ゲスト
(ka0000)
進み出した時
マスター:鷹羽柊架

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/10/15 12:00
- 完成日
- 2019/10/21 12:33
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ティアランと要塞都市郊外の町では少しずつ解体と変革が齎されていく。
それぞれの頭となっているシスと元締めが引退を考えているという旨を部下や住民に告げた。
次の頭は部族なき部族の現リーダーであるテトと宣言される。
ティアランはシスの指名であることとシスの息子であるハルシとその部下達が肯定したことと、ティアランの居城がタイフォンの部下に占拠された時にテトの指示でハンターが助けに来てくれたという事実のもと、反対はなかった。
だが、郊外の町では問題ないと言う者もいれば嫌そうな顔をする者もいたとの事。
後者に限っては、自分に後ろめたいものがあるからという理由なので、いずれは解消されるだろうと元締めは言っていた。
●
テトはティアランの現リーダーであるシスのもとにきていた。
「呼び出して悪いねぇ」
キセルより紫煙を吐き出しつつテトを労うシス。
「にゃんの用ですかにゃ」
テトが本題を促すと、シスは内容を告げる。
「引っ越しをすることにしたんだよ」
どうやら、この根城は歪虚の攻撃を受けずにすんでいたが、いつ崩れるかわからない事が判明したとのこと。
「行くところはあるんですかにゃ?」
「元締めのところにいくんだよ」
その言葉にテトは納得する。
現在、要塞都市郊外の町は職業訓練ということでティアランの男達と町の住民達は町を再建整備をしている。
建築物の訓練指導をしているのはカシオペヤ族という部族。
この部族はドワーフ工房のシェダルやフォニケが身を置いている。建築や土木技術を持つ者がいる部族だ。
「今は若い働き手がいなくなってここには老人と子供、かよわい者しかいない」
「シスはか弱くないにゃ」
間。
話を戻すようにシスが紫煙を吐き出す。
「で、そろそろ向こうに居住ができるんで、出ようかと思ってるんで、アンタ達に護衛をしてもらいたいんだよ」
シスがなんでもないように言うと、テトは自分の頭をさすりつつ、座り直す。
「それはいいんですけど、今はあの町に行くとからまれるんですにゃ……」
面倒くさいにゃー……とテトは啼く。
「アンタの戦い方、相手を殺すためのもんだからねぇ。ケンカには不向きよね」
納得するシスにテトは頷く。
元締めの後任として指名されたテトは郊外の町に行く度に若者達からよく絡まれる。特に一人で行動しているときは。
町ではテトを一人にするなと厳命が密かに下されており、ハルシの部下や元締めの部下がテトのお供をしている。
テトも舐められてはならないとケンカを求められれば応じるが、致命傷を負わせてしまう。
「まぁ、仲間と頭は別物だからいいんじゃない?」
「それはダメですにゃ。これからはそんな恐怖はいらにゃいのですにゃ」
「難しいねぇ。ハンターの知恵を貰ったらどうだい?」
「テトには強火で心配する人がいるので、町の連中が火だるまになるってフォニケが……」
困ったように告げるテトにシスはため息をつく。
「それはしょうがないって奴だね」
「というか、ティアランと町で代表者出してほしいにゃ……」
「それができたらアンタを指名したりしないよ」
ふーっ、と紫煙が部屋の中空に漂う。
それぞれの頭となっているシスと元締めが引退を考えているという旨を部下や住民に告げた。
次の頭は部族なき部族の現リーダーであるテトと宣言される。
ティアランはシスの指名であることとシスの息子であるハルシとその部下達が肯定したことと、ティアランの居城がタイフォンの部下に占拠された時にテトの指示でハンターが助けに来てくれたという事実のもと、反対はなかった。
だが、郊外の町では問題ないと言う者もいれば嫌そうな顔をする者もいたとの事。
後者に限っては、自分に後ろめたいものがあるからという理由なので、いずれは解消されるだろうと元締めは言っていた。
●
テトはティアランの現リーダーであるシスのもとにきていた。
「呼び出して悪いねぇ」
キセルより紫煙を吐き出しつつテトを労うシス。
「にゃんの用ですかにゃ」
テトが本題を促すと、シスは内容を告げる。
「引っ越しをすることにしたんだよ」
どうやら、この根城は歪虚の攻撃を受けずにすんでいたが、いつ崩れるかわからない事が判明したとのこと。
「行くところはあるんですかにゃ?」
「元締めのところにいくんだよ」
その言葉にテトは納得する。
現在、要塞都市郊外の町は職業訓練ということでティアランの男達と町の住民達は町を再建整備をしている。
建築物の訓練指導をしているのはカシオペヤ族という部族。
この部族はドワーフ工房のシェダルやフォニケが身を置いている。建築や土木技術を持つ者がいる部族だ。
「今は若い働き手がいなくなってここには老人と子供、かよわい者しかいない」
「シスはか弱くないにゃ」
間。
話を戻すようにシスが紫煙を吐き出す。
「で、そろそろ向こうに居住ができるんで、出ようかと思ってるんで、アンタ達に護衛をしてもらいたいんだよ」
シスがなんでもないように言うと、テトは自分の頭をさすりつつ、座り直す。
「それはいいんですけど、今はあの町に行くとからまれるんですにゃ……」
面倒くさいにゃー……とテトは啼く。
「アンタの戦い方、相手を殺すためのもんだからねぇ。ケンカには不向きよね」
納得するシスにテトは頷く。
元締めの後任として指名されたテトは郊外の町に行く度に若者達からよく絡まれる。特に一人で行動しているときは。
町ではテトを一人にするなと厳命が密かに下されており、ハルシの部下や元締めの部下がテトのお供をしている。
テトも舐められてはならないとケンカを求められれば応じるが、致命傷を負わせてしまう。
「まぁ、仲間と頭は別物だからいいんじゃない?」
「それはダメですにゃ。これからはそんな恐怖はいらにゃいのですにゃ」
「難しいねぇ。ハンターの知恵を貰ったらどうだい?」
「テトには強火で心配する人がいるので、町の連中が火だるまになるってフォニケが……」
困ったように告げるテトにシスはため息をつく。
「それはしょうがないって奴だね」
「というか、ティアランと町で代表者出してほしいにゃ……」
「それができたらアンタを指名したりしないよ」
ふーっ、と紫煙が部屋の中空に漂う。
リプレイ本文
ハンター達はティアランの居城へ向かっていた。
移動は運よくドワーフ工房のトラックに乗れることになった。このトラックに荷物を乗せてティアランの荷物を乗せて要塞都市郊外の町に持っていくそうだ。
近くになってくると、少しずつ声が聞こえてくる。
「子供の声かな」
アイラ(ka3941)が呟くと、子供達の楽し気にはしゃぐ声が聞こえてきた。
居城に到着すると、ティアランのメンバーがハンター達を迎えてくれた。
奥からは袖を捲って動きやすい格好をしたティアランのボスであるシスが顔を出す。
「よく来てくれたね。助かるよ」
年齢が分かる皺に汗を乗せている彼女も引っ越し作業に精を出していたことがわかる。
「おう、任せろよ」
ぐっと腕に力をこめてこぶを作るオウガ(ka2124)に「助かる」とシスが笑う。来客に入り口付近で遊んでいた子供達が恥ずかしがるようにシスの後ろに隠れる。
「ほら、手伝ってきてくれたんだから、ちゃんと、こんにちはってするんだよ」
シスに促された子供達ははにかみながらもハンターに挨拶をする。
「可愛いね~」
子供達の様子にほっこりするルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)。
「大きいものを運び終わったら遊んでやるからな」
オウガが子供達に声をかけると、子供達は素直に喜ぶ。
「うるさくて悪いねぇ。子供達には基本、あまり外に出さないようにしてるんで今日は最後だから、遊ばせてるんだ」
子供の高い声はよく響く。外敵の襲撃を防ぐため、外に出さず、居城内で思いっきり遊ばせているそうだ。
「それは特別な事ですので、思いっきり遊ばせるのがいいと思うのです」
エステル・ソル(ka3983)の同意にシスは微笑む。
「とはいっても、遊びは殆ど戦闘訓練の組み手だからね。気を付けるんだよ」
「わかったぜ」
大事な情報にオウガは神妙に頷く。
相手は傭兵の卵。上手いことやらないとどちらかが怪我をする。
ハンター達の応援は歩きだして目が離せられない子供をもつ母親に喜ばれた。
「お子さん、見てますよ」
そう言ってくれたアイラは母親に「祖霊のご加護……」と拝まれたようだ。
良かれと思ったことなだけに、このリアクションにアイラは困ったように照れてしまう。
アイラの気持ちも分からず、子供は初めて見るアイラと遊べることに喜んでキャッキャと声を上げていた。
その通路横でルンルンは重たい荷物を持っている。
「これ、運んじゃいますね~♪」
ティアランは家具の類はあまり持っていないようであり、殆ど葛籠のような箱に閉まっているという。
運ぶときは隙間がないように布を使って破損を防いでいるので、見た目以上に重たい。
今、ルンルンが持っている葛籠は大きいものであり、非覚醒者であれば相当な力持ちでない限り二人で持たなければならない。
「頼むよ。一人で大丈夫?」
心配するティアランのメンバーにルンルンは笑顔で大丈夫と告げる。
葛籠も事前に紐で蓋が開かないようになっているので転ばない限りは中身をぶちまけることはない。
壁歩きで通行の妨げにならないように努め、難なく入口へと運んでいく。
葛籠は必要なもの。剥き出しなものは処分するものとなっている。
すべて持って行って、郊外の町で行うという。埋めたり燃やしても跡が残るからだ。ここで生活をしていた痕跡を隠さねばならないという。
今日ハンターが来る前の日にも何度か魔導トラックで運んでいたとのことだ。
「恐らく今回で最後になるだろうよ」
「メンバーは歩きか?」
トラックの運転手であるドワーフ工房のイオタとオウガは入口まで運び出された荷物をトラックの荷台に乗せていた。
「まあな、隙間があれば乗せていく感じだな」
イオタが言えば、オウガはふぅんと相槌をつく。
「そろそろ荷物が全部運び出されますよー!」
荷物を運び出しているルンルンがオウガ達に告げる。
「じゃぁ、先に運び出しの方を手伝う」
踵を返したオウガは中の方へと入っていった。
居城の中では幾つかの広場が存在しており、そこで鍛錬や宴をしていたとエステルはシスより聞く。
休憩に使う広場に近いところの調理場を借りたエステルは野菜スープとおにぎりを作っていた。
仲のよさそうな女の子二人組がエステルの様子を見ていた。
「これから、おにぎりを作ります。一緒に作りませんか?」
エステルの問いかけに女の子達は顔を明るくさせて頷く。エステルが手荒い用の綺麗な水を用意し手を洗わせる。
後程、労働のお手伝いの感謝に琥珀糖を女の子達にあげると、初めて見るお菓子に目を輝かせていた。
労働の後の食事が用意されているのはとても喜ばれていた。
「急がなくて大丈夫なのです。ゆっくり食べて下さいね」
エステルが話しかけると、子供達は咀嚼しつつもこっくりと頷く。
好評のまま、スープもおにぎりも皆の胃袋の中へと入った。
片付けはお母さん達も手伝ってくれて、すぐに跡形もなくなる。
最後の点検はハンターと子供達、シスで行っていく。
「これから行くところは、この間行ったところかな?」
子供がふと疑問に思う。不安というよりは素朴な疑問という所だろう。
「そことは違う場所だ。まぁ、賑やかな場所だ」
治安はこれから良くなると思っているので、オウガの感想はそこでとどめて置く。
「お外に出られるかな」
「勿論よ」
アイラが答えると、子供たちは嬉しそうに声を上げる。
点検も終了し、痕跡は消えていた。
さぁ、新天地へ出発だ。
辺境都市郊外の町では整備やティアランとの合流が近づき活気が出て来ていた。
ティアランの次点であるタイフォン一派の件で襲撃に遭って壊された店を優先的に修繕してくれるのだという。
今日は働いていれば汗がじんわり滲む小春の暖かさを感じる秋晴れ。
町の前に二人のハンターが入ってきた。
二人がまず向かったのはハルシの店。
「こーんにーちはー!」
勢いよく開け放たれたドアから入ってきたのは星野 ハナ(ka5852)とディーナ・フェルミ(ka5843)。
「強火が来たぞ。お疲れさん、お前達だけか?」
カウンターでグラスを拭いているハルシが迎える。
「ティアランの移動と一緒に来るって言ってたの。フォニケさんはどこですー?」
差し出されたジャーキーを手にディーナが尋ねる。
「元締めの所じゃないか? 聞いてみるといい」
逡巡したハルシが言うと、ディーナは元気よく返事をして店を出ていった。
「テトちゃん、ここで腐ってないで、出ましょう」
首を傾げて誘うハナにテトは困ったような顔をする。
「聞きましたよぅ。最近他人を叩きのめすと怪我させるから外出自重してるってぇ。どんどん叩きのめして回復させりゃいいじゃないですかぁ」
えげつないことに聞こえるが、ハナの助言は的を得ている。
「ここは旨みのある餌場で跡目が交代したばかりなんですからぁ、夢見る下っ端がイキって吹っかけてくるのは当然ですぅ。身体で分からせてやるのはトップに務めですよぅ」
アフターフォローは大事とファミリアヒーリングのレベル上げを助言もつける。
「そうですにゃんね……」
絆されるように頷くテト。
「手を差し伸べるのもリーダーの役目だな」
うんうんと頷くハルシにテトは恨みがましい視線をぶつけたが、彼は知らんぷり。
元締めの店に向かうディーナは町の様子が綺麗になっていると実感する。
職業訓練なので、建築物はそんなに美しくはないが、町の雰囲気や人々の活気が今までとは違っている事に気づく。
今も元締めは定位置に座っている。
「こんにちはー。フォニケさんはー?」
「上にいるぜ」
脇の階段を上がると、フォニケは個室で片づけをしていた。
「フォニケさん」
ひょっこりと顔を出すディーナにフォニケは迎え入れる。
中に入ると、テーブルの上にコサージュがあった。
限りなく白に近く、光の加減で淡いシルバーブルーに見える大ぶりの薔薇と引き立てる周囲の小さなブルースター。透明な石をちりばめた贅沢な一品。
「わぁ、綺麗!」
目を輝かせるディーナにフォニケは髪飾りをディーナの髪につける。
「ドワーフ工房からのお祝いよ」
気持ちだけだから、とフォニケは笑う。
ティアランの移動組が到着すると、テトや元締め達が出迎えてくれた。
まずはそれぞれの家を案内することになる。
「子供達は後で広場に来てねー」
手を振るディーナにティアランのと町の子供達は返事をした。
「テト君、大丈夫?」
心配そうにアイラとオウガが声をかける。
「今は平気ですにゃ。ハナが一緒なので……」
これまでこの町で華麗なまでに強さを示したハンターを知らぬ者はいない。
特にテトやドワーフ工房と関りをを持つハンターは凄腕が多い事も理解している。
世間話の中、エステルが彼女の前に立った。
「テトさん、お話いいですか?」
「移動しますかにゃ?」
「いえ、ここで」
首を振るエステルにテトは笑う。
「決めましたかにゃ?」
「はい。部族無き部族でお世話になることにしました、よろしくお願いします」
そう告げるエステルの言葉に周囲の人々が声を上げる。
「ようこそ、部族なき部族へ」
テトが手を差し伸べると、エステルはその手を握りしめた。
「テトから聞いているよ。この場にいない皆も喜んでいた」
「エステルさん、宜しくおねがいします!」
その場にいた花豹とルックスが声をかける。
部族なき部族は少しずつ変わろうとしていた。今までは部族が滅んだ者達の寄り合いであったが、これからはそうでない者も加えていこうとしていた。
ハンター達はティアランと町の子供達を集めて遊ばせていた。
町では道を整備する際、広場を作ろうという事になり、大通りのど真ん中に広場を作った。
いずれは石畳にして趣のある道や広場にしようと考えているそうだ。
楽しいアイディアを持つハンター達が気になって大人達も集まってきた。
「あげるわよー!」
凧あげやコマ回しを教えようとなり、即席でドワーフ工房のメンバーが凧と駒を即席で作り上げた。
凧は和紙ではなく、薄い布。フォニケが持って来ていた布で作ったのでパステルカラーの布を張り、オンベ部分はレースリボンになったので、女の子に人気があった。
丁度良く風もあり、凧が空に上がると、子供達だけではなく、大人も喜ぶ。
少し離れたところでルンルンがコマ回しをしていた。
「ジュゲームリリカルクルクルマジカル……ルンルン忍法、マジカルシュート!」
軽やかなステップを披露してからの見事なフォームでコマを回すルンルン。地面の上でくるくる回るコマに感嘆の声が上がった。
「因みに、喧嘩独楽というのもあって、二人同時に独楽を回してぶつけ合わせてどちらが長く回るか競うものもあります」
ルンルンが補足を入れると、楽しそうという無邪気な子供達の傍らで真顔で頷く大人達。
「賭け事に使うんじゃないよ」
シスの釘刺しに大人達はしゅんと肩を落とす。
「竹があれば竹とんぼが出来たのに~」
辺境では竹はなく、東方からの輸入を期待するしかない。
「また機会があれば教えたらいいじゃない」
残念がるディーナにフォニケが笑いかける。
まだ作業中のシェダルを見かけたエステルは作業の様子を見て声をかけた。
「こんにちはー」
エステルの声に反応したシェダルは彼女の方へと向かう。
「来てたか。テトには会ったか?」
「はい。部族なき部族に入りました」
迷いのないエステルの返事に「そうか」と穏やかに返す。シェダルは休憩がてら広場に行くようで、エステルもそれに付き合い肩を並べて歩く。
「そういえば、いずれは部族なき部族もこちらに住むって話ですけど、おススメの物件ってありますか?」
エステルの問いかけにシェダルはテトや部族なき部族の女性メンバーだけが住む集合住宅を勧められた。
ドワーフ工房同様の施設となり、風呂や魔導冷蔵庫が完備されるという。
リアルブルーでいうところのシェアハウスに近く、いずれはどこの区画でも同じ設備を完備させたいとテトが言っていたとシェダルが告げる。
広場に着くと、ディーナが竹がない事を嘆いていたようだ。
「そう言えばフォニケさんはアルフェッカさんと結婚するの?」
思い出したように唐突に質問を放るディーナにエステルやシス、元締め、花豹も反応する。
「へ? なんで?」
きょとーんと深緑の目を瞬くフォニケに全員が「アルフェッカ、もっと押せよ!」と心の中で叫んだとか。
裏路地の方ではテトの姿が見られて、テトを良く思わない連中が奇襲を……と思ったら、ハナがテトを連れまわしていたので、特に問題はなかった。
迷子になった子供もちゃんと送り届けることに成功している。
町の飲み屋に顔を出したオウガはテトを良く思っていない連中で思い当る一派と飲んでいた。
以前、タイフォンにリーダーを殺されたテトと揉めていた一派。
「……やっぱり、ちゃんとリーダーとして力を示してほしいんスよ」
「テトはまだ力の加減、分からねぇからなぁ」
「そうなんス」
どうやらこの一派はオウガがテトの為に真摯な対応をしてくれたこともあり、テトをそれなりに認めているようだった。
「あいつがビスをやったのは事実だし、やる時はやるってのも分かっているんで、もう少し付き合ってやってほしいっす」
「そっかぁ」
テトが対峙したビスは凄腕の傭兵ということで町の者は知っていたようだ。
片っ端から相手してやって回復させるのが正しいとオウガは認識した。
ハルシの店でぼんやりとテトを待っていたアイラは甘酸っぱい葡萄のノンアルコールカクテルをご馳走してもらっていた。
「アイラ、美味しそうですにゃね」
「うん、美味しい」
戻ってきたテトが目線でおねだりすると、同じものを出してくれた。
「テト君はさ、誰かと結婚しないの?」
唐突の質問にテトはカクテルを噴きかける。
しばし咽た後、テトは真面目な様子で真っすぐ向いていた。
「今はいませんにゃ。恋に落ちることが怖いですにゃ」
「……テト君?」
「黒犬の兄様を殺した時、テトは、ハナになら殺されてもいいと思いましたにゃ」
ビスに恋をしたハナの気持ちを自らの命で負った。
「でも、テトは部族を守らないとなりませんにゃ、今はこんにゃに大きな町を守らにゃいと……」
「うん」
規模を言えば小さな町だ。
それでも、テトは守ろうとしている。
アイラはハルシの店のドアの前で離れる足音を聞いた。『彼女』がどう思うかアイラは分からないが。
「テト君、部族なき部族に入ってもいいかな」
自然と出た言葉は思い付きかもしれない。
けど、本気だ。
そんなアイラの言葉にテトは目を見開く。
「……テトはもうカウントしてましたにゃ」
「入ってないわよー」
ふふふとアイラが笑う。
「いつでも来てくださいにゃ」
そう言ったテトは一年後のこの町を思い浮かべ、笑顔になる。
移動は運よくドワーフ工房のトラックに乗れることになった。このトラックに荷物を乗せてティアランの荷物を乗せて要塞都市郊外の町に持っていくそうだ。
近くになってくると、少しずつ声が聞こえてくる。
「子供の声かな」
アイラ(ka3941)が呟くと、子供達の楽し気にはしゃぐ声が聞こえてきた。
居城に到着すると、ティアランのメンバーがハンター達を迎えてくれた。
奥からは袖を捲って動きやすい格好をしたティアランのボスであるシスが顔を出す。
「よく来てくれたね。助かるよ」
年齢が分かる皺に汗を乗せている彼女も引っ越し作業に精を出していたことがわかる。
「おう、任せろよ」
ぐっと腕に力をこめてこぶを作るオウガ(ka2124)に「助かる」とシスが笑う。来客に入り口付近で遊んでいた子供達が恥ずかしがるようにシスの後ろに隠れる。
「ほら、手伝ってきてくれたんだから、ちゃんと、こんにちはってするんだよ」
シスに促された子供達ははにかみながらもハンターに挨拶をする。
「可愛いね~」
子供達の様子にほっこりするルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)。
「大きいものを運び終わったら遊んでやるからな」
オウガが子供達に声をかけると、子供達は素直に喜ぶ。
「うるさくて悪いねぇ。子供達には基本、あまり外に出さないようにしてるんで今日は最後だから、遊ばせてるんだ」
子供の高い声はよく響く。外敵の襲撃を防ぐため、外に出さず、居城内で思いっきり遊ばせているそうだ。
「それは特別な事ですので、思いっきり遊ばせるのがいいと思うのです」
エステル・ソル(ka3983)の同意にシスは微笑む。
「とはいっても、遊びは殆ど戦闘訓練の組み手だからね。気を付けるんだよ」
「わかったぜ」
大事な情報にオウガは神妙に頷く。
相手は傭兵の卵。上手いことやらないとどちらかが怪我をする。
ハンター達の応援は歩きだして目が離せられない子供をもつ母親に喜ばれた。
「お子さん、見てますよ」
そう言ってくれたアイラは母親に「祖霊のご加護……」と拝まれたようだ。
良かれと思ったことなだけに、このリアクションにアイラは困ったように照れてしまう。
アイラの気持ちも分からず、子供は初めて見るアイラと遊べることに喜んでキャッキャと声を上げていた。
その通路横でルンルンは重たい荷物を持っている。
「これ、運んじゃいますね~♪」
ティアランは家具の類はあまり持っていないようであり、殆ど葛籠のような箱に閉まっているという。
運ぶときは隙間がないように布を使って破損を防いでいるので、見た目以上に重たい。
今、ルンルンが持っている葛籠は大きいものであり、非覚醒者であれば相当な力持ちでない限り二人で持たなければならない。
「頼むよ。一人で大丈夫?」
心配するティアランのメンバーにルンルンは笑顔で大丈夫と告げる。
葛籠も事前に紐で蓋が開かないようになっているので転ばない限りは中身をぶちまけることはない。
壁歩きで通行の妨げにならないように努め、難なく入口へと運んでいく。
葛籠は必要なもの。剥き出しなものは処分するものとなっている。
すべて持って行って、郊外の町で行うという。埋めたり燃やしても跡が残るからだ。ここで生活をしていた痕跡を隠さねばならないという。
今日ハンターが来る前の日にも何度か魔導トラックで運んでいたとのことだ。
「恐らく今回で最後になるだろうよ」
「メンバーは歩きか?」
トラックの運転手であるドワーフ工房のイオタとオウガは入口まで運び出された荷物をトラックの荷台に乗せていた。
「まあな、隙間があれば乗せていく感じだな」
イオタが言えば、オウガはふぅんと相槌をつく。
「そろそろ荷物が全部運び出されますよー!」
荷物を運び出しているルンルンがオウガ達に告げる。
「じゃぁ、先に運び出しの方を手伝う」
踵を返したオウガは中の方へと入っていった。
居城の中では幾つかの広場が存在しており、そこで鍛錬や宴をしていたとエステルはシスより聞く。
休憩に使う広場に近いところの調理場を借りたエステルは野菜スープとおにぎりを作っていた。
仲のよさそうな女の子二人組がエステルの様子を見ていた。
「これから、おにぎりを作ります。一緒に作りませんか?」
エステルの問いかけに女の子達は顔を明るくさせて頷く。エステルが手荒い用の綺麗な水を用意し手を洗わせる。
後程、労働のお手伝いの感謝に琥珀糖を女の子達にあげると、初めて見るお菓子に目を輝かせていた。
労働の後の食事が用意されているのはとても喜ばれていた。
「急がなくて大丈夫なのです。ゆっくり食べて下さいね」
エステルが話しかけると、子供達は咀嚼しつつもこっくりと頷く。
好評のまま、スープもおにぎりも皆の胃袋の中へと入った。
片付けはお母さん達も手伝ってくれて、すぐに跡形もなくなる。
最後の点検はハンターと子供達、シスで行っていく。
「これから行くところは、この間行ったところかな?」
子供がふと疑問に思う。不安というよりは素朴な疑問という所だろう。
「そことは違う場所だ。まぁ、賑やかな場所だ」
治安はこれから良くなると思っているので、オウガの感想はそこでとどめて置く。
「お外に出られるかな」
「勿論よ」
アイラが答えると、子供たちは嬉しそうに声を上げる。
点検も終了し、痕跡は消えていた。
さぁ、新天地へ出発だ。
辺境都市郊外の町では整備やティアランとの合流が近づき活気が出て来ていた。
ティアランの次点であるタイフォン一派の件で襲撃に遭って壊された店を優先的に修繕してくれるのだという。
今日は働いていれば汗がじんわり滲む小春の暖かさを感じる秋晴れ。
町の前に二人のハンターが入ってきた。
二人がまず向かったのはハルシの店。
「こーんにーちはー!」
勢いよく開け放たれたドアから入ってきたのは星野 ハナ(ka5852)とディーナ・フェルミ(ka5843)。
「強火が来たぞ。お疲れさん、お前達だけか?」
カウンターでグラスを拭いているハルシが迎える。
「ティアランの移動と一緒に来るって言ってたの。フォニケさんはどこですー?」
差し出されたジャーキーを手にディーナが尋ねる。
「元締めの所じゃないか? 聞いてみるといい」
逡巡したハルシが言うと、ディーナは元気よく返事をして店を出ていった。
「テトちゃん、ここで腐ってないで、出ましょう」
首を傾げて誘うハナにテトは困ったような顔をする。
「聞きましたよぅ。最近他人を叩きのめすと怪我させるから外出自重してるってぇ。どんどん叩きのめして回復させりゃいいじゃないですかぁ」
えげつないことに聞こえるが、ハナの助言は的を得ている。
「ここは旨みのある餌場で跡目が交代したばかりなんですからぁ、夢見る下っ端がイキって吹っかけてくるのは当然ですぅ。身体で分からせてやるのはトップに務めですよぅ」
アフターフォローは大事とファミリアヒーリングのレベル上げを助言もつける。
「そうですにゃんね……」
絆されるように頷くテト。
「手を差し伸べるのもリーダーの役目だな」
うんうんと頷くハルシにテトは恨みがましい視線をぶつけたが、彼は知らんぷり。
元締めの店に向かうディーナは町の様子が綺麗になっていると実感する。
職業訓練なので、建築物はそんなに美しくはないが、町の雰囲気や人々の活気が今までとは違っている事に気づく。
今も元締めは定位置に座っている。
「こんにちはー。フォニケさんはー?」
「上にいるぜ」
脇の階段を上がると、フォニケは個室で片づけをしていた。
「フォニケさん」
ひょっこりと顔を出すディーナにフォニケは迎え入れる。
中に入ると、テーブルの上にコサージュがあった。
限りなく白に近く、光の加減で淡いシルバーブルーに見える大ぶりの薔薇と引き立てる周囲の小さなブルースター。透明な石をちりばめた贅沢な一品。
「わぁ、綺麗!」
目を輝かせるディーナにフォニケは髪飾りをディーナの髪につける。
「ドワーフ工房からのお祝いよ」
気持ちだけだから、とフォニケは笑う。
ティアランの移動組が到着すると、テトや元締め達が出迎えてくれた。
まずはそれぞれの家を案内することになる。
「子供達は後で広場に来てねー」
手を振るディーナにティアランのと町の子供達は返事をした。
「テト君、大丈夫?」
心配そうにアイラとオウガが声をかける。
「今は平気ですにゃ。ハナが一緒なので……」
これまでこの町で華麗なまでに強さを示したハンターを知らぬ者はいない。
特にテトやドワーフ工房と関りをを持つハンターは凄腕が多い事も理解している。
世間話の中、エステルが彼女の前に立った。
「テトさん、お話いいですか?」
「移動しますかにゃ?」
「いえ、ここで」
首を振るエステルにテトは笑う。
「決めましたかにゃ?」
「はい。部族無き部族でお世話になることにしました、よろしくお願いします」
そう告げるエステルの言葉に周囲の人々が声を上げる。
「ようこそ、部族なき部族へ」
テトが手を差し伸べると、エステルはその手を握りしめた。
「テトから聞いているよ。この場にいない皆も喜んでいた」
「エステルさん、宜しくおねがいします!」
その場にいた花豹とルックスが声をかける。
部族なき部族は少しずつ変わろうとしていた。今までは部族が滅んだ者達の寄り合いであったが、これからはそうでない者も加えていこうとしていた。
ハンター達はティアランと町の子供達を集めて遊ばせていた。
町では道を整備する際、広場を作ろうという事になり、大通りのど真ん中に広場を作った。
いずれは石畳にして趣のある道や広場にしようと考えているそうだ。
楽しいアイディアを持つハンター達が気になって大人達も集まってきた。
「あげるわよー!」
凧あげやコマ回しを教えようとなり、即席でドワーフ工房のメンバーが凧と駒を即席で作り上げた。
凧は和紙ではなく、薄い布。フォニケが持って来ていた布で作ったのでパステルカラーの布を張り、オンベ部分はレースリボンになったので、女の子に人気があった。
丁度良く風もあり、凧が空に上がると、子供達だけではなく、大人も喜ぶ。
少し離れたところでルンルンがコマ回しをしていた。
「ジュゲームリリカルクルクルマジカル……ルンルン忍法、マジカルシュート!」
軽やかなステップを披露してからの見事なフォームでコマを回すルンルン。地面の上でくるくる回るコマに感嘆の声が上がった。
「因みに、喧嘩独楽というのもあって、二人同時に独楽を回してぶつけ合わせてどちらが長く回るか競うものもあります」
ルンルンが補足を入れると、楽しそうという無邪気な子供達の傍らで真顔で頷く大人達。
「賭け事に使うんじゃないよ」
シスの釘刺しに大人達はしゅんと肩を落とす。
「竹があれば竹とんぼが出来たのに~」
辺境では竹はなく、東方からの輸入を期待するしかない。
「また機会があれば教えたらいいじゃない」
残念がるディーナにフォニケが笑いかける。
まだ作業中のシェダルを見かけたエステルは作業の様子を見て声をかけた。
「こんにちはー」
エステルの声に反応したシェダルは彼女の方へと向かう。
「来てたか。テトには会ったか?」
「はい。部族なき部族に入りました」
迷いのないエステルの返事に「そうか」と穏やかに返す。シェダルは休憩がてら広場に行くようで、エステルもそれに付き合い肩を並べて歩く。
「そういえば、いずれは部族なき部族もこちらに住むって話ですけど、おススメの物件ってありますか?」
エステルの問いかけにシェダルはテトや部族なき部族の女性メンバーだけが住む集合住宅を勧められた。
ドワーフ工房同様の施設となり、風呂や魔導冷蔵庫が完備されるという。
リアルブルーでいうところのシェアハウスに近く、いずれはどこの区画でも同じ設備を完備させたいとテトが言っていたとシェダルが告げる。
広場に着くと、ディーナが竹がない事を嘆いていたようだ。
「そう言えばフォニケさんはアルフェッカさんと結婚するの?」
思い出したように唐突に質問を放るディーナにエステルやシス、元締め、花豹も反応する。
「へ? なんで?」
きょとーんと深緑の目を瞬くフォニケに全員が「アルフェッカ、もっと押せよ!」と心の中で叫んだとか。
裏路地の方ではテトの姿が見られて、テトを良く思わない連中が奇襲を……と思ったら、ハナがテトを連れまわしていたので、特に問題はなかった。
迷子になった子供もちゃんと送り届けることに成功している。
町の飲み屋に顔を出したオウガはテトを良く思っていない連中で思い当る一派と飲んでいた。
以前、タイフォンにリーダーを殺されたテトと揉めていた一派。
「……やっぱり、ちゃんとリーダーとして力を示してほしいんスよ」
「テトはまだ力の加減、分からねぇからなぁ」
「そうなんス」
どうやらこの一派はオウガがテトの為に真摯な対応をしてくれたこともあり、テトをそれなりに認めているようだった。
「あいつがビスをやったのは事実だし、やる時はやるってのも分かっているんで、もう少し付き合ってやってほしいっす」
「そっかぁ」
テトが対峙したビスは凄腕の傭兵ということで町の者は知っていたようだ。
片っ端から相手してやって回復させるのが正しいとオウガは認識した。
ハルシの店でぼんやりとテトを待っていたアイラは甘酸っぱい葡萄のノンアルコールカクテルをご馳走してもらっていた。
「アイラ、美味しそうですにゃね」
「うん、美味しい」
戻ってきたテトが目線でおねだりすると、同じものを出してくれた。
「テト君はさ、誰かと結婚しないの?」
唐突の質問にテトはカクテルを噴きかける。
しばし咽た後、テトは真面目な様子で真っすぐ向いていた。
「今はいませんにゃ。恋に落ちることが怖いですにゃ」
「……テト君?」
「黒犬の兄様を殺した時、テトは、ハナになら殺されてもいいと思いましたにゃ」
ビスに恋をしたハナの気持ちを自らの命で負った。
「でも、テトは部族を守らないとなりませんにゃ、今はこんにゃに大きな町を守らにゃいと……」
「うん」
規模を言えば小さな町だ。
それでも、テトは守ろうとしている。
アイラはハルシの店のドアの前で離れる足音を聞いた。『彼女』がどう思うかアイラは分からないが。
「テト君、部族なき部族に入ってもいいかな」
自然と出た言葉は思い付きかもしれない。
けど、本気だ。
そんなアイラの言葉にテトは目を見開く。
「……テトはもうカウントしてましたにゃ」
「入ってないわよー」
ふふふとアイラが笑う。
「いつでも来てくださいにゃ」
そう言ったテトは一年後のこの町を思い浮かべ、笑顔になる。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
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