ゲスト
(ka0000)
【血断】グラウンド・ゼロ防衛作戦
マスター:きりん

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~15人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/07/22 09:00
- 完成日
- 2019/07/24 09:56
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●歪虚の大群
今や、グラウンド・ゼロは夥しい数の歪虚で埋め尽くされていた。
様々なシェオル型歪虚を始めとし、雑魔まで含めればその総数は億を超えさらに増え続けている。
対するクリムゾンウエスト側は、エバーグリーンから回収したオートソルジャーなどの自動機械戦力に加え、邪神内に突入させるには練度が足りないハンターたちを動員し防衛に当たらせていた。
該当するハンターは、主に最近ハンターになったばかりのリアルブルーからの避難民や元強化人間や、実戦からしばらく離れていて勘が鈍っているハンターたちである。
受付嬢としての仕事の方を主任務としてたジェーンや、リアルブルーからの転移組である冴子や美紅もその中に該当していた。
「無理に接近しようとしないでください! 前衛は自動機械に任せて、私たちは後衛から攻撃するんです! 歪虚はまだまだ来ますよ!」
まだ状況判断が甘いところがある冴子と美紅を指揮しながら、ジェーンはグラウンドゼロを駆け抜ける。
放たれた矢が自動機械たちの隙間を縫って、遠くのシェオル型歪虚の一つであるシェオル・ビーストに突き刺さった。
怨嗟に満ちたシェオル・ビーストの咆哮が上がる。
空間が揺らめき、非実体の顎が自動機械の一体を捕らえ、実体化して噛み砕いた。
咀嚼するような仕草を見せるシェオル・ビーストの動きに連動し、実体化した顎も動く。
「どう見ても間合い外ですよ! 何ですかあれ!?」
双眼鏡で確認した冴子が驚愕の声を上げる。
今の攻撃方法を見たのはこれが初めてではないが、シェオル・ビーストの咆哮は原始的な恐怖を抱かせるに相応しいおぞましさだった。
「それだけじゃない……。さっきよりも、私たちが攻撃を加えるごとに攻撃射程が伸びてる。さっさと仕留めないと不味いよ」
肩と頬でスナイパーライフルのストックを支えながら、美玖が眉根を寄せる。
銃声が轟き、シェオル・ビーストが弾丸を受けて吹き飛んだ。
そこにジェーンが矢を放ち追撃する。
倒すことには成功したが、既に矢も弾丸も結構な量を消費していた。
まだまだ余裕はあるものの、想定以上のペースだ。
「シェオル型にしては柔らかいですが、それでも雑魔よりは硬いですね」
雑魔の多くを自動機械が仕留めてくれているが、その自動機械もシェオル・ビーストに薙ぎ倒されるものが多くなっている。
「本部に緊急防衛依頼を出しておきましたから、耐えれば邪神内突入に選ばれるような実力者たちが増援が来てくれるでしょう。それまで持ち応えられればあるいは……」
ジェーンは思案する。
シェオル・ビーストを始めとするシェオル型歪虚をどれだけ早く多く倒せるかが、防衛の鍵になりそうだ。
「まだまだ先は長いです。油断せずいきましょう。冴子、いざという時は回復を頼みますよ。美紅は私と同じ対象を狙ってください」
「はいっ!」
「分かりました」
冴子と美紅は元気よく返事をした。
戦闘は続いている。
●ハンターズソサエティ
依頼掲示板に多くの依頼が張り出されていた。
その中でも、一際目立つ依頼がある。
『グラウンド・ゼロ防衛作戦への参加願い』
依頼内容は、グラウンド・ゼロに転移してくる大量の歪虚たちを押し留め、クリムゾンウエストを防衛すること。
圧倒的な数的不利から負け戦なのは目に見えているが、グラウンド・ゼロが抜かれれば人類生息圏に攻め込まれ人類側にも多大な被害が出るだろう。
物量に呑み込まれるのが先か、それとも邪神内に突入したハンターたちが勝利するのが先か。
とにかく倒し続けて時間を稼ぐのだ。
目の前の敵を見逃すわけにもいかないのだから。
今や、グラウンド・ゼロは夥しい数の歪虚で埋め尽くされていた。
様々なシェオル型歪虚を始めとし、雑魔まで含めればその総数は億を超えさらに増え続けている。
対するクリムゾンウエスト側は、エバーグリーンから回収したオートソルジャーなどの自動機械戦力に加え、邪神内に突入させるには練度が足りないハンターたちを動員し防衛に当たらせていた。
該当するハンターは、主に最近ハンターになったばかりのリアルブルーからの避難民や元強化人間や、実戦からしばらく離れていて勘が鈍っているハンターたちである。
受付嬢としての仕事の方を主任務としてたジェーンや、リアルブルーからの転移組である冴子や美紅もその中に該当していた。
「無理に接近しようとしないでください! 前衛は自動機械に任せて、私たちは後衛から攻撃するんです! 歪虚はまだまだ来ますよ!」
まだ状況判断が甘いところがある冴子と美紅を指揮しながら、ジェーンはグラウンドゼロを駆け抜ける。
放たれた矢が自動機械たちの隙間を縫って、遠くのシェオル型歪虚の一つであるシェオル・ビーストに突き刺さった。
怨嗟に満ちたシェオル・ビーストの咆哮が上がる。
空間が揺らめき、非実体の顎が自動機械の一体を捕らえ、実体化して噛み砕いた。
咀嚼するような仕草を見せるシェオル・ビーストの動きに連動し、実体化した顎も動く。
「どう見ても間合い外ですよ! 何ですかあれ!?」
双眼鏡で確認した冴子が驚愕の声を上げる。
今の攻撃方法を見たのはこれが初めてではないが、シェオル・ビーストの咆哮は原始的な恐怖を抱かせるに相応しいおぞましさだった。
「それだけじゃない……。さっきよりも、私たちが攻撃を加えるごとに攻撃射程が伸びてる。さっさと仕留めないと不味いよ」
肩と頬でスナイパーライフルのストックを支えながら、美玖が眉根を寄せる。
銃声が轟き、シェオル・ビーストが弾丸を受けて吹き飛んだ。
そこにジェーンが矢を放ち追撃する。
倒すことには成功したが、既に矢も弾丸も結構な量を消費していた。
まだまだ余裕はあるものの、想定以上のペースだ。
「シェオル型にしては柔らかいですが、それでも雑魔よりは硬いですね」
雑魔の多くを自動機械が仕留めてくれているが、その自動機械もシェオル・ビーストに薙ぎ倒されるものが多くなっている。
「本部に緊急防衛依頼を出しておきましたから、耐えれば邪神内突入に選ばれるような実力者たちが増援が来てくれるでしょう。それまで持ち応えられればあるいは……」
ジェーンは思案する。
シェオル・ビーストを始めとするシェオル型歪虚をどれだけ早く多く倒せるかが、防衛の鍵になりそうだ。
「まだまだ先は長いです。油断せずいきましょう。冴子、いざという時は回復を頼みますよ。美紅は私と同じ対象を狙ってください」
「はいっ!」
「分かりました」
冴子と美紅は元気よく返事をした。
戦闘は続いている。
●ハンターズソサエティ
依頼掲示板に多くの依頼が張り出されていた。
その中でも、一際目立つ依頼がある。
『グラウンド・ゼロ防衛作戦への参加願い』
依頼内容は、グラウンド・ゼロに転移してくる大量の歪虚たちを押し留め、クリムゾンウエストを防衛すること。
圧倒的な数的不利から負け戦なのは目に見えているが、グラウンド・ゼロが抜かれれば人類生息圏に攻め込まれ人類側にも多大な被害が出るだろう。
物量に呑み込まれるのが先か、それとも邪神内に突入したハンターたちが勝利するのが先か。
とにかく倒し続けて時間を稼ぐのだ。
目の前の敵を見逃すわけにもいかないのだから。
リプレイ本文
●前半戦
鳳凰院ひりょ(ka3744)の姿を見て、リアルブルーで行動を共にしたことがある冴子と美紅は安堵するかのように笑みを浮かべた。
「ここからは俺達も力を貸す。皆で乗り切ろう!」
「回復して支えます! 思い切り戦ってください!」
「銃撃支援しますね」
美紅が岩の影から上半身を出してスナイパーライフルを構えるのを気配で感じ取る。
シェオル・ビーストを目の前にひりょは一歩も引かない。
「目の前に救える命があるのなら……俺は持てる全力を尽くそう」
上空に次々に魔法の矢が生成されていく。
「行けっ!」
ひりょの号令で矢が降り注ぎ、射抜いていった。
輝羽・零次(ka5974)は笑みを向けた。
「頼りにしてるぜ! 大変だろうが、頑張ろうな!」
その間も、機甲拳鎚「無窮なるミザル」がシェオル・ビーストに叩き込まれた。
後半を考え、スキルは温存した。
「歯がゆいが我慢の時だ」
牙を突き立てられても気迫で堪え、転化させた気功を機甲拳鎚に乗せて反撃する。
「ぬおおっ! 根性ぅ!!」
エステル・ソル(ka3983)に引き付けられているシェオル・ビーストたちに、届かないのでついでとばかりに次々攻撃されるも、耐え切った。
「やぁ諸君、息災のようだね! ボクは先日の大規模作戦で軽く死にかけたよ! いやぁ痛かった!」
心配そうな表情を浮かべた冴子と美紅が、霧島 百舌鳥(ka6287)の容体を確認して慌て出した。
「っていうか、傷が残っているじゃないですか! 今すぐ治しますから!」
「ポーション、誰かポーション貸してください!」
跪いて冴子は精霊に祈りを捧げ、美紅が呼びかける。
「まぁそんな事より今日も仲良く皆で生きて帰ろうじゃないか!」
百舌鳥はケラケラ笑った。
魔導銃「アクケルテ」を手に、フィロ(ka6966)は戦場に立つ。
「多少なりともジェーン様達のお力になれれば……」
肩と頬を銃のストックにしっかり当て、銃口がぶれないように構える。
「私の次に動くのはアルト様……攻撃目標を合わせることが重要ですね。狙いましょう」
炎のオーラを纏ったアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)が残像を吹き飛ばすほどの超加速でシェオル・ビーストに肉薄した。
マテリアルの残滓が炎の花びらのように舞い散る。
「数が多いというのは強みにはならないことを教えてやろう」
移動も、剣閃も、目に映らないまでの速さの極致。
噴き出した血が大地を彩り、溢れ出す。
「沈め……!」
木霊するかのように、再び目に見えない剣閃の嵐がシェオル・ビーストたちを襲い来る。
気付けば、試作法術刀「華焔」を手に駆け抜けたアルトの姿がシェオル・ビーストたちのただ中に現れていた。
続けて飛来した弾丸がシェオル・ビーストに追撃をかける。
フィロが放った銃の弾丸だ。
精神を統一し、正確な一撃を放つため呼吸を整えた鞍馬 真(ka5819)は、両手にそれぞれ持った魔導剣「カオスウィース」と響劇剣「オペレッタ」で連撃を仕掛けた。
「抜かれる訳にはいかないんだ。ここで食い止める」
左右連動した斬撃は円を描くように振るわれ、絶え間なくシェオル・ビーストを斬り刻む。
決められた動作をなぞったことで剣撃が加速する。
渾身の二刀一撃がオーラの斬撃となって放たれた。
「火力は出し惜しみしなくていい! 今の私たちが全力で攻撃すれば、簡単に倒せる!」
シェオル・ビースト一体を斬り捨て、真は叫んだ。
口元を歪めつつ、マリィア・バルデス(ka5848)は新式魔導銃「応報せよアルコル」を構えた。
「ちょっとこの数はきついものがあるわね……」
矢と銃弾が確実にシェオル・ビーストの一体を確実に傷つけていく。
「ジェーンたちは東……ああ、岩を障害物代わりにしてるのね」
彼女たちも不必要に強化させないため、狙いを絞って集中攻撃をしている。
「なら、私もそれに倣おうか!」
戦闘に意識を切り替えたマリィアが雄々しく叫び、引き金を引く。
発射した弾丸はマテリアルで操作しされ、変則的な弾道を描きながらジェーンたちやフィロ、アルト、真が攻撃した個体のみを次々に撃ち抜いていった。
削れた個体に止めを刺しつつ、カイン・A・A・マッコール(ka5336)は嘆息する。
「なんかもう数が多いなあ……一気に潰していけばいい話だけどな、なんかこう多いと嫌になるなあ」
岩陰に隠れぼやきつつも、冷静に照準を定め新式魔導銃「応報せよアルコル」の引き金を引いていく。
反動で身体が軋む。
(これが新型か……。だいぶマシだがそれでも撃ち続ければやはり肩が逝くな)
どの道、近接戦闘を始めるまでの繋ぎである。
(まあいい。銃身が焼け付くまでぶっ放してやるよ)
カインは目を細める。
通信機で南護 炎(ka6651)はジェーン、冴子、美紅の三人に声をかける。
「あまり無理はしないようにな」
『問題ありませんよ』
『やれる範囲で頑張ります!』
『大丈夫です。あくまで援護に動く予定ですから』
弓の弦の音や銃撃音とともに、三者三様の言葉が返ってきた。
冴子の祈りの言葉は聞こえない。
「向こうはまだ大丈夫そうだな」
傷付いたシェオル・ビーストへ、確実に止めを刺していった。
魔箒「Shooting Star」に乗り岩の上に降り立ったエステルは、体内のマテリアルを燃やし、炎のようなオーラを纏い続ける。
「未来のために、グラウンド・ゼロを守り抜いてみせるのです!」
現在は広範囲のシェオル・ビーストを引き付けることに成功し、維持している真っ最中だ。
各個体のうち傷付いている個体の位置を通信機で伝えるのも忘れない。
「小鳥さんお願いします」
星のきらめきを宿した小鳥が十羽現れ、流星のように空を翔けた。
それらは二発ずつシェオル・ビーストに叩き込まれ、それぞれ一回牙の拡張を発生させた。
「複数回攻撃には対応していないみたいです!」
即座に情報を共有する。
過大集積魔導機塊「イノーマス」を地に突き立て、それにもたれかかりつつミグ・ロマイヤー(ka0665)はシェオル・ビーストたちを見る。
「馬鹿みたいにわらわらと出てきおってからに、恨みつらみはどこか他所でやるがよい」
その他所に選ばれたのがこのグラウンド・ゼロなのだがそれはそれとして、しばらく様子見をしてシェオル・ビーストがどこに集中し出したかを見定めたミグは、背に虹色の翼を広げた。
ドラゴンブレスの如き光の奔流が撃ち出され、シェオル・ビーストたちを呑み込んでいく。
「ここが落ちたら後がないぞな。気張って往こうぞ」
シェオル・ビーストたちは、混乱状態に陥って次々同士討ちを始めた。
全身のマテリアルを滾らせた岩井崎 旭(ka0234)が、祖霊の力をマテリアルへと変えて身に纏った。
立ち昇る霊光が姿を巨大化させ、魔槍「スローター」に光が集中する。
「さあ、行くぜ!」
旭は馬足を生かしてシェオル・ビーストの列に突っ込み、周囲を薙ぎ払いながら大回転を行う。
巻き込まれたシェオル・ビーストたちが、回転する旭が振るう槍に巻き込まれた。
超高速の回転は竜巻を引き起こし、旭ごと上空にシェオル・ビーストたちを打ち上げる。
上昇した竜巻は途中でU字型にカーブを描き、逆さまになる。
荒れ狂う竜巻の中心にいるのは旭だ。
「落ちろぉ!」
急速落下した旭が、シェオル・ビーストたちを地面に叩きつけた。
通信機から流れるひりょや百舌鳥、ジェーンや冴子、美紅のやり取りを聞きながら、サクラ・エルフリード(ka2598)は光の精霊力を付与したルーンソード「アクシア」を一振りする。
「向こうも善戦しているようですね……」
剣身についたシェオル・ビーストの血を払い冷静に戦況を見据える。
スキルを全開で使える今は殲滅速度が増援速度を問題なく上回っているが、直に押されることが予想された。
「倒しても倒してもきりがない、と言いたくなりますが……きりはあるでしょうし頑張りましょうかね……」
当然無駄な攻撃は行わないように努めているが、限界はある。
「気を引き締めていきましょう……後半が正念場でしょうから……」
サクラから光の波動が放たれ、周囲のシェオル・ビーストを衝撃で地面に叩きつけた。
ツィスカ・V・アルトホーフェン(ka5835)の眼前には、攻め寄せるシェオル・ビーストたちの姿があった。
「シェオルが相手、ですか……これだけの物量ならば猫の手も借りたいと言いたい所ですが、彼らは彼らの戦いを続けている。我々も、相応の力を尽くして事に当たらねば」
通信機で、方々から寄せられる情報は大体回収できた。
「射線上から離れてください!」
味方に警告して避難したことを確認し、ツィスカは錬魔剣「ロイバルト」からマテリアルを引き出し、術式人を構築して前方に展開した。
無数の氷柱が出現し、シェオル・ビーストたちに向いた状態で静止する。
「全弾発射です!」
解き放たれた氷柱が砲声のような重低音とともに、シェオル・ビーストたちへ撃ち込まれた。
着弾の後、凍傷で怨嗟が発動する様子はなかった。
終わりが見えない戦いは、クリスティア・オルトワール(ka0131)の精神を疲弊させる。
「退くつもりもありません。もっと過酷な戦場に身を置いている方達のことを思えばこの程度……!」
魔法の矢を五本同時に解き放ち、それぞれ五体のシェオル・ビーストを射抜く。
高い集中力を保ち錬金杖「ヴァイザースタッフ」を掲げたクリスティアの頭上遥か遠くに、燃え盛る火球が三つ、人知れず生まれた。
火球がゆっくりと膨張を始める。
●後半戦
増え続けるシェオル・ビーストたちに対応が追い付かなくなってきた。
美紅にまで届き始める牙を、ひりょが防ぐ。
「させるか!」
周囲にマテリアルを漲らせ、ベクトルを捻じ曲げ自分に引き寄せた。
「援護します」
美紅が連続で銃撃し、その場に釘付けにする。
魔法剣化した試作怨讐刀「FAITH-KILLソウル」を手にひりょはその隙を突き踏み込み、振り被る。
「沈め!」
生命力を削りながら放たれた一撃が、手負いのシェオル・ビーストを頭から一刀の下に叩き斬った。
「私だって……!」
冴子の祈りがひりょの傷を癒す。
プレミアムエビフライを頬張った零次は戦闘のギアを上げていく。
「うおおおお!」
大地を強く踏みしめ、鋭く踏み込みシェオル・ビーストに肉薄した。
既にお互いが攻撃できるクロスレンジに入っている。
だが、射程を伸ばし過ぎたシェオル・ビーストはエステルに牙を向けるしかなく、目の前の零次に反応できない。
「やっちまったようだな!」
全身のマテリアルを練り、一気に放出して手負いのシェオル・ビーストたちを吹き飛ばした零次は、続けて新しい個体に目にも止まらぬ速さで連撃を打ち込んだ。
守りに徹し弾き飛ばして距離を取る百舌鳥は渾身の一撃を叩き込み、高速回転するドリルで貫いて時間を稼ぐ。
「これはもはや男としての意地に近いものがあるねぇ」
突如現れ冴子に襲い掛かろうとした非実体の牙を、ベクトルを操り引き寄せ庇った。
「頼りにしてもいいかい?」
「勿論です!」
「そのための力ですから」
言葉はもはや不要だ。
百舌鳥と足並みを揃えて並び立つ冴子と美紅が、その覚悟を示している。
「ならいつもの通りに頼むよ!」
上機嫌に大笑した百舌鳥の身体からマテリアルが爆発的に溢れ、呼応して冴子と美紅もマテリアルを放出した。
片手に杖、片手にオートマチックを構えた冴子が杖で二人を守る百舌鳥を回復しつつ、近付いてきたシェオル・ビーストにオートマチックを突き付け連射する。
銃声が重なり、美紅の弾丸がシェオル・ビーストを撃ち抜いた。
「あまり心配していないけれど、ボクに当てないでくれたまえよ?」
「大丈夫ですよ、お尻から殻が取れる程度にはしっかり鍛えましたから」
くすりと微笑んで、ジェーンが笑顔のままシェオル・ビーストを射抜いた。
フィロは主にアルトが攻撃した敵を狙って弾丸を撃ち込んでいく。
ダメージを受けていくことで徐々に強化されてきたシェオル・ビーストの牙が、徐々にフィロがいる位置にまで届き始めた。
「もはや、距離を取る意味はありませんね……」
練り上げた氣を体内に取り込んだフィロから、黄金のオーラが溢れ出す。
瞬間フィロの姿が消えた。
シェオル・ビーストを銃撃で吹き飛ばし、姿を現したフィロは星神器「角力」の力を解放した。
「少し……本気でいきますよ!」
怨念に満ちた牙の嵐を気迫で耐え、踏み込んだ足が大地を強く踏み締めた。
必殺の領域にまで高められたマテリアルを秘めた拳が強烈な光を放つ。
「破っ!」
無傷のシェオル・ビーストの腹に正拳突きが突き刺さり、その瞬間流し込まれたマテリアルが内側から大爆発を起こした。
振るわれるシェオル・ビーストたちの爪を避け、そこへアルトが突っ込んでくる。
「遅い!」
ナイフ「デフテロレプト」を刺してその柄を足場に空中に飛んだアルトが、法術刀をその脳天に振り下ろした。
返す刀でついでとばかりにその少し隣にいたもう一体も走り抜け様に斬り裂き、血の華を咲かせる。
「これで終わりだ」
アルトの時が引き延ばされた。
色は褪せる。
音が消える。
そして世界を置き去りにする。
シェオル・ビーストたちが衝撃で浮き上がり、その身体中から次々に血が噴き出していく。
無数に血の華が咲き乱れ、そして最後の一閃とともに全てが地へと叩き落された。
真は戦場を駆け抜ける。
どちらの剣も強化され、蒼いオーラを纏っていた。
振るうごとにオーラが炎のように揺らぎ、花弁のように残滓が舞い散る。
「このまま突撃する!」
騎馬の機動力を生かし、縦横無尽に走り回りながら周囲のシェオル・ビーストへ斬りつけていく。
時が経つごとに徐々に殲滅速度が落ち、強化されたシェオル・ビーストを仕留められない時間が増えていく。
「悪いけど想定内だ。私たちを絶望させるには足りない」
真が星神器「カ・ディンギル」の力を解放する。
味方に強固な守りを、シェオル・ビーストには認識阻害を与える結界が張り巡らされた。
マテリアルを瞬間的に体に満たしたマリィアが、まるでフィルムの早回しのように薬莢を排出し次弾の装填を行う。
コッキングを行うと、天に向かって全弾を一気に乱射した。
放たれた無数の弾丸は低く垂れこめる暗雲を突き抜け、光を纏い雨となって地上へと降り注いだ。
範囲内にいるシェオル・ビーストたちが身体の自由を失った。
次弾を装填しつつマリィアは支援射撃を行う。
「そっちは無事!?」
『ええ、守ってくれますし、回復もありますので……!』
ポーションを飲み干すと、通信機越しにジェーンの返事が聞こえてきた。
数が増え始めてからが、カインにとっての腕の見せ所だ。
「やれるものなら……!」
ただ単純に純粋な殺意を叩きつけ、周囲のシェオル・ビーストたちを引き付ける。
魔導剣「カオスウィース」で牙をいなしつつ、カウンターで強烈な一撃を繰り出した。
続けて武神到来拳「富貴花」にマテリアルで出来た爪を形成し、シェオル・ビーストの口腔内に突き入れ噛ませると、数字の八を横に倒したような軌道を描いて魔導剣を薙ぎ払った。
「これで……!」
魔法剣化した魔導剣を手に、肉体を極限まで脱力させた状態から一気に踏み込む。
全身から悲鳴にも似た音を鳴り響かせながら、全身を鞭のように加速させ最速の突きを放った。
後に続いた炎が追撃を仕掛ける。
「歪虚め、負けるわけにはいかない!」
炎は防御を捨て聖罰刃「ターミナー・レイ」を大上段に構えた。
意識を攻撃のみ集中させて機先を制すると、大きく息を吸い込み、マテリアルを丹田から全身に巡らせ精神を研ぎ澄ませた。
「これが……俺の一刀だ!」
肉体を加速させシェオル・ビーストの懐に飛び込んだ炎が、鋭い振りで神速の斬り下ろしを放つ。
炎を中心にシェオル・ビーストが両断され、崩れ落ちた。
エステルはシールド「レヴェヨンサプレス」を掲げた。
非実体の牙は、赤黒い波動をまき散らしながら恨めしそうに透明なシールドの装甲を噛むと消滅する。
「育った個体が増えてきましたね……でも、負けません!」
残り少ない炎のオーラで注意を引き、複数からの怨嗟に満ちた非実体の牙を、シールドで全て叩き落とす。
星神器「レメゲトン」の力を解放した。
秘められた破滅と再生の力が天より降り注ぎ、シェオル・ビーストたちを打ち据え裁きを与え無に帰すとともに、暖かな癒しの光となった。
ミグは自作の怪しげな魔導機械を設置する。
「融合加速を図る事で機動術の出力を向上させるのじゃ。まあ、見ておれ」
同時展開された術式陣から氷柱の頭が覗く。
その術式陣と氷柱の量が加速度的に増えていった。
背後に無数ともいえる術式陣を従え、ミグは佇む。
「避難は終わったかの? ならば発射じゃ」
銀河のような煌めきとともに全ての氷柱が撃ち出され、大地ごとシェオル・ビーストたちを凍り付かせる。
「──砕氷せよ」
一斉に砕けた氷が、シェオル・ビーストをその破片でずたずたに引き裂いた。
旭が強化された生体マテリアルを傷口に集め、肉体を復元すると同時に、回復効果を周囲の味方に拡散した。
「最後まで攻め切るぜ!」
野生の力を引き出した旭が、目まぐるしく向きや速度を変え動き回りながら、乱気流の如く変化を続け烈風を思わせる凄まじい連撃を放つ。
倒しても倒しても次から次へと新手が押し寄せるのを、にぃと好戦的な笑みをむき出しにして見つめる。
「そうこうなくっちゃな!」
背中に纏った大きなミミズクの翼の幻影が、旭の闘気を現すかのように大きく左右に広がった。
「ここが正念場です。踏ん張りましょう……!」
無数の闇の刃を作り出したサクラは、それらを一斉に飛ばした。
飛翔する刃がシェオル・ビーストたちを串刺しにし、消滅と同時にその足を封じる。
マテリアルの力を引き出し精霊に祈りを捧げた。
サクラを中心に、柔らかい光が周囲の味方の傷を包み、癒していく。
「守りの奇跡を……ミレニアム……!」
光の障壁を付与し、絶対の守護を敷いた。
精霊に祈りを捧げていたツィスカは勝機が来たことを見逃さなかった。
「敵は射程を伸ばし過ぎたことが仇となって攻撃先を制限されました! 今です!」
凍傷によって、強化し過ぎることもなく満遍なく程よく削れている。
錬魔剣からマテリアルを変換したエネルギーが放たれ、光の斬撃となってシェオル・ビーストたちを薙ぎ払った。
「……完成しました。全員効果範囲から退避してください」
味方に注意を促し、クリスティアは錬金杖を振り下ろす。
少しずつ点ほどの大きさだった火球が大きくなっていき、同時に熱気で周囲の温度が上昇を始める。
大き過ぎる火球は目の錯覚を引き起こす。
シェオル・ビーストを呑み込み地面に直撃する瞬間など、止まっているようにさえ見えた。
茸雲が高々と上がり、轟音と衝撃が遅れて大地を震わせる。
煙が晴れた後には、範囲内のシェオル・ビーストは焼き尽くされてゆっくりと塵へ変わろうとしていた。
その屍を踏み越え、押し寄せる。
しかし焦らず、クリスティアは再び錬金杖を振り下ろす。
「実は、もう一つあったりするんですよ」
無慈悲に、巨大な重力波が全てを圧し潰した。
●戦闘終了
全ての襲撃を防ぎ切った。
「本当に良かった……無事でいてくれて……」
「ひりょさんたちのお陰です」
「ありがとうございました」
「皆さんがいたからこその結果ですよ」
安堵するひりょに冴子と美紅はお辞儀し、ジェーンが微笑んだ。
こうして、今回の任務は完了した。
鳳凰院ひりょ(ka3744)の姿を見て、リアルブルーで行動を共にしたことがある冴子と美紅は安堵するかのように笑みを浮かべた。
「ここからは俺達も力を貸す。皆で乗り切ろう!」
「回復して支えます! 思い切り戦ってください!」
「銃撃支援しますね」
美紅が岩の影から上半身を出してスナイパーライフルを構えるのを気配で感じ取る。
シェオル・ビーストを目の前にひりょは一歩も引かない。
「目の前に救える命があるのなら……俺は持てる全力を尽くそう」
上空に次々に魔法の矢が生成されていく。
「行けっ!」
ひりょの号令で矢が降り注ぎ、射抜いていった。
輝羽・零次(ka5974)は笑みを向けた。
「頼りにしてるぜ! 大変だろうが、頑張ろうな!」
その間も、機甲拳鎚「無窮なるミザル」がシェオル・ビーストに叩き込まれた。
後半を考え、スキルは温存した。
「歯がゆいが我慢の時だ」
牙を突き立てられても気迫で堪え、転化させた気功を機甲拳鎚に乗せて反撃する。
「ぬおおっ! 根性ぅ!!」
エステル・ソル(ka3983)に引き付けられているシェオル・ビーストたちに、届かないのでついでとばかりに次々攻撃されるも、耐え切った。
「やぁ諸君、息災のようだね! ボクは先日の大規模作戦で軽く死にかけたよ! いやぁ痛かった!」
心配そうな表情を浮かべた冴子と美紅が、霧島 百舌鳥(ka6287)の容体を確認して慌て出した。
「っていうか、傷が残っているじゃないですか! 今すぐ治しますから!」
「ポーション、誰かポーション貸してください!」
跪いて冴子は精霊に祈りを捧げ、美紅が呼びかける。
「まぁそんな事より今日も仲良く皆で生きて帰ろうじゃないか!」
百舌鳥はケラケラ笑った。
魔導銃「アクケルテ」を手に、フィロ(ka6966)は戦場に立つ。
「多少なりともジェーン様達のお力になれれば……」
肩と頬を銃のストックにしっかり当て、銃口がぶれないように構える。
「私の次に動くのはアルト様……攻撃目標を合わせることが重要ですね。狙いましょう」
炎のオーラを纏ったアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)が残像を吹き飛ばすほどの超加速でシェオル・ビーストに肉薄した。
マテリアルの残滓が炎の花びらのように舞い散る。
「数が多いというのは強みにはならないことを教えてやろう」
移動も、剣閃も、目に映らないまでの速さの極致。
噴き出した血が大地を彩り、溢れ出す。
「沈め……!」
木霊するかのように、再び目に見えない剣閃の嵐がシェオル・ビーストたちを襲い来る。
気付けば、試作法術刀「華焔」を手に駆け抜けたアルトの姿がシェオル・ビーストたちのただ中に現れていた。
続けて飛来した弾丸がシェオル・ビーストに追撃をかける。
フィロが放った銃の弾丸だ。
精神を統一し、正確な一撃を放つため呼吸を整えた鞍馬 真(ka5819)は、両手にそれぞれ持った魔導剣「カオスウィース」と響劇剣「オペレッタ」で連撃を仕掛けた。
「抜かれる訳にはいかないんだ。ここで食い止める」
左右連動した斬撃は円を描くように振るわれ、絶え間なくシェオル・ビーストを斬り刻む。
決められた動作をなぞったことで剣撃が加速する。
渾身の二刀一撃がオーラの斬撃となって放たれた。
「火力は出し惜しみしなくていい! 今の私たちが全力で攻撃すれば、簡単に倒せる!」
シェオル・ビースト一体を斬り捨て、真は叫んだ。
口元を歪めつつ、マリィア・バルデス(ka5848)は新式魔導銃「応報せよアルコル」を構えた。
「ちょっとこの数はきついものがあるわね……」
矢と銃弾が確実にシェオル・ビーストの一体を確実に傷つけていく。
「ジェーンたちは東……ああ、岩を障害物代わりにしてるのね」
彼女たちも不必要に強化させないため、狙いを絞って集中攻撃をしている。
「なら、私もそれに倣おうか!」
戦闘に意識を切り替えたマリィアが雄々しく叫び、引き金を引く。
発射した弾丸はマテリアルで操作しされ、変則的な弾道を描きながらジェーンたちやフィロ、アルト、真が攻撃した個体のみを次々に撃ち抜いていった。
削れた個体に止めを刺しつつ、カイン・A・A・マッコール(ka5336)は嘆息する。
「なんかもう数が多いなあ……一気に潰していけばいい話だけどな、なんかこう多いと嫌になるなあ」
岩陰に隠れぼやきつつも、冷静に照準を定め新式魔導銃「応報せよアルコル」の引き金を引いていく。
反動で身体が軋む。
(これが新型か……。だいぶマシだがそれでも撃ち続ければやはり肩が逝くな)
どの道、近接戦闘を始めるまでの繋ぎである。
(まあいい。銃身が焼け付くまでぶっ放してやるよ)
カインは目を細める。
通信機で南護 炎(ka6651)はジェーン、冴子、美紅の三人に声をかける。
「あまり無理はしないようにな」
『問題ありませんよ』
『やれる範囲で頑張ります!』
『大丈夫です。あくまで援護に動く予定ですから』
弓の弦の音や銃撃音とともに、三者三様の言葉が返ってきた。
冴子の祈りの言葉は聞こえない。
「向こうはまだ大丈夫そうだな」
傷付いたシェオル・ビーストへ、確実に止めを刺していった。
魔箒「Shooting Star」に乗り岩の上に降り立ったエステルは、体内のマテリアルを燃やし、炎のようなオーラを纏い続ける。
「未来のために、グラウンド・ゼロを守り抜いてみせるのです!」
現在は広範囲のシェオル・ビーストを引き付けることに成功し、維持している真っ最中だ。
各個体のうち傷付いている個体の位置を通信機で伝えるのも忘れない。
「小鳥さんお願いします」
星のきらめきを宿した小鳥が十羽現れ、流星のように空を翔けた。
それらは二発ずつシェオル・ビーストに叩き込まれ、それぞれ一回牙の拡張を発生させた。
「複数回攻撃には対応していないみたいです!」
即座に情報を共有する。
過大集積魔導機塊「イノーマス」を地に突き立て、それにもたれかかりつつミグ・ロマイヤー(ka0665)はシェオル・ビーストたちを見る。
「馬鹿みたいにわらわらと出てきおってからに、恨みつらみはどこか他所でやるがよい」
その他所に選ばれたのがこのグラウンド・ゼロなのだがそれはそれとして、しばらく様子見をしてシェオル・ビーストがどこに集中し出したかを見定めたミグは、背に虹色の翼を広げた。
ドラゴンブレスの如き光の奔流が撃ち出され、シェオル・ビーストたちを呑み込んでいく。
「ここが落ちたら後がないぞな。気張って往こうぞ」
シェオル・ビーストたちは、混乱状態に陥って次々同士討ちを始めた。
全身のマテリアルを滾らせた岩井崎 旭(ka0234)が、祖霊の力をマテリアルへと変えて身に纏った。
立ち昇る霊光が姿を巨大化させ、魔槍「スローター」に光が集中する。
「さあ、行くぜ!」
旭は馬足を生かしてシェオル・ビーストの列に突っ込み、周囲を薙ぎ払いながら大回転を行う。
巻き込まれたシェオル・ビーストたちが、回転する旭が振るう槍に巻き込まれた。
超高速の回転は竜巻を引き起こし、旭ごと上空にシェオル・ビーストたちを打ち上げる。
上昇した竜巻は途中でU字型にカーブを描き、逆さまになる。
荒れ狂う竜巻の中心にいるのは旭だ。
「落ちろぉ!」
急速落下した旭が、シェオル・ビーストたちを地面に叩きつけた。
通信機から流れるひりょや百舌鳥、ジェーンや冴子、美紅のやり取りを聞きながら、サクラ・エルフリード(ka2598)は光の精霊力を付与したルーンソード「アクシア」を一振りする。
「向こうも善戦しているようですね……」
剣身についたシェオル・ビーストの血を払い冷静に戦況を見据える。
スキルを全開で使える今は殲滅速度が増援速度を問題なく上回っているが、直に押されることが予想された。
「倒しても倒してもきりがない、と言いたくなりますが……きりはあるでしょうし頑張りましょうかね……」
当然無駄な攻撃は行わないように努めているが、限界はある。
「気を引き締めていきましょう……後半が正念場でしょうから……」
サクラから光の波動が放たれ、周囲のシェオル・ビーストを衝撃で地面に叩きつけた。
ツィスカ・V・アルトホーフェン(ka5835)の眼前には、攻め寄せるシェオル・ビーストたちの姿があった。
「シェオルが相手、ですか……これだけの物量ならば猫の手も借りたいと言いたい所ですが、彼らは彼らの戦いを続けている。我々も、相応の力を尽くして事に当たらねば」
通信機で、方々から寄せられる情報は大体回収できた。
「射線上から離れてください!」
味方に警告して避難したことを確認し、ツィスカは錬魔剣「ロイバルト」からマテリアルを引き出し、術式人を構築して前方に展開した。
無数の氷柱が出現し、シェオル・ビーストたちに向いた状態で静止する。
「全弾発射です!」
解き放たれた氷柱が砲声のような重低音とともに、シェオル・ビーストたちへ撃ち込まれた。
着弾の後、凍傷で怨嗟が発動する様子はなかった。
終わりが見えない戦いは、クリスティア・オルトワール(ka0131)の精神を疲弊させる。
「退くつもりもありません。もっと過酷な戦場に身を置いている方達のことを思えばこの程度……!」
魔法の矢を五本同時に解き放ち、それぞれ五体のシェオル・ビーストを射抜く。
高い集中力を保ち錬金杖「ヴァイザースタッフ」を掲げたクリスティアの頭上遥か遠くに、燃え盛る火球が三つ、人知れず生まれた。
火球がゆっくりと膨張を始める。
●後半戦
増え続けるシェオル・ビーストたちに対応が追い付かなくなってきた。
美紅にまで届き始める牙を、ひりょが防ぐ。
「させるか!」
周囲にマテリアルを漲らせ、ベクトルを捻じ曲げ自分に引き寄せた。
「援護します」
美紅が連続で銃撃し、その場に釘付けにする。
魔法剣化した試作怨讐刀「FAITH-KILLソウル」を手にひりょはその隙を突き踏み込み、振り被る。
「沈め!」
生命力を削りながら放たれた一撃が、手負いのシェオル・ビーストを頭から一刀の下に叩き斬った。
「私だって……!」
冴子の祈りがひりょの傷を癒す。
プレミアムエビフライを頬張った零次は戦闘のギアを上げていく。
「うおおおお!」
大地を強く踏みしめ、鋭く踏み込みシェオル・ビーストに肉薄した。
既にお互いが攻撃できるクロスレンジに入っている。
だが、射程を伸ばし過ぎたシェオル・ビーストはエステルに牙を向けるしかなく、目の前の零次に反応できない。
「やっちまったようだな!」
全身のマテリアルを練り、一気に放出して手負いのシェオル・ビーストたちを吹き飛ばした零次は、続けて新しい個体に目にも止まらぬ速さで連撃を打ち込んだ。
守りに徹し弾き飛ばして距離を取る百舌鳥は渾身の一撃を叩き込み、高速回転するドリルで貫いて時間を稼ぐ。
「これはもはや男としての意地に近いものがあるねぇ」
突如現れ冴子に襲い掛かろうとした非実体の牙を、ベクトルを操り引き寄せ庇った。
「頼りにしてもいいかい?」
「勿論です!」
「そのための力ですから」
言葉はもはや不要だ。
百舌鳥と足並みを揃えて並び立つ冴子と美紅が、その覚悟を示している。
「ならいつもの通りに頼むよ!」
上機嫌に大笑した百舌鳥の身体からマテリアルが爆発的に溢れ、呼応して冴子と美紅もマテリアルを放出した。
片手に杖、片手にオートマチックを構えた冴子が杖で二人を守る百舌鳥を回復しつつ、近付いてきたシェオル・ビーストにオートマチックを突き付け連射する。
銃声が重なり、美紅の弾丸がシェオル・ビーストを撃ち抜いた。
「あまり心配していないけれど、ボクに当てないでくれたまえよ?」
「大丈夫ですよ、お尻から殻が取れる程度にはしっかり鍛えましたから」
くすりと微笑んで、ジェーンが笑顔のままシェオル・ビーストを射抜いた。
フィロは主にアルトが攻撃した敵を狙って弾丸を撃ち込んでいく。
ダメージを受けていくことで徐々に強化されてきたシェオル・ビーストの牙が、徐々にフィロがいる位置にまで届き始めた。
「もはや、距離を取る意味はありませんね……」
練り上げた氣を体内に取り込んだフィロから、黄金のオーラが溢れ出す。
瞬間フィロの姿が消えた。
シェオル・ビーストを銃撃で吹き飛ばし、姿を現したフィロは星神器「角力」の力を解放した。
「少し……本気でいきますよ!」
怨念に満ちた牙の嵐を気迫で耐え、踏み込んだ足が大地を強く踏み締めた。
必殺の領域にまで高められたマテリアルを秘めた拳が強烈な光を放つ。
「破っ!」
無傷のシェオル・ビーストの腹に正拳突きが突き刺さり、その瞬間流し込まれたマテリアルが内側から大爆発を起こした。
振るわれるシェオル・ビーストたちの爪を避け、そこへアルトが突っ込んでくる。
「遅い!」
ナイフ「デフテロレプト」を刺してその柄を足場に空中に飛んだアルトが、法術刀をその脳天に振り下ろした。
返す刀でついでとばかりにその少し隣にいたもう一体も走り抜け様に斬り裂き、血の華を咲かせる。
「これで終わりだ」
アルトの時が引き延ばされた。
色は褪せる。
音が消える。
そして世界を置き去りにする。
シェオル・ビーストたちが衝撃で浮き上がり、その身体中から次々に血が噴き出していく。
無数に血の華が咲き乱れ、そして最後の一閃とともに全てが地へと叩き落された。
真は戦場を駆け抜ける。
どちらの剣も強化され、蒼いオーラを纏っていた。
振るうごとにオーラが炎のように揺らぎ、花弁のように残滓が舞い散る。
「このまま突撃する!」
騎馬の機動力を生かし、縦横無尽に走り回りながら周囲のシェオル・ビーストへ斬りつけていく。
時が経つごとに徐々に殲滅速度が落ち、強化されたシェオル・ビーストを仕留められない時間が増えていく。
「悪いけど想定内だ。私たちを絶望させるには足りない」
真が星神器「カ・ディンギル」の力を解放する。
味方に強固な守りを、シェオル・ビーストには認識阻害を与える結界が張り巡らされた。
マテリアルを瞬間的に体に満たしたマリィアが、まるでフィルムの早回しのように薬莢を排出し次弾の装填を行う。
コッキングを行うと、天に向かって全弾を一気に乱射した。
放たれた無数の弾丸は低く垂れこめる暗雲を突き抜け、光を纏い雨となって地上へと降り注いだ。
範囲内にいるシェオル・ビーストたちが身体の自由を失った。
次弾を装填しつつマリィアは支援射撃を行う。
「そっちは無事!?」
『ええ、守ってくれますし、回復もありますので……!』
ポーションを飲み干すと、通信機越しにジェーンの返事が聞こえてきた。
数が増え始めてからが、カインにとっての腕の見せ所だ。
「やれるものなら……!」
ただ単純に純粋な殺意を叩きつけ、周囲のシェオル・ビーストたちを引き付ける。
魔導剣「カオスウィース」で牙をいなしつつ、カウンターで強烈な一撃を繰り出した。
続けて武神到来拳「富貴花」にマテリアルで出来た爪を形成し、シェオル・ビーストの口腔内に突き入れ噛ませると、数字の八を横に倒したような軌道を描いて魔導剣を薙ぎ払った。
「これで……!」
魔法剣化した魔導剣を手に、肉体を極限まで脱力させた状態から一気に踏み込む。
全身から悲鳴にも似た音を鳴り響かせながら、全身を鞭のように加速させ最速の突きを放った。
後に続いた炎が追撃を仕掛ける。
「歪虚め、負けるわけにはいかない!」
炎は防御を捨て聖罰刃「ターミナー・レイ」を大上段に構えた。
意識を攻撃のみ集中させて機先を制すると、大きく息を吸い込み、マテリアルを丹田から全身に巡らせ精神を研ぎ澄ませた。
「これが……俺の一刀だ!」
肉体を加速させシェオル・ビーストの懐に飛び込んだ炎が、鋭い振りで神速の斬り下ろしを放つ。
炎を中心にシェオル・ビーストが両断され、崩れ落ちた。
エステルはシールド「レヴェヨンサプレス」を掲げた。
非実体の牙は、赤黒い波動をまき散らしながら恨めしそうに透明なシールドの装甲を噛むと消滅する。
「育った個体が増えてきましたね……でも、負けません!」
残り少ない炎のオーラで注意を引き、複数からの怨嗟に満ちた非実体の牙を、シールドで全て叩き落とす。
星神器「レメゲトン」の力を解放した。
秘められた破滅と再生の力が天より降り注ぎ、シェオル・ビーストたちを打ち据え裁きを与え無に帰すとともに、暖かな癒しの光となった。
ミグは自作の怪しげな魔導機械を設置する。
「融合加速を図る事で機動術の出力を向上させるのじゃ。まあ、見ておれ」
同時展開された術式陣から氷柱の頭が覗く。
その術式陣と氷柱の量が加速度的に増えていった。
背後に無数ともいえる術式陣を従え、ミグは佇む。
「避難は終わったかの? ならば発射じゃ」
銀河のような煌めきとともに全ての氷柱が撃ち出され、大地ごとシェオル・ビーストたちを凍り付かせる。
「──砕氷せよ」
一斉に砕けた氷が、シェオル・ビーストをその破片でずたずたに引き裂いた。
旭が強化された生体マテリアルを傷口に集め、肉体を復元すると同時に、回復効果を周囲の味方に拡散した。
「最後まで攻め切るぜ!」
野生の力を引き出した旭が、目まぐるしく向きや速度を変え動き回りながら、乱気流の如く変化を続け烈風を思わせる凄まじい連撃を放つ。
倒しても倒しても次から次へと新手が押し寄せるのを、にぃと好戦的な笑みをむき出しにして見つめる。
「そうこうなくっちゃな!」
背中に纏った大きなミミズクの翼の幻影が、旭の闘気を現すかのように大きく左右に広がった。
「ここが正念場です。踏ん張りましょう……!」
無数の闇の刃を作り出したサクラは、それらを一斉に飛ばした。
飛翔する刃がシェオル・ビーストたちを串刺しにし、消滅と同時にその足を封じる。
マテリアルの力を引き出し精霊に祈りを捧げた。
サクラを中心に、柔らかい光が周囲の味方の傷を包み、癒していく。
「守りの奇跡を……ミレニアム……!」
光の障壁を付与し、絶対の守護を敷いた。
精霊に祈りを捧げていたツィスカは勝機が来たことを見逃さなかった。
「敵は射程を伸ばし過ぎたことが仇となって攻撃先を制限されました! 今です!」
凍傷によって、強化し過ぎることもなく満遍なく程よく削れている。
錬魔剣からマテリアルを変換したエネルギーが放たれ、光の斬撃となってシェオル・ビーストたちを薙ぎ払った。
「……完成しました。全員効果範囲から退避してください」
味方に注意を促し、クリスティアは錬金杖を振り下ろす。
少しずつ点ほどの大きさだった火球が大きくなっていき、同時に熱気で周囲の温度が上昇を始める。
大き過ぎる火球は目の錯覚を引き起こす。
シェオル・ビーストを呑み込み地面に直撃する瞬間など、止まっているようにさえ見えた。
茸雲が高々と上がり、轟音と衝撃が遅れて大地を震わせる。
煙が晴れた後には、範囲内のシェオル・ビーストは焼き尽くされてゆっくりと塵へ変わろうとしていた。
その屍を踏み越え、押し寄せる。
しかし焦らず、クリスティアは再び錬金杖を振り下ろす。
「実は、もう一つあったりするんですよ」
無慈悲に、巨大な重力波が全てを圧し潰した。
●戦闘終了
全ての襲撃を防ぎ切った。
「本当に良かった……無事でいてくれて……」
「ひりょさんたちのお陰です」
「ありがとうございました」
「皆さんがいたからこその結果ですよ」
安堵するひりょに冴子と美紅はお辞儀し、ジェーンが微笑んだ。
こうして、今回の任務は完了した。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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【相談】防衛作戦、作戦本部 エステル・ソル(ka3983) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2019/07/21 17:30:39 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/07/18 20:33:34 |