクサンダー」から強き光が放たれ、その身を神聖な光のオーラが包み込む。
 無限の生命と守護の力を纏わせる光。その力に吸血鬼や雑魔どもは不思議と目を奪われ、言葉を失った。
 だがその時「余所見はいけないな、戦場に立つ者として失格だ」と
 凛々しい声が響くと同時に発砲音が9回立て続けに耳を打つ。
 それはマリィアの新式魔導銃「応報せよアルコル」によるハイペリオン。
 ユグディラの歌による力も備わった銃の威力はただならず、
 吸血鬼の身体から次々と血が噴き出させては宙に身をふらつかせる。
 だが彼女は油断することなく即座に弾丸をリロードし、吸血鬼に対応する仲間達へ告げた。
「私が全力で支援射撃をする!
 全員で一斉に仕掛ければハヴァマールの力を受けていようとも短期で仕留められるはずだ!」
 マリィアの声にリアリュールが呼応する。
「ええ、皆さんを守るためにも全力で!!」
 ティオーの「森の宴の狂詩曲」を聴きながら新式魔導拳銃「ヴァンガード」から10の弾丸が放たれる。
 それはまっすぐに吸血鬼の身体を貫き通すや禍々しき力を失わせ、地面にその身を叩きつけた。
 そこに到着したボルディアが「悪い、待たせたな!」とヴァーミリオンから飛び降り、炎檻を発現。
 地に伏せた吸血鬼に炎の鎖の幻影が絡みつき、強固な檻の形を成す。
「ここで真打登場ってな。なぁ、ヴァン。思いっきりやってやろうぜ」
 ヴァーミリオンが主人に応じるように吸血鬼を睨み、唸り声をあげる。
 ――さぁ、ここからが本番だ。


●崩れ落ちるまで

 フィロと真の元にアルマ達が合流したのは吸血鬼が2度目の墜落をしてから間もなくのことだった。
 真の剣技とフィロの機転を利かせた攪乱によりジャイアントの死体は今のところ、何も口にはしていない。
 しかしそれ故に狂暴性を増し、
 バルーンを見てもそれよりも強いマテリアルを放つ真とフィロを無意識に狙うようになっていた。
「アルマ君! フリーデさん!」
 真が死体の拳を躱しながら叫ぶ。だが二人きりでの戦は厳しかったのだろう、手足に痛々しい出血の痕がある。
 フィロのコンフェッサーも同じく装甲が大きなへこんでおり、死体の持つ力を見る者にありありと感じさせた。
「ごめんです、遅くなりました! 今から取り返していきますよー!」
 早速腕にマテリアルを集中させるアルマ。
 だがそこに怒りに満ちた顔でフリーデが斧を構えた。アルマが慌てて片腕を彼女の前に広げる。
「フリーデさん、突っ込んだらだめです! いつもの雷撃で吹き飛ばしてくださいっ!
 あの死体さんの射程外からやるですっ。あのおてては、そんなに遠くまでは届かないはずです!」
『わ、わかった。天を裂け、黒雷よ!』
 フリーデの斧から一直線に雷が放たれ、死体とその周辺にいる雑魔どもに強烈な電流が奔る。
 そこにフィロが星神器「角力」の力を解き放った。
「死してその身を悪行に使役されるとはさぞやお辛いことでしょう。ならば、せめて!」
 鹿島の剣腕を施されたコンフェッサーがマテリアルフィストを2度叩き込む。
 そして腐った臓腑を抉るように爪が捻られるや、フィロの氣が死体の全身を駆け巡った!
『グアハアアアアッ!!』
 口から悪臭漂う血と泡を吹き出し、膝をつく死体。その時奇妙な臭いが漂い始めた。
「フィロさん、アルマ君、フリーデさん! こちらに来てはいけない! これはおそらく……!」
「おそらく……気をふれさせる……効果、が……」
 真とフィロの視界が揺らぎ、意識が朦朧とし始める。このままでは危険だ。
「ポロウさん、惑わすホーで真さんとフィロさんを助けるです!」
 アルマのポロウが飛び立ちふたりの間に割り込むと守りの結界を展開する。
 もちろん結界は死体の魔力の影響を受けたが――結果は対消滅。
 ギリギリのところで真とフィロが正気を取り戻す。
 荒く息を吐くふたりにアルマが叫んだ。
「ジャイアントさんをこのまま放っておくのは危険です! 真さん、フォローをお願いします!」
「ああ、あの業か! わかった、必ずきみを守ってみせる!」
 真の応答にアルマは微笑むと、ヴァイザースタッフを振りかざした。
 使役するは「星の救恤者」。
 己が生命を代償に敵へ身を守ることも許さぬ業を限界まで叩き込む恐るべき力だ。
「僕の命ときみの命……どちらが先に潰えるか勝負しましょう!」
 アルマの魔力が深い蒼の激流となってジャイアントの肥大化した肉体を幾度も突き崩す。
 その時、可憐な声がどこかから聞こえた気がした。
(私のマテリアル、貸してあげる。思う存分、ぶっ放してきなさい)
 蒼の魔力に純白のマテリアルがうねりとなって巨大な波濤と化す。
 ジャイアントの死体がめきめきと音を立てて崩壊していった。
 そしてアルマがマテリアルの9割を消費し、
 地面に崩れ落ちた時――ジャイアントの死体はほとんど朽ちていた。
 だが暴食王に与えられた負の生命力はそれでも尽きない。
 肉がほとんど剥がれ落ち、目が零れ、内臓がずり落ちても。
 それでも奴はアルマに手を伸ばす。極上のマテリアルを持つ最高の餌に。
「きみをやらせはしないっ!!」
 咄嗟に真がガウスジェイルを展開し、朽ち果てたジャイアントの腕を自身に引き寄せた。
 ――殴打。真が地面に叩きつけられ、全身に激痛が奔る。
 だがここで倒れるわけにはいかない。ここには守るべき友人がいる。そして彼の愛する人も。
(私には過去はない。だけど守るべき今はある……そうだろう?)
 彼はシトロンにもう一度歌うように願うと、二刀流からアスラトゥーリに繋げ、死体の腕を吹き飛ばした。
「もう少しなんだ、あと……もう少し!」
『ああ、私も全力で行くぞッ!!』
 畳みかけるようにフリーデが雷を放ち、ジャイアントの顔の大半を吹き飛ばす。
 そしてフィロのコンフェッサーが主の動作そのままに拳を構え、駆けだした!
「今こそ永遠の安らかな眠りを……さようなら、彷徨いし死者よ!!」
 ごう、と音を立ててマテリアルフィストが剥き出しになった核を砕く。
 次の瞬間、彼女の強烈な氣が死体の肉体を破裂させた!
 ――その結果――「ぐちゃり」と重い水音を立てて死体が崩れ落ちる。
 死体の血肉は凄まじい腐臭を漂わせるも、すぐさま白い砂となり赤い大地の上空へ風に乗り消えていった。
 だがアルマの怒りは収まったわけではない。
 彼は仲間を集め、疲弊しきった肉体を仰ぎし福音で癒すと俯いたまま静かに言った。
「……で? 僕の妻を泣かせたゴミクズは後何匹残ってますかね?」


●夏の白雪

 巨大スケルトンとハンターの戦いは熾烈を極めていた。
 何しろ巨大スケルトンの身体はシェオル型歪虚同様の強度を持っている。
 香墨が一刻も早い討伐のために搦め手の魔法を使っても決定打になりにくい。
 そこで香墨が回復役。
 澪とシロガネがフォローに回りながら、アルトが強烈な一撃を見舞うという役割を担っていた。
「どうやら。ジャイアントの方は。倒れた、みたい。
 こっちも。この前は加減したけど。今回はいらない。……消えて」
 アルトの尽力で脆くなったスケルトンに香墨がプルガトリオを唱え、足の動きを止めた。
 そこに狙いをつけたようにミグのプラズマキャノンによる支援砲撃が加わり、頭蓋骨の半分が崩れ落ちる。
 澪がその損傷個所を目にすると小首を傾げた。
「頭が半分崩れても核が見えない。それならどこに?」
「私にも見えないけど。……でも。澪。でっかいやつ。やってあげて」
「うん、やるだけやってみる……!」
 澪が納刀の構えで鞘に納めていた刀を一の太刀で力を込め、居合で抜き放つ。
 そして目一杯力を注いだ次元斬で全体に傷をつければ骨に無数の細かいヒビがはしった。
 だが、急所がどうしても見えない。
 その時、アルトが焔舞のオーラを体内に収め自ら無の境地に至った。
「ああ、それなら……弱点が見えぬのなら全て砕いてしまえば良い。集まった無粋な輩と共にな!」
 アルトの脳から戦に不要な情報が滅し、目の前の巨大な敵を倒すためのプロセスが次々と組まれていく。
 その流れには世界の色や時も意味はなく――
 ただ、どうやってこの骨を完膚なきまでに砕くのか。それだけを計算していた。
 イレーネが吼え、周囲の敵の動きを鈍らせる。
 それと同時に自分は踏鳴と散華、そしてアフターバーナーを併用して出来るかぎり切り刻む。
 幸いなことにこのスケルトンは動きが重い。
 斧を打ち込まれたりや踏み込みに巻き込まれるなら痛いだろうが、当たらなければどうということはない。
(あとは少女達に攻撃が向かないよう、私が奴の気をひけばいい。
 ステップは得意だ、奴を回り込むようにしてフェイントを加えて……!)
 そう思考する間に体が弾けるように駆け出す。
 イレーネのウォークライで警戒した歪虚達を斬り、
 巨大スケルトンの身を蹴り上がりながら何度も斬りつける。
 そのたびにびしり、びしり、と大きなヒビが入った。
 骨だけになっても痛覚はあるのか、
 スケルトンがアルトを捕まえようと手を伸ばすが身軽な彼女には指先で触れることも叶わない。
 ――そして地面に降りた瞬間に返す刃で再び傷を抉る。
 重い音が響き渡り、骨盤の3分の1と肋骨5本が砂となって消えた。
(ここまで計算通り。そしてもう一度、次は腕か足を破壊する……!)
 風が頬を斬るような重みで顔を弄る。
 それでもアルトは構わずに華焔を何度も叩きつけ、スケルトンの指を叩き折った。
『ぐ……が』
 骨の軋むような唸りをあげて斧を握ろうとするスケルトン。
 しかし指の欠けた手のみでは不可能であり、両手で振り上げるのが精一杯となっていた。
(よし、これで守りは手薄になった! 後は全部……っ!?)
 スケルトンが我武者羅に斧を振り回す。その先には納刀したばかりの澪の姿があった。
「あ……っ!!」
 驚異的な脚力で澪を突き飛ばし、斧を受けるアルト。
 両手で斧を握っている分、骨の重みがアルトに圧し掛かり身体を軋ませた。
「うああっ……!」
 アルトの引き締まった肉体に割れた斧の切っ先がめり込んでいく。
「ごめんなさい、アルトっ! お願い、助けてシロガネ!!」
 澪の叫びに呼応し、シロガネがフォトンチャージで近接戦闘モードに変更する。
 彼はバディフォースで強化した力を込め、斧にガントレットを打ち込んだ。
 斧がめき、と音を立ててひび割れたが、それでもアルトを押さえつけるスケルトンの力が強すぎる。
 そこに澪のトランシーバーにミグから通信が入った。
「どうやらそっちは危機的状況らしいのぅ。
 敵を吹き飛ばし状況を変えるため、こちらから連続砲撃を提案する。
 というか、余裕がないので実施するぞ。
 全員爆発に巻き込まれぬようくれぐれも動いてくれるなよ? いいな?」
「……!」
 澪が香墨とアルトに伝える。今なら、とアルトが頷いたのを確認し澪は「お願い!」と縋るように願った。
「良かろう、承知した!!」
 ミグが早速砲門の高さを調整し、砲撃:徹甲榴弾を2門の滑空砲から発射する。
 それは巨大スケルトンを横転させただけに至らず、奴の左腕をもごきりと音をたてて転がした。
 ようやく自由になったアルトが胸から滴り落ちる血に構わず、幽鬼のように立ち愛刀を握りしめる。
 香墨がアンチボディで治療すると彼女は黙したまま小さく頷き
 ――冷徹な目で巨大スケルトンを見下ろした。
「……やってくれるじゃないか、骨でありながら己が身で制圧してくれるとはな」
 アルトが焔舞を纏い、再び散華でスケルトンを斬りつけアフターバーナーで限界まで骨を砕く。
 そこには既に計算も何もない。ただこの骨を動かぬよう破壊する意思があるだけだ。
 続いて澪が一之太刀、居合から続く次元斬を喰らわせると、
 残った顔の眼窩から鈍く輝く石のようなものが転がり落ちてきた。
「……これが。もしかして、核?」
 香墨が爪先で押さえ、槍で力いっぱい突く。
 そして浅く傷ついたそれに澪とアルトがもう一度力を込めて刃を振り下ろせば
 巨大スケルトンは一瞬にして幻のように砕けた。
 白い骨片は真夏には似つかわしくない雪のように細かく舞い散り――戦場で儚く消えていった。


●闇の翼を斬り裂いて

 ボルディアの紅き檻に封じられた吸血鬼は集中的な攻撃を受け、
 今や瀕死といった状況に追い込まれていた。
 ライフリンクで生命力を高めたヴァーミリオンが凄まじい咆哮でウォークライを発動。
 吸血鬼の動きを鈍らせる。
 そこに主人のボルディアが油断することなく、吸血鬼の香攻撃射程外で斧を掲げた。
「悪いがお前には退場してもらわねえといけねぇンだよ、烽火連天ッ!!」
 ボルディアの魔斧モレクが巨大な火球の如き力を2度炸裂させると、
 吸血鬼の背中が爛れたように剥がれ落ちた。
 そこにすかさずマリィアがユグディラの歌の力をのせた支援射撃で攻撃。
 吸血鬼の肩を砕き、力を弱める。
(あともう少しだ、こいつを倒せば……!)
 リクが斬艦刀「雲山」に手をかけたその時、戦場に漂う瘴気が一層強くなった。
「くっ、ハヴァマールの気配が強くなっている……早く倒さねばなるまい!」
 アウレールが斬霊剣「剣豪殺し」を聖祈剣ノートゥングに付与し直し、上空から斬りかからんとした。
 だが吸血鬼を長らく圧し留めてきた彼が動いたその時――。
「ハヴァマール様がお迎えに来てくださる……! ワタシハ、ココデタオレルワケニハイカナイ……!」
 吸血鬼の翼が背を割るように生え、大きく広がる。
 その負の力はボルディアの炎檻による拘束を断ち切り、一気に上空へ舞い上がった。
「マズハアナタノクビヲイタダクワ!
 アナタノマテリアルハカガヤイテイル……! ハヴァマールサマモヨロコンデクダサル!」
 瞬時に上空へ舞い戻った吸血鬼の口が裂け、アウレールの魔導強化外骨格に覆われた首元に齧り付く。
 どくん。アウレールは傷みよりも急激に意識を奪われていく強烈なまどろみを感じた。
 そして鈍っていく心音をたしかに感じながらグリフォンの背に両手を突く。
 彼は今まであらゆる暴食を狩り、帝国の民を守ってきた。
 侯爵家の後嗣として、父の如く勇敢たれと。――力なき民の剣となるために。
 それがこんなところで朽ちていいのか?
(……いや、ここで終わるなど私の物語の結末には相応しくなかろうよ!)
 彼は自らの肌が傷つくのも厭わず、剣を首筋に向けると吸血鬼の顔に惑うことなく突き刺した。
 鼻から口にかけて大きく斬り裂かれる吸血鬼の顔。
 聞くに堪えない悲鳴を上げて彼女は慌てて飛び退る。
 荒く息を吐きながらアウレールはグリフォンを宙に駆けさせた。
 何度でもあの吸血鬼の蛮行を食い止めるために。
「グラオーグラマーン、追撃するぞ。
 私の血が奴に力を与えたのならその落とし前は私自身がつけねばならん!」
 そこにアルマが駆け付け、最後の仰ぎし福音を放った。
「アルマか、ありがたい!」
「いいえ、これから僕達も加勢するです! 力を合わせて全員やっつけるですよー!」
 続いて真が星影の唄、シトロンが旅人たちの演奏曲を歌う。
 真の穏やかな歌声は吸血鬼の戦意を奪い、シトロンの愛らしい声がハンター達に力を与えていった。
 続いてフリーデが吸血鬼を追い詰めるため雷を落とす様を見つめ、彼はそっと腰の剣に手を掛ける。
(……相性の良し悪しというのはどうしてもあるからね。
 無理を重ねてここで消えてしまうようなことには、絶対にさせないよ)
 ――かたや、どこを向いても強力なハンターがいる。
 そんな絶望的な状況にありながら吸血鬼はにたりと笑った。
 守護者たるアウレールから吸ったマテリアルは強い力を彼女に齎した。
 ここには彼と同様に強いマテリアルを有するハンターが幾人ともいる。
 先ほどの傷は重く痛むが――全員から力を奪えばより自分は高みへと昇れるだろう。
 そこにアルトが駆けてきた。
 彼女はハンターの中でも飛び抜けた実力者。おそらくあの娘が最も強いマテリアルを秘めている。
「チカラヲヨコセェエエエエッ!!」
 先ほどまでの女らしい所作など捨て、獣のような動きで吸血鬼が迫る。
 だがその前に突然コンフェッサーが現れた。
「!!?」
 驚き、長い爪を振り回す吸血鬼。するとコンフェッサーはまるで手品のように消失した。
 ――フィロのマテリアルバルーンだ。
 動きを止めた吸血鬼にミグの支援砲撃が直撃する。身を強張らせた奴を見据え、フィロが叫んだ。
「アルト様、今です!」
「ああ!」
 アルトがフィロのコンフェッサーを踏み台代わりに踏鳴で駆けあがり、吸血鬼に華焔で斬り裂く。
「このサイズでは、斬り裂いてくれと行ってくれているようなものだなっ!」
 黒い風の翼が華焔で断ち切られ、墜落する吸血鬼。
 そこにリクが6機のブレイズウィングを突き刺すように交差させた。
「思考力を失っている今なら……勝てる! いくら暴食王の力を受けようとも!」
 最初の連撃で傷ついていた身体がようやく崩れ始めた。
 右腕がもろりと崩壊し、左腕で立とうとするも――左腕にも力が入らないのだろう、がくがくと振るえる。
 早くハンターの血を吸い、傷を癒さねば。そうしなければ暴食王ハヴァマールの力になれはしない――。
 吸血鬼が喘ぐ中、香墨のジャッジメントが背中に刺さり地に縫い留めた。
 そして正義の光が吸血鬼を照らし出す。
 もう逃げられない。
「これで。おしまい」
 香墨の声と同時にリアリュールが銃を構えると、指先と弾丸にマテリアルを注ぎ込んだ。
「ティオー! ずっと演奏で申し訳ないけど、がんばりどころよ。
 あなたは私が必ず守り抜く。だからその優しい声を、力に!」
 ティオーがリュートをかき鳴らし、リアリュールに自身の魔力を与えていく。
そして放たれたハイペリオンは吸血鬼の最後の希望たる器官――口腔から喉を吹き飛ばした。
「これでもう回復はできねぇだろ、俺達の極上の炎の中で燃え尽きなッ!」
 ボルディアの烽火連天、そしてヴァーミリオンによるクラッシュバイトが吸血鬼を噛み砕く。
 そしてマリィアのハイペリオンが吸血鬼に蜂の巣の如く穴を穿ち。
 最後に片目だけ残った吸血鬼が見たものは。
「……私の血は旨かったか、あらゆる暴食を手にかけてきた私の血は」
 煌々と輝く剣に膨大な魔力を込め、構えるアウレールの姿だった。
 彼は瞳にこそ感情を映さなかったが――その口元には静かな笑みを湛えている。
 ――ずっ。
 まるで神聖な儀式のように彼は両手で柄を握ると、真っすぐに吸血鬼の背を貫いて。
 頭に向かって、力を込めて引く。
 すると吸血鬼の首の付け根にあった核が魔力にあてられ脆くも――砕けた。
 こうして吸血鬼は声を上げることもなく、黒いリボンのように体が解けていき……全てが消失した。


●新たな戦のはじまり

 3体の高位歪虚が倒れても、それでもなお暴食型歪虚とシェオル型歪虚の出現は収まらない。
 真は「まだ私にもやれることがあるだろうからね、もう少し力を尽くしてみせるよ」と言い残し、
 劣勢となっている人々を助けに奔走する。
 澪も香墨も精霊達を支援するべく再び戦場に向かった。
「澪。私達にもまだできることはあるはず」
「うん、香墨。ひとりでも多くの精霊を故郷に還せるように。……頑張ろう!」
 ――ハヴァマール出現まで残り僅か。
 フィロはフリーデを急いで相性の良い風の大精霊イクタサのもとへ連れて行く。
 時折現れる雑魔を拳で撃退しながら。
『フィロ、すまないな』
「いいえ、これぐらいはさせてください。
 あの雨の日……フリーデ様は、数多にフィロが居ようと
 私だけが友のフィロだとおっしゃって下さいました。
 私にとっても、貴女だけが私の知るフリーデ様、たった一人のフリーデリーケ・カレンベルク様です」
『私がただ一人のフリーデリーケ?』
「ええ。貴女のルーツになった人物がいようとも、
 どれだけの方が伝承の中のフリーデリーケを崇拝しようとも。
 ……私にとっての友人のフリーデ様は貴女だけ。
 例え一時だろうとも、貴女様のいない世界を否定します。そのためならなにも惜しくはありません」
 その声には強い力があった。フリーデが頬を赤く染め、俯いた。
『そんなこと、言ってくれるな。お前は私の友だ。
 マテリアルの塊に過ぎなかった私に心と幸福を与えてくれた大切な恩人のひとりだ。
 そんなお前が私のために何かを失う事態など決して許さない』
「フリーデ様……」
『だがな……もし私が人間だったならば、この先が地獄だろうとお前たちと共に進んでいたはずだ。
 それができないのが今はただ……悔しくて仕方ない。最後までお前たちと共に駆けたかった』
 精霊がハンターとともに戦えるのは此処までだ。
 あとはハンター達、ヒトの強さを信じてクリムゾンウエストを守る以外にない。
 そこでマリィアが銃を肩に担ぎながら問う。
「フリーデ、大丈夫? 随分思いつめた顔してるわよ」
『そうだろうか』
「ええ。そんな顔してたらフィーが心配するわよ。
 私達は勝った。終わり良ければ全て良し、それで良いんじゃないかしら。
 それにハンターの大半が邪神の宇宙へ行くのよ?
 この世界を守ってくれる人がいなければ私達は不安の中で戦い続けることになる。
 だから……あなたやフィー達がこの世界に留まってくれることが私にとっては心強いわ」
 歌うように軽やかな声音でマリィアが言う。フリーデはマリィアのさりげない優しさに救われた気がした。
『ありがとう。フィロ、マリィア。どうか二人とも無事に帰ってきてくれよ』
「はい、必ず。……戦争が終わったらフィー様も呼んでお茶会をしましょう。
 フリーデ様のお好きな物もお作りしますから、たくさんたくさんお話しをいたしましょう」
「そうね、私もまたフィーと遊びたいし。
 今なら夏の花が沢山咲いているでしょう、全部終わったら休暇をとって自然公園に遊びに行くわ」
『うむ、楽しみにしている。
 あ、それと……今度は私にも茶の淹れ方や菓子の作り方を教えてくれ。皆に礼として馳走したい』
 それは勿論、いくらでも。
 微笑みながらフィロはスカートの裾をつまみ上げ、コンフェッサーに再び乗り込んだ。
 マリィアも軽く手を振り、次の戦場に向かう。
 ――皆と別れの時が迫っている。
 そんなしめやかな空気の中で歪虚をこっそり倒しながらついてくる子犬のような青年がいた。アルマだ。
「わぅぅ……フリーデさん」
 どうした、アルマ。
 いつものように振り向けば、元気なくエルフ耳を垂らしたままもそもそと夫が接近してくる。
 まるで叱られる子犬のように震えながら彼は「ごめんなさい」と頭を下げた。
『な、なんだいきなり。何故謝る!?』
「実は……僕、フリーデさんがここで一時的に、……その……『そう』なったら、
 この後の決戦では安全なんじゃないかなって……
 本当に消えてしまいかねないことにはならないんじゃないかなって、一瞬思っちゃったです……」
『……』
「フリーデさんに会えなくなるの、ちょっとでも嫌なのに。
 僕……僕、とっても悪い子だったです。叱ってくださいですー……」
 アルマはフリーデが一時的に力を失うことでむしろこれ以上前線に出ずに済み、
 その身が危険に晒されることがなくなるのではないかと僅かながら思っていた。
 何故ならフリーデの気質は夫であるアルマが一番良く知っている。
 民の危機に黙っておられず、危険も顧みずに真っ先に斬り込むまっすぐな性質を。
 するとアルマの頭にぽふ、と柔らかな感覚が伝わった。
 フリーデがそっと労るように抱きしめたのだ。
『怒るわけなどないだろう、怒るなど……。お前は私を本気で案じ、本気で怒ってくれた。
 そしてこの地で私を救ってくれた。……そして今も愛してくれている。それ以上に何を望むものか』
「フリーデさん……」
 アルマの眉尻が困ったように下がった。彼はこれからやるべきことがある。
 守護者として最後の戦いに向かわなければならない。
 夫婦としての契りを交わしていようともここから先は常に激しい戦いが待っている。
 互いにどうなるのかなど誰にもわからない。
 ――だから最後になるかもしれないキスを、フリーデから甘えるように。
 ついばむように交わした。
 唇の先だけ触れる、本当にささやかな口づけ。誰の目にも届かぬよう、密やかに。
 アルマは今にも泣き出しそうな顔で笑った。
「さよならなんて言いません。その代わり……行ってきます、です」
『ああ、行ってらっしゃい。無事に帰ってきて落ち着いたら……その時は一緒に帰ろう。私達の家に』
「はいです! 実はもう色々と準備していたですよ。僕も楽しみにしてるです!」
 アルマは耳をぴんと元気よく張り、ヴァイザースタッフをぶんぶん上下に振る。
 この元気があればもう大丈夫だろう。
 そこにエストレリア・フーガからリクが降り、真剣なまなざしをフリーデに送った。
「こっちは…グラウンド・ゼロは任せたよ。
 ……僕らはこのまま邪神の所まで行く。死ぬなよ、こんな処で」
『無論、暴食王などに貪られてたまるものか。それに奴は我が国、そして精霊達の敵だ。
 むしろ討ち取るぐらいの気概で向かうぞ。……私はお前の宿敵だからな』
「その調子だ。僕と決着をつけるまで絶対に死ぬなよ。
 そんなつまらない展開、リアルブルーの漫画じゃ打ち切りまっしぐらだからな」
 リクが聖機剣「マグダレーネ」を抜くと、フリーデはそれに大戦斧をがちゃりと重ねた。
 ここから先の道は分かたれようとも、再び巡り逢えるように。
『生きて帰れよ、宿敵』
 リクは頷くと剣を鞘に納め、エストレリア・フーガに戻る。
 彼は人々の願いを背負って漆黒の闇を突き進む流星だ。
 だからもう、振り向かない。フリーデの願いも既に背負ったのだから。

 戦友達のいなくなった戦場でフリーデは再び歪虚を斧で沈めた。
 この地さえ守れば世界に歪虚が及ぼす被害を抑えられる。
 皆の帰る場所を守れる、そう信じて。
 これから戦う相手が暴食王ハヴァマールであろうと、恐れも絶望もない。
 ただ命の懸け方が変わっただけだ。生きるための戦いに。
 ――皆、必ず帰ってきてくれよ。
 仲間達の背を目に焼き付かせ、英霊は昏い負のマテリアルに立ち向かっていった。

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    アウレール・V・ブラオラントka2531
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデスka5848
  • ルル大学防諜部門長
    フィロka6966

重体一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸ka0038
  • ツィスカの星
    アウレール・V・ブラオラントka2531
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワースka4901

参加者一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    エストレリア・フーガ
    エストレリア・フーガ(ka0038unit012
    ユニット|CAM
  • 伝説の砲撃機乗り
    ミグ・ロマイヤー(ka0665
    ドワーフ|13才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    ヤクトバウプラネットカノーネ
    ヤクト・バウ・PC(ka0665unit008
    ユニット|CAM
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    イェジド
    ヴァーミリオン(ka0796unit001
    ユニット|幻獣
  • よき羊飼い
    リアリュール(ka2003
    エルフ|17才|女性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    ティオー
    ティオー(ka2003unit001
    ユニット|幻獣
  • ツィスカの星
    アウレール・V・ブラオラント(ka2531
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    グラオーグラマーン
    グラオーグラマーン(ka2531unit005
    ユニット|幻獣
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
    人間(紅)|21才|女性|疾影士
  • ユニットアイコン
    イェジド
    イレーネ(ka3109unit001
    ユニット|幻獣
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワース(ka4901
    エルフ|26才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    ポロウ
    ポロウ(ka4901unit010
    ユニット|幻獣

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    シトロン
    シトロン(ka5819unit004
    ユニット|幻獣
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    ユグディラ
    ユグディラ(ka5848unit004
    ユニット|幻獣
  • 比翼連理―瞳―
    澪(ka6002
    鬼|12才|女性|舞刀士
  • ユニットアイコン
    シロガネ
    シロガネ(ka6002unit002
    ユニット|自動兵器
  • 比翼連理―翼―
    濡羽 香墨(ka6760
    鬼|16才|女性|聖導士
  • ユニットアイコン
    モクラン
    木蘭(ka6760unit001
    ユニット|幻獣
  • ルル大学防諜部門長
    フィロ(ka6966
    オートマトン|24才|女性|格闘士
  • ユニットアイコン
    コンフェッサー
    コンフェッサー(ka6966unit004
    ユニット|CAM

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依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
鞍馬 真(ka5819
人間(リアルブルー)|22才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2019/07/16 09:06:34
アイコン フリーデに質問
ボルディア・コンフラムス(ka0796
人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2019/07/16 12:54:02
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/07/15 16:29:30