ゲスト
(ka0000)
【血断】龍とイタチの涙
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/07/25 15:00
- 完成日
- 2019/07/31 20:49
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●気づき
ラカ・ベルフは青龍も前線にいる状況なため、邪神の体内に突入することの躊躇はなかった。
自分が見たこともない世界が広がる。
この場所の話を聞いたとき、グラウンド・ゼロで見た異界のことを思い出していた。
ラカはその世界の悲しみを消したいと考え行動した。ループすることは辛いということを感じ、断ち切れるように行動したつもりだった。
ループする世界の記憶を持っていたモノは、ラカ達を疑った。最初は希望ともとらえたようだった。
結局は敵となって襲い掛かってきた。
その世界は無に返り、苦しみは解放されたと考えていたのだった。
最初は理由が分からず流され、敵を倒しきれずループからはじかれたようだった。
二度目は、ハンターとともにループしたものをたたき切ったはずだった。実際、目にした世界の消え方は違った。
「実は世界の途切れ方が違ったというだけで……邪神の中に戻っただけだったのでしょうか?」
その問いに答えられる人はいなかった。
記憶があるけれどもその世界を管理していたかはわからない。たまたま、タイムアップで自分たちの抜け方が違っただけなのかもしれない。
それならば、あの小さな生き物たちは苦しんでいるかもしれない。
「……確かめるなどできないですよね」
もし、あのフェレットに似た小さな生き物たちに会ったとして、その世界が消えるかもしれないのに手伝ってくれるのだろうかという疑問がわく。
「……それでも、話せるならば……」
しかし、いくつもの世界が内包されたそこで、目の前にその世界が偶然出てくることなどないだろう。
「会っても……」
ラカ達を覚えていれば、敵とみなして襲ってくるかもしれないのだ。ラカは色々と考え歩いていた。答えを求めるように青龍の名を出したときそれがおこった。
「……青龍さま……きゃあああああああああああああああああ」
ラカは何か踏み抜いたように落下に見舞われたのだった。
●諦め
その世界で残っていたのは森のイタチの中でもフェレットたちだけだった。それも非常に少ない数であり、歪虚と戦うための力はなかった。
フェレットたちは困惑していた。
敵の動きが変わったのだった。
いや、敵も困惑しているようだった。
フェレットたちは集落だったところの洞穴に作った隠れ家にいた。
ループする世界を知っていた白い毛並みを持つ住民のマッシュは首をかしげる。
本当ならば自分たちのいたところはなぎ倒されて消えているはずだった。
その終わりが来ない。来ないなら来ないでいいけれども、どうしていいかわからない時間が過ぎる。
「……何があったのでち?」
マッシュは隠れ家の扉をうっすら開けて、外を見た。
大きな黒い影が一つ歩いて行くのが見えた。それは、ただ、歩き回っているようにも思えるが、状況を見るには外に出ないとならないだろう。
仲間を守って戦ってくれるエンジェル隊のモノはもういない。マッシュが出て行ってしまうと、残されたフェレットたちの恐怖はどれだけだろうかと思う。
(あの、黒いのは、以前見た記憶があるでち……でも、思い出すと……怖いでち……本当に世界が終わってしまう……ような気がするのでち! 僕たちはいなくなる? 僕たちの世界は消える? 怖いばかりならば、終わった方がいいのでち? でも、また、みんなと楽しく暮らしたでち。ラッコやオコジョや……)
マッシュは消えていった種族を思い出していた。
その黒い影はマッシュたちの隠れ家の前で止まった。
それは不意に遠吠えをすると跳んだ。
マッシュは慌てて扉を閉める。震える仲間と身を寄せ合った。
(戦わないといけないでち? 何と? どうやって?)
ドスン。
何か落ちる音がした。
「何か来たでち?」
隠れるフェレットたちは息を殺し聞き耳を立てる。
「ここは以前来た、あの世界でしょうか? あの歪虚は木偶? 皆さん!」
ヒトの声がした。その上で戦う音がかすかに届く。
マッシュはその声に記憶があった。
ただ、それは味方か敵かわからない。
しかし、マッシュにはそれが悪いものとは思えないものは感じていた。
敵対したマッシュに対し、そのヒトたちは優しかったし、マッシュの仲間を守ろうとしてくれた。
(もし、僕の考えが間違っていても、またループしたときにわかる……でも、またループするでち? それでいいのでち? でも……でも)
戦うような音が響いていた。暫くすると静かになる。ヒトの声はするが。
「マッシュ、どうしよう」
「怖いでち」
マッシュも怖かった。全てが変わっていくのだから怖かった。
しかし、このままではもっと怖い。
「僕が見てくるでち。だから、ここで待っているでち」
「う、うん……早く帰ってきてほしいでち」
皆震えながらうなずいた。
マッシュは恐る恐る扉を開けて外に出た。物陰に隠れながら、声の元を探した。
そこにはあのヒトたちがいた。青い服には見覚えがあった。
「……マッシュさん……」
青いヒトはしゃがむ。
『……どうして? どうしてでち! 何があったのでち!』
まだ安全かわからない。だから、マッシュは話しかけた。
遠くで、黒い大きなモノの遠吠えが聞こえたため、マッシュは身を震わせた。
『助けてくれるでちか?』
「助けになるかわかりませんが、助けたいのです。あなたの救いになるか……この世界は……」
ラカは正直に話をしようとした。もし、協力を求めるとしても、マッシュが望む世界が消える可能性もある。
だからこそ、本当の話をしないといけないのだった。それが、マッシュたちの気持ちに寄り添うことにつながるのだと信じて。
ラカ・ベルフは青龍も前線にいる状況なため、邪神の体内に突入することの躊躇はなかった。
自分が見たこともない世界が広がる。
この場所の話を聞いたとき、グラウンド・ゼロで見た異界のことを思い出していた。
ラカはその世界の悲しみを消したいと考え行動した。ループすることは辛いということを感じ、断ち切れるように行動したつもりだった。
ループする世界の記憶を持っていたモノは、ラカ達を疑った。最初は希望ともとらえたようだった。
結局は敵となって襲い掛かってきた。
その世界は無に返り、苦しみは解放されたと考えていたのだった。
最初は理由が分からず流され、敵を倒しきれずループからはじかれたようだった。
二度目は、ハンターとともにループしたものをたたき切ったはずだった。実際、目にした世界の消え方は違った。
「実は世界の途切れ方が違ったというだけで……邪神の中に戻っただけだったのでしょうか?」
その問いに答えられる人はいなかった。
記憶があるけれどもその世界を管理していたかはわからない。たまたま、タイムアップで自分たちの抜け方が違っただけなのかもしれない。
それならば、あの小さな生き物たちは苦しんでいるかもしれない。
「……確かめるなどできないですよね」
もし、あのフェレットに似た小さな生き物たちに会ったとして、その世界が消えるかもしれないのに手伝ってくれるのだろうかという疑問がわく。
「……それでも、話せるならば……」
しかし、いくつもの世界が内包されたそこで、目の前にその世界が偶然出てくることなどないだろう。
「会っても……」
ラカ達を覚えていれば、敵とみなして襲ってくるかもしれないのだ。ラカは色々と考え歩いていた。答えを求めるように青龍の名を出したときそれがおこった。
「……青龍さま……きゃあああああああああああああああああ」
ラカは何か踏み抜いたように落下に見舞われたのだった。
●諦め
その世界で残っていたのは森のイタチの中でもフェレットたちだけだった。それも非常に少ない数であり、歪虚と戦うための力はなかった。
フェレットたちは困惑していた。
敵の動きが変わったのだった。
いや、敵も困惑しているようだった。
フェレットたちは集落だったところの洞穴に作った隠れ家にいた。
ループする世界を知っていた白い毛並みを持つ住民のマッシュは首をかしげる。
本当ならば自分たちのいたところはなぎ倒されて消えているはずだった。
その終わりが来ない。来ないなら来ないでいいけれども、どうしていいかわからない時間が過ぎる。
「……何があったのでち?」
マッシュは隠れ家の扉をうっすら開けて、外を見た。
大きな黒い影が一つ歩いて行くのが見えた。それは、ただ、歩き回っているようにも思えるが、状況を見るには外に出ないとならないだろう。
仲間を守って戦ってくれるエンジェル隊のモノはもういない。マッシュが出て行ってしまうと、残されたフェレットたちの恐怖はどれだけだろうかと思う。
(あの、黒いのは、以前見た記憶があるでち……でも、思い出すと……怖いでち……本当に世界が終わってしまう……ような気がするのでち! 僕たちはいなくなる? 僕たちの世界は消える? 怖いばかりならば、終わった方がいいのでち? でも、また、みんなと楽しく暮らしたでち。ラッコやオコジョや……)
マッシュは消えていった種族を思い出していた。
その黒い影はマッシュたちの隠れ家の前で止まった。
それは不意に遠吠えをすると跳んだ。
マッシュは慌てて扉を閉める。震える仲間と身を寄せ合った。
(戦わないといけないでち? 何と? どうやって?)
ドスン。
何か落ちる音がした。
「何か来たでち?」
隠れるフェレットたちは息を殺し聞き耳を立てる。
「ここは以前来た、あの世界でしょうか? あの歪虚は木偶? 皆さん!」
ヒトの声がした。その上で戦う音がかすかに届く。
マッシュはその声に記憶があった。
ただ、それは味方か敵かわからない。
しかし、マッシュにはそれが悪いものとは思えないものは感じていた。
敵対したマッシュに対し、そのヒトたちは優しかったし、マッシュの仲間を守ろうとしてくれた。
(もし、僕の考えが間違っていても、またループしたときにわかる……でも、またループするでち? それでいいのでち? でも……でも)
戦うような音が響いていた。暫くすると静かになる。ヒトの声はするが。
「マッシュ、どうしよう」
「怖いでち」
マッシュも怖かった。全てが変わっていくのだから怖かった。
しかし、このままではもっと怖い。
「僕が見てくるでち。だから、ここで待っているでち」
「う、うん……早く帰ってきてほしいでち」
皆震えながらうなずいた。
マッシュは恐る恐る扉を開けて外に出た。物陰に隠れながら、声の元を探した。
そこにはあのヒトたちがいた。青い服には見覚えがあった。
「……マッシュさん……」
青いヒトはしゃがむ。
『……どうして? どうしてでち! 何があったのでち!』
まだ安全かわからない。だから、マッシュは話しかけた。
遠くで、黒い大きなモノの遠吠えが聞こえたため、マッシュは身を震わせた。
『助けてくれるでちか?』
「助けになるかわかりませんが、助けたいのです。あなたの救いになるか……この世界は……」
ラカは正直に話をしようとした。もし、協力を求めるとしても、マッシュが望む世界が消える可能性もある。
だからこそ、本当の話をしないといけないのだった。それが、マッシュたちの気持ちに寄り添うことにつながるのだと信じて。
リプレイ本文
●信じたくはない!
ヴォーイ・スマシェストヴィエ(ka1613)は邪神の中に突入して、気づいたらここにいたという状況を把握する。
「つまり邪神の中にある、無数の世界の一つってことじゃん」
とりあえず、ラカ・ベルフ(kz0240)の近くに向かった。
メイム(ka2290)はマッシュを以前見ているため、異界に来ているということを理解した。
「あたしのことも覚えてる?」
マッシュはメイムのツインテールを見てそわそわしていた。
「マッシュたちの状況の説明をするよ? マッシュも今いる仲間たちも、時間経過で現れる歪虚も、滅んでいる状態と生き残っている状態を併せ持っているの」
メイムの説明中に星野 ハナ(ka5852)はぺったり座り、その上で身をかがめる。目の前にいるマッシュに威圧を感じさせないようにという対応だ。
「そうなんですぅ。自分だけループの記憶がある理由を知っていらっしゃいますぅ?」
ハナに問われマッシュは首を横に振る。
「滅びゆく世界を残したいという願いが始まりだったんですけどぉ、ゆがんで世界を滅ぼし、その過程を記録するぅ、その繰り返しにその世界の誰かを核にするって形になっちゃんですぅ」
マッシュは目を見開いた。
木綿花(ka6927)は邪神と関わるということで異界については報告書をあらかじめ目を通してたため、ここがどういう所かは理解した。ハナの横に座り、マッシュの反応を待った。彼女の目には、マッシュは突然のことで動揺しているようだ。だからこそ、見守る。
ツィスカ・V・アルトホーフェン(ka5835)は面識がないため、仲間を見守る。ループが止まっているとはいえ、何も起こらない保証はない。この世界の生き物であるマッシュが関わったことで、状況を動かす可能性があるため、警戒する。
神城・錬(ka3822)もその生き物とラカと幾人かは面識があると理解し、周囲を警戒しつつ状況をうかがう。
自分たちが選んで進む道だと、この世界は消える可能性が高い。ループすることの善し悪しはともかく。
(複雑な様子だが、やることをやるだけだ)
だから、背を向け、外を見張った。想いを守るために。
●初めの一歩
ハンターたちの説明を聞いて、マッシュはしょげた。
「私たちもまだ手探りでわからないことだらけですけどぉ、立ち向かわなければ世界が滅ぶ日まで死に続けるだけの苦しさをマッシュさんが一人で味わい続けることになっちゃいますぅ」
「そうです……。私たちの世界をループする世界にしようとしているから、一緒に戦ってくれる仲間を探しています。邪神は力を得るために、各世界を絶望で満たすために、辛い記憶をループさせているのです」
ハナと木綿花にの言葉にマッシュは小さくうなずく。
「そうですね……邪神の提示する恭順は、取り込まれたもの達の思い出と言える風景の数々を悠久の時とともに過ごすもの……それは、別の何者かにとっての、苦痛と地獄といえる出来事を延々と繰り返すこともありうる話です……」
ツィスカは慎重に言葉を選んで告げる。面識がないため、マッシュの気持ちや辛苦に寄りそうにも熱量も不足していると考えていた。そのため、気持ちを想像し、できる限りクッションとなろうと試みる。
マッシュの思いも邪神への抵抗につながるのだから。
「……前回あたしたちは来た時、その原理が分かってなくて、マッシュに苦しい思いを続けさせることになってしまったんだよね……ごめんなさい」
メイムは頭を下げた。マッシュは首を横に振った。
『違うでち……僕たちが弱いのがいけなかったんでち……』
「あたしたちだって、よく知らないで世界が終わっていたかもしれない。たまたまあたしたちはこうして異界を見ることができたんだよ。現在、ここに来たあたしたちだけでなく、他のハンターが記憶装置をどうにかしようと頑張っているの」
メイムの言葉にハンターはうなずく。
マッシュはハンターを見つめる。
「……お前にはやりたいことがあるか?」
錬が問う。
『もっと、みんなと遊びたいでち』
マッシュは明確に言った。
「なら……」
錬が言葉を紡ごうとしたとき、異変が起こる。
ぐぅおおおおおおう。
空気を揺るがす音が響き、聞いたモノは背筋が凍る気ようだった。
隠れ家の方から悲鳴が上がる。
「マッシュの仲間がいるんだろ? なら、守るさ」
マッシュが気にしているため、ヴォーイが頼もしげに言う。
説明は終わっていない。しかし、何か近づく気配があり、方向はおおむね感じ取れる。
「少しでも時間は稼ぎます!」
ツィスカは【ディヴァインウィル】の射程を確保するため移動する。状況に応じて戦える準備は整える。
「……お前も立派にやりたいことがあるな。自分もある、鍛冶屋だ。最上の刀を自身の手でうち、それを認めた者に手渡す……友に使ってもらったことはあるが、まだまだだ」
錬は静かにマッシュに語りながらも、戦うために意識を切り替えていく。ひとまず話は後だと感じた為、仲間に託し、ツィスカと並ぶ。乱入者により話が途切れることはマッシュのためにも、自分たちのためにもならない。
「どうなるかわからない。もし、生まれ変われるなら、俺らの世界に生まれ変わらないか?」
ヴォーイはポケットからフェレットを取り出す。
「ほら、俺らの世界にもマッシュたちに似たのが住んでるし、なじみやすいと思う。トラブルもあるかもしれないが、相談してくれれば助力を惜しまないじゃん!」
マッシュは目の前にいるフェレットを見て驚く。
『変でち』
マッシュは苦笑する。
「今、本当、どうなるかわからない状況ですぅ。どうせループするなら最盛期の一番楽しい時期がいいですしぃ、きちんと精一杯生きて死ねる世界の方が良いじゃないですかぁ」
「マッシュ様、何が不安ですか? ループを脱することが怖いですか?」
ハナの言葉に続き、木綿花が優しく問いかける。
『……色々怖かったでち』
いろいろな物が歪虚に取り込まれ、世界が終わると思っていた。気づいたらループするようになっていた。何度も何度もやり直して、いつか皆生きている未来が来ると信じていた。
「そうですよねぇ、よりよく生きて死ぬためにぃ、設定を変えるよう一緒に神に立ち向かいに行きませんかぁ」
「ここで引き戻されずに時が進めば違う未来があるかもしれません。いろいろ混ざった世界になるかもしれません。今の仲間と一緒に移住できる世界かもしれません……私たちにもわかりません」
ハナと木綿花は事実を告げる。
「マッシュが手伝ってくれるなら、『世界』の外に出て、ループしない結果にたどり着けるよ。だから、手伝ってくれないかなー?」
メイムが問う。
『大きいのに、僕たちをいじめないでち?』
ハンターたちはうなずく。
「マッシュさんは隠れていてください」
『待ってるでち。信じるでち』
ハナの言葉の後、迷っていたマッシュは走り出す。小さな入り口に入り、戸を閉めた。
障壁にはばまれたその生き物は、その場で後ろ足で立つと、前足を地面にたたきつけるように下した。
激しい地響きがして、揺れる地面がツィスカと錬を襲った。
「この程度はどうってことありません」
ツィスカは機導を用い【アイシクルコフィン】を放つ。
「大きいだけではないということだな」
錬は態勢を整え、次の攻撃に備える。マッシュとの会話から、自問自答がよぎっていたのを振り捨てる。
(満足するまで刀鍛冶として鍛える。悔しい、できるなら、あがいてあがいて満足とか、不満と可、思う暇なく全力で生きたい)
だからこそ、この敵はうち倒し、前に進むのだ。
錬に大きな黒い獣は、前足の爪で薙ぎ払うが、戦う体勢を取り戻した錬は回避する。
「こっからはあたしたちも加わるよ!」
メイムは声を掛けつつ、ヴォーイの行動に合わせて行動するつもりだ。
「……リロードすれば、五色は64連打なのですぅ」
ハナはそういいながら、敵が入る範囲を定め【五色光符陣】を放った。
ツィスカは自分と錬の状況を考え、まだ回復魔法は不要と考えた。【アイシクルコフィン】で攻撃をしておく。
大きな敵であるし、できる限り相手の体力を削っていきたいところだった。
「こいつが、マッシュの不安や恐怖と関わり、未来に進む勇気を奪う。なら、倒すじゃん」
ヴォーイは【現界せしもの】を用いると移動し、如意金箍棒で獣を殴る。祖霊の姿を借りたヴォーイは通常の倍のサイズはある。
木綿花は敵の大きさと敵の行動は仲間に不利なステータス異常を与える可能性があると考えた。まず仲間の気持ちを鼓舞するように【アイデアル・ソング】を始め、【多重性強化】を用いた。
敵に突撃しそうだったラカは、ハンターが前にいる為、おとなしく後方から【ヒーリングスフィア】を使う。
獣の傷はふさがる。
ハンターが与える傷は増えるのだが、手を緩めることがあると、状況が停滞するということは感じ取れる。
獣は前足を高く上げると、地面にたたきつける。それにより、地面が激しく揺れ、範囲内にいるハンターは行動が制限される可能性がある。それに対しハナは【呪詛返し】で跳ねのける。すぐに符を補充する。
ヴォーイは【ハントムハンド】を使い、獣の足止めをしようと試みた。揺れによる移動ができない状況は避けたいが、マッシュたちがいるところに行かせないということも重要だった。そのあとに、如意金箍棒で攻撃をする。
手にからめとられたところに、錬が【アクセルオーバー】ののち【アサルトディスタンス】、【アフターバーナー】と行動を重ねる。メイムは【レセプションアーク】で自身についた不利なステータスを敵に跳ね返す。回復魔法はラカにゆだねておけるため、ツィスカは【アイシクルコフィン】を放つ。また、木綿花は歌舞を維持しながら攻撃をする。
攻撃は幾度かやり取りがされ、敵の癖もわかると同時に、ハンターたちの連携は確実に獣を追い込んだ。
あと一歩と言うところまできた。
うぉおおおおおん。
獣が大きく鳴いた。その直後、その体から負のマテリアルが噴き出す。マテリアルは炎に変わり、広まる。
ハンターたちは一気に巻き込まれた。
「ちょっと、聞いてないよー」
「以前と似た状況ですわ」
メイムがうめいたところにラカが告げる。メイムは「そうだっけ?」と言いながら、【ファミリアアタック】を放った。早く敵を倒さないと、自分たちが消えかねない。
「これを倒さないと私だけでなく、全員が危険だ」
錬は倒すことが重要だと、アイテムの持つ力も引き出し、できるだけスキルを重ね、多重に攻撃をしていく。近づけばその分炎は熱く感じる。ただ、このままじっとしてれば、燃やされるだけだ。傷を治してくれる仲間はいるのだ、難しく考え戦うことはない。確実に、生きる道を探して進めるのだ。
「シェオル型の獣はブッコロですぅ」
「……こうしている間に、敵の傷がふさがっていきます」
ハナは言うや否や符を放ち、ツィスカは機導術を用いた。
「この先に行かれたら、蒸し焼きになってしまうし」
ヴォーイは隠れているフェレトだけでなく、自身のポケットにいるペットのことを気にした。再度【現界せしもの】を用いると、【キント雲】で宙から獣に対して攻撃を仕掛ける。
「ラカ様、回復に専念してください!」
木綿花は【アイシクルコフィン】を味方の位置を見て、放つ。
ラカは【ヒーリングスフィア】を掛ける。それでも、敵の炎によるダメージは大きい。
『皆、ごめんなさいでちー』
小さいけれど大きな声が背後から聞こえる。マッシュたちの泣き出しそうな声だ。
謝罪は違う、と誰もが思う。それを告げるためにも、獣の攻撃を防いた。再度、攻撃を仕掛ける。
獣の怒りとともにあふれた炎は、それ自体が消えれば終わる。
そして、獣は消えた。
小さな生き物たちは、隠れていた所の前で泣いていた。
木綿花は用心していた。
もし、先ほどの敵が管理者でないことがあれば、まだ危険は去っていない。マッシュが立ち去ろうと知れば、襲い掛かるだろう。幸い、異様なマテリアルの動きは感じられなかった。
●前に進もう!
『出かけるでち』
マッシュは仲間たちに話した。世界がすでに終わっていること、ループして今があるということ。
最初、仲間たちは信じなかった。しかし、ハンターたちを見て、何か考えているようだった。外の世界があるということはこれだけ違う外見のモノがいるのだから、理解できる。
突然、一匹が泣きだす。
『カワウソさんたちと川を流れてみたかったでち』
『あたしもラッコさんと海で浮かんでみたかったでちー』
連鎖するように泣き始める。
「歪虚化している状態から、生物に返る方法はないんだよね……」
メイムは静かに言う。
「でもね、この世界の外には、明るい空と暖かな風が吹き抜ける、広い草原も待っているよ。さあ、みんなの想いと共に踏み出そうー」
メイムは明るい顔で言う。
フェレットたちは自分たちが歪虚だという認識はなかった。敵は歪虚であり、自分たちは生きていると信じていた。それがすべて変わった。
ループする世界についてマッシュ以外に気づいていた個体がいたかは、もう分からない。
「まだ何もわからないのです」
「そうだぜ。だから、まず、今、楽しめるよう、行こうじゃん?」
木綿花とヴォーイが告げた。
『みんな……』
マッシュはしょんぼりする。皆の不安はマッシュの不安でもあった。
真実を伝えないほうが幸せだったのかもしれないとマッシュは思った。でも、未来が見えないなら、今いる仲間と少しでも長くいたかった。
「皆さんの未来を私は保証できません。でも、今、あなた方の思いは苦しみを繰り返すことを終わらせる力となります」
ツィスカが正直に諭すように言う。
「マッシュさん、一緒に頑張りましょうぉ?」
ハナはできるだけ小さくなって告げる。
『みんなは僕の帰りを待っていてほしいでち』
『マッシュ……』
『一緒に行っても……どうすればいいでち?』
「皆さんも行けるか試しますか?」
ラカに言われ、マッシュ達は話し合いをする。そして、答えは出たらしく、マッシュだけが出かける準備をしていた。
「決まったみたいだな」
錬は口元を一文字に結ぶ。この決定がどうなるか分からない。また縁があればそれは面白いだろう。
『行くでち』
『待っているでちー』
『掃除をして待っているでちー』
『マッシュが戻る頃には、川も戻っているでち』
見送りの言葉はどこか湿っていた。
マッシュを送り出すモノたちの姿が見えなくなり、一行は元いたところに戻った。
マッシュは見知らぬ世界に驚きながらも、前に進むためにしっかりと確認を行った。また、仲間に会うために。
ヴォーイ・スマシェストヴィエ(ka1613)は邪神の中に突入して、気づいたらここにいたという状況を把握する。
「つまり邪神の中にある、無数の世界の一つってことじゃん」
とりあえず、ラカ・ベルフ(kz0240)の近くに向かった。
メイム(ka2290)はマッシュを以前見ているため、異界に来ているということを理解した。
「あたしのことも覚えてる?」
マッシュはメイムのツインテールを見てそわそわしていた。
「マッシュたちの状況の説明をするよ? マッシュも今いる仲間たちも、時間経過で現れる歪虚も、滅んでいる状態と生き残っている状態を併せ持っているの」
メイムの説明中に星野 ハナ(ka5852)はぺったり座り、その上で身をかがめる。目の前にいるマッシュに威圧を感じさせないようにという対応だ。
「そうなんですぅ。自分だけループの記憶がある理由を知っていらっしゃいますぅ?」
ハナに問われマッシュは首を横に振る。
「滅びゆく世界を残したいという願いが始まりだったんですけどぉ、ゆがんで世界を滅ぼし、その過程を記録するぅ、その繰り返しにその世界の誰かを核にするって形になっちゃんですぅ」
マッシュは目を見開いた。
木綿花(ka6927)は邪神と関わるということで異界については報告書をあらかじめ目を通してたため、ここがどういう所かは理解した。ハナの横に座り、マッシュの反応を待った。彼女の目には、マッシュは突然のことで動揺しているようだ。だからこそ、見守る。
ツィスカ・V・アルトホーフェン(ka5835)は面識がないため、仲間を見守る。ループが止まっているとはいえ、何も起こらない保証はない。この世界の生き物であるマッシュが関わったことで、状況を動かす可能性があるため、警戒する。
神城・錬(ka3822)もその生き物とラカと幾人かは面識があると理解し、周囲を警戒しつつ状況をうかがう。
自分たちが選んで進む道だと、この世界は消える可能性が高い。ループすることの善し悪しはともかく。
(複雑な様子だが、やることをやるだけだ)
だから、背を向け、外を見張った。想いを守るために。
●初めの一歩
ハンターたちの説明を聞いて、マッシュはしょげた。
「私たちもまだ手探りでわからないことだらけですけどぉ、立ち向かわなければ世界が滅ぶ日まで死に続けるだけの苦しさをマッシュさんが一人で味わい続けることになっちゃいますぅ」
「そうです……。私たちの世界をループする世界にしようとしているから、一緒に戦ってくれる仲間を探しています。邪神は力を得るために、各世界を絶望で満たすために、辛い記憶をループさせているのです」
ハナと木綿花にの言葉にマッシュは小さくうなずく。
「そうですね……邪神の提示する恭順は、取り込まれたもの達の思い出と言える風景の数々を悠久の時とともに過ごすもの……それは、別の何者かにとっての、苦痛と地獄といえる出来事を延々と繰り返すこともありうる話です……」
ツィスカは慎重に言葉を選んで告げる。面識がないため、マッシュの気持ちや辛苦に寄りそうにも熱量も不足していると考えていた。そのため、気持ちを想像し、できる限りクッションとなろうと試みる。
マッシュの思いも邪神への抵抗につながるのだから。
「……前回あたしたちは来た時、その原理が分かってなくて、マッシュに苦しい思いを続けさせることになってしまったんだよね……ごめんなさい」
メイムは頭を下げた。マッシュは首を横に振った。
『違うでち……僕たちが弱いのがいけなかったんでち……』
「あたしたちだって、よく知らないで世界が終わっていたかもしれない。たまたまあたしたちはこうして異界を見ることができたんだよ。現在、ここに来たあたしたちだけでなく、他のハンターが記憶装置をどうにかしようと頑張っているの」
メイムの言葉にハンターはうなずく。
マッシュはハンターを見つめる。
「……お前にはやりたいことがあるか?」
錬が問う。
『もっと、みんなと遊びたいでち』
マッシュは明確に言った。
「なら……」
錬が言葉を紡ごうとしたとき、異変が起こる。
ぐぅおおおおおおう。
空気を揺るがす音が響き、聞いたモノは背筋が凍る気ようだった。
隠れ家の方から悲鳴が上がる。
「マッシュの仲間がいるんだろ? なら、守るさ」
マッシュが気にしているため、ヴォーイが頼もしげに言う。
説明は終わっていない。しかし、何か近づく気配があり、方向はおおむね感じ取れる。
「少しでも時間は稼ぎます!」
ツィスカは【ディヴァインウィル】の射程を確保するため移動する。状況に応じて戦える準備は整える。
「……お前も立派にやりたいことがあるな。自分もある、鍛冶屋だ。最上の刀を自身の手でうち、それを認めた者に手渡す……友に使ってもらったことはあるが、まだまだだ」
錬は静かにマッシュに語りながらも、戦うために意識を切り替えていく。ひとまず話は後だと感じた為、仲間に託し、ツィスカと並ぶ。乱入者により話が途切れることはマッシュのためにも、自分たちのためにもならない。
「どうなるかわからない。もし、生まれ変われるなら、俺らの世界に生まれ変わらないか?」
ヴォーイはポケットからフェレットを取り出す。
「ほら、俺らの世界にもマッシュたちに似たのが住んでるし、なじみやすいと思う。トラブルもあるかもしれないが、相談してくれれば助力を惜しまないじゃん!」
マッシュは目の前にいるフェレットを見て驚く。
『変でち』
マッシュは苦笑する。
「今、本当、どうなるかわからない状況ですぅ。どうせループするなら最盛期の一番楽しい時期がいいですしぃ、きちんと精一杯生きて死ねる世界の方が良いじゃないですかぁ」
「マッシュ様、何が不安ですか? ループを脱することが怖いですか?」
ハナの言葉に続き、木綿花が優しく問いかける。
『……色々怖かったでち』
いろいろな物が歪虚に取り込まれ、世界が終わると思っていた。気づいたらループするようになっていた。何度も何度もやり直して、いつか皆生きている未来が来ると信じていた。
「そうですよねぇ、よりよく生きて死ぬためにぃ、設定を変えるよう一緒に神に立ち向かいに行きませんかぁ」
「ここで引き戻されずに時が進めば違う未来があるかもしれません。いろいろ混ざった世界になるかもしれません。今の仲間と一緒に移住できる世界かもしれません……私たちにもわかりません」
ハナと木綿花は事実を告げる。
「マッシュが手伝ってくれるなら、『世界』の外に出て、ループしない結果にたどり着けるよ。だから、手伝ってくれないかなー?」
メイムが問う。
『大きいのに、僕たちをいじめないでち?』
ハンターたちはうなずく。
「マッシュさんは隠れていてください」
『待ってるでち。信じるでち』
ハナの言葉の後、迷っていたマッシュは走り出す。小さな入り口に入り、戸を閉めた。
障壁にはばまれたその生き物は、その場で後ろ足で立つと、前足を地面にたたきつけるように下した。
激しい地響きがして、揺れる地面がツィスカと錬を襲った。
「この程度はどうってことありません」
ツィスカは機導を用い【アイシクルコフィン】を放つ。
「大きいだけではないということだな」
錬は態勢を整え、次の攻撃に備える。マッシュとの会話から、自問自答がよぎっていたのを振り捨てる。
(満足するまで刀鍛冶として鍛える。悔しい、できるなら、あがいてあがいて満足とか、不満と可、思う暇なく全力で生きたい)
だからこそ、この敵はうち倒し、前に進むのだ。
錬に大きな黒い獣は、前足の爪で薙ぎ払うが、戦う体勢を取り戻した錬は回避する。
「こっからはあたしたちも加わるよ!」
メイムは声を掛けつつ、ヴォーイの行動に合わせて行動するつもりだ。
「……リロードすれば、五色は64連打なのですぅ」
ハナはそういいながら、敵が入る範囲を定め【五色光符陣】を放った。
ツィスカは自分と錬の状況を考え、まだ回復魔法は不要と考えた。【アイシクルコフィン】で攻撃をしておく。
大きな敵であるし、できる限り相手の体力を削っていきたいところだった。
「こいつが、マッシュの不安や恐怖と関わり、未来に進む勇気を奪う。なら、倒すじゃん」
ヴォーイは【現界せしもの】を用いると移動し、如意金箍棒で獣を殴る。祖霊の姿を借りたヴォーイは通常の倍のサイズはある。
木綿花は敵の大きさと敵の行動は仲間に不利なステータス異常を与える可能性があると考えた。まず仲間の気持ちを鼓舞するように【アイデアル・ソング】を始め、【多重性強化】を用いた。
敵に突撃しそうだったラカは、ハンターが前にいる為、おとなしく後方から【ヒーリングスフィア】を使う。
獣の傷はふさがる。
ハンターが与える傷は増えるのだが、手を緩めることがあると、状況が停滞するということは感じ取れる。
獣は前足を高く上げると、地面にたたきつける。それにより、地面が激しく揺れ、範囲内にいるハンターは行動が制限される可能性がある。それに対しハナは【呪詛返し】で跳ねのける。すぐに符を補充する。
ヴォーイは【ハントムハンド】を使い、獣の足止めをしようと試みた。揺れによる移動ができない状況は避けたいが、マッシュたちがいるところに行かせないということも重要だった。そのあとに、如意金箍棒で攻撃をする。
手にからめとられたところに、錬が【アクセルオーバー】ののち【アサルトディスタンス】、【アフターバーナー】と行動を重ねる。メイムは【レセプションアーク】で自身についた不利なステータスを敵に跳ね返す。回復魔法はラカにゆだねておけるため、ツィスカは【アイシクルコフィン】を放つ。また、木綿花は歌舞を維持しながら攻撃をする。
攻撃は幾度かやり取りがされ、敵の癖もわかると同時に、ハンターたちの連携は確実に獣を追い込んだ。
あと一歩と言うところまできた。
うぉおおおおおん。
獣が大きく鳴いた。その直後、その体から負のマテリアルが噴き出す。マテリアルは炎に変わり、広まる。
ハンターたちは一気に巻き込まれた。
「ちょっと、聞いてないよー」
「以前と似た状況ですわ」
メイムがうめいたところにラカが告げる。メイムは「そうだっけ?」と言いながら、【ファミリアアタック】を放った。早く敵を倒さないと、自分たちが消えかねない。
「これを倒さないと私だけでなく、全員が危険だ」
錬は倒すことが重要だと、アイテムの持つ力も引き出し、できるだけスキルを重ね、多重に攻撃をしていく。近づけばその分炎は熱く感じる。ただ、このままじっとしてれば、燃やされるだけだ。傷を治してくれる仲間はいるのだ、難しく考え戦うことはない。確実に、生きる道を探して進めるのだ。
「シェオル型の獣はブッコロですぅ」
「……こうしている間に、敵の傷がふさがっていきます」
ハナは言うや否や符を放ち、ツィスカは機導術を用いた。
「この先に行かれたら、蒸し焼きになってしまうし」
ヴォーイは隠れているフェレトだけでなく、自身のポケットにいるペットのことを気にした。再度【現界せしもの】を用いると、【キント雲】で宙から獣に対して攻撃を仕掛ける。
「ラカ様、回復に専念してください!」
木綿花は【アイシクルコフィン】を味方の位置を見て、放つ。
ラカは【ヒーリングスフィア】を掛ける。それでも、敵の炎によるダメージは大きい。
『皆、ごめんなさいでちー』
小さいけれど大きな声が背後から聞こえる。マッシュたちの泣き出しそうな声だ。
謝罪は違う、と誰もが思う。それを告げるためにも、獣の攻撃を防いた。再度、攻撃を仕掛ける。
獣の怒りとともにあふれた炎は、それ自体が消えれば終わる。
そして、獣は消えた。
小さな生き物たちは、隠れていた所の前で泣いていた。
木綿花は用心していた。
もし、先ほどの敵が管理者でないことがあれば、まだ危険は去っていない。マッシュが立ち去ろうと知れば、襲い掛かるだろう。幸い、異様なマテリアルの動きは感じられなかった。
●前に進もう!
『出かけるでち』
マッシュは仲間たちに話した。世界がすでに終わっていること、ループして今があるということ。
最初、仲間たちは信じなかった。しかし、ハンターたちを見て、何か考えているようだった。外の世界があるということはこれだけ違う外見のモノがいるのだから、理解できる。
突然、一匹が泣きだす。
『カワウソさんたちと川を流れてみたかったでち』
『あたしもラッコさんと海で浮かんでみたかったでちー』
連鎖するように泣き始める。
「歪虚化している状態から、生物に返る方法はないんだよね……」
メイムは静かに言う。
「でもね、この世界の外には、明るい空と暖かな風が吹き抜ける、広い草原も待っているよ。さあ、みんなの想いと共に踏み出そうー」
メイムは明るい顔で言う。
フェレットたちは自分たちが歪虚だという認識はなかった。敵は歪虚であり、自分たちは生きていると信じていた。それがすべて変わった。
ループする世界についてマッシュ以外に気づいていた個体がいたかは、もう分からない。
「まだ何もわからないのです」
「そうだぜ。だから、まず、今、楽しめるよう、行こうじゃん?」
木綿花とヴォーイが告げた。
『みんな……』
マッシュはしょんぼりする。皆の不安はマッシュの不安でもあった。
真実を伝えないほうが幸せだったのかもしれないとマッシュは思った。でも、未来が見えないなら、今いる仲間と少しでも長くいたかった。
「皆さんの未来を私は保証できません。でも、今、あなた方の思いは苦しみを繰り返すことを終わらせる力となります」
ツィスカが正直に諭すように言う。
「マッシュさん、一緒に頑張りましょうぉ?」
ハナはできるだけ小さくなって告げる。
『みんなは僕の帰りを待っていてほしいでち』
『マッシュ……』
『一緒に行っても……どうすればいいでち?』
「皆さんも行けるか試しますか?」
ラカに言われ、マッシュ達は話し合いをする。そして、答えは出たらしく、マッシュだけが出かける準備をしていた。
「決まったみたいだな」
錬は口元を一文字に結ぶ。この決定がどうなるか分からない。また縁があればそれは面白いだろう。
『行くでち』
『待っているでちー』
『掃除をして待っているでちー』
『マッシュが戻る頃には、川も戻っているでち』
見送りの言葉はどこか湿っていた。
マッシュを送り出すモノたちの姿が見えなくなり、一行は元いたところに戻った。
マッシュは見知らぬ世界に驚きながらも、前に進むためにしっかりと確認を行った。また、仲間に会うために。
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立ち上がれ、マッシュ! ヴォーイ・スマシェストヴィエ(ka1613) 人間(クリムゾンウェスト)|27才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2019/07/24 22:37:26 |
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【質問卓】 メイム(ka2290) エルフ|15才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2019/07/24 22:27:32 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/07/23 22:04:26 |