魔術師の弟子、見回りする

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2019/09/17 09:00
完成日
2019/09/24 18:36

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●薬草園の日常へ
 グラズヘイム王国の中央寄り、北東寄りの中途半端な地域にある小さな町フォークベリー。城壁も備えるその町は転移門がないため、一時期住民は全員隣町グローノースに避難していた。
 その避難からの帰還も終わり、日常生活を取り戻そうと皆動き回る。
 城壁の外、川を挟んだ向こう側にある薬草園。薬草園の主ジャイルズ・バルネは助手のコリンと共に薬草園の手入れをしていた。歪虚により荒らされたというより、何もいなくなったことで野生動物が出入りした形跡がある。柵の壊れたところは直して、家畜を放すことになる。
 ジャイルズは思う。成り行きで助手としてコリンを引き受けて数年経っていると。一人前とは言えなくても、仕事を任せられるまでになってきている。
 気付けば居ついたユグディラのチャも、薬草園で仕事をしている。今は、家畜がどこかに行かないか見張っている、はずだ。
「あれ? ルゥルちゃん?」
 コリンが川の方を見て言う。
 着ぐるみ装備を着ているルゥルがフライングスレッドでやってきていた。こちらに来るかはわからない。ここは街道につながる道があるのだから。
 しばらくすると、薬草園の門が叩かれ、ルゥルが入ってきた。
「おはようございますなのですー」
「うむ、おはよう」
「おはよう、ルゥルちゃん」
「にゃ」
 ジャイルズとコリン、チャが挨拶を返す。
「どうかしたのか?」
「領主さんに依頼されたのです。ここを一周見回りを朝と午後に一回ずつするのですー」
「人手不足も極まるな」
「なのですー……?」
「まあ、これまでもこの辺りはちょこちょこ雑魔が通ったりしているからな……」
「むしろ、歪虚でました、何度か」
 ジャイルズはうなずく。かつての同僚まで歪虚となっていた。
「危険な時は逃げていきなさいと言われました」
「まあ、妥当だな」
「薬草園にも顔を出すのです」
「……手間をかけるな」
 ジャイルズは淡々という。ここで何かあっても町から離れているため、わかりづらい。
「お仕事です」
 ルゥルは手をぶんぶん振って、立ち去った。
「あれも大きくなったな」
 ルゥルを初めて見たときは、今より小さく細い子どもだった。今も細いし、子どもだが、しっかりとした考えと行動をとれるようになっている。
「さて、警戒は怠らず作業はしないとな」
「そうですね。ルゥルちゃんの仕事が増えてしまいます」
 コリンも同意した。
 邪神由来の歪虚は消えたとはいえ、すべての歪虚や雑魔がいなくなったわけではない。だからこそ、緊張感は必要であった。

●見回り
 ルゥルはパルムのポルム、フェレットのフレオ、ユグディラのキソシロを連れて、見回りをする。
 小さな町を出て川を渡り、二手に分かれる道を進み一周して戻ってくる。二手に分かれているけれども、同じ大きな街道につながっている。つまり一周して戻ってこられるのだ。そんなつくりになった理由をルゥルは知らない。この辺りに住み着いた人が
 だから、ルゥルは一周して戻り、城壁にいる守備隊の隊長に報告をするのだ。フライングスレッドはスピードは決して速くはない。何かあれば空を飛べるという魅力も兼ね備えている。道と道の間は小高い山になっているというのも味噌だ。なぜなら、空を飛べると、そこで何かあったらすぐに見に行けるのだ。
 空を飛べる道具として魔箒もあるが、見に行く時には馬など乗っている物を置いていく必要がある。むろん、何かの作戦や遊ぶ時には重宝する。
「何もいないといいのです」
「にゃ」
 ルゥルはキソシロと話しながらフライングスレッドを進ませる。
 秋の日差しが木々の間から差し込む。丘の上を見て、ゴブリンがいたとか歪虚がいたことなどいろいろ思い出す。
 無事街道に出て、そこからもう一本の道に行くため進む。
 林を通り抜ける。
「あ、師匠が放置している研究室」
 師匠であるマーナは研究室を持っている。一応、実験などするときのために持っているはずだ。しかし、最近は放置しているはず。ハンターとしてあちこち飛び回っていたはずだから。
「キソシロ、私も研究室持てたらかっこいいですぅ」
 ルゥルの言葉にキソシロはうなずく。
「どこがいいですぅ? キノコがたくさん生えそうな、エトファリカもいいです。アークエルスも行ってみたいです」
 ガタリ。
「み、ムグリ」
 ルゥルは悲鳴を上げかかったがが、自分の手で口をふさいだ。
 その音は研究室から聞こえた。
(泥棒なのです? それとも、リスさんやネズミさんです?)
 ルゥルはじっと見つめる。
 キソシロが素早く見にいった。
 ルゥルは何かあったときのために杖を握りしめる。魔法を使えるようにした。
 キソシロが急いで戻ってきた。大きいクモと大きいネズミのイメージがルゥルに伝わる。
「み、みぎゃああああああああああああ」
 ルゥルはフライングスレッドを全力で出発させたのだ。
 そして、隊長のところに報告に行く。
「隊長さーん、師匠の研究室の、巨大クモと巨大ネズミが戦っているのですー」
「なんだと!」
 キソシロが首を激しく横に振る。
『ちがーう!』
 しばらく、キソシロから情報を得るためルゥルと隊長は話を聞く。
「マーナさんの研究室に雑魔……クモ由来とネズミ由来のがいるということでいいな。それと、クモの巣がミッチリ」
 隊長の言葉にキソシロが首肯した。
 依頼はルゥルが隣町に行って、領主を通して行うのだった。

●依頼
 隣町グローノースのハンターオフィスにて、受付男子ロビン・ドルトスは依頼を登録する。
「……あの近辺に潜みやすい、一方で人間や生き物に襲い掛かりやすい……場所だもんなぁ……これまでもいたのって」
 ついこの間まで歪虚が多くいた。そのため、負のマテリアルが溜まりやすい場所があったのかもしれない。人間同様、道があるから進むのかもしれない。
「徐々に、こういった依頼もなくなっていくんだね」
 ロビンはふと嬉しいのに寂しい気持ちになった。平和な方がいいに決まっている。ただ、色々な人との出会いは減るだろう。
「さてとお仕事お仕事」

リプレイ本文

●さて
 天央 観智(ka0896)は状況から考える。
(建物の穴というのが気になりますよね。まあ、クモやネズミの進入路何でしょうけど。自然発生した雑魔がどこで雑魔になったかも、ですね。外か研究所か……前者なら、退路ではなく、増援の侵入路になる危険性もあります)
 そのため、ルゥル(kz0210)のところのユグディラのキソシロに穴の場所などを詳しく聞いた。しばらく時間はかかるが建物の裏手、下の方に大きな物も出入りできそうな穴だという。
 マリィア・バルデス(ka5848)はルゥルに対して相好を崩す。
「偉かったわね、ルゥル。ちゃんと見回りの成果があったわね。それじゃ、ルゥルの見つけた雑魔を退治しに行きましょうか。行くんでしょ、ルゥルも?」
 照れるルゥルは嬉しそうな顔になるが、他のハンターを見る。
 メイム(ka2290)はうなずく。
「何事も経験だものね。ルゥルは十分な実力がついたと思う。でもね、部屋のクモにびっくりして【どっかーん】!とかはなしだよ?」
 エステル・ソル(ka3983)もルゥルを連れて行くことに異議はない。
「ルゥルさんもずいぶん成長したのです。これからルゥルさんが一人で依頼を受けることも出てくるかもしれません。さて、問題です」
 ルゥルがビクッとなる。
「一人で複数を相手にするときはどうしたらいいでしょうか?」
「【どっかーん】ですー」
 エステルは目を瞬かせ、キソシロが溜息を洩らす。
「違います! 逃げて一対一になれる場所で戦う、無茶駄目です」
 エステルの解答にルゥルは唇を尖らせた。
 ソナ(ka1352)は薬草園が近いことからそこの関係者のことを思い出す。キソシロを見て首を傾げる。
「ジャイルズさんたちはお元気でしょうか? ユグディラさんたちも。チャちゃんはこの間見かけましたけどクロさんやシロッポイさんはどうしているかしら?」
 キソシロがソナの服の裾を引っ張る。そして、自分を指さす。
「キソシロはどんど焼きやったとき、うちに来たのです。ジャイルズさんはシロッポイと呼んでいました」
 ソナは驚いたが、しゃがむとキソシロに「元気で良かったです」というと「にゃ」と返事があった。
 フィロ(ka6966)は話もひと段落着いたということで声をかける。
「研究室なら貴重な資料や標本もあるかもしれません。雑魔以外も入り込まれない方が適切だと考えます。雑魔討伐後、研究室内を清掃し、侵入口の発見および閉鎖まで行う方がよろしいかと」
 今後の行動方針に対し異論はない。実際どうするか現地で検討することになる。

●内と外
 林を背景にその研究室はある。表は荒れているようには見えない。
「裏に穴があるんですね」
 観智の言葉にキソシロがうなずいた。
「私は玄関から入ろうと思います」
「荒らさない方がいいとは思うので、外におびき出したいとは思います」
 フィロはエステルの言葉にうなずいた。
「私も玄関から入るわ。研究室の中をチェックしてから外に出したほうがいいのかなと思うのよ」
 マリィアはルゥルを連れて行動するという。
「あ、でも、ルゥルは外で待機したほうがいいんじゃない? エステルさんたちが雑魔を引き付けてくれるなら、外で待機して、マジックアローで頑張ろう」
 メイムがルゥルが装備しているスキルを踏まえ提案する。
「僕は裏に回って、退路になりうる可能性をふさぎに行きますね。まあ、雑魔に万が一増援がいたならすぐに救援要請しますよ」
 観智は自身の行動を告げる。
「クモは中で巣を張っているのですよね? 部屋から動くことはあまりなさそうですね。建物の裏のネズミから退治しますか?」
 ソナが提案する。
 ルゥルは自身の行動が割れているため、考えた。ルゥルは裏手に回るチームに加わることにした。
「分かったわ。玄関から入ってるにしても鍵はどうかしら? 必要なら開けるチャレンジするわ」
 マリィアがツールをちらりと見せる。
「それなら任せてください」
 ルゥルがカギをしっかり見せた。
 ハンターたちは通信機をきちんと整える。玄関から入る人のため、ルゥルがカギを開けてから裏に回るメンバーに加わった。
「ルゥルが選んだのよね」
 マリィアは少し寂しいが、ルゥルがハンターの話を聞いて判断したのは褒めたい。
「学習し成長したということですね」
 フィロの言葉にマリィアはうなずいた。二人は玄関から静かに入った。

 メイムが【ファミリアズアイ】を用いて建物の裏の方がどうなっているか確認をする。
 壁の当たりで何か動いている。
「いるかも?」
 用心をして進むことになる。
「何がいるかわからないですね」
 観智が注意を促した。
「クモもヤだけど、でっかいネズミが突っ込んでくるのもヤだよね。あっ! キソシロが食べてくれるかもよ? ヴォイド・イーター・キソシロにっ!」
 メイムが想像し嫌な顔をする。キソシロがメイムを飛び蹴りをした。
「痛いっ……って痛くはないけど、ごめんごめん」
 メイムが謝罪する中、キソシロがあからさまに溜息を吐いた。
「キソシロさんはルゥルさんの側にいてくださいね」
「にゃ」
 ソナにうなずく。
 建物の角を曲がったところで、それらを発見する。大きなネズミが壁から出て来てたのだ。穴があるということを表している。
「中に入られると困りますね」
「そのための【ソウルトーチ】です! こっちに来るのですっ!」
 エステルがスキルを用い、少し林の方に進む。建物から離すことが重要だから。討伐をする際に中に逃げられるのは困る。
 それはエステルを追うか悩むように出てくる。
 もう一体出てきたが、ハンターを見て勢いよく駆け出す。これが戦闘開始の合図となる。
 ソナは【ミレニアム】を【高速詠唱】を用いて一気にかけた。

 研究室のの建物に入っていったマリィアとフィロ。
 玄関とも短い廊下のような場所にはクモの巣はない。ただ、何かがうろついている形跡や壁に穴が見える。
 フィロはネズミを注意し足元を、クモの不意打ちを考え頭上を意識する。クモの巣がないからといって何もないとは言い切れない。
 マリィアは念のため銃を構える。雑魔はすべて外に追い出せるなら追い出したいところではある。
 研究室の扉のノブにフィロが手をかける。そこに大量のクモの巣があるはずだ。
 その時、短い廊下の部分を巨大なネズミが走っていく。
「屋内にも穴があるのよね」
 マリィアにフィロがうなずいた。屋内の中の穴よりも、外に通じる穴の方が問題だ。
 フィロとマリィアは研究室の扉を開く。
 クモの巣がふわりと舞う。雑魔由来の糸では、動きが大きく制限される危険性を感じる。ただし、これを外に出すには難しそうだ。
 マリィアは外にいる者に「クモ雑魔を発見、認識された。これから戦闘に入る」と連絡を入れる。
「行きます」
 フィロはスキルを重ね、一気に間合を詰める。クモの巣の粘着があったとしても、それを振り切り接敵する。フィロはクモ雑魔にこぶしを叩き込んだ。
 クモ雑魔はフィロに向かって飛び掛かろうとする。
 マリィアは【ハウンドバレット】を叩き込む。
 クモ雑魔は無に返った。

 マリィアからの連絡の直後、外のハンターたちも一気に動く。
「中に戻られたら意味がありません。【即座障壁】」
 観智が魔法を用いて、壁で建物の穴をふさぐ。
「ナイス、観智さん! ルゥルも行くよ! 【レセプションアーク】」
 メイムは距離を若干詰めスキルを用いた。
「【マジックアロー】なのですー」
 ルゥルが指輪の力を引き出し、二本エネルギーの矢を放つ。
「この場で決着を付けます。【プルガトリオ】」
 ソナが放つ力が敵を縫い付ける。
 エステルは状況を見て、補助か攻撃かを判断する。【ソウルトーチ】で引き付けたモノが来るなら【アースウォール】も検討していた。ただ、目の前で敵が無に返ったため、次を考える必要ができる。
「出る幕がないのは良かったのかもしれません。林に巣穴があるのか確認したほうがいいです? ルゥルさん、林でそういうところはありますか?」
「うーん。雑魔は時々、どこから来たり、ふわっとできるのです」
 エステルにルゥルは答えた。

 一旦ハンターたちは合流する。
 エステルとフィロが念のために林を見に行く。
 観智は穴をふさぐ方法を考える。道具がどこにあるかを確認する必要はある。
「先に隊長に報告をしてから掃除しましょうか?」
 ソナの提案にルゥルは「掃除先でもいいと思います」という。きちんと見ることが雑魔が本当にいないことにつながるという理由を述べた。
「分かりました。では、掃除しましょう」
 ソナは魔箒やロボットクリーナーを取り出した。
 各人作業を開始するのだった。

●掃除
 中で掃除をするメンバーは研究所内に入る。
「ルゥル、掃除道具は一式あるかしら?」
「あるです。ここです」
 マリィアとともに研究室の隅にあるロッカーにルゥルは行く。途中のクモの巣が鬱陶しい。
「術で浄化しても、このような状況だとまた負のマテリアルが溜まってしまうものですよね。こうして掃き清めるのが一番です」
 ソナは邪魔なクモの巣を外に落ちていたしっかり目の枝で取っていく。
「普通のクモやネズミもいるんだよね……研究室をいぶすのがいいかな?」
 メイムはいぶされてくれるか難しい。とりあえず、空気を入れ替える必要はあるだろう。
「ただのネズミの死骸は埋葬してあげたいですね」
「そうだね、そのままってのもあれだし」
 ソナにメイムも同意する。何らかで巻き込まれて死にこれら雑魔化するのも困る。
「掃除しつつ、他にも侵入経路ないか見たほうがいいわよね。あと、ルゥル、屋内の壁にも穴があるの」
 マリィアはが指さした先を見てルゥルが「みぎゃっ!?」と声を上げた。
「まずは、このクモの巣よね……」
 マリィアは見渡す。全員がうなずき、クモの巣排除に動いた。

 外に出かけたエステルとフィロは、雑魔がまだいるとか、長期にわたって負のマテリアルの汚染があったようなところはないと判断した。つまり、動物の巣穴はあっても、特に動植物に変異があるところはなかった。
「あれ以上でないようで良かったです」
「はい。私たちも戻り掃除に加わりましょう」
 二人は研究室に急いだ。

 観智は穴の状況を見る。木製の家であるため、道具さえあれば応急処置はできそうだ。
「板と釘はいりますね。さすがに研究室にはないでしょうね……」
 試しにルゥルに聞くとないという返答だった。
「ルゥルさん、道具を借りたり、板を入手できる所はありますか?」
「砦がいいと思います」
「中はどうしますか?」
 研究室を見れば、中にも穴がある。
「外との出入りの方が問題なのですー」
「分かりました。では、行ってきますね」
 観智は砦に向かった。

 ネズミの死骸を林に埋め終わったソナは戻ってくる途中でエステルとフィロと会う。
 何があったのかとそれぞれ問う。
「巻き込まれたネズミがいたのでそれを埋めてあげていました」
「そうですか……」
「雑魔になったモノだけではないのですね」
 ソナの言葉にエステルとフィロがうなずいた。そして、三人は建物に入る。
 見回りのエステルとフィロは他の者にも説明をした。そのあと、エステルは大きな布でほっかむりをして、エプロンをする。バケツと水、雑巾も取り出す。
 フィロは掃き掃除がひと段落着きそうなのを見て、雑巾を手にした。
「クモの巣はおおむね取ったけど、後は拭き取りかな?」
 メイムが掃除の進行状況を告げる。
「分かりました」
 フィロは雑巾を絞り、戦闘で汚れた床を中心に拭き始める。
 ソナがロボット掃除機を使用し始めると、ルゥルとキソシロの目が移動する。一人と一匹がその後ろをついて回る。
「ルゥルさん、手が止まってしまいますね」
 ソナが困った顔になる。
 ルゥルは箒を動かしながら掃除機に付いて回った。
「仕方がないよね」
 メイムが笑う。キソシロは「心外な」と言うように反応をしたが、掃除機に釘付けになっていた。
 しばらくたってから、マリィアが声をかける。
「ルゥル、師匠宛てに手紙を書いておかないかしら?」
「なんでです?」
 マリィアにルゥルは首を傾げる。
「戻ってきたとき、ルゥルの手紙があった方が師匠さん喜ぶんじゃいかしら」
「……報告書ですね……そうですね。研究室の穴のこともありますし」
 ルゥルは納得して、棚から筆記用具を取り出すのだった。きれいになった机で書き始める。

 観智は砦で金づちなどの道具を借り、板をもらう。板自体は余っているからもらってよいとのこと。
 板と穴を確認し、板を打ち付ける際に押さえてくれるよう頼む。そうすることで作業はスムーズに進んだ。
 道具を片付けてから、研究室はきれいになっていた。
「見違えるようになっていますね」
 出かける前に見ているから違いを感じた。
「あと一息ですね。休憩しませんか?」
 ソナがおやつを取り出し告げると、ルゥルがぱあと顔を明るくしたのだった。

●帰り道
 帰るための後片付けが始まる。
「年単位で離れていらっしゃるなら、この機会に外もお手入れをしてはどうでしょう?」
「……師匠、これからは戻ってくると思うのです。そうしたら、きっと整備しますです」
 町の外れということで、歪虚が出るとなると手入れが難しかったということを説明した。
「わかりました。今日はこれでおしまいです。ルゥル様、早くお師匠様がお帰りになられると良いですね」
 フィロにルゥルはうなずいた。
「私もこういう研究室を持ちたいです。持つと一人前の研究者なのですぅ」
 ルゥルは雑巾を絞る。
「リゼリオも、エトファリカもいいと思うのです」
「でもさ、探索はあちこち回ればいいのだから、やっぱり資料が豊富なアークエルスがオススメかなぁ、研究室」
 メイムが絞りたての雑巾を物干し用のロープにひっかける。
「なるほどなのです。図書館大きいのです」
 ルゥルは納得していた。
「キソシロさんはルゥルさんと一緒ですか?」
 ソナの問いかけにキソシロは曖昧に「にゃあ」と鳴いた。ルゥルのところにふらりと来たように、ふらりと去るかもしれないと感じた。
 マリィアは研究室の建物の内側を見て回った。
「片付けは終わったわね。ルゥル、そろそろ帰りましょう?」
 室内の様子についてはルゥルに説明し、判断をゆだねる。
「帰るです」
 ルゥルは告げる。
「ルゥルさんに質問です。もし、林の中に雑魔の巣があったらどうしますか?」
「【どっかーん】なのですー」
「……ル、ルゥルさん……何が住んでいるかきちんと確認しましょう?」
 エステルは慌てた。ルゥルが元気よくファイアーボールを打ち込む姿が脳裏に浮かんだのだった。
「まあ、慎重に行動しているようには見えましたけどね」
 観智は今日の行動を見て考える。結局、口で言うのと実際は別なものだと。

 雑魔討伐完了の旨を報告して、仕事は終わったのだった。

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MVP一覧

  • 止まらぬ探求者
    天央 観智ka0896
  • ルル大学防諜部門長
    フィロka6966

重体一覧

参加者一覧

  • 止まらぬ探求者
    天央 観智(ka0896
    人間(蒼)|25才|男性|魔術師
  • エルフ式療法士
    ソナ(ka1352
    エルフ|19才|女性|聖導士
  • タホ郷に新たな血を
    メイム(ka2290
    エルフ|15才|女性|霊闘士
  • 部族なき部族
    エステル・ソル(ka3983
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士
  • ルル大学防諜部門長
    フィロ(ka6966
    オートマトン|24才|女性|格闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 【相談】雑魔退治
エステル・ソル(ka3983
人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2019/09/16 22:28:53
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/09/16 22:27:12