ゲスト
(ka0000)
【MN】お茶会と人形と思い出と
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/08/20 22:00
- 完成日
- 2019/08/28 20:14
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
八百万の神がいるという地域があるという。
神々は日常のあれこれに宿っているというのだという。
死した人が神になったりするともいう。
ルゥルは大江 紅葉に聞いた話をエクラ教会の司祭のマークに説明したのだった。保護者代理はルゥルが知識を持っていることに感心し、褒めたのだった。
●侵入者
たそがれ城……なぞの場所にある謎の城。死者の世界と現世をつなぐとかつながないとか言われている場所だかもしれない。城は広く、成長しているとか、無限に広がっているとか言われている。
その城のとある塔にかつて災厄の十三魔と言われていた歪虚のレチタティーヴォは住んでいた。塔の入り口からてっぺんの居室まで、本人以外簡単に入ることはできない状況にしてある。
最近、プエルやプエル人形たちがうろつき、追い出れている。
そのため、安心して入った頂上の自室でうろつく複数のプエル人形やレチタティーヴォ人形プロトタイプ通称レサニプが入り込んでいるのを見た瞬間、動きが止まった。
「なぜ!」
その問いにレサニプは手紙を差し出す。
『すぐに返答をくれ!』
じわじわ近づいてくる高さ三十センチから四十センチの人形たち。
「断る」
レチタティーヴォはプエル人形たちを窓の外につまみ出した。プエル人形達は手足を動かし抵抗はしている。
『プエル人形たちぃ! なんてひどいことを!』
レサニプは怒っているようだが、目がボタンだし、口が動くような仕掛けもないため、ただ、声や動作から判断するしかない。
レサニプはレチタティーヴォに体当たりをした。
レチタティーヴォの攻撃、つまんで放り出した。
『ああああ』
「……お前まで降ってきたの……あ、レチタティーヴォ様」
頭や肩や箒にプエル人形やレサニプを張り付かせたプエルがやってきた。
「何……それ」
「父がくれたんです! それより、手紙見てくれました?」
満面の笑顔のプエルは魔箒で窓に近寄る。
プエルを追い出すことは可能だろうが、城の回りではプエルに味方する者が多い。一番厄介なのがプエルの家庭教師という設定で入り込んでくる紅葉だ。
しぶしぶレチタティーヴォは手紙を見た。
プエル、お茶会の神、当選記念 お茶会の開催お知らせ
神協会の当選に当たったので、お茶会の神様になりました。
それを記念して、お茶会を開きます。日時は××返答は○○までに。
お茶会に 参加します、参加させていただきます
「色々ツッコミがあるんだが、なぜ、どっちも参加なんだ」
「こうすれば、絶対、来てもらえるって紅葉が言ったんです」
やはり面倒な人物は紅葉だった。
「分かった、伺おう」
プエルが喜んだ瞬間、プエルや魔箒に引っ付いていたプエル人形たちとレサニプが落下したのだった。
●茶会の準備
プエルは台所でいそいそと準備をする。鼻歌の時は動きが止まる。
「お兄様……?」
「あ、イノア」
プエルの生前の妹イノア・クリシスが顔をのぞかせた。
「来てくれたんだ」
「それは、まあ……神様って何なのですか?」
お茶会のお知らせを出したため、当然の疑問だ。
「よく、わからないけど、紅葉が言うには、お茶会を広めたり、安全を守ったりする神だろうって」
「な、なるほど。当選するモノなのですか?」
「うーん、そういうシステムなんだろうって紅葉が言ってた。面白いし、害がなければいいかな」
プエルは素直に告げた。
「神というならば、何か変わったことありますか?」
イノアの問いにプエルは二秒ほど考える。
「僕人形たちが、クッキーを食べて、紅茶を飲んでた」
「……え?」
レサニプは布でできた顔に刺繍糸で口角が上がった笑顔が刺繍されている。動かないがなぜか飲食できる。
一方、同じ素材、同じ作られ方のプエル人形たちやニコラス人形は飲食ができなかった。しかし、プエルが神に当選したことで、飲食できるようになったという。
「初めて食べた瞬間、嬉しそうだったよ。頭から紅茶かぶってたけど。それに、まず、隠しにいくし」
「……」
「さ、準備するよ。イノアはゆっくりしていって。そうだ、母上に会ってみる?」
「……そ、それは」
「怖いよね……」
プエルは小さく笑う。
「僕の場合は、歪虚というクッションがあった。でも、母上の場合は、あの時、死んだってことだから」
「お兄様……」
「無理には勧めないけど、お茶会に来るよ?」
「……あ」
「なんか変だよね。僕が歪虚になって、それも終わって、夢の中だと一緒にいられるんだもの。(イノアが目を覚ましても覚えているかわからないけど)」
プエルは微笑む。
「……お、お兄様」
イノアの姿が縮んだ。
「え?」
「お兄様は歪虚で、年を取ってません。お母さまも……死んで……年を取っていません!」
「イノア……」
「これがでいいんですわ!」
イノアは無邪気に笑う。そして、城のどこかに向かった。
プエルは一抹の不安を覚えた。
「今の僕、ニコラスの意識も強いせいもあるのかな……イノア、夢の世界がいいって言い出すんじゃ……」
「ありえますよー?」
「うわっ、紅葉!」
紅葉が風呂敷包を持って現れた。
「私も思いましたよ? でも、忙しかったし、家臣や支えてくれるハンターもいたし、それどころではありませんでした。イノアさんの場合、ハンターや町の人に支えられて今まで来ています。でも、ほっとした瞬間どうなるかなんてわかりません。これはおはぎの材料です、私も作ります」
「……う、うーん」
「成り行きでいいと思いますよ? 夢の中、ルゥルちゃんも来たり、ハンターも来たり、きっと、色々考えて、戻りますよ」
「……そっか」
プエルはうなずいた。そして、茶会の準備の続きに移った。
「台所借りますよー」
紅葉もいそいそと台所に入っていった。
●母と話したい
イノアはプエル人形を見つけ追いかけ捕まえる。
「ふふ、面白いですわ!」
プエル人形は頭をなでられると、甘え始める。
「……お母様に会ってもなんて話せばいいのか分からないわ。だって、お母様にとって私はこの姿のまま? 死んだということを言ってはいけないの?」
プエル人形は動作をしているが、イノアには伝わらない。
「あれはお父様? 今のままよね? ……お母様と普通に話しているの?」
バルコニーにいる両親が見えた。
「私は気にしすぎなのかしら」
プエル人形がぽふぽふとイノアの手をたたく。何を言いたいのかさっぱり分からないが、慰めてくれているような気はした。
「……邪魔しにいってしまうかしら?」
イノアは庭を横切る、見知った影を見た。
「え? ルゥルさんもいるの?」
不思議な世界にイノアはたたずむのだった。
神々は日常のあれこれに宿っているというのだという。
死した人が神になったりするともいう。
ルゥルは大江 紅葉に聞いた話をエクラ教会の司祭のマークに説明したのだった。保護者代理はルゥルが知識を持っていることに感心し、褒めたのだった。
●侵入者
たそがれ城……なぞの場所にある謎の城。死者の世界と現世をつなぐとかつながないとか言われている場所だかもしれない。城は広く、成長しているとか、無限に広がっているとか言われている。
その城のとある塔にかつて災厄の十三魔と言われていた歪虚のレチタティーヴォは住んでいた。塔の入り口からてっぺんの居室まで、本人以外簡単に入ることはできない状況にしてある。
最近、プエルやプエル人形たちがうろつき、追い出れている。
そのため、安心して入った頂上の自室でうろつく複数のプエル人形やレチタティーヴォ人形プロトタイプ通称レサニプが入り込んでいるのを見た瞬間、動きが止まった。
「なぜ!」
その問いにレサニプは手紙を差し出す。
『すぐに返答をくれ!』
じわじわ近づいてくる高さ三十センチから四十センチの人形たち。
「断る」
レチタティーヴォはプエル人形たちを窓の外につまみ出した。プエル人形達は手足を動かし抵抗はしている。
『プエル人形たちぃ! なんてひどいことを!』
レサニプは怒っているようだが、目がボタンだし、口が動くような仕掛けもないため、ただ、声や動作から判断するしかない。
レサニプはレチタティーヴォに体当たりをした。
レチタティーヴォの攻撃、つまんで放り出した。
『ああああ』
「……お前まで降ってきたの……あ、レチタティーヴォ様」
頭や肩や箒にプエル人形やレサニプを張り付かせたプエルがやってきた。
「何……それ」
「父がくれたんです! それより、手紙見てくれました?」
満面の笑顔のプエルは魔箒で窓に近寄る。
プエルを追い出すことは可能だろうが、城の回りではプエルに味方する者が多い。一番厄介なのがプエルの家庭教師という設定で入り込んでくる紅葉だ。
しぶしぶレチタティーヴォは手紙を見た。
プエル、お茶会の神、当選記念 お茶会の開催お知らせ
神協会の当選に当たったので、お茶会の神様になりました。
それを記念して、お茶会を開きます。日時は××返答は○○までに。
お茶会に 参加します、参加させていただきます
「色々ツッコミがあるんだが、なぜ、どっちも参加なんだ」
「こうすれば、絶対、来てもらえるって紅葉が言ったんです」
やはり面倒な人物は紅葉だった。
「分かった、伺おう」
プエルが喜んだ瞬間、プエルや魔箒に引っ付いていたプエル人形たちとレサニプが落下したのだった。
●茶会の準備
プエルは台所でいそいそと準備をする。鼻歌の時は動きが止まる。
「お兄様……?」
「あ、イノア」
プエルの生前の妹イノア・クリシスが顔をのぞかせた。
「来てくれたんだ」
「それは、まあ……神様って何なのですか?」
お茶会のお知らせを出したため、当然の疑問だ。
「よく、わからないけど、紅葉が言うには、お茶会を広めたり、安全を守ったりする神だろうって」
「な、なるほど。当選するモノなのですか?」
「うーん、そういうシステムなんだろうって紅葉が言ってた。面白いし、害がなければいいかな」
プエルは素直に告げた。
「神というならば、何か変わったことありますか?」
イノアの問いにプエルは二秒ほど考える。
「僕人形たちが、クッキーを食べて、紅茶を飲んでた」
「……え?」
レサニプは布でできた顔に刺繍糸で口角が上がった笑顔が刺繍されている。動かないがなぜか飲食できる。
一方、同じ素材、同じ作られ方のプエル人形たちやニコラス人形は飲食ができなかった。しかし、プエルが神に当選したことで、飲食できるようになったという。
「初めて食べた瞬間、嬉しそうだったよ。頭から紅茶かぶってたけど。それに、まず、隠しにいくし」
「……」
「さ、準備するよ。イノアはゆっくりしていって。そうだ、母上に会ってみる?」
「……そ、それは」
「怖いよね……」
プエルは小さく笑う。
「僕の場合は、歪虚というクッションがあった。でも、母上の場合は、あの時、死んだってことだから」
「お兄様……」
「無理には勧めないけど、お茶会に来るよ?」
「……あ」
「なんか変だよね。僕が歪虚になって、それも終わって、夢の中だと一緒にいられるんだもの。(イノアが目を覚ましても覚えているかわからないけど)」
プエルは微笑む。
「……お、お兄様」
イノアの姿が縮んだ。
「え?」
「お兄様は歪虚で、年を取ってません。お母さまも……死んで……年を取っていません!」
「イノア……」
「これがでいいんですわ!」
イノアは無邪気に笑う。そして、城のどこかに向かった。
プエルは一抹の不安を覚えた。
「今の僕、ニコラスの意識も強いせいもあるのかな……イノア、夢の世界がいいって言い出すんじゃ……」
「ありえますよー?」
「うわっ、紅葉!」
紅葉が風呂敷包を持って現れた。
「私も思いましたよ? でも、忙しかったし、家臣や支えてくれるハンターもいたし、それどころではありませんでした。イノアさんの場合、ハンターや町の人に支えられて今まで来ています。でも、ほっとした瞬間どうなるかなんてわかりません。これはおはぎの材料です、私も作ります」
「……う、うーん」
「成り行きでいいと思いますよ? 夢の中、ルゥルちゃんも来たり、ハンターも来たり、きっと、色々考えて、戻りますよ」
「……そっか」
プエルはうなずいた。そして、茶会の準備の続きに移った。
「台所借りますよー」
紅葉もいそいそと台所に入っていった。
●母と話したい
イノアはプエル人形を見つけ追いかけ捕まえる。
「ふふ、面白いですわ!」
プエル人形は頭をなでられると、甘え始める。
「……お母様に会ってもなんて話せばいいのか分からないわ。だって、お母様にとって私はこの姿のまま? 死んだということを言ってはいけないの?」
プエル人形は動作をしているが、イノアには伝わらない。
「あれはお父様? 今のままよね? ……お母様と普通に話しているの?」
バルコニーにいる両親が見えた。
「私は気にしすぎなのかしら」
プエル人形がぽふぽふとイノアの手をたたく。何を言いたいのかさっぱり分からないが、慰めてくれているような気はした。
「……邪魔しにいってしまうかしら?」
イノアは庭を横切る、見知った影を見た。
「え? ルゥルさんもいるの?」
不思議な世界にイノアはたたずむのだった。
リプレイ本文
●夢へようこそ
星野 ハナ(ka5852)は見覚えのある場所だと思った。
人形達がとことこ移動するが、あれは見当たらない。
「あれぇ? レチタン人形はいないのですぅ? 心置きなくストローをぶっさしてあげようかと思ったのにぃ」
首を傾げた。いないのは仕方がない。
一旦、台所に向かった。
レチタン人形ことレチタティーヴォ人形プロトタイプ、最近の呼び名はレサニプはくしゃみをした。
ミグ・ロマイヤー(ka0665)は見知らぬ城で足を止める。
「ミグはなんでここに来たんじゃったか?」
思い出すために時間がかかる。好戦的な機導師として戦場を駆け巡っていたため、静寂が漂う所にいるということに本人が不思議がる。
廊下の角から小さな影が現れた。
武器を構えると、小さな影たちは怯る。
「人形ということは歪虚かのぅ?」
高さ三十センチくらい、三頭身の男の子ぽい三頭身人形。ミグの言葉に、首を横に振る。
手には手紙を持っている。人形はそれを差し出す。
「ふむ……茶会とな? 参加してよいと」
人形は激しく首を縦に振った。
「時間はあるのぅ。知的好奇心が満たせる場所はどこかのうぅ?」
人形は止まり、なにやら無言でやりとりをしていた。そのあと、ミグは図書室に案内された。
ルベーノ・バルバライン(ka6752)は茶会の招待状を手に城を歩く。
「なんと!」
視界の先に見覚えがあるけれども記憶にあるより幼い少女がいた。思わず目が輝く。
「イノア、これまたずいぶん縮んだな」
「べ、別に!」
「兄に合わせたかそれとも母に合わせたか知らんが、会うなら大人のお前の方がいいと思うが?」
「知りません!」
イノア・クリシスはいつもは見せない速さで消えていった。ルベーノはとりあえず、プエル(kz0127)のところに向かう。
アルマ・A・エインズワース(ka4901)は台所の近くにいた。
プエル人形が数体、トーテムポールのような状況で台所をのぞいている。
「面白いことあるのですぅ?」
プエル人形の一体は手にあんこをつけている。
「わふっ!?」
人形は別の人形の口にそれを当てた。すると、あんこが消えた。
「食べられるようになったんですぅ?」
人形たちはこくこくとうなずくと体勢が崩れ、人形達は山になった。
●台所
大江 紅葉(kz0163)は缶詰のあんこをせっせと取り出してボウルに移す。
「これは便利です」
家臣に怒られる、プルタブ引いて開けるタイプの缶だ。なんとか中身を取り出す。
「おはぎくらい作れます。作り方は知っているのです!」
紅葉はやる気一杯にもち米を釜に入れた。
メイム(ka2290)は茶会のために、菓子作りをする。
「ま、プエルも忙しそうだし、まずはあたしはあたしの準備をするよ!」
挨拶は後で良いだろう。
ジンジャークッキーをまず作る。形状は薄めの長方形。茶会の時間が近くなったところでダージリンの茶葉を使ってロイヤルミルクティーを作る予定だ。
「プエルがうろたえるのを見て楽しむのよ」
メイムはその様子を想像しながら作業を進めた。
マリィア・バルデス(ka5848)は茶会の招待状を片手に、どう挨拶するか悩みながらやってくる。
「お招きありがとうございます……って改まるのもなんだか変な気がするわね」
礼儀としてはそれが正しくとも、ここでの付き合い等を考えると慇懃無礼になりそうだった。
「おめでとう、プエル。歪虚から一気に神様になったんでしょう? すごいことだと思うわ」
「うん、何かよくわからない、抽選会があったらしいんだよ」
「でも、当選するのだってすごいことよ?」
プエルが照れるが、頭をなでられると小刻みに震えた。
「今日はアフタヌーンティーなんでしょう? ケーキにサンドイッチ、クッキーにマカロンもあった方がいいかしら? 就任祝いを兼ねたお茶会ならうんと豪勢にしなくちゃね」
マリィアは台所の空いているところで料理作りを始める。
アルマはプエルにあいさつする。
「わふーっ! お久しぶりです、プエルさん! 僕です!」
「僕ですって人知りません」
「わふー!?」
「うん、久しぶり」
プエルは微笑む。
この笑顔は、プエルというよりライブラリで見たニコラス・クリシスを思い出す。
「いつも思うんですけど、プエルさんとニコラスさん、どっちで呼んだらいいです?」
「どっちでも」
「ええ?」
「母上以外はプエルだし」
「そうです?」
「うん。僕は僕だし」
アルマはプエルを見つめる。ニコラスが持っていた諦めとプエルが持っていた自信がそこにある。
成長したらしい、夢の中だけど。
「なら、プエルさんで……まず、お茶会の神様、お似合いだと思うです! それと、あのお人形さんたち、餌付けしていいですぅ?」
「餌付け!? まあ、好きにあげれば」
アルマは持ってきたたくさんのクッキーの半分はお茶会用に渡し、プエル人形のために持って出かけた。
するとプエル人形達は集まってくる。庭に出るころには、頂戴頂戴頂戴と張り付いてくるし、よじ登るものもある。
「わふー、いい子にきちんと並ぶですー」
プエル人形は動きを止めた。そして、アルマの前に一列で並ぶ、横に。
「縦で並べとは言いませんでしたね。では、こちらからどうぞ」
クッキーをもらうと喜びを全身で表し食べ始めた。
「わ、わふー!」
クッキーが確かに口に消えていく。動いていないけれど、サクサク食べていく感じに消えていく。
「す、すごいです」
一通り配った後、二枚目を受け取ると突然、走り出した。呆然とするアルマが残された。
●準備などなど
ハナがやってくると、台所は熱気にあふれている。
「今日のお茶会にはぁ、ふわふわのスフレパンケーキを出したいなって思ったんですぅ。ぎりぎりに作るのでぇ、少しお城の中を探索してきますぅ」
プエルはうなずいた。
「そうそう、プエルさんお茶会の神様就任おめでとうございますぅ。女の子はアフタヌーンティー大好きなのでぇ、きっと信者さんが一杯できますよぅ。良かったですねぇ」
小さな花かごを贈り、にこにことハグをする。
「ありがとう……ん? 信者は女が多い可能性があるということ?」
「ですよ?」
プエルは難しい顔をしている。
ハナは出かける前に、紅葉に声をかけていく。なぜ米を炊いているのか謎ではある。
途中、小さいイノアを見かけたが、親戚かなと首を傾げるにとどまった。その先、キノコとプエル人形を捕獲しているルゥル(kz0210)に、スフレケーキの予告をしておく。
仕事をせず、ぼんやりと庭を見つめるエクエスを発見する。
「エクエスさんもおめでとうございますぅ」
にこやかに握手する。
「何が?」
「あれ? 仕えている方が神様になったらぁ、あなたも神様の眷属じゃないですかぁ。女の子はアフタヌーンティー好きですしぃ、大人はハイティー好きですしぃ、日本人は勿論お茶好きですしぃ、ものすごくお茶会の神様は需要があると思うんですぅ。あなたも大人気になれますよぅ」
「……地味」
「ええっ!?」
「そもそも私は……」
エクエスの愚痴が続く。ハナはなんとも言えない顔になるしかないが、時間が迫ったところできちんと断り台所に行くのだった。
ルベーノがイノアの件についてプエルに問う。
「茶会の内容からすると……人を守護する存在になったか」
「違う、お茶会を守護するんだ!」
「いや、違うな、茶会を愛する人間に慕われる存在になって行くだろう。寂しい夢の終わりが良かったと思うぞ。お前とイノアが幸せならそれに勝ることはない」
プエルの頭を撫でると、両手と頭突きで抵抗を受けた。
「ところで、イノアの状況は何なのだ?」
「あれは……たぶん、母に会いたいというのと、どうしようという気持ちの間だね」
「なるほど……招けば夢なら人は来るか?」
ルベーノはリシャール・ベリンガーの登場を願った。
ぼふん。
「ああっ、僕より大きくなってる!」
プエルが手を伸ばし、リシャールの頭をギュギュと押している。
「うわっ、ニコラスさん……いや、プエル?」
縮まされたリシャールはプエルより若干低く、幼くなる。
「人形にされないだけありがたく思え!」
「理不尽ですっ!」
ルベーノは解説を入れたかったがタイミングを逃す。プエルがリシャールを覚えているならそれでよいのだった。
「今、イノアが気にかけている相手だ」
プエルとリシャールが硬直する。
「こいつ、ベリンガーの跡取りだぞ」
「イノアさんは領主ですよ」
プエルとリシャールが同時に答えた。
「照れなくてもいいだろう!」
ルベーノはニヤリと笑った。
残された少年たちは困惑するが、リシャールはプエルにこき使われる未来が待っていた。
マリィアはサンドイッチを作る。ハムときゅうり、生クリームとフルーツの二種類。その他として、キノコ入りオムレツのサンドイッチも入る。
「ハイティーじゃないから、肉も酒もなしで良いのよね。その分、お菓子作りに集中できるのは楽しいわ。まあ、これは、ハイティーの内容かもしれないけれど……」
こだわりがあるような人物がいないようだった。そもそも、台所の隅っこでは、炊きあげたご飯に紅葉が困っていたが、大きな器に全部入れ棒でたたき始めていた。
そんな風景を見つつ、四種の味のマカロンやアップルパイやオレンジムースの仕上げに取り掛かる。茶は皮むきブドウ入りダージリン、薄切りリンゴ入りをそれぞれ準備するのだった。
ミグがいる図書室は静寂だった。招かれた礼を言うべきかとも思ったが、タイミングを逃した。茶会が始まってからでも良いだろう。
ミグは見てみたかった奇書を見つける。
「これはっ! 本当に存在しておったのかっ!」
手に取ると読み始める。
読み始めると手は止まらない。そして、読み終わった後、次に移ろうとした。
先ほどからいる人形たちが本棚の高い所の本をよじ登って取っていた。
「まあ、軽いから登れるかのぅ……なぬ!」
本を引っ張った拍子に棚から足を踏み外して本と人形が落下した。
ミグは本をキャッチする。
人形は床でワンバウンド後転がる。しばらくすると頭を掻いて「失敗しちゃった」という仕草をしていた。
そんな中、人形の一体が時計を見ている。
「そろそろ行くか」
後ろ髪は惹かれる。時間が許せばまた来ようと思った。
●茶会
ミグは主催者のプエルにあいさつをする。
「お招きに預かり光栄じゃ」
「うん、せっかくなら楽しんで……図書室にいたの?」
「うむ?」
「いや、紅葉の同類がいるなって」
ミグはプエルが見る方向に目を向けた。和装と言うべき姿の紅葉がいる。黒い謎の食べ物を配っていた。
「図書室のためにここに来るし」
「ほお、なら、話を聞いてみようかのう」
ミグはそちらに行った。
「そういえば、色々あったんですよぉ」
アルマはプエルがいなくなった後、忙しかった世界のことを話した。
「僕、大精霊さんと契約して守護者になりましたです。天秤なる守護者、ですって。とはいえ、そんなことは今はどーでもいいですけどぉ。お人形さんがおやつを食べられるようになったことはいいことです?」
メイムが人形たちに群がられやってくる。
「プエル、お招きありがとー。神認定に伴い、飲食ができるようになったらしいプエル人形たちを貸してね。プエルにもクッキーと紅茶分けてあげる」
メイムはにこにこと皿とティーポットをテーブルに置くと、プエル人形を引き連れて空いているテーブルに向かった。
「自然精霊さんで言うところの供物みたいな感じでしょうか。たくさん上げるといい感じに信仰になるです?」
アルマは知っている精霊や英霊である妻を思い浮かべながら、人形達を目で追っていた。
メイムがクッキーを二枚配ると人形達は小躍りした。一つ食べた後、突然、走り出した。
「え、えええ?!」
しばらくすると戻ってくる。
「まさか、隠しているの?」
こくこくと人形達はうなずいていた。これはアルマが見た謎の行動の答えになる。
メイムはマグカップを並べ、ロイヤルミルクティーを注ぐと、プエル人形たちに配った。
マグカップは人形達にとって大きな存在だ。そのため、持ち上げて飲めるモノと頭を突っ込もうとしてひっくり返すモノなど様々いる。
「頭からはかぶらなかった……ってかぶるのって?」
「ビール掛けの変形ですよねぇ」
給仕係のエクエスが通り過ぎてツッコミを入れていった。
「なるほど。あれ? でも持てるのと持てないのがいるということは……個体差が意外とあるってことかな。さて、次は砂糖をこうっ」
砂糖を湿った人形にドバッとかけた。どこからともなく、アリの団体がやってきて、一帯を黒く染める。アリたちは砂糖を持って帰っていった。
プエルの表情は一瞬引きつっていた。
マリィアはルゥルが笑顔で黙々と食べているのを眺める。
頭数としては一番多いプエル人形たちは自由に走り回っている。
「これどうぞ。あなたたちの形をイメージしたのよ」
マリィアはやってきた人形にジンジャークッキー上げると、人形は喜んだ。即刻頭部分からサクサク食べ始めた。
「形を気にしないのね……」
「本当なのです、似ているのです」
ルゥルが反応してくれたので、良しとする。
「こっちのサンドイッチはね、キノコ入りオムレツよ」
「みぎゃああ」
ルゥルはもきゅもきゅと食べていく。
「冷たい紅茶がいいかしら?」
ルゥルに問う。冷たいのも温かいのも対応できるようにしていたし、どちらもここでは合う。
「またこんなお茶会をしたいわね」
ルゥルの頭を撫でるのだった。
ルベーノは、ちびイノアが父ウィリアム・クリシスに驚かれ、ちびリシャールが何か語っている。
そのあと、イノアは母親にしがみつき何か言っていた。そのとき、イノアの姿が元に戻る。
「無事戻れたみたいだな。まあ、リシャールは仕方がないな」
ルベーノは苦笑した。
ハナは台所からクリームとフルーツ添えふわふわスフレパンケーキを作って運ぶ。プエルやルゥルが喜んで食べているさまは作り手にとって最高の喜びだ。
隅のテーブルで優雅に茶を楽しむ人形を発見した。ストローを手に静かに近づく。
ブスリ。
『ぎゃあああああああ』
「これで飲食自在ですぅ」
レサニプの口にストローを一突きして、ハナはやり切った表情で台所に戻っていった。
断末魔の後、レサニプは倒れている。いつもなら心配して群がるプエル人形たちは飲食物をもらうので忙しい。
そこに現れたのは、モデルとされる人物だった。ストローをとってやるかと手を伸ばしたところ、ストローが自動的に排出されていくので眺めていた。
『ううっ……なぜ、毎回、毎回……』
「……あ、レチタティーヴォ様!」
プエルが見つけ、走り出したが、人形達に足を取られた。
ベッドから起きると、そこには日常があった。
どんな夢か記憶にないが、懐かしい顔や見覚えのある顔があったような気はした。
星野 ハナ(ka5852)は見覚えのある場所だと思った。
人形達がとことこ移動するが、あれは見当たらない。
「あれぇ? レチタン人形はいないのですぅ? 心置きなくストローをぶっさしてあげようかと思ったのにぃ」
首を傾げた。いないのは仕方がない。
一旦、台所に向かった。
レチタン人形ことレチタティーヴォ人形プロトタイプ、最近の呼び名はレサニプはくしゃみをした。
ミグ・ロマイヤー(ka0665)は見知らぬ城で足を止める。
「ミグはなんでここに来たんじゃったか?」
思い出すために時間がかかる。好戦的な機導師として戦場を駆け巡っていたため、静寂が漂う所にいるということに本人が不思議がる。
廊下の角から小さな影が現れた。
武器を構えると、小さな影たちは怯る。
「人形ということは歪虚かのぅ?」
高さ三十センチくらい、三頭身の男の子ぽい三頭身人形。ミグの言葉に、首を横に振る。
手には手紙を持っている。人形はそれを差し出す。
「ふむ……茶会とな? 参加してよいと」
人形は激しく首を縦に振った。
「時間はあるのぅ。知的好奇心が満たせる場所はどこかのうぅ?」
人形は止まり、なにやら無言でやりとりをしていた。そのあと、ミグは図書室に案内された。
ルベーノ・バルバライン(ka6752)は茶会の招待状を手に城を歩く。
「なんと!」
視界の先に見覚えがあるけれども記憶にあるより幼い少女がいた。思わず目が輝く。
「イノア、これまたずいぶん縮んだな」
「べ、別に!」
「兄に合わせたかそれとも母に合わせたか知らんが、会うなら大人のお前の方がいいと思うが?」
「知りません!」
イノア・クリシスはいつもは見せない速さで消えていった。ルベーノはとりあえず、プエル(kz0127)のところに向かう。
アルマ・A・エインズワース(ka4901)は台所の近くにいた。
プエル人形が数体、トーテムポールのような状況で台所をのぞいている。
「面白いことあるのですぅ?」
プエル人形の一体は手にあんこをつけている。
「わふっ!?」
人形は別の人形の口にそれを当てた。すると、あんこが消えた。
「食べられるようになったんですぅ?」
人形たちはこくこくとうなずくと体勢が崩れ、人形達は山になった。
●台所
大江 紅葉(kz0163)は缶詰のあんこをせっせと取り出してボウルに移す。
「これは便利です」
家臣に怒られる、プルタブ引いて開けるタイプの缶だ。なんとか中身を取り出す。
「おはぎくらい作れます。作り方は知っているのです!」
紅葉はやる気一杯にもち米を釜に入れた。
メイム(ka2290)は茶会のために、菓子作りをする。
「ま、プエルも忙しそうだし、まずはあたしはあたしの準備をするよ!」
挨拶は後で良いだろう。
ジンジャークッキーをまず作る。形状は薄めの長方形。茶会の時間が近くなったところでダージリンの茶葉を使ってロイヤルミルクティーを作る予定だ。
「プエルがうろたえるのを見て楽しむのよ」
メイムはその様子を想像しながら作業を進めた。
マリィア・バルデス(ka5848)は茶会の招待状を片手に、どう挨拶するか悩みながらやってくる。
「お招きありがとうございます……って改まるのもなんだか変な気がするわね」
礼儀としてはそれが正しくとも、ここでの付き合い等を考えると慇懃無礼になりそうだった。
「おめでとう、プエル。歪虚から一気に神様になったんでしょう? すごいことだと思うわ」
「うん、何かよくわからない、抽選会があったらしいんだよ」
「でも、当選するのだってすごいことよ?」
プエルが照れるが、頭をなでられると小刻みに震えた。
「今日はアフタヌーンティーなんでしょう? ケーキにサンドイッチ、クッキーにマカロンもあった方がいいかしら? 就任祝いを兼ねたお茶会ならうんと豪勢にしなくちゃね」
マリィアは台所の空いているところで料理作りを始める。
アルマはプエルにあいさつする。
「わふーっ! お久しぶりです、プエルさん! 僕です!」
「僕ですって人知りません」
「わふー!?」
「うん、久しぶり」
プエルは微笑む。
この笑顔は、プエルというよりライブラリで見たニコラス・クリシスを思い出す。
「いつも思うんですけど、プエルさんとニコラスさん、どっちで呼んだらいいです?」
「どっちでも」
「ええ?」
「母上以外はプエルだし」
「そうです?」
「うん。僕は僕だし」
アルマはプエルを見つめる。ニコラスが持っていた諦めとプエルが持っていた自信がそこにある。
成長したらしい、夢の中だけど。
「なら、プエルさんで……まず、お茶会の神様、お似合いだと思うです! それと、あのお人形さんたち、餌付けしていいですぅ?」
「餌付け!? まあ、好きにあげれば」
アルマは持ってきたたくさんのクッキーの半分はお茶会用に渡し、プエル人形のために持って出かけた。
するとプエル人形達は集まってくる。庭に出るころには、頂戴頂戴頂戴と張り付いてくるし、よじ登るものもある。
「わふー、いい子にきちんと並ぶですー」
プエル人形は動きを止めた。そして、アルマの前に一列で並ぶ、横に。
「縦で並べとは言いませんでしたね。では、こちらからどうぞ」
クッキーをもらうと喜びを全身で表し食べ始めた。
「わ、わふー!」
クッキーが確かに口に消えていく。動いていないけれど、サクサク食べていく感じに消えていく。
「す、すごいです」
一通り配った後、二枚目を受け取ると突然、走り出した。呆然とするアルマが残された。
●準備などなど
ハナがやってくると、台所は熱気にあふれている。
「今日のお茶会にはぁ、ふわふわのスフレパンケーキを出したいなって思ったんですぅ。ぎりぎりに作るのでぇ、少しお城の中を探索してきますぅ」
プエルはうなずいた。
「そうそう、プエルさんお茶会の神様就任おめでとうございますぅ。女の子はアフタヌーンティー大好きなのでぇ、きっと信者さんが一杯できますよぅ。良かったですねぇ」
小さな花かごを贈り、にこにことハグをする。
「ありがとう……ん? 信者は女が多い可能性があるということ?」
「ですよ?」
プエルは難しい顔をしている。
ハナは出かける前に、紅葉に声をかけていく。なぜ米を炊いているのか謎ではある。
途中、小さいイノアを見かけたが、親戚かなと首を傾げるにとどまった。その先、キノコとプエル人形を捕獲しているルゥル(kz0210)に、スフレケーキの予告をしておく。
仕事をせず、ぼんやりと庭を見つめるエクエスを発見する。
「エクエスさんもおめでとうございますぅ」
にこやかに握手する。
「何が?」
「あれ? 仕えている方が神様になったらぁ、あなたも神様の眷属じゃないですかぁ。女の子はアフタヌーンティー好きですしぃ、大人はハイティー好きですしぃ、日本人は勿論お茶好きですしぃ、ものすごくお茶会の神様は需要があると思うんですぅ。あなたも大人気になれますよぅ」
「……地味」
「ええっ!?」
「そもそも私は……」
エクエスの愚痴が続く。ハナはなんとも言えない顔になるしかないが、時間が迫ったところできちんと断り台所に行くのだった。
ルベーノがイノアの件についてプエルに問う。
「茶会の内容からすると……人を守護する存在になったか」
「違う、お茶会を守護するんだ!」
「いや、違うな、茶会を愛する人間に慕われる存在になって行くだろう。寂しい夢の終わりが良かったと思うぞ。お前とイノアが幸せならそれに勝ることはない」
プエルの頭を撫でると、両手と頭突きで抵抗を受けた。
「ところで、イノアの状況は何なのだ?」
「あれは……たぶん、母に会いたいというのと、どうしようという気持ちの間だね」
「なるほど……招けば夢なら人は来るか?」
ルベーノはリシャール・ベリンガーの登場を願った。
ぼふん。
「ああっ、僕より大きくなってる!」
プエルが手を伸ばし、リシャールの頭をギュギュと押している。
「うわっ、ニコラスさん……いや、プエル?」
縮まされたリシャールはプエルより若干低く、幼くなる。
「人形にされないだけありがたく思え!」
「理不尽ですっ!」
ルベーノは解説を入れたかったがタイミングを逃す。プエルがリシャールを覚えているならそれでよいのだった。
「今、イノアが気にかけている相手だ」
プエルとリシャールが硬直する。
「こいつ、ベリンガーの跡取りだぞ」
「イノアさんは領主ですよ」
プエルとリシャールが同時に答えた。
「照れなくてもいいだろう!」
ルベーノはニヤリと笑った。
残された少年たちは困惑するが、リシャールはプエルにこき使われる未来が待っていた。
マリィアはサンドイッチを作る。ハムときゅうり、生クリームとフルーツの二種類。その他として、キノコ入りオムレツのサンドイッチも入る。
「ハイティーじゃないから、肉も酒もなしで良いのよね。その分、お菓子作りに集中できるのは楽しいわ。まあ、これは、ハイティーの内容かもしれないけれど……」
こだわりがあるような人物がいないようだった。そもそも、台所の隅っこでは、炊きあげたご飯に紅葉が困っていたが、大きな器に全部入れ棒でたたき始めていた。
そんな風景を見つつ、四種の味のマカロンやアップルパイやオレンジムースの仕上げに取り掛かる。茶は皮むきブドウ入りダージリン、薄切りリンゴ入りをそれぞれ準備するのだった。
ミグがいる図書室は静寂だった。招かれた礼を言うべきかとも思ったが、タイミングを逃した。茶会が始まってからでも良いだろう。
ミグは見てみたかった奇書を見つける。
「これはっ! 本当に存在しておったのかっ!」
手に取ると読み始める。
読み始めると手は止まらない。そして、読み終わった後、次に移ろうとした。
先ほどからいる人形たちが本棚の高い所の本をよじ登って取っていた。
「まあ、軽いから登れるかのぅ……なぬ!」
本を引っ張った拍子に棚から足を踏み外して本と人形が落下した。
ミグは本をキャッチする。
人形は床でワンバウンド後転がる。しばらくすると頭を掻いて「失敗しちゃった」という仕草をしていた。
そんな中、人形の一体が時計を見ている。
「そろそろ行くか」
後ろ髪は惹かれる。時間が許せばまた来ようと思った。
●茶会
ミグは主催者のプエルにあいさつをする。
「お招きに預かり光栄じゃ」
「うん、せっかくなら楽しんで……図書室にいたの?」
「うむ?」
「いや、紅葉の同類がいるなって」
ミグはプエルが見る方向に目を向けた。和装と言うべき姿の紅葉がいる。黒い謎の食べ物を配っていた。
「図書室のためにここに来るし」
「ほお、なら、話を聞いてみようかのう」
ミグはそちらに行った。
「そういえば、色々あったんですよぉ」
アルマはプエルがいなくなった後、忙しかった世界のことを話した。
「僕、大精霊さんと契約して守護者になりましたです。天秤なる守護者、ですって。とはいえ、そんなことは今はどーでもいいですけどぉ。お人形さんがおやつを食べられるようになったことはいいことです?」
メイムが人形たちに群がられやってくる。
「プエル、お招きありがとー。神認定に伴い、飲食ができるようになったらしいプエル人形たちを貸してね。プエルにもクッキーと紅茶分けてあげる」
メイムはにこにこと皿とティーポットをテーブルに置くと、プエル人形を引き連れて空いているテーブルに向かった。
「自然精霊さんで言うところの供物みたいな感じでしょうか。たくさん上げるといい感じに信仰になるです?」
アルマは知っている精霊や英霊である妻を思い浮かべながら、人形達を目で追っていた。
メイムがクッキーを二枚配ると人形達は小躍りした。一つ食べた後、突然、走り出した。
「え、えええ?!」
しばらくすると戻ってくる。
「まさか、隠しているの?」
こくこくと人形達はうなずいていた。これはアルマが見た謎の行動の答えになる。
メイムはマグカップを並べ、ロイヤルミルクティーを注ぐと、プエル人形たちに配った。
マグカップは人形達にとって大きな存在だ。そのため、持ち上げて飲めるモノと頭を突っ込もうとしてひっくり返すモノなど様々いる。
「頭からはかぶらなかった……ってかぶるのって?」
「ビール掛けの変形ですよねぇ」
給仕係のエクエスが通り過ぎてツッコミを入れていった。
「なるほど。あれ? でも持てるのと持てないのがいるということは……個体差が意外とあるってことかな。さて、次は砂糖をこうっ」
砂糖を湿った人形にドバッとかけた。どこからともなく、アリの団体がやってきて、一帯を黒く染める。アリたちは砂糖を持って帰っていった。
プエルの表情は一瞬引きつっていた。
マリィアはルゥルが笑顔で黙々と食べているのを眺める。
頭数としては一番多いプエル人形たちは自由に走り回っている。
「これどうぞ。あなたたちの形をイメージしたのよ」
マリィアはやってきた人形にジンジャークッキー上げると、人形は喜んだ。即刻頭部分からサクサク食べ始めた。
「形を気にしないのね……」
「本当なのです、似ているのです」
ルゥルが反応してくれたので、良しとする。
「こっちのサンドイッチはね、キノコ入りオムレツよ」
「みぎゃああ」
ルゥルはもきゅもきゅと食べていく。
「冷たい紅茶がいいかしら?」
ルゥルに問う。冷たいのも温かいのも対応できるようにしていたし、どちらもここでは合う。
「またこんなお茶会をしたいわね」
ルゥルの頭を撫でるのだった。
ルベーノは、ちびイノアが父ウィリアム・クリシスに驚かれ、ちびリシャールが何か語っている。
そのあと、イノアは母親にしがみつき何か言っていた。そのとき、イノアの姿が元に戻る。
「無事戻れたみたいだな。まあ、リシャールは仕方がないな」
ルベーノは苦笑した。
ハナは台所からクリームとフルーツ添えふわふわスフレパンケーキを作って運ぶ。プエルやルゥルが喜んで食べているさまは作り手にとって最高の喜びだ。
隅のテーブルで優雅に茶を楽しむ人形を発見した。ストローを手に静かに近づく。
ブスリ。
『ぎゃあああああああ』
「これで飲食自在ですぅ」
レサニプの口にストローを一突きして、ハナはやり切った表情で台所に戻っていった。
断末魔の後、レサニプは倒れている。いつもなら心配して群がるプエル人形たちは飲食物をもらうので忙しい。
そこに現れたのは、モデルとされる人物だった。ストローをとってやるかと手を伸ばしたところ、ストローが自動的に排出されていくので眺めていた。
『ううっ……なぜ、毎回、毎回……』
「……あ、レチタティーヴォ様!」
プエルが見つけ、走り出したが、人形達に足を取られた。
ベッドから起きると、そこには日常があった。
どんな夢か記憶にないが、懐かしい顔や見覚えのある顔があったような気はした。
依頼結果
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【相談卓】? メイム(ka2290) エルフ|15才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2019/08/18 22:03:56 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/08/18 00:03:38 |