ゲスト
(ka0000)
【MN】夕霧立てば 宴の支度
マスター:凪池シリル

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 8日
- 締切
- 2019/08/25 22:00
- 完成日
- 2019/09/07 21:47
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
──かくして人類は邪神に敗北し、クリムゾンウェストもリアルブルーも邪神に飲み込まれ、ロッソ転移からの五年間を永久ループすることになった。
とはいえやはり、それだけの長い期間を与えられるだけありこの世界はやはり特別だった。例を見ない数のものが「イレギュラー」としてループの記憶を残している。
しかも、彼らはその記憶の中でバニティーから全ての説明を受けているのだ。
まだ終わっていない。ここが邪神の内部なら、この中から世界を再誕させる可能性は残されている。諦めずに、この世界から再び希望を灯すことが出来ればきっと……──
そうして彼らは五年間をやり直した。互いに「イレギュラー」である同士はすぐさま互いを認識しあい、早いうちからどうすべきかを話し合っていた。やはり、このループの中で邪神を倒すべきだろう。そうして、世界を勝利の希望で包む。
一度見た相手だ。敗北の理由をきちんと分析して対抗すれば可能性はあるはずだ。彼らは概ね元の歴史を辿りながら、邪神に勝利する道筋を探す。再び敗北し巻き戻ろうとも──それはむしろ、挑戦のチャンスは幾らでもあるのだ、と前向きに捉えながら。
そうしてとうとう、彼らは邪神に勝利した。
世界は勝利の喜びに包まれて──そしてまた五年前に戻った。
イレギュラーたちは再び話し合う。何が悪かった。他に何が出来る。
……誰かが言った。生き残った人が──すなわち世界を再誕させるだけの希望を抱くものが──少なすぎたんじゃないか。何せ邪神に取り込まれた段階で「価値がない」とされたものは保存されていないのだ。その上で邪神討伐はクリムゾンウェストにかなりの被害をもたらす。作戦を更に洗練させ、これまでの闘いもすべて見直して、地上を守る戦力をもっと残した上で邪神に勝利しなければならないんじゃないか。この意見に皆が納得し、様々な試みが行われた。
更に少ない人員で勝利する為の作戦を成功させるためにはまた膨大な回数の試行が必要だった。その度に邪神に敗北し殺される記憶を重ねながら彼らは諦めずに闘いを続けた。
勝利した。巻き戻った。まだ救うべき人が足りないかと作戦の見直しを重ねた。巻き戻った。歴史が変わった結果邪神の性質が既知のものと大きく変わってしまうなんてこともあった。ループの記憶があることを活かして、スペリオル計画の暗部を先に暴露し、強化人間が正しくリアルブルー精霊と契約する存在に歴史を修正するなんて試みも行われた。結果イクシードアプリが蔓延することもなく邪神はリアルブルーに降臨することは無くなり、そして封印されなかった為予定より早くクリムゾンウェストに出現し世界は滅びた。巻き戻った。
一度投票結果を封印に変えるのはどうだ、と誰かが言い出した。とにかく世界が終わる時点で、奇跡が起こると信じる人たちの頭数が必要だというなら、一旦、とにかく生き残る人が多い結果を目指すべきじゃないか。兎に角考えられることはやってみようと言うことになった。
まず投票結果を変えることが容易ではなかった。多くの「何も覚えていない」ハンターたちは当然のように何を温いことを、と反発して──自分だってそう思っていた意見の説得材料を探すというのは相当に難儀することだった。
それでもやはりまたもの膨大な試行回数を経て、投票結果を封印にすることを、この選択こそ希望なんだと多くの人に思わせることに成功した。邪神に向けて封印が行われる。その結果が──なんだかよく分からないうちに、世界は巻き戻った。
分かってきたことはある。まず、「本来死ぬはずだった人間」を生き残るように修正しても、そこから先彼らはさほど変化しない。何せここはあくまで「記録の元に再現」しているにすぎないのだ。予定と変わった部分はいわば演算によるシミュレートであり、既存データを大きく逸脱できない。最大といえるのが大精霊に関わる部分。邪神に取り込まれた時点で彼らは完全に消滅しているのだ。彼らの力はあくまで情報の再現に必要な部分でしか発揮し得ない。「大精霊の力を本来の歴史と異なる形で使用する」ことの試みは全て結果がはっきりしないまま終わる。守護者を変更するなんてことも不可能。その上で、邪神の情報は勿論完全に存在する。即ち邪神は状況による対応の変化を正しく発現させることが出来る。
判明したのは見通しとしてはあまりよくないものばかりだ。しかし情報が蓄積出来る以上はいずれ対抗策だって見いだせる筈だ。諦めては駄目だ。何回だって試せるんだから。
──ところで、今、何回目だっけ?
「自殺しても何の救いにもならないとか……マジか」
疲れはてて自殺して。そしてその記憶の直後から、また始まりの時間に意識を取り戻したとあるハンターは乾いた呟きを溢した。
「なあ……今お前、何て言ったよ」
「あの衛兵ごと殺そう。説得なんてもたもたしてる場合じゃない。もっと多くの異界を早く解放するんだ──どうせ再現なんだし」
「お前……それは俺たちが言っちゃいけないことだろ!? 俺たちは彼らの希望になって、導くためにここに来たんだろ!?」
「文句があるならせめてこれ以上に迅速に管理者を倒す方法と一緒に言ってくれないか?」
「な……お前本当にどうしたんだよ……そんなやつじゃなかっただろ……?」
……ああもう。
つくづく、『覚えてないやつら』は、呑気で、面倒くさいな……。
「よし、これでトドメだ! 今度こそ……──え?」
とうとうあるハンターが、邪神に止めを刺す寸前、ゆっくり振り替える
「あー、すみません、仲間が死んじゃったんで……今回は無しでお願いできますか」
そのハンターを背中から刺した男は、丁寧に言った。
「だって可哀想じゃないですかここまで来てとうとう切り開かれた未来にあの子が居ないなんてことになったら。ここまで頑張ったら全員でハッピーエンドを目指しましょうよ。大丈夫今回は良いところまで行きまし! いいデータが取れましたよね! ──それじゃあ皆さん、『次回は頑張りましょうね』?」
そうして。
何回めかの繰り返し。どこかの場所。
「ねえ……」
夕霧が立っていた。
全てを赤く染めるその光景。
血を薄く広げるようなその中で、ふと誰かが思い浮かんだ。
「今この世界に生きるやつ、全員死んだらクリアとか、無いかなあ……?」
だって結局、今全員歪虚なんでしょう?
まあきっとそんなのこじつけだって分かってるけど。
もういい加減飽きて疲れて諦めたくて。だから。
とにかくこの力で殺して殺して殺しまくってみたいだけだけど。
いいじゃん。
だって。
興味は沸くだろ? こうなったら──どうせ何回だってやり直せるんだから、一回くらい、さあ。
とはいえやはり、それだけの長い期間を与えられるだけありこの世界はやはり特別だった。例を見ない数のものが「イレギュラー」としてループの記憶を残している。
しかも、彼らはその記憶の中でバニティーから全ての説明を受けているのだ。
まだ終わっていない。ここが邪神の内部なら、この中から世界を再誕させる可能性は残されている。諦めずに、この世界から再び希望を灯すことが出来ればきっと……──
そうして彼らは五年間をやり直した。互いに「イレギュラー」である同士はすぐさま互いを認識しあい、早いうちからどうすべきかを話し合っていた。やはり、このループの中で邪神を倒すべきだろう。そうして、世界を勝利の希望で包む。
一度見た相手だ。敗北の理由をきちんと分析して対抗すれば可能性はあるはずだ。彼らは概ね元の歴史を辿りながら、邪神に勝利する道筋を探す。再び敗北し巻き戻ろうとも──それはむしろ、挑戦のチャンスは幾らでもあるのだ、と前向きに捉えながら。
そうしてとうとう、彼らは邪神に勝利した。
世界は勝利の喜びに包まれて──そしてまた五年前に戻った。
イレギュラーたちは再び話し合う。何が悪かった。他に何が出来る。
……誰かが言った。生き残った人が──すなわち世界を再誕させるだけの希望を抱くものが──少なすぎたんじゃないか。何せ邪神に取り込まれた段階で「価値がない」とされたものは保存されていないのだ。その上で邪神討伐はクリムゾンウェストにかなりの被害をもたらす。作戦を更に洗練させ、これまでの闘いもすべて見直して、地上を守る戦力をもっと残した上で邪神に勝利しなければならないんじゃないか。この意見に皆が納得し、様々な試みが行われた。
更に少ない人員で勝利する為の作戦を成功させるためにはまた膨大な回数の試行が必要だった。その度に邪神に敗北し殺される記憶を重ねながら彼らは諦めずに闘いを続けた。
勝利した。巻き戻った。まだ救うべき人が足りないかと作戦の見直しを重ねた。巻き戻った。歴史が変わった結果邪神の性質が既知のものと大きく変わってしまうなんてこともあった。ループの記憶があることを活かして、スペリオル計画の暗部を先に暴露し、強化人間が正しくリアルブルー精霊と契約する存在に歴史を修正するなんて試みも行われた。結果イクシードアプリが蔓延することもなく邪神はリアルブルーに降臨することは無くなり、そして封印されなかった為予定より早くクリムゾンウェストに出現し世界は滅びた。巻き戻った。
一度投票結果を封印に変えるのはどうだ、と誰かが言い出した。とにかく世界が終わる時点で、奇跡が起こると信じる人たちの頭数が必要だというなら、一旦、とにかく生き残る人が多い結果を目指すべきじゃないか。兎に角考えられることはやってみようと言うことになった。
まず投票結果を変えることが容易ではなかった。多くの「何も覚えていない」ハンターたちは当然のように何を温いことを、と反発して──自分だってそう思っていた意見の説得材料を探すというのは相当に難儀することだった。
それでもやはりまたもの膨大な試行回数を経て、投票結果を封印にすることを、この選択こそ希望なんだと多くの人に思わせることに成功した。邪神に向けて封印が行われる。その結果が──なんだかよく分からないうちに、世界は巻き戻った。
分かってきたことはある。まず、「本来死ぬはずだった人間」を生き残るように修正しても、そこから先彼らはさほど変化しない。何せここはあくまで「記録の元に再現」しているにすぎないのだ。予定と変わった部分はいわば演算によるシミュレートであり、既存データを大きく逸脱できない。最大といえるのが大精霊に関わる部分。邪神に取り込まれた時点で彼らは完全に消滅しているのだ。彼らの力はあくまで情報の再現に必要な部分でしか発揮し得ない。「大精霊の力を本来の歴史と異なる形で使用する」ことの試みは全て結果がはっきりしないまま終わる。守護者を変更するなんてことも不可能。その上で、邪神の情報は勿論完全に存在する。即ち邪神は状況による対応の変化を正しく発現させることが出来る。
判明したのは見通しとしてはあまりよくないものばかりだ。しかし情報が蓄積出来る以上はいずれ対抗策だって見いだせる筈だ。諦めては駄目だ。何回だって試せるんだから。
──ところで、今、何回目だっけ?
「自殺しても何の救いにもならないとか……マジか」
疲れはてて自殺して。そしてその記憶の直後から、また始まりの時間に意識を取り戻したとあるハンターは乾いた呟きを溢した。
「なあ……今お前、何て言ったよ」
「あの衛兵ごと殺そう。説得なんてもたもたしてる場合じゃない。もっと多くの異界を早く解放するんだ──どうせ再現なんだし」
「お前……それは俺たちが言っちゃいけないことだろ!? 俺たちは彼らの希望になって、導くためにここに来たんだろ!?」
「文句があるならせめてこれ以上に迅速に管理者を倒す方法と一緒に言ってくれないか?」
「な……お前本当にどうしたんだよ……そんなやつじゃなかっただろ……?」
……ああもう。
つくづく、『覚えてないやつら』は、呑気で、面倒くさいな……。
「よし、これでトドメだ! 今度こそ……──え?」
とうとうあるハンターが、邪神に止めを刺す寸前、ゆっくり振り替える
「あー、すみません、仲間が死んじゃったんで……今回は無しでお願いできますか」
そのハンターを背中から刺した男は、丁寧に言った。
「だって可哀想じゃないですかここまで来てとうとう切り開かれた未来にあの子が居ないなんてことになったら。ここまで頑張ったら全員でハッピーエンドを目指しましょうよ。大丈夫今回は良いところまで行きまし! いいデータが取れましたよね! ──それじゃあ皆さん、『次回は頑張りましょうね』?」
そうして。
何回めかの繰り返し。どこかの場所。
「ねえ……」
夕霧が立っていた。
全てを赤く染めるその光景。
血を薄く広げるようなその中で、ふと誰かが思い浮かんだ。
「今この世界に生きるやつ、全員死んだらクリアとか、無いかなあ……?」
だって結局、今全員歪虚なんでしょう?
まあきっとそんなのこじつけだって分かってるけど。
もういい加減飽きて疲れて諦めたくて。だから。
とにかくこの力で殺して殺して殺しまくってみたいだけだけど。
いいじゃん。
だって。
興味は沸くだろ? こうなったら──どうせ何回だってやり直せるんだから、一回くらい、さあ。
リプレイ本文
──それはまだ、ループの始まりのころ。
同じ時の流れを経て、メアリ・ロイド(ka6633)は高瀬 康太(kz0274)と同じ出会いを果たしていた。
「──……友達になってください高瀬さん」
同じ言葉を、紡いで。
「お付き合いを前提として」
勢いで、『無かった』言葉を続けていた。
目に前の彼は、狼狽え……ない。
「……今の貴女には別に好きな方が居たんじゃないんですか?」
「ああ、今回はもう初めからそういうのは無しですから。大丈夫です」
乏しい表情のメアリの瞳がパッと輝いた。
覚えている。彼もまた。
そんなメアリに康太は深く溜息をついて肩を竦めた。
「お断りです。……今この現状で、そんな気分になれませんよ」
「邪神を倒して、未来に進めたら?」
「……そうなったら、僕の命はそのまま尽きると思いますけどね」
「それももしかして、可能性の再誕の作用でどうにかなったりしたら」
「……。皮算用は、好きじゃありません」
そう言って康太は、ふいと背を向けた。
「……そうなったら、その時に考えます」
小さく言うのをしっかり聞きとめて、メアリは微笑を浮かべた。
どの道彼は今も、リアルブルーの未来を救うために戦うつもりなのだろう。なら自分も今はその意志を尊重して共に戦うだけだ。
……生きている康太とまた居られる。そのことが、メアリには嬉しかった。
そして、やはり思ってしまう。最終決戦で彼が死ぬ必要は無いんじゃないかと。
ループの記憶を利用して、うまく立ち回れたら……。
そんなことを考えて。
何度も繰り返す世界の中。彼女は何度もそれを試した。狂いそうになるその度に……彼と再会するその時を待ちわびて正気を保ちながら。
鞍馬 真(ka5819)もまた、変わらず世界の救済を目指して戦い続けるハンターであり続けた。
強く優しく、諦めずに先陣を切って戦う模範的なハンターであり守護者。
何度繰り返したって、ずっとずっと。すべきことは変わらない。世界のために戦い続ける。
今日もまた、同じように歪虚を倒しに行く、その中でただ一つ。
「……今回もよろしく。──透さん」
「ああ。今回も頼りにしてるよ……鞍馬さん」
伊佐美 透(kz0243)との距離の置き方だけが一回目と異なっていた。
何も覚えていない彼を死なせずに守るため、毎回出会いはする。だが、近づきすぎて今の自分の事を気付かれて、負担になることは無いように。
そうして、ループの記憶も利用して活躍する今の真は透にとって誰よりも頼もしい安心感のあるハンターで、弱みなど見せない真に透が踏み込むことも無かった。
そうして真は、一人全てを抱えて走り続ける。
かつて以上に死は恐ろしいものではなくなった。もう慣れ切ったから。代わりに、逆に記憶を持たない人が死ぬことは前以上に恐れるようになった。
そして、その為に。
……世界救済の妨げになる存在は、歪虚も人間も狂ったハンターも躊躇無く殺し続けた。
繰り返す世界は刻む。同じ時の流れを。
そうしてレオライザー(ka6937)は、己が初めて起動されたその日を『再び』迎えて。
目覚めてすぐに思い出した。自分たちは邪神に敗北したことを──そして、己が「ただの一般オートマトン」であることを。
「……オレは……」
自覚する。自分が偽物のヒーローであることを。
その事実を受け止めて噛み締めるように、ヒーロースーツ然とした姿に包まれた己の両掌を暫く見つめ続けて。
「……オレは……レオライザーだ。だから正しきことを成す」
ゆっくりとその手を握りしめながら……彼はそれでも再び、「ヒーローであろう」と努力しループに挑むことを……決意した。
一度目の敗北で、力が足りないことは分かっていた。
そして……足りない力はそのまま再現されていることも。
記憶を手掛かりにより良い解決を目指しても、それでも届き切らないことはままある。
それでも。
かつてと同じように。
彼はその全てを背負おうとした──『ヒーロー』とは、そういうものだから。
遺族に聞き、ドックタグを捲り、「救えなかった名前」を、光景を、己に刻み続ける。
周回する中、彼はその記憶をリセットすることなく、積み重ね続けた。
……そのメモリが。役割と重責が。少しずつ彼の精神プログラムを歪めていることに、気付かぬまま……──
──もう何度、二人こうして出会っただろう。またその時に戻ってきて。
「何するのがベストなのか分からないー!」
イリエスカ(ka6885)もうお手上げだ、とばかりに大の字に寝転がった。
対照的にマリナ アルフェウス(ka6934)は立った姿勢のまま、真剣な表情で暫く動かない。
「……何か、してるの?」
「これまでの記録を記憶領域に。条件を変更し施行を繰り返す。事態の打開には結局それしかない」
やり直すたびに『記憶』は保持できるのだ。これまでの『失敗』のパターンを見た限り正確に保持し続ける。
「それ……大丈夫、なの?」
聞きながら半ば答えは分かっていた。この先何度繰り返すことになるのか分からないのだ。そんなの……いずれ限界が来るに決まっている。
「必要な領域が不足した場合、判断と行動に不要と思われる要素は順次消去することにはなると思う」
淡々と話すマリナに対し、イリエスカは唇を噛みながら、都度その表情を変化させている。理解と葛藤。その目まぐるしさがしかし……マリナにとってイリエスカは必要な相棒なのだと言う事を再認識させる。
「感情は変数の中でも重要な要素と認識している」
「……それじゃあ!」
「制御できる範囲で、定量は保持する」
マリナの提案はやはり、イリエスカにとってすぐさま受け入れられるようなものではなかった。だが。
「……どの道、漫然と繰り返し長引くようになれば記憶や感情を健全に保つことはいずれ限界を迎える」
それも……理屈としては理解できてしまう。
ならば、彼女に出来ることは。
「分かった……一緒に頑張ろう。ボクはずっと……マリナと一緒に居るから」
一回でも早く最適な状況に辿り着くため、彼女の施行に協力する事。
……その中で、マリナがマリナで居られるよう、精一杯つなぎとめること。
そう決意して……イリエスカもマリナの提案に掛けることにした。
そうして二人はまた長いループに挑む。
マリナは勿論、その都度もたらされるイリエスカの提案は重視して組み込んでいく。
何度も何度も繰り返す。
「試行#ff181fで異常確認。試行終了」
記録の、記憶の削除とデフラグを繰り返すマリナからこの言葉を聞くのも……もう、何度目だろうか。
「エラー発生。コードREDO実行」
再試行のために停止するマリナの横で、イリエスカの中でも何かが軋みを上げ始めていた。
それぞれに。努力はして、居たのだ。皆、懸命に。
それでも、永い繰り返しは。変わらぬ結果は。少しずつ、生まれた歪みを、大きくしていく──
●
「……どう、して……」
そもそも。何も覚えていない透からしたら信じられない話ではあった。覚醒者が、その力を悪用して非道の限りを尽くしている、など。
ハンターの犯罪という事で、多少厳しめに見られているのだろう。そう思ってむかった現場は……想像を大きく超える悲惨な光景が広がっていた。
倒れる人々は皆、絶望、怨嗟、そう言った表情を浮かべていて、受けた仕打ちの惨さをなお語っている。
痣などの抵抗の跡、割かれた衣服、血などから……『どんな目に遭ってから』殺されたのかも否応なしに想像させるその様の、ままに。
「あっはは! 信じらんねーっすか!? 俺も信じらんねーっすよ!」
呆然とする透の前で、神楽(ka2032)が狂った笑い声をあげる。
信じられない、のは。
こんなことをする愚かさ、の筈だった。
だけど今、透がどうしてと、一番に聞きたいのは。
「ギャハハ! 傑作っすよね! まさか俺みたいな三下が守護者サマに勝てるとか! 全くクソみてーな世界っすよね!」
……自分を庇って、真が倒れていることだった。
この結果は、分かる者にはある意味必定の結果だった。
村人を人質にして膠着状態を作りつつ……神楽は更に、意識して透を狙う事で真の行動を支配する。分かってて、真はどうしても透を見捨てられずにそれに乗せられるしかなく……透は、そこまで、ギリギリを越えて真が自分を庇う事を……予測できなかった。
「──その、何も分かんねー、覚えてねーって顔がムカつくんすよ」
ふいに神楽が、これまでとは違う、冷え切った声で言った。
「ずっと俺が苦労してるのに何も知らず平和に生きて! 呑気にまだ夢だの希望だの言ってられるお前等にムカついてたんすよ!」
──まあその、なんにも覚えてないお前のその間抜けのお陰でこうして勝てるんすけどね?
その声の空虚さに。濁り切った瞳に。
ただの外道、力に溺れただけの話ではなく、もっと壊れた何かを感じて、透はただ慄くしか出来なくて。
「……聞く、な……」
真が、弱弱しい手で透の裾を引っ張り、息も絶え絶えに告げる。
「まあ、いいっす。野郎の絶望顔なんて大して面白くもねえっすし。お前もさっさと死ねっす」
そうして、急に飽きたように神楽が言った。
こんなことより、もっと面白いことをしよう。
無理矢理恋人同士で殺し合わせたときは最高だった。
それともまた。拘束して動けなくした父親の前でその娘を……──
神楽の笑みが歪む。
その周囲の景色も、ぐにゃりと。
その瞬間。
「ぐ、あっ……!?」
呻き声と共に地面ごと神楽の身体が沈んだ。陥没した土くれがめくれ上がり、背後にあった家屋の壁がひしゃげて剥がれ、神楽の身体に向かっていく。
収束する重力波。それが神楽を圧し潰し捩じり上げている。
……エルバッハ・リオン(ka2434)の術だった。
エルバッハは静かに佇み、腕を神楽に向けたまま、告げた。
「貴方は放っておくわけにはいきませんね。私の『大切な人たち』に被害が出ても困りますから」
再び彼女の唇から詠唱が紡がれる。生まれた火球を、不意を打たれなかった神楽は今度は避けてみせる。
そのまま、まだ村人が生き残る奥の方へと逃げ込んでいき……。
エルバッハの術は、『そのまま』追いかけて来た。
巻き込まれた村人が一度だけ悲鳴を上げて、黒焦げになって倒れる。抉れた家屋が倒壊し、立てこもっていた人を圧し潰す。
それでも……エルバッハはただ神楽だけを追い続けた。
「キャハハ! 何とも思わねーんすか! ……まあそりゃそうっすよね。こいつらどうせ、次回には全て忘れてるっすもんね」
様子に気付いて、神楽は逃げるのをやめて振り返っていった。
「ならあんたも一緒に楽しまねえっすか? 男なら好きに殺し回っていいっすよ?」
もっと素直になれと、嘲るように語りかける神楽に、エルバッハはきょとん、と、心底分からない、という風に首を傾げた。
「何故わざわざそんなことをする必要が? 別にその辺の男など何の脅威にもならないでしょう」
淡々と告げるエルバッハ。
彼女は。
世界を再誕させるその目的を見失ってはいなかった。
今もなお諦めずに闘っていた。
ただその過程で、世界とごく少数の『大切な人たち』以外は──心底から、どうでもよくなっていた、だけ。
だから目的に沿わない、特に侵攻にも防衛にも関わらないことに手を割く理由は本気で理解できない。
「貴方は私の大切な者を害しうる……だから、ここで排除する。確実に」
故に怒りも無く。ただそれだけのために、エルバッハは神楽を殺害しようとする。やはり、そこに何とも思わずに。
火球では届かない。エルバッハは更に集中を高め、高度な術式を紡いでいく。
氷柱、土杭が、一直線に次々に生まれていき神楽へと向かっていく。その軌跡の上、生ける者も死ぬ者も貫き、閉じ込めながら。
避けきれず、自由を奪われた神楽は流石に形勢不利と見て本格的に逃亡を図る。
まだ残る家屋の影に潜むようにして、物陰を回り込み……──
ぐちゃり。
生肉が激しく叩かれ、はらわたが圧し潰される音を。
神楽は、自分の腹から聞いた。
倒れながら顔を上げた先に居たのは……ボルディア・コンフラムス(ka0796)。
逃げた先、彼女が待ち構えていたことに、神楽は気付いていなかったのだ。
崩れ落ちていく神楽を、ボルディアは侮蔑しきった昏い瞳で見降ろしている。
「繰り返し再生したテープは……そのうち擦り切れてノイズが乗るようになる」
ぼそぼそと。抑揚なく呟かれるそれは、神楽へと向けている様で、もはや彼に興味を亡くしている様でもあった。
「ノイズは除去しなきゃならねぇ。除去? ……そうだ、除去だ」
血と臓物の海に沈む神楽。人間で、同じハンターだったはずのその、末路に対して。
それはただそれだけのものであると、感情を込めずにただ視線を向けている。
「は……は……」
神楽はそれを、掠れゆく視線で見留めると、最期の残滓と言える気力を振り絞って、嗤った。
「なあんだ、……あんた、意気地なし……っすね……」
「……何?」
「……殺していい理由が無きゃ……殺せねえっすか? ……本当はただ殺すのが……楽しいくせに……」
何も変わらない世界の中、記憶だけを保ち続けて。
シェオルがどうして、自分たちを恨むのか、その気持ちを神楽は完全に理解していた。
敗北の結果がこれほどの地獄と知っている身からしたら。何も知らずのうのうと生きて、希望だ未来だとわめく者たちなど憎くて憎くてたまらないだろう。
……だけど嗚呼、不公平だ。この世界が最後だなんて。
自分たちは新しい世界に、まだ思い知ってない者たちに思い知らせに行けないじゃないか!
だから。
「俺たちは……俺たちで憂さ晴らしするしかねーんすよ。……本当は、あんたも、わかってるんすよね?」
──あんたも。さっさと諦めて素直になればいいんだ。だって。
「……再誕なんて、どうせ、無……──」
「しぶといノイズだな」
ボルディアは。
その時も。それまでも。
一切表情を動かさないまま。再び神楽の脳天に斧を振り下ろした。
頭蓋が飛び散り、顔だった場所が吹き飛び、ただの肉片と血だまりと化す。
「……」
何か『だったもの』を再び見下ろして。
しばらく動けないのがどうしてなのか、ボルディアは分からなかった。思考を停止している──何のため?
やがて、彼女は斧を担いで再び歩き始めた。
「消去……ノイズは消去だ。……世界を救うために、このループから抜け出すために、最初の志を亡くした奴等は全員コロす」
先ずはそれだ。
そのことが、世界を救うために今最優先すべきことなのだと。
次の『ノイズ』を求めてさまよい歩くボルディアは……それが邪神を倒すためだと、本気で思っている。
──歪んでいく。
──失せていく。
●
「……鞍馬さん! 鞍馬さん!」
横やりに乗じて真を抱えて逃げ出していた透は、手当てをしながら必死に呼びかけている。
(……ごめんね。本当……今の君には何もかも意味が分からないよね……)
思いながら。真は、今の自分の状態が応急手当やヒーリングポーションでどうにかなるものなどではないという事は理解していた。
だが。
「頼む……君は、こんなところで死んで良い奴じゃない! たくさんの人たちが君に救われてきたのに……こんな……!」
自分の意識を繋ぎ止めようと、必死で呼びかける透の言葉に。
死に行くというその状態ながら、真は奇妙に満足していた。
──……ああ。『鞍馬さん』にもそう言ってもらえるなら。今回も、私は少しは役に立っていたのかな。
だったら、それでいい。
自分は必要とされていたなら。その為だったら、何度でも戦える。絶望なんてするわけがない。
……そう、満足していた。真は、『自分を必要とする世界』、それが何度も何度も、ずっと続いていくことに。
ああ、でも。
うっすら目を開ける。
少し、胸が痛む。『今の君』に、そんな顔をさせるつもりじゃなかったのに。
全てを覚えていなくても、やっぱりきみは、きみなんだなあって。
そのことも……やっぱり少し、嬉しいと思ってしまう事に。
「ごめん……ね」
その言葉を最期に。意識が遠ざかっていく。
「……う、うあああああああぁっ──……!」
絶望的な、絶叫が。
まだ脳裏にこびりついている、そんな感覚のまま、真は──彼の感覚として──直後、再び目覚めた。
再びこの世界に転移してきたその日、そのまま。
ほっとする……のは、間違っているのだろう。どうやら『前回』も上手くいかなかったらしい。
だけど。
認める。真は、また機会を得られたことに、感謝していた。
守るために、関係を変えて。それでも、ループの中、心を支え続けていたのは『一度目』の、透との約束だったから。
邪神を倒して、リアルブルーを取り戻して、一緒に誕生日を祝う。
生き残って、またきみの舞台を見にいく。
その約束があるから、望みがあるから、頑張れている。
「……例えこの5年間を何千回繰り返すことになろうとも、私は諦めないよ」
呟き、立ち上がる。
「さあ、また未来のために戦おう。いつかリアルブルーを取り戻す、その日まで」
彼は何度でも立ち上がる。
何度苦痛に塗れて殺されようが。
どれ程の苦痛、裏切りを。何度味わうことになったとしても。
「さあ、今度はもっと、上手くやらなきゃ」
また始まりの場所で目覚めれば。彼にとってそんなのは、ただその一言で終わる程度の事だった。
●
「星を護りし正義の獅子! レオライザー!」
咆哮と共に、拳が雑魔を討つ。
あれからずっと。レオライザーは、人々を護るために戦い続けている。
悪のみを倒し、弱きには手を差し伸べ続ける、ヒーローであり続けた。
そんな彼が……何時しか。ふと、気配を感じて振り返ると、そこに立っていたのはボルディアだった。
ボルディアは暫くレオライザーを見つめていると……。
ゆっくりと手にした斧を彼に向けて、構えた。
何も言わずに敵意を向けてくるその存在に対して。
「俺は正義の獅子、レオライザーだ」
レオライザーは動じぬ様子で相対する。
「その邪魔をするのなら、倒すだけだ。……だってオレは、『星を守りし正義の獅子』だから」
敵対するのがハンターであり、己より強力な存在と分かってなお、歪虚に対する時と全く変わらぬ様子、変わらぬ言葉で応える。
……いずれかの輪廻の間。人に、仲間だったはずの存在と闘う時に向ける苦悩は、もうそこには微塵もない。
ボルディアは。
幾度の輪廻で、数多のハンターを何度でも『ノイズとして消去して来た』彼女は、狂っているのか。
もはや邪神を倒すより強大な敵を倒すより、『ノイズを除去する』ことが彼女にとって最優先だった。
それでも。
「──最初の志を亡くした奴等は全員コロす」
その目的に対して、決して標的を見誤ってはいなかった。
レオライザーは。
彼女の目の前にあるそれは。
もはや重責と役割に圧し潰され、「ヒーローを演ずる機械」に成り果てているのだから。
変わらず人のために歪虚を討ち続けている様で、そこにはもはや……本来の誇りや覚悟は、無い。
恐れないのは。
苦しまないのは。
もはやただの、抜け殻だからだ。
そう……それはたしかに、『最初の志を亡くし』ていた。
今のボルディアにとって、人を害するか害さないかが問題では無いのだ。
そこに邪神を倒す意思を喪失した者は全て消去しなければ……狂ったテープが正しく「再生」されることは無い……その筈だから。
「そうだ……オレは正しい……オレは世界を救うためにやってる……。全てのノイズが消えたら……邪神を……」
そしてレオライザーは……ただ形ばかりのヒーローを象るばかりの人形は、ボルディアを咎めることも、弁解することも無い。
ただ「己の邪魔をするもの=悪」として、機械的に対処するだけだ。
「俺は正義の獅子、レオライザーだ」
その意味も誇りも忘れて、口上のための口上を、ただ音声として発音する。繰り返し繰り返し。
誰も知らない森の奥で。二種類の獣の如き咆哮が上がる。
木々を震わせ、人々を慄かせるそれは、しかし。
まだ意志あるハンターたちにはどちらも、どこか空虚な叫びに思えた。
●
幾度……では、済まない回数のやり直しを経て。
その中にはどうして巻き戻ったのか……納得のできない『勝利』もあった。
それでも、どうして成し遂げたと認められないのか……。
「……やはり僕が生きようとするのが、間違いなのかもしれませんね」
ふと、康太が言った。
「僕が偶に生き残ることを是としてきたのは、前よりも生き延びる者が増える戦い方が確立されてきたからです……が、それがそもそもの間違いだとすれば」
そんな戦い方は、本来であれば為せたはずは無いのだ。あらかじめ、敵の技、行動が把握できていないと。
そして、そんな『反則技』は、『奇跡』として認められないというのであれば。
「……本来、死すべきものは死に。初めに邪神の元へたどり着いたものだけで勝利することが条件なのでは」
康太はそう告げて、邪神突入戦で突撃していった。……かつてと同じように、先陣を切って。
メアリは──やはりかつてのようには、動けなかった。
だってもうずっと、ずぅっと永い間、康太と一緒に居るのだ。今更、彼が居ない未来に行っても意味などない。
彼が前線に行くというなら。やはり自分はその彼を生かそうと立ち回ろうと。
メアリが考えていたのは、そこまでだった。
……決して、『この結果』を狙ったわけでは……無かったが。
その回。メアリは。康太の機体を追う最中、死角から堕天使型狂気にサンダルフォンごと撃ち抜かれて死んだ。
……。
…………。
………………。
「あ。やっと会えましたね康太さん。『いつも出会う依頼』に居ないから探したじゃないですか」
そうして巡り合った次で。
康太の前にメアリはそうして姿を現して、何事も無かったかのように告げた。
青褪めて後ずさる康太に、メアリは微笑む。そう言えば、そうだっけ。私も『最初の時』はショックだったかな。
「思いがけず、置いていってしまいましたが……康太さんも軽率に死んでは駄目ですよ」
少しは私の気持ちがわかりました? と。
軽く。
ごく軽く、彼女はそう言った。
本来死ななくてもいい場所で自分のせいで死んだというそのことを。
「大丈夫。上手くいくまで、何度でも繰り返しましょう。二人生き残る方法、有りますよ」
──貴方と一緒なら、何回死んだって私は平気。
なのに、どうして貴方はそんな目で私を見るんです?
……これは狂っているのでしょうか。
私は彼にとって、そこまで大事な存在には……なれませんか?
何度目かの果て。
メアリはずっと微笑み続けている。
いつだって、いつまでも。康太を信じ、追い続けた。
何度も取り残されて。何度も死んだ。それでも。
「は……ははは……」
やがて、もういいか、と康太も笑った。
全てが終わって、彼女を置いてくからそれがなんだというのだ?
……今までの永さに比べたらそんなのもう、余生じゃ無いか。
だったら。
「メアリさん、一つ提案があります。今後、僕の前で死ぬことが無かったら、ご褒美です」
「……え?」
「その次のループでは、はじめから恋人として過ごすんです。如何ですか?」
康太の提案に、メアリはみるみる目を輝かせて言った。
「ああ……いい、良いですね。素敵。断然モチベーション上がりました。あ、でもそうしたら今回は」
「死んだから、駄目駄目ですね。今周はペナルティとしてとことん塩対応です」
「酷い。……あれ、でもそしたら、康太さんが私の前で死んだら?」
メアリの問いに、康太は肩を竦めて行ってしまった。
……もう。その気なら、こっちも塩対応してやろうか。
そうなったら後悔するくらい恋人の時に惚れさせて、死ぬのをやめさせてやろう。
ああ、彼が居れば狂わずに済む、なんて思ってたけど。ここでこんな目標をくれるなんて。やっぱり彼は素敵。
大丈夫。
彼となら。
何処までも。
何度でも。
ずっとだって。
●
「ねえ……もう、もうやめようよ……これ以上は……マリナがマリナじゃなくなっちゃう!」
「反論ならば対案を。対案亡き批判は検討に値しない」
イリエスカの言葉に。
マリナはすっかり、表情も感情も失せた声で事務的に答える。
向けられる、興味の無さそうな視線にイリエスカはまた、己のどこかがギチギチと締め上げられていく感触を覚える。
「やめよう……無駄になってもいいじゃん……」
掠れる声でイリエスカは言った。
「無駄があったっていいじゃん! 忘れよう! 忘れてボクとのことを覚えててよ! 何回やり直したって……ボクたち一緒なら大丈夫だから!」
「その予測に対する演算……結果・ネガティブ。否定要素に対し肯定できるデータの圧倒的不足」
縋るような声に、マリナはやはり、ただ冷たく告げるだけだった。
「議論終了。前回結果保持のための容量最適化処理を開始……」
「もうやめてえぇっ!」
どうして。
オートマトンの自分がどうしてそうするのか。
分からないまま、イリエスカはマリナの再計算を力づくで止めに行っていた。
引っ掴み、涙を流しながら殴りかかって、処理を妨害する。
必死の呼び掛けに。
「貴官は本試行において不要。排除」
返ってきたのはそれだけの言葉と、銃声だった。
胸の真ん中を撃ち抜かれて、イリエスカは停止する。
虚ろな涙をこぼしながら、イリエスカの意識は途絶えて。
そうして、またすぐに、次のループでマリナと再会した。
躊躇いながらも近づいて行くイリエスカに、マリナは。
「……? すまない。貴官は……誰だ?」
そう言って。
ああ、とうとう『そこまで』来ていたのかとイリエスカは理解する。
遅すぎたのだ。
止めさせるなら、もっと早くからそうしなければならなかった。
ツンとした痛みが、全身を走り抜けていく。
ギチギチ。ギチギチ……締め上げられていたのは、己の核。
辛いって。
悲しいって。
こういう事だったんだ。
それもまた……気付くのが遅すぎた。
それでも……。
「はじめまして、ボクはイリエスカ。よろしくね!」
イリエスカは受け入れることにした。全てを忘れたマリナを。
それでも離れることなど出来なかったから。だから……いつかまた2人で楽しく過ごせる時を信じることにして。
そして、それでもそれが、最後の楔となって、マリナを最後の一歩で留め続けている──
●
……………………………………。
●
誰しもがすり減り、疲弊し、その果てに歪んでいく、もはや無限としか思えぬ試行の果て。
血のような夕霧を端として、殺戮の宴が沸き起こった。
ハンターからハンターに。まるで感染するかのように狂乱は拡大していく。
「そうだ……歪虚を……」
「全ての歪虚をの消滅を……」
呟き、血刀を振りかざす覚醒者たちは、皆一様に薄笑いを浮かべていて。
『つまり諦めたいという事じゃな、おぬしは。そんなこと許されると思うたか?』
ミグ・ロマイヤー(ka0665)はヤクト・バウ・PCのコックピットから完全にしらけ切った顔で言い切った。
殺していた者も。
殺されていた者も。
暫し呆然と、それを見上げる。
ヤクト・バウ・PC──ダインスレイブ。
彼女は、そう名付け、呼んでいるもの。
ぬうと降り立ったその姿を、見上げて、……言葉を、知識を、喪ったかのように、『それ』に釘付けになって見つめていた。
今己が視界に映しているものは何なのか。理解を越えた何かを認識しようとしているつもりで拒絶して、フリーズする。
砲台が、殺戮を繰り返す彼らへと向けられた。
未だ動かぬ彼らの視線の先で、深い深い闇が収束していく──
ループを抜け出す手段としてミグが取っていたアプローチはマリナと同根の物だ。
ループのパターンを記録し、フロー図をこさえて几帳面に管理し、毎回違った計画を練る。
ここまでなら、機械に親しい者や技術者らしい発想であると言える。
──今、何回目だっけ?
問われたならば……ミグは答えられる。
まともな精神であれば百を越えたころから数えるのをやめたであろう。
そうして後わずが、ギリギリの精神を保っていた者が聞けば発狂するであろう、その数字──1万4859回。
ただ、ミグがマリナと違ったのは、無限に膨れ上がるだろうその記録を、個体で持つのは不可能だろうと初めから目していたことだ。
彼女の試行は、膨大にふくれ続けるだろうその記録を保持する場所に辿り着く事だった。
機械に保持してもそれはループの再開とともに巻き戻ってしまう。かといって『イレギュラー』が、感情ある存在がそれを担うのは負荷がかかりすぎる。
彼女は。この課題を解決しうるそれにはじめから目星を着けていた。
──惑星ジュデッカ。
案内人無くば辿り着けない筈のそこへと。歪虚の身ならばと。
はじめの数千回のループを、彼女はその到達へと割り振った。
……ミグ・ロマイヤーは折れない女としても有名だ。
だが、その鋼鉄の女をして、孤独の宇宙に挑み時に永劫の闇の中を立ち往生する、そんな航路に耐えうる者なのか。
そこには彼女の愛機、ヤクト・バウ・PCと──彼女が真性のメカ狂いであることは大きかっただろう。
嗚呼、彼女ならば! 『歪虚』の己に合わせてメカをカスタムし続けることは、一つの興であったろうとも!
……どうせ、『まともな生き物としての生』であれば、一周目で既に存分に全うしていたのだ。
世界の再誕の果てには全て生み直されIFの一筋と消える、そんな隙間の戯れならば。むしろそれは純粋なる技術論としてならば趣深い。
姿を現した機体は。
それに搭乗する存在は。
そういうものだった。
そのてっぺんから爪先に至るまで歪虚の歪虚による歪虚のための機体。その全容を。
脳が飲み込む前に、見たもの全て、グランドスラムが焼き払っていった。
……ジュデッカに至る、その道に塞がる障害全てを焼き払うためにカスタマイズを尽くしたそれは、砲弾と呼べるものですら無かったが。
ところで。
ジュデッカに刻まれるフロー、もはや衛星軌道からナスカの地上絵の如く伺うことすら出来る孤独壮大な図を。
それを幾度も刻みに来るミグの存在を。
そこにいる反動存在たちは何故放置するのか?
彼らは理解したからだ。
彼女が始めにジュデッカに辿り着いたその時に。
……そこに辿り着くまでには。
彼女の機体はこれ以上なく完成していなければならなかった。
もはや手を加えなくなったそれに彼女は飽きることもなくその後も乗り続けた。
つまり──狂っていた。
そも。記録でない、真なるジュデッカに辿りけたならば。他の者をそこに導けば良かったのに。彼女はそれをせず、ただ記録の場とすることに固執し続けた。
そう……。
「さあ、次のループを開始しよう」
全てを灰塵に化したその後、何事もなく彼女は告げる。
独りジュデッカへと辿り着いた──辿り着けたのは何故か?
その時彼女は最早反動存在と質を同じくしていたからだ。
自分は努力している。そう嘯きながら……その実、停滞した永遠を望む。
●
繰り返す。
繰り返す。
繰り返す。
希望などあるのか。
最早誰がそれを覚えているのか。
その果てには──。
「はじめまして、ボクはイリエスカ。よろしくね!」
「貴官は……覚えている。唯一無二、最愛の相棒だ」
それでも。
いつかきっと。
同じ時の流れを経て、メアリ・ロイド(ka6633)は高瀬 康太(kz0274)と同じ出会いを果たしていた。
「──……友達になってください高瀬さん」
同じ言葉を、紡いで。
「お付き合いを前提として」
勢いで、『無かった』言葉を続けていた。
目に前の彼は、狼狽え……ない。
「……今の貴女には別に好きな方が居たんじゃないんですか?」
「ああ、今回はもう初めからそういうのは無しですから。大丈夫です」
乏しい表情のメアリの瞳がパッと輝いた。
覚えている。彼もまた。
そんなメアリに康太は深く溜息をついて肩を竦めた。
「お断りです。……今この現状で、そんな気分になれませんよ」
「邪神を倒して、未来に進めたら?」
「……そうなったら、僕の命はそのまま尽きると思いますけどね」
「それももしかして、可能性の再誕の作用でどうにかなったりしたら」
「……。皮算用は、好きじゃありません」
そう言って康太は、ふいと背を向けた。
「……そうなったら、その時に考えます」
小さく言うのをしっかり聞きとめて、メアリは微笑を浮かべた。
どの道彼は今も、リアルブルーの未来を救うために戦うつもりなのだろう。なら自分も今はその意志を尊重して共に戦うだけだ。
……生きている康太とまた居られる。そのことが、メアリには嬉しかった。
そして、やはり思ってしまう。最終決戦で彼が死ぬ必要は無いんじゃないかと。
ループの記憶を利用して、うまく立ち回れたら……。
そんなことを考えて。
何度も繰り返す世界の中。彼女は何度もそれを試した。狂いそうになるその度に……彼と再会するその時を待ちわびて正気を保ちながら。
鞍馬 真(ka5819)もまた、変わらず世界の救済を目指して戦い続けるハンターであり続けた。
強く優しく、諦めずに先陣を切って戦う模範的なハンターであり守護者。
何度繰り返したって、ずっとずっと。すべきことは変わらない。世界のために戦い続ける。
今日もまた、同じように歪虚を倒しに行く、その中でただ一つ。
「……今回もよろしく。──透さん」
「ああ。今回も頼りにしてるよ……鞍馬さん」
伊佐美 透(kz0243)との距離の置き方だけが一回目と異なっていた。
何も覚えていない彼を死なせずに守るため、毎回出会いはする。だが、近づきすぎて今の自分の事を気付かれて、負担になることは無いように。
そうして、ループの記憶も利用して活躍する今の真は透にとって誰よりも頼もしい安心感のあるハンターで、弱みなど見せない真に透が踏み込むことも無かった。
そうして真は、一人全てを抱えて走り続ける。
かつて以上に死は恐ろしいものではなくなった。もう慣れ切ったから。代わりに、逆に記憶を持たない人が死ぬことは前以上に恐れるようになった。
そして、その為に。
……世界救済の妨げになる存在は、歪虚も人間も狂ったハンターも躊躇無く殺し続けた。
繰り返す世界は刻む。同じ時の流れを。
そうしてレオライザー(ka6937)は、己が初めて起動されたその日を『再び』迎えて。
目覚めてすぐに思い出した。自分たちは邪神に敗北したことを──そして、己が「ただの一般オートマトン」であることを。
「……オレは……」
自覚する。自分が偽物のヒーローであることを。
その事実を受け止めて噛み締めるように、ヒーロースーツ然とした姿に包まれた己の両掌を暫く見つめ続けて。
「……オレは……レオライザーだ。だから正しきことを成す」
ゆっくりとその手を握りしめながら……彼はそれでも再び、「ヒーローであろう」と努力しループに挑むことを……決意した。
一度目の敗北で、力が足りないことは分かっていた。
そして……足りない力はそのまま再現されていることも。
記憶を手掛かりにより良い解決を目指しても、それでも届き切らないことはままある。
それでも。
かつてと同じように。
彼はその全てを背負おうとした──『ヒーロー』とは、そういうものだから。
遺族に聞き、ドックタグを捲り、「救えなかった名前」を、光景を、己に刻み続ける。
周回する中、彼はその記憶をリセットすることなく、積み重ね続けた。
……そのメモリが。役割と重責が。少しずつ彼の精神プログラムを歪めていることに、気付かぬまま……──
──もう何度、二人こうして出会っただろう。またその時に戻ってきて。
「何するのがベストなのか分からないー!」
イリエスカ(ka6885)もうお手上げだ、とばかりに大の字に寝転がった。
対照的にマリナ アルフェウス(ka6934)は立った姿勢のまま、真剣な表情で暫く動かない。
「……何か、してるの?」
「これまでの記録を記憶領域に。条件を変更し施行を繰り返す。事態の打開には結局それしかない」
やり直すたびに『記憶』は保持できるのだ。これまでの『失敗』のパターンを見た限り正確に保持し続ける。
「それ……大丈夫、なの?」
聞きながら半ば答えは分かっていた。この先何度繰り返すことになるのか分からないのだ。そんなの……いずれ限界が来るに決まっている。
「必要な領域が不足した場合、判断と行動に不要と思われる要素は順次消去することにはなると思う」
淡々と話すマリナに対し、イリエスカは唇を噛みながら、都度その表情を変化させている。理解と葛藤。その目まぐるしさがしかし……マリナにとってイリエスカは必要な相棒なのだと言う事を再認識させる。
「感情は変数の中でも重要な要素と認識している」
「……それじゃあ!」
「制御できる範囲で、定量は保持する」
マリナの提案はやはり、イリエスカにとってすぐさま受け入れられるようなものではなかった。だが。
「……どの道、漫然と繰り返し長引くようになれば記憶や感情を健全に保つことはいずれ限界を迎える」
それも……理屈としては理解できてしまう。
ならば、彼女に出来ることは。
「分かった……一緒に頑張ろう。ボクはずっと……マリナと一緒に居るから」
一回でも早く最適な状況に辿り着くため、彼女の施行に協力する事。
……その中で、マリナがマリナで居られるよう、精一杯つなぎとめること。
そう決意して……イリエスカもマリナの提案に掛けることにした。
そうして二人はまた長いループに挑む。
マリナは勿論、その都度もたらされるイリエスカの提案は重視して組み込んでいく。
何度も何度も繰り返す。
「試行#ff181fで異常確認。試行終了」
記録の、記憶の削除とデフラグを繰り返すマリナからこの言葉を聞くのも……もう、何度目だろうか。
「エラー発生。コードREDO実行」
再試行のために停止するマリナの横で、イリエスカの中でも何かが軋みを上げ始めていた。
それぞれに。努力はして、居たのだ。皆、懸命に。
それでも、永い繰り返しは。変わらぬ結果は。少しずつ、生まれた歪みを、大きくしていく──
●
「……どう、して……」
そもそも。何も覚えていない透からしたら信じられない話ではあった。覚醒者が、その力を悪用して非道の限りを尽くしている、など。
ハンターの犯罪という事で、多少厳しめに見られているのだろう。そう思ってむかった現場は……想像を大きく超える悲惨な光景が広がっていた。
倒れる人々は皆、絶望、怨嗟、そう言った表情を浮かべていて、受けた仕打ちの惨さをなお語っている。
痣などの抵抗の跡、割かれた衣服、血などから……『どんな目に遭ってから』殺されたのかも否応なしに想像させるその様の、ままに。
「あっはは! 信じらんねーっすか!? 俺も信じらんねーっすよ!」
呆然とする透の前で、神楽(ka2032)が狂った笑い声をあげる。
信じられない、のは。
こんなことをする愚かさ、の筈だった。
だけど今、透がどうしてと、一番に聞きたいのは。
「ギャハハ! 傑作っすよね! まさか俺みたいな三下が守護者サマに勝てるとか! 全くクソみてーな世界っすよね!」
……自分を庇って、真が倒れていることだった。
この結果は、分かる者にはある意味必定の結果だった。
村人を人質にして膠着状態を作りつつ……神楽は更に、意識して透を狙う事で真の行動を支配する。分かってて、真はどうしても透を見捨てられずにそれに乗せられるしかなく……透は、そこまで、ギリギリを越えて真が自分を庇う事を……予測できなかった。
「──その、何も分かんねー、覚えてねーって顔がムカつくんすよ」
ふいに神楽が、これまでとは違う、冷え切った声で言った。
「ずっと俺が苦労してるのに何も知らず平和に生きて! 呑気にまだ夢だの希望だの言ってられるお前等にムカついてたんすよ!」
──まあその、なんにも覚えてないお前のその間抜けのお陰でこうして勝てるんすけどね?
その声の空虚さに。濁り切った瞳に。
ただの外道、力に溺れただけの話ではなく、もっと壊れた何かを感じて、透はただ慄くしか出来なくて。
「……聞く、な……」
真が、弱弱しい手で透の裾を引っ張り、息も絶え絶えに告げる。
「まあ、いいっす。野郎の絶望顔なんて大して面白くもねえっすし。お前もさっさと死ねっす」
そうして、急に飽きたように神楽が言った。
こんなことより、もっと面白いことをしよう。
無理矢理恋人同士で殺し合わせたときは最高だった。
それともまた。拘束して動けなくした父親の前でその娘を……──
神楽の笑みが歪む。
その周囲の景色も、ぐにゃりと。
その瞬間。
「ぐ、あっ……!?」
呻き声と共に地面ごと神楽の身体が沈んだ。陥没した土くれがめくれ上がり、背後にあった家屋の壁がひしゃげて剥がれ、神楽の身体に向かっていく。
収束する重力波。それが神楽を圧し潰し捩じり上げている。
……エルバッハ・リオン(ka2434)の術だった。
エルバッハは静かに佇み、腕を神楽に向けたまま、告げた。
「貴方は放っておくわけにはいきませんね。私の『大切な人たち』に被害が出ても困りますから」
再び彼女の唇から詠唱が紡がれる。生まれた火球を、不意を打たれなかった神楽は今度は避けてみせる。
そのまま、まだ村人が生き残る奥の方へと逃げ込んでいき……。
エルバッハの術は、『そのまま』追いかけて来た。
巻き込まれた村人が一度だけ悲鳴を上げて、黒焦げになって倒れる。抉れた家屋が倒壊し、立てこもっていた人を圧し潰す。
それでも……エルバッハはただ神楽だけを追い続けた。
「キャハハ! 何とも思わねーんすか! ……まあそりゃそうっすよね。こいつらどうせ、次回には全て忘れてるっすもんね」
様子に気付いて、神楽は逃げるのをやめて振り返っていった。
「ならあんたも一緒に楽しまねえっすか? 男なら好きに殺し回っていいっすよ?」
もっと素直になれと、嘲るように語りかける神楽に、エルバッハはきょとん、と、心底分からない、という風に首を傾げた。
「何故わざわざそんなことをする必要が? 別にその辺の男など何の脅威にもならないでしょう」
淡々と告げるエルバッハ。
彼女は。
世界を再誕させるその目的を見失ってはいなかった。
今もなお諦めずに闘っていた。
ただその過程で、世界とごく少数の『大切な人たち』以外は──心底から、どうでもよくなっていた、だけ。
だから目的に沿わない、特に侵攻にも防衛にも関わらないことに手を割く理由は本気で理解できない。
「貴方は私の大切な者を害しうる……だから、ここで排除する。確実に」
故に怒りも無く。ただそれだけのために、エルバッハは神楽を殺害しようとする。やはり、そこに何とも思わずに。
火球では届かない。エルバッハは更に集中を高め、高度な術式を紡いでいく。
氷柱、土杭が、一直線に次々に生まれていき神楽へと向かっていく。その軌跡の上、生ける者も死ぬ者も貫き、閉じ込めながら。
避けきれず、自由を奪われた神楽は流石に形勢不利と見て本格的に逃亡を図る。
まだ残る家屋の影に潜むようにして、物陰を回り込み……──
ぐちゃり。
生肉が激しく叩かれ、はらわたが圧し潰される音を。
神楽は、自分の腹から聞いた。
倒れながら顔を上げた先に居たのは……ボルディア・コンフラムス(ka0796)。
逃げた先、彼女が待ち構えていたことに、神楽は気付いていなかったのだ。
崩れ落ちていく神楽を、ボルディアは侮蔑しきった昏い瞳で見降ろしている。
「繰り返し再生したテープは……そのうち擦り切れてノイズが乗るようになる」
ぼそぼそと。抑揚なく呟かれるそれは、神楽へと向けている様で、もはや彼に興味を亡くしている様でもあった。
「ノイズは除去しなきゃならねぇ。除去? ……そうだ、除去だ」
血と臓物の海に沈む神楽。人間で、同じハンターだったはずのその、末路に対して。
それはただそれだけのものであると、感情を込めずにただ視線を向けている。
「は……は……」
神楽はそれを、掠れゆく視線で見留めると、最期の残滓と言える気力を振り絞って、嗤った。
「なあんだ、……あんた、意気地なし……っすね……」
「……何?」
「……殺していい理由が無きゃ……殺せねえっすか? ……本当はただ殺すのが……楽しいくせに……」
何も変わらない世界の中、記憶だけを保ち続けて。
シェオルがどうして、自分たちを恨むのか、その気持ちを神楽は完全に理解していた。
敗北の結果がこれほどの地獄と知っている身からしたら。何も知らずのうのうと生きて、希望だ未来だとわめく者たちなど憎くて憎くてたまらないだろう。
……だけど嗚呼、不公平だ。この世界が最後だなんて。
自分たちは新しい世界に、まだ思い知ってない者たちに思い知らせに行けないじゃないか!
だから。
「俺たちは……俺たちで憂さ晴らしするしかねーんすよ。……本当は、あんたも、わかってるんすよね?」
──あんたも。さっさと諦めて素直になればいいんだ。だって。
「……再誕なんて、どうせ、無……──」
「しぶといノイズだな」
ボルディアは。
その時も。それまでも。
一切表情を動かさないまま。再び神楽の脳天に斧を振り下ろした。
頭蓋が飛び散り、顔だった場所が吹き飛び、ただの肉片と血だまりと化す。
「……」
何か『だったもの』を再び見下ろして。
しばらく動けないのがどうしてなのか、ボルディアは分からなかった。思考を停止している──何のため?
やがて、彼女は斧を担いで再び歩き始めた。
「消去……ノイズは消去だ。……世界を救うために、このループから抜け出すために、最初の志を亡くした奴等は全員コロす」
先ずはそれだ。
そのことが、世界を救うために今最優先すべきことなのだと。
次の『ノイズ』を求めてさまよい歩くボルディアは……それが邪神を倒すためだと、本気で思っている。
──歪んでいく。
──失せていく。
●
「……鞍馬さん! 鞍馬さん!」
横やりに乗じて真を抱えて逃げ出していた透は、手当てをしながら必死に呼びかけている。
(……ごめんね。本当……今の君には何もかも意味が分からないよね……)
思いながら。真は、今の自分の状態が応急手当やヒーリングポーションでどうにかなるものなどではないという事は理解していた。
だが。
「頼む……君は、こんなところで死んで良い奴じゃない! たくさんの人たちが君に救われてきたのに……こんな……!」
自分の意識を繋ぎ止めようと、必死で呼びかける透の言葉に。
死に行くというその状態ながら、真は奇妙に満足していた。
──……ああ。『鞍馬さん』にもそう言ってもらえるなら。今回も、私は少しは役に立っていたのかな。
だったら、それでいい。
自分は必要とされていたなら。その為だったら、何度でも戦える。絶望なんてするわけがない。
……そう、満足していた。真は、『自分を必要とする世界』、それが何度も何度も、ずっと続いていくことに。
ああ、でも。
うっすら目を開ける。
少し、胸が痛む。『今の君』に、そんな顔をさせるつもりじゃなかったのに。
全てを覚えていなくても、やっぱりきみは、きみなんだなあって。
そのことも……やっぱり少し、嬉しいと思ってしまう事に。
「ごめん……ね」
その言葉を最期に。意識が遠ざかっていく。
「……う、うあああああああぁっ──……!」
絶望的な、絶叫が。
まだ脳裏にこびりついている、そんな感覚のまま、真は──彼の感覚として──直後、再び目覚めた。
再びこの世界に転移してきたその日、そのまま。
ほっとする……のは、間違っているのだろう。どうやら『前回』も上手くいかなかったらしい。
だけど。
認める。真は、また機会を得られたことに、感謝していた。
守るために、関係を変えて。それでも、ループの中、心を支え続けていたのは『一度目』の、透との約束だったから。
邪神を倒して、リアルブルーを取り戻して、一緒に誕生日を祝う。
生き残って、またきみの舞台を見にいく。
その約束があるから、望みがあるから、頑張れている。
「……例えこの5年間を何千回繰り返すことになろうとも、私は諦めないよ」
呟き、立ち上がる。
「さあ、また未来のために戦おう。いつかリアルブルーを取り戻す、その日まで」
彼は何度でも立ち上がる。
何度苦痛に塗れて殺されようが。
どれ程の苦痛、裏切りを。何度味わうことになったとしても。
「さあ、今度はもっと、上手くやらなきゃ」
また始まりの場所で目覚めれば。彼にとってそんなのは、ただその一言で終わる程度の事だった。
●
「星を護りし正義の獅子! レオライザー!」
咆哮と共に、拳が雑魔を討つ。
あれからずっと。レオライザーは、人々を護るために戦い続けている。
悪のみを倒し、弱きには手を差し伸べ続ける、ヒーローであり続けた。
そんな彼が……何時しか。ふと、気配を感じて振り返ると、そこに立っていたのはボルディアだった。
ボルディアは暫くレオライザーを見つめていると……。
ゆっくりと手にした斧を彼に向けて、構えた。
何も言わずに敵意を向けてくるその存在に対して。
「俺は正義の獅子、レオライザーだ」
レオライザーは動じぬ様子で相対する。
「その邪魔をするのなら、倒すだけだ。……だってオレは、『星を守りし正義の獅子』だから」
敵対するのがハンターであり、己より強力な存在と分かってなお、歪虚に対する時と全く変わらぬ様子、変わらぬ言葉で応える。
……いずれかの輪廻の間。人に、仲間だったはずの存在と闘う時に向ける苦悩は、もうそこには微塵もない。
ボルディアは。
幾度の輪廻で、数多のハンターを何度でも『ノイズとして消去して来た』彼女は、狂っているのか。
もはや邪神を倒すより強大な敵を倒すより、『ノイズを除去する』ことが彼女にとって最優先だった。
それでも。
「──最初の志を亡くした奴等は全員コロす」
その目的に対して、決して標的を見誤ってはいなかった。
レオライザーは。
彼女の目の前にあるそれは。
もはや重責と役割に圧し潰され、「ヒーローを演ずる機械」に成り果てているのだから。
変わらず人のために歪虚を討ち続けている様で、そこにはもはや……本来の誇りや覚悟は、無い。
恐れないのは。
苦しまないのは。
もはやただの、抜け殻だからだ。
そう……それはたしかに、『最初の志を亡くし』ていた。
今のボルディアにとって、人を害するか害さないかが問題では無いのだ。
そこに邪神を倒す意思を喪失した者は全て消去しなければ……狂ったテープが正しく「再生」されることは無い……その筈だから。
「そうだ……オレは正しい……オレは世界を救うためにやってる……。全てのノイズが消えたら……邪神を……」
そしてレオライザーは……ただ形ばかりのヒーローを象るばかりの人形は、ボルディアを咎めることも、弁解することも無い。
ただ「己の邪魔をするもの=悪」として、機械的に対処するだけだ。
「俺は正義の獅子、レオライザーだ」
その意味も誇りも忘れて、口上のための口上を、ただ音声として発音する。繰り返し繰り返し。
誰も知らない森の奥で。二種類の獣の如き咆哮が上がる。
木々を震わせ、人々を慄かせるそれは、しかし。
まだ意志あるハンターたちにはどちらも、どこか空虚な叫びに思えた。
●
幾度……では、済まない回数のやり直しを経て。
その中にはどうして巻き戻ったのか……納得のできない『勝利』もあった。
それでも、どうして成し遂げたと認められないのか……。
「……やはり僕が生きようとするのが、間違いなのかもしれませんね」
ふと、康太が言った。
「僕が偶に生き残ることを是としてきたのは、前よりも生き延びる者が増える戦い方が確立されてきたからです……が、それがそもそもの間違いだとすれば」
そんな戦い方は、本来であれば為せたはずは無いのだ。あらかじめ、敵の技、行動が把握できていないと。
そして、そんな『反則技』は、『奇跡』として認められないというのであれば。
「……本来、死すべきものは死に。初めに邪神の元へたどり着いたものだけで勝利することが条件なのでは」
康太はそう告げて、邪神突入戦で突撃していった。……かつてと同じように、先陣を切って。
メアリは──やはりかつてのようには、動けなかった。
だってもうずっと、ずぅっと永い間、康太と一緒に居るのだ。今更、彼が居ない未来に行っても意味などない。
彼が前線に行くというなら。やはり自分はその彼を生かそうと立ち回ろうと。
メアリが考えていたのは、そこまでだった。
……決して、『この結果』を狙ったわけでは……無かったが。
その回。メアリは。康太の機体を追う最中、死角から堕天使型狂気にサンダルフォンごと撃ち抜かれて死んだ。
……。
…………。
………………。
「あ。やっと会えましたね康太さん。『いつも出会う依頼』に居ないから探したじゃないですか」
そうして巡り合った次で。
康太の前にメアリはそうして姿を現して、何事も無かったかのように告げた。
青褪めて後ずさる康太に、メアリは微笑む。そう言えば、そうだっけ。私も『最初の時』はショックだったかな。
「思いがけず、置いていってしまいましたが……康太さんも軽率に死んでは駄目ですよ」
少しは私の気持ちがわかりました? と。
軽く。
ごく軽く、彼女はそう言った。
本来死ななくてもいい場所で自分のせいで死んだというそのことを。
「大丈夫。上手くいくまで、何度でも繰り返しましょう。二人生き残る方法、有りますよ」
──貴方と一緒なら、何回死んだって私は平気。
なのに、どうして貴方はそんな目で私を見るんです?
……これは狂っているのでしょうか。
私は彼にとって、そこまで大事な存在には……なれませんか?
何度目かの果て。
メアリはずっと微笑み続けている。
いつだって、いつまでも。康太を信じ、追い続けた。
何度も取り残されて。何度も死んだ。それでも。
「は……ははは……」
やがて、もういいか、と康太も笑った。
全てが終わって、彼女を置いてくからそれがなんだというのだ?
……今までの永さに比べたらそんなのもう、余生じゃ無いか。
だったら。
「メアリさん、一つ提案があります。今後、僕の前で死ぬことが無かったら、ご褒美です」
「……え?」
「その次のループでは、はじめから恋人として過ごすんです。如何ですか?」
康太の提案に、メアリはみるみる目を輝かせて言った。
「ああ……いい、良いですね。素敵。断然モチベーション上がりました。あ、でもそうしたら今回は」
「死んだから、駄目駄目ですね。今周はペナルティとしてとことん塩対応です」
「酷い。……あれ、でもそしたら、康太さんが私の前で死んだら?」
メアリの問いに、康太は肩を竦めて行ってしまった。
……もう。その気なら、こっちも塩対応してやろうか。
そうなったら後悔するくらい恋人の時に惚れさせて、死ぬのをやめさせてやろう。
ああ、彼が居れば狂わずに済む、なんて思ってたけど。ここでこんな目標をくれるなんて。やっぱり彼は素敵。
大丈夫。
彼となら。
何処までも。
何度でも。
ずっとだって。
●
「ねえ……もう、もうやめようよ……これ以上は……マリナがマリナじゃなくなっちゃう!」
「反論ならば対案を。対案亡き批判は検討に値しない」
イリエスカの言葉に。
マリナはすっかり、表情も感情も失せた声で事務的に答える。
向けられる、興味の無さそうな視線にイリエスカはまた、己のどこかがギチギチと締め上げられていく感触を覚える。
「やめよう……無駄になってもいいじゃん……」
掠れる声でイリエスカは言った。
「無駄があったっていいじゃん! 忘れよう! 忘れてボクとのことを覚えててよ! 何回やり直したって……ボクたち一緒なら大丈夫だから!」
「その予測に対する演算……結果・ネガティブ。否定要素に対し肯定できるデータの圧倒的不足」
縋るような声に、マリナはやはり、ただ冷たく告げるだけだった。
「議論終了。前回結果保持のための容量最適化処理を開始……」
「もうやめてえぇっ!」
どうして。
オートマトンの自分がどうしてそうするのか。
分からないまま、イリエスカはマリナの再計算を力づくで止めに行っていた。
引っ掴み、涙を流しながら殴りかかって、処理を妨害する。
必死の呼び掛けに。
「貴官は本試行において不要。排除」
返ってきたのはそれだけの言葉と、銃声だった。
胸の真ん中を撃ち抜かれて、イリエスカは停止する。
虚ろな涙をこぼしながら、イリエスカの意識は途絶えて。
そうして、またすぐに、次のループでマリナと再会した。
躊躇いながらも近づいて行くイリエスカに、マリナは。
「……? すまない。貴官は……誰だ?」
そう言って。
ああ、とうとう『そこまで』来ていたのかとイリエスカは理解する。
遅すぎたのだ。
止めさせるなら、もっと早くからそうしなければならなかった。
ツンとした痛みが、全身を走り抜けていく。
ギチギチ。ギチギチ……締め上げられていたのは、己の核。
辛いって。
悲しいって。
こういう事だったんだ。
それもまた……気付くのが遅すぎた。
それでも……。
「はじめまして、ボクはイリエスカ。よろしくね!」
イリエスカは受け入れることにした。全てを忘れたマリナを。
それでも離れることなど出来なかったから。だから……いつかまた2人で楽しく過ごせる時を信じることにして。
そして、それでもそれが、最後の楔となって、マリナを最後の一歩で留め続けている──
●
……………………………………。
●
誰しもがすり減り、疲弊し、その果てに歪んでいく、もはや無限としか思えぬ試行の果て。
血のような夕霧を端として、殺戮の宴が沸き起こった。
ハンターからハンターに。まるで感染するかのように狂乱は拡大していく。
「そうだ……歪虚を……」
「全ての歪虚をの消滅を……」
呟き、血刀を振りかざす覚醒者たちは、皆一様に薄笑いを浮かべていて。
『つまり諦めたいという事じゃな、おぬしは。そんなこと許されると思うたか?』
ミグ・ロマイヤー(ka0665)はヤクト・バウ・PCのコックピットから完全にしらけ切った顔で言い切った。
殺していた者も。
殺されていた者も。
暫し呆然と、それを見上げる。
ヤクト・バウ・PC──ダインスレイブ。
彼女は、そう名付け、呼んでいるもの。
ぬうと降り立ったその姿を、見上げて、……言葉を、知識を、喪ったかのように、『それ』に釘付けになって見つめていた。
今己が視界に映しているものは何なのか。理解を越えた何かを認識しようとしているつもりで拒絶して、フリーズする。
砲台が、殺戮を繰り返す彼らへと向けられた。
未だ動かぬ彼らの視線の先で、深い深い闇が収束していく──
ループを抜け出す手段としてミグが取っていたアプローチはマリナと同根の物だ。
ループのパターンを記録し、フロー図をこさえて几帳面に管理し、毎回違った計画を練る。
ここまでなら、機械に親しい者や技術者らしい発想であると言える。
──今、何回目だっけ?
問われたならば……ミグは答えられる。
まともな精神であれば百を越えたころから数えるのをやめたであろう。
そうして後わずが、ギリギリの精神を保っていた者が聞けば発狂するであろう、その数字──1万4859回。
ただ、ミグがマリナと違ったのは、無限に膨れ上がるだろうその記録を、個体で持つのは不可能だろうと初めから目していたことだ。
彼女の試行は、膨大にふくれ続けるだろうその記録を保持する場所に辿り着く事だった。
機械に保持してもそれはループの再開とともに巻き戻ってしまう。かといって『イレギュラー』が、感情ある存在がそれを担うのは負荷がかかりすぎる。
彼女は。この課題を解決しうるそれにはじめから目星を着けていた。
──惑星ジュデッカ。
案内人無くば辿り着けない筈のそこへと。歪虚の身ならばと。
はじめの数千回のループを、彼女はその到達へと割り振った。
……ミグ・ロマイヤーは折れない女としても有名だ。
だが、その鋼鉄の女をして、孤独の宇宙に挑み時に永劫の闇の中を立ち往生する、そんな航路に耐えうる者なのか。
そこには彼女の愛機、ヤクト・バウ・PCと──彼女が真性のメカ狂いであることは大きかっただろう。
嗚呼、彼女ならば! 『歪虚』の己に合わせてメカをカスタムし続けることは、一つの興であったろうとも!
……どうせ、『まともな生き物としての生』であれば、一周目で既に存分に全うしていたのだ。
世界の再誕の果てには全て生み直されIFの一筋と消える、そんな隙間の戯れならば。むしろそれは純粋なる技術論としてならば趣深い。
姿を現した機体は。
それに搭乗する存在は。
そういうものだった。
そのてっぺんから爪先に至るまで歪虚の歪虚による歪虚のための機体。その全容を。
脳が飲み込む前に、見たもの全て、グランドスラムが焼き払っていった。
……ジュデッカに至る、その道に塞がる障害全てを焼き払うためにカスタマイズを尽くしたそれは、砲弾と呼べるものですら無かったが。
ところで。
ジュデッカに刻まれるフロー、もはや衛星軌道からナスカの地上絵の如く伺うことすら出来る孤独壮大な図を。
それを幾度も刻みに来るミグの存在を。
そこにいる反動存在たちは何故放置するのか?
彼らは理解したからだ。
彼女が始めにジュデッカに辿り着いたその時に。
……そこに辿り着くまでには。
彼女の機体はこれ以上なく完成していなければならなかった。
もはや手を加えなくなったそれに彼女は飽きることもなくその後も乗り続けた。
つまり──狂っていた。
そも。記録でない、真なるジュデッカに辿りけたならば。他の者をそこに導けば良かったのに。彼女はそれをせず、ただ記録の場とすることに固執し続けた。
そう……。
「さあ、次のループを開始しよう」
全てを灰塵に化したその後、何事もなく彼女は告げる。
独りジュデッカへと辿り着いた──辿り着けたのは何故か?
その時彼女は最早反動存在と質を同じくしていたからだ。
自分は努力している。そう嘯きながら……その実、停滞した永遠を望む。
●
繰り返す。
繰り返す。
繰り返す。
希望などあるのか。
最早誰がそれを覚えているのか。
その果てには──。
「はじめまして、ボクはイリエスカ。よろしくね!」
「貴官は……覚えている。唯一無二、最愛の相棒だ」
それでも。
いつかきっと。
依頼結果
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最終発言 2019/08/25 21:39:43 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/08/22 23:16:56 |