ゲスト
(ka0000)
天空の騎士たち
マスター:植田誠

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/11/07 19:00
- 完成日
- 2019/11/29 14:52
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
グライシュタッド上空において、今まさに因縁の戦いに決着がつかんとしていた。
「終わりだ、フリッツ!!」
帝国軍第五師団団長、ロルフ・シュタットの振るう双剣がフリッツ・バウアーの持つ二つの鞭をはじく。同時に、グリフォンのくちばしが深々とフリッツの胴を貫く。
「グッ…………」
暴食の歪虚にして帝国の空を脅かしてきたフリッツ。かつては帝国の空を担う帝国第五師団の精鋭たる団長、副団長を倒し、多くのグリフォンを屠りその戦力を激減させた。
だが、それも過去の話となった。
今の第五師団はかつてのそれよりも精強であり、その数も多い。ハンター達の協力、グリフォンの大幻獣との出会い。それによるグリフォンの増加。それでも、フリッツが第五師団を抑えられれば状況は違ったはずだ。だが、個の戦闘力という点でもフリッツはいまやロルフに及ばない。
「まだだ……まだ……終わりでは……グリフォンライダーに…………死…………」
致命傷を受けたフリッツはそのまま乗騎から落とされ、言葉だけを残し崩れていき、やがて消えた。最期の時までその怨嗟の声が消えることはなかった。
「……」
その様子をロルフは言葉無く見つめていた。仇敵を倒したことへの高揚感か、あるいはこうなるまで戦い続けることしかできなかったフリッツへの哀れみか……そう言った感情が表出することはなかった。
「さて、師団長。後始末をつけねばなりませんな」
支援に徹していたウェルナー・ブラウヒッチ兵長が、ロルフのそばにグリフォンを近づける。周辺では今なお激しい戦いが続いている。
オットー・アルトリンゲン、サラ・グリューネマン両兵長は1体ずつ。他のグリフォンライダーも複数人でまとまって敵……フリッツの率いていた量産型の剣機リンドヴルムと戦っている。
「よくこれだけの数をそろえたものだね……こいつらを地上に降ろすわけにはいかない。殲滅するよ」
自身の責務を果たすべく、淡々とロルフは言った。
そう、フリッツは倒したが、戦いは終わっていない。この空の敵たちと……地上へ落下していったコンテナ群。それらを処理しきって初めて、戦いの勝利となる。
●
「最後の墓参り……なんて思って寄ったが、ずいぶん大変なことになってるな」
エルウィンは双眼鏡を手に空を見ていた。
「……とりあえずフリッツは倒せたみたいだな。後はデカブツと落ちてくる土産の処理がうまくいくか……そんなとこか?」
そう言って横にいた黒衣の男に声をかける。
男は小さくうなずくと、敬礼のような動作をとるとともに跳ぶ。同時に、周囲に雷鳴が響渡り、男はエルウィンの視界から消えていた。
「……第五師団、絶火の騎士、それにハンターか。派手な戦いになりそうだ」
双眼鏡ごしに、エルウィンは展開していく絶火の騎士やハンター達の姿を捉えていた。
グライシュタッド上空において、今まさに因縁の戦いに決着がつかんとしていた。
「終わりだ、フリッツ!!」
帝国軍第五師団団長、ロルフ・シュタットの振るう双剣がフリッツ・バウアーの持つ二つの鞭をはじく。同時に、グリフォンのくちばしが深々とフリッツの胴を貫く。
「グッ…………」
暴食の歪虚にして帝国の空を脅かしてきたフリッツ。かつては帝国の空を担う帝国第五師団の精鋭たる団長、副団長を倒し、多くのグリフォンを屠りその戦力を激減させた。
だが、それも過去の話となった。
今の第五師団はかつてのそれよりも精強であり、その数も多い。ハンター達の協力、グリフォンの大幻獣との出会い。それによるグリフォンの増加。それでも、フリッツが第五師団を抑えられれば状況は違ったはずだ。だが、個の戦闘力という点でもフリッツはいまやロルフに及ばない。
「まだだ……まだ……終わりでは……グリフォンライダーに…………死…………」
致命傷を受けたフリッツはそのまま乗騎から落とされ、言葉だけを残し崩れていき、やがて消えた。最期の時までその怨嗟の声が消えることはなかった。
「……」
その様子をロルフは言葉無く見つめていた。仇敵を倒したことへの高揚感か、あるいはこうなるまで戦い続けることしかできなかったフリッツへの哀れみか……そう言った感情が表出することはなかった。
「さて、師団長。後始末をつけねばなりませんな」
支援に徹していたウェルナー・ブラウヒッチ兵長が、ロルフのそばにグリフォンを近づける。周辺では今なお激しい戦いが続いている。
オットー・アルトリンゲン、サラ・グリューネマン両兵長は1体ずつ。他のグリフォンライダーも複数人でまとまって敵……フリッツの率いていた量産型の剣機リンドヴルムと戦っている。
「よくこれだけの数をそろえたものだね……こいつらを地上に降ろすわけにはいかない。殲滅するよ」
自身の責務を果たすべく、淡々とロルフは言った。
そう、フリッツは倒したが、戦いは終わっていない。この空の敵たちと……地上へ落下していったコンテナ群。それらを処理しきって初めて、戦いの勝利となる。
●
「最後の墓参り……なんて思って寄ったが、ずいぶん大変なことになってるな」
エルウィンは双眼鏡を手に空を見ていた。
「……とりあえずフリッツは倒せたみたいだな。後はデカブツと落ちてくる土産の処理がうまくいくか……そんなとこか?」
そう言って横にいた黒衣の男に声をかける。
男は小さくうなずくと、敬礼のような動作をとるとともに跳ぶ。同時に、周囲に雷鳴が響渡り、男はエルウィンの視界から消えていた。
「……第五師団、絶火の騎士、それにハンターか。派手な戦いになりそうだ」
双眼鏡ごしに、エルウィンは展開していく絶火の騎士やハンター達の姿を捉えていた。
リプレイ本文
●
グライシュタッド上空による戦闘。その相手たる剣機リンドヴルムから放出されたコンテナ群と、それに入った歪虚群。それに対し、ハンター達は分散してことに当たる。
「コンテナ……あれか。カートゥル!」
落下する物体の中でも重要な目標は大型のコンテナ。それを見つけた鞍馬 真(ka5819)はすぐさまワイバーンのカートゥルにサイドワインダーを使用させる。風の名を冠するワイバーンはその名を体現するかのようにすさまじいスピードで飛ぶ。
「バーンちゃんと空戦参加は久しぶりですぅ。大体CAM戦でしたからぁ」
そう言って星野 ハナ(ka5852)はワイバーンのバーンちゃんの背から歪虚たちをにらむ。
「さぁ頑張りましょう……歪虚は、全ブッコロですぅ」
飛んで行った二人を見送るディーナ・フェルミ(ka5843)は、足元のグリフォンライダーに声をかける。
「ここまでありがとう。後は自力で飛んでいきます」
自身の乗機刻騎ゴーレム「ルクシュヴァリエ」を福音の風によって飛行状態に移行させる。
「スペクルム型のルクシュヴァリエの、ちょっと良いとこ見てみたい! なの!」
ふわりと浮かび上がるルクシュヴァリエ。その時生じた風でスカートが巻き上がりそうになった北谷王子 朝騎(ka5818)はパッと押さえる。朝騎の乗騎は幻獣でもCAMでもない。手にする魔箒「Shooting Star」だ。
「……そんなパンツで大丈夫でちゅか?」
箒のままで飛ぶ人が自分以外にもいるのだろうかという自嘲ともとれる言葉をつぶやきながら朝騎はとんだ。何しろ飛ばなければ戦いようがないのだからしょうがない。箒の魔法を解き放ち、空へと舞い上がった。
「……お気をつけて」
ワイバーンのLaochanの背から朝騎を見つめるソナ(ka1352)。回復手段を持っていないうえ幻獣による援護もないため、心配しているのだ。とはいえ、分散して当たる必要がある以上常にそばにいるというわけにもいかない。だが、多少気にしながら戦おうとソナは考えた。
「さぁJ9、この大空の平和もざくろたちが護るよ!!」
最後に時音 ざくろ(ka1250)が威勢よく声を上げる。それに従うように、グリフォンの蒼海熱風『J9』もまた声を上げた。
●
「久々の純粋な空戦だね。楽しもう、カートゥル」
サイドワインダーによる加速を生かしカートゥルはコンテナに肉薄。そのすさまじい速さに護衛と思しき翼竜は反応できない。真の構える武器にはすでに蒼炎華により蒼いオーラが纏わされている。
そのまま、真は魔断を使用。付与された蒼いオーラが刺突とともに放出され、コンテナを両断した。
「もろいな、この程度か?」
そのまま駆け抜けるカートゥル。数瞬の後、コンテナが爆発する。その爆風を背に受けながらも、回避行動をとる。
「回避運動は任せた。こっちは破片の処理だ」
後ろを向き迫る破片を斬り払いながら、真は符を放る。風雷陣により大きな破片の処理を行うためだ。
カートゥルは旋回を始める。爆発の余波がある程度収まったところで残った翼竜と対峙しようというのだ。
「これで気を取られるものもない。思い切りやろう」
再び蒼炎華を使用する真。周囲には翼竜以外はいない。先ほどの爆発で周辺の敵は散ったようだ。尤も、すぐに集まってくるだろうが。
「さぁ始めよう。1対1のうちにな」
突撃。それに対し翼竜は大きく息を吸うような動作をとる。同時に口周辺が鈍く光る。光弾を打とうというのだろう。
「よけるんだ、カートゥル!」
対し真は桜幕符を使用。桜吹雪のような幻影で翼竜がこちらを見失っている隙に、バレルロールを混ぜつつ瞬時に後ろをとる。
「いい位置だ、このまま突っ込む!」
サイドワインダーを使用して一気に加速するカートゥル。それに合わせるように真は剣を突き出す。
振り向いた翼竜の口からえぐりこむように撃ち込まれた刺突一閃。そのまま翼竜の胴をも貫通し、絶命せしめた。
「よし、上手くいったな」
真はそう言うと恐れず敵に突っ込んでいったカートゥルをねぎらうように撫でる。だが、戦いはまだ終わりではない。
周囲には爆発の余波から逃れた敵が集まりつつあった。
「続きだ。最後まで油断しないように気をつけよう」
風雷陣を使いながら近寄る敵を処理しながらも、包囲されないよう飛び回るカートゥルと真。もはや強敵の存在はなく、ただ雑魚を処理するだけの時間となった。尤も、この作業もそれなりに苦痛を伴うものではあったが。
●
ハナは自身が担当するコンテナを発見するとともに一直線に飛んでいく。
「小型に纏わりつかれる前にコンテナは破壊したいですねぇ」
呟きながらも、ハナは人馬一体を使用。
互いのマテリアルを高めあいながら、ハナはバーンちゃんとともにコンテナへ迫る。
射程に入ると同時にハナは五色光符陣の準備。コンテナを狙うつもりだったが、翼竜がそれを防ぐために割って入るような動きを見せる。
反応したのはバーンちゃん。マテリアルを纏うとともに加速するディープインパクトを使用。発生する衝撃波でダメージを与えながら突進。その衝撃で翼竜を突破しつつコンテナを攻撃。さらに、すぐさま上昇しつつ反転。ハナの視界に翼竜とコンテナが同時に入る位置取りにつける。
「いい位置ですぅ。これならどっちも狙えますねぇ」
打ち下ろし気味に放られた符により結界が張られ、その内部が光で焼かれる。渾身の五色光符陣が翼竜にダメージを与えつつコンテナを破壊、爆発させる。
翼竜の方はダメージを受けた状態からの爆発を受け飛行状態を維持できず墜落する。ただ、撃破には至っていないようなのですぐに復帰してくるだろう。
「破片も落としちゃいけませんよぉ」
バーンちゃんは降下。魔竜刃により強化されたファイアブレスを使用して散らばる破片を可能な限り範囲にまとめながら攻撃し、焼き尽くす。
「周りの敵もそのまま焼いちゃいましょう、バーンちゃん!」
さらにバーンちゃんはファイアブレスを使用。集まり始めていた歪虚を攻撃する。2発、3発……
「……! 下ですぅ!!」
バーンちゃん即座にバレルロールを発動し回避。落下していた翼竜が復帰し、光弾を打ち込んできたのだ。
だが、慌てることなくハナはドローアクションで符を即時再装填しつつ、五色光符陣を使用。それ以上の追撃をさせることなくこの攻撃で翼竜を今度こそ落とす。
「よし……さ、一度離れますよぉ」
翼竜に集中していたため集まってきた歪虚に包囲されつつあったハナは、バーンちゃんにディープインパクトを使用させる。本来は周囲を敵に包囲されたときに使用するマニューバであり、今こそが正しい使い時だった。
衝撃波で周囲の敵を倒しつつ包囲から脱するハナ。ここで全体の状況を確認。全体的には有利に進んでいると思われる。
「あとは雑魚ばかり……どんどん倒していきますよぉ」
そう言って、ハナは余裕をもって符を装填しながら、次の敵を見据えていた。
●
「飛んでいられる時間がみんなより少ないから、早期撃破を狙わなくちゃなの」
グリフォンやワイバーンと比べ空中での機動性という点ではやはり一歩劣ることになるルクシュヴァリエ。だが、福音の風は単純な術式だからこそのパワーがあり、その機動性を十分に補ってくれていた。
「見えた。まずはこれなの!」
ディーナはルクシュヴァリエの肩に搭載されたアークスレイの照準を合わせる。目標はコンテナ。当たればかなりのダメージが期待できる。
「アークスレイ……発射!」
増幅されたエネルギーが放出され、コンテナを撃ち抜く……かに、思われた。
だが、その射線上に割って入ったのは翼竜だ。その身をもって盾としてコンテナへの攻撃を防いだ。その献身は見事であったと言えるが、直撃を受けてしまったため当然翼竜の方も無事では済まない。ダメージによるものか、反撃しようにも大きく態勢を崩している。
ディーナはさらに接近。飛行時間はあまり多くは無い。いや、飛行だけならなんとかなるが、ある程度の高度まで降りないと落下時のダメージが無視できない。それを考慮するやはり時間は無い。
「だから、まとめていくの」
ルクシュヴァリエの腕が膨大なマテリアルによって光輝く。それらはディーナ自身の持つ力が機体に宿り放出される必殺の一撃となる。
「『光あれ』」
ルクシュヴァリエから放たれた光の刃が翼竜を巻き込みながらコンテナを斬る。
1振り目、翼竜を両断するもコンテナはまだ健在。2振り目、コンテナに大きな亀裂が見える。3振り目を構えようとしたとき、コンテナは爆発した。これでディーナは最低限の役割を果たしたと実感した。
「後は周りの敵なの」
福音の風を再使用しながら、周辺を確認するディーナ。歪虚はまだ多数残っており、ディーナを目標に接近してきていた。
それらに対し、ディーナは再度光あれを使用して薙ぎ払う。
この攻撃は一直線であるため、周囲に群がる敵をまとめてという風にはいかない。そのため、かなり近くまで歪虚の接近を許すことになる。だが、それもまた狙い通り。ディーナはある程度敵がまとまったところでセイクリッドフラッシュを使用。自身の周囲を光の波動によって攻撃する魔法だ。
この二つによる殲滅能力は非常に高く、自身に群がる歪虚を一掃したのち、ディーナは余裕をもって地上まで降下していった。
●
「見つけた。でも距離がある……J9!」
同時に、収納されていた幻獣用キャノンが展開される。
「距離測って……ファイヤー!」
放たれたキャノン。だが、翼竜が間に割って入って止める。ダメージは大きかったと見えるが、まだ健在だ。
「やっぱり直接落とすしかないね。行くよJ9!」
ゲイルランパートを使用し、コンテナ破壊のため接近するざくろ。行く手を阻もうと小型の歪虚が接近してくる。
「すべて凍てつけ、フリージングレイ!!」
それに対しざくろはフリージングレイを使用。直線状の敵を一挙に葬り、道を開く。
だが、その先には最後の砦とばかりに翼竜が待ち構える。
「来るよJ9!」
息を吸うような動作。恐らくは火炎のブレスか。
「急旋回!!」
一挙に進もうとしていたころに急旋回の指示が出される。グリフォン特有の安定性はざくろの指示を完璧に実行し、ブレスを急速回避する。これはJ9が戦時において冷静になる性格も一役かっていたかもしれない。
そのままざくろは接近。通り抜けざまに一撃を浴びせる。
「さっきのお返しだよ!」
だが、まだ本格戦闘には入らない。先にコンテナを落としたい。
「J9、進路そのまま! 行くよ……」
目標を捉えた。
「絶対地上に落とさせはしない。かがやけ! デルタエンド!!」
渾身のデルタレイ。コンテナに直撃し、爆発を引き起こす。
「っ! J9! 姿勢制御!」
爆風にあおられながらもざくろはJ9に姿勢制御を指示。
飛び散る破片に拡散ヒートレイを打ち込みながら周囲の状況、とりわけ翼竜の動向に注意する。
「さぁ、これで一騎打ちになるかな」
雄叫びを上げながら突進してくる翼竜に対し、ざくろは剣を振りかぶる。
「超・重・剣……横一文字切り!!」
この一撃で、すれ違いざまに竜を両断した。
「ふぅ……」
竜を撃破し、大きく深呼吸するざくろ。だが、息を吐くにはまだ早い。敵はまだまだ残っている。
「さぁJ9、まだまだ頑張らないとね!」
●
戦場を最もよく観察していたのはソナだろう。ソナは周辺を監視しつつインカムを利用して情報の収集やコンテナの位置把握などに勤めていた。その結果、とりあえず現状コンテナのうち漏らしは無いことがわかっていた。
となれば、あとは自分自身が担当しているコンテナを漏らさないようにするのが大事だ。
「さぁLaochan、頼りにしてるわ。よろしくね」
目標を捉えたソナはLaochanにサイドワインダーを使用させて急速に接近する。
「Laochan、ファイアブレスを」
翼竜が射程に入った段階でファイアブレスを使用させる。
だが、こちらの射程と向こうの射程も同じぐらい。ソナは翼竜の予備動作を視認。
「回避を」
短い指示を受け、Laochanはバレルロールを使用。体を回転させつつ回避行動をとる。その数瞬後に光弾が通過していく。
「……竜の方を先にと思いましたが」
バレルロールを使用しながら駆け抜けるLaochan。その位置は翼竜を通り過ぎ、その後ろに位置していたコンテナに迫る勢いだった。
翼竜の方もすぐさま追いすがってくるが、もはや遅い。
「コンテナを守ろうというのですね。ですが、もうこちらの射程です」
ソナは手をかざすとプルガトリオを発動。縛鎖によりその範囲を広げた無数の闇の刃がコンテナを貫く。同時に激しい音と光を放ちコンテナが爆発した。
「……回避任せます」
後ろに迫る翼竜への対応をLaochanに任せつつ、ソナは一呼吸おいてセイクリッドフラッシュを使用。爆発で飛んできた破片を破壊する。
同時に、体が大きく振られる。Laochanが回避行動をとったのだ。ソナはLaochanをつかむ手を少し強くしつつ、次に倒すべき相手を見据える。
「Laochan」
声に反応してLaochanが翼を広げる。サイドワインダーを使用して急速移動。
友、小さな英雄を意味する名を持つワイバーンは、臆せず翼竜に突っ込み、そこから翼に取り付けられた刃をもって翼竜を断つ。
「とどめです」
刃は深く食い込み大きな傷をつけたが、翼竜はまだ飛ぶだけの力は残していた。そこに、ダメ押しのごとくソナがプルガトリオを使用。コンテナ同様に無数の刃を突き刺し、翼竜を倒した。
「これで良し……後はこのまま小型歪虚を倒していくだけですね。あと少し頑張りましょう」
自身の役割は果たした。コンテナと翼竜が倒せればあとはどうとでもなる。ここで少し余裕のできたソナはLaochanをなでながらも、朝騎の方へ注意を向けた。
●
朝騎は超覚醒を使用した。すでに覚醒状態にある覚醒者が守護者としての能力を解放するためのスキルだ。降り注ぐ多数の敵を倒すためには必要なことであると思われた。
さらに朝騎は心技体、鋼の如しを使用する。マテリアル防壁により頑丈さとともに神聖な輝きをもたらし、周辺の歪虚を自身に引き付けようという作戦だ。
「さぁ、星の守護者の力を見せてやるでちゅ」
朝騎は飛行しつつ、そのスキルで敵を引き寄せていく。そして、ある程度集まったタイミングで……
「そろそろ、頃合いでちゅね」
符を放る。五色光符陣だ。結界内に生じた光が歪虚を一瞬で焼き尽くす。
「ふむ……大した相手じゃないでちゅね」
極めて高い威力である。同じスキルを使うハナも極めて高い威力だが、朝騎のそれはさらに上を行く。とはいえ、今回の小型歪虚に対してはオーバーキルが過ぎると見える。
さらに朝騎はもう一発五色光符陣を使用。歪虚を撃破していく。ただ、ここで問題が生じた。
「……邪魔な奴らでちゅね」
手持ちの符のリロードと、飛行を維持するための移動などで、攻撃が可能なタイミングが少なくなってしまい、どうしても敵に纏わりつかれてしまうのだ。
尤も、超覚醒と盾での受けのおかげでダメージは皆無と言っていいが、あまり纏わりつかれてしまうと飛行の邪魔になって墜落の危険も出てくるかもしれない。
心技体、鋼の如しで敵を引き付けているのもこの際はマイナスに働いてしまったのだろう。
それでも歪虚を倒すという点だけに関しては問題なかった。だが、朝騎の動きは迎撃に寄りすぎた。
「朝騎さん! コンテナが!」
不意にソナの声が響く。見るとコンテナの高度が戦闘高度を下回っている。
「む……これ以上放置はできまちぇんね」
敵を殲滅してからと考えていたが、そうもいっていられない。加速、突撃をかける朝騎。このままではまずい。確実に落とすためには切り札を切るよりほかない。
「仕方ないでちゅね……これが、星の守護者の力でちゅ!!」
朝騎は星の救恤者を使用。狙いはコンテナ。翼竜が迫ってきているが、構ってはいられない。救恤の力を全身に巡らせたうえで放たれた限界を超えた一撃がコンテナを撃ち抜き、爆発を巻き起こす。本来は仲間との連携でその真価を発揮する技だが、単独で使用しても十分以上に強い。星の守護者は伊達ではないということだ。
だが、撃ち終わりを狙って翼竜が攻撃を仕掛けてくる。無論超覚醒により耐久力も上がっているので問題ないが……
「……っ」
翼竜は体当たりを慣行。態勢を崩した朝騎は箒から落ちかけるもなんとかこらえる。
反撃を行おうと、朝騎は符を構える。だが、その符が使用されることはなかった。
「…………」
絶火の騎士、ヒンメル達だ。彼らが翼竜を滅多刺しにしていた。
「いつの間にかヒンメル様たちの戦闘高度まで降下してしまってたんですね」
朝騎と並ぶようにソナがLaochanをつける。そのままヒーリングスフィアを使用して朝騎の傷を癒した。
「助かりまちゅ。それじゃ上に……」
「いえ、もうその必要はなさそうです」
二人が空を見上げると、いつの間にか雲が切れ始めており、そこからのぞくのは晴れ間と味方と、恐らくは最後の1体であろう剣機が墜落してくる様であった。
●
戦闘は終わった。ハンター達は地上に降り立ち、またさらに高高度で戦っていた帝国兵も降りてきていた。
ハンター達にさしたる怪我人無し。朝騎が多少怪我をしたがすでにソナが治療している。ただ、先ほどからおしりをさすっているが……
「箒で長く飛びすぎた後遺症でちゅ……」
「それは……治しようがありませんね」
苦笑しつつソナが言った。
一方、帝国兵の方はそれなり以上の被害が出ているようだ。怪我人も多い。英霊であるヒンメル達は未だ空で警戒に当たっているようだ。
「万が一に備えて、私たちも空中で哨戒に当たろうか。兵にその余力はなさそうだしね」
そう言ってカートゥルとともに飛び立つ真。それに続くようにざくろもJ9とともに飛び立った。
地上の方ではディーナが負傷者への応急処置に走り回っている。同じ聖導士のソナ。それに朝騎とハナも手伝いに追われることになった。
「すまない」と頭を下げた帝国兵に対し、ディーナは首を振る。
「そのための聖導士なの。それよりも全員所在確認できてるかな? 不明者がいるなら探しに行くよ?」
「それなら私が。これだけ派手な戦闘なのでぇ、周辺の被害も確認したいですしぃ。それに……」
どこかで見たような顔がいた気がした、というのは言葉には出さず、ハナはそのまま飛び出していった。
空に上がったハナは先の話をざくろと真にも伝え、別れて戦場全域の確認を行った。
(あの鉄仮面……理由は分かりませんけど第五師団の関係者でしょうねぇ。後で後悔しないよう、会える時に会っといたほうがいいと思うんです)
それはハナの優しさだったのだろうか。だが、結果だけ言うと、ハナの探し人……エルウィンは少なくとも戦場とその周辺にはすでにいなくなっていた。応急処置などで走り回っていた時間もあったためかもしれない。尤も、仮に見つけられたとしてハナが連れて行こうとしてもついてはこなかっただろうが。
しばらくして真、ざくろ、ハナは戻ってきた。周辺の被害は大したことはなかった。歪虚が大挙してきたことに影響を受け雑魔が現れたことで多少被害はあったそうだが、大きな問題ではない。落下物の処理にハンターたちが意識を割いたおかげと言えるだろう。
「おかげで、ヒンメルの方もディーナが心配するような被害はなかったよ」
「それはよかったの。だけど、掃討戦に協力してもらったんだもの、私たちもお返ししたいの。ヒンメルも第五師団も、同じ帝国の天空を守護する騎士様たちだと思うから」
「……分かった、後で話してみるといい」
「そうさせてもらうの!」
納得したようにディーナは言った。
「それにしても、邪神を倒して少し平和に近づいたけど、こうしてまだ人々を脅かす敵は残っているんだね」
J9をいたわるように撫でながらざくろが呟く。
「確かに……一緒にこうして戦うのももうないのかもしれないと思っていましたが……」
「まぁそうじゃないと守護者の働きどころがないのでちゅ」
「私も戦闘狂ってわけじゃないけど、空での戦いは好きだからね……でも、本当は戦う機会なんて無い方が……」
「無い方がいいに決まってますぅ。でも、実際のところはぁ、全く無くなるってことはないんでしょうねぇ」
「あぁその通りだ」
魔導公害の影響で現れる雑魔、いろいろな理由により犯罪に身をやつす犯罪者。ハンターたちが力を振るうべき場はこれからもまだまだある。
「少なくはなるだろう……なってほしいと思う。そのためにも、まだまだ君たちを頼りにさせてもらうかもしれない。その時はまたよろしく頼むよ」
こうして、グライシュタッド上空での戦闘は終わった。
第五師団は仇敵を倒し、ハンター達のおかげで地上への被害もほとんどない。完勝である。
グライシュタッド上空による戦闘。その相手たる剣機リンドヴルムから放出されたコンテナ群と、それに入った歪虚群。それに対し、ハンター達は分散してことに当たる。
「コンテナ……あれか。カートゥル!」
落下する物体の中でも重要な目標は大型のコンテナ。それを見つけた鞍馬 真(ka5819)はすぐさまワイバーンのカートゥルにサイドワインダーを使用させる。風の名を冠するワイバーンはその名を体現するかのようにすさまじいスピードで飛ぶ。
「バーンちゃんと空戦参加は久しぶりですぅ。大体CAM戦でしたからぁ」
そう言って星野 ハナ(ka5852)はワイバーンのバーンちゃんの背から歪虚たちをにらむ。
「さぁ頑張りましょう……歪虚は、全ブッコロですぅ」
飛んで行った二人を見送るディーナ・フェルミ(ka5843)は、足元のグリフォンライダーに声をかける。
「ここまでありがとう。後は自力で飛んでいきます」
自身の乗機刻騎ゴーレム「ルクシュヴァリエ」を福音の風によって飛行状態に移行させる。
「スペクルム型のルクシュヴァリエの、ちょっと良いとこ見てみたい! なの!」
ふわりと浮かび上がるルクシュヴァリエ。その時生じた風でスカートが巻き上がりそうになった北谷王子 朝騎(ka5818)はパッと押さえる。朝騎の乗騎は幻獣でもCAMでもない。手にする魔箒「Shooting Star」だ。
「……そんなパンツで大丈夫でちゅか?」
箒のままで飛ぶ人が自分以外にもいるのだろうかという自嘲ともとれる言葉をつぶやきながら朝騎はとんだ。何しろ飛ばなければ戦いようがないのだからしょうがない。箒の魔法を解き放ち、空へと舞い上がった。
「……お気をつけて」
ワイバーンのLaochanの背から朝騎を見つめるソナ(ka1352)。回復手段を持っていないうえ幻獣による援護もないため、心配しているのだ。とはいえ、分散して当たる必要がある以上常にそばにいるというわけにもいかない。だが、多少気にしながら戦おうとソナは考えた。
「さぁJ9、この大空の平和もざくろたちが護るよ!!」
最後に時音 ざくろ(ka1250)が威勢よく声を上げる。それに従うように、グリフォンの蒼海熱風『J9』もまた声を上げた。
●
「久々の純粋な空戦だね。楽しもう、カートゥル」
サイドワインダーによる加速を生かしカートゥルはコンテナに肉薄。そのすさまじい速さに護衛と思しき翼竜は反応できない。真の構える武器にはすでに蒼炎華により蒼いオーラが纏わされている。
そのまま、真は魔断を使用。付与された蒼いオーラが刺突とともに放出され、コンテナを両断した。
「もろいな、この程度か?」
そのまま駆け抜けるカートゥル。数瞬の後、コンテナが爆発する。その爆風を背に受けながらも、回避行動をとる。
「回避運動は任せた。こっちは破片の処理だ」
後ろを向き迫る破片を斬り払いながら、真は符を放る。風雷陣により大きな破片の処理を行うためだ。
カートゥルは旋回を始める。爆発の余波がある程度収まったところで残った翼竜と対峙しようというのだ。
「これで気を取られるものもない。思い切りやろう」
再び蒼炎華を使用する真。周囲には翼竜以外はいない。先ほどの爆発で周辺の敵は散ったようだ。尤も、すぐに集まってくるだろうが。
「さぁ始めよう。1対1のうちにな」
突撃。それに対し翼竜は大きく息を吸うような動作をとる。同時に口周辺が鈍く光る。光弾を打とうというのだろう。
「よけるんだ、カートゥル!」
対し真は桜幕符を使用。桜吹雪のような幻影で翼竜がこちらを見失っている隙に、バレルロールを混ぜつつ瞬時に後ろをとる。
「いい位置だ、このまま突っ込む!」
サイドワインダーを使用して一気に加速するカートゥル。それに合わせるように真は剣を突き出す。
振り向いた翼竜の口からえぐりこむように撃ち込まれた刺突一閃。そのまま翼竜の胴をも貫通し、絶命せしめた。
「よし、上手くいったな」
真はそう言うと恐れず敵に突っ込んでいったカートゥルをねぎらうように撫でる。だが、戦いはまだ終わりではない。
周囲には爆発の余波から逃れた敵が集まりつつあった。
「続きだ。最後まで油断しないように気をつけよう」
風雷陣を使いながら近寄る敵を処理しながらも、包囲されないよう飛び回るカートゥルと真。もはや強敵の存在はなく、ただ雑魚を処理するだけの時間となった。尤も、この作業もそれなりに苦痛を伴うものではあったが。
●
ハナは自身が担当するコンテナを発見するとともに一直線に飛んでいく。
「小型に纏わりつかれる前にコンテナは破壊したいですねぇ」
呟きながらも、ハナは人馬一体を使用。
互いのマテリアルを高めあいながら、ハナはバーンちゃんとともにコンテナへ迫る。
射程に入ると同時にハナは五色光符陣の準備。コンテナを狙うつもりだったが、翼竜がそれを防ぐために割って入るような動きを見せる。
反応したのはバーンちゃん。マテリアルを纏うとともに加速するディープインパクトを使用。発生する衝撃波でダメージを与えながら突進。その衝撃で翼竜を突破しつつコンテナを攻撃。さらに、すぐさま上昇しつつ反転。ハナの視界に翼竜とコンテナが同時に入る位置取りにつける。
「いい位置ですぅ。これならどっちも狙えますねぇ」
打ち下ろし気味に放られた符により結界が張られ、その内部が光で焼かれる。渾身の五色光符陣が翼竜にダメージを与えつつコンテナを破壊、爆発させる。
翼竜の方はダメージを受けた状態からの爆発を受け飛行状態を維持できず墜落する。ただ、撃破には至っていないようなのですぐに復帰してくるだろう。
「破片も落としちゃいけませんよぉ」
バーンちゃんは降下。魔竜刃により強化されたファイアブレスを使用して散らばる破片を可能な限り範囲にまとめながら攻撃し、焼き尽くす。
「周りの敵もそのまま焼いちゃいましょう、バーンちゃん!」
さらにバーンちゃんはファイアブレスを使用。集まり始めていた歪虚を攻撃する。2発、3発……
「……! 下ですぅ!!」
バーンちゃん即座にバレルロールを発動し回避。落下していた翼竜が復帰し、光弾を打ち込んできたのだ。
だが、慌てることなくハナはドローアクションで符を即時再装填しつつ、五色光符陣を使用。それ以上の追撃をさせることなくこの攻撃で翼竜を今度こそ落とす。
「よし……さ、一度離れますよぉ」
翼竜に集中していたため集まってきた歪虚に包囲されつつあったハナは、バーンちゃんにディープインパクトを使用させる。本来は周囲を敵に包囲されたときに使用するマニューバであり、今こそが正しい使い時だった。
衝撃波で周囲の敵を倒しつつ包囲から脱するハナ。ここで全体の状況を確認。全体的には有利に進んでいると思われる。
「あとは雑魚ばかり……どんどん倒していきますよぉ」
そう言って、ハナは余裕をもって符を装填しながら、次の敵を見据えていた。
●
「飛んでいられる時間がみんなより少ないから、早期撃破を狙わなくちゃなの」
グリフォンやワイバーンと比べ空中での機動性という点ではやはり一歩劣ることになるルクシュヴァリエ。だが、福音の風は単純な術式だからこそのパワーがあり、その機動性を十分に補ってくれていた。
「見えた。まずはこれなの!」
ディーナはルクシュヴァリエの肩に搭載されたアークスレイの照準を合わせる。目標はコンテナ。当たればかなりのダメージが期待できる。
「アークスレイ……発射!」
増幅されたエネルギーが放出され、コンテナを撃ち抜く……かに、思われた。
だが、その射線上に割って入ったのは翼竜だ。その身をもって盾としてコンテナへの攻撃を防いだ。その献身は見事であったと言えるが、直撃を受けてしまったため当然翼竜の方も無事では済まない。ダメージによるものか、反撃しようにも大きく態勢を崩している。
ディーナはさらに接近。飛行時間はあまり多くは無い。いや、飛行だけならなんとかなるが、ある程度の高度まで降りないと落下時のダメージが無視できない。それを考慮するやはり時間は無い。
「だから、まとめていくの」
ルクシュヴァリエの腕が膨大なマテリアルによって光輝く。それらはディーナ自身の持つ力が機体に宿り放出される必殺の一撃となる。
「『光あれ』」
ルクシュヴァリエから放たれた光の刃が翼竜を巻き込みながらコンテナを斬る。
1振り目、翼竜を両断するもコンテナはまだ健在。2振り目、コンテナに大きな亀裂が見える。3振り目を構えようとしたとき、コンテナは爆発した。これでディーナは最低限の役割を果たしたと実感した。
「後は周りの敵なの」
福音の風を再使用しながら、周辺を確認するディーナ。歪虚はまだ多数残っており、ディーナを目標に接近してきていた。
それらに対し、ディーナは再度光あれを使用して薙ぎ払う。
この攻撃は一直線であるため、周囲に群がる敵をまとめてという風にはいかない。そのため、かなり近くまで歪虚の接近を許すことになる。だが、それもまた狙い通り。ディーナはある程度敵がまとまったところでセイクリッドフラッシュを使用。自身の周囲を光の波動によって攻撃する魔法だ。
この二つによる殲滅能力は非常に高く、自身に群がる歪虚を一掃したのち、ディーナは余裕をもって地上まで降下していった。
●
「見つけた。でも距離がある……J9!」
同時に、収納されていた幻獣用キャノンが展開される。
「距離測って……ファイヤー!」
放たれたキャノン。だが、翼竜が間に割って入って止める。ダメージは大きかったと見えるが、まだ健在だ。
「やっぱり直接落とすしかないね。行くよJ9!」
ゲイルランパートを使用し、コンテナ破壊のため接近するざくろ。行く手を阻もうと小型の歪虚が接近してくる。
「すべて凍てつけ、フリージングレイ!!」
それに対しざくろはフリージングレイを使用。直線状の敵を一挙に葬り、道を開く。
だが、その先には最後の砦とばかりに翼竜が待ち構える。
「来るよJ9!」
息を吸うような動作。恐らくは火炎のブレスか。
「急旋回!!」
一挙に進もうとしていたころに急旋回の指示が出される。グリフォン特有の安定性はざくろの指示を完璧に実行し、ブレスを急速回避する。これはJ9が戦時において冷静になる性格も一役かっていたかもしれない。
そのままざくろは接近。通り抜けざまに一撃を浴びせる。
「さっきのお返しだよ!」
だが、まだ本格戦闘には入らない。先にコンテナを落としたい。
「J9、進路そのまま! 行くよ……」
目標を捉えた。
「絶対地上に落とさせはしない。かがやけ! デルタエンド!!」
渾身のデルタレイ。コンテナに直撃し、爆発を引き起こす。
「っ! J9! 姿勢制御!」
爆風にあおられながらもざくろはJ9に姿勢制御を指示。
飛び散る破片に拡散ヒートレイを打ち込みながら周囲の状況、とりわけ翼竜の動向に注意する。
「さぁ、これで一騎打ちになるかな」
雄叫びを上げながら突進してくる翼竜に対し、ざくろは剣を振りかぶる。
「超・重・剣……横一文字切り!!」
この一撃で、すれ違いざまに竜を両断した。
「ふぅ……」
竜を撃破し、大きく深呼吸するざくろ。だが、息を吐くにはまだ早い。敵はまだまだ残っている。
「さぁJ9、まだまだ頑張らないとね!」
●
戦場を最もよく観察していたのはソナだろう。ソナは周辺を監視しつつインカムを利用して情報の収集やコンテナの位置把握などに勤めていた。その結果、とりあえず現状コンテナのうち漏らしは無いことがわかっていた。
となれば、あとは自分自身が担当しているコンテナを漏らさないようにするのが大事だ。
「さぁLaochan、頼りにしてるわ。よろしくね」
目標を捉えたソナはLaochanにサイドワインダーを使用させて急速に接近する。
「Laochan、ファイアブレスを」
翼竜が射程に入った段階でファイアブレスを使用させる。
だが、こちらの射程と向こうの射程も同じぐらい。ソナは翼竜の予備動作を視認。
「回避を」
短い指示を受け、Laochanはバレルロールを使用。体を回転させつつ回避行動をとる。その数瞬後に光弾が通過していく。
「……竜の方を先にと思いましたが」
バレルロールを使用しながら駆け抜けるLaochan。その位置は翼竜を通り過ぎ、その後ろに位置していたコンテナに迫る勢いだった。
翼竜の方もすぐさま追いすがってくるが、もはや遅い。
「コンテナを守ろうというのですね。ですが、もうこちらの射程です」
ソナは手をかざすとプルガトリオを発動。縛鎖によりその範囲を広げた無数の闇の刃がコンテナを貫く。同時に激しい音と光を放ちコンテナが爆発した。
「……回避任せます」
後ろに迫る翼竜への対応をLaochanに任せつつ、ソナは一呼吸おいてセイクリッドフラッシュを使用。爆発で飛んできた破片を破壊する。
同時に、体が大きく振られる。Laochanが回避行動をとったのだ。ソナはLaochanをつかむ手を少し強くしつつ、次に倒すべき相手を見据える。
「Laochan」
声に反応してLaochanが翼を広げる。サイドワインダーを使用して急速移動。
友、小さな英雄を意味する名を持つワイバーンは、臆せず翼竜に突っ込み、そこから翼に取り付けられた刃をもって翼竜を断つ。
「とどめです」
刃は深く食い込み大きな傷をつけたが、翼竜はまだ飛ぶだけの力は残していた。そこに、ダメ押しのごとくソナがプルガトリオを使用。コンテナ同様に無数の刃を突き刺し、翼竜を倒した。
「これで良し……後はこのまま小型歪虚を倒していくだけですね。あと少し頑張りましょう」
自身の役割は果たした。コンテナと翼竜が倒せればあとはどうとでもなる。ここで少し余裕のできたソナはLaochanをなでながらも、朝騎の方へ注意を向けた。
●
朝騎は超覚醒を使用した。すでに覚醒状態にある覚醒者が守護者としての能力を解放するためのスキルだ。降り注ぐ多数の敵を倒すためには必要なことであると思われた。
さらに朝騎は心技体、鋼の如しを使用する。マテリアル防壁により頑丈さとともに神聖な輝きをもたらし、周辺の歪虚を自身に引き付けようという作戦だ。
「さぁ、星の守護者の力を見せてやるでちゅ」
朝騎は飛行しつつ、そのスキルで敵を引き寄せていく。そして、ある程度集まったタイミングで……
「そろそろ、頃合いでちゅね」
符を放る。五色光符陣だ。結界内に生じた光が歪虚を一瞬で焼き尽くす。
「ふむ……大した相手じゃないでちゅね」
極めて高い威力である。同じスキルを使うハナも極めて高い威力だが、朝騎のそれはさらに上を行く。とはいえ、今回の小型歪虚に対してはオーバーキルが過ぎると見える。
さらに朝騎はもう一発五色光符陣を使用。歪虚を撃破していく。ただ、ここで問題が生じた。
「……邪魔な奴らでちゅね」
手持ちの符のリロードと、飛行を維持するための移動などで、攻撃が可能なタイミングが少なくなってしまい、どうしても敵に纏わりつかれてしまうのだ。
尤も、超覚醒と盾での受けのおかげでダメージは皆無と言っていいが、あまり纏わりつかれてしまうと飛行の邪魔になって墜落の危険も出てくるかもしれない。
心技体、鋼の如しで敵を引き付けているのもこの際はマイナスに働いてしまったのだろう。
それでも歪虚を倒すという点だけに関しては問題なかった。だが、朝騎の動きは迎撃に寄りすぎた。
「朝騎さん! コンテナが!」
不意にソナの声が響く。見るとコンテナの高度が戦闘高度を下回っている。
「む……これ以上放置はできまちぇんね」
敵を殲滅してからと考えていたが、そうもいっていられない。加速、突撃をかける朝騎。このままではまずい。確実に落とすためには切り札を切るよりほかない。
「仕方ないでちゅね……これが、星の守護者の力でちゅ!!」
朝騎は星の救恤者を使用。狙いはコンテナ。翼竜が迫ってきているが、構ってはいられない。救恤の力を全身に巡らせたうえで放たれた限界を超えた一撃がコンテナを撃ち抜き、爆発を巻き起こす。本来は仲間との連携でその真価を発揮する技だが、単独で使用しても十分以上に強い。星の守護者は伊達ではないということだ。
だが、撃ち終わりを狙って翼竜が攻撃を仕掛けてくる。無論超覚醒により耐久力も上がっているので問題ないが……
「……っ」
翼竜は体当たりを慣行。態勢を崩した朝騎は箒から落ちかけるもなんとかこらえる。
反撃を行おうと、朝騎は符を構える。だが、その符が使用されることはなかった。
「…………」
絶火の騎士、ヒンメル達だ。彼らが翼竜を滅多刺しにしていた。
「いつの間にかヒンメル様たちの戦闘高度まで降下してしまってたんですね」
朝騎と並ぶようにソナがLaochanをつける。そのままヒーリングスフィアを使用して朝騎の傷を癒した。
「助かりまちゅ。それじゃ上に……」
「いえ、もうその必要はなさそうです」
二人が空を見上げると、いつの間にか雲が切れ始めており、そこからのぞくのは晴れ間と味方と、恐らくは最後の1体であろう剣機が墜落してくる様であった。
●
戦闘は終わった。ハンター達は地上に降り立ち、またさらに高高度で戦っていた帝国兵も降りてきていた。
ハンター達にさしたる怪我人無し。朝騎が多少怪我をしたがすでにソナが治療している。ただ、先ほどからおしりをさすっているが……
「箒で長く飛びすぎた後遺症でちゅ……」
「それは……治しようがありませんね」
苦笑しつつソナが言った。
一方、帝国兵の方はそれなり以上の被害が出ているようだ。怪我人も多い。英霊であるヒンメル達は未だ空で警戒に当たっているようだ。
「万が一に備えて、私たちも空中で哨戒に当たろうか。兵にその余力はなさそうだしね」
そう言ってカートゥルとともに飛び立つ真。それに続くようにざくろもJ9とともに飛び立った。
地上の方ではディーナが負傷者への応急処置に走り回っている。同じ聖導士のソナ。それに朝騎とハナも手伝いに追われることになった。
「すまない」と頭を下げた帝国兵に対し、ディーナは首を振る。
「そのための聖導士なの。それよりも全員所在確認できてるかな? 不明者がいるなら探しに行くよ?」
「それなら私が。これだけ派手な戦闘なのでぇ、周辺の被害も確認したいですしぃ。それに……」
どこかで見たような顔がいた気がした、というのは言葉には出さず、ハナはそのまま飛び出していった。
空に上がったハナは先の話をざくろと真にも伝え、別れて戦場全域の確認を行った。
(あの鉄仮面……理由は分かりませんけど第五師団の関係者でしょうねぇ。後で後悔しないよう、会える時に会っといたほうがいいと思うんです)
それはハナの優しさだったのだろうか。だが、結果だけ言うと、ハナの探し人……エルウィンは少なくとも戦場とその周辺にはすでにいなくなっていた。応急処置などで走り回っていた時間もあったためかもしれない。尤も、仮に見つけられたとしてハナが連れて行こうとしてもついてはこなかっただろうが。
しばらくして真、ざくろ、ハナは戻ってきた。周辺の被害は大したことはなかった。歪虚が大挙してきたことに影響を受け雑魔が現れたことで多少被害はあったそうだが、大きな問題ではない。落下物の処理にハンターたちが意識を割いたおかげと言えるだろう。
「おかげで、ヒンメルの方もディーナが心配するような被害はなかったよ」
「それはよかったの。だけど、掃討戦に協力してもらったんだもの、私たちもお返ししたいの。ヒンメルも第五師団も、同じ帝国の天空を守護する騎士様たちだと思うから」
「……分かった、後で話してみるといい」
「そうさせてもらうの!」
納得したようにディーナは言った。
「それにしても、邪神を倒して少し平和に近づいたけど、こうしてまだ人々を脅かす敵は残っているんだね」
J9をいたわるように撫でながらざくろが呟く。
「確かに……一緒にこうして戦うのももうないのかもしれないと思っていましたが……」
「まぁそうじゃないと守護者の働きどころがないのでちゅ」
「私も戦闘狂ってわけじゃないけど、空での戦いは好きだからね……でも、本当は戦う機会なんて無い方が……」
「無い方がいいに決まってますぅ。でも、実際のところはぁ、全く無くなるってことはないんでしょうねぇ」
「あぁその通りだ」
魔導公害の影響で現れる雑魔、いろいろな理由により犯罪に身をやつす犯罪者。ハンターたちが力を振るうべき場はこれからもまだまだある。
「少なくはなるだろう……なってほしいと思う。そのためにも、まだまだ君たちを頼りにさせてもらうかもしれない。その時はまたよろしく頼むよ」
こうして、グライシュタッド上空での戦闘は終わった。
第五師団は仇敵を倒し、ハンター達のおかげで地上への被害もほとんどない。完勝である。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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面白かった! | 15人 |
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依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/11/06 21:34:54 |
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質問卓 北谷王子 朝騎(ka5818) 人間(リアルブルー)|16才|女性|符術師(カードマスター) |
最終発言 |
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相談卓 北谷王子 朝騎(ka5818) 人間(リアルブルー)|16才|女性|符術師(カードマスター) |
最終発言 2019/11/06 07:50:34 |