ゲスト
(ka0000)
【未来】日常波乱万丈
マスター:KINUTA

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 8日
- 締切
- 2019/10/08 19:00
- 完成日
- 2019/10/15 01:42
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
王国歴1024年(ユニゾン歴7年)
●おっさんの夢、叶う
とある工場に隣接する猫の額ほどの敷地。
そこにこの度、新しく店が作られた。
『ブルーチャー玩具店・おもちゃの修理も受け付けます』
店舗の前では花屋のベムブルが、祝いの花を飾り付けている。
花にはそれぞれ名札が差してあった。
『カチャ・タホ』『スペット』といった人名に交じって、『ペリニョン村』『グリーク商会』『魔術師協会』。それから『ユニゾン』。
店内に入ってみれば、店主ブルーチャーがぴかぴかのレジスターを眺め感無量の様子。
工場の経営に失敗して以降数多くの挫折を経、最終的に刑務所に入るはめになったが、ようやくここまで復活することが出来た。
「長かったなあ……」
しみじみ一人ごちるところに、店員のユニが声をかける。
「そろそろお店を開けてもいいですか? お客さん、もう来られてますので」
彼女は邪神戦争が終わった後、自分が出会った歪虚たちについて色々考えた。そして、『造られたものがいつまでも人間から愛され、大事にされるようにしてやりたい。そういう仕事がしたい』という結論にいきついた。
それを実現させるためフマーレの工場に入り、機械修理の修行をし、当店への就職とあいなった次第。
壊れたからといって、傷んだからといって、同胞が(造られたものはすべからくオートマトンにとって他人ではないのだと、彼女はそう思っている)打ち捨てられることのないように。
まずは、小さな一歩から。
●田舎でシンプルライフ
スペットは今、ペリニョン村に住んでいる。
仕事は英霊ぴょこの世話。それと――魔導機械の修理。
田舎の農場にもぽつぽつ、魔導機械などが導入されてきている。しかし、その仕組みが分かる人間はほとんどいない。
だからエンジニアの腕を持つ彼は、どこでも引っ張りだこ状態。
「スペットさんよー、ちいと見てくれや。なんかしらねえが、いきなり脱穀機が止まっちまったんだ。買ったばかりなんだがよう」
「おー、分かった。ちいと待っときや」
道具箱を持って現場に向かうと、当の機械が煙を噴いている。
その側にぴょこがいて、ばしばしチョップを入れている。
『β。どうしたもんじゃろ。叩いても叩いても、反応せんのじゃー』
「機械は叩いたら余計壊れるやろ……ほんまにもう、ユニオンでウォッチャーぶっ壊したときと変わらんな、θ。下がりや、見たるから」
●大人の事情
ジュアンとアレックスは連れ立ってヴァリオスをそぞろ歩いていた。
ブティックの前で少し足を止め、会話。
「あ、ここにも『NG』の商品出てるよ」
『NG』とは最近出来たファッションブランド。
小規模なブランドであるが、センスが抜群によい。社長がとびきり美青年だという噂とあいまって、業界及び買い手からなかなかの評判を得ている。
ただこの社長大規模な商売はやる気がないのか、常に商品は限定販売。限られた数しか作らないし売らないという方針を貫いている。
「へー、快調だなナルシスの奴」
そこからまた少し進んで、人で賑わう画廊に入る。
八橋杏子が、そこで個展をやっているのだ。
「よーう! 久しぶり」
「あら、アレックス! それにジュアンも、久しぶりね!」
「お久しぶり。すごいね、ここにあるもの、全部杏子さんが描いたの?」
「ええ。これまでに発表した奴と未発表の奴、ごっちゃになってるけど」
「なかなかの盛況じゃねえか、おめでとう」
「ふふ、二人ともありがと――そういえばアレックス、レクエスタに参加してるのよね? 西方諸国との交通路確保、どうなってるの? 1021年7月からこっち、進捗具合があまり伝わってこないんだけど」
「あー……それな。いや、会得した土地をどう分けるかについて、各国の調整がなかなか進まなくてな……それが終わってからでないと、詳しいことは発表出来ねえんだ。レクエスタの活動にゃ、どこも結構な額の金を突っ込んでくれてるからなあ」
「あー……そういうことね。ところでジュアン、マリーさん産休とったんだって?」
「うん。代理でコボちゃん入れてる。そうだ、知ってる? カチャたち、養子をもらったんだって――」
●南方の朝練
リザードマン集落の一角。
赤い服を着た幼児たちが体の大きさに合わせ誂えた棒を手に、右へ左へ跳びはねながら、リザードマンの戦士たちに打ちかかる。
「相手ノ動キヲ見ナクテハイカン! ソレデハ何度打ッテモ当タラヌ!」
かなり手荒く投げられつつも幼児たちは、全くめげる様子がない。むしろ楽しそうに、きゃあきゃあ声を上げている。
その光景を見守っているこの集落、並びに奥地集落の長は、しゅうっと短く息を吐き、上下の瞼を近づけた。
「実ニ元気デアル」
「持久力アリ、足腰モ丈夫」
「白イ精霊、マコトニヨイ子ヲ作ラレル」
1020年から西方世界は、南方大陸、並びに北方大陸の浄化作業と開拓を始めたことは、誰しもが知るとおり。
その開発により持ち込まれた文化は、この地に住まう者に憧れと反発、それに伴う変化をもたらしつつある。
だが当地一帯に住むリザードマンに関しては、そういう変化が見られない。
何故か。
それは彼らが、先にマゴイと――ユニオンと接触していたからだ。
ユニオンは(方向性がかなり限定されているが)クリムゾンウェストを凌駕する技術を持っている。加えて当地の社会習慣をたいへん尊重している。
そういう相手とすでに友好関係が築けている以上、遅れて来た西方勢力に対しさしたる魅力を感じない。
感じないから、影響されない。
理の断りである。
●マゴイさん、あれこれ考える
小さなソルジャーたちが、そろそろリザードマン集落での朝練から帰って来るころだ。
思いながらマゴイは自由都市同盟から送られてきた資料を読む。そこには浄化を終えたグラウンド・ゼロの地図が記載してあった。
これからもユニゾンは市民が増える。
ゆくゆく規模が拡大したときのための準備を、今からしておかなければならない。保養所も、もっと増やしたいし。
『……やはり……グラウンド・ゼロに土地を取得したほうがよい……』
当たり前の話だがグラウンド・ゼロも西方世界と同様、山あり谷あり平原あり。川もあれば海もある。低地もあれば高地もある。
その中から可能な限り条件のいい所、将来性が見込めそうな地域を手に入れたい――どこの国もそう思っているからこそ、なかなか調整が進まないのだ。
しかしマゴイは、そういったこだわりはなかった。そこが住みにくいのなら、住みやすいようにすればよいという考えなのだ。土木工事と環境整備こそ、ユニオンの十八番である。
ただ欲を言えば――平原のようなところがよいかもしれない。現在ユニオン領には、島と山地しかないので。
『……でもその前に……気象衛星の打ち上げ計画を……立ち上げなくては……市民生活のため……正確な天気予報はとても大事……』
●おっさんの夢、叶う
とある工場に隣接する猫の額ほどの敷地。
そこにこの度、新しく店が作られた。
『ブルーチャー玩具店・おもちゃの修理も受け付けます』
店舗の前では花屋のベムブルが、祝いの花を飾り付けている。
花にはそれぞれ名札が差してあった。
『カチャ・タホ』『スペット』といった人名に交じって、『ペリニョン村』『グリーク商会』『魔術師協会』。それから『ユニゾン』。
店内に入ってみれば、店主ブルーチャーがぴかぴかのレジスターを眺め感無量の様子。
工場の経営に失敗して以降数多くの挫折を経、最終的に刑務所に入るはめになったが、ようやくここまで復活することが出来た。
「長かったなあ……」
しみじみ一人ごちるところに、店員のユニが声をかける。
「そろそろお店を開けてもいいですか? お客さん、もう来られてますので」
彼女は邪神戦争が終わった後、自分が出会った歪虚たちについて色々考えた。そして、『造られたものがいつまでも人間から愛され、大事にされるようにしてやりたい。そういう仕事がしたい』という結論にいきついた。
それを実現させるためフマーレの工場に入り、機械修理の修行をし、当店への就職とあいなった次第。
壊れたからといって、傷んだからといって、同胞が(造られたものはすべからくオートマトンにとって他人ではないのだと、彼女はそう思っている)打ち捨てられることのないように。
まずは、小さな一歩から。
●田舎でシンプルライフ
スペットは今、ペリニョン村に住んでいる。
仕事は英霊ぴょこの世話。それと――魔導機械の修理。
田舎の農場にもぽつぽつ、魔導機械などが導入されてきている。しかし、その仕組みが分かる人間はほとんどいない。
だからエンジニアの腕を持つ彼は、どこでも引っ張りだこ状態。
「スペットさんよー、ちいと見てくれや。なんかしらねえが、いきなり脱穀機が止まっちまったんだ。買ったばかりなんだがよう」
「おー、分かった。ちいと待っときや」
道具箱を持って現場に向かうと、当の機械が煙を噴いている。
その側にぴょこがいて、ばしばしチョップを入れている。
『β。どうしたもんじゃろ。叩いても叩いても、反応せんのじゃー』
「機械は叩いたら余計壊れるやろ……ほんまにもう、ユニオンでウォッチャーぶっ壊したときと変わらんな、θ。下がりや、見たるから」
●大人の事情
ジュアンとアレックスは連れ立ってヴァリオスをそぞろ歩いていた。
ブティックの前で少し足を止め、会話。
「あ、ここにも『NG』の商品出てるよ」
『NG』とは最近出来たファッションブランド。
小規模なブランドであるが、センスが抜群によい。社長がとびきり美青年だという噂とあいまって、業界及び買い手からなかなかの評判を得ている。
ただこの社長大規模な商売はやる気がないのか、常に商品は限定販売。限られた数しか作らないし売らないという方針を貫いている。
「へー、快調だなナルシスの奴」
そこからまた少し進んで、人で賑わう画廊に入る。
八橋杏子が、そこで個展をやっているのだ。
「よーう! 久しぶり」
「あら、アレックス! それにジュアンも、久しぶりね!」
「お久しぶり。すごいね、ここにあるもの、全部杏子さんが描いたの?」
「ええ。これまでに発表した奴と未発表の奴、ごっちゃになってるけど」
「なかなかの盛況じゃねえか、おめでとう」
「ふふ、二人ともありがと――そういえばアレックス、レクエスタに参加してるのよね? 西方諸国との交通路確保、どうなってるの? 1021年7月からこっち、進捗具合があまり伝わってこないんだけど」
「あー……それな。いや、会得した土地をどう分けるかについて、各国の調整がなかなか進まなくてな……それが終わってからでないと、詳しいことは発表出来ねえんだ。レクエスタの活動にゃ、どこも結構な額の金を突っ込んでくれてるからなあ」
「あー……そういうことね。ところでジュアン、マリーさん産休とったんだって?」
「うん。代理でコボちゃん入れてる。そうだ、知ってる? カチャたち、養子をもらったんだって――」
●南方の朝練
リザードマン集落の一角。
赤い服を着た幼児たちが体の大きさに合わせ誂えた棒を手に、右へ左へ跳びはねながら、リザードマンの戦士たちに打ちかかる。
「相手ノ動キヲ見ナクテハイカン! ソレデハ何度打ッテモ当タラヌ!」
かなり手荒く投げられつつも幼児たちは、全くめげる様子がない。むしろ楽しそうに、きゃあきゃあ声を上げている。
その光景を見守っているこの集落、並びに奥地集落の長は、しゅうっと短く息を吐き、上下の瞼を近づけた。
「実ニ元気デアル」
「持久力アリ、足腰モ丈夫」
「白イ精霊、マコトニヨイ子ヲ作ラレル」
1020年から西方世界は、南方大陸、並びに北方大陸の浄化作業と開拓を始めたことは、誰しもが知るとおり。
その開発により持ち込まれた文化は、この地に住まう者に憧れと反発、それに伴う変化をもたらしつつある。
だが当地一帯に住むリザードマンに関しては、そういう変化が見られない。
何故か。
それは彼らが、先にマゴイと――ユニオンと接触していたからだ。
ユニオンは(方向性がかなり限定されているが)クリムゾンウェストを凌駕する技術を持っている。加えて当地の社会習慣をたいへん尊重している。
そういう相手とすでに友好関係が築けている以上、遅れて来た西方勢力に対しさしたる魅力を感じない。
感じないから、影響されない。
理の断りである。
●マゴイさん、あれこれ考える
小さなソルジャーたちが、そろそろリザードマン集落での朝練から帰って来るころだ。
思いながらマゴイは自由都市同盟から送られてきた資料を読む。そこには浄化を終えたグラウンド・ゼロの地図が記載してあった。
これからもユニゾンは市民が増える。
ゆくゆく規模が拡大したときのための準備を、今からしておかなければならない。保養所も、もっと増やしたいし。
『……やはり……グラウンド・ゼロに土地を取得したほうがよい……』
当たり前の話だがグラウンド・ゼロも西方世界と同様、山あり谷あり平原あり。川もあれば海もある。低地もあれば高地もある。
その中から可能な限り条件のいい所、将来性が見込めそうな地域を手に入れたい――どこの国もそう思っているからこそ、なかなか調整が進まないのだ。
しかしマゴイは、そういったこだわりはなかった。そこが住みにくいのなら、住みやすいようにすればよいという考えなのだ。土木工事と環境整備こそ、ユニオンの十八番である。
ただ欲を言えば――平原のようなところがよいかもしれない。現在ユニオン領には、島と山地しかないので。
『……でもその前に……気象衛星の打ち上げ計画を……立ち上げなくては……市民生活のため……正確な天気予報はとても大事……』
リプレイ本文
●リゼリオ・カチャ宅
リゼリオの観光名所「ナディアタワー」の周囲には、長蛇の列が出来ている。展望エレベータに乗る順番を待っているのだ。内訳は地元民3、観光客7と言ったところ。
埋め立て工事で作られた新市街地には、リアルブルー様式のビルがぴょこぴょこ生えてきている。「テナント募集」の看板と一緒に。
そのビルのうち幾つかは、リナリス・リーカノア(ka5126)のものだ。彼女は現在、不動産事業に着手しているのである。小さな酒造会社を経営する傍らで。
カチャ宅を訪問しに来たエルバッハ・リオン(ka2434)は一階店舗の従業員と共に、入り口前で立ち尽くしていた。
扉が閉まっていて入れないのだ。
ウィンドー越しに中を見てみれば、歯車とネジを多用した複雑怪奇な錠がかけてある。
カチャがそれを開錠しようとしているが――うまくいっていない。
「もー、またなんでこんなものを……」
ぶつぶつ零す彼女の傍には、7歳くらいの少女。
長い金髪に白い肌をしたその少女の名は、ユリーヌ。ユリーヌ・タホ――タホ家の養子である。
二階からリナリスが降りてきた。4歳くらいの幼女を小わきに抱えて。茶色い髪を左右で二つ結びにし、いかにもやんちゃそう。
彼女の名前はミリィ。ミリィ・タホ。ユリーヌと同じくタホ家の養子。
カチャが腰に手を当て、はーっと息を吐いた。
「もう駄目。これ壊さないと開かない」
その言葉を聞いた途端ミリィが暴れだした。
「だめー! ミリィちゃんいっしょけんめーつくったのー! こわしたらだめー!」
幼子の嘆願を退けカチャは、錠を握力でねじ切る。
「うわああああんカチャママのばかー! ばかー!」
リナリスは慣れた様子で、大泣きのミリィをあやす。
「ミリィ、一階はおうちじゃないんだから、色々くっつけちゃ駄目なんだよー。工作はお二階でしようねー」
ユリーヌが傍に来て、妹に言った。
「ミリィ、ママたちお客さんとお話があるから、おねえちゃんとお外であそぼ?」
●フマーレ・ブルーチャーの店
開店ほやほやのブルーチャー玩具店。
店先を飾る花の中で一際目を引くのは、大きな花輪。
使われているのは物珍しい変わり種の花ばかり。白眉は青と緑の2色が入り混じる薔薇。透き通るような光沢が、まるでガラス細工のよう。
「ブルーチャ―再びの店主おめでとうー」
「おー、これはメイムさんありがとうごぜえやす。いやあ、たまげましたぜ、あんなでかい花輪を贈ってこられるたあ……高かったでしょう?」
「ううん、たいした事ないよ。せいぜい10万Gってとこ」
祝辞を終えたメイム(ka2290)は、カチャ人形を2体取り出した。
一体は普通、もう一体はホラーバージョン――パーツは一緒だが目が取れかけ、口の位置がずれている。
「それはそれとして、新商品のアイデア持ってきたんだ。ブリキや木製だけじゃなくこんなのもどう? 布でも樹脂でもいいけど、小さいの作れないかな。ストラップ的な」
「まあ、作れるのは作れますけど……こっちのホラーバージョンはどうでしょうなあ。子供にゃ受けが悪いんじゃないですかねえ」
「そーんなことないよ。需要はあるってば。ブルーチャー昔スペットと協力して、モンスタードールの製造販売してたじゃん。あれ、そこそこ売れたんでしょ?」
「古傷持ち出さねえでくだせえよ」
ブルーチャーは、はげた頭の汗を一所懸命拭く。
そこに入ってきたのは天竜寺 舞(ka0377)。
「おっさん、新規開店おめでとさん! ユニも元気そうだね――早速で悪いんだけど、これ修理してくれる?」
彼女が出してきたのは、破れたチューダのぬいぐるみと皿の取れたかっぱ人形。
「妹の子のなんだけどさ。どうせならおっさんに頼もうと思って」
さらっと吐かれた肉親の近況報告に、ブルーチャーもユニも驚きを隠せない。
「ええっ、お子さん生まれたんですかい!?」
「全然知りませんでした……おめでとうございます!」
メイムもまた驚きつつ、気になるところを質問。
「おめでとー。父親はやっぱりあの元将軍?」
「ま、ね。じゃ、おもちゃは後で受け取りにくるから。あたしちょっと、回ってこなきゃなんないとこがあるんだ」
舞が慌ただしく出て行く。
入れ替わりにフィロ(ka6966)がやってきた。花篭を手にして。
「ユニ様が此方にお勤めになられたと聞きましたので……おめでとうございます、ユニ様」
「あ、ありがとうございます!」
ユニは嬉しそうに花籠を受け取る。
それほど頻繁に顔を合わせる仲ではないのだが、オートマトン同士気心が知れるということもあるのだろうか、二人の間に距離感はない。
「王国特産の四季咲きスミレですわ。学校の花壇にたくさん咲いておりまして」
「学校?」
「はい。今、私は王国の聖導士学校で寮母をしています。入寮した子供達に掃除や洗濯、料理の仕方を教えています。彼らがどんな出自であれ、自活できるようになっていただきたいのです。良かったら、遊びに来て下さいね」
「はい、行かせてもらいます。今度休みの日に――」
不意にユニは涙ぐんだ。
フィロは優しく、どうしました? と問いかける。
「いえ、なんだかほっとしたっていうか……よかったなって。ワタシも、アナタも、この世界で居場所を見つけられて……」
自分たちの本来の世界であるエバーグリーンは、もうない。
そのことを今一度深く心に刻んだフィロは、励ましの言葉を述べる。ユニに、それから自分に。
「貴女は同胞を助ける道を選び、私は幸せな子供達に仕える道を選びました。共にオートマトンとしての願いを叶えることができたのです。うれしいことではありませんか」
「……はい、とても」
そこへなだれ込んでくる賑やかな声。
「ブルーチャーさん、開店おめでとーございまーす! これどうぞ!」
ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)だ。
ど派手なピンクの花束と温泉まんじゅうの箱が、ブルーチャーに押し付けられる。
「開店祝いのご祝儀だもの、おもちゃ一杯買っちゃいます……私が遊ぶんじゃないですよ、お土産なのです」
続けてマルカ・アニチキン(ka2542)がやってきた。
「開業おめでとうございます!」
その手にはNGブランドの紙袋。
中に入っているのは、株主総会参加者に配られる限定ブランドバッグ――彼女はグリーク商会アパレル部門の大口株主なのである。
●ユニゾン・外部者宿泊所
調理室。
天竜寺 詩(ka0396)はマゴイが連れ帰ってくる小さなソルジャーたちのために、食事を作っている。
内訳は金時ニンジンを入れたジャムとパン。
カレー味の蓮根団子。
牛脛肉の煮凝りゼリー。
付け合せの温野菜、そして果物。
緑色のエプロンをつけたコボルドたちが、食堂テーブルに人数分の食器を並べている。歌いながら。
「たーべてたべておーきくなーれ、そうじゃー」「つーよくなーれ、そうじゃー」
カリカリ大袋を持ったルベーノ・バルバライン(ka6752)が、そこに入ってきた。
「おう、うべの」「うべの」
コボルドたちは尻尾を振って大歓迎。
その様を微笑ましげに眺め、詩が聞く。
「また、マゴイに贈り物? まめだよね、ルベーノさん」
折りよくそのマゴイが、ソルジャーたちを連れ帰ってきた。
おいしそうな匂いにきゃあきゃあ喜ぶ幼子らへ、詩が言う。
「さあ、ごはんだよー。みんな、手を洗って席に着いて」
ルベーノはマゴイに歩み寄り、囁いた。
「ここは詩とナニー・ワーカーに任せておけばいいだろう。μ、一緒に少し外を歩かんか?」
宵待 サクラ(ka5561)、トリプルJ(ka6653)、星野 ハナ(ka5852)は揃って外部者宿泊所を訪れた。マゴイがそこにいる、と聞いたので。
しかし着いてみればひと足違い。散歩に出て行ったとのこと。
しょうがないので帰りを待つ。
間にちょいと腹ごしらえしたいので、食堂に向かう。
「私はイコちゃんとレクエスタや南征にチョイ噛みしつつ聖導士学校で講師もやってるから。休暇時期に自分達で調査して来期の講義内容決めたりするからさ、こういう実地調査や協力依頼って物凄く大事なんだよね」
「……適当に休まないと、倒れるぞ?」
「完全にオーバーワークですよねぇ」
「いーの。私が擦り切れることでイコちゃんの負担が減るなら、本望だよ」
などと話しながら食堂に入れば、仲良く並んで食事をする小さなソルジャーたちの姿が。
ハナはその光景に衝撃を受ける。
(ユニゾンで生まれた子供達は就労のための成長促進があるかと思ってましたぁ……それなのにマゴイとステーツマンの遺伝子情報不足って拙くないですぅ?)
『……あなたの遺伝子はまことに健康……ソルジャーたちはいずれ皆……あなたのように大きく強くなる……』
うきうきと展望を語るマゴイにルベーノは、半ば独り言のような口調で返す。
「……氏より育ち、と言うからな。俺と全く同じ遺伝子であっても、俺と全く同じには育つまい。それでも嗜好は似る可能性がある。その程度の、遠い親戚程度の感覚の方が、俺もあれらも苦しくなかろうよ」
彼女は『自分』と自分の遺伝子によって生まれた『彼ら』を区別して見てくれるだろうか。同じではあるが、違う。ルベーノ・バルバラインはただ一人だと。
願わくばそうして欲しいものだが。αに対してそうだったように。
思いながら彼は、自分にとってただ一人のマゴイの耳に、ラピスラズリとムーンストーンのイヤークリップをつけてやった。
「隣の芝生は青い、を体現してしまいかねんからな。その程度には俺も気を使う」
●ジェオルジ・マリー宅
「今度こそ本当におめでただって聞いたから。おめでとう、マリー」
「ありがとう、マリィア」
マリィア・バルデス(ka5848)から果物籠を渡されたマリーは、頬を赤らめ目を細めた。
ゆるめのロングドレスに隠された下腹部が、大きく膨らんでいる。
「もう臨月近いのよね」
「うん」
「産まれたら、うちの娘とも仲良くしてやって。ほら、エドラ、御挨拶なさい」
茶色髪の碧の目、ピンクの幼児用ワンピースにかぼちゃパンツの幼女は、見知らぬ人であるマリーから顔を背けた。
自分を抱いてくれている母の胸に顔を押し付け、親指をかぷかぷ噛む。
「……エドラでしゅ。ちゃんちゃいでしゅ」
「やだー、もうかわいい!」
あどけなきかわいらしさに身もだえするマリー。
そこへ不意に、コボちゃんが入ってきた。
「まりい、ほんぶていしゅつしょるい、おまえのしょめい、いる。かけ」
「……わんしゃん!」
エドラは自分から床に降りた。
目をキラキラさせコボちゃんに向かって行き、耳を引っ張る。
コボちゃん嫌がって逃げる。
エドラが追いかける。床の段差につまづき転ぶ。泣く。
「コボちゃん、なにしてるの!」
とマリーに怒られ、コボちゃん不服そう。
「こぼ、わるくない」
マリィアはエドラを抱きあげ、打ったおでこを撫でてやる。
「エドラ、コボちゃんの耳を引っ張ったら駄目よ。それはコボちゃんにとって嫌なことだから。エドラはコボちゃんと仲良くしたいのよね?」
しゃくりあげながらエドラは頷く。
「じゃあ、コボちゃんに、ごめんねして?」
「ごめぇんね」
謝罪を受けたコボちゃんは納得し、ふんと鼻を鳴らす。
「わかれば、よい」
「あしょぼ」
「ちょっとだけなら、あそんでやってもよい」
マリィアとマリーは顔を見合わせ、ほほ笑み合った。
そこでチャイムの音。
扉を開ければ大箱を抱えたマルカ。
「マリーさん、ご懐妊おめでとうございます!」
「あ、ありがとう……ていうか、その荷物何?」
「あ、これは贈り物です。ブルーチャーさんのお店で知育玩具を色々仕入れてきまして」
「ちょっとちょっと、早過ぎない? まだ生まれてないのよ?」
呆れ顔のマリーにマリィアは、先達として意見した。
「今がちょうどいいくらいよ。子供が生まれてからじゃ揃える暇ないからね。そういえばマルカ、リゼリオの新開地に土地を買うんだって?」
「はい。さる人のための記念館を作りたいと思いまして」
そこでマリーが、マルカの持っている紙袋に気づいた。
そわそわしながら彼女に聞く。
「グリーク商会の株主総会行ってきたの?」
「はい」
「ナルシスくん、どうだった?」
「新部門の今後のビジョンについて話されていました。『拡大路線はとらない。継続路線を取る。継続目標は百年とする。後のことは後の人がやればいい、僕は面倒見ない。』と」
ぼろんぼろんと音がした。
振り向いてみればコボちゃんがマルカのお土産の中から、幼児用のギターを引っ張り出し、弾いていた。
エドラがそれに合わせ手拍子をしている。目をキラキラさせて。
●とあるどこかの田舎
田園。健康的な屋外の光の下。
「これは……ああ、ここか」
Gacrux(ka2726)は、北で回収した古代遺跡残骸の欠片をひとつまた一つと積み上げ、接着して行く。
たまの休暇を費やし続けたかいあって残骸は、いにしえの姿を――剣を手に立つ女戦士の姿を取り戻した。
思い入れのせいだろうか、彼にはどうしてもそれが、カレンデュラと重なって見えてしまう。
(……邪神が世界を破壊して以降、グラウンド・ゼロに新しい文明は育たなかった。この復元が古代文明を現代に伝える手助けとなれば……未来にその記憶を繋げていければ……)
物思いに耽っていた所、にゃあ、と鳴き声。
顔を向ければ農作業用の笠をかぶったユグディラたち。
「ああ、これは失礼。今月の報酬がまだでしたね」
Gacruxは急いで作業小屋に戻り猫缶を持ってくる。銘々に配る。
ユグディラたちは目を細めご満悦。
風がひと吹き。
よく手入れの行き届いた畑から青っぽい香りがしてきた。
鈴なりになったトマト。ナスやキュウリ。カボチャ。どれも皆はちきれんばかりに瑞々しい。
一角には花畑。鮮烈なヒマワリの黄色とサルビアの赤。
「俺がいない間、いつも畑の面倒を見てくださってありがとうございます」
礼を述べるGacruxにユグディラたちは、にゃあ、と答えて尻尾を一振り。園芸バサミと篭を渡す。
これから収穫、なのである。
●ペリニョン村
「ぴょこさまとスペットさんに質問があるの」
真剣な顔で言ってからディーナ・フェルミ(ka5843)は、スペットの顔をひたと見つめ、がくうと肩を落とす。
「……お猫さまじゃなくなって哀しいの~」
「どういうことや」
突っ込むスペット。
そこでぴょこが、おごそかに福音を告げる。
『案ずるなディーナよ、βはのう、今でも猫の顔になるのじゃ。覚醒したとき』
「えっ本当なの! よかったあ。もう一時はどうなること……」
納得いっていなさそうなスペットを脇に喜ぶディーナ。
で、改めて仕切りなおし。
「ぴょこさまって同盟も王国もどこでも行けるのかな。スペットさんもそうなのかな」
「俺は別に精霊でもなんでもないから、フツーにどこでも行けるで? けどθは……どうなんやろなあ?」
『むー、行けそうな気はするがのう。わし、ここを離れてユニゾンに行ったことも何回かあるのじゃし』
「でも、ユニゾンも一応同盟内やろ?」
ひとまず地域間移動についてスペットは「問題なし」。ぴょこは「制約がある可能性が高い」という感じか。
頭の中に書き付けながら、ディーナは話を進める。王国の聖導士学校での特別講演を願えないかと。
「ユニゾンへのEG技術見学前に、もう少し汎用的なお話を聞いてからの方が良さそうな気がしたの。今のままだとウォッチャーとか階級色とか職業別作業ばかり子供達の記憶に残って、セントラルで役立つ技術見学の側面が薄れそうなの」
「……まあ、どうしてもそっちの印象強くなるわな」
「世界の浄化を目指す子供達に、いろんな価値観を知ってほしいの。どうかな?」
「かまへんで。あんまり話すこともなさそうやけど」
話がまとまったところに、ルンルンが来た。土産の饅頭と幾つもの紙袋を携えて。
「私が東方で引っ越した先、今は温泉観光地になってるから、良かったら遊びに来て、ほら仕事ばかりだと大変だろうからお休みに……あっ、これ温泉まんじゅうなんだからっ」
「おー、あんがとさん。しかし、えらいおもちゃ買うてるやんけ。どないすんのや、それ」
「これからマゴイさんちにも行くから、お土産にと思って。新市民生まれたそうですし」
●リゼリオ・カチャ宅
カチャはカップにコーヒーを注ぎつつ、リオンに言う。
「ミリィは孤児院から引き取ったときからあのままでしたけど、ユリーヌは、うちに来たとき全然表情がなかったですよ。元の親から育児放棄されてまして。でも、今は普通に笑うようになってくれて。それで、2人のママの狩子になりたいとか言いだしちゃって」
「狩子って……あの子はイクシードなんですか?」
リナリスが親馬鹿ぶりを前面に押し出し答える。
「そーなんだ。もー、齢七歳にして才能溢れまくりでさー」
対してカチャは困惑顔。
「私としてはもっと穏やかな人生を目指してほしいんですけどねえ」
「もう、カチャったら心配症なんだから。大丈夫だよ、もう邪神もいないし歪虚王も全滅だし」
「リナリスさんはリナリスさんで、いきなり来年の都市評議会選挙、出馬するって言い出しますし」
「いいじゃん。あたしさー、全ての人が幸せになれる世の中が来るようにしたいんだー。娘たちの未来のために。あ、そうだエルさん、今度うちの会社から出す新酒。ぜひ試飲してよ。今から持ってくるから♪」
思い立ったがなんとやら、リナリスが素早く場を離れる。
リオンがふいに深刻そうな顔をした。そして、カチャに言った。
「あのー、カチャさん。ちょっと相談に乗ってほしいことがあるんですが、いいですか?」
「はい。いいですよ?」
「実は、ハンターになった頃から見た目が変わらないのです」
「……それは、エルフにはよくあることではないんですか? あなたたちは寿命が長いから、人間よりゆっくり年を取るでしょう?」
「そういうレベルの話ではないんです。死に至るまで外見が子供のまま――母の一族では、稀にそういった体質の者が生まれてくることがあるそうです。以前その体質で生まれた方に会わせてもらったのですが、私くらいの見た目であっても、かなりの高齢の女性が、ゴスロリ衣装を着て幼女のような言動をして――」
間を置いてリオンは席から立ち上がり、ぐわっとカチャの両肩を掴む。
「さらに、一瞬、真顔になったその方から『いずれはお前もこうなる』と言われた時は、何の呪いかと恐怖しました」
それは確かに怖い。というかエルさんの顔が怖い。
思いつつカチャは、リオンに言った。
「で、でもエルさん、その方が幼女のような言動をしてるのは、外見の問題じゃなくて内面の、性格の問題なんじゃないですか?」
「え?」
「エルさん子供みたいな言動されたことないですよね。演技でなら別ですけど」
「まあ……ねえ」
「じゃあ、いずれその人みたいになるってことは、あり得ないんじゃないですか? 姿が今のままでも」
そこに下から、リナリスの声。
「カチャー! フィロさんとマリィアさんが遊びに来たよー!」
それから、マリィアの声。フィロの声。
「カチャのとこも養子貰ったって聞いたから。子供同士友達になって貰えたらって思ったのよ」
「こんにちは、カチャ様。ご養子を迎えられたと伺いましたので……」
カチャは急いでそちらに向かう。リオンもそれに続く。自分の心が軽くなったのを感じながら。
お客と会話する子供たちの声が聞こえてくる。
「貴方のお母様方の友人で、フィロと申します。よろしければ私ともお友達になって下さいね」
「はい、喜んで」
「あのね、あのね、エドラちゃん、ミリィちゃんたちといっしょに、ぴたごらましーんつくろ!」
●ヴァリオス・杏子の個展会場
ラスティ・グレン(ka7418)は杏子に向けて五体投地しながら、熱く激しく語る。
「俺はπ乙カイデーなねえちゃんとの出会いを求めてハンターになったのに……全然願いが叶わないんだよぉ!」
先に杏子と話していた舞が限りなく冷たい視線を向けてくるが、そんなことには一向構わない。言いたいことだけ一気に言う。
「エロディラ先生に師事して理想のねえちゃんを探し求めたけど! 王国じゃあんちゃんの胸囲の方がねぇちゃんのバストよりデカいって言われたり! 東方へ桃源郷を探しに行ったのに着物のせいでカイデーかどうかさっぱり分かんなかったり! 精霊様にπ乙カイデーなねぇちゃんとの出会いを下さいってお願いに行ったら会う前におつきの人に叩きだされたり! 八橋大先生……教えてほしいことがあるんだ。大先生が今まで会ったモデルさんで、1番π乙カイデーなねえちゃんはどこの国の人だったのか」
杏子先生はほほ笑んだ。
そして、クルリと舞に顔を向けた。
「詩の領地で講師をする件、引き受けたわ」
「あ、ああ、そう、ありがと」
「細かい打ち合わせはまた後日ね。私、ちょっと席外すから――分かったわ少年、私がこれまで見た中で、一番胸が大きい人に会わせてあげる」
「えっ、マジで! 大先生神ぃ!」
●ユニゾン
食事を終えたソルジャーたちは詩の指導の元、屋外でおゆうぎの時間。
教わるのは舞。飛びぬけて活動的な彼らのお気に入り演目は、連獅子だ。
「皆、腰から上はブレないように――違う違う、これはカツラを遠くに飛ばす遊びじゃないから!」
それを見守るマゴイに、サクラが質問。
「――ユニオンはシールドで都市内の温度等調節してたって聞いたし、歪虚襲来の時もシールドで侵攻を防いだって聞いたんだけど、そういうドーム的な物があれば外気の状態なんて無視できる気がするんだけど……どうして気象衛星が要るのかな」
『……それは両方とも……非常事態に対する処置として行われたもの……平時であれば……そういうことはしない……エネルギーの無駄遣い……そもそも結界を施した状態であっても……外部環境を無視することは出来ない……』
「あ、そうなんだ」
と返しつつもサクラは、そこで終わりにしない。
王国の片隅で政治宗教百鬼夜行を体験してきた彼女には、指導者(マゴイ自身はそう思っていないが)の言葉を眉唾つけて聞く癖がついているのだ。
「いや、気象衛星は地表の観察にも使用できるから、将来的には寄付金集めてでも全世界公開してくれた方がうれしいよ?」
でもね、と続けて質問をしようとしたところで、Jが口を挟む。
「良いんじゃね、気象衛星も宇宙開発も。その情報公開してくれりゃ全世界が感謝するぜ。その情報は災害予防にも農作業の目安にも使えるからなあ」
当然諜報にも使えるだろうという指摘は飲みこむ。それよりグラウンド・ゼロの土地取得を考え直させる方が先決だと思ったのだ。
「レクエスタは各国が資金を出し合った分、開発取得に情報統制がかかってキナ臭い。わざわざ火中の栗を拾いに行く必要はないと思うぜ。ユニゾンにゃまだ地下も地上も拡張できる空間は充分あるだろ。元々のCWの月を全部ユニゾンで開発しちまうほうが――」
『……月となると……重力場から設定しなければいけないので……時間がよりかかりそう……』
難色を示すマゴイに、ルベーノが別案を出す。
「下手に平野を押さえれば他国と衝突しかねんぞ。元々リザードマンに縁があるのだ、南方大陸を開発した方が良くないか。あちらなら争うのはエトファリカの立花院だけで済む」
それが聞こえたのだろう、ソルジャーたちを指導していた詩が振り向いた。心外そうな顔をして。
「あの人はそういう無駄な争いはしないよ」
(さあ、それはどうでしょうねぇ)
声に出さず呟いたハナは、マゴイに耳打ちする。
「マゴイさんは英霊ですけど実体あるんですしぃ、情報体としてのウテルス登録って無理そうですぅ?」
『……それは無理……私はあくまでもマテリアルの構成物……本当の実体があるわけではないの……だから生殖細胞を採取出来ない……従って登録は出来ない……』
「マゴイさんは自分のことだから気にしてないみたいですけどぉ、貴女も今ステーツマンα並みに超過労働してますからねぇ。貴女が不調になったら本気で今ユニゾンやばくなるんですからぁ」
『……ユニゾン建設期に比べて私は……規則正しく働けるようになっているのだけど……通常休暇も取れているし……』
「それでも一人じゃ限界きますってぇ。後継確保にもっと本腰入れて下さいよぅ」
『……大丈夫……新しいマゴイなら……もうウテルスの中にいる……』
「えっ!? そ、そうなんですか」
一体誰の遺伝情報を使ったのかと問う前に、回答がなされる。
『……あなたが以前登録した遺伝情報を基にして……出生するの……皆きっと……よいマゴイになる……』
まさか自分の血を引くものがマゴイになろうとは、ハナもびっくりである。
とはいえこれで、ユニゾンの安定がより確かなものとなるわけだ。なら、歓迎すべきだろう。
「ステーツマンに使う遺伝情報の方は、目星ついてるんですぅ?」
『……とりあえず一つは確保しているわ……』
「あ、そうなんですか。それはよかったですぅ……で、誰のなんですぅ?」
もしやマルコ君では。私見だけど、ステーツマンとしてかなりいい線行ってると思うし。
そんな予測を立てるハナにマゴイは、予想外な人物の名を上げた。
『……コボちゃん……』
「エ゛ッ」
変な声を出して、ハナ、固まる。
そこでおゆうぎの時間終了。
まだまだ動き足りないソルジャーたちに、Jが言う。
「それじゃちびソルジャー達、かかって来い」
ちびソルジャーたちは喜んでかかっていった。
朝練で教わったとおり相手の動きをよく見て、向うずねを集中攻撃。
Jは平静を装いつつ、彼らに足払いをかける。
「はっは、そんなんじゃきかねえぞ!」
この後しばらくして、ルンルンがやってきた。
土産の温泉饅頭はソルジャーたちのオヤツとなり、瞬く間に消え去った。
おもちゃは……数分で全部壊れた。
●グラウンド・ゼロ付近
ワイバーンに騎乗したGacruxは、グラウンド・ゼロに向かう。一人で雑魔と戦い続けているクリュティエに会うために。
携えて行くのはいつもと同じく、市場で購入した支援物資。そして、借りた畑で作った新鮮な野菜――少しでも彼女に、正のマテリアルを補給してもらうためだ。
(彼女に世界の再誕を見せるまで、俺も諦められないからな――ん?)
彼は両目をすがめた。
眼下に人影を見つけたのだ。
こんなところをうろついている以上、ただの一般人ではあり得ないが……。
(しかし、万一そうだとしたら大変だからな。確かめるだけ確かめておくか)
ワイバーンの頭を下げさせ、低空飛行に転じる。
ラスティは走る。走る。
一糸まとわぬに近い姿の美人で巨大なお姉さんたちに追われて。
お姉さんたちはたわわな胸をぷるんぷるんさせ、鉄棒をブルンブルン振り回している。
「なわばりおかした」
「まて、しんにゅうしゃ」
彼女たちはジャイアント。荒れ野にひっそり暮らす大型亜人。最近とんと話題に上らない、クリムゾンウェストの愉快な仲間たち。人間は食べないのでご安心。
「違うー! 俺が、俺が求めているのはこういうのじゃないんだー!」
ラスティの前をバイクで走る杏子が、メガホン越しに言う。
「何が違うの。皆さん破格のGカップじゃないの」
「いや、破格だけど! 戯れる余地全然ないし!」
「遠慮なく戯れなさいよ。鉄棒で殴られたくらいじゃハンターは死なないから」
「そんな殺生な!」
「……これはほうっておくべき案件ですね」
肩をすくめたGacruxは再びワイバーンの高度を上げる。一目散にグラウンド・ゼロへ向かう。迷いなしに。
●東方の、さる領地
「あー、杏子なら妙な小僧連れてどっか行っちゃったよ」
「えっ、そうなんですか……お祝いしようと思って来ましたのに……」
「まあ、展覧会は今日だけじゃないし、また日を改めて来たらいいよ」
とマルカに言い残して舞は、玩具店に戻る。
初日の販売は上々だったようで、棚のあちこちが空になっている。
ユニは接客、ブルーチャーはメイムと新商品「プチカチャ人形」について打ち合わせ。
(おっさんもユニも頑張んな)
心の中でエールを送りながら彼女は、直ったおもちゃを携え帰路に着く。
向かうのは東方。自分が代官を勤める地。
そこにはもう、詩が先に帰ってきていた。
「お帰り、お姉ちゃん」
甥と姪――飛鳥(アスカ)と真紅(ジグ)は小さな布団に寝かされ、穏やかな寝息を立てている。
「おー、ただ今。ソルジャーはどうだった」
「皆、元気だった。当たり前だけど、どんどんアスカとジグに似てくるね。ルベーノさんにも」
「そっか」
「うん。あ、そうそう。マゴイにね、この子達が生まれたこと教えたんだ」
「あいつ、なんて?」
「『……幼児期の市民の前でそういう著しく反社会的な話題を持ち出すのはやめてちょうだい……』だって」
「……変わんないなー。つか、反社会的ってなんだよ。失礼な」
かわいい甥と姪をけなされた様な気がして、舞は面白くない。
しかし詩は笑っていた。
「でもそれ以上は何も言わなかったよ、マゴイ」
●同年、○カ月後
南方大陸の南端。
冷たい風がびゅうびゅう吹き付ける、切り立った断崖。
荒磯に海獣が群れている。
陰鬱な灰色の空に雪がちらちら舞っている。
その下には流氷の浮かぶ海。水平線の先には白く平べったい陸地。
以上の光景を現地視察したマゴイは、感嘆の声を上げた。
『……とても広い……あれだけ広ければソルジャーも思う存分運動出来る……よい保養所が作れる……新たなユニオンのエリアを築ける……』
気の長ーい南極大陸開発物語が、宇宙開発物語と共に、今、ここから始まる。
リゼリオの観光名所「ナディアタワー」の周囲には、長蛇の列が出来ている。展望エレベータに乗る順番を待っているのだ。内訳は地元民3、観光客7と言ったところ。
埋め立て工事で作られた新市街地には、リアルブルー様式のビルがぴょこぴょこ生えてきている。「テナント募集」の看板と一緒に。
そのビルのうち幾つかは、リナリス・リーカノア(ka5126)のものだ。彼女は現在、不動産事業に着手しているのである。小さな酒造会社を経営する傍らで。
カチャ宅を訪問しに来たエルバッハ・リオン(ka2434)は一階店舗の従業員と共に、入り口前で立ち尽くしていた。
扉が閉まっていて入れないのだ。
ウィンドー越しに中を見てみれば、歯車とネジを多用した複雑怪奇な錠がかけてある。
カチャがそれを開錠しようとしているが――うまくいっていない。
「もー、またなんでこんなものを……」
ぶつぶつ零す彼女の傍には、7歳くらいの少女。
長い金髪に白い肌をしたその少女の名は、ユリーヌ。ユリーヌ・タホ――タホ家の養子である。
二階からリナリスが降りてきた。4歳くらいの幼女を小わきに抱えて。茶色い髪を左右で二つ結びにし、いかにもやんちゃそう。
彼女の名前はミリィ。ミリィ・タホ。ユリーヌと同じくタホ家の養子。
カチャが腰に手を当て、はーっと息を吐いた。
「もう駄目。これ壊さないと開かない」
その言葉を聞いた途端ミリィが暴れだした。
「だめー! ミリィちゃんいっしょけんめーつくったのー! こわしたらだめー!」
幼子の嘆願を退けカチャは、錠を握力でねじ切る。
「うわああああんカチャママのばかー! ばかー!」
リナリスは慣れた様子で、大泣きのミリィをあやす。
「ミリィ、一階はおうちじゃないんだから、色々くっつけちゃ駄目なんだよー。工作はお二階でしようねー」
ユリーヌが傍に来て、妹に言った。
「ミリィ、ママたちお客さんとお話があるから、おねえちゃんとお外であそぼ?」
●フマーレ・ブルーチャーの店
開店ほやほやのブルーチャー玩具店。
店先を飾る花の中で一際目を引くのは、大きな花輪。
使われているのは物珍しい変わり種の花ばかり。白眉は青と緑の2色が入り混じる薔薇。透き通るような光沢が、まるでガラス細工のよう。
「ブルーチャ―再びの店主おめでとうー」
「おー、これはメイムさんありがとうごぜえやす。いやあ、たまげましたぜ、あんなでかい花輪を贈ってこられるたあ……高かったでしょう?」
「ううん、たいした事ないよ。せいぜい10万Gってとこ」
祝辞を終えたメイム(ka2290)は、カチャ人形を2体取り出した。
一体は普通、もう一体はホラーバージョン――パーツは一緒だが目が取れかけ、口の位置がずれている。
「それはそれとして、新商品のアイデア持ってきたんだ。ブリキや木製だけじゃなくこんなのもどう? 布でも樹脂でもいいけど、小さいの作れないかな。ストラップ的な」
「まあ、作れるのは作れますけど……こっちのホラーバージョンはどうでしょうなあ。子供にゃ受けが悪いんじゃないですかねえ」
「そーんなことないよ。需要はあるってば。ブルーチャー昔スペットと協力して、モンスタードールの製造販売してたじゃん。あれ、そこそこ売れたんでしょ?」
「古傷持ち出さねえでくだせえよ」
ブルーチャーは、はげた頭の汗を一所懸命拭く。
そこに入ってきたのは天竜寺 舞(ka0377)。
「おっさん、新規開店おめでとさん! ユニも元気そうだね――早速で悪いんだけど、これ修理してくれる?」
彼女が出してきたのは、破れたチューダのぬいぐるみと皿の取れたかっぱ人形。
「妹の子のなんだけどさ。どうせならおっさんに頼もうと思って」
さらっと吐かれた肉親の近況報告に、ブルーチャーもユニも驚きを隠せない。
「ええっ、お子さん生まれたんですかい!?」
「全然知りませんでした……おめでとうございます!」
メイムもまた驚きつつ、気になるところを質問。
「おめでとー。父親はやっぱりあの元将軍?」
「ま、ね。じゃ、おもちゃは後で受け取りにくるから。あたしちょっと、回ってこなきゃなんないとこがあるんだ」
舞が慌ただしく出て行く。
入れ替わりにフィロ(ka6966)がやってきた。花篭を手にして。
「ユニ様が此方にお勤めになられたと聞きましたので……おめでとうございます、ユニ様」
「あ、ありがとうございます!」
ユニは嬉しそうに花籠を受け取る。
それほど頻繁に顔を合わせる仲ではないのだが、オートマトン同士気心が知れるということもあるのだろうか、二人の間に距離感はない。
「王国特産の四季咲きスミレですわ。学校の花壇にたくさん咲いておりまして」
「学校?」
「はい。今、私は王国の聖導士学校で寮母をしています。入寮した子供達に掃除や洗濯、料理の仕方を教えています。彼らがどんな出自であれ、自活できるようになっていただきたいのです。良かったら、遊びに来て下さいね」
「はい、行かせてもらいます。今度休みの日に――」
不意にユニは涙ぐんだ。
フィロは優しく、どうしました? と問いかける。
「いえ、なんだかほっとしたっていうか……よかったなって。ワタシも、アナタも、この世界で居場所を見つけられて……」
自分たちの本来の世界であるエバーグリーンは、もうない。
そのことを今一度深く心に刻んだフィロは、励ましの言葉を述べる。ユニに、それから自分に。
「貴女は同胞を助ける道を選び、私は幸せな子供達に仕える道を選びました。共にオートマトンとしての願いを叶えることができたのです。うれしいことではありませんか」
「……はい、とても」
そこへなだれ込んでくる賑やかな声。
「ブルーチャーさん、開店おめでとーございまーす! これどうぞ!」
ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)だ。
ど派手なピンクの花束と温泉まんじゅうの箱が、ブルーチャーに押し付けられる。
「開店祝いのご祝儀だもの、おもちゃ一杯買っちゃいます……私が遊ぶんじゃないですよ、お土産なのです」
続けてマルカ・アニチキン(ka2542)がやってきた。
「開業おめでとうございます!」
その手にはNGブランドの紙袋。
中に入っているのは、株主総会参加者に配られる限定ブランドバッグ――彼女はグリーク商会アパレル部門の大口株主なのである。
●ユニゾン・外部者宿泊所
調理室。
天竜寺 詩(ka0396)はマゴイが連れ帰ってくる小さなソルジャーたちのために、食事を作っている。
内訳は金時ニンジンを入れたジャムとパン。
カレー味の蓮根団子。
牛脛肉の煮凝りゼリー。
付け合せの温野菜、そして果物。
緑色のエプロンをつけたコボルドたちが、食堂テーブルに人数分の食器を並べている。歌いながら。
「たーべてたべておーきくなーれ、そうじゃー」「つーよくなーれ、そうじゃー」
カリカリ大袋を持ったルベーノ・バルバライン(ka6752)が、そこに入ってきた。
「おう、うべの」「うべの」
コボルドたちは尻尾を振って大歓迎。
その様を微笑ましげに眺め、詩が聞く。
「また、マゴイに贈り物? まめだよね、ルベーノさん」
折りよくそのマゴイが、ソルジャーたちを連れ帰ってきた。
おいしそうな匂いにきゃあきゃあ喜ぶ幼子らへ、詩が言う。
「さあ、ごはんだよー。みんな、手を洗って席に着いて」
ルベーノはマゴイに歩み寄り、囁いた。
「ここは詩とナニー・ワーカーに任せておけばいいだろう。μ、一緒に少し外を歩かんか?」
宵待 サクラ(ka5561)、トリプルJ(ka6653)、星野 ハナ(ka5852)は揃って外部者宿泊所を訪れた。マゴイがそこにいる、と聞いたので。
しかし着いてみればひと足違い。散歩に出て行ったとのこと。
しょうがないので帰りを待つ。
間にちょいと腹ごしらえしたいので、食堂に向かう。
「私はイコちゃんとレクエスタや南征にチョイ噛みしつつ聖導士学校で講師もやってるから。休暇時期に自分達で調査して来期の講義内容決めたりするからさ、こういう実地調査や協力依頼って物凄く大事なんだよね」
「……適当に休まないと、倒れるぞ?」
「完全にオーバーワークですよねぇ」
「いーの。私が擦り切れることでイコちゃんの負担が減るなら、本望だよ」
などと話しながら食堂に入れば、仲良く並んで食事をする小さなソルジャーたちの姿が。
ハナはその光景に衝撃を受ける。
(ユニゾンで生まれた子供達は就労のための成長促進があるかと思ってましたぁ……それなのにマゴイとステーツマンの遺伝子情報不足って拙くないですぅ?)
『……あなたの遺伝子はまことに健康……ソルジャーたちはいずれ皆……あなたのように大きく強くなる……』
うきうきと展望を語るマゴイにルベーノは、半ば独り言のような口調で返す。
「……氏より育ち、と言うからな。俺と全く同じ遺伝子であっても、俺と全く同じには育つまい。それでも嗜好は似る可能性がある。その程度の、遠い親戚程度の感覚の方が、俺もあれらも苦しくなかろうよ」
彼女は『自分』と自分の遺伝子によって生まれた『彼ら』を区別して見てくれるだろうか。同じではあるが、違う。ルベーノ・バルバラインはただ一人だと。
願わくばそうして欲しいものだが。αに対してそうだったように。
思いながら彼は、自分にとってただ一人のマゴイの耳に、ラピスラズリとムーンストーンのイヤークリップをつけてやった。
「隣の芝生は青い、を体現してしまいかねんからな。その程度には俺も気を使う」
●ジェオルジ・マリー宅
「今度こそ本当におめでただって聞いたから。おめでとう、マリー」
「ありがとう、マリィア」
マリィア・バルデス(ka5848)から果物籠を渡されたマリーは、頬を赤らめ目を細めた。
ゆるめのロングドレスに隠された下腹部が、大きく膨らんでいる。
「もう臨月近いのよね」
「うん」
「産まれたら、うちの娘とも仲良くしてやって。ほら、エドラ、御挨拶なさい」
茶色髪の碧の目、ピンクの幼児用ワンピースにかぼちゃパンツの幼女は、見知らぬ人であるマリーから顔を背けた。
自分を抱いてくれている母の胸に顔を押し付け、親指をかぷかぷ噛む。
「……エドラでしゅ。ちゃんちゃいでしゅ」
「やだー、もうかわいい!」
あどけなきかわいらしさに身もだえするマリー。
そこへ不意に、コボちゃんが入ってきた。
「まりい、ほんぶていしゅつしょるい、おまえのしょめい、いる。かけ」
「……わんしゃん!」
エドラは自分から床に降りた。
目をキラキラさせコボちゃんに向かって行き、耳を引っ張る。
コボちゃん嫌がって逃げる。
エドラが追いかける。床の段差につまづき転ぶ。泣く。
「コボちゃん、なにしてるの!」
とマリーに怒られ、コボちゃん不服そう。
「こぼ、わるくない」
マリィアはエドラを抱きあげ、打ったおでこを撫でてやる。
「エドラ、コボちゃんの耳を引っ張ったら駄目よ。それはコボちゃんにとって嫌なことだから。エドラはコボちゃんと仲良くしたいのよね?」
しゃくりあげながらエドラは頷く。
「じゃあ、コボちゃんに、ごめんねして?」
「ごめぇんね」
謝罪を受けたコボちゃんは納得し、ふんと鼻を鳴らす。
「わかれば、よい」
「あしょぼ」
「ちょっとだけなら、あそんでやってもよい」
マリィアとマリーは顔を見合わせ、ほほ笑み合った。
そこでチャイムの音。
扉を開ければ大箱を抱えたマルカ。
「マリーさん、ご懐妊おめでとうございます!」
「あ、ありがとう……ていうか、その荷物何?」
「あ、これは贈り物です。ブルーチャーさんのお店で知育玩具を色々仕入れてきまして」
「ちょっとちょっと、早過ぎない? まだ生まれてないのよ?」
呆れ顔のマリーにマリィアは、先達として意見した。
「今がちょうどいいくらいよ。子供が生まれてからじゃ揃える暇ないからね。そういえばマルカ、リゼリオの新開地に土地を買うんだって?」
「はい。さる人のための記念館を作りたいと思いまして」
そこでマリーが、マルカの持っている紙袋に気づいた。
そわそわしながら彼女に聞く。
「グリーク商会の株主総会行ってきたの?」
「はい」
「ナルシスくん、どうだった?」
「新部門の今後のビジョンについて話されていました。『拡大路線はとらない。継続路線を取る。継続目標は百年とする。後のことは後の人がやればいい、僕は面倒見ない。』と」
ぼろんぼろんと音がした。
振り向いてみればコボちゃんがマルカのお土産の中から、幼児用のギターを引っ張り出し、弾いていた。
エドラがそれに合わせ手拍子をしている。目をキラキラさせて。
●とあるどこかの田舎
田園。健康的な屋外の光の下。
「これは……ああ、ここか」
Gacrux(ka2726)は、北で回収した古代遺跡残骸の欠片をひとつまた一つと積み上げ、接着して行く。
たまの休暇を費やし続けたかいあって残骸は、いにしえの姿を――剣を手に立つ女戦士の姿を取り戻した。
思い入れのせいだろうか、彼にはどうしてもそれが、カレンデュラと重なって見えてしまう。
(……邪神が世界を破壊して以降、グラウンド・ゼロに新しい文明は育たなかった。この復元が古代文明を現代に伝える手助けとなれば……未来にその記憶を繋げていければ……)
物思いに耽っていた所、にゃあ、と鳴き声。
顔を向ければ農作業用の笠をかぶったユグディラたち。
「ああ、これは失礼。今月の報酬がまだでしたね」
Gacruxは急いで作業小屋に戻り猫缶を持ってくる。銘々に配る。
ユグディラたちは目を細めご満悦。
風がひと吹き。
よく手入れの行き届いた畑から青っぽい香りがしてきた。
鈴なりになったトマト。ナスやキュウリ。カボチャ。どれも皆はちきれんばかりに瑞々しい。
一角には花畑。鮮烈なヒマワリの黄色とサルビアの赤。
「俺がいない間、いつも畑の面倒を見てくださってありがとうございます」
礼を述べるGacruxにユグディラたちは、にゃあ、と答えて尻尾を一振り。園芸バサミと篭を渡す。
これから収穫、なのである。
●ペリニョン村
「ぴょこさまとスペットさんに質問があるの」
真剣な顔で言ってからディーナ・フェルミ(ka5843)は、スペットの顔をひたと見つめ、がくうと肩を落とす。
「……お猫さまじゃなくなって哀しいの~」
「どういうことや」
突っ込むスペット。
そこでぴょこが、おごそかに福音を告げる。
『案ずるなディーナよ、βはのう、今でも猫の顔になるのじゃ。覚醒したとき』
「えっ本当なの! よかったあ。もう一時はどうなること……」
納得いっていなさそうなスペットを脇に喜ぶディーナ。
で、改めて仕切りなおし。
「ぴょこさまって同盟も王国もどこでも行けるのかな。スペットさんもそうなのかな」
「俺は別に精霊でもなんでもないから、フツーにどこでも行けるで? けどθは……どうなんやろなあ?」
『むー、行けそうな気はするがのう。わし、ここを離れてユニゾンに行ったことも何回かあるのじゃし』
「でも、ユニゾンも一応同盟内やろ?」
ひとまず地域間移動についてスペットは「問題なし」。ぴょこは「制約がある可能性が高い」という感じか。
頭の中に書き付けながら、ディーナは話を進める。王国の聖導士学校での特別講演を願えないかと。
「ユニゾンへのEG技術見学前に、もう少し汎用的なお話を聞いてからの方が良さそうな気がしたの。今のままだとウォッチャーとか階級色とか職業別作業ばかり子供達の記憶に残って、セントラルで役立つ技術見学の側面が薄れそうなの」
「……まあ、どうしてもそっちの印象強くなるわな」
「世界の浄化を目指す子供達に、いろんな価値観を知ってほしいの。どうかな?」
「かまへんで。あんまり話すこともなさそうやけど」
話がまとまったところに、ルンルンが来た。土産の饅頭と幾つもの紙袋を携えて。
「私が東方で引っ越した先、今は温泉観光地になってるから、良かったら遊びに来て、ほら仕事ばかりだと大変だろうからお休みに……あっ、これ温泉まんじゅうなんだからっ」
「おー、あんがとさん。しかし、えらいおもちゃ買うてるやんけ。どないすんのや、それ」
「これからマゴイさんちにも行くから、お土産にと思って。新市民生まれたそうですし」
●リゼリオ・カチャ宅
カチャはカップにコーヒーを注ぎつつ、リオンに言う。
「ミリィは孤児院から引き取ったときからあのままでしたけど、ユリーヌは、うちに来たとき全然表情がなかったですよ。元の親から育児放棄されてまして。でも、今は普通に笑うようになってくれて。それで、2人のママの狩子になりたいとか言いだしちゃって」
「狩子って……あの子はイクシードなんですか?」
リナリスが親馬鹿ぶりを前面に押し出し答える。
「そーなんだ。もー、齢七歳にして才能溢れまくりでさー」
対してカチャは困惑顔。
「私としてはもっと穏やかな人生を目指してほしいんですけどねえ」
「もう、カチャったら心配症なんだから。大丈夫だよ、もう邪神もいないし歪虚王も全滅だし」
「リナリスさんはリナリスさんで、いきなり来年の都市評議会選挙、出馬するって言い出しますし」
「いいじゃん。あたしさー、全ての人が幸せになれる世の中が来るようにしたいんだー。娘たちの未来のために。あ、そうだエルさん、今度うちの会社から出す新酒。ぜひ試飲してよ。今から持ってくるから♪」
思い立ったがなんとやら、リナリスが素早く場を離れる。
リオンがふいに深刻そうな顔をした。そして、カチャに言った。
「あのー、カチャさん。ちょっと相談に乗ってほしいことがあるんですが、いいですか?」
「はい。いいですよ?」
「実は、ハンターになった頃から見た目が変わらないのです」
「……それは、エルフにはよくあることではないんですか? あなたたちは寿命が長いから、人間よりゆっくり年を取るでしょう?」
「そういうレベルの話ではないんです。死に至るまで外見が子供のまま――母の一族では、稀にそういった体質の者が生まれてくることがあるそうです。以前その体質で生まれた方に会わせてもらったのですが、私くらいの見た目であっても、かなりの高齢の女性が、ゴスロリ衣装を着て幼女のような言動をして――」
間を置いてリオンは席から立ち上がり、ぐわっとカチャの両肩を掴む。
「さらに、一瞬、真顔になったその方から『いずれはお前もこうなる』と言われた時は、何の呪いかと恐怖しました」
それは確かに怖い。というかエルさんの顔が怖い。
思いつつカチャは、リオンに言った。
「で、でもエルさん、その方が幼女のような言動をしてるのは、外見の問題じゃなくて内面の、性格の問題なんじゃないですか?」
「え?」
「エルさん子供みたいな言動されたことないですよね。演技でなら別ですけど」
「まあ……ねえ」
「じゃあ、いずれその人みたいになるってことは、あり得ないんじゃないですか? 姿が今のままでも」
そこに下から、リナリスの声。
「カチャー! フィロさんとマリィアさんが遊びに来たよー!」
それから、マリィアの声。フィロの声。
「カチャのとこも養子貰ったって聞いたから。子供同士友達になって貰えたらって思ったのよ」
「こんにちは、カチャ様。ご養子を迎えられたと伺いましたので……」
カチャは急いでそちらに向かう。リオンもそれに続く。自分の心が軽くなったのを感じながら。
お客と会話する子供たちの声が聞こえてくる。
「貴方のお母様方の友人で、フィロと申します。よろしければ私ともお友達になって下さいね」
「はい、喜んで」
「あのね、あのね、エドラちゃん、ミリィちゃんたちといっしょに、ぴたごらましーんつくろ!」
●ヴァリオス・杏子の個展会場
ラスティ・グレン(ka7418)は杏子に向けて五体投地しながら、熱く激しく語る。
「俺はπ乙カイデーなねえちゃんとの出会いを求めてハンターになったのに……全然願いが叶わないんだよぉ!」
先に杏子と話していた舞が限りなく冷たい視線を向けてくるが、そんなことには一向構わない。言いたいことだけ一気に言う。
「エロディラ先生に師事して理想のねえちゃんを探し求めたけど! 王国じゃあんちゃんの胸囲の方がねぇちゃんのバストよりデカいって言われたり! 東方へ桃源郷を探しに行ったのに着物のせいでカイデーかどうかさっぱり分かんなかったり! 精霊様にπ乙カイデーなねぇちゃんとの出会いを下さいってお願いに行ったら会う前におつきの人に叩きだされたり! 八橋大先生……教えてほしいことがあるんだ。大先生が今まで会ったモデルさんで、1番π乙カイデーなねえちゃんはどこの国の人だったのか」
杏子先生はほほ笑んだ。
そして、クルリと舞に顔を向けた。
「詩の領地で講師をする件、引き受けたわ」
「あ、ああ、そう、ありがと」
「細かい打ち合わせはまた後日ね。私、ちょっと席外すから――分かったわ少年、私がこれまで見た中で、一番胸が大きい人に会わせてあげる」
「えっ、マジで! 大先生神ぃ!」
●ユニゾン
食事を終えたソルジャーたちは詩の指導の元、屋外でおゆうぎの時間。
教わるのは舞。飛びぬけて活動的な彼らのお気に入り演目は、連獅子だ。
「皆、腰から上はブレないように――違う違う、これはカツラを遠くに飛ばす遊びじゃないから!」
それを見守るマゴイに、サクラが質問。
「――ユニオンはシールドで都市内の温度等調節してたって聞いたし、歪虚襲来の時もシールドで侵攻を防いだって聞いたんだけど、そういうドーム的な物があれば外気の状態なんて無視できる気がするんだけど……どうして気象衛星が要るのかな」
『……それは両方とも……非常事態に対する処置として行われたもの……平時であれば……そういうことはしない……エネルギーの無駄遣い……そもそも結界を施した状態であっても……外部環境を無視することは出来ない……』
「あ、そうなんだ」
と返しつつもサクラは、そこで終わりにしない。
王国の片隅で政治宗教百鬼夜行を体験してきた彼女には、指導者(マゴイ自身はそう思っていないが)の言葉を眉唾つけて聞く癖がついているのだ。
「いや、気象衛星は地表の観察にも使用できるから、将来的には寄付金集めてでも全世界公開してくれた方がうれしいよ?」
でもね、と続けて質問をしようとしたところで、Jが口を挟む。
「良いんじゃね、気象衛星も宇宙開発も。その情報公開してくれりゃ全世界が感謝するぜ。その情報は災害予防にも農作業の目安にも使えるからなあ」
当然諜報にも使えるだろうという指摘は飲みこむ。それよりグラウンド・ゼロの土地取得を考え直させる方が先決だと思ったのだ。
「レクエスタは各国が資金を出し合った分、開発取得に情報統制がかかってキナ臭い。わざわざ火中の栗を拾いに行く必要はないと思うぜ。ユニゾンにゃまだ地下も地上も拡張できる空間は充分あるだろ。元々のCWの月を全部ユニゾンで開発しちまうほうが――」
『……月となると……重力場から設定しなければいけないので……時間がよりかかりそう……』
難色を示すマゴイに、ルベーノが別案を出す。
「下手に平野を押さえれば他国と衝突しかねんぞ。元々リザードマンに縁があるのだ、南方大陸を開発した方が良くないか。あちらなら争うのはエトファリカの立花院だけで済む」
それが聞こえたのだろう、ソルジャーたちを指導していた詩が振り向いた。心外そうな顔をして。
「あの人はそういう無駄な争いはしないよ」
(さあ、それはどうでしょうねぇ)
声に出さず呟いたハナは、マゴイに耳打ちする。
「マゴイさんは英霊ですけど実体あるんですしぃ、情報体としてのウテルス登録って無理そうですぅ?」
『……それは無理……私はあくまでもマテリアルの構成物……本当の実体があるわけではないの……だから生殖細胞を採取出来ない……従って登録は出来ない……』
「マゴイさんは自分のことだから気にしてないみたいですけどぉ、貴女も今ステーツマンα並みに超過労働してますからねぇ。貴女が不調になったら本気で今ユニゾンやばくなるんですからぁ」
『……ユニゾン建設期に比べて私は……規則正しく働けるようになっているのだけど……通常休暇も取れているし……』
「それでも一人じゃ限界きますってぇ。後継確保にもっと本腰入れて下さいよぅ」
『……大丈夫……新しいマゴイなら……もうウテルスの中にいる……』
「えっ!? そ、そうなんですか」
一体誰の遺伝情報を使ったのかと問う前に、回答がなされる。
『……あなたが以前登録した遺伝情報を基にして……出生するの……皆きっと……よいマゴイになる……』
まさか自分の血を引くものがマゴイになろうとは、ハナもびっくりである。
とはいえこれで、ユニゾンの安定がより確かなものとなるわけだ。なら、歓迎すべきだろう。
「ステーツマンに使う遺伝情報の方は、目星ついてるんですぅ?」
『……とりあえず一つは確保しているわ……』
「あ、そうなんですか。それはよかったですぅ……で、誰のなんですぅ?」
もしやマルコ君では。私見だけど、ステーツマンとしてかなりいい線行ってると思うし。
そんな予測を立てるハナにマゴイは、予想外な人物の名を上げた。
『……コボちゃん……』
「エ゛ッ」
変な声を出して、ハナ、固まる。
そこでおゆうぎの時間終了。
まだまだ動き足りないソルジャーたちに、Jが言う。
「それじゃちびソルジャー達、かかって来い」
ちびソルジャーたちは喜んでかかっていった。
朝練で教わったとおり相手の動きをよく見て、向うずねを集中攻撃。
Jは平静を装いつつ、彼らに足払いをかける。
「はっは、そんなんじゃきかねえぞ!」
この後しばらくして、ルンルンがやってきた。
土産の温泉饅頭はソルジャーたちのオヤツとなり、瞬く間に消え去った。
おもちゃは……数分で全部壊れた。
●グラウンド・ゼロ付近
ワイバーンに騎乗したGacruxは、グラウンド・ゼロに向かう。一人で雑魔と戦い続けているクリュティエに会うために。
携えて行くのはいつもと同じく、市場で購入した支援物資。そして、借りた畑で作った新鮮な野菜――少しでも彼女に、正のマテリアルを補給してもらうためだ。
(彼女に世界の再誕を見せるまで、俺も諦められないからな――ん?)
彼は両目をすがめた。
眼下に人影を見つけたのだ。
こんなところをうろついている以上、ただの一般人ではあり得ないが……。
(しかし、万一そうだとしたら大変だからな。確かめるだけ確かめておくか)
ワイバーンの頭を下げさせ、低空飛行に転じる。
ラスティは走る。走る。
一糸まとわぬに近い姿の美人で巨大なお姉さんたちに追われて。
お姉さんたちはたわわな胸をぷるんぷるんさせ、鉄棒をブルンブルン振り回している。
「なわばりおかした」
「まて、しんにゅうしゃ」
彼女たちはジャイアント。荒れ野にひっそり暮らす大型亜人。最近とんと話題に上らない、クリムゾンウェストの愉快な仲間たち。人間は食べないのでご安心。
「違うー! 俺が、俺が求めているのはこういうのじゃないんだー!」
ラスティの前をバイクで走る杏子が、メガホン越しに言う。
「何が違うの。皆さん破格のGカップじゃないの」
「いや、破格だけど! 戯れる余地全然ないし!」
「遠慮なく戯れなさいよ。鉄棒で殴られたくらいじゃハンターは死なないから」
「そんな殺生な!」
「……これはほうっておくべき案件ですね」
肩をすくめたGacruxは再びワイバーンの高度を上げる。一目散にグラウンド・ゼロへ向かう。迷いなしに。
●東方の、さる領地
「あー、杏子なら妙な小僧連れてどっか行っちゃったよ」
「えっ、そうなんですか……お祝いしようと思って来ましたのに……」
「まあ、展覧会は今日だけじゃないし、また日を改めて来たらいいよ」
とマルカに言い残して舞は、玩具店に戻る。
初日の販売は上々だったようで、棚のあちこちが空になっている。
ユニは接客、ブルーチャーはメイムと新商品「プチカチャ人形」について打ち合わせ。
(おっさんもユニも頑張んな)
心の中でエールを送りながら彼女は、直ったおもちゃを携え帰路に着く。
向かうのは東方。自分が代官を勤める地。
そこにはもう、詩が先に帰ってきていた。
「お帰り、お姉ちゃん」
甥と姪――飛鳥(アスカ)と真紅(ジグ)は小さな布団に寝かされ、穏やかな寝息を立てている。
「おー、ただ今。ソルジャーはどうだった」
「皆、元気だった。当たり前だけど、どんどんアスカとジグに似てくるね。ルベーノさんにも」
「そっか」
「うん。あ、そうそう。マゴイにね、この子達が生まれたこと教えたんだ」
「あいつ、なんて?」
「『……幼児期の市民の前でそういう著しく反社会的な話題を持ち出すのはやめてちょうだい……』だって」
「……変わんないなー。つか、反社会的ってなんだよ。失礼な」
かわいい甥と姪をけなされた様な気がして、舞は面白くない。
しかし詩は笑っていた。
「でもそれ以上は何も言わなかったよ、マゴイ」
●同年、○カ月後
南方大陸の南端。
冷たい風がびゅうびゅう吹き付ける、切り立った断崖。
荒磯に海獣が群れている。
陰鬱な灰色の空に雪がちらちら舞っている。
その下には流氷の浮かぶ海。水平線の先には白く平べったい陸地。
以上の光景を現地視察したマゴイは、感嘆の声を上げた。
『……とても広い……あれだけ広ければソルジャーも思う存分運動出来る……よい保養所が作れる……新たなユニオンのエリアを築ける……』
気の長ーい南極大陸開発物語が、宇宙開発物語と共に、今、ここから始まる。
依頼結果
参加者一覧
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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質問卓 リナリス・リーカノア(ka5126) 人間(クリムゾンウェスト)|14才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2019/10/05 21:21:35 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/10/05 22:48:51 |
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相談卓だよ 天竜寺 詩(ka0396) 人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2019/10/06 21:59:51 |