【未来】魔術師、キノコ狩り

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~10人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
無し
相談期間
5日
締切
2019/10/22 07:30
完成日
2019/10/31 19:01

このシナリオは2日間納期が延長されています。

みんなの思い出

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オープニング

●三年後
 邪神との戦から三年。
 ルゥルにも楽しいことも悲しいことも色々あった。
 グラズヘイム王国の師匠の家でそれまで通りの生活を送っていた。徐々に変わっていったのは、知識を蓄えることが増え、アークエルスにもよく出入りするようになった。
 移動手段のこともあったので、大きな街に部屋を借りたのだ。借りたといっても、父親が借りてくれているので、助かっている。
 ハンターの技術は必要であるが、研究者としての意識が強くなる。
「キノコ……リアルブルーのも見たいですけど、クリムゾンウェストもまだ見ぬキノコはあるはずなのです」
 北方や南方、知らない地域はたくさんある。
 行ける範囲で知り合いを頼って出かけることも増えた。龍園はラカ・ベルフ(kz0240)を頼っていく。ラカとは共通のペットの種類ということで、ペット同士を合わせる楽しみがあった。
 エトファリカ連邦国は大江 紅葉(kz0163)を頼る。紅葉自身が知識欲の塊であるし、大江家やその周りもそういったことに協力的で、里に頻繁に出入りしている。その長男の成長を間近で見ている。その子供は一瞬でも目を離すといなくなるため、すごい技術だとルゥルは思った。なお、ルゥルはそのことを母親に告げたら「あなただって気づくといなかったわよ」と言われる。
 ちなみに、紅葉は長女か次男を身ごもっている。
 悲しかったのはペットのフェレットのフレオの寿命が尽きたこと。生きていれば死ぬ。当たり前であるが悲しかった。縁があり、二代目のフェレットを飼う機会を得た。毛色はフレオと同じタイプで、女の子で名前はフレアとした。フレアはフレオと異なり、おとなしくじっとしていることが多い。しかし、気づくと、棚の上にいる。どうやって上ったのかわからないのだった。
 ルゥルの身長もしっかり伸びた。
 嬉しいことに今回、リアルブルーに行けそうだ。
 凍結の溶けたリアルブルー。戦いの後にも覚醒者ならば行けなくはなかった。ただ、何が起こるかわからないし、何もなくとも日常に戻ろうとしている人たちの邪魔をするかもしれないためルゥルは避けた。
 大分落ち着いてきたということで、キノコの季節に合わせていくことにしたのだ。
 リアルブルーのキノコ友達、木野 岳郎という男性のところへ。なんとかやり取りは行い、行き方や日取りも決めてあった。
「岳郎さんはわかるのです、あの年齢のお兄さんは、三年程度だとあまり変わらないはずです。しかし、凍結の時に超絶痩せいたり、リバウンドで大変丸くなっていたらわからないかもしれません!?」
 いろいろと想像してルゥルは困惑の渦に巻き込まれる。
「不安、です。でも、お会いしないのはもっと不安です」
 出かける準備は滞りなくする。
 手土産は町で菓子を買った。以前はクリムゾンウェストのものの持ち込みはできなかったが、今はよほど奇抜な物でない限り良いらしい。
 ルゥルだって珍味をいきなりもらっても困る。リアルブルーに行ったときの記憶から、小麦粉を使った菓子があることは知っていた。だから、当たり障りなく、菓子にしたのだ。
「一人で行けるのは不思議です。公共交通機関! 独りで乗るのです! 紅葉さん連れて行ったら、たぶん……二人で迷子になりますね……」
 リアルブルーの交通機関を単独で使うことは、初めてだ。
「ハンターさんたちにも声はかけました……キノコなパーティーの依頼です。不安です、三年、私のことを覚えてくれているでしょうか? 三年、短いけど長いのです」
 ルゥルは緊張と期待など様々な気持ちが湧く。
 ルゥルは動きやすいズボンにチュニックに、土産の入った大きなカバンを提げ出発する。パルムのポルムは鞄の上。ポルムも自分の荷物は持つ。

●リアルな山
 ルゥルは単身で岳郎が住む場所までやってきた。周囲は山に囲まれ、土と木の匂いが漂う村。
 常緑樹が多めであるが、ところどころ広葉樹も見られる。広葉樹は赤かったり黄色くなってきている。
「こ、これは……どこかで見た風景です!」
 ルゥルはバス停から村の岳郎の家に向かう。
 長年住んでいる場所は平たんな土地であるが、土と木が町の周囲にはたくさんある。
 つまり、建物こそ違うが、匂いとしては近いのだ。
「リアルブルーは奥が深いです」
 一度、連れて行ってもらったのも山だった。その時、南雲 芙蓉とも出会った。
「本当に色々あったのです……」
 待ち合わせは村の中。畑作業をする人の姿も見える。
 行けばわかるというけれどもわかるのだろうかと不安になる。
「かやぶき屋根だと言っていました……紅葉さんのおうちの近くにあるあれでしたよねぇ」
 そう考えると、リアルブルーとクリムゾンウェストは近い。
「あ、あれは!」
 かやぶき屋根の大きな家。
 入口に見覚えのある男性がいた。
「……岳郎さん!」
 ルゥルは駆けだした。
「良かったです!」
「……ルゥルちゃん? 大きくなったね……」
 岳郎は驚く。
「へへっ。そうです、これ、お土産です。どうぞ、皆さんでお食べ下さい」
「それはご丁寧に。クリムゾンウェストのお菓子? 楽しみだよ」
「私は食べて、美味しかったので選びました」
「じゃ、キノコ狩り、行こうか」
「はい!」
 大きな荷物は置かせてもらい、キノコ狩りやバーベキューをする場所に向かうのだった。

●依頼、キノコパーティー
 ハンターへの依頼というかお誘い。
 リアルブルーのとあるところ、山の中の集落で、キノコやバーベキューをするのだという。自然のなかでゆっくり過ごすのはいかがでしょうか、という内容だ。
 主催者には魔術師のルゥルとある。

リプレイ本文

●龍園より
 木綿花(ka6927)はリアルブルー行きの前に、ラカ・ベルフ(kz0240)に声をかける。
 ラカは浄化のためなどに駆り出されているし、今は書類に囲まれている。
 元々龍園の外が苦手なラカにリアルブルーはハードルが高い。
「オコジョというのが見られるかもしれないそうです」
 木綿花が言うと、ラカの目が輝き、説明してくれた。どうやら、ルゥル(kz0210)に教わっていたらしい。
 木綿花は写真を撮ったり、ラカに土産を買って帰ろうと考える。キノコを手土産に出発するのだった。

●迷子とは
 マリィア・バルデス(ka5848)は料理に必要な荷物とともに来る。
 林の中の指定場所でルゥルたちを見つける。
「ルゥル、先に一人で行っちゃうから迷子になっていないか心配したわよ」
 合流した穂積 智里(ka6819)も同意する。
「ルゥルちゃん、迷子癖ありましたよね……一緒に行ってくれる方が安心かなって思ったけど」
 智里は自身が大切な人に会いたいように、ルゥルはリアルブルーに住む木野 岳郎に会いたかったのだろうと推測をしていた。
 リアルブルー凍結の時、ルゥルが大泣きしたと聞く。その時心配していた相手が岳郎ならば、早く行きたいだろうと理解を示した。
「心外です! 私は迷子になりません」
 マリィアと智里は「えっ!」と言う。
「町や素敵な物が私を迷わせるのです!」
 マリィアと智里、岳郎はそっぽを向いた。その肩は震えている。
「な、何がおかしいのですか!」
「何もおかしくはないわよ」
「そういう考え方もありますね」
 マリィアと智里の声は笑っていた。

 星野 ハナ(ka5852)は食料や野外調理器具一式を山のように抱えてくる。
「うーふーふー。守護者になってよかったことはいくらでも大荷物が持てることですぅ。こういう時に実感しますぅ」
 なお、ハナはルゥルと一緒に行こうとしたが、
(これってルゥルちゃんと岳郎さんのおデートじゃ?)
 と思って遠慮したらしい。
 到着すると、準備が始まっているため、挨拶をして加わる。

●みぎゃとは
 エステル・ソル(ka3983)は以前、ルゥルのキノコ狩りに付き合っていた。
「キノコパーティー懐かしいのです」
 この三年間で色々あったし、皆にもいろいろあっただろうから話を聞きたいところだ。
 挨拶を交わすと、子どもぽさがルゥルから消えている。
「わたくしも身長伸びました」
 162センチになった。上品にくるりと回り、落ち着いた微笑を浮かべる。
「エステルさんは落ち着いたお姉さんになりました」
「ルゥルさんもますます素敵なレディになりましたね」
 ルゥルは照れる。その仕草は変わらない。
「そういえば、お兄さんとはそのあと、いかがですか? 仲良くしていますか?」
「そこそこです」
 ルゥルは笑う。
「木野さんもお元気そうで何よりです。ルゥルさんは凍結の時、木野さんのことをとても心配していました。蒼の世界の様子をお聞きしたいです。それから新種のキノコの情報があればぜひ、ルゥルさんに伝えてください」
「新種以前に、ここのが珍しいのかも?」
 岳郎の言葉にルゥルがうなずくのだった。

 トリプルJ(ka6653)は到着すると深呼吸をする。山の空気は穏やかな味がする。
「何やかんやで久しぶりの休暇、久しぶりのリアルブルーだからな」
 二つの世界を行き来することはなかなかない。
「俺はスワローテイルに参加して、戻ったときにゃ王国の聖導士学校に詰めてるな。南征にも北征にも手を出している奴らはどんだけ体力バカなんだと思うがな」
 休みは重要だとトリプルJは思う。
「今日はうまいもん食わせてくれるんだろ? 期待してるぜ」
 ルゥルの頭をぐちゃりと撫でた。
「ああああ」
「ん? ルゥル、お前、なんか身長伸びたし、雰囲気変わったなぁ、落ち着きが出たか」
 ルゥルは髪の毛を直しながら胸を張る。
 トリプルJは岳郎とルゥルを見て、ルゥルに耳打ちした。
「ところでルゥル、ここは婚姻地挙行地法で婚姻が成立することになっててな、ここなら十六歳過ぎたら結婚できるんだぜ」
 にやにやとささやいた。
「……はひっ? みにょおーーー」
 ルゥルの奇妙な声が響き渡る。
 ルベーノ・バルバライン(ka6752)は呵々大笑する。
「みぎゃみぎゃではない新たな悲鳴か? それともキノコシャウトは卒業して、新たなシャウトを検討中なのか?」
「違うですよー、ついつい変な声が出ました」
「ずいぶん大きくなったな」
 ルゥルの頭をルベーノが乱暴に撫でたため、また髪の毛を直す。
「久しいな、確か岳郎と言ったか。そちらも息災そうで何よりだ、ハッハッハ」
 リアルブルーキノコ狩りの時会っているため、声をかけるのも気安かった。
「今回は俺も貴重な男手の一人だろ、どんどんこき使ってくれて構わんぞ。その分、うまいものを食わせてもらえるのだろう?」

●狩に行く
 メイム(ka2290)はルゥルとたまに会っていた。
「ルゥル、大きくなったねー。あたしは約八年で、全く体形変わっていないから、あと少しでルゥルに追い越されるかも」
 エルバッハ・リオン(ka2434)はうなずく。
「身長が全く伸びないですし、見た目もハンターになったころのままです。成長が緩やかなエルフとはいえ、不安になってきますね。さすがにこのままというのはどうかと思いますから。……このままでいくと、私の身長を追う抜いて行くでしょうか」
 エルバッハは昔のルゥルを思い出し懐かしむ。一方で、変化がない自分を思い「いや、本当にすぐ身長を追い抜かれそうです」と愚痴を漏らしてた。
 成長はそれぞれとはいえ、感情は別だ。
「あと十年くらいしたら身長五メートルくらいの巨人になるんだよね。そうしたら家に入れないし森に潜んで暮らさないといけないかも」
 メイムはにっこりと岳郎に向かっていう。
「エルフってそういう種族なのか」
「知らなかったのですー」
 ルゥルも驚く。
 レイア・アローネ(ka4082)は以前のルゥルとの違いを見る。
「ルゥル! 久しぶりだな。しかし、大きくなったな……いや、大きくなっても可愛いのだが」
 ルゥルが照れる。
「エステルはずいぶんきれいなってしまったからな……」
 なぜかちょっと寂しそうだ。
「そうだ、岳郎についに会えたのだな。私が会わせてやると誓ったのに、結局自分で会ってしまったな。力になれずに済まない」
「違いますよ! 私は何もしていません。危険な戦いに赴いたのはレイアさんたちでしょ? ちゃんと約束を守ってくれています!」
「そういってくれると嬉しい……が、みぎゃ、は?」
「えっ?」
「……いや……」
 レイアの視線が泳ぎ、居心地が悪そうになる。
「さて、イノシシを狩ってこよう!」
「あ、私もいくよー。はやりのジビエ、きっとクマよりは食べやすいよー」
 レイアの言葉にメイムが手を上げた。
「キノコ採りは人手は足りているようだしな。料理は塩振って焼くだけなので、苦手なのだ」
 レイアは「エッヘン」となぜか胸を張った。
「それも料理ですよ」
「ル、ルゥルは優しいな」
 レイアはじわりと胸が熱くなる。
「はいはい、行くよー」
 レイアはメイムに引きずられるように立ち去った。
「では私は周囲を見てきますね。イノシシなどが来るかどうかはわかりませんが、念のため周囲の安全を見てきます。キノコ狩りや料理に集中できるように」
 エルバッハも出かけた。

●準備中
 挨拶を交わしたとき、木綿花はルゥルを褒める。
「ルゥルちゃんは一人で来られたのですが? すごいです。フレアちゃん、ポチをよろしくね」
 木綿花はルゥルのペットのフェレットのフレアとポチを会わせる。
 フレアは興味なさそうにしているため、ポチは少し寂しそうだ。
「フレアはこっそり近づくのです」
「そうなんですね。ポチはフレオちゃんを覚えていて、似ているのにって思っているのですね」
 それと、雪が降る前に採って干したキノコを持参したことを告げた。
 岳郎が興味津々にそれを見ているため、ルゥルが解説をする。
「キノコを一緒に取りに行ってもいいですか? 景色も見たいですし、ラカ様に写真も撮っておきたいです」
 木綿花は経緯も話した。
「オコジョのぬいぐるみとか売ってるよ?」
 岳郎が話すとルゥルが飛びついた。
「買うです」
「そうですね……ラカ様のお土産もそれにします」
 川で見る林の奥には紅葉が見える。
 木綿花はVOIDとの戦のさなか、鎌倉の山に作戦で行ったことがあった。奇襲のために息をひそめての山野行きだったため、こうして景色を見られるのは感慨深い。
 山にいる小動物や鳥に出会えるなら、それはより嬉しいものになると感じた。

「戦闘以外で唯一私が輝くときが参りましたぁ! 岳郎さん、BBQ以外のお料理の予定ってなんですぅ? おじやですぅ? ほうとうですぅ? 主食ばっかり作ってもアレなのでぇ」
 目をキラキラせたハナが言う。
 岳郎は主食を考えてはいなかったため、料理を検討していたハンターとのすり合わせとなる。
「キノコご飯と栗ご飯を作ります。あと、茶わん蒸しと……魚は……」
 エステルが首を傾げる。魚を釣るか料理を作るかのいずれかになりそうだ。
「野外用のガスバーナーとコッヘルを持ってきたの。これで、チーズリゾットが作れるわ。これはかぶらないと思ったの」
 マリィアは白ワインや米、大き目のクーラーボックスに入ったチーズ等を見せる。
「なるほど……私はダッチオーブンでキノコと鶏肉の炊き込みご飯と、鉄人の鍋で汁物代わりのほうとうですぅ」
 ハナは言う。
「では、場所を作ろう。おまえも手伝うだろう?」
「へいへい、俺も男手にカウントされてるたぁ思ったぜ」
「別にしなくてもいいぞ?」
 ルベーノとトリプルJが働いた。

 エルバッハは見回りをする。
 イノシシやクマがいれば、食料として調達しようとしていた。フライングスレッドは運ぶためにある。その上、討伐後に野生動物が来そうなら、グラビデフォールで消し去ろうとしていた。
「人を襲いに来るほどではないようですね」
 川や林の中から、仲間の声がする。
 エルバッハの口元が自然とほころんだ。
「一旦戻りましょう」
 今日のメーンは食事でもあるのだから。

 智里は準備で出来ることを手伝う。
 詩天に住み、そこの家臣として、年の三分の二は詩天以外を飛び回って情報を集めている。このような機会がないとなかなかリアルブルーには来ない。
 記憶から抜け落ちている大好きな祖父母を思い出したいと願っていた。そのため、大切な人がいても、心の中には大きな穴が開いていた。

 イノシシを獲ったレイアとメイムは解体する。
 木にぶら下げ、血抜きをし、ざっくり皮をはぐ。
「本当は置かなきゃいけないけれど、ご都合主義ですぐ食べられる♪」
 メイムは謎の歌を口ずさむ。
「内臓と頭とかは今すぐ難しいだろうから、引き取ってもらった方がいいよね」
「それで構わないだろう」
「四肢はあぶって食べられるように、胸肉などは煮て食べられるように始末してスープか豚汁か……豚? イノシシ汁だね」
 そして二人は戻る。

●キノコ、焼く
 トリプルJは料理と酒を飲食すしつつ、岳郎に絡む。
「木野、あんた飲めるんだろ? 別に帰りに運転してもらう必要はないんだ。一緒に飲もうぜ」
 話をしながら、食べて飲む。
「ルゥルは俺らにとっても可愛い妹分だ、ちょっとばかりマッシュルームフリークだがな」
「それを言われると、僕なんかもそうですよ」
「まあ、仲良くしてやってくれや」
 リアルブルーが行き来出来れば、互いに好きな物を見て付き合えるのだ。
「飯の後にジャグリング披露も何か違うとおもったからな。キャンプよろしく音楽だけは提供するぜ」
 クラシックギター片手にキャンプで踊る曲を、慣れぬ楽器と戦い奏でる。

「おいしいですー」
 ルゥルはあれこれ皿にとって食べる。
「私、イベント好きだからルゥルちゃんには結構お世話になっていますしぃ、ルゥルちゃんの秘密とかも結構知っています」
「はふいひ?」
 ルゥルは口に含んだものが熱かったり、色々ある。
「木野さんにアタックするなら協力しますよぅ」
「げふっ」
「男性へのアタック方法だけは色々しっていますからぁ、ルゥルちゃんにもいろいろ伝授できますよぅ。胃袋を掴むのが最大の一撃だと思いますぅ。ルゥルちゃんガンバですぅ」
「……そ、それは……男性でなくとも」
「その通りですよぅ」
 ハナは笑顔だが、ルゥルは真っ青だ。
「胃は肋骨の下あたりですよね……」
 ルゥルが指先を当てながら何か言っていた。
「意味違いますよね」
「胃袋を掴む、物理攻撃?」
 エルバッハとメイムは気付いたが、訂正はしない。
「ルゥルさん、ちょっぴり抜き打ち魔法……はできませんね。レイアさん、どうかしましたか?」
 エステルはレイアの困惑に気づいた。
「エステル、ルゥルが『みぎゃ』っていわないぞ」
 レイアはぽつりと告げる。
「そうですね、むしろ、レパートリーは増えていました」
「そ、それは……ルゥルの『みぎゃ』が聞きたいぞ!」
「それは難しい相談ですね」
 エステルにレイアは訴えたが、あっさり流された。
 ルゥルは木綿花と岳郎とキノコの話をしていた。
「こちらでも採れるキノコもあるのですよね?」
「全く同じかどうかはわからないな」
「なるほど」
 木綿花はキノコに詳しいわけではないけれども、土地で食べている物は理解している。
「それにしても色付く木々も美しいです……」
 背中にフレアを乗せたポチが肉を要求している。その鼻はどこか掘ったのか土がついている。
 適温の肉をもらい喜んでいた。
「私はポルチーニやアンズ茸が好きだけど、こういうのもよいわね」
 マリィアがキノコの種類を言うと、岳郎がすかさず話してきた。そこから、リアルブルーの話に及ぶ。
 マリィアはスワローテイルに参加してリアルブルーにほぼ戻ってきていない。だからこそ、VOIDがどうなったかなど気にはなっていた。特にないから話題になっていないとはわかっていても。
 岳郎の話は的確でわかりやすかった。

「俺たちはそう変わらんが、この年の子供は大きくなるのも早いものだな……いや、俺もずいぶん年寄りじみた」
 ルベーノは食べながら、ルゥルの動きを見ていた。
 成長するルゥルと成長できずプエル(kz0127)となったニコラス・クリシスを一瞬、思い浮かべた。そして、首を横に振る。もしも、はないのだから。

「おいしいです」
 智里はキノコ焼きや料理に舌鼓を打つ。
 皆でワイワイと騒ぐのは楽しいが、焦燥感や喪失感が強くなる。
「まるで、ホームパーティーみたいで楽しいで、す……」
 やはり、記憶の彼方でこのような状況でそばにいたのは祖父母だと感じる。
「どうしたのです?」
「お、美味しすぎて、涙が出ちゃいました」
 智里は涙をぬぐうが、ルゥルは首を横に振る。
「お話は聞けますよ?」
 智里はルゥルの鋭い言葉に驚く。今話すことでもないし、子どものように泣けないけれども、胸の奥は温かくなる。
「シャッツもいるのだから」
 心の中でつぶやいた。

●また、会いましょう!
「呼んでくれて嬉しいぞ、ルゥル。何かあったらまた声をかけてくれ。俺は同盟の一地方で多くの仕事を受けているので、他はあまり知らんし、リアルブルーに来ることもほぼないが。おまえからの依頼があれば、優先して受けよう。だから、お前もクリムゾンウェストに来てくれ」
 ルベーノはルゥルと岳郎にそれぞれ告げる。
「そうですね。完全に行き来が可能になったら、是非、木野さんもクリムゾンウェストにお越しください。政治形態は違ってもキノコ狩りは楽しめますし、何よりルゥルが喜びます」
 マリィアが続けた。まるで母親が娘のために言うように、優しく穏やかだ。
 岳郎はうなずく、キノコは気になるものだ。
「ルゥル、今までありがとう。そのうち、うちの娘にも会いに来てね。まだ、小さくて連れてこられなかったけど、エドラっていうのよ」
「マリィアさん! 遊びに行きますね!」
 マリィアは笑う。
「このような平和がずっと続けばいいのですけど、いつかは再び戦いが起こるのでしょうか。まぁ、そのようなことにならないように努力しないといけないですね」
 エルバッハは片づける仲間たちを見てつぶやく。
「また三年後、同じように集まれたらいいですね」
 エステルは微笑む。
 戦い後三年でも一歩一歩前に進む実感や、人々の笑顔が増えただろう。
 エステルは辺境の復興の手伝いやレクエスタに参加していた。顔を合わせるハンターもいるが、なかなか会えない人もいる。
「そうだよな、また、会えるなら、それは平和が続いている証しだな」
 トリプルJは応じ、山を見つめる。
「ルゥルちゃん、今日は本当にありがとう。応援していますから」
「そうですよぅ。料理を教えますよぅ」
 智里とハナの言葉にルゥルが「だからっ、何をですかぁあ」と悲鳴が上がる。
 レイアはしおれる「みぎゃ、じゃない」と。
「レイアさん……」
 メイムは岳郎に余った肉等を渡しながら笑う。
「ルゥルちゃん、ぬいぐるみを買いに行きましょう」
 木綿花はルゥルに声をかけた。緑と色づく木々と空をもう一度見る。鳥の声も木々の音も、心にしみた。

 良き未来のための一歩を、皆の手で。

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重体一覧

参加者一覧

  • タホ郷に新たな血を
    メイム(ka2290
    エルフ|15才|女性|霊闘士
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 部族なき部族
    エステル・ソル(ka3983
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • Mr.Die-Hard
    トリプルJ(ka6653
    人間(蒼)|26才|男性|霊闘士
  • 我が辞書に躊躇の文字なし
    ルベーノ・バルバライン(ka6752
    人間(紅)|26才|男性|格闘士
  • 私は彼が好きらしい
    穂積 智里(ka6819
    人間(蒼)|18才|女性|機導師
  • 虹彩の奏者
    木綿花(ka6927
    ドラグーン|21才|女性|機導師

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/10/17 22:32:49