烏合の脅威

マスター:笹村工事

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
6~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/06/29 07:30
完成日
2014/07/03 20:00

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 耳障りな鳴き声と共に、黒の襲撃者は空より襲い掛かってきた。
「セト!」
 自分を気遣う声に応える余裕などなく、目玉を突き潰そうと突進してくるそれを、腕を盾にしてかろうじて防ぐ。
 だが無傷では済まなかった。獣の皮から作られた篭手を嘴が貫く。
 篭手のお蔭で浅いとはいえ、肉に突き刺さるその痛みに歯を噛み締めながら、突き刺した肉から嘴を引き抜いた直後で動きの鈍いそれに鉈を叩き付けた。
 肉を切り裂く感触が腕に伝わる。けれど最初から死体でもあるそれは、切り裂かれたにもかかわらず再び手の届かない空へと舞い上がった。
(浅かったか)
 焦りを怒りで塗り潰しながら、セトは闘志を込めた眼差しで敵を睨み付けた。

 カア、カァカアカアクアァァァ……――

 翼を広げれば、大人が手を広げたほどもあるだろうか。大きさを除けばそれはどこにでもいる烏のそれと変わりはない。だが、その身にまとう禍々しき気配は全うな生き物のそれとは大きく異なっていた。
 歪虚。正を負に転化し死より現れるモノ、あらゆる生者にとって敵であるそれが今ここに敵意を持って存在している。強大なモノであれば到底、普通の人間であれば歯の立たない存在ではあるが、今この場に居る烏の形をした歪虚は最下層に位置する存在、いわゆる雑魔である。数と武装さえ揃えれば普通の人間でも対抗できる相手ではあった。
 数が少なく、すぐ手に届く相手であれば、ではあったが。
 ゆったりと空に浮かぶように飛びながら、セト達十五人の男衆を囲んでいる雑魔の数は十を超える。二十には届かないだろうが、とてもではないが少ないとは言えない数であった。その上、相手は空を飛びながら襲い掛かって来る。不規則に襲いかかられたならば、とてもではないがセト達には勝ち目どころか持ちこたえる事すら不可能だっただろう。
 だが、状況が彼らに味方していた。
 雑魔の目的はセト達ではなく、セト達の背後に立っている小屋の中にある正のマテリアルを多量に含んだ一抱えほどの大きさもある紫水晶、いわゆる鉱物マテリアルと呼ばれる物の一種であった。村の象徴として農作業の節目節目にお祭りをする時だけ外に出す大切なそれを、雑魔たちは破壊しようとしているのだ。
 最初、村の象徴であるそれが収められた小屋が雑魔に襲撃され、かろうじて皆が武器を取り一時的に追い払った後、自分達の身の安全を守るために村の象徴であるそれを捨ててしまおうという声も上がった。
 けれど最後には皆、立ち向かう事を選び、今こうして立ち向かっている。それは村の象徴たる鉱物マテリアルそのものの価値ではなく、それを中心にして皆が喜びあった思い出、それを捨ててしまうような真似が出来なかったからだ。
 だからこそ、何度追い払おうと繰り返し襲撃を止めない雑魔たちに、彼らは傷を増やしながらも立ち向かっていた。
 けれど限界は近い。繰り返される襲撃に彼らには傷と疲労が積み重なっていく。このままでは、終わりは近いだろう。
 だが、彼らの目に諦めの色は無い。いずれ訪れる希望を信じているからだ。
「気張れよ、みんなっ!」
 傷を受けながら、それでも覇気を込めセトは仲間を励ます。
「きっと、きっと助けは来るっ! アイラがハンターズソサエティでハンターの人達を呼んできてくれる筈だ。だから、あと少しだ。助けに来てくれるハンターの人達を無駄足にさせないためにも、ここで俺らが気張ってみせようぜっ!」
 その声に応える声は力強く、希望を胸に彼らは再び雑魔たちに立ち向かった。
 救いの主が来る、その時までずっと。

 ハンター依頼

「火急の依頼です。ぜひ引き受けて下さいませんか?」
 穏やかな声で、かつて歪虚との戦いで左腕を失ったという剃髪のハンター職員の青年が貴方達に声を掛けてきました。
「ここから馬車で丸一日かかる場所にある小さな村に雑魔が出ました。どうやら、その村の象徴として祭られている鉱物マテリアル、それを破壊しようとしているようです。
 敵の数は十から十五の間、形状は通常の物よりも二回り以上は大きい烏の姿をしています。
 件の村へは、村を代表して来られた依頼人――」
 そう言ってハンター職員の青年は、傍に居る、ふわりとした亜麻色の髪をした二十歳前後の女性に視線を向ける。彼女の表情には疲れと共に、確かな意志が感じられた。
「アイラと言います。お願いです、どうか助けて下さい」
 深々と頭を下げる彼女の言葉を引き継ぐようにして、ハンター職員の青年は言葉を続ける。
「アイラさんが用意された馬車で、村には共に送ってくれるとの事です。
 現在、村の若い人たちが雑魔に対抗しているようですが、一時的に追い払うことは出来ても退治しきるまでには至らないようです。
 このままでは、村の人たちに死者が出るのは時間の問題です。
 是非、この依頼、引き受けてくれませんか?」
 どこか懇願するようなその声に、貴方達は―― 

リプレイ本文

 夜が明けるより少し前、ハンター達は取り得る人事を尽くして雑魔達を迎え撃つべく、それぞれの配置に就いていた。
 村の象徴ともいえる鉱物マテリアルの破壊を狙う烏雑魔の完全排除、それが今回の依頼である。
 ハンターズソサエティの支部からこの村へと馬車で来る道中、烏雑魔の完全排除が叶わなければ鉱物マテリアルをどこかに持って行って欲しいと村の代表であるアイラから聞いていたハンター達ではあったが、それを彼らと彼女たちは捨て依頼に臨んでいた。
 それは日も暮れかけた頃、烏雑魔が去った村に到着し、怪我だらけになりながらも烏雑魔から村の象徴を守り切った村の男衆を見たからであったかもしれないし、それぞれの想いと信念に導かれたが故の決意であったのかもしれない。
 だが理由はどうあれ、ハンター達はそれぞれの意思に従い人事を尽くしていた。
 それは例えば、次のような感じであった。

「鳥雑魔の猛攻から、良く今まで小屋を守り切ったものだ。貴方達の健闘も立派なものだと思う」
 傷だらけの村の男衆の健闘を、武術家としてのしなやかさと女性としての豊かさを併せ持った赤褐色のエルフの女性、クリュ・コークス(ka0535)が称える。それは傷ついた彼らの活力として心に響いた。
 同じように村人の為に動いたのは、実直と誠実さが形となったかのような男性、藤堂 楓(ka2108)である。彼は、まだ誰も犠牲者が出ていないことを喜びながら、
「なにか烏雑魔が出る前に手伝えることがあれば、お手伝いをさせて貰いたい」
 と申しで、男衆が烏雑魔に対抗するために出払っている間に滞った農作業を時間が許す限り片づけた。

 そういった村への手助けのみならず、もちろん烏雑魔への事前対策も抜かりなく行っていた。

 普段は物静かな気配を見せる青年、東條 克己(ka1076)が、鉱物マテリアルの収められた小屋周囲の足場を確認し、戦闘時の動きの邪魔にならないよう地面のおうとつを可能な限り整地すれぱ、リアルブルーで猟師をしていた男性、三船・啓司(ka0732)は、鉱物マテリアルの収められた小屋から少し離れた場所にある森の木の内、小屋を見渡せる位置にある登れそうな太い幹と枝を持つ木を見つけ出し、すぐに登り易いようロープが足場代わりになるようにかけていた。
 そして彼らが準備をする中、鍛え上げられた骨太の肉体と確かな知性の気配を感じさせる男性、クオン・サガラ(ka0018)は、小屋の屋根に登り周囲を見渡せる事が出来るかの下準備を行っていた。小屋は村の象徴である鉱物マテリアルを収める為に作られていることから、烏雑魔の爪やくちばしで幾らか痛んでいたものの、かなり頑丈であり多少の立ち回りをしても大丈夫であることが確認でき、そこから雑魔に対する対処を決めていた。

 そうして村へのケアや雑魔に対する対処準備を済ませる中、情報面での対応を行っていた残り二人も他のハンター達と合流し、最終的な確認も事前に行っていた。

「馬車の中でも話し合ったけれど、雑魔が来た時の防衛時の担当箇所や撃墜報告の方法は、さっき言った方法で良い?」
 最終確認を入れるように告げたのは、他人を安心させ惹き付けるような自信を感じさせる銀髪赤瞳の女性、アルマ・スカーレット(ka0668)である。その言葉を補強するように、
「良いと思うよ。さっき村の人達から聞いてきた、雑魔が来る方角や耐久力も合わせて考えても、それがベストだと思う」
 村人から雑魔の来る方角や強さを聞き皆に伝えた、飄々とした気配と柔らかな笑みを浮かべた青年、ヴァンシュトール・H・R(ka0169)が賛同する。すると、
「では、わたしは雑魔の機動力を削る事を第一に考えて羽を狙います。状況に応じて前衛の皆さんと合流することも考えますが、可能な限り援護と雑魔の牽制に専念したいと思います。鉱物マテリアルが目的な以上、こちらへの攻撃は本格的には来ないでしょうが、もしもの場合は援護を頼みます」
 サガラが不確定要素も考慮に入れた上での言葉を返す。それにヴァンシュトールは、
「良いんじゃないかな。残りの二人は、何かあるかい?」
 話をまとめるようにして東條と三船に最後の確認を取る。すると、
「俺は狙撃に専念する。それと皆は雑魔の数が減るまでは余力を残しておくようだが、俺は敵がこちらの射程圏内に入ったら即座に覚醒して事に当たる。数を減らすことも大事だろうからな」
 三船が静かな口調で応える。それに、
「良いと思います。俺は三船さんとは対極の位置から、可能であれば上空の相手に先制攻撃をするつもりです。やりましょう、みなさん。ヴォイドどもを一匹残らず叩き潰しましょう」
 東條はどこか暗い響きを声に滲ませながら返した。

 そんな風にハンター達は、時間が許す限り可能なこと全てを行った上での人事を尽くしていた。
 だからこそ、あとは烏雑魔が来るのを待つだけであった。
 そしてそれは夜明けが過ぎ、周囲が完全に照らされる頃、風を切る羽音と耳障りな鳴き声と共にやって来た。

「みんな、来たよ。それじゃ、打ち合わせの通りにやっていこう」
 肩の力を抜くような声を上げ、烏雑魔の襲来に最初に気付いたのはヴァンシュトールだった。並み以上の優れた視力を持っていた彼は、事前に村の男衆より聞いていた、これまで烏雑魔が訪れた方角を見張っていたこともあり、他のハンターに先んじて襲来に気が付いたのだ。
 その声に応えるように、それまで周囲を警戒していたハンター達は臨戦体勢を整えながら、それぞれの配置に動いた。
 サガラが即座に小屋の屋根に登り膝立ちで全周囲を見回せる様な体勢を取れば、小屋の入り口付近にはクリュと藤堂が就く。
 今回の雑魔に対する作戦では、雑魔が鉱物マテリアルに固執していることを利用し、鉱物マテリアルを餌とするようにわざと小屋の入り口を開けている。
 だからこそ、小屋の入り口を即座に守れるような位置にクリュは動いた。
 そして同じく入り口付近へ、彼女の動きを妨げない位置取りに注意しながら藤堂は配置に就いた。クリュよりもやや後方に位置するその場所は、即座に小屋の内部に入り、万が一小屋の中に雑魔が侵入しようとした際に対応しつつ、それと同時にクリュや他のハンター達の援護を行えるような周囲への配慮のある位置取りだった。
 そんな彼らを後ろにして、小屋の前方にはヴァンシュトールが、そして森と小屋の中間付近へは、
(村の人達にとっては思い出の品ってワケなんだから、しっかり守ってあげないとね)
 決意を胸にアルマが就いた。
 そうして、小屋を中心として後衛と前衛が埋まる。だが更に万全を期すように、小屋の周囲の切り開かれた場所から離れ、森付近に一人と、森の中に残りの一人が就く。
 その内の一人、森付近へと就いた東條は、小屋の上空を旋回するように飛び続ける烏雑魔に刺すような敵意を向けながら自らを鼓舞するためにも声を上げる。
「殲滅を開始する。逃げられると思うなよ……貴様らが存在すること自体が間違えだってことを思い知らせてやる。一匹も残さない、全て駆逐してやる」
 その声には、ただ依頼をこなす以上の激情が込められていた。本来なら温厚である筈の彼は、相手が歪虚であれば心の内に潜む憎悪を隠そうともしない。消息不明となってしまった兄を想う心が、彼をそうさせていた。
 そんな激情を見せる彼に対し、森の中に潜み、その中の一本の大木に戦況全体を見渡せる高さまで登り、幹を背に枝を足場にした三船はどこまでも静かだった。
 それはリアルブルーで猟師をしていたが故か、あるいは彼自体の性質なのか。冷静に状況を見まわし確認すると、狩りの為に自身の能力を解放した。
「よし、狩りを始めよう」
 言葉と共に、ためらうことなく覚醒する。
(動きを読め……奴を撃つんじゃない。頭一つ分、先を撃つ……) 
 狙いは次々に小屋の入り口へと殺到し始めた雑魔ではなく、窺うように飛ぶ数羽の内の一体。覚醒しスキルを使用しながら放たれた弾丸は狙い過たず頭部へと命中、その一体を完全に倒しきり、そして即座にその事を他のハンターに大声で伝える。
 そうした雑魔を倒したという声は、三船の声を始まりに次々に上がっていった。
 三船の対角線上にいた東條が魔導銃による射撃を行う。狙いは、同士討ちを避け逃走を防ぐために、小屋へと殺到し始めた雑魔ではなく未だ小屋の上を旋回する数体。
 初撃は運悪く羽をかすめる形で外れたが、それにより体勢の崩れた雑魔への容赦ない連撃が胸部へと命中。地面へと墜落したそれに止めを刺すような一撃を加えると、乱戦になりかけている小屋周辺の仲間への助けの為に走り出す。
 その少し前、次々に小屋目掛けて襲い掛かって来た雑魔を、小屋の前衛と後衛に就いていたハンター達は迎え撃っていた。
 同士討ちにならないよう、射線軸に注意して移動しながらアルマとヴァンシュトールは自身の得物を使いこなし、そして彼女らを援護するようにサガラは射撃を重ねる。
 サガラの援護射撃が雑魔の羽を撃ち、外れた物も雑魔の体勢を崩し動きを停滞させる。それが他のハンター達の助けとなった。
 そうしてサガラの援護を受けながら、アルマはジャンクガンを使い何度も撃ち放つ。だがジャンクガンの性能自体がそれほどでもないこともあり初撃と二撃目を外してしまったが、その後、二羽の羽、あるいは胸部へと命中させ、動きの鈍ったそれらの止めを刺した。
 同様にして、二羽をヴァンシュトールは倒す。小屋へと近づいてくる雑魔を優先的に対応した彼は、最初の一羽は自分にまっすぐ向かって飛んできたこともあり頭部へと命中させ一撃で倒し、続いて襲い掛かって来た雑魔には一撃は避けられたが、避けたせいで体勢を崩した雑魔に追撃を加える形で放った一撃が羽に命中し、動きが鈍った所で止めを刺した。
「これで六匹? 残りは――」
 アルマが雑魔の残数を確認した時、小屋の入り口に殺到した二羽が更に倒されていた。
 ほぼ同時に突っ込んでくる二羽の雑魔に、クリュは避けることなく真正面から迎え撃つ。それは村の象徴である鉱物マテリアルを身を挺してでも死守せんとする気迫がみなぎっていた。その、引くのではなく前へと進み打ち倒そうとする意志が動きとなり、雑魔に対する先制の一撃を放たせる。
 ジャマダハルの一撃を放つ。拳の延長線にあるその武器は、使い手であるクリュの日々の鍛練を表す様な鋭さを見せながら放たれ、羽を切り裂くように一撃を与えた。
 雑魔の体勢が崩れる。それに止めを刺すように、直突きから横なぎへと振るうような動きを見せ続けて放たれたジャマダハルの刃が雑魔の首を切り落とす。
 だが、それによりクリュの体勢も崩れる。その隙を突くようにもう一羽の雑魔がクリュに襲いかかっていく。
 けれど、その爪もくちばしも届くことはなかった。
 チェーンウィップの一撃が雑魔を打ち据える。クリュの援護に回るように動いていた藤堂からの攻撃を雑魔は避けられなかった。
 それは雑魔がクリュに集中していた事と、藤堂が状況を見ながら位置取りをしていたことが大きい。クリュ一人に集中していた雑魔が避けられる攻撃ではなかった。
 攻撃を食らった雑魔は、今度は藤堂へと意識を向ける。それがクリュに対する隙となり、藤堂が雑魔の注意を惹き付ける中、クリュにより容赦なく放たれた一撃が止めを刺した。
「――今、小屋の二人が二体倒したよ。これで残りは七体。そろそろ逃げ出されないことに気を付けてやっていこう」
 ヴァンシュトールの声に、他のハンター達は更に戦闘へと意識を集中した。
 その後の戦闘は、雑魔の鉱物マテリアルへの執着により決着を見せた。
 野生動物であれば数が減ればその時点で逃げ出すため、ハンター達が空を飛ぶ相手の全てを倒し切ることは不可能だっただろう。
 けれど、鉱物マテリアルをあえて餌にしたハンター達の作戦が功を奏した。
 歪虚としての業が烏雑魔達を動かしたのか、警戒するように上空を旋回していた雑魔達であったが、鉱物マテリアルの破壊の欲求についには耐えきることが出来ず、一斉に開かれた小屋の入り口へと殺到した。
 それをハンター達は全力で迎え撃つ。
 ヴァンシュトールが強弾と遠射を使い精度と射程距離を上げた一撃で雑魔の頭を撃ち抜けば、サガラは運動強化で動きを底上げした上で機導砲を放ち雑魔の胸を吹き飛ばすようにして倒す。
 そしてアルマが雑魔に接近した上で強弾で強化した一撃を雑魔の頭と胸に叩き込み倒せば、東條は残していた強弾と遠射を容赦なく使い、雑魔が逃げ出す余裕すら与えず撃ち滅ぼした。
 そして残り三羽、逃げ出すかどうか迷うそぶりを見せ始めた雑魔に、クリュはランアウトとスラッシュエッジを合わせて使い瞬時に間合いを詰め必殺の一撃を叩き込み、彼女に追走するように雑魔の間合いを詰めていた藤堂は温存していた瞬脚にランアウト、更にスラッシュエッジを使い確実に滅ぼした。
 最後の一羽、それは慌てて逃げ出そうとしたが、最後まで遠射と強弾を残していた三船の一撃により、あえなく狩り取られた。

 そうしてハンター達は依頼を果たし、村の象徴を無傷で守り切ったのだ。

「ありがとうございます!」
 雑魔を倒し切り村へと戻ったハンター達を村人たち全員が迎え入れる。村の気持ちを代表するかのように礼を告げたアイラの表情には、喜びと安堵が浮かんでいた。
 それは、全ての村人の顔に浮かぶ表情でもあった。その表情に、ヴァンシュトールの眼差しが柔らかく綻ぶ。
「うん、これだけの笑顔を守れたなら満足かな。みんなは、どう?」
 仲間であるハンター達へと向けた言葉に、返す言葉や表情は皆同じだった。
 そうして、村には平穏が訪れる。村の象徴である鉱物マテリアルの収められていた小屋は傷み、村の男衆にはすぐには癒えない傷も残っている。
 けれど、これからもこの村とそこに生きる人々は懸命に生きていくのだろうと思える力強さがその場にはみなぎっていた。
 そんな彼らの笑顔を見ながらクリュが、
「どうだろう、小屋の修理をするのも良いと思うのだが。私はするつもりだが、皆もどうかな?」
 達成感のある笑みを浮かべ仲間のハンター達に申し出ると、皆も同様の表情を見せ同意した。
 そうして、村の今後を助けるようなアフターケアも万全に果たし、本来の依頼以上の事を成し遂げ、村の人々の心に彼らと彼女たちの好意を刻み込んだ。
 
 これが、今回の一件の結末である。世界の命運には関わらないであろう小さな村、けれどそこに住む人々にとっては大事な物を守り、その上で村人たちへの配慮も欠かさなかった、あるハンター達の物語である。

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重体一覧

参加者一覧

  • 課せられた罰の先に
    クオン・サガラ(ka0018
    人間(蒼)|25才|男性|機導師
  • 戦局を見据える者
    ヴァンシュトール・H・R(ka0169
    人間(蒼)|28才|男性|猟撃士

  • クリュ・コークス(ka0535
    エルフ|25才|女性|疾影士

  • アルマ・スカーレット(ka0668
    人間(蒼)|20才|女性|猟撃士
  • 闇裂きの銃弾
    三船・啓司(ka0732
    人間(蒼)|23才|男性|猟撃士
  • 仕事人
    東條 克己(ka1076
    人間(蒼)|23才|男性|猟撃士
  • 下水道掃除人
    ツバサ・斉天大聖(ka1818
    人間(紅)|18才|男性|霊闘士

  • 藤堂 楓(ka2108
    人間(蒼)|23才|男性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼相談卓
ヴァンシュトール・H・R(ka0169
人間(リアルブルー)|28才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2014/06/28 15:42:00
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/06/25 00:26:09