ゲスト
(ka0000)
【未来】(無題)
マスター:近藤豊

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/09/16 19:00
- 完成日
- 2019/09/19 07:26
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
邪神戦争末期。
エトファリカ連邦国にて大きな時代の節目を迎えた。
――幕府と朝廷の終焉。
それはこの国における政治中枢となっていた機関が、突如消失した事を意味していた。幕府を支えたエトファリカ武家四十八家門は有力な領地を持つ武将となり下がり、符術師養成機関となっていた陰陽寮も組織維持も困難になっていく。
この事態はエトファリカ連邦国そのものが崩壊に繋がっていた。
そんな混迷の状況の中で、ある同盟話が持ち上がる。
連邦国東に位置する詩天とその周辺国の間で締結された軍事同盟――後に『詩龍列藩同盟』と呼ばれたこの同盟は、その後に大きな影響を与えていく。
「また来たか」
詩天の黒狗城で三条家軍師、水野 武徳(kz0196)は大きなため息をつく。
既に何度目の来訪だろうか。
いい加減相手にするのも疲れるのだが、無碍に断る訳にもいかない。武徳は筆を置くと、仕方ない様子で来訪者へ向き直った。
「今日はお疲れのご様子。そのような時は、このジェオルジで栽培、発酵させた特製のお茶は如何でしょう?」
辺境商業管理事務所ゴルドゲイルの所長であるノールド・セッテントリオーネは、西方から持参した手土産を畳の上へそっと置いた。
武徳はノールドを東西交流祭の時に出会い、その時から懇意にしてきた。何か物入りとなればノールドに探させ、その代わりに若峰内で一定の商売を許可している。バランスを考え帝国商人にも門戸を開いているのだが、ここ最近になってノールドが訪ねる回数が明らかに増えていた。
「ああ、すまぬな」
武徳は土産をさっと手元へ引き寄せると、再び文机へ向き直る。
ノールドを厄介者扱いしている証拠だ。
「水野様、ちょっとばっかりぃ冷たくありませんか?」
「わしは忙しいのだ。急に現れおって。用があるなら、さっさと申せ」
「ああ、そのぉ~。できればですね、もう少し取り扱いの品を増やしていただけないかなぁと思いましてぇ~」
ノールドは申し訳なさそうにボソボソと呟いた。
実は西方諸国からの品を持ち込む際、厳しい検疫と抜け荷のチェックがある。さらに詩天へ持ち込める品々は限定的であった。これは武徳が国内産業の発展と復興を優先した事、急激に西方から物が入り込んで価格の暴落を危惧した為であった。
「またそれか。申しておろう。この国はまだ充分な産業基盤が出来ておらんのだ」
「そうですかぁ。ですが、同盟相手の松江津や立駒はぁどうですかねぇ?」
(……こやつ、同盟の事を知って動いたか)
武徳はノールドを油断ならない商人と認識していた。
詩龍列藩同盟は、詩天や龍鳴寺に加えて松江津や立駒といった隣国も参加している。軍事同盟である以上、ある程度の物資や街道の整備を進めなければならないのだが、その影響もあって同盟国へ人口の流入が飛躍的に向上。経済が大きく活性化。幕府という後ろ盾を失った周辺の小国は、同盟に参加して庇護してもらおうと盟参加の申し出が後を絶たない状況だ。
ノールドはこの状況を知って商人として同盟国に名前を売ろうとしていたのだ。早くしなければ西方からライバルが多数出現する事を熟知しているのだろう。
「如何ですかぁ? 水野様のご紹介があればぁ、私もよりこの国の発展にぃ貢献させていただきますぅ」
「……良かろう。松江津や立駒に紹介してやろう。ただし、条件がある」
「条件、でございますかぁ?」
「最近、あまりにも忙しくてのう。我が詩天も人材が枯渇しておる。できれば、有能な人材を引き入れたい。その顔合わせも兼ねてこの城で酒宴を開く手伝いをして欲しい」
「はぁ? それでよろしければ」
状況を理解できない様子のノールド。
早い話、この城でパーティを開いて欲しいというのだ。それで良ければノールドは幾らでも手伝う。邪神撃破をお題目に掲げ、ハンターを集めれば良いのだから。
ただ、その目的が本当に人材確保の為なのかが気になるが――。
「水野様。その酒宴というのはぁハンターを呼んでもぉよろしいのですかぁ?」
「……構わぬ。むしろ、それが狙いよ。
彼らはよく働いた。
所望すればこの国で領地を与えられた存在である程、心強くもあるが……危険な存在でもある。早めに動かねばこの国の禍根となるやもしれぬ。すべてのハンターが危険な訳ではないが、一つの綻びが大きな傷となるかもしれぬしな」
エトファリカ連邦国にて大きな時代の節目を迎えた。
――幕府と朝廷の終焉。
それはこの国における政治中枢となっていた機関が、突如消失した事を意味していた。幕府を支えたエトファリカ武家四十八家門は有力な領地を持つ武将となり下がり、符術師養成機関となっていた陰陽寮も組織維持も困難になっていく。
この事態はエトファリカ連邦国そのものが崩壊に繋がっていた。
そんな混迷の状況の中で、ある同盟話が持ち上がる。
連邦国東に位置する詩天とその周辺国の間で締結された軍事同盟――後に『詩龍列藩同盟』と呼ばれたこの同盟は、その後に大きな影響を与えていく。
「また来たか」
詩天の黒狗城で三条家軍師、水野 武徳(kz0196)は大きなため息をつく。
既に何度目の来訪だろうか。
いい加減相手にするのも疲れるのだが、無碍に断る訳にもいかない。武徳は筆を置くと、仕方ない様子で来訪者へ向き直った。
「今日はお疲れのご様子。そのような時は、このジェオルジで栽培、発酵させた特製のお茶は如何でしょう?」
辺境商業管理事務所ゴルドゲイルの所長であるノールド・セッテントリオーネは、西方から持参した手土産を畳の上へそっと置いた。
武徳はノールドを東西交流祭の時に出会い、その時から懇意にしてきた。何か物入りとなればノールドに探させ、その代わりに若峰内で一定の商売を許可している。バランスを考え帝国商人にも門戸を開いているのだが、ここ最近になってノールドが訪ねる回数が明らかに増えていた。
「ああ、すまぬな」
武徳は土産をさっと手元へ引き寄せると、再び文机へ向き直る。
ノールドを厄介者扱いしている証拠だ。
「水野様、ちょっとばっかりぃ冷たくありませんか?」
「わしは忙しいのだ。急に現れおって。用があるなら、さっさと申せ」
「ああ、そのぉ~。できればですね、もう少し取り扱いの品を増やしていただけないかなぁと思いましてぇ~」
ノールドは申し訳なさそうにボソボソと呟いた。
実は西方諸国からの品を持ち込む際、厳しい検疫と抜け荷のチェックがある。さらに詩天へ持ち込める品々は限定的であった。これは武徳が国内産業の発展と復興を優先した事、急激に西方から物が入り込んで価格の暴落を危惧した為であった。
「またそれか。申しておろう。この国はまだ充分な産業基盤が出来ておらんのだ」
「そうですかぁ。ですが、同盟相手の松江津や立駒はぁどうですかねぇ?」
(……こやつ、同盟の事を知って動いたか)
武徳はノールドを油断ならない商人と認識していた。
詩龍列藩同盟は、詩天や龍鳴寺に加えて松江津や立駒といった隣国も参加している。軍事同盟である以上、ある程度の物資や街道の整備を進めなければならないのだが、その影響もあって同盟国へ人口の流入が飛躍的に向上。経済が大きく活性化。幕府という後ろ盾を失った周辺の小国は、同盟に参加して庇護してもらおうと盟参加の申し出が後を絶たない状況だ。
ノールドはこの状況を知って商人として同盟国に名前を売ろうとしていたのだ。早くしなければ西方からライバルが多数出現する事を熟知しているのだろう。
「如何ですかぁ? 水野様のご紹介があればぁ、私もよりこの国の発展にぃ貢献させていただきますぅ」
「……良かろう。松江津や立駒に紹介してやろう。ただし、条件がある」
「条件、でございますかぁ?」
「最近、あまりにも忙しくてのう。我が詩天も人材が枯渇しておる。できれば、有能な人材を引き入れたい。その顔合わせも兼ねてこの城で酒宴を開く手伝いをして欲しい」
「はぁ? それでよろしければ」
状況を理解できない様子のノールド。
早い話、この城でパーティを開いて欲しいというのだ。それで良ければノールドは幾らでも手伝う。邪神撃破をお題目に掲げ、ハンターを集めれば良いのだから。
ただ、その目的が本当に人材確保の為なのかが気になるが――。
「水野様。その酒宴というのはぁハンターを呼んでもぉよろしいのですかぁ?」
「……構わぬ。むしろ、それが狙いよ。
彼らはよく働いた。
所望すればこの国で領地を与えられた存在である程、心強くもあるが……危険な存在でもある。早めに動かねばこの国の禍根となるやもしれぬ。すべてのハンターが危険な訳ではないが、一つの綻びが大きな傷となるかもしれぬしな」
リプレイ本文
人々は希望を抱く。
しかし、未来は希望ばかりではない。
燻り続ける火種は煙を立ち上らせる。
「皆様、東西の料理を取り揃えさせていただきました。是非、ご堪能下さい」
辺境商業管理事務所ゴルドゲイル所長ノールド・セッテントリオーネの一声が黒狗城に響く。
東方での交易拡大を目論むノールドに対して三条家軍師水野 武徳(kz0196)は、黒狗城での酒宴を所望した。『詩龍列藩同盟』の三国要人を招いての酒宴は、宛ら邪神討伐の祝いのようでもあった。
「これぇ、同盟のバチャーレ村でぇ、土の精霊に捧げる雪山肉団子って言うんですぅ」
星野 ハナ(ka5852)の周囲には人集りができていた。
その理由はハナの手で作られた料理の数々である。半日前に若峰入りしたハナは、武徳から許可を得て西方の料理を数々作り出していた。
「牛豚鳥いろんなお肉を肉団子にしてぇ、大皿に山盛りにしてホワイトチョコ入りホワイトシチューをかけてぇ、横にリンゴベリー……コケモモジャムを添えるんですぅ」
「何やら聞いた事のない珍妙な名前ばかりじゃな」
「ほわいと……なんだって?」
西方の食材は詩天や周辺国では珍しい部類に入る。
それが評判を受け、ハナの料理に興味を抱いた武家は多い。
「……? これはなんじゃ油か?」
「それはぁ、きっとバターですぅ。牛乳がぁ、原料ですぅ」
「なんと牛の乳か」
「これはなんじゃ? 丸い物が積まれておるが」
「そっちはクロカンブッシですぅ。リアルブルーのウェディングケーキですけどぉ、山盛りで見栄えがいいしこれもお箸で食べられるからおすすめですぅ」
「これが異界の料理か」
ハナが特に気を付けたのは箸が使える料理にする事であった。
東方でも箸を使う文化だ。食材も箸を使えた方が西方の料理に馴染みのない武家達でも苦労なく楽しめるだろうという気遣いだ。
「そっちがアンチョビとチーズを入れたミニ春巻きでぇ、三角の小さいのがポテトサラダ。数々のピンチョスを用意しましたぁ」
ハナの料理は概ね好評。
わざわざ化粧をした上で総レースのワンピースで気合いを入れてきた甲斐があった。
宴はまだ始まったばかり。
早くもハナの料理は会場で話題を独占していた。
●
「ふむ。久しぶりの西方のワインじゃな」
ハンス・ラインフェルト(ka6750)は武徳へワイン「レ・リリカ」を手渡していた。
同盟で純米生原酒のようだと評判を受けていた事からわざわざ持参していた。
それも今日『この日』の為に準備した酒だ。
「水野様」
「分かっておる。話があるのであろう」
ハンスと武徳は付き合いも長い。
だからだろう。ハンスは挨拶回りをする武徳のタイミングを見計らって声をかけた。そのタイミングの良さを武徳は何か感じ取っていた。
「はい。本来であればこのような場ではなく、正式なご挨拶をするべきですが何卒ご容赦を」
「うむ」
「私は剣で生きたい。ですが、毒にも薬にもならぬ生き方などまっぴらなのですよ。
私は――毒でありたい。そういう私を使いこなせるのは東方では水野様か、有栖川様」
二人は揃って酒宴の会場を離れていた。
真剣なハンスの申し出を武徳は早々に理解したのかもしれない。
「人間領域が増え、『東方が東方で無くなる』可能性があります。私は水野様の目として、耳として誠心誠意努めます。私を水野家で召し抱えていただけないでしょうか」
ハンスの申し出は水野家の家臣になる事であった。
三条家ではなく、敢えて水野家の家臣を選んだ。そこには長い時間をかけて深めた交流と剣術から来る自信なのだろう。
「聞いておきたい。何故有栖川ではない?」
「有栖川様は西方の事をご存じありません。先程申し上げた可能性が見えておりません」
有栖川は風見鶏だ。東方で生き残る術は知っているだろうが、剣を握る者は時として劣勢でも立ち向かわなければならない時がある。ハンスは有栖川では小国のまま終わると考えていたのだ。
「もう一つ。東方で功績のあるハンターであれば領地を所望できたはず。何故、それをせんかった?」
「それは……」
ハンスは小声でささやく。
その言葉に武徳は大きく頷いた。
「そうか。おぬしも気付いておったか。あまり多くの碌は与えられぬかもしれぬが……」
「構いません。私は水野様……いいえ、殿のお近くで慎ましく暮らせればそれで十分でございます」
ハンスの視線の先には、若峰へ越してくる細君の姿があった。
●
ハンスと共に酒宴へ戻った武徳を待っていたのは穂積 智里(ka6819)であった。
「お話は終わったのですね」
「ええ、概ねは」
智里に対して微笑み返すハンス。
その様子を見ていた武徳は智里へ向き直る。
「そういえば若峰へ住む事が希望であったな」
「はい。シャッツ……ハンスさんが殿へお仕えする以上、私も若峰へ住むべきです。それに私は、最期まで詩天を守り詩天を強くし、詩天で生きるとあの人と約束しましたから」
――あの人。
それは詩天で攘夷を掲げた松永武人という男だ。詩天の将来を憂い、時に歪虚と手を組んででも国を守ろうとした浪士。方法を誤ったかもしれないが、愛国の心に偽りはなかった。
「詩天様は清濁併せ呑むような方ではありません。詩天を本当の意味で強くする為には、殿へお仕えするのが近道だと考えています。真美様が蓮の花でも白鳥でも、美しく咲くには泥沼があるからです。優雅に白鳥が浮かんでいられるのは必死に水掻きで漕ぐからです。私は気付かれぬ部分を支える殿のお力になりたいと思います」
「買いかぶりじゃ。だが、優秀な人材が仕えてくれるならば歓迎する」
歓迎する。それは紛れもなくハンスが水野家へ仕える事を意味していた。しばらくはハンター稼業と二足の草鞋となるだろうが、智里も引っ越しなどで忙しくなるはずだ。
「ところで先日紫草様とお話する機会を得ましたが、あの方は決めた道を均す為には全てを踏み潰すのは躊躇わない方です。あの方からは東方を踏み潰して帝を均一に均そうという強い意志を感じました」
「殿。私も同じ意見です。大将軍が自費で南征に乗り出すそうです。ハンターに呼びかけを開始しています」
智里とハンスは武徳へ早速懸念事項を武徳へ伝える。
ハンスの読みでは新天地で新たな特産を得てそれを天ノ都へ優先的に回し、人とカネを立花院で独占する計画でも立てているのでは無いかと睨んでいた。東方大復興を掲げて南征に生かすなら、東方全体に声をかけねばおかしい。
「ふむ。自ら幕府を終焉させた後に南征とは金がかかる真似を。幕府という後ろ盾なしで行う愚行を理解しておらぬな。だが、詩天にとっては幸いよ。今のうちに地盤を固める。
まずは……」
武徳はハンスと智里に小声で囁く。
その言葉はハンスにとって予想通りの言葉であった。
「領地を持ったハンターよ。あれは火種になる恐れがある」
●
「空気が変わったジャーン、ここも潮時かなー」
ゾファル・G・初火(ka4407)は運ばれてくる味噌田楽をひょいと皿から取り上げる。
口に放り込んだ瞬間、くるみの香ばしさがいっぱいに広がる。
邪神が倒れた結果、東方の空気が変わった事を感じ取っていた。
死地を望み、死地を乞うゾファルにとって邪神の討伐は有事の終焉を意味していた。これから訪れる平時には生きにくいゾファルは心の炎を燻らせていた。
「おや、確かおぬしは」
口いっぱいに田楽を頬張るゾファルの傍らから有栖川昴が顔を覗き込む。
突然現れる公家風な親父を前にゾファルは思わず噴き出した。
「わっ!」
「な、なんでおじゃるか!? いきなり田楽を吐き出すとは……ばっちいでおじゃる」
「悪ぃ悪ぃ。ちっと考え事してたジャン」
「さっき聞こえたでおじゃるよ。若峰で研ぎ師を志すそうでおじゃるな」
さすが耳が早い。
おそらく武徳の横で聞き耳を立てていたのであろう。武徳の屋敷を出たゾファルは城下に一軒借りて仕事を始めた。
鍛冶屋ではなく研ぎ師に特化したのはハンター業を続けながらでもできる上、怠惰なゾファルが唯一続けてこられたのは愛用の刀を研いできた事。これならば仕事として若峰で続けられると考えたのだ。
「邪神も倒したので暇になるジャン。俺様ちゃんも平時で生きる術って奴を考えたジャン」
「おや。おぬしはこの東方が平穏無事に過ごせると考えているでおじゃるか?」
「え? ……どういう事ジャン!」
ゾファルは有栖川へ詰め寄った。
その空気は明らかに危険な香り。ゾファルが求めてきたものである。
「考えるでおじゃるよ。邪神が討伐されたのに何故、水野殿は『詩龍列藩同盟』を周辺国と続けているのでおじゃろうな?」
「そりゃ、これから交易で儲けていく為ジャン」
「それだけではないでおじゃるよ。麿がこの同盟に参加した理由は、国を守る事でおじゃる」
「守るって誰からジャン?」
「旧幕府、もしくは公家。さらには野望を持った西方諸国でおじゃる」
有栖川が説明するには幕府が政権を放棄した時点で、各国は各国で国を運営しなければならなくなった。
言い換えれば国を守るのであれば自分の手で行わなければならない。未だ東方には有力武家が幅を効かせている。彼らが野望を抱いて領地拡大を開始すれば、自分の手で対抗しなければ滅ぼされてしまう。
「幕府という抑止力が失った今。東方は戦乱が続く国家に逆戻りする恐れもあるでおじゃる。麿も立駒を守る為には詩天と手を結んで敵の侵攻を食い止める必要があるでおじゃる」
「つまり、いつ戦いが始まってもおかしくないって事ジャン?」
その一言を呟いた瞬間、ゾファルの背筋に寒気が走る。
歪虚が消えても戦いの種は消えない。
人は他人と意見が異なれば、武力に出る事も厭わない。それはリアルブルーでも同じ事だ。
「だったら俺様ちゃんも準備しておくジャン……あ、今のうちにおっちゃんに声掛けしておくジャン」
そう言っているゾファルの瞳は強く輝き始めていた。
●
「おそらく、これからハンターの数は減っていく事になると思います。暴食王が残っているとはいえ、邪神を倒した以上、これまで通りの戦力を維持する必要もないでしょうから。体制も変わっていくと思います」
エルバッハ・リオン(ka2434)は武徳との再会を喜びながら、ハンターの現状を話題にしていた。
武徳がハンターについて警戒していると聞き及んでいた。そこで挨拶が一段落した武徳へ雑談がてらに探りを入れてみた。何気ない感じを装い、話の流れが不自然にならないように注意しながらハンターについて触れてみた。
ハンターを警戒する理由が分からない以上、リオンも気を遣いながら言葉を選ぶ。
「そうか」
「それに新しくハンターになった人も今の上位クラスまで成長するのはかなり時間がかかると思います。自分の経験上、厳しい戦いは覚醒者として成長を促しますが、これからはそういった戦いも少なくなっていくでしょうから、結果として成長も緩やかになるはずです」
「……やはりそうか」
「何かありましたか?」
武徳の反応にリオンは声をかけた。
自分の説明に何か落ち度があったのか。いや、最新の注意を払ったのだ。怒らせた訳ではなさそうだ。何より『やはり』という言葉が気になる。
「ハンターの将来を考えておいででしたか?」
「うむ。実は先程ハンスも同じような事を言っておったが、わしは東方が戦乱の世に戻る可能性がハンターにあると考えておる」
「ハンターに、ですか?」
「正確には領地を持ったハンターじゃな」
武徳が懸念していた事。
それは東方に領地を与えられたハンターについてであった。三条家を含む各家は、常に世継ぎの問題がついて回る。三条家も千石原の乱を引き起こして三条家の血筋が多く失われた事件もあった。
今は邪神戦争で功績を挙げたハンターがいるから良い。だが、そのハンターが死亡した後、その領地はどうなるのか。世襲制ならまだいいが、世継ぎが不在の間に死亡すればどうなるのか。召し上げる幕府もない。野望を持った武家が強引に入手する可能性もある。そうなれば各地で領地の奪い合いが始まる事を意味している。
「そのような事、本当にあるのでしょうか」
「分からぬ。だが、国を守る以上、あらゆる有事に備えねばならん。少なくともわしはそうやって戦乱の世を生きてきた」
武徳の断言。
武徳は自分が亡くなった後の詩天を案じていた。だからこそ人材を集めて酒宴を開かせ、同盟を強固にしようとしている。邪神がいなくなり、ハンターが減っていけば人の時代が訪れる。
――その頃に戦争がなくなっているのだろうか。
気が付けば、リオンは遠くを見つめていた。
●
「よう。今日はとある学校の教師として来させてもらったぜ」
今日のボルディア・コンフラムス(ka0796)は忙しかった。
酒宴へ参加したボルディアは早々に各国の首脳陣を訪ね歩き、ある提案を行っていた。
「交換留学とな?」
「ああ。西方にある学校と交換留学を提案したい。東方と西方の異文化交流についてはもう知っていると思うが、これからより発展する為にはお互いの文化を深く分かり合わなきゃならねぇ。こっちの学生は貴重な文化財や東方の人々に迷惑をかけないようにするからよ」
ボルディアの狙いは西方と東方の交換留学生制度だ。
お互いの文化をより深く知る為には、若者に見聞させる事。そこでボルディアは学校の教師として学生を東方へ派遣させる算段を付けに来たという訳だ。
「龍鳴寺や立駒は二つ返事だったな。松江津の観音坂っておっさんも多少渋い顔してたが、最終的にはOKをもらったぜ。後は詩天なんだけど……どうだい?」
「立駒がそう答えた、か」
そう呟いた武徳は一瞬だけ押し黙る。
何かを思案している様子だ。
「ダメか?」
「いや、喜んで受け入れよう。子は国の宝じゃ。若者が西方の技術を詩天へ持ち帰れば詩天にとって良い結果をもたらすであろう」
「本当か! 感謝するぜ。うちの学生も喜ぶぞ」
「うむ。できれば早い方が良い。そちらへ派遣する学生は候補を見繕っておこう」
「頼むぜ。俺は早速学校の方へ準備するよう連絡しておくからよ」
ボルディアは喜び勇んで黒狗城を飛び出した。
武徳の傍らにいたハンス。そっと小声で話し掛ける。
「殿」
「聞いておったな。隠忍倭衆へ連絡して忍びを学生として潜り込ませろ。西方からいただくのは技術だけには限らん」
武徳はボルディアの話を聞いて早々に忍びを紛れ込ませる事を決めた。
最新の情報を学生として潜り込ませた忍に入手させた上、外交上揉めるような事があれば工作員として破壊工作もさせられる。ボルディアにとって悪いが、詩天が生き残る為には致し方ない。
「はっ、仰せのままに」
ハンスは恭しく頭を下げると踵を返す。
平時になった詩天であるが、有事の気配が近づいていた。
しかし、未来は希望ばかりではない。
燻り続ける火種は煙を立ち上らせる。
「皆様、東西の料理を取り揃えさせていただきました。是非、ご堪能下さい」
辺境商業管理事務所ゴルドゲイル所長ノールド・セッテントリオーネの一声が黒狗城に響く。
東方での交易拡大を目論むノールドに対して三条家軍師水野 武徳(kz0196)は、黒狗城での酒宴を所望した。『詩龍列藩同盟』の三国要人を招いての酒宴は、宛ら邪神討伐の祝いのようでもあった。
「これぇ、同盟のバチャーレ村でぇ、土の精霊に捧げる雪山肉団子って言うんですぅ」
星野 ハナ(ka5852)の周囲には人集りができていた。
その理由はハナの手で作られた料理の数々である。半日前に若峰入りしたハナは、武徳から許可を得て西方の料理を数々作り出していた。
「牛豚鳥いろんなお肉を肉団子にしてぇ、大皿に山盛りにしてホワイトチョコ入りホワイトシチューをかけてぇ、横にリンゴベリー……コケモモジャムを添えるんですぅ」
「何やら聞いた事のない珍妙な名前ばかりじゃな」
「ほわいと……なんだって?」
西方の食材は詩天や周辺国では珍しい部類に入る。
それが評判を受け、ハナの料理に興味を抱いた武家は多い。
「……? これはなんじゃ油か?」
「それはぁ、きっとバターですぅ。牛乳がぁ、原料ですぅ」
「なんと牛の乳か」
「これはなんじゃ? 丸い物が積まれておるが」
「そっちはクロカンブッシですぅ。リアルブルーのウェディングケーキですけどぉ、山盛りで見栄えがいいしこれもお箸で食べられるからおすすめですぅ」
「これが異界の料理か」
ハナが特に気を付けたのは箸が使える料理にする事であった。
東方でも箸を使う文化だ。食材も箸を使えた方が西方の料理に馴染みのない武家達でも苦労なく楽しめるだろうという気遣いだ。
「そっちがアンチョビとチーズを入れたミニ春巻きでぇ、三角の小さいのがポテトサラダ。数々のピンチョスを用意しましたぁ」
ハナの料理は概ね好評。
わざわざ化粧をした上で総レースのワンピースで気合いを入れてきた甲斐があった。
宴はまだ始まったばかり。
早くもハナの料理は会場で話題を独占していた。
●
「ふむ。久しぶりの西方のワインじゃな」
ハンス・ラインフェルト(ka6750)は武徳へワイン「レ・リリカ」を手渡していた。
同盟で純米生原酒のようだと評判を受けていた事からわざわざ持参していた。
それも今日『この日』の為に準備した酒だ。
「水野様」
「分かっておる。話があるのであろう」
ハンスと武徳は付き合いも長い。
だからだろう。ハンスは挨拶回りをする武徳のタイミングを見計らって声をかけた。そのタイミングの良さを武徳は何か感じ取っていた。
「はい。本来であればこのような場ではなく、正式なご挨拶をするべきですが何卒ご容赦を」
「うむ」
「私は剣で生きたい。ですが、毒にも薬にもならぬ生き方などまっぴらなのですよ。
私は――毒でありたい。そういう私を使いこなせるのは東方では水野様か、有栖川様」
二人は揃って酒宴の会場を離れていた。
真剣なハンスの申し出を武徳は早々に理解したのかもしれない。
「人間領域が増え、『東方が東方で無くなる』可能性があります。私は水野様の目として、耳として誠心誠意努めます。私を水野家で召し抱えていただけないでしょうか」
ハンスの申し出は水野家の家臣になる事であった。
三条家ではなく、敢えて水野家の家臣を選んだ。そこには長い時間をかけて深めた交流と剣術から来る自信なのだろう。
「聞いておきたい。何故有栖川ではない?」
「有栖川様は西方の事をご存じありません。先程申し上げた可能性が見えておりません」
有栖川は風見鶏だ。東方で生き残る術は知っているだろうが、剣を握る者は時として劣勢でも立ち向かわなければならない時がある。ハンスは有栖川では小国のまま終わると考えていたのだ。
「もう一つ。東方で功績のあるハンターであれば領地を所望できたはず。何故、それをせんかった?」
「それは……」
ハンスは小声でささやく。
その言葉に武徳は大きく頷いた。
「そうか。おぬしも気付いておったか。あまり多くの碌は与えられぬかもしれぬが……」
「構いません。私は水野様……いいえ、殿のお近くで慎ましく暮らせればそれで十分でございます」
ハンスの視線の先には、若峰へ越してくる細君の姿があった。
●
ハンスと共に酒宴へ戻った武徳を待っていたのは穂積 智里(ka6819)であった。
「お話は終わったのですね」
「ええ、概ねは」
智里に対して微笑み返すハンス。
その様子を見ていた武徳は智里へ向き直る。
「そういえば若峰へ住む事が希望であったな」
「はい。シャッツ……ハンスさんが殿へお仕えする以上、私も若峰へ住むべきです。それに私は、最期まで詩天を守り詩天を強くし、詩天で生きるとあの人と約束しましたから」
――あの人。
それは詩天で攘夷を掲げた松永武人という男だ。詩天の将来を憂い、時に歪虚と手を組んででも国を守ろうとした浪士。方法を誤ったかもしれないが、愛国の心に偽りはなかった。
「詩天様は清濁併せ呑むような方ではありません。詩天を本当の意味で強くする為には、殿へお仕えするのが近道だと考えています。真美様が蓮の花でも白鳥でも、美しく咲くには泥沼があるからです。優雅に白鳥が浮かんでいられるのは必死に水掻きで漕ぐからです。私は気付かれぬ部分を支える殿のお力になりたいと思います」
「買いかぶりじゃ。だが、優秀な人材が仕えてくれるならば歓迎する」
歓迎する。それは紛れもなくハンスが水野家へ仕える事を意味していた。しばらくはハンター稼業と二足の草鞋となるだろうが、智里も引っ越しなどで忙しくなるはずだ。
「ところで先日紫草様とお話する機会を得ましたが、あの方は決めた道を均す為には全てを踏み潰すのは躊躇わない方です。あの方からは東方を踏み潰して帝を均一に均そうという強い意志を感じました」
「殿。私も同じ意見です。大将軍が自費で南征に乗り出すそうです。ハンターに呼びかけを開始しています」
智里とハンスは武徳へ早速懸念事項を武徳へ伝える。
ハンスの読みでは新天地で新たな特産を得てそれを天ノ都へ優先的に回し、人とカネを立花院で独占する計画でも立てているのでは無いかと睨んでいた。東方大復興を掲げて南征に生かすなら、東方全体に声をかけねばおかしい。
「ふむ。自ら幕府を終焉させた後に南征とは金がかかる真似を。幕府という後ろ盾なしで行う愚行を理解しておらぬな。だが、詩天にとっては幸いよ。今のうちに地盤を固める。
まずは……」
武徳はハンスと智里に小声で囁く。
その言葉はハンスにとって予想通りの言葉であった。
「領地を持ったハンターよ。あれは火種になる恐れがある」
●
「空気が変わったジャーン、ここも潮時かなー」
ゾファル・G・初火(ka4407)は運ばれてくる味噌田楽をひょいと皿から取り上げる。
口に放り込んだ瞬間、くるみの香ばしさがいっぱいに広がる。
邪神が倒れた結果、東方の空気が変わった事を感じ取っていた。
死地を望み、死地を乞うゾファルにとって邪神の討伐は有事の終焉を意味していた。これから訪れる平時には生きにくいゾファルは心の炎を燻らせていた。
「おや、確かおぬしは」
口いっぱいに田楽を頬張るゾファルの傍らから有栖川昴が顔を覗き込む。
突然現れる公家風な親父を前にゾファルは思わず噴き出した。
「わっ!」
「な、なんでおじゃるか!? いきなり田楽を吐き出すとは……ばっちいでおじゃる」
「悪ぃ悪ぃ。ちっと考え事してたジャン」
「さっき聞こえたでおじゃるよ。若峰で研ぎ師を志すそうでおじゃるな」
さすが耳が早い。
おそらく武徳の横で聞き耳を立てていたのであろう。武徳の屋敷を出たゾファルは城下に一軒借りて仕事を始めた。
鍛冶屋ではなく研ぎ師に特化したのはハンター業を続けながらでもできる上、怠惰なゾファルが唯一続けてこられたのは愛用の刀を研いできた事。これならば仕事として若峰で続けられると考えたのだ。
「邪神も倒したので暇になるジャン。俺様ちゃんも平時で生きる術って奴を考えたジャン」
「おや。おぬしはこの東方が平穏無事に過ごせると考えているでおじゃるか?」
「え? ……どういう事ジャン!」
ゾファルは有栖川へ詰め寄った。
その空気は明らかに危険な香り。ゾファルが求めてきたものである。
「考えるでおじゃるよ。邪神が討伐されたのに何故、水野殿は『詩龍列藩同盟』を周辺国と続けているのでおじゃろうな?」
「そりゃ、これから交易で儲けていく為ジャン」
「それだけではないでおじゃるよ。麿がこの同盟に参加した理由は、国を守る事でおじゃる」
「守るって誰からジャン?」
「旧幕府、もしくは公家。さらには野望を持った西方諸国でおじゃる」
有栖川が説明するには幕府が政権を放棄した時点で、各国は各国で国を運営しなければならなくなった。
言い換えれば国を守るのであれば自分の手で行わなければならない。未だ東方には有力武家が幅を効かせている。彼らが野望を抱いて領地拡大を開始すれば、自分の手で対抗しなければ滅ぼされてしまう。
「幕府という抑止力が失った今。東方は戦乱が続く国家に逆戻りする恐れもあるでおじゃる。麿も立駒を守る為には詩天と手を結んで敵の侵攻を食い止める必要があるでおじゃる」
「つまり、いつ戦いが始まってもおかしくないって事ジャン?」
その一言を呟いた瞬間、ゾファルの背筋に寒気が走る。
歪虚が消えても戦いの種は消えない。
人は他人と意見が異なれば、武力に出る事も厭わない。それはリアルブルーでも同じ事だ。
「だったら俺様ちゃんも準備しておくジャン……あ、今のうちにおっちゃんに声掛けしておくジャン」
そう言っているゾファルの瞳は強く輝き始めていた。
●
「おそらく、これからハンターの数は減っていく事になると思います。暴食王が残っているとはいえ、邪神を倒した以上、これまで通りの戦力を維持する必要もないでしょうから。体制も変わっていくと思います」
エルバッハ・リオン(ka2434)は武徳との再会を喜びながら、ハンターの現状を話題にしていた。
武徳がハンターについて警戒していると聞き及んでいた。そこで挨拶が一段落した武徳へ雑談がてらに探りを入れてみた。何気ない感じを装い、話の流れが不自然にならないように注意しながらハンターについて触れてみた。
ハンターを警戒する理由が分からない以上、リオンも気を遣いながら言葉を選ぶ。
「そうか」
「それに新しくハンターになった人も今の上位クラスまで成長するのはかなり時間がかかると思います。自分の経験上、厳しい戦いは覚醒者として成長を促しますが、これからはそういった戦いも少なくなっていくでしょうから、結果として成長も緩やかになるはずです」
「……やはりそうか」
「何かありましたか?」
武徳の反応にリオンは声をかけた。
自分の説明に何か落ち度があったのか。いや、最新の注意を払ったのだ。怒らせた訳ではなさそうだ。何より『やはり』という言葉が気になる。
「ハンターの将来を考えておいででしたか?」
「うむ。実は先程ハンスも同じような事を言っておったが、わしは東方が戦乱の世に戻る可能性がハンターにあると考えておる」
「ハンターに、ですか?」
「正確には領地を持ったハンターじゃな」
武徳が懸念していた事。
それは東方に領地を与えられたハンターについてであった。三条家を含む各家は、常に世継ぎの問題がついて回る。三条家も千石原の乱を引き起こして三条家の血筋が多く失われた事件もあった。
今は邪神戦争で功績を挙げたハンターがいるから良い。だが、そのハンターが死亡した後、その領地はどうなるのか。世襲制ならまだいいが、世継ぎが不在の間に死亡すればどうなるのか。召し上げる幕府もない。野望を持った武家が強引に入手する可能性もある。そうなれば各地で領地の奪い合いが始まる事を意味している。
「そのような事、本当にあるのでしょうか」
「分からぬ。だが、国を守る以上、あらゆる有事に備えねばならん。少なくともわしはそうやって戦乱の世を生きてきた」
武徳の断言。
武徳は自分が亡くなった後の詩天を案じていた。だからこそ人材を集めて酒宴を開かせ、同盟を強固にしようとしている。邪神がいなくなり、ハンターが減っていけば人の時代が訪れる。
――その頃に戦争がなくなっているのだろうか。
気が付けば、リオンは遠くを見つめていた。
●
「よう。今日はとある学校の教師として来させてもらったぜ」
今日のボルディア・コンフラムス(ka0796)は忙しかった。
酒宴へ参加したボルディアは早々に各国の首脳陣を訪ね歩き、ある提案を行っていた。
「交換留学とな?」
「ああ。西方にある学校と交換留学を提案したい。東方と西方の異文化交流についてはもう知っていると思うが、これからより発展する為にはお互いの文化を深く分かり合わなきゃならねぇ。こっちの学生は貴重な文化財や東方の人々に迷惑をかけないようにするからよ」
ボルディアの狙いは西方と東方の交換留学生制度だ。
お互いの文化をより深く知る為には、若者に見聞させる事。そこでボルディアは学校の教師として学生を東方へ派遣させる算段を付けに来たという訳だ。
「龍鳴寺や立駒は二つ返事だったな。松江津の観音坂っておっさんも多少渋い顔してたが、最終的にはOKをもらったぜ。後は詩天なんだけど……どうだい?」
「立駒がそう答えた、か」
そう呟いた武徳は一瞬だけ押し黙る。
何かを思案している様子だ。
「ダメか?」
「いや、喜んで受け入れよう。子は国の宝じゃ。若者が西方の技術を詩天へ持ち帰れば詩天にとって良い結果をもたらすであろう」
「本当か! 感謝するぜ。うちの学生も喜ぶぞ」
「うむ。できれば早い方が良い。そちらへ派遣する学生は候補を見繕っておこう」
「頼むぜ。俺は早速学校の方へ準備するよう連絡しておくからよ」
ボルディアは喜び勇んで黒狗城を飛び出した。
武徳の傍らにいたハンス。そっと小声で話し掛ける。
「殿」
「聞いておったな。隠忍倭衆へ連絡して忍びを学生として潜り込ませろ。西方からいただくのは技術だけには限らん」
武徳はボルディアの話を聞いて早々に忍びを紛れ込ませる事を決めた。
最新の情報を学生として潜り込ませた忍に入手させた上、外交上揉めるような事があれば工作員として破壊工作もさせられる。ボルディアにとって悪いが、詩天が生き残る為には致し方ない。
「はっ、仰せのままに」
ハンスは恭しく頭を下げると踵を返す。
平時になった詩天であるが、有事の気配が近づいていた。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/09/11 18:50:16 |