ゲスト
(ka0000)
戦場を見に行こう
マスター:岡本龍馬

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/02/04 15:00
- 完成日
- 2015/02/07 12:21
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
とある街角に子供たちが集まっていた。
「俺もつれってってくれよ!」
「ヴォイドなんて楽勝だぜ!」
「俺の一振りはどんな敵でも一撃なんだぜ!」
そんな思い思いのことを話す子供たちに囲まれた一人の男ハンター、カルエスが苦笑いを浮かべる。
「お前らを連れて行ってやりたいのはやまやまなんだが…今回のはちょっと無理だな」
カルエスも、このセリフも何回目だろうな、と声には出さないながらに申し訳ないとは思っていた。
けれど彼らが想像しているほどヴォイドは甘い相手ではない。連れて行ったところで足手まといになるのが関の山だろう。
「つれってってくれよー」
「なーなー」
「いいだろー」
「前から言ってるけどな、ヴォイドは危ないんだぞ?」
「大丈夫だって! 俺の剣は最強だから!」
「ほらほら見ろよこの剣技」
そう言うと一人がおもむろに枝を振り回しだす。
「危ないからそれやめろ」
ペチペチと枝でたたかれるカルエス。
「…おい」
たいして痛くもないので放っておくことにしたものの、カルエスが一つのため息をつく。
「どうしたもんかね…」
楽しそうにたたいてくる子供たちを見ながら、カルエスはふと一つの名案を思い付いた。
「ついて行ってみたいか?」
「いいの!?」
「さすが話が分かるね!」
「まーあれだ。あんま期待すんなよ?」
約束を取り付けたことで、そそくさと作戦会議に移る子供たち。
…まだ具体的なことは何も言ってないんだけどな。楽しそうに話し合う子供たちを眺めながら、カルエスがポソッとつぶやいた。
しかしそのカルエス当人が、かっこいいところを見せてやろう、と静かに意気込んでいることを子供たちは知る由もなかった。
●
それから数日後、ハンター本部には他と趣を異にする依頼が掲載されていた。
『低級なヴォイドと戦うところをガキどもに見せてやってほしい。あくまで見せるだけでいい。 そもそもあいつらは戦う技術なんて持ってないしな』
「これは?」
「見学ツアーだそうよ。現実を見せるだとかなんとか言ってたわね」
依頼を選んでいるハンターたちの間で話題が広がる。
「子供たちも子供たちなりに考えることがあるってことなのかな」
「それはそうだとしてもだ。戦闘技術を持たない子供たちを連れて行くってのも随分な話に思えるけど?」
「どうせちょっとかっこつけたいんでしょ」
「あぁ、そういうことか」
…どこかでカルエスのくしゃみが聞こえた気がした。
とある街角に子供たちが集まっていた。
「俺もつれってってくれよ!」
「ヴォイドなんて楽勝だぜ!」
「俺の一振りはどんな敵でも一撃なんだぜ!」
そんな思い思いのことを話す子供たちに囲まれた一人の男ハンター、カルエスが苦笑いを浮かべる。
「お前らを連れて行ってやりたいのはやまやまなんだが…今回のはちょっと無理だな」
カルエスも、このセリフも何回目だろうな、と声には出さないながらに申し訳ないとは思っていた。
けれど彼らが想像しているほどヴォイドは甘い相手ではない。連れて行ったところで足手まといになるのが関の山だろう。
「つれってってくれよー」
「なーなー」
「いいだろー」
「前から言ってるけどな、ヴォイドは危ないんだぞ?」
「大丈夫だって! 俺の剣は最強だから!」
「ほらほら見ろよこの剣技」
そう言うと一人がおもむろに枝を振り回しだす。
「危ないからそれやめろ」
ペチペチと枝でたたかれるカルエス。
「…おい」
たいして痛くもないので放っておくことにしたものの、カルエスが一つのため息をつく。
「どうしたもんかね…」
楽しそうにたたいてくる子供たちを見ながら、カルエスはふと一つの名案を思い付いた。
「ついて行ってみたいか?」
「いいの!?」
「さすが話が分かるね!」
「まーあれだ。あんま期待すんなよ?」
約束を取り付けたことで、そそくさと作戦会議に移る子供たち。
…まだ具体的なことは何も言ってないんだけどな。楽しそうに話し合う子供たちを眺めながら、カルエスがポソッとつぶやいた。
しかしそのカルエス当人が、かっこいいところを見せてやろう、と静かに意気込んでいることを子供たちは知る由もなかった。
●
それから数日後、ハンター本部には他と趣を異にする依頼が掲載されていた。
『低級なヴォイドと戦うところをガキどもに見せてやってほしい。あくまで見せるだけでいい。 そもそもあいつらは戦う技術なんて持ってないしな』
「これは?」
「見学ツアーだそうよ。現実を見せるだとかなんとか言ってたわね」
依頼を選んでいるハンターたちの間で話題が広がる。
「子供たちも子供たちなりに考えることがあるってことなのかな」
「それはそうだとしてもだ。戦闘技術を持たない子供たちを連れて行くってのも随分な話に思えるけど?」
「どうせちょっとかっこつけたいんでしょ」
「あぁ、そういうことか」
…どこかでカルエスのくしゃみが聞こえた気がした。
リプレイ本文
●さぁ行ってみよう!
「ほら、ちゃんと挨拶しろ?」
「こんにちは!」
「はじめまして!」
「よろしくな!」
カルエスに促されて、言葉はどうあれ子供たち三人がペコリとお辞儀をする。
「私はリアルブルーから来ました、ロスヴィータ・ヴェルナー(ka2149)と言います。クラスは聖導士です」
ロスヴィータが子供たちに目線を合わせて自己紹介する。
「そして……カルエスさんをはじめ、フレンさん、ピオスさん、アカネさん。皆さんの近くにいる方々の言葉は、特に良く聞いて、行動すること、です」
フレン・ガーランド(ka3847)、ピオス・シルワ(ka0987)、天王寺茜(ka4080)の順に手で示しながら紹介していく。
「初めまして! 私も今日、初めての依頼なんだ。よろしくね!」
「わざわざ来てもらってわりぃな。今日はよろしく頼むわ」
フレンに続いて茜も子供たちに挨拶すると、引率役のカルエスが言葉をまとめる。しかしどうにも子供たちには落ち着きがない。
「さあ子供たち、プロハンターについてくるがいいアル! 敵は危険で恐ろしい怪物ども……勝手な行動は即、死を意味するアル」
李 香月(ka3948)の注意を理解しているのか怪しいところだが、子供たちから
「おー!」
という元気な返事が返ってきた。
そんな子供たちがそれぞれ木の枝を握っているのを見て、雑魔との戦いは遊びじゃないんだけどなぁ……。危険性を再認識させなきゃ。と、ピオスは決意を新たにしていた。
「立ち話も何だ、出発するか」
「おー!」
●イッツショータイム!
「おりゃ、出て来い!」
「とう!」
「そこだな!」
何かにつけて自分たちの持っている枝を振り回している子供たち。
「ちょっとばかりハンターの力をアピールしておいてもいいよね?」
「というと、今ここでやるってことですよね?」
そんな子供たちの様子を見ていたピオスの提案に趙 彩虹(ka3961)がふとした疑問を投げかける。
何も言っていないのに、何かしらの動きを察知した子供たちが集まってくる。
「なになに?」
「なんかやるのか?」
「ちょっと見てるんだよ」
子供たちから期待の目を浴びる中、ピオスの容姿が変化していく。青だった髪の色は赤に変化し、手の甲からは炎が上がる。
「ウィンドスラッシュ!」
突如として生じた風は、道端の木の枝をすべて落として木を丸裸にしてしまう。
「すげー!」
「かっけぇ」
「それ、俺にもできる?」
「たくさん練習すればできるようになるだろう」
それはピオスの、子供たちに正しく修行してほしいという願いを込めたセリフだった。
「ウィンドスラッシュ!」
「どかーん!」
木の枝を杖に見立ててはしゃぐ子供たち。それは剣じゃなかったのか? と突っ込みたくなるピオスだったが、楽しそうだったので言わないでおいた。
その後もがやがやと騒がしく歩いていた一行に、唐突に香月が注意を促す。
「……みんな静かに、敵さんのお出ましアルよ」
香月の指さす先には小さい犬型の雑魔が三体。
「相手は犬、犬、犬。よし、犬なら元の世界にだって居るんだから」
緊張した様子をみせる茜。
「お前らは見学だからな?」
敵を目の前にし、枝を構えてやる気満々の子供たちをカルエスが制する。
しかし子供たちに反駁の時間はなかった。周りのハンターたちが戦闘態勢に入ったからだ。
香月、彩虹、ロスヴィータの前衛組がターゲットを決め、それぞれの敵に向かう。
「子供たちのことは任せるっすよ」
両手盾を構えたフレンが子供たちに近づく。完全に守られるポジションであることに気づき子供たちが難色を示すものの、
「雑魔に近い人からいくよ! 堅くなれー!」
防性強化をかける、覚醒して様子の変わった茜を前にしては押し黙る他なかった。
そんな茜自身、内心では緊張していたが、うまく心の中に押しとどめられているようだ。
「よく見とけよ? 戦闘開始だ」
カルエスが剣を振り下ろしながら叫び、戦いの幕が切って降ろされた。
●これが戦場なり
「こっちアルよ!」
攻撃をかわしつつ適度な距離を保つ香月。噛みつこうと雑魔が襲い掛かるが、そのたびにスルリスルリと攻撃をかわしていく。
『ギャウン!』
一閃。後方からの光の矢が的確に雑魔に突き刺さる。
「手助けするよ!」
覚醒していたとはいえついさっきまでのピオスと比較して、その雰囲気のあまりの豹変ぶりに、こちらの戦闘を見ていた子供の動きが硬直している。
しかしそんなことお構いなし。また一閃。雑魔めがけてマジックアローが空を切る。
雑魔も警戒していたのか、今度の一撃はかわされてしまう。
けれどそのせいで香月に隙を見せることとなる。
雑魔がマジックアローをかわした先で待ち構えていた香月のヌンチャクが雑魔の体にえぐりこむようにヒットする。
『ギャッ』
短く呻吟する雑魔。
それを好機と取ってしまったのだろうか。子供の一人が棒を片手に雑魔に突っ込んでいく。
「動いちゃ駄目! カルエスさんの近くにいて!」
枝を振りかぶって突進する子供を茜がとめようとするが聞こえていないようだった。
周りのと比べて明らかに弱そうなやつが向かってくる。雑魔にとって一番仕留めやすそうな標的が自分から近づいてくるのだ。子供めがけて雑魔のほうも突っ込んでくる。
「この、当たれー!」
茜のアルケミストタクトから一筋の光が走る。が、とっさに定めた照準だったために機導砲は雑魔の脇を通りすぎて地面をえぐった。
「止まるアル!」
茜との二段構えで、香月の振るうヌンチャクが雑魔めがけて唸る。だが雑魔の正面から向かってくるヌンチャクに雑魔が噛みつき、ヌンチャクの片端を香月が持ち、もう片端を雑魔がくわえているという得も言えぬ状況となる。
「お姉ちゃん!」
さすがに異常事態だと気づいたのか、明らかに心配そうな声で子供が叫ぶ。
しかしその心配は無用だった。
事実上ヌンチャクが使えなくなったとはいえ、手にはハンドサポーターを装着している。雑魔ごとヌンチャクを手繰り寄せてその頭を手で鷲掴みにする。鷹爪功により鍛えられた握力の前に雑魔は成す術もなく体力を削られていく。
「これで終わりアル」
とどめと振り下ろされた拳脚をもろにくらい、
『ゥギャァ……』
最後のうめきとともに雑魔は消滅した。
「それっ」
ロスヴィータはホーリーライトを雑魔に向けて放つことで牽制しつつ、決定打は出さないでいた。
それはつまり、雑魔に隙を与えるということでもある。雑魔が噛みつこうとロスヴィータに迫る。
接近されすぎてしまい、ホーリーライトが間に合わない。
「っ!」
ロスヴィータの脚にがっしりと噛みつく雑魔。
いくらハンターとはいえ噛みつかれれば痛い。その痛みを歯を食いしばることで耐え、雑魔の位置を固定する。
子供がこちらを心配そうな目で見てきているのがわかる。当初の目的は達成だ。あとはこの雑魔を倒すだけ。
「ピオスさん!」
「了解だよ!」
ロスヴィータの脚すれすれ、雑魔だけを切り裂く風が吹きすさぶ。
鋭い風により八つ裂きにされた雑魔は断末魔の声をあげる間すらなく消滅した。
しかし雑魔が消滅したからといって噛みつかれた傷跡が癒えるわけではない。
「大丈夫なのか?」
傷を見てピオスが顔をしかめる。
「ええ、大丈夫です。これぐらいならヒールで十分治せますから」
ロスヴィータはほほえみながらそう言った。
『ギャァウ!』
「聖獣白虎……私に力を!」
雑魔を正面に捉え、聖獣白虎を思わせる容姿に変化する彩虹。
襲い掛かる雑魔の攻撃を彩虹は旋棍と蹴りによる近接格闘で受け流しつつ、雑魔に噛みつかれないように注意しながら攻撃を加える。
しかしどれもがさほど大きなダメージにはならない……ようにしていた。
「く……意外と強い……!?」
いくらハンターの攻撃といえども雑魔にはあまりダメージが入らない。そんな風に受け止めたのだろう。子供が心配そうな面持ちをする。
「破! 本気で行きますよ!」
そろそろ潮時だと考えた彩虹が叫ぶ。
本能的なものなのだろうか。彩虹から逃げるように雑魔が攻撃対象を子供たちへと変更した。
けれど雑魔にとって彩虹に背中を見せてしまったのは失策だった。
「いきます!」
子供たちへ向かう雑魔に彩虹のクラッシュブロウが直撃する。
『ギャゥ』
もはや虫の息となった雑魔の前にカルエスが躍り出る。
「あばよ、犬っころ」
カルエスの振り下ろした剣は雑魔をたたき切り、後には何も残らなかった。
子供たちの目は、カルエスが目の前で雑魔を倒したことでキラキラと輝いていた。
「どうだ? こんなもんだ」
カルエスがドヤ顔で子供たちに振り返った時だった。
「まだいるっす!」
いままでどこかに隠れていたであろう雑魔が子供たちに襲い掛かる。
それを盾でガードするフレン。おかげで子供たちにけがはない。
『ギャルル』
体勢を立て直し、再び襲い掛かってくる雑魔。
しかし、
「むだっすよ!」
フレンのクラッシュブロウが雑魔を弾き飛ばす。けれど大したダメージは入っていない。
「茜さん!」
「任せてよね」
アルケミストタクトを構える茜。
先ほどは急な出来事で外したが、今はしっかりと対象を捉えることができる。
放たれた一撃。その光は迷うことなく一直線に雑魔を貫き消し去った。
「まだ敵が潜んでいるかもしれません」
彩虹の言葉をうけその場の全員があたりに気を配る。
聞こえてくるのは風が木々を揺らす音などの平和的なもののみ。
「今度こそ終わったみたいだな」
気を張った状態に終止符を打ったのはカルエス。幕開けと幕引きの両方を担当したのは役得というものだろうか。
「お、終わった……? 終わったんだ……疲れたぁ」
今までの張りつめた空気が途切れ、茜はぺたんとしりもちをついてしまう。
「お疲れ様でした」
ロスヴィータが手を差し伸べる。
茜が立ち上がったのを見て、
「さて、お前らもいろいろ話したいこととかあるかもしれないが、まずは帰るぞ」
「うん」
カルエスの提案に異を唱える者はいなかった。
●ハンターってかっこいい
帰り道、行きとは比べ物にならないほどに子供たちは静かだった。
枝を振り回すでもなく、歩きながらチャンバラごっこをするわけでもなく。それ以前にただの一言もしゃべらなかった。
ちょっとやりすぎたか? と頭をかくカルエス。
「ほら、戻ってきたぞ」
カルエスの言葉の通り、一行は今日の集合場所まで帰還した。
「今日はつきあってもらえて助かったよ。ほら、お前らも」
子供たちの頭を押さえてカルエスも一緒にお辞儀をする。
「戦場は、どうでしたか?」
自分が見てきた守ってくれる背中。それに自分はなれただろうか。ロスヴィータのこの言葉にはそんな意味合いも含まれていた。
「うん。かっこよかった」
「俺たちまだまだだったんだね」
「よくわかったよ」
なかなか萎れてしまった子供たち。
「僕達が相手にしている敵は簡単に倒せる相手じゃないんだ」
ピオスがやさしく語り掛ける。
「ハンターになるのが夢なら、一人前になるまでは歪虚には手を出さずに大人しく修行をしてね?」
子供たちがハッと顔をあげる。
「俺たちにもなれるかな……」
「ちゃんとしたかっこいいハンターになりたい」
「そしたら俺たちでチーム組めるかな……?」
ハンターへのあこがれがちゃんとしたベクトルに向いてくれたな、と満足顔のカルエス。
「大丈夫っすよ。きっと前代未聞のチームになれるっす。あ、そしたら僕、取材に行くっすよ!」
「絶対取材受けられるくらいになる!」
「約束だからな!」
「待ってろよ!」
フレンの言葉が子供たちの背中を押したようだ。行く前とは違う、何か一皮むけた子供たちの笑う顔がそこにはあった。
「ほら、ちゃんと挨拶しろ?」
「こんにちは!」
「はじめまして!」
「よろしくな!」
カルエスに促されて、言葉はどうあれ子供たち三人がペコリとお辞儀をする。
「私はリアルブルーから来ました、ロスヴィータ・ヴェルナー(ka2149)と言います。クラスは聖導士です」
ロスヴィータが子供たちに目線を合わせて自己紹介する。
「そして……カルエスさんをはじめ、フレンさん、ピオスさん、アカネさん。皆さんの近くにいる方々の言葉は、特に良く聞いて、行動すること、です」
フレン・ガーランド(ka3847)、ピオス・シルワ(ka0987)、天王寺茜(ka4080)の順に手で示しながら紹介していく。
「初めまして! 私も今日、初めての依頼なんだ。よろしくね!」
「わざわざ来てもらってわりぃな。今日はよろしく頼むわ」
フレンに続いて茜も子供たちに挨拶すると、引率役のカルエスが言葉をまとめる。しかしどうにも子供たちには落ち着きがない。
「さあ子供たち、プロハンターについてくるがいいアル! 敵は危険で恐ろしい怪物ども……勝手な行動は即、死を意味するアル」
李 香月(ka3948)の注意を理解しているのか怪しいところだが、子供たちから
「おー!」
という元気な返事が返ってきた。
そんな子供たちがそれぞれ木の枝を握っているのを見て、雑魔との戦いは遊びじゃないんだけどなぁ……。危険性を再認識させなきゃ。と、ピオスは決意を新たにしていた。
「立ち話も何だ、出発するか」
「おー!」
●イッツショータイム!
「おりゃ、出て来い!」
「とう!」
「そこだな!」
何かにつけて自分たちの持っている枝を振り回している子供たち。
「ちょっとばかりハンターの力をアピールしておいてもいいよね?」
「というと、今ここでやるってことですよね?」
そんな子供たちの様子を見ていたピオスの提案に趙 彩虹(ka3961)がふとした疑問を投げかける。
何も言っていないのに、何かしらの動きを察知した子供たちが集まってくる。
「なになに?」
「なんかやるのか?」
「ちょっと見てるんだよ」
子供たちから期待の目を浴びる中、ピオスの容姿が変化していく。青だった髪の色は赤に変化し、手の甲からは炎が上がる。
「ウィンドスラッシュ!」
突如として生じた風は、道端の木の枝をすべて落として木を丸裸にしてしまう。
「すげー!」
「かっけぇ」
「それ、俺にもできる?」
「たくさん練習すればできるようになるだろう」
それはピオスの、子供たちに正しく修行してほしいという願いを込めたセリフだった。
「ウィンドスラッシュ!」
「どかーん!」
木の枝を杖に見立ててはしゃぐ子供たち。それは剣じゃなかったのか? と突っ込みたくなるピオスだったが、楽しそうだったので言わないでおいた。
その後もがやがやと騒がしく歩いていた一行に、唐突に香月が注意を促す。
「……みんな静かに、敵さんのお出ましアルよ」
香月の指さす先には小さい犬型の雑魔が三体。
「相手は犬、犬、犬。よし、犬なら元の世界にだって居るんだから」
緊張した様子をみせる茜。
「お前らは見学だからな?」
敵を目の前にし、枝を構えてやる気満々の子供たちをカルエスが制する。
しかし子供たちに反駁の時間はなかった。周りのハンターたちが戦闘態勢に入ったからだ。
香月、彩虹、ロスヴィータの前衛組がターゲットを決め、それぞれの敵に向かう。
「子供たちのことは任せるっすよ」
両手盾を構えたフレンが子供たちに近づく。完全に守られるポジションであることに気づき子供たちが難色を示すものの、
「雑魔に近い人からいくよ! 堅くなれー!」
防性強化をかける、覚醒して様子の変わった茜を前にしては押し黙る他なかった。
そんな茜自身、内心では緊張していたが、うまく心の中に押しとどめられているようだ。
「よく見とけよ? 戦闘開始だ」
カルエスが剣を振り下ろしながら叫び、戦いの幕が切って降ろされた。
●これが戦場なり
「こっちアルよ!」
攻撃をかわしつつ適度な距離を保つ香月。噛みつこうと雑魔が襲い掛かるが、そのたびにスルリスルリと攻撃をかわしていく。
『ギャウン!』
一閃。後方からの光の矢が的確に雑魔に突き刺さる。
「手助けするよ!」
覚醒していたとはいえついさっきまでのピオスと比較して、その雰囲気のあまりの豹変ぶりに、こちらの戦闘を見ていた子供の動きが硬直している。
しかしそんなことお構いなし。また一閃。雑魔めがけてマジックアローが空を切る。
雑魔も警戒していたのか、今度の一撃はかわされてしまう。
けれどそのせいで香月に隙を見せることとなる。
雑魔がマジックアローをかわした先で待ち構えていた香月のヌンチャクが雑魔の体にえぐりこむようにヒットする。
『ギャッ』
短く呻吟する雑魔。
それを好機と取ってしまったのだろうか。子供の一人が棒を片手に雑魔に突っ込んでいく。
「動いちゃ駄目! カルエスさんの近くにいて!」
枝を振りかぶって突進する子供を茜がとめようとするが聞こえていないようだった。
周りのと比べて明らかに弱そうなやつが向かってくる。雑魔にとって一番仕留めやすそうな標的が自分から近づいてくるのだ。子供めがけて雑魔のほうも突っ込んでくる。
「この、当たれー!」
茜のアルケミストタクトから一筋の光が走る。が、とっさに定めた照準だったために機導砲は雑魔の脇を通りすぎて地面をえぐった。
「止まるアル!」
茜との二段構えで、香月の振るうヌンチャクが雑魔めがけて唸る。だが雑魔の正面から向かってくるヌンチャクに雑魔が噛みつき、ヌンチャクの片端を香月が持ち、もう片端を雑魔がくわえているという得も言えぬ状況となる。
「お姉ちゃん!」
さすがに異常事態だと気づいたのか、明らかに心配そうな声で子供が叫ぶ。
しかしその心配は無用だった。
事実上ヌンチャクが使えなくなったとはいえ、手にはハンドサポーターを装着している。雑魔ごとヌンチャクを手繰り寄せてその頭を手で鷲掴みにする。鷹爪功により鍛えられた握力の前に雑魔は成す術もなく体力を削られていく。
「これで終わりアル」
とどめと振り下ろされた拳脚をもろにくらい、
『ゥギャァ……』
最後のうめきとともに雑魔は消滅した。
「それっ」
ロスヴィータはホーリーライトを雑魔に向けて放つことで牽制しつつ、決定打は出さないでいた。
それはつまり、雑魔に隙を与えるということでもある。雑魔が噛みつこうとロスヴィータに迫る。
接近されすぎてしまい、ホーリーライトが間に合わない。
「っ!」
ロスヴィータの脚にがっしりと噛みつく雑魔。
いくらハンターとはいえ噛みつかれれば痛い。その痛みを歯を食いしばることで耐え、雑魔の位置を固定する。
子供がこちらを心配そうな目で見てきているのがわかる。当初の目的は達成だ。あとはこの雑魔を倒すだけ。
「ピオスさん!」
「了解だよ!」
ロスヴィータの脚すれすれ、雑魔だけを切り裂く風が吹きすさぶ。
鋭い風により八つ裂きにされた雑魔は断末魔の声をあげる間すらなく消滅した。
しかし雑魔が消滅したからといって噛みつかれた傷跡が癒えるわけではない。
「大丈夫なのか?」
傷を見てピオスが顔をしかめる。
「ええ、大丈夫です。これぐらいならヒールで十分治せますから」
ロスヴィータはほほえみながらそう言った。
『ギャァウ!』
「聖獣白虎……私に力を!」
雑魔を正面に捉え、聖獣白虎を思わせる容姿に変化する彩虹。
襲い掛かる雑魔の攻撃を彩虹は旋棍と蹴りによる近接格闘で受け流しつつ、雑魔に噛みつかれないように注意しながら攻撃を加える。
しかしどれもがさほど大きなダメージにはならない……ようにしていた。
「く……意外と強い……!?」
いくらハンターの攻撃といえども雑魔にはあまりダメージが入らない。そんな風に受け止めたのだろう。子供が心配そうな面持ちをする。
「破! 本気で行きますよ!」
そろそろ潮時だと考えた彩虹が叫ぶ。
本能的なものなのだろうか。彩虹から逃げるように雑魔が攻撃対象を子供たちへと変更した。
けれど雑魔にとって彩虹に背中を見せてしまったのは失策だった。
「いきます!」
子供たちへ向かう雑魔に彩虹のクラッシュブロウが直撃する。
『ギャゥ』
もはや虫の息となった雑魔の前にカルエスが躍り出る。
「あばよ、犬っころ」
カルエスの振り下ろした剣は雑魔をたたき切り、後には何も残らなかった。
子供たちの目は、カルエスが目の前で雑魔を倒したことでキラキラと輝いていた。
「どうだ? こんなもんだ」
カルエスがドヤ顔で子供たちに振り返った時だった。
「まだいるっす!」
いままでどこかに隠れていたであろう雑魔が子供たちに襲い掛かる。
それを盾でガードするフレン。おかげで子供たちにけがはない。
『ギャルル』
体勢を立て直し、再び襲い掛かってくる雑魔。
しかし、
「むだっすよ!」
フレンのクラッシュブロウが雑魔を弾き飛ばす。けれど大したダメージは入っていない。
「茜さん!」
「任せてよね」
アルケミストタクトを構える茜。
先ほどは急な出来事で外したが、今はしっかりと対象を捉えることができる。
放たれた一撃。その光は迷うことなく一直線に雑魔を貫き消し去った。
「まだ敵が潜んでいるかもしれません」
彩虹の言葉をうけその場の全員があたりに気を配る。
聞こえてくるのは風が木々を揺らす音などの平和的なもののみ。
「今度こそ終わったみたいだな」
気を張った状態に終止符を打ったのはカルエス。幕開けと幕引きの両方を担当したのは役得というものだろうか。
「お、終わった……? 終わったんだ……疲れたぁ」
今までの張りつめた空気が途切れ、茜はぺたんとしりもちをついてしまう。
「お疲れ様でした」
ロスヴィータが手を差し伸べる。
茜が立ち上がったのを見て、
「さて、お前らもいろいろ話したいこととかあるかもしれないが、まずは帰るぞ」
「うん」
カルエスの提案に異を唱える者はいなかった。
●ハンターってかっこいい
帰り道、行きとは比べ物にならないほどに子供たちは静かだった。
枝を振り回すでもなく、歩きながらチャンバラごっこをするわけでもなく。それ以前にただの一言もしゃべらなかった。
ちょっとやりすぎたか? と頭をかくカルエス。
「ほら、戻ってきたぞ」
カルエスの言葉の通り、一行は今日の集合場所まで帰還した。
「今日はつきあってもらえて助かったよ。ほら、お前らも」
子供たちの頭を押さえてカルエスも一緒にお辞儀をする。
「戦場は、どうでしたか?」
自分が見てきた守ってくれる背中。それに自分はなれただろうか。ロスヴィータのこの言葉にはそんな意味合いも含まれていた。
「うん。かっこよかった」
「俺たちまだまだだったんだね」
「よくわかったよ」
なかなか萎れてしまった子供たち。
「僕達が相手にしている敵は簡単に倒せる相手じゃないんだ」
ピオスがやさしく語り掛ける。
「ハンターになるのが夢なら、一人前になるまでは歪虚には手を出さずに大人しく修行をしてね?」
子供たちがハッと顔をあげる。
「俺たちにもなれるかな……」
「ちゃんとしたかっこいいハンターになりたい」
「そしたら俺たちでチーム組めるかな……?」
ハンターへのあこがれがちゃんとしたベクトルに向いてくれたな、と満足顔のカルエス。
「大丈夫っすよ。きっと前代未聞のチームになれるっす。あ、そしたら僕、取材に行くっすよ!」
「絶対取材受けられるくらいになる!」
「約束だからな!」
「待ってろよ!」
フレンの言葉が子供たちの背中を押したようだ。行く前とは違う、何か一皮むけた子供たちの笑う顔がそこにはあった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 ピオス・シルワ(ka0987) エルフ|17才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/02/03 22:59:22 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/01/31 19:58:22 |