• 血断

【血断】暁月の侵蝕

マスター:鷹羽柊架

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2019/08/21 09:00
完成日
2019/08/28 06:08

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 先程、ファリフは要塞管理官ヴェルナーとバタルトゥと会ってきた。
 ヴェルナーの様子は落ち着いていたものの、心配があった。
 とはいえ、ヴェルナーには味方がいることはファリフも承知であり、自身もまた、おそばせながら、彼の味方でありたいと思っている。
 ファリフが向かっているのは要塞管理補佐官……ヴェルナーの側近の一人であるアルフェッカ・ユヴェーレンの執務室。
 ノックをすると、部屋の主から返事が帰ってきた。
「お邪魔していい?」
 ひょっこり顔を出すファリフが見たのは疲れた様子のアルフェッカ。
 アルフェッカの疲労は、先日カペラがテト達と共に殴り込みをしたので、その仕事のフォローに回っていたから。
「ファリフちゃん、どうしたの?」
 何度も顔を合わせているので、ファリフに対するアルフェッカの口調も砕けたものとなっている。
「陣中見舞いに甘味と思ったけど、今は出店もパッとしてなくて」
「辺境部族の多くがここに避難しているから、気持ちだけでも嬉しいよ」
 にこやかに笑うアルフェッカは口調だけ柔らかくなって他の姿勢は変わらない。ファリフがヴェルナーを帝国を敵視していた頃から彼に帝国も辺境もなかった気がした。
 彼に会って、ドワーフ工房に身を寄せていた時、現状は国の面子がどうのとかは二の次。自分達の生活を命を脅かす歪虚を倒すことが優先だと思い知ったのだ。
 垣根を壊すことは彼自身の目的……行方不明になった姉を探す事にして、姉を拐った盗賊団の壊滅に繋がっていた。
 それが悪いことだとファリフは思っていなかった。
「管理官から何か言われたのかい?」
「違うよ。ここは煙草の臭いがしないね」
 ヴェルナーのお小言から逃げてきたのかと思ったアルフェッカが笑いかけると違うとファリフが告げる。
「ああ、ここじゃ吸えないよ」
 アルフェッカの執務はドワーフ工房の管理もやっているため、執務室が二つ存在しており、もう一つの執務室は通称煙草部屋であり、喫煙者の工房職人たちの溜まり場だという。
 非喫煙者も遊びに来たり、仕事を押し付けに来たりしているのはファリフも知っている。
「テトちゃんは今回の戦いに参加するの?」
 アルフェッカの問いかけにファリフが頷く。
「偵察がてら、戻ってくるって」
「そう」
 机の上に広げた書類を片づけるアルフェッカを見ていたファリフと視線を上げたアルフェッカと目が合う。
「アルフェッカさんはこれからどうするの?」
「どうって、俺はヴェルナー殿の部下だからね。あまり変わらないと思うよ」
「フォニケさんに結婚の約束を取り付けるのかと思った」
 素の表情で返すファリフにアルフェッカは手にしていた書類を離して机の上に広げていしまう。
「何、フォニケちゃんの悪影響かい? 部族会議から文句が出ないといいけど」
 明らかに動揺しているアルフェッカはおぼつかない手元で書類を集める。
「なんていうか、ボクにまで分かられるのもどうなのって思うよ」
 真顔で告げるファリフにアルフェッカは言葉が出ない。
 まぁ、保護者であるシェダルよりカペラの承諾を貰う方が大変だろう。
「こういう話をしてると馬に蹴られるんだっけ」
 そうだと思い出すファリフの言葉の後、兵士がアルフェッカの執務室に入ってきた。
「こちらに向かってくる敵大隊の他、気になる集団がいると部族なき部族より報告がありました」
 兵士の報告を聞いた二人は平地の森へと向かう。


 人類側の陣地に赴いたファリフとアルフェッカは先に到着していた部族なき部族のメンバーである山羊より事情を聴く。
 南西より近づいてくるシェルオ型が三十体と小型狂気が十体を発見したという。
 この群れは他の大軍と共に進軍していたが、少しずつ迂回するように離れていっては速度を上げている。大軍が人類側と交戦する頃にはこの群れは要塞都市の壁に到達できる。
「中に侵入するつもりかな」
「そう捉えている。計四十体とはいえ、恐慌状態にさせるには十分だろう」
 素直な感想を告げるファリフに山羊は頷く。
「外側はハンターと部族会議で頼む。内側は要塞都市治安部隊を回して、住民達を隔離させる」
 アルフェッカは事態をヴェルナーに報告する為、この場を辞した。
「ファリフ、テトがこっちは俺達に任せて、向こうに行って暴れてもいいと言っていたぞ」
 そっと山羊が言えば、ファリフは首を横に振る。
「大丈夫だよ。あっちには協力してくれる人達がいる。ヴェルナーさんも同じ轍を踏むような人じゃない」
 先ほどは不安げな様子を見せていたが、ヴェルナーの様子を見てファリフも腹が決まったのだ。
「ボクは大きなすることの為に何かを見過ごすのが嫌なんだと思う」
「ファリフ?」
 ぽつりと呟くファリフに山羊が返す。
「ボクはスコール族の長で、もしかしたら、部族にとって大きな決断をしなきゃ行けない時もあるかもしれない。でも、今は大首長に従う部族の長の一人だ。現時点での大きなことはバタルトゥさんやヴェルナーさんに任せて、ボクはやれることをしようと思う」
 にっこり笑うファリフに山羊は「そうか」と言い、いつも厳めしい顔つきを和らげた。
 そんな甘えもあと少しだろうから。

リプレイ本文

 ファリフと合流したハンター達はテトの到着を待っていた。
「しかし、歪虚も奇襲とはご苦労なことであるな。もっとも察知されてしまっては何にもならんがな」
 肩を竦めるのはミグ・ロマイヤー(ka0665)。
「今のノアーラ・クンタウは避難民でいっぱいだからね。今の状態でも危険なのに、歪虚が入ってきたら、大騒ぎになるから効果はあるんだけど」
 困ったものだといわんばかりにファリフが言う。
「まぁ、さっさとブッコロしちゃいましょう☆」
 いつも通り明るい星野 ハナ(ka5852)の言い分は皆、同意見だ。
「どうしたの? ルックスくん? テトくんが心配?」
 どこか落ち着かない様子のルックスに気遣うのはアイラ(ka3941)。
「テトもそうなんですが、ファリフ様はどうして今回は部族戦士をつれて来なかったんだろうって」
 そういえば、今回の同行に部族戦士がいなかったなとオウガ(ka2124)が思い出す。
「あー……ボクの話だよ」
 珍しく言葉の歯切れが悪いファリフが顔を顰めている。
「もしかしてぇ、大首長の話ですかぁ?」
 ハナの言葉にファリフが頷く。
 まだ現大首長バタルトゥ・オイマトが生きている中であるが、次の大首長に誰を就かせるかと水面下で動いている者がいる模様。
「部族戦士と部族会議って別物ですよね」
 疑問を投げかけるルックスにファリフは「そう」と返す。
「戦士にも部族はある。どこかの部族に属していれば、そこの長に諜報を頼んだりすることもある」
「つまりー? 今から誰を大首長にしようかって動きがあるってことー?」
 首を傾げるディーナ・フェルミ(ka5843)にファリフは頷く。
「何が起こるか分からないから、連れてこなかったんだ」
 ファリフががっくりと肩を落とすが、その肩にハナの白い手が添えられる。
「大丈夫ですよぉ、ファリフちゃんなら。オイマト族がまた次の大首長になるって誰が決めたんですぅ? テトちゃんも良い所いってると思いますぅ」
「テトも?」
 辺境を支えた蛇の戦士、シバの愛弟子の一人であり、部族なき部族の現リーダーのテトすらハナの中では次期首長に成りえると踏んでいる。
「うちのリーダーはつい先日まで敵の策略にハマって、逃亡生活してたけどね」
 部族なき部族の花豹が呆れたように肩を竦めていると、狐中・小鳥(ka5484)は「大変だねぇ」と応える。
「それにぃ、政治的素養なんてある程度あればあとは実地で磨けますよぅ。そこを押さえた上でぇ、清濁併せ飲めるか先頭に立って戦えるかが最後の決め手だと思いますぅ」
 うふふ、とハナが笑顔でどえらい台詞をぶっこんできた。
「言い分は分からんでもないのぅ。政治とはそういうものじゃ」
 年の功というには可愛らしい容姿のミグがしれっと頷いていた。
「やるの?」
 誰にともなく呟かれた小鳥の問いかけはしっかり届いている。
「……いや……まだバタルトゥは生きてますにゃ……」
 困ったような口調のテトはどうやら途中から聞こえていたようで、ルックスの後ろにいた。

 全員が揃ったところで素早く移動を始める。
「ところで、手分けした方がいいと思うのー」
 ディーナの提案にファリフは連絡を密にということで別れることにした。
 約四十体は数は多く感じるが、森は広い。
 固まって探すよりは敵に遭遇する確率が高くなるのが利点だ。
「早く見つけて殲滅することが大事だからね」
 そんなわけで、手分けして捜索することになった。
 ハンターは通信機器を持っており、連絡には困らない。
 アイラが超聴覚と超嗅覚で敵の動きを確認していく。
「結構近くになったよ。敵もかなりの速度で移動しているから、そろそろ準備した方がいいかも」
 敵の動きを聞き取ったアイラが言えば、ファリフが前に出る。
「とりあえず、一直線に切っていくね! ミグさん、角度変えてほしかったら教えて!」
 別の班にいるミグへファリフが告げると、快く返答が返ってきた。
「俺も手伝う」
 ファリフと共に前に出てきたのはオウガだ。ファリフ同様に大斧の使い手。移動時は斧を背負っていたが、今は大斧を構えている。
「そのまま切っていって大丈夫よ」
 アイラが声をかけると二人は木を切り倒していく。
 隣の班では木々が倒されていく音を聞きつつ、小鳥達が捜索をしている。
「んー? なんか、光ってるみたいだよー?」
 両手を庇にして目を凝らした小鳥がつま先立ちして確認している。
 視界の向こうから微かに光線が見えてくる。
「小型狂気ですかねー」
 応えたハナにも見えている。まるで辺り構わず撃っているようにも見えた。
 アイラ達にも確認すると、彼女達の方にも似たような光景が見えてきたと返答が返ってくる。
「偵察してくるにゃーん」
 テトが部族なき部族のメンバーと飛び出す。
「倒れてくる木に気を付けてねー」
 小鳥が見送りにテトが手を振って応える。
 すぐに超聴覚を展開するアイラの耳にテトたちの声が響いてきた。
「今、木に登って確認中みたい。小型狂気も結構なスピードで近づいてきているので注意した方がいいって」
 現在、こちらに向かってきているシェルオ型は今まで相手にしてきたタイプとは動きが違うようだと報告があり、短時間で入り込める部隊を組んだのだろう。
「小型狂気も強化されたのかなぁ。でも、倒しちゃえばいいよね」
「そうじゃのう」
 アイラからの報告を通信で聞きつつ、人差し指口許に当てて思案するディーナにミグも頷く。
「ん? シェルオ型に小型狂気が掴まって動いてるっぽい……もう戻ってきた方がいいよ」
 アイラが続報を皆に教えるように言うと、戻るように告げる。
 下手をすれば、捕まりかねない。
「皆、迎撃用意して」
 アイラの言葉より早く、ハンター達は迎撃準備を完了している。
 超聴覚を展開していない者の耳にも急いで戻ってくる足音が聞こえてくると、木を掻き分け、テト達が戻ってきた。
「来るにゃ!」
 部族なき部族が戻ってくるのと入れ違うように前衛が前に出る。
 ファリフがもう一本、木を倒すと更に見通しがよくなった。
 目の前にはシェルオ型に掴まっている小型狂気が微かに見える。
「ドンピシャですねぇ☆」
 どこか呑気なハナが陰陽符「四天封滅」を指に挟んで構えた。
 射程ギリギリに入ってきた敵目がけて五色光符陣を発動させる。眩い発光で敵の影を知らしめる。
「十時の方向! 思いっきりやっちゃってくださぁ~い!」
 射程範囲内の横に敵が広がって進んでいることに気づいたハナはミグに支援射撃を要請した。
「了解じゃ!」
 ハナの要請に応じる為、ミグが機導砲・紅鳴を展開し、己のマテリアルを武器に纏わせる。アルケミックパワーで増幅させたマテリアルを武器に込めた。
「ゆくぞ! ミグの特別な一発じゃ!」
 高速射撃で弾の速度を上げ、集中力を要する解放錬成を制御し、狙いを澄ませて敵陣へと着弾する。
 周囲の敵を巻き込み、爆発が起きた。
 切り倒されていない木が吹き飛ばされ、敵が更に被害を受けていく。
「一気に片づけて、フォニケさんとお肉を焼くの!」
 星神器「ウコンバサラ」を手にしたディーナが叫び、近づいてくる敵へセイクリッドフラッシュを発動させる。
 光の波動をくらった歪虚は動きを止めてしまう。
「行くよー!」
 同じ班分けの部族なき部族の山羊や花豹と共に動きを鈍っているシェルオ型へ向かっていく。
 動かなくなっているシェルオ型の隙を突いたと彼等は思った。
「危ないよ!」
 花豹がディーナを突き飛ばすと、シェルオ型の一体がディーナめがけて炎に似たオーラを放つ。
 ディーナの鼻を掠るスレスレで躱すことが出来たが、そのまま地に倒れ込んでしまう。
「この!」
 崩れた体勢で武器をシェルオ型に投げつけたディーナはすぐに起き上がり、鎚斧を回収し、範囲から外れた敵めがけて再びセイクリッドフラッシュを放った。

 きびきびとしたステップと歌で敵を圧倒させているのは小鳥だ。
「もう一回聞きたいよね?」
 唇が弧を描いて問う小鳥への回答は敵からの攻撃。
 シェルオ型が爪を立てて小鳥に飛びかかると、彼女は構えていた武器で敵に斬り付ける瞬間に捻りを入れ、シェルオ型に掴まっている小型狂気の目玉に向けて刃を突き立てた。
 視界に入ってくるのは大きいサイズのシェルオ型。
 大きな体躯だが、移動速度は小鳥から見ても速いと感じる。
 小鳥は怖れるどころか、アイドルは笑顔が基本といわんばかりに可愛らしく微笑む。
「星神器の力を……オロチアラマサ、行くよー!」
 ライブステージでこれから歌を披露するように高らかに声を上げる。
 くるりと素早くターンをした小鳥は大きいサイズのシェルオ型目がけて星神器「草薙剣」を振り下ろした。
 剣が持つ「神殺」の理を秘め、オロチアラマサの能力でシェルオ型に相応しい連撃を繰り広げる。
 最後の一撃が決まると、シェルオ型の巨体が倒れた。
「っと……」
 周囲を見回すとまだ敵の姿がある。射撃支援中のミグへ敵が行かないように小鳥はステップを続ける。
「さぁ、戦えるアイドルのライブはこれから。アンコールもイケるよね!」
 マテリアルを更に練り上げる小鳥は魔法の歌の効果を共鳴させた。

 もう一方の前線では歪虚が固まって襲ってきていた。
「下がって!」
 アイラの声が響くと、オウガとファリフがそれぞれ左右横に飛ぶ。
 歪虚の敵意に曝されるアイラの背に白龍にも似た虹色の翼が広がると、白龍のドラゴンブレスが再現される。
 直線状にいた歪虚はまともに光線を浴びてしまってハンター達への攻撃が停止してしまう。
「オウガ! あっちの方向から行くにゃ!」
 テトが声をかけると、オウガは助言に従って敵陣へと突っ込む。助言をするだけしてテトはハナの方へと走っていく。
 反対側からファリフが敵を引き付け、オウガが向かう方向へと走ってきた。
 ファリフがやりたいことを察したオウガはにやりと笑う。
「さぁ、出番だよ!」
 ポーン、と跳躍したファリフはオウガに敵を押し付けるように退散する。
「ヘッ! いいのかよ、出番取っちまって!」
「たまにはね!」
 短い減らず口を叩き合った後、ファリフは別の方向の敵へを叩きに向かい、オウガはカーネーロジアを発動させるべくマテリアルを身体中に滾らせた。
「っしゃ! かかってこい!」
 シェルオ型の動きはオウガの瞬発力より高く、複数の鋭い爪が彼の皮膚に食い込む。
「いくぜぇえええ!」
 滾ったマテリアルのせいか、戦いのテンションか、痛みを感じる暇もなくオウガは長柄の魔斧「モレク」を振り回す。
 周囲の歪虚を巻き込み、斧を叩きつけていく。サイズの大きいシェルオ型も吹き飛ばされ、小型狂気やサイズの小さいシェルオ型が潰されていった。

 後衛のミグは主にサイズの大きいシェルオ型の支援射撃を行っていた。殆どの歪虚が倒されて、サイズの大きい歪虚が残っている状態。
「こっちお願いしまーっす!」
 部族なき部族のルックスがシェルオ型を引き付け、ミグが射撃で倒していた。
「そちらはどうじゃ!?」
 ミグが問うのは中型サイズのシェルオ型を相手している小鳥だ。
「大丈夫だよ! 私は戦えるアイドルなんだから♪」
 敵との交戦に息を切らしかけていても、小鳥は疲れた様子を見せない。
「歌姫も大変だねぇ」
 花豹がふふりと笑ってシェルオ型の背に一撃を入れて小鳥の方へと押す。
「どこでも戦えるところでもライブ会場だからね!」
 地を蹴った小鳥は自分の方へ向けられたシェルオ型に止めを刺すべく、星神器「草薙剣」を振り上げた。
 肩から胸にかけて思いっきり斬りつけられたシェルオ型は深いダメージに耐えられずに倒れた。
 敵の姿を探していたディーナは通信に気づく。

 殆どの歪虚が倒されていく中、サイズの小さいシェルオ型三体、小型狂気の四体が戦いに隠れて進んでいく。
 あと少しで城壁。
 この歪虚達の身体能力ならば、軽々と中へと入り込むことが出来るだろう。
 破壊行動で人類側の恐怖を煽り、恐慌状態へとなり、部族会議を怯ませる一手になりえる。
「まぁ、よく考え付いたものですねぇ」
 横から差し込まれる声にシェルオ型が怯んだように振り向く。
 そこにいたのはハナとテト。
「見つからないように敵に近づくにはどうしたらよいかとかぁ、自分が要塞都市を落とすつもりならどのルートを選ぶかとか考えればぁ、ある程度敵のルートの予測は出来そうな気がしませんかぁ?」
 敵を知るのは戦術の基本だ。
「殆どの歪虚は倒せましたにゃ、ここで逃す気はありませんにゃ」
 テトが剣を抜き放ち、シェルオ型に切っ先を向ける。
 先に動いたのは小型狂気。
 狂気感染をハナに向けるが、それは光の結界と共に小型狂気へと返された。
 テトが動けなくなった小型狂気を真っ先に倒すと視界を奪われていたシェルオ型が回復して、テトめがけて魔法攻撃を発動させる。
「うわ……!」
 なんとか身を躱したテトだが、左肩から腕にかけてダメージを受けてしまう。
 二体をテトに当てて、もう一体は城壁の中へと駆け出していた。跳躍するため、地を蹴ったシェルオ型の視界が光に焼かれて地に落ちる。
「テトちゃんに手ェ出しといて逃げ切れると思わない事ですよぉ」
 符刀を握り締め、ハナがシェルオ型を見下ろす。
「ご安心してくださいな。全員倒しますので」
 ハナが少し身体をずらすと、駆けつけたトリシュヴァーナがテトを守り、シェルオ型を吹き飛ばしている。
 倒れ込んでいるシェルオ型の死角から猛スピードで駆けてくる影があった。
「どこからきたのー! 逃がさないのー!」
 勢いよくディーナが走ってきていた。星神器「ウコンバサラ」を握りしめて思いっきりシェルオ型へ振り下ろす。

 要塞都市城壁を目指す歪虚の殲滅が確認されると、ハンター達は合流する。
「……また無茶したのね」
 ため息交じりに呟くのはアイラだ。オウガももう慣れたという様子。
 目の前にはディーナに治療されているテト。
「あ、これは……これですにゃね……」
 オロオロしているテトは言い訳しようとしている模様。
「まぁまぁ、怪我もすぐに治るからいいじゃない」
 小鳥がやんわりフォローしてくれた。
「とりあえず、ヴェルナーさんに報告してくる」
 踵を返したファリフは歩き出す。
「あ、ファリフ!」
 居た堪れなくなったテトが行こうとするが、背後からハナに抱きつかれて動けなくなる。
「言い忘れてたんですけどぉ、テトちゃんらしく思うように部族を率いてくれればいいですよぅ」
 よしよしと頭を撫でられてテトは俯いてしまう。
「はいにゃ……」
 震えるテトの声にアイラが口元を緩ませ、更に抱きつく。
「ここは笑顔でしょ!」
 バランスが崩れて三人で地に転がる。
「しょうがない奴らじゃのう」
「雨が漸く止んだんだろ」
 呆れるミグにオウガが返す。
 ふと、振り向いた小鳥は他のエリアを攻めていた歪虚が引き返すところを見ていた。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 伝説の砲撃機乗り
    ミグ・ロマイヤー(ka0665
    ドワーフ|13才|女性|機導師
  • 援励の竜
    オウガ(ka2124
    人間(紅)|14才|男性|霊闘士
  • 太陽猫の矛
    アイラ(ka3941
    エルフ|20才|女性|霊闘士
  • 笑顔で元気に前向きに
    狐中・小鳥(ka5484
    人間(紅)|12才|女性|舞刀士
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/08/19 11:04:32
アイコン 森の中でバトル
星野 ハナ(ka5852
人間(リアルブルー)|24才|女性|符術師(カードマスター)
最終発言
2019/08/21 01:10:11