ゲスト
(ka0000)
守るべき戦線 ~フミナ~
マスター:天田洋介

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/09/13 12:00
- 完成日
- 2019/09/26 16:43
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
グラズヘイム王国の南部に広がる伯爵地【ニュー・ウォルター】。
領主の名はアーリア・エルブン伯爵。
現在、傲慢のアイテルカイト『ナアマ』が率いる歪虚の軍団と交戦状態にある。
ヒマワリ畑の危機を救ったハンター一行は、穀倉地帯を通過するルートで帰路に就いた。特に問題はなく、田では稲穂が揺れている。
春から秋にかけては米の栽培。秋から春にかけては麦の栽培。伯爵地ではある時期からそうした施策が行われていた。
「お仕事、お疲れ様なのです~」
馬車に乗っていたハンターズソサエティー支部の受付嬢フミナは、巡回警備中の兵士達に手を振る。一旦停車して、状況を教えてもらう。警備のポイントが確認できるよう、遠回りする形でマールへと戻った。
その晩、フミナはハンターズソサエティー支部の一室で報告書を書き上げた。そして翌日にマール城へと出向いて、領主のアーリアと接見。アーリアたっての希望だったからである。
「なるほど。すべての蜂スノーラが退治されてよかった。それにしても、歪虚のナアマ、侮れぬ。ニュー・ウォルターの急所を的確に突いてくる……」
執務室のアーリアは、ソファへ座ったフミナに紅茶を勧めた。
「ハンターのみなさんも、食料の要である穀倉地帯のことを心配していましたです。ですが厳重な警戒体制が敷かれていて、安心しました」
フミナは紅茶を一口味わう。
「あれでも足りないぐらいだ。精々、早めに知ることができる程度か。もっと人員を割きたいところだが、敵の本拠地であるドスガ攻略を控えている。また、マールの防衛にも兵力は必要だが。……いや、すまないな。今のは聞かなかったことにしてくれ」
アーリアの表情は優れなかった。
「とはいえ、ナアマ側も無尽蔵に手下を用意できるわけではないだろう。そこに我々の勝機がある」
アーリアのその言葉が、フミナの脳裏へと深く残る。
それから一週間後、アーリアが率いてのドスガ攻略の軍進攻が始まった。
支部で吉報を待っていたフミナの元へと、緊急の連絡が届く。それは穀倉地帯で警戒している部隊からのものであった。
穀倉地帯のすぐ近くまで、冷気の根が伸びていていたという。兵士がわずかながら涼しい一帯に気づいたことで、発見したという。冷気を抑え込み、深い地下に張ってきたことで、これまで気づけなかったようだ。
「た、大変なのですよ!」
フミナは大急ぎで、緊急の募集をかける。一刻も早く、現地へ向かうことが望まれていた。
領主の名はアーリア・エルブン伯爵。
現在、傲慢のアイテルカイト『ナアマ』が率いる歪虚の軍団と交戦状態にある。
ヒマワリ畑の危機を救ったハンター一行は、穀倉地帯を通過するルートで帰路に就いた。特に問題はなく、田では稲穂が揺れている。
春から秋にかけては米の栽培。秋から春にかけては麦の栽培。伯爵地ではある時期からそうした施策が行われていた。
「お仕事、お疲れ様なのです~」
馬車に乗っていたハンターズソサエティー支部の受付嬢フミナは、巡回警備中の兵士達に手を振る。一旦停車して、状況を教えてもらう。警備のポイントが確認できるよう、遠回りする形でマールへと戻った。
その晩、フミナはハンターズソサエティー支部の一室で報告書を書き上げた。そして翌日にマール城へと出向いて、領主のアーリアと接見。アーリアたっての希望だったからである。
「なるほど。すべての蜂スノーラが退治されてよかった。それにしても、歪虚のナアマ、侮れぬ。ニュー・ウォルターの急所を的確に突いてくる……」
執務室のアーリアは、ソファへ座ったフミナに紅茶を勧めた。
「ハンターのみなさんも、食料の要である穀倉地帯のことを心配していましたです。ですが厳重な警戒体制が敷かれていて、安心しました」
フミナは紅茶を一口味わう。
「あれでも足りないぐらいだ。精々、早めに知ることができる程度か。もっと人員を割きたいところだが、敵の本拠地であるドスガ攻略を控えている。また、マールの防衛にも兵力は必要だが。……いや、すまないな。今のは聞かなかったことにしてくれ」
アーリアの表情は優れなかった。
「とはいえ、ナアマ側も無尽蔵に手下を用意できるわけではないだろう。そこに我々の勝機がある」
アーリアのその言葉が、フミナの脳裏へと深く残る。
それから一週間後、アーリアが率いてのドスガ攻略の軍進攻が始まった。
支部で吉報を待っていたフミナの元へと、緊急の連絡が届く。それは穀倉地帯で警戒している部隊からのものであった。
穀倉地帯のすぐ近くまで、冷気の根が伸びていていたという。兵士がわずかながら涼しい一帯に気づいたことで、発見したという。冷気を抑え込み、深い地下に張ってきたことで、これまで気づけなかったようだ。
「た、大変なのですよ!」
フミナは大急ぎで、緊急の募集をかける。一刻も早く、現地へ向かうことが望まれていた。
リプレイ本文
●
長閑な稲穂の景色とは裏腹の、遠方の野原で蠢く数十本もの冷気の根。悪寒しか感じられず、吹いてくる風は真冬のように冷たかった。
「進攻阻止、どうかよろしくお願いします!」
ここまで馬車の御者を務めてきたフミナは、後方での待機となる。一同はフミナに挨拶してから、警戒の部隊と情報交換。そして敵が待つ方角へと歩きだした。
「邪神との戦いが終わっても、どこもかしこも即平和とはいかねぇよな。それにしても堪える寒さだ」
アーサー・ホーガン(ka0471)は寒冷の装備に気を使っていた。数百mは根の群体と離れているというのに、身体が震える。
「冷気というならばスノーラは水属性なんじゃろうな。ツマリは土じゃよ。ふふふ、モグラたたきなら負けんぞい」
ミグ・ロマイヤー(ka0665)はしたり顔である。今は仲間達に合わせて、魔導バイクをゆっくりと走らせていた。
「んー、わかれて行動して、何かあったらすぐ連絡を取りあうので何とかなりそうな気がするの。だって敵がいる場所は寒さで判断できると思うの」
ディーナ・フェルミ(ka5843)は怒り心頭だ。「食べられない根と蜂が、食べられる畑をダメにするなんて許されないの」と。その辺りの心境はフミナと同じである。
「部隊の斥候によると、寒いのはこの方角だけ。この範囲なら、お互いを見失うこともないと思う。ここで食い止められなかったら大変なことになる……。そんな事絶対にさせないから!!」
時音 ざくろ(ka1250)は、すでに魔導剣を鞘から抜いていた。
「手が凍った武器の金属部分に張り付いたら、想像するだけで痛いじゃないですかぁ。手袋ない人は保険のつもりで持っていって下さいぃ」
星野 ハナ(ka5852)はごそっと手袋をだし、寒さ対策として仲間達に分ける。
「警戒の部隊の人達は右手の方面担当だね。私も分散には賛成だよ」
鞍馬 真(ka5819)は歩きながら、たくさんの冷気の根を観察した。どれも樹の幹ほどの太さがあるのに、かなり柔軟な動きができるようだ。
「根は簡単に見つけることができましたが、スノーラはいないようですね。でもどこかに隠れているかもしれません。上空から探ってみます」
穂積 智里(ka6819)は魔箒に跨がって、大空へと浮かんだ。しばし立ち止まって、様子を窺うことに。
「私達の現在位置から見てぇ、二時の方角に敵が居るかもしれないので注意して下さいぃ」
その間に星野ハナがタロットで占う。
「あの手の振り方……」
目をこらした南護 炎(ka6651)が、穂積智里からの合図を確認。数多くのスノーラが根の後方で待機しているようだ。占いとほぼ同じ報告である。
「もしもし――」
星野ハナが部隊と無線で連絡を交わす。その直後に、敵方向の地表付近がキラリと輝いた。まもなく一同の後方で、土煙が巻きあがる。氷柱による超遠隔攻撃のせいだ。
「どうやら田んぼには届いていないが、ギリギリって感じだね。これ以上の猶予はないようだよ」
時音の呟きに仲間全員が頷く。
ハンターと警戒の部隊がほぼ同時に動きだして、ここに戦いの火蓋は切って落とされた。
●
「索敵が必要って思っていたけど、想像以上に敵がウジャウジャなの」
「ディーナさん、そちらに行きましたよ!」
ディーナは穂積智里からの呼びかけで足を止めて、すさかずセイクリッドフラッシュの聖なる輝きを放った。撓る根の勢いが途中で衰えて、地面へと落ちていく。
ディーナは聖なる光を連続で続ける。
穂積智里はまだ勢いのある冷気の根に対して、デルタレイの三条の光で貫いていく。
そこにスノーラの巨大蜂が現れた。
「蜜蜂じゃないから、蜜もなく生きてる雀蜂じゃないから、蜂の子も採れないの! 期待だけさせたお前は許さないのー!」
ディーナの怒りによって、聖なる光の輝きが増す。乱戦ではあったが、効果的な範囲攻撃の連続によって事態は好転していった。しかし気がかりもある。
「なんだか根が連携して動いているような……」
「前にもそういう傾向はあったの。でも、これほどではなかったの」
穂積智里とディーナが、互いに首を傾げる。何故か知恵のある敵と戦っているような、そんな印象を持つ。
「あれって……、もしかしてあの雑魔なの?」
「まるで宿り木のようですね。共生関係なのでしょうか?」
冷気の根の根元に付近で、別種と思しき植物系の雑魔が育っていた。それは暗示の薬を作るために必要だった雑魔である。
「まさかの新事実なの!」
「合わさって、ようやく一人前でしょうか。だとすれば、かなり手強いのでは?」
二人は戦いながら無線と魔導短伝話の両方で、味方に連絡。冷気の根はこれまでと同じ強さではないと告げるのだった。
(水路……、やはり水量そのものが減っている感じですね)
星野ハナは根と戦いながら、三本の水路を確認していく。上空から眺めた穂積智里によれば、上流の水量はかなりのものだったという。
事前に仲間達と相談した際に、氷の元は何なのかが疑問として残った。そこで考えついたのが水だ。瘴気の依り代としての役目を果たしているのではないかという仮説である。
「ブッコロ~!」
根の攻撃を避けて、五色光符陣で対抗。自身を取り囲んだ六本の根をまとめて屠った。ちなみに部隊の兵には、できる限り遠隔攻撃で戦うよう相談済みである。
「もしもしぃ、お願いがあるんですけどぉ」
星野ハナは鞍馬真と連絡を取って、上流での水路遮断を頼んだ。それでスノーラの発生を減らせるかも知れないと。
「いつもよりも強いらしいが、まあいい」
アーサーは魔剣で冷気の根を切り裂きながら、突破を図る。まずはスノーラの頭数を把握しようと考えての行動だ。
強烈な冷気はサーコートのおかげで耐えられた。より寒くなっていく方向へと駆けていく。冷気の根による茂みを抜けると、スノーラの大軍と出くわした。
「見つけたぞ!」
つけっぱなしの無線で報告してから、周囲の根を瞬殺。その後は武器を奏弓に変えて、スノーラを観察する。
(冷気の根によって冷気が溜まり、スノーラが増殖していく。水路という水辺を選んだのも、そのためか? あくまで仮説だが)
アーサーは再び無線に向けて呟いた。「冷気の根を優先的に倒していけば、スノーラの数は抑えられるはずだ」と。
「寒さなぞ、パワードスーツでバッチリじゃ!」
霧露乾坤網も装備したミグは、魔導バイクで縦横無尽に戦場を駆け回っていた。「工房の倉庫を穿り返しといてよかったわい」と呟きつつ、アックスを振るう。
思い切り刃を叩きつけると、まるで悲鳴をあげるように冷気の根が震える。
根の先端を斬ったとしても、暴れる根をおとなしくさせることは難しい。だからこそ、根元から伐ってしまえばよい。新たに伸びるまでには時間を要するはずなので、効率がよかった。
「歪虚の陣営など、このミグが壊滅させてやるのじゃ!」
根の半分まで伐り、「倒れるぞ!」とミグが叫ぶ。魔導バイクに跨がって「まるで最新鋭の木こりじゃな」と呟きつつ、次の太い根へとアクセルを吹かした。
「早く倒したほうがいいのなら、一気にいったほうがよさそうだね! 超機導パワーオン……弾け跳べ!」
ドラグーンマントに身を包む時音は、根の攻撃を受けとめつつ跳ね返す。「今だっ! 超熱線放射、拡散ヒートレイ!」少しでも寒さが和らぐような戦い方を選んだ。まるで燃えるように、崩れて散っていく根。ことごとく塵に還していく。
暖かい場所なら、その下に根が張っていることはない。別所へと移動し、寒さを感じた辺りで様子を窺う。
罠を張っていたかのように、新たな根が足元から伸びて攻撃を仕掛けてきた。さらにゆらりと左右に身体を傾かせながら、スノーラが大地から現れる。
「スノーラの発生を完全に抑えこむのは、さすがに難しいみたいね。でもっ! くらえ必殺根薙の太刀だ!」
薙ぎ払いによって千切れた根が、回転しながら宙を舞う、攻撃をいなしてから、スノーラを真っ二つに。やがて、ただの氷の塊と化す。根もスノーラも、瘴気を立ちのぼらせて消えていった。
「ここが発生源の一つのようだね」
鞍馬真は魔箒で水路上流に辿り着く。冷気がわずかに感じられる周辺で屯っているのは、生まれたてのスノーラだ。主に雪だるま型だが、変わった動物を象った個体も混じっている。
二刀で斬り続けて、止めの斬撃によって真っ二つに。迫ってきた熊型を倒している間にも、次々とスノーラが出現していた。
数え切れないほどのスノーラに囲まれたとき、鞍馬真は白龍の力を使う。異端の力、白巫女の祈りによって無数の閃光が大地へと降り注いだ。
一気に敵の頭数が減ったとき、水路の堰を止める。ひ弱そうな根を倒すと、冷気は感じられなくなった。
「大量にスノーラを発生したいのなら、ここまで冷気の根は後退するしか方法はないだろうね」
完全に水を止めたいところだが、そうすると田畑への影響がでてしまう。
「かなり大変な目にあったようだね……」
近くにあった畑の作物から、元気が感じられない。汚染されている可能性も考えて、鞍馬真は浄化の祈りをかけるのだった。
戦いながら違和感が増してきて、やがて南護炎はあることに気づく。
「スノーラの動きが妙だ! すべての個体が合体をしようとしている気配だ!」
南護炎は急いで味方に連絡を行う。勘は当たってスノーラが融合していく。いくつもの巨大な個体がその姿を現した。
さらに大樹並の太さがある冷気の根が、土塊をまき散らしながら大地から這いだしてくる。その長さはざっと二十m。撓った先端が草原に触れると、まるで地震のように足元が揺れた。
●
「ふむ、あれが根の本体のようじゃな」
「これまでのが細めの側根で、目の前に聳えているのが、主根のようですねぇ」
魔導バイクを止めたミグに、星野ハナが駆け寄った。ミグが大型魔導銃を撃つと、大地から伸びた氷の壁が盾となって防がれてしまう。
「宿り木と化した薬の雑魔も、たくさんくっついていますね」
「それだけ頭がいいのかもなの。あんなのが田畑で暴れたりしたら、大変なの!」
穂積智里とディーナが避けた後の大地に主根が触れる。それだけで容易く大地が抉られていた。
「この主根、厄介ですね」
「さしずめ特攻のリーダーといったところだろう」
時音と南護炎が並行して走って、降り注ぐ氷柱を避ける。
「こいつらを倒せば、場は収まるんじゃないのか?」
「それを達成しましょう。フミナさんによれば、ハンターの応援を呼んでいるようなので」
アーサーと鞍馬真が巨大スノーラの拳を避けて、すれ違いながら言葉を交わす。
冷気の主根が一本、側根が二十本前後。全高五~十五mクラスのスノーラが十体。それらがまとまって田畑の方へと迫り来る。味方の部隊は魔法や銃、矢による遠隔攻撃で支援していた。
「ここ一番を繰りだしましょう。いいですかね?」
星神器「カ・ディンギル」の杖によって、ヤルダバオートと呼ばれる大魔法を発現させた。それは尊く、味方には強固な守りを、敵には認識を阻害する呪いをもたらした。
「ここが正念場じゃ。コンクラーベといこうではないか。こいつは土属性の弾じゃぞ」
ミグは機導砲・紅鳴とアルケミックパワーで大型魔導銃の性能を極限まで高める。さらに解放錬成と高加速射撃を加えて、銃口を超巨大なスノーラへと向けた。
空気を切り裂くような轟音。一瞬のうちに目標スノーラのどてっぱらには、大きな風穴が開いた。膝をついた超巨大スノーラの頭部へと、南護炎が攻撃を仕掛ける。
「でくの坊のあだ名がお似合いじゃ」
その間にミグは次弾を準備。もう一射撃を放つことで、完全に沈黙させたのだった。
「一気に叩くのなら、これしかないだろうな」
主根の根元は、巨大スノーラ二体よって堅く守られていた。なら、まずは短くしてしまうおうとアーサーがバーストエンド『ネフェルティ』を発動。数多の刺突は神をも穿つ光として、主根の中央付近を大きく穿った。
「これでどうでしょうか?」
鞍馬真は白夜の祈りで、光を降り注いだ。
「平和が訪れても、冷害で餓死者がでたらなんにもならないの。逃がさないの、根っ子!絶対お前はここで倒すの!」
ディーナのセイクリッドフラッシュも加わり、太い主根が途中で千切れた。その長さは十m前後まで短くなる。
成果も得たが、氷柱攻撃や巨大なスノーラの攻撃は味方を傷つけて、体力もかなりすり減らす。
「ここが踏ん張りどころですよ!」
穂積智里が唱えたレメゲトンにより、味方は暖かな光で癒やされていく。逆に主根や側根、そして巨大なスノーラ等はもだえ苦しんだ。
「これで四体目! 超重剣真っ向唐竹割!」
時音が巨大化した魔導剣で、倒れた巨体スノーラを真っ二つに。ばたつかせていた敵の手足が動かなくなり、すぐにただの骸と化す。さらに拡散ヒートレイと薙ぎ払いで、進む巨体スノーラの前で立ちはだかった。
「まだだっ!! ここから先には、これ以上一歩も進ませはしないよ」
時音はマントを翻して身体を張る。背後で輝く、黄金色の稲穂を守るために。
星野ハナは五色光符陣の輝きで、繰り返し巨大スノーラをまとめて焼いた。後方の部隊が遠隔攻撃しやすい位置取りで。
「スノーラの数を押さえ込めたおかげで、戦いやすくなったはずですぅ」
行動阻害によって、巨大スノーラの進みは遅かった。一歩踏みだす間に、雨あられの攻撃が味方によって試みられる。
力は弱くても数多くの個体だったら、事態は変わっていたはずだ。敵側がハンターの実力に恐怖して、判断を見誤ったともいえる。
一同は傷つきながらも次々と巨大スノーラを倒して、残るは主根のみとなった。凄まじき冷気はハンター達の正気をも狂わせかけたが、ディーナのゴッドブレスが効果を発揮。最後の力を振り絞る、わずかな余裕となる。永遠にも思えた攻撃の連続は、突如として終わりを迎えた。氷結をまき散らす主根の崩壊によって。大地に隠れているかなりの部分も耐えられなかったらしく、地面がかすかに凹んでいく。
それからまもなくして、応援としてやってきたハンター達と一緒にフミナが現れる。後を任せて、奮闘したハンター達は後方へと退いた。
「ナアマ討伐が済むまでは、こういうゲリラ戦のような戦闘は起きるんでしょうね」
穂積智里が乗りこんだ馬車の座席へと、深くもたれ掛かった。
「フミナさん、アーリアに報告あげるんだよね? 直接報告にいってもよいかな? あっちも人手が要ると思うの」
「わかったのです。ディーナさんと同じような方がいればいってください」
フミナは自ら馬車牽きの魔導バイクに跨がる。そして守りきった稲穂の田を眺めながら、戦場から離れた。
翌日、戦いはハンター側の勝利で終わる。田畑の損害は、ないに等しい。一週間後に稲刈りが行われたのだった。
長閑な稲穂の景色とは裏腹の、遠方の野原で蠢く数十本もの冷気の根。悪寒しか感じられず、吹いてくる風は真冬のように冷たかった。
「進攻阻止、どうかよろしくお願いします!」
ここまで馬車の御者を務めてきたフミナは、後方での待機となる。一同はフミナに挨拶してから、警戒の部隊と情報交換。そして敵が待つ方角へと歩きだした。
「邪神との戦いが終わっても、どこもかしこも即平和とはいかねぇよな。それにしても堪える寒さだ」
アーサー・ホーガン(ka0471)は寒冷の装備に気を使っていた。数百mは根の群体と離れているというのに、身体が震える。
「冷気というならばスノーラは水属性なんじゃろうな。ツマリは土じゃよ。ふふふ、モグラたたきなら負けんぞい」
ミグ・ロマイヤー(ka0665)はしたり顔である。今は仲間達に合わせて、魔導バイクをゆっくりと走らせていた。
「んー、わかれて行動して、何かあったらすぐ連絡を取りあうので何とかなりそうな気がするの。だって敵がいる場所は寒さで判断できると思うの」
ディーナ・フェルミ(ka5843)は怒り心頭だ。「食べられない根と蜂が、食べられる畑をダメにするなんて許されないの」と。その辺りの心境はフミナと同じである。
「部隊の斥候によると、寒いのはこの方角だけ。この範囲なら、お互いを見失うこともないと思う。ここで食い止められなかったら大変なことになる……。そんな事絶対にさせないから!!」
時音 ざくろ(ka1250)は、すでに魔導剣を鞘から抜いていた。
「手が凍った武器の金属部分に張り付いたら、想像するだけで痛いじゃないですかぁ。手袋ない人は保険のつもりで持っていって下さいぃ」
星野 ハナ(ka5852)はごそっと手袋をだし、寒さ対策として仲間達に分ける。
「警戒の部隊の人達は右手の方面担当だね。私も分散には賛成だよ」
鞍馬 真(ka5819)は歩きながら、たくさんの冷気の根を観察した。どれも樹の幹ほどの太さがあるのに、かなり柔軟な動きができるようだ。
「根は簡単に見つけることができましたが、スノーラはいないようですね。でもどこかに隠れているかもしれません。上空から探ってみます」
穂積 智里(ka6819)は魔箒に跨がって、大空へと浮かんだ。しばし立ち止まって、様子を窺うことに。
「私達の現在位置から見てぇ、二時の方角に敵が居るかもしれないので注意して下さいぃ」
その間に星野ハナがタロットで占う。
「あの手の振り方……」
目をこらした南護 炎(ka6651)が、穂積智里からの合図を確認。数多くのスノーラが根の後方で待機しているようだ。占いとほぼ同じ報告である。
「もしもし――」
星野ハナが部隊と無線で連絡を交わす。その直後に、敵方向の地表付近がキラリと輝いた。まもなく一同の後方で、土煙が巻きあがる。氷柱による超遠隔攻撃のせいだ。
「どうやら田んぼには届いていないが、ギリギリって感じだね。これ以上の猶予はないようだよ」
時音の呟きに仲間全員が頷く。
ハンターと警戒の部隊がほぼ同時に動きだして、ここに戦いの火蓋は切って落とされた。
●
「索敵が必要って思っていたけど、想像以上に敵がウジャウジャなの」
「ディーナさん、そちらに行きましたよ!」
ディーナは穂積智里からの呼びかけで足を止めて、すさかずセイクリッドフラッシュの聖なる輝きを放った。撓る根の勢いが途中で衰えて、地面へと落ちていく。
ディーナは聖なる光を連続で続ける。
穂積智里はまだ勢いのある冷気の根に対して、デルタレイの三条の光で貫いていく。
そこにスノーラの巨大蜂が現れた。
「蜜蜂じゃないから、蜜もなく生きてる雀蜂じゃないから、蜂の子も採れないの! 期待だけさせたお前は許さないのー!」
ディーナの怒りによって、聖なる光の輝きが増す。乱戦ではあったが、効果的な範囲攻撃の連続によって事態は好転していった。しかし気がかりもある。
「なんだか根が連携して動いているような……」
「前にもそういう傾向はあったの。でも、これほどではなかったの」
穂積智里とディーナが、互いに首を傾げる。何故か知恵のある敵と戦っているような、そんな印象を持つ。
「あれって……、もしかしてあの雑魔なの?」
「まるで宿り木のようですね。共生関係なのでしょうか?」
冷気の根の根元に付近で、別種と思しき植物系の雑魔が育っていた。それは暗示の薬を作るために必要だった雑魔である。
「まさかの新事実なの!」
「合わさって、ようやく一人前でしょうか。だとすれば、かなり手強いのでは?」
二人は戦いながら無線と魔導短伝話の両方で、味方に連絡。冷気の根はこれまでと同じ強さではないと告げるのだった。
(水路……、やはり水量そのものが減っている感じですね)
星野ハナは根と戦いながら、三本の水路を確認していく。上空から眺めた穂積智里によれば、上流の水量はかなりのものだったという。
事前に仲間達と相談した際に、氷の元は何なのかが疑問として残った。そこで考えついたのが水だ。瘴気の依り代としての役目を果たしているのではないかという仮説である。
「ブッコロ~!」
根の攻撃を避けて、五色光符陣で対抗。自身を取り囲んだ六本の根をまとめて屠った。ちなみに部隊の兵には、できる限り遠隔攻撃で戦うよう相談済みである。
「もしもしぃ、お願いがあるんですけどぉ」
星野ハナは鞍馬真と連絡を取って、上流での水路遮断を頼んだ。それでスノーラの発生を減らせるかも知れないと。
「いつもよりも強いらしいが、まあいい」
アーサーは魔剣で冷気の根を切り裂きながら、突破を図る。まずはスノーラの頭数を把握しようと考えての行動だ。
強烈な冷気はサーコートのおかげで耐えられた。より寒くなっていく方向へと駆けていく。冷気の根による茂みを抜けると、スノーラの大軍と出くわした。
「見つけたぞ!」
つけっぱなしの無線で報告してから、周囲の根を瞬殺。その後は武器を奏弓に変えて、スノーラを観察する。
(冷気の根によって冷気が溜まり、スノーラが増殖していく。水路という水辺を選んだのも、そのためか? あくまで仮説だが)
アーサーは再び無線に向けて呟いた。「冷気の根を優先的に倒していけば、スノーラの数は抑えられるはずだ」と。
「寒さなぞ、パワードスーツでバッチリじゃ!」
霧露乾坤網も装備したミグは、魔導バイクで縦横無尽に戦場を駆け回っていた。「工房の倉庫を穿り返しといてよかったわい」と呟きつつ、アックスを振るう。
思い切り刃を叩きつけると、まるで悲鳴をあげるように冷気の根が震える。
根の先端を斬ったとしても、暴れる根をおとなしくさせることは難しい。だからこそ、根元から伐ってしまえばよい。新たに伸びるまでには時間を要するはずなので、効率がよかった。
「歪虚の陣営など、このミグが壊滅させてやるのじゃ!」
根の半分まで伐り、「倒れるぞ!」とミグが叫ぶ。魔導バイクに跨がって「まるで最新鋭の木こりじゃな」と呟きつつ、次の太い根へとアクセルを吹かした。
「早く倒したほうがいいのなら、一気にいったほうがよさそうだね! 超機導パワーオン……弾け跳べ!」
ドラグーンマントに身を包む時音は、根の攻撃を受けとめつつ跳ね返す。「今だっ! 超熱線放射、拡散ヒートレイ!」少しでも寒さが和らぐような戦い方を選んだ。まるで燃えるように、崩れて散っていく根。ことごとく塵に還していく。
暖かい場所なら、その下に根が張っていることはない。別所へと移動し、寒さを感じた辺りで様子を窺う。
罠を張っていたかのように、新たな根が足元から伸びて攻撃を仕掛けてきた。さらにゆらりと左右に身体を傾かせながら、スノーラが大地から現れる。
「スノーラの発生を完全に抑えこむのは、さすがに難しいみたいね。でもっ! くらえ必殺根薙の太刀だ!」
薙ぎ払いによって千切れた根が、回転しながら宙を舞う、攻撃をいなしてから、スノーラを真っ二つに。やがて、ただの氷の塊と化す。根もスノーラも、瘴気を立ちのぼらせて消えていった。
「ここが発生源の一つのようだね」
鞍馬真は魔箒で水路上流に辿り着く。冷気がわずかに感じられる周辺で屯っているのは、生まれたてのスノーラだ。主に雪だるま型だが、変わった動物を象った個体も混じっている。
二刀で斬り続けて、止めの斬撃によって真っ二つに。迫ってきた熊型を倒している間にも、次々とスノーラが出現していた。
数え切れないほどのスノーラに囲まれたとき、鞍馬真は白龍の力を使う。異端の力、白巫女の祈りによって無数の閃光が大地へと降り注いだ。
一気に敵の頭数が減ったとき、水路の堰を止める。ひ弱そうな根を倒すと、冷気は感じられなくなった。
「大量にスノーラを発生したいのなら、ここまで冷気の根は後退するしか方法はないだろうね」
完全に水を止めたいところだが、そうすると田畑への影響がでてしまう。
「かなり大変な目にあったようだね……」
近くにあった畑の作物から、元気が感じられない。汚染されている可能性も考えて、鞍馬真は浄化の祈りをかけるのだった。
戦いながら違和感が増してきて、やがて南護炎はあることに気づく。
「スノーラの動きが妙だ! すべての個体が合体をしようとしている気配だ!」
南護炎は急いで味方に連絡を行う。勘は当たってスノーラが融合していく。いくつもの巨大な個体がその姿を現した。
さらに大樹並の太さがある冷気の根が、土塊をまき散らしながら大地から這いだしてくる。その長さはざっと二十m。撓った先端が草原に触れると、まるで地震のように足元が揺れた。
●
「ふむ、あれが根の本体のようじゃな」
「これまでのが細めの側根で、目の前に聳えているのが、主根のようですねぇ」
魔導バイクを止めたミグに、星野ハナが駆け寄った。ミグが大型魔導銃を撃つと、大地から伸びた氷の壁が盾となって防がれてしまう。
「宿り木と化した薬の雑魔も、たくさんくっついていますね」
「それだけ頭がいいのかもなの。あんなのが田畑で暴れたりしたら、大変なの!」
穂積智里とディーナが避けた後の大地に主根が触れる。それだけで容易く大地が抉られていた。
「この主根、厄介ですね」
「さしずめ特攻のリーダーといったところだろう」
時音と南護炎が並行して走って、降り注ぐ氷柱を避ける。
「こいつらを倒せば、場は収まるんじゃないのか?」
「それを達成しましょう。フミナさんによれば、ハンターの応援を呼んでいるようなので」
アーサーと鞍馬真が巨大スノーラの拳を避けて、すれ違いながら言葉を交わす。
冷気の主根が一本、側根が二十本前後。全高五~十五mクラスのスノーラが十体。それらがまとまって田畑の方へと迫り来る。味方の部隊は魔法や銃、矢による遠隔攻撃で支援していた。
「ここ一番を繰りだしましょう。いいですかね?」
星神器「カ・ディンギル」の杖によって、ヤルダバオートと呼ばれる大魔法を発現させた。それは尊く、味方には強固な守りを、敵には認識を阻害する呪いをもたらした。
「ここが正念場じゃ。コンクラーベといこうではないか。こいつは土属性の弾じゃぞ」
ミグは機導砲・紅鳴とアルケミックパワーで大型魔導銃の性能を極限まで高める。さらに解放錬成と高加速射撃を加えて、銃口を超巨大なスノーラへと向けた。
空気を切り裂くような轟音。一瞬のうちに目標スノーラのどてっぱらには、大きな風穴が開いた。膝をついた超巨大スノーラの頭部へと、南護炎が攻撃を仕掛ける。
「でくの坊のあだ名がお似合いじゃ」
その間にミグは次弾を準備。もう一射撃を放つことで、完全に沈黙させたのだった。
「一気に叩くのなら、これしかないだろうな」
主根の根元は、巨大スノーラ二体よって堅く守られていた。なら、まずは短くしてしまうおうとアーサーがバーストエンド『ネフェルティ』を発動。数多の刺突は神をも穿つ光として、主根の中央付近を大きく穿った。
「これでどうでしょうか?」
鞍馬真は白夜の祈りで、光を降り注いだ。
「平和が訪れても、冷害で餓死者がでたらなんにもならないの。逃がさないの、根っ子!絶対お前はここで倒すの!」
ディーナのセイクリッドフラッシュも加わり、太い主根が途中で千切れた。その長さは十m前後まで短くなる。
成果も得たが、氷柱攻撃や巨大なスノーラの攻撃は味方を傷つけて、体力もかなりすり減らす。
「ここが踏ん張りどころですよ!」
穂積智里が唱えたレメゲトンにより、味方は暖かな光で癒やされていく。逆に主根や側根、そして巨大なスノーラ等はもだえ苦しんだ。
「これで四体目! 超重剣真っ向唐竹割!」
時音が巨大化した魔導剣で、倒れた巨体スノーラを真っ二つに。ばたつかせていた敵の手足が動かなくなり、すぐにただの骸と化す。さらに拡散ヒートレイと薙ぎ払いで、進む巨体スノーラの前で立ちはだかった。
「まだだっ!! ここから先には、これ以上一歩も進ませはしないよ」
時音はマントを翻して身体を張る。背後で輝く、黄金色の稲穂を守るために。
星野ハナは五色光符陣の輝きで、繰り返し巨大スノーラをまとめて焼いた。後方の部隊が遠隔攻撃しやすい位置取りで。
「スノーラの数を押さえ込めたおかげで、戦いやすくなったはずですぅ」
行動阻害によって、巨大スノーラの進みは遅かった。一歩踏みだす間に、雨あられの攻撃が味方によって試みられる。
力は弱くても数多くの個体だったら、事態は変わっていたはずだ。敵側がハンターの実力に恐怖して、判断を見誤ったともいえる。
一同は傷つきながらも次々と巨大スノーラを倒して、残るは主根のみとなった。凄まじき冷気はハンター達の正気をも狂わせかけたが、ディーナのゴッドブレスが効果を発揮。最後の力を振り絞る、わずかな余裕となる。永遠にも思えた攻撃の連続は、突如として終わりを迎えた。氷結をまき散らす主根の崩壊によって。大地に隠れているかなりの部分も耐えられなかったらしく、地面がかすかに凹んでいく。
それからまもなくして、応援としてやってきたハンター達と一緒にフミナが現れる。後を任せて、奮闘したハンター達は後方へと退いた。
「ナアマ討伐が済むまでは、こういうゲリラ戦のような戦闘は起きるんでしょうね」
穂積智里が乗りこんだ馬車の座席へと、深くもたれ掛かった。
「フミナさん、アーリアに報告あげるんだよね? 直接報告にいってもよいかな? あっちも人手が要ると思うの」
「わかったのです。ディーナさんと同じような方がいればいってください」
フミナは自ら馬車牽きの魔導バイクに跨がる。そして守りきった稲穂の田を眺めながら、戦場から離れた。
翌日、戦いはハンター側の勝利で終わる。田畑の損害は、ないに等しい。一週間後に稲刈りが行われたのだった。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
---|
面白かった! | 4人 |
---|
ポイントがありませんので、拍手できません
現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 アーサー・ホーガン(ka0471) 人間(リアルブルー)|27才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2019/09/12 09:17:56 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/09/09 12:32:35 |