ゲスト
(ka0000)
白の海獣
マスター:まれのぞみ

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/08/07 19:00
- 完成日
- 2019/08/15 01:34
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「面舵いっぱい」
それに気がついて船長が叫んだ。
●
それは、海戦での出来事だった。
歪虚の艦船とハンターたちの艦船の、複数の入り乱れた戦い。
海上で風を巡って位置をとりあう帆船同士の戦い。
そんな、青の世界では、もはや見ることのできない戦いであったが、この世界ではまだ一部でも、このような古風な戦いも存在する。そして、その為の鍛錬と実戦を重ねた船員たちもいる。
だから、ハンターたちは慣れた船員を雇い、この戦いに挑んだのだ。
そして、その策ははまった。
黒の帆船に乗る歪虚たちを取り囲む。
すでにハンターたちが、敵の船に乗り込む準備をはじめる。
帆船の戦いにおいて決定的な勝利を得るのは火力ではない。
敵の船に乗り込み勝利を決する――そうなる、はずだった――
そうはさせない……――音……――弦の音――
聞こえてきた場違いな音。
不気味ないななき、
剣戟の音が消える。
黒の帆船の先に、マント姿があった。
手には竪琴のような楽器をもち、再び、それをかき鳴らす。海がいななき、唸り声をあげた。
突然――海上に水の柱があらわれ、海が割れ、白い巨大な生物――鯨だろうか――が海域にあらわれたのだ。
「避ける!?」
帆船が急に向きを変え、人と歪虚の船は左右へ分かれた。
巨大な異物の侵入によって、戦況は一転した。
乱戦状態であった船と船の距離が離れたのだ。
互いに大砲を撃ち合うが、上下する波のせいで当たらない。
そのとき、白い巨体――やはり、歪虚なのだろうか――がハンターたちの船に突進をしかけてきた。
「つかまれ!?」
船長が叫び、船員はもちろんハンターたちも船の各所にしがみつく。
巨大な波とともに船のどてっぱらに、その巨大な何かがぶつかった。
そして、船が傾く。
音がした――
「弦の音?」
海の獣は歪虚の船を守るようにして、海へ戻っていった
●
遠く――視野を一度、空を飛ぶものの視点まであげてみよう。
白い雲の上から見下ろすと、青い大海は、ただ広く、丸みをおびた水平線が四方に見え、ここが、まさに海上であることを物語っている。
そんな中にあって炎でけぶる船々は小さな点。
傾いた船と、海へ投げ出された仲間を救助に向かっている小舟が何艘も見える。
大船は、なおも武装は解いていないが、その場の空気は、すでに、戦いは終わったものとハンターたちが感じているものであった。
実際、漆黒の船々は遠く離れていく。
普段であるのならば、これが勝機とみて陸戦部隊を敵の船の甲板に乗り込ませるのが勝利の定石。それをすることもなく引き、さらに一隻、一隻のスピードはまばらで、あるいは見ればこちらも各所から煙が昇っていることが確認できる。海の獣の介入で勝ちを拾ったように見えても、歪虚の側も無傷というわけにはいかなかったようだ。
戦いは決せず――もしも、この次の戦いなるものが存在するとするのならば、その戦いにのいかんにより、後世の歴史家なる存在は、この戦いの価値を百八十度、異なったものとして記述することになるであろう。
●
風が変わる。
日が西に傾いた。
戦場から、それほど離れていない海域に緑の島がある。
三日月のような形をしていて、島の大半は島と緑の森が占め、広い湾は白い浜である。
ぽつりと存在する島は、孤島ではあるが、水のとれる貴重な島なので船人たちには忘れられることのない。ただ、遠浅の砂浜がつづくため港として使うには適していないので、戦艦などの本船は沖合いに碇を卸し、小舟で上陸することとなる。
バカンスにいい場所なので、ここをリゾート地として開発しようかという話もないではないが、現在の人類の存亡を賭けた戦争状況では夢物語だ。
そんな浜辺では、遠い昔からそうであったように、きょうも大人にまじって、まだ年端も行かない子供たちまでもが地引き網を引っ張っている。
威勢のいい声に引っ張られ、砂浜にあがった網。近くで控えていた女たちが近づき、網に挟まった魚を腰の籠にいれると、おしゃべりをしながら村へと戻っていく。
村では食事のの煙がたっている。
遠浅の海は夕日で赤く照り、日に焼けた浅黒い肌の男たちが、素朴な祈りを、きょうの糧をくれた海へと捧げていた。
それに気がついて船長が叫んだ。
●
それは、海戦での出来事だった。
歪虚の艦船とハンターたちの艦船の、複数の入り乱れた戦い。
海上で風を巡って位置をとりあう帆船同士の戦い。
そんな、青の世界では、もはや見ることのできない戦いであったが、この世界ではまだ一部でも、このような古風な戦いも存在する。そして、その為の鍛錬と実戦を重ねた船員たちもいる。
だから、ハンターたちは慣れた船員を雇い、この戦いに挑んだのだ。
そして、その策ははまった。
黒の帆船に乗る歪虚たちを取り囲む。
すでにハンターたちが、敵の船に乗り込む準備をはじめる。
帆船の戦いにおいて決定的な勝利を得るのは火力ではない。
敵の船に乗り込み勝利を決する――そうなる、はずだった――
そうはさせない……――音……――弦の音――
聞こえてきた場違いな音。
不気味ないななき、
剣戟の音が消える。
黒の帆船の先に、マント姿があった。
手には竪琴のような楽器をもち、再び、それをかき鳴らす。海がいななき、唸り声をあげた。
突然――海上に水の柱があらわれ、海が割れ、白い巨大な生物――鯨だろうか――が海域にあらわれたのだ。
「避ける!?」
帆船が急に向きを変え、人と歪虚の船は左右へ分かれた。
巨大な異物の侵入によって、戦況は一転した。
乱戦状態であった船と船の距離が離れたのだ。
互いに大砲を撃ち合うが、上下する波のせいで当たらない。
そのとき、白い巨体――やはり、歪虚なのだろうか――がハンターたちの船に突進をしかけてきた。
「つかまれ!?」
船長が叫び、船員はもちろんハンターたちも船の各所にしがみつく。
巨大な波とともに船のどてっぱらに、その巨大な何かがぶつかった。
そして、船が傾く。
音がした――
「弦の音?」
海の獣は歪虚の船を守るようにして、海へ戻っていった
●
遠く――視野を一度、空を飛ぶものの視点まであげてみよう。
白い雲の上から見下ろすと、青い大海は、ただ広く、丸みをおびた水平線が四方に見え、ここが、まさに海上であることを物語っている。
そんな中にあって炎でけぶる船々は小さな点。
傾いた船と、海へ投げ出された仲間を救助に向かっている小舟が何艘も見える。
大船は、なおも武装は解いていないが、その場の空気は、すでに、戦いは終わったものとハンターたちが感じているものであった。
実際、漆黒の船々は遠く離れていく。
普段であるのならば、これが勝機とみて陸戦部隊を敵の船の甲板に乗り込ませるのが勝利の定石。それをすることもなく引き、さらに一隻、一隻のスピードはまばらで、あるいは見ればこちらも各所から煙が昇っていることが確認できる。海の獣の介入で勝ちを拾ったように見えても、歪虚の側も無傷というわけにはいかなかったようだ。
戦いは決せず――もしも、この次の戦いなるものが存在するとするのならば、その戦いにのいかんにより、後世の歴史家なる存在は、この戦いの価値を百八十度、異なったものとして記述することになるであろう。
●
風が変わる。
日が西に傾いた。
戦場から、それほど離れていない海域に緑の島がある。
三日月のような形をしていて、島の大半は島と緑の森が占め、広い湾は白い浜である。
ぽつりと存在する島は、孤島ではあるが、水のとれる貴重な島なので船人たちには忘れられることのない。ただ、遠浅の砂浜がつづくため港として使うには適していないので、戦艦などの本船は沖合いに碇を卸し、小舟で上陸することとなる。
バカンスにいい場所なので、ここをリゾート地として開発しようかという話もないではないが、現在の人類の存亡を賭けた戦争状況では夢物語だ。
そんな浜辺では、遠い昔からそうであったように、きょうも大人にまじって、まだ年端も行かない子供たちまでもが地引き網を引っ張っている。
威勢のいい声に引っ張られ、砂浜にあがった網。近くで控えていた女たちが近づき、網に挟まった魚を腰の籠にいれると、おしゃべりをしながら村へと戻っていく。
村では食事のの煙がたっている。
遠浅の海は夕日で赤く照り、日に焼けた浅黒い肌の男たちが、素朴な祈りを、きょうの糧をくれた海へと捧げていた。
リプレイ本文
世界は激動する。
あまたの次元を巡る歪虚と、それに敵対する者たちとの戦いは佳境に入っていた。
世界各地で起きる陰謀劇。
あるいは侵攻と防衛。
さまざま戦いが世界を揺るがす。
灼熱の砂漠で、凍てついた大地で、森で、海で、あるはどことも知れぬ深淵の宇宙で――あまたの戦いは――まだ確定はしていない――ひとつの結果へと突き進んでいく。
●
「海とはいっても戦時中じゃから物見遊山というわけにもいかんし、正直遊んでいる暇などない」
夏の日差しの射す窓辺に、小さく風が踊る。
海の音がする。
白い海岸では子供たちの遊び声がまじっている。
バカンスならば最高の南の島も、いまは戦場の最前線だ。
島の沖には同盟の艦隊が碇をおろしている。
「だいたいこの戦場を片付けたら次は崑崙基地だったり辺境だったりと依頼予定が目白押しで、寝ている暇もないくらいじゃわい。あー忙しい、忙しい」
隈ができた目をしばしばさせながら、大きく生あくび。
最高級品の栄養ドリンクをストローでちゅうちゅうしながら、昨晩も気絶した程度の時間しか眠れなかったと愚痴をこぼしている風に見えて、どこか自慢げな様子。
ミグ・ロマイヤー(ka0665)は、少女とも見える風貌の割に物言いは古風なせいか、ブラック企業のお局様のようにも見える。
「さて、少ないメンツじゃが――」
世界の状況を考えればしかたないか。
「やるからには確実なところを狙っていくとしよう」
表情をあらため――それでも血走った目で――参加者を見た。
古強者たちの面がつらなる。
会議場となった宿――リゾートホテル風だ――の天井ではファンがまわり、椰子かなにかの実を割ってストローを刺した飲料が配られる。
戦いの前の会議にしては、くつろいどものになってしまったがハンターたちと、艦船の関係者たちの目は真剣だ。
しばらく海図を拡げたテーブルの周囲で怒声、罵声、あるいは沈黙をともなった会話がつづき、いつしか窓辺からは子供たちの声は消え、月光が窓辺から射していた。
時音 ざくろ(ka1250)が、ふうぅとため息をつく。
すっかりぬるんでしまった飲料に口をつけ、会議の内容を軽く、まとめた。
「ミグが海に潜って白い獣を釣り出す囮になってくれるんだね? ざくろはその間に誘い込んだのち、深い海に戻る退路を調べてそこに回り込めるようにしておくよ」
●
風が凪ぐ。
青い海は穏やかで、入道雲のわきたつ空は、ただただ平穏な夏の空。
白い鳥たちが、艦船の帆に羽を休ませていて、作戦のことさえ考えないのならば、なんとも優雅な船旅ということとなる。
そうはいっても甲板の上は戦闘の前だけに――そしてリベンジ戦として――血気盛んな船員たちであふれかえっている。
隆々とした筋肉をした浅黒い肌の船員たちがムダな動きひとつなく調査や作業をしている。
船長がハンターたちに苦笑してくる。
先の海戦からそれほど時間はたっていないので艦隊の再建は完了していない。そのため艦隊と自称したところで、使える船の数はほんの数艦。
だが先の海戦で生き残った船員は多く、このたびは、その中から選抜した者たちばかりなので、船の数が減ったからこそ逆に船員たちは精鋭ばかりとなっているのだという。
「艦長!?」
監視台から声がした。
「どうした?」
「入道雲を見てください!?」
「嵐か?」
まだ風も吹いていないが嵐がくるのか。コースを変える必要があるだろうか――そう考えながら艦長が望遠鏡をのぞく。
「なんだ、あれは?」
「どうしました?」
ざくろも借りた望遠鏡をのぞき込んだ。
嵐がくる。
雷光の走る帆を張って、巨大な黒々とした雲のような艦船が近づいてくる。嵐と一体化した黒い船と呼べばよいか。あのような者が人の手で作られるはずはない。
「歪虚だ!?」
船々で声がわきあがる。
今度こそリベンジしてやるの意思であふれている。
前回と違うのは、もはや敵は単独であるということである。
「戦闘準備!?」
●
気象と一体化した艦船が、嵐とともに突っ込んできた。
さきほどまでの海は姿を一変し、船よりも高い波が、周囲で白い爪をたてて襲いかかってくる。
叩きつける雨が視線を殺し、息すらできないほどの圧力を感じる。雷鳴が耳を壊そうとする
しかし、そんな中であってもハンターたちの乗る船は沈むようなことはなかった。
船員たちが必死に帆につながる縄を握って、操舵手などは操舵に手を縄でしばって離すまいとしている。
なんという船員たちだ。
海上で船が沈んでしまえば、ハンターたちが活躍する前に終わってしまう。
大丈夫だという確信がハンターたちの心に生まれる。
船はプロたちに任せればいい。
ならば、自分たちは自分たちの仕事に全力を傾けよう。
「いくよ!」
ざくろは剣を抜いて、黒い船を睨んだ。
「囲むぞ」
雷光に浮かび上がる不気味な船にめがけ、自軍の船が動き、艦砲射撃で出迎える。
囲んで叩く。
敵が一撃を繰り出すたびに、こちからはその何倍もの砲撃がとぶ。
戦争で勝つのは一発一中の大砲を一門用意した側ではなく、百発一中の大砲であっても、それを百門持ってきた方なのだ。時間のなかった歪虚は強力な船一隻の船にすべてを賭ける策を弄し、同じように艦隊の再建の時間のなかった人間側は、だからこそ迷うことなく、使わないと決めた船の大砲を、使用可能な艦に移植し全門が使用可能とすると決めることができたのだ。
この決定が幸いした。
一隻の強力の艦船が、良質――しかも最高品質の近似値だ――な艦隊に挑んだとき、どんな結果が残るであろうか。
あるいは一隻の船に天才の艦長がいたのならば違うのかもしれない。
しかし、前回の戦いで敵の力量は互いにわかっている。
ならば――
●
砲撃が炸裂する。
黒い船の砲塔が文字通りの意味で火を吹くが、上下する波のせいで人間側の船になかなか当たらない。また、命中して船の一部で燃え上がった炎も、みずからのもたらした風雨によって消火されていく。一方で人間側の放つ砲弾は確実に敵艦にダメージを与えていく。
ざくろは武将のように剣を手にして甲板で立っている。
周囲では船員たちが動き回っている。
時々、ざくろの顔を見るのは、やはり心のどこかに不安があるのだろうか。
ならば――なにもないかのような平然な顔をしているしかない。
(敵船が不利になった際に現れて暴れたという事は、敵船を浅い海に誘い込んで同じようにピンチに出来れば、白い獣をおびき寄せられるんじゃないか)
会議の時の自らの言葉を、再度、心の中で反復する。
ここまではうまくいっている――
すでに黒の船から煙があがっているのが確認できる。
やはり、戦いは数。
短い戦いだったが海戦の勝敗の大勢は決まった。
あとは――
(敵船に竪琴のような楽器をひかせるように仕向けられれば)
ざくろの瞳に、それが映った。
黒の甲板に走り出してきた黒のローブ。
手には竪琴に似た楽器がある。
指が、それを奏でる。
嵐がいつしか止んでいた。。
●
「追い込んでやれば敵船を守りに現れるはず……それも利用してやれば」
ざくろが会議でつぶやいた言葉だ。
確かに、その考えは間違ってはいない。
来た!?
海の遠くから、竪琴にあわせて唄うような声がした。
「おい、見ろ!?」
船員たちが怯えたような声をあげる。
黒い雲が割れ、差し込む日に映える。
白い海獣の背。
波たつ海原を神の使いのごとく悠々と泳いでくる。
只人が仇なすには、あまりにも強大な存在にも見える。
ならばこそ、ここからはハンターたちの独擅場だ。
●
「お気をつけを」
船員が声をかけてくる。
船に備え付けられた脱出用の小舟に腰をおろし、箒とリュートを抱えた宵待 サクラ(ka5561)がうなずく。
「おろせ!」
揺れる海面が近づいてくる。
はねる水が、波が小舟に入ってくる。
頭から波をかぶり、それでも胸に抱えたものは濡らさないように努力はする。
「リュートも弦楽器の筈だし、これで釣られてくれると良いなあ」
のんきそうな言葉とは裏腹に、見た目はずぶ濡れの子猫である。
着水した。
小舟が揺れている。
目の前に近づく巨体がある。
天から射す陽光に輝きながら白魚が泳ぐ。
あたかも、海の神のようにである。
ならば、捧げるようにリュートを奏でよう。
●
そのとき、ざくろが動いた。
他のハンターたちとともに、敵の船に飛び乗り、一閃。
目の前にいた歪虚を斬り、道を作る。
船員だろうか、姿も歪虚
女のハンターが露払いをする。
隙をついて、ざくろが甲板を駆ける。
立ちふさがる敵を一刀のもとにたたっ切ると、目の前に彼女がいた。
ローブ姿の吟遊詩人が音を奏でる。
死を唄っている。
そこへ同じ死を唄う剣が襲いかかる。
剣が腕を切りおとし、そのまま体に剣を突き刺す。
「あっ――」
赤い唇から絶命が漏れ、ざくろの身に、まるで抱きつくように倒れかかってきたまま、
「すまない――」
歪虚は灰となって風の中に消えていった。
●
「こっちへ来て!」
宵待が祈るようにリュートをかき鳴らす。
歪虚の奏でる音が途絶え、こんどはこちらに興味を持ってはくれないか。
宵待の祈りの音が届かないのか。あいもかわらず海獣は艦隊の周囲をいつでも攻撃できる位置にいて、艦隊の周囲をゆっくりと泳いでいる。
白獣は音に反応するのではないのか……
その時、海中で爆発が起きた。
「なに?」
●
「頼むから早く釣れてくれー」
ミグの、その祈りはむなしく今日は坊主となったようだ。
彼女の囮には歪虚の怪魚はのってこなかった。
船からのびたロープに水中用アーマーをつなげ、海中を引きずってもらうことで釣りの餌替わりでクジラ歪虚を釣るつもりであったのだが、獲物は疑似餌を前に悠々と泳ぎ去っていく。
ただ――
(こちらなど気にもしないのぅ……まるで操り人形のような動きであったな)
なにか、ひっかかるが、
(まあ、しかたないかね)
機動砲を起動するとしよう。
背面から肩口に出現する超長砲身の機動砲。
「射程の延伸に重点を置いて強化されているためかなり長い距離の相手にもマテリアルエネルギーが減衰せずに届く優れ物さね」
照準を目合わせ、
「いけぇぇっ!?」
喚声一撃。
轟音炸裂。
海獣の胴体が爆発とともに大きく揺れる。
水中で、巨体が方向を変えた。
「さすがに、これは聞くかい。さてね、こいよ。すべてを捨ててかかってきなよ」
ミグは、それが相手に聞こえているかのように叫んでいた。
(さて、どこまでついてきてれるものか?)
●
「挑発に乗った!」
海の化け物がミグたちの船に向かってきた。
「面舵いっぱい」
船の向きを島へと向ける。
あとは、あれとこの船との速度の勝負。
「島の浅瀬まで誘導させてもらうさ」
船長が不敵に笑う。
船員たちも、あんなでかいだけの魚に、この船の速度が負けるわけがないと言い張る。
あとは、海の男たちと運の勝負か。
「砂浜まで誘導できればいいが、がんばるぞい」
●
白の獣が動きを変えると宵待たちの方向へ向かってきた。
「来なさい!?」
手段は違うが、結果が同じならば、それでよい。
島の方へ向かいう。
後ろを振り返った。
「あれは?」
宵待に、それが映った。
鯨に似た生物の額から顔につけられた鉄の仮面のような異物。
「まさか?」
ならばわかる。
なぜ、あの楽器に反応したのか。
この神の使いが歪虚などに使われたのか。
だからこそ――
「こっちにきなさい!?」
箒のスピードでは足りない。
ならば――
箒から飛び降りると、海上が目の前に近づく。
足を伸ばす。
そのまま沈……――まない。
海上すれすれのところでつま先が水を蹴り、蹴り、蹴り、駆け足で水上を走って行く。
まるでリアルブルーのニンジャの水遁の術である。
走って、走って、走ると見えた。
水面の旗。
浅瀬のめじるしとしてつけてあるのだ。
そして――
●
ついに巨大な魚を浅瀬へ誘導した。
機動砲の攻撃で船と間合いをとり、船は沖へ、魚は陸へと距離をとった。
白い体が砂の上をばたついている。
もはや泳ぐことも難しい。
これを逃せば、再び深い海に戻ってしまう。
なんとしてもこの機に決めないといけない。
「もう好き勝手にはさせないぞ!」
船から飛び降りたざくろが攻防一体の動きで、白い海獣と格闘する。
「超機動パワーオン……弾け跳べっ!?」
そして、海獣から信じられないことだったろうが、自分の何十分の一しかない、小さな体に吹き飛ばされ、より島に近い浅瀬へおいやられてしまう。
焦るように、白き獣がもがくが、柔らかな砂の上では周囲に穴を掘ることとなり、より動くことができなくなっていく。
さらに、邪魔が入る。
鰭に何かがまとわりつく。
ミグがアイシクルコフィンで鰭を固めたのだ。
「ふふふっ、逃がさないようにしてじっくり退治するのじゃ!? せっかくここまで釣ったんじやぁ。逃しはせんぞぉぉぉ。」
砂浜に打ち上がった白の山はふるぼっこ。
海の王者も、地上に上がってしまえば、動きを封じられた巨大な破壊物でしかない。
しかも、それが相手にしているは強力な能力をもった異能者、ハンター。
ただの人間ではない。
抵抗などムダに等しく、みるまに体力を奪われ、もはや虫の息。
最期だ――
ざくろの手に二本の刃が踊る。
操牙の妖斧
魔剣の超重練成
それを十字の形に
十文字に斬り裂くから。
「必殺、超重剣・妖魔十字斬!」
その時、
「やめて」
宵待が腕を拡げて、その盾となろうとしていた――
●
日暮れの風。
海から来る風は心地よく、昼の暑さを忘れさせる。
寂しげな浜に、潮騒の音がする。
箒に腰掛け、宵待は海岸に横たわった、それを見ていた。
子供たちが、めずらしい魚があがったと声をあげている。
戦いが終わり、それが残った。
「これ歪虚かと思ってたんだけどリアルブルーでいう鯨かなあ? こうなっちゃうと海に引き戻すなんてできないし、みんなで解体して食べたり脂取ったりするしかないのかなあ……」
こまった顔の宵待は決心して、遊ぶ子供たちに親たちを呼んでくるようにと呼びかけた。
不思議そうな顔をしてた子供達には、魔法の言葉。
「おいしいものが食べるられるの――」
一斉に親元へと子供たちが駆けていく。
さて、解体作業と運搬作業の手配はできた。
少女は骸に手を合わせた。
「熊が陸の神様なら、余すとこのない鯨は海の神様だもんなあ……大事にいただきます」
今晩は、どんな晩餐の料理が出てくるだろうか――
あまたの次元を巡る歪虚と、それに敵対する者たちとの戦いは佳境に入っていた。
世界各地で起きる陰謀劇。
あるいは侵攻と防衛。
さまざま戦いが世界を揺るがす。
灼熱の砂漠で、凍てついた大地で、森で、海で、あるはどことも知れぬ深淵の宇宙で――あまたの戦いは――まだ確定はしていない――ひとつの結果へと突き進んでいく。
●
「海とはいっても戦時中じゃから物見遊山というわけにもいかんし、正直遊んでいる暇などない」
夏の日差しの射す窓辺に、小さく風が踊る。
海の音がする。
白い海岸では子供たちの遊び声がまじっている。
バカンスならば最高の南の島も、いまは戦場の最前線だ。
島の沖には同盟の艦隊が碇をおろしている。
「だいたいこの戦場を片付けたら次は崑崙基地だったり辺境だったりと依頼予定が目白押しで、寝ている暇もないくらいじゃわい。あー忙しい、忙しい」
隈ができた目をしばしばさせながら、大きく生あくび。
最高級品の栄養ドリンクをストローでちゅうちゅうしながら、昨晩も気絶した程度の時間しか眠れなかったと愚痴をこぼしている風に見えて、どこか自慢げな様子。
ミグ・ロマイヤー(ka0665)は、少女とも見える風貌の割に物言いは古風なせいか、ブラック企業のお局様のようにも見える。
「さて、少ないメンツじゃが――」
世界の状況を考えればしかたないか。
「やるからには確実なところを狙っていくとしよう」
表情をあらため――それでも血走った目で――参加者を見た。
古強者たちの面がつらなる。
会議場となった宿――リゾートホテル風だ――の天井ではファンがまわり、椰子かなにかの実を割ってストローを刺した飲料が配られる。
戦いの前の会議にしては、くつろいどものになってしまったがハンターたちと、艦船の関係者たちの目は真剣だ。
しばらく海図を拡げたテーブルの周囲で怒声、罵声、あるいは沈黙をともなった会話がつづき、いつしか窓辺からは子供たちの声は消え、月光が窓辺から射していた。
時音 ざくろ(ka1250)が、ふうぅとため息をつく。
すっかりぬるんでしまった飲料に口をつけ、会議の内容を軽く、まとめた。
「ミグが海に潜って白い獣を釣り出す囮になってくれるんだね? ざくろはその間に誘い込んだのち、深い海に戻る退路を調べてそこに回り込めるようにしておくよ」
●
風が凪ぐ。
青い海は穏やかで、入道雲のわきたつ空は、ただただ平穏な夏の空。
白い鳥たちが、艦船の帆に羽を休ませていて、作戦のことさえ考えないのならば、なんとも優雅な船旅ということとなる。
そうはいっても甲板の上は戦闘の前だけに――そしてリベンジ戦として――血気盛んな船員たちであふれかえっている。
隆々とした筋肉をした浅黒い肌の船員たちがムダな動きひとつなく調査や作業をしている。
船長がハンターたちに苦笑してくる。
先の海戦からそれほど時間はたっていないので艦隊の再建は完了していない。そのため艦隊と自称したところで、使える船の数はほんの数艦。
だが先の海戦で生き残った船員は多く、このたびは、その中から選抜した者たちばかりなので、船の数が減ったからこそ逆に船員たちは精鋭ばかりとなっているのだという。
「艦長!?」
監視台から声がした。
「どうした?」
「入道雲を見てください!?」
「嵐か?」
まだ風も吹いていないが嵐がくるのか。コースを変える必要があるだろうか――そう考えながら艦長が望遠鏡をのぞく。
「なんだ、あれは?」
「どうしました?」
ざくろも借りた望遠鏡をのぞき込んだ。
嵐がくる。
雷光の走る帆を張って、巨大な黒々とした雲のような艦船が近づいてくる。嵐と一体化した黒い船と呼べばよいか。あのような者が人の手で作られるはずはない。
「歪虚だ!?」
船々で声がわきあがる。
今度こそリベンジしてやるの意思であふれている。
前回と違うのは、もはや敵は単独であるということである。
「戦闘準備!?」
●
気象と一体化した艦船が、嵐とともに突っ込んできた。
さきほどまでの海は姿を一変し、船よりも高い波が、周囲で白い爪をたてて襲いかかってくる。
叩きつける雨が視線を殺し、息すらできないほどの圧力を感じる。雷鳴が耳を壊そうとする
しかし、そんな中であってもハンターたちの乗る船は沈むようなことはなかった。
船員たちが必死に帆につながる縄を握って、操舵手などは操舵に手を縄でしばって離すまいとしている。
なんという船員たちだ。
海上で船が沈んでしまえば、ハンターたちが活躍する前に終わってしまう。
大丈夫だという確信がハンターたちの心に生まれる。
船はプロたちに任せればいい。
ならば、自分たちは自分たちの仕事に全力を傾けよう。
「いくよ!」
ざくろは剣を抜いて、黒い船を睨んだ。
「囲むぞ」
雷光に浮かび上がる不気味な船にめがけ、自軍の船が動き、艦砲射撃で出迎える。
囲んで叩く。
敵が一撃を繰り出すたびに、こちからはその何倍もの砲撃がとぶ。
戦争で勝つのは一発一中の大砲を一門用意した側ではなく、百発一中の大砲であっても、それを百門持ってきた方なのだ。時間のなかった歪虚は強力な船一隻の船にすべてを賭ける策を弄し、同じように艦隊の再建の時間のなかった人間側は、だからこそ迷うことなく、使わないと決めた船の大砲を、使用可能な艦に移植し全門が使用可能とすると決めることができたのだ。
この決定が幸いした。
一隻の強力の艦船が、良質――しかも最高品質の近似値だ――な艦隊に挑んだとき、どんな結果が残るであろうか。
あるいは一隻の船に天才の艦長がいたのならば違うのかもしれない。
しかし、前回の戦いで敵の力量は互いにわかっている。
ならば――
●
砲撃が炸裂する。
黒い船の砲塔が文字通りの意味で火を吹くが、上下する波のせいで人間側の船になかなか当たらない。また、命中して船の一部で燃え上がった炎も、みずからのもたらした風雨によって消火されていく。一方で人間側の放つ砲弾は確実に敵艦にダメージを与えていく。
ざくろは武将のように剣を手にして甲板で立っている。
周囲では船員たちが動き回っている。
時々、ざくろの顔を見るのは、やはり心のどこかに不安があるのだろうか。
ならば――なにもないかのような平然な顔をしているしかない。
(敵船が不利になった際に現れて暴れたという事は、敵船を浅い海に誘い込んで同じようにピンチに出来れば、白い獣をおびき寄せられるんじゃないか)
会議の時の自らの言葉を、再度、心の中で反復する。
ここまではうまくいっている――
すでに黒の船から煙があがっているのが確認できる。
やはり、戦いは数。
短い戦いだったが海戦の勝敗の大勢は決まった。
あとは――
(敵船に竪琴のような楽器をひかせるように仕向けられれば)
ざくろの瞳に、それが映った。
黒の甲板に走り出してきた黒のローブ。
手には竪琴に似た楽器がある。
指が、それを奏でる。
嵐がいつしか止んでいた。。
●
「追い込んでやれば敵船を守りに現れるはず……それも利用してやれば」
ざくろが会議でつぶやいた言葉だ。
確かに、その考えは間違ってはいない。
来た!?
海の遠くから、竪琴にあわせて唄うような声がした。
「おい、見ろ!?」
船員たちが怯えたような声をあげる。
黒い雲が割れ、差し込む日に映える。
白い海獣の背。
波たつ海原を神の使いのごとく悠々と泳いでくる。
只人が仇なすには、あまりにも強大な存在にも見える。
ならばこそ、ここからはハンターたちの独擅場だ。
●
「お気をつけを」
船員が声をかけてくる。
船に備え付けられた脱出用の小舟に腰をおろし、箒とリュートを抱えた宵待 サクラ(ka5561)がうなずく。
「おろせ!」
揺れる海面が近づいてくる。
はねる水が、波が小舟に入ってくる。
頭から波をかぶり、それでも胸に抱えたものは濡らさないように努力はする。
「リュートも弦楽器の筈だし、これで釣られてくれると良いなあ」
のんきそうな言葉とは裏腹に、見た目はずぶ濡れの子猫である。
着水した。
小舟が揺れている。
目の前に近づく巨体がある。
天から射す陽光に輝きながら白魚が泳ぐ。
あたかも、海の神のようにである。
ならば、捧げるようにリュートを奏でよう。
●
そのとき、ざくろが動いた。
他のハンターたちとともに、敵の船に飛び乗り、一閃。
目の前にいた歪虚を斬り、道を作る。
船員だろうか、姿も歪虚
女のハンターが露払いをする。
隙をついて、ざくろが甲板を駆ける。
立ちふさがる敵を一刀のもとにたたっ切ると、目の前に彼女がいた。
ローブ姿の吟遊詩人が音を奏でる。
死を唄っている。
そこへ同じ死を唄う剣が襲いかかる。
剣が腕を切りおとし、そのまま体に剣を突き刺す。
「あっ――」
赤い唇から絶命が漏れ、ざくろの身に、まるで抱きつくように倒れかかってきたまま、
「すまない――」
歪虚は灰となって風の中に消えていった。
●
「こっちへ来て!」
宵待が祈るようにリュートをかき鳴らす。
歪虚の奏でる音が途絶え、こんどはこちらに興味を持ってはくれないか。
宵待の祈りの音が届かないのか。あいもかわらず海獣は艦隊の周囲をいつでも攻撃できる位置にいて、艦隊の周囲をゆっくりと泳いでいる。
白獣は音に反応するのではないのか……
その時、海中で爆発が起きた。
「なに?」
●
「頼むから早く釣れてくれー」
ミグの、その祈りはむなしく今日は坊主となったようだ。
彼女の囮には歪虚の怪魚はのってこなかった。
船からのびたロープに水中用アーマーをつなげ、海中を引きずってもらうことで釣りの餌替わりでクジラ歪虚を釣るつもりであったのだが、獲物は疑似餌を前に悠々と泳ぎ去っていく。
ただ――
(こちらなど気にもしないのぅ……まるで操り人形のような動きであったな)
なにか、ひっかかるが、
(まあ、しかたないかね)
機動砲を起動するとしよう。
背面から肩口に出現する超長砲身の機動砲。
「射程の延伸に重点を置いて強化されているためかなり長い距離の相手にもマテリアルエネルギーが減衰せずに届く優れ物さね」
照準を目合わせ、
「いけぇぇっ!?」
喚声一撃。
轟音炸裂。
海獣の胴体が爆発とともに大きく揺れる。
水中で、巨体が方向を変えた。
「さすがに、これは聞くかい。さてね、こいよ。すべてを捨ててかかってきなよ」
ミグは、それが相手に聞こえているかのように叫んでいた。
(さて、どこまでついてきてれるものか?)
●
「挑発に乗った!」
海の化け物がミグたちの船に向かってきた。
「面舵いっぱい」
船の向きを島へと向ける。
あとは、あれとこの船との速度の勝負。
「島の浅瀬まで誘導させてもらうさ」
船長が不敵に笑う。
船員たちも、あんなでかいだけの魚に、この船の速度が負けるわけがないと言い張る。
あとは、海の男たちと運の勝負か。
「砂浜まで誘導できればいいが、がんばるぞい」
●
白の獣が動きを変えると宵待たちの方向へ向かってきた。
「来なさい!?」
手段は違うが、結果が同じならば、それでよい。
島の方へ向かいう。
後ろを振り返った。
「あれは?」
宵待に、それが映った。
鯨に似た生物の額から顔につけられた鉄の仮面のような異物。
「まさか?」
ならばわかる。
なぜ、あの楽器に反応したのか。
この神の使いが歪虚などに使われたのか。
だからこそ――
「こっちにきなさい!?」
箒のスピードでは足りない。
ならば――
箒から飛び降りると、海上が目の前に近づく。
足を伸ばす。
そのまま沈……――まない。
海上すれすれのところでつま先が水を蹴り、蹴り、蹴り、駆け足で水上を走って行く。
まるでリアルブルーのニンジャの水遁の術である。
走って、走って、走ると見えた。
水面の旗。
浅瀬のめじるしとしてつけてあるのだ。
そして――
●
ついに巨大な魚を浅瀬へ誘導した。
機動砲の攻撃で船と間合いをとり、船は沖へ、魚は陸へと距離をとった。
白い体が砂の上をばたついている。
もはや泳ぐことも難しい。
これを逃せば、再び深い海に戻ってしまう。
なんとしてもこの機に決めないといけない。
「もう好き勝手にはさせないぞ!」
船から飛び降りたざくろが攻防一体の動きで、白い海獣と格闘する。
「超機動パワーオン……弾け跳べっ!?」
そして、海獣から信じられないことだったろうが、自分の何十分の一しかない、小さな体に吹き飛ばされ、より島に近い浅瀬へおいやられてしまう。
焦るように、白き獣がもがくが、柔らかな砂の上では周囲に穴を掘ることとなり、より動くことができなくなっていく。
さらに、邪魔が入る。
鰭に何かがまとわりつく。
ミグがアイシクルコフィンで鰭を固めたのだ。
「ふふふっ、逃がさないようにしてじっくり退治するのじゃ!? せっかくここまで釣ったんじやぁ。逃しはせんぞぉぉぉ。」
砂浜に打ち上がった白の山はふるぼっこ。
海の王者も、地上に上がってしまえば、動きを封じられた巨大な破壊物でしかない。
しかも、それが相手にしているは強力な能力をもった異能者、ハンター。
ただの人間ではない。
抵抗などムダに等しく、みるまに体力を奪われ、もはや虫の息。
最期だ――
ざくろの手に二本の刃が踊る。
操牙の妖斧
魔剣の超重練成
それを十字の形に
十文字に斬り裂くから。
「必殺、超重剣・妖魔十字斬!」
その時、
「やめて」
宵待が腕を拡げて、その盾となろうとしていた――
●
日暮れの風。
海から来る風は心地よく、昼の暑さを忘れさせる。
寂しげな浜に、潮騒の音がする。
箒に腰掛け、宵待は海岸に横たわった、それを見ていた。
子供たちが、めずらしい魚があがったと声をあげている。
戦いが終わり、それが残った。
「これ歪虚かと思ってたんだけどリアルブルーでいう鯨かなあ? こうなっちゃうと海に引き戻すなんてできないし、みんなで解体して食べたり脂取ったりするしかないのかなあ……」
こまった顔の宵待は決心して、遊ぶ子供たちに親たちを呼んでくるようにと呼びかけた。
不思議そうな顔をしてた子供達には、魔法の言葉。
「おいしいものが食べるられるの――」
一斉に親元へと子供たちが駆けていく。
さて、解体作業と運搬作業の手配はできた。
少女は骸に手を合わせた。
「熊が陸の神様なら、余すとこのない鯨は海の神様だもんなあ……大事にいただきます」
今晩は、どんな晩餐の料理が出てくるだろうか――
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 ミグ・ロマイヤー(ka0665) ドワーフ|13才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2019/08/06 23:12:49 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/08/06 22:45:10 |