一流ハンターを目指して

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
寸志
相談期間
5日
締切
2015/02/11 12:00
完成日
2015/02/17 05:26

みんなの思い出

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オープニング

「遠藤のおっさんってヒマなの?」
 冒険都市リゼリオでは今日も穏やかで賑やかな時が流れていた。
 大通りに面したカフェでは今日も住民やハンター達が気ままに時を過ごしている。そのテーブルの一つで相向かいに一人の少年と男が座っていた。
「ヒマって……ひどいなあ陽介君。僕だって色々ハンターとして忙しい中君に会いに来ているんじゃあないか」
「でもおっさん全然仕事してる感じしないんだよなあ。戦闘とかに行ってもなんか後ろのほうで仲間が戦ってるの見てるだけってかんじ」
「あまりにも悲しい想像に涙を禁じ得ないけれど、まあ僕は後衛なのである意味間違ってはいないね」
 猟撃士というのは後ろの方から銃とか弓とか撃つのが仕事なのだ。だからってボケーっとしてるわけではないのだが。
 二人の縁はもう半年程続いている。ハンターにして元軍人の遠藤と、LH044の悲劇を生き延びた一般人である陽介。
 この異世界クリムゾンウェストに転移してから、二人の生活はがらりと変わった。
 元々軍人だった遠藤は覚醒者になってもハンターとしてそこそこうまく馴染んでいるが、陽介はまだサルヴァトーレ・ロッソから出歩く機会は限られている。
 彼は先の撤退戦での孤児であり、このクリムゾンウェストの世界を気ままに歩けるような年齢ではなかった。金も力もない彼は遠藤の保護下でのみ外出を許可されているのだ。
「なんかさ、あれから色々あったじゃん? だけどおれ達の状況って全然よくならないよな」
 孤児院では外の世界を恐れている子供も沢山いる。子供だけではない、大人達もそうだ。
 柔軟に異世界に適応している者がいる一方で、この異世界の現実を受け入れられずサルヴァトーレ・ロッソに閉じこもったり、この世界を否定する者も少なくはないのだ。
「いつになったら元の世界に帰れるのかな」
「君は元の世界に帰りたいのかい?」
「……いや、そういうわけじゃないけどさ。みんな不安がってるし。元の世界に戻っても、家族もコロニーもないのはわかってるんだ。だけど、皆の帰りたいって気持ちは消せないんじゃないかな」
 マグカップを傾けながら少年の話に耳を傾ける遠藤。読みかけの文庫本を閉じ、遠くに見えるサルヴァトーレ・ロッソに目を向ける。
「この世界はどうあがいてもおれたちの故郷じゃないんだ。だからさ、皆を元の世界に戻す方法を探すためにも、やっぱりおれ、ハンターになりたいんだよ!」
「またその話かい? 君は覚醒者じゃないのだから、無理をしてもしかたないよ」
「そっちこそなんで毎回否定するんだよ! ハンターと一口に言っても、その後方支援をするとか、色々手段はあるだろ!? 実際に戦うだけじゃないんだよハンターは!」
「君、さっき後方支援の僕を容赦なくこき下ろしていたような……」
「だからおれにちゃんと稽古つけてくれよ! おれ、そのうち覚醒する予定あるから!」
「君、もう言ってることしっちゃかめっちゃかだよね……」
 まあ、相手は十歳そこそこの少年なので仕方ないといえばそれまでだが。
「銃を使えばヴォイド相手でも戦えるのはわかってるんだ。それにさ、覚醒者じゃなくてもこの世界の軍人は剣とかで戦ってるじゃないか」
「あれは凄く訓練した兵士が、フォーメーションを組んだりしてだね」
「ならおれが五人くらい居ればヴォイドも倒せるってことだろ?」
「まず君は一人しか居ないけど、まあその前提条件をひっくり返した上で君が腕っ節の強いムキムキマッチョマンになれば可能性はあるね」
「おれ、マッチョになるよ! 筋トレもしてるし、飯もスゴイ食ってるもん!」
 半年前、狂気の歪虚との戦いに飛び込んでからというもの、陽介は無茶をしなくなった。
 実際に戦うハンターを見て思うこともあったのだろう。だが戦いを諦めたわけではないのだ。
 その衝動を和らげようとこうしてたまに連れ出してやっているのだが、このままではまた歪虚との戦いに飛び出して行きかねない。
「やれやれ……。それなら、ちゃんと君を訓練してくれる、僕みたいに後ろのほうで見てるだけじゃないハンターを探してみるかい?」
「ホントか!? それって師匠だよな、師匠!」
「君そういうノリ好きだよね……。リゼリオにはヒマしてるハンターもいっぱいいるからね。気まぐれで相手をしてくれるかもしれないし」
「気まぐれじゃなくて、ちゃんとした一流のハンターを師匠にしてくれよー。おれ、一流ハンターになりたいんだから」
「まず君は覚醒してないという話をだね……」
 そんな話をぶつくさしながら二人は会計を済ませリゼリオの街を歩き出した。
 ヒマそうにしている、しかしちゃんとした一流のハンターを探して……。

リプレイ本文

「……なるほど。遠藤さんの依頼と、陽介少年の目指すモノは理解しました。ヒマではないですが、その話、受けましょう」
 “ヒマでは”の所で閉じていた目を見開くフランシスカ(ka3590)。陽介少年は腕を組み。
「こんな所で油売ってるって事はヒマって事でしょ?」
「いやヒマじゃねーし! 言うに事欠いてヒマはないんじゃねーか!?」
「旭の言う通りです。ヒマではありません」
 右手を掲げて抗議する岩井崎 旭(ka0234)の横でまた同じ所でフランシスカが目を見開く。少年は純粋な眼差しで鳴神 真吾(ka2626)を指差し。
「じゃあ、このお兄さんは?」
 見れば真吾は見た目にも痛々しい程に負傷していた。体も包帯まみれだ。
「マギア砦の戦いでちょっとな……」
「ああ、あれは大変だったからなぁ。かく言う俺も色々あって大変だったんだよ、色々」
「怪我しなかったの?」
「したよ! 今はもう治ってるんです!」
「それ以前に出歩いてて大丈夫なのん?」
 ひょっこり顔を覗かせるミィナ・アレグトーリア(ka0317)に真吾は苦笑を浮かべる。
「戦闘はともかく、ま、こういうのならな。そういう意味じゃ俺は確かに暇人かな?」
 しかし陽介的には真吾の方が頑張ってきたという印象のようだ。旭とフランシスカの視線を浴び、真吾は冷や汗を流しつつ目を逸らした。
「ヒマかどうかはさておき、そんなにハンターになりたいのかい?」
 星見 香澄(ka0866)は片膝をつき、少年と視線を合わせ笑いかける。
「まずハンターにならなきゃ外にも出られないし、経験も詰めないんだ」
「ふむぅ。今はあのお船の中にカンヅメなのん?」
「少なくともおれの孤児院のみんなはそうだね」
 ミィナの問いに答える少年。そんな様子を遠巻きに上杉浩一(ka0969)と遠藤が見守っている。
「同僚の前で言うのもなんだが、こんな碌な事のない仕事に憧れるのはな。周りが心配するのも仕方ない」
「ご時世ですから。戦士こそ尊く、立派な職業だと教えるべきなのかも知れませんが」
「出来れば危険から遠ざけたいと思うのが親心というものだろう」
 遠藤はゆるく笑みを浮かべ、シャツの胸ポケットからしなびた煙草を取り出す。浩一はそれを受け取り、ジャケットに眠る自前のライターを探した。



「それじゃ、まずは今の君の力を見せてもらおう」
 香澄は腕を組み宣言する。移動したのはリゼリオの港付近。漁も輸送もないので、今日はがらんとしている。場所を借りても怒られまい。
「なーなー、刀一本くれよー」
「真剣ですし、子供の手には余ります」
「今だって余ってんじゃん!」
「余っていません。四刀流ではないですが」
「じゃあ余ってるじゃん!」
 振り返るとフランシスカが陽介に追い回されていた。香澄は咳払いを一つ。
「元気が良いのはいい事だけど、人の話はちゃんと聞こうか?」
「おやおや、怒られてしまいましたね」
 僅かに目元だけ歪め嘲笑するように肩を竦めるフランシスカ。陽介は拳をわなわな震わせながら香澄に駆け寄る。
「おれに稽古つけてくれるの?」
「それは君の力を見せてもらってから考えるよ」
「しかし丸腰というわけにも行かないでしょう。この木刀で良ければ貸して差し上げましょう」
「え~……」
 フランシスカに渡された木刀に不満そうな陽介。一方香澄はアルケミックギアブレイドを構える。
「……いやいや! 陽介唖然としてるぞ! 俺も木刀持ってきたし、これ使いなよ」
 言われてみればそうかと旭に借りた木刀に持ち替える香澄。とりあえずこれで陽介の力を見る事になった。
「一対多じゃ不公平だから、うちらはここで見てるのん。ハグレかなんかだと思っといてー」
 声援を送るミィナ。陽介は気合を入れ、勢い良く地面を蹴った。
 思い切り横に振った木刀は空を切る。香澄は背後に僅かに移動しただけだが、木刀に振り回され陽介はそれだけで体勢を崩しかけた。
「どうした。遠慮は要らない、思い切り来るんだ!」
 香澄に言われるがままにがむしゃらに木刀を振り回すが、一回も攻撃は命中しない。
 そして香澄は反撃する素振りを見せなかった。空振りする度に陽介の体力は減り、開始三分も待たずに肩で息をするようになる。
「くそぉ!」
 歯を食いしばり香澄に駆け寄る陽介。次の瞬間、その眼前に突如火の玉が出現した。
 驚いた陽介は悲鳴を上げ、足元をもつれさせる。転倒した手から木刀がすっぽ抜け、香澄は倒れた少年の額にコツンと木刀を当てた。

「んだよー! 卑怯だろ!?」
「えー。先にハグレって宣言したのん。油断してる方が悪いんよ?」
 火の玉の主はミィナだった。悪戯っぽく笑うミィナだが、陽介はまだ不満が収まらない。
「ミィナ君にも一理ある。君はすっかりボクに気を取られて、周りの事なんて何も見えていなかった。何度か海に落ちそうになったじゃないか」
「それに木刀に振り回されすぎです。筋トレをしていると聞いていましたから、木刀を振るくらい楽勝だと思っていましたが……」
 顔を真っ赤にして震える陽介。フランシスカはそれを横目にふっと笑う。
「ともかく、現状ではまだまだだってのがわかったかな?」
「だから、おれはこれから鍛えて……!」
「ボクはまだ覚醒もしてない。鍛えるとしても、やっぱり覚醒出来ないと厳しいと思うよ」
 しょぼくれた様子で地べたに座り込む陽介。旭は苦笑を浮かべ、その首根っこを掴んで立ち上がらせる。
「なーにヘコんでんだよ! まだ特訓は始まったばっかりだぜ?」
「実力不足が分かったのなら特訓だ。実際に動いて付き合ってはやれないが、最新のハンター流特訓法を教えてやるぞ」
「ほんと!?」
 真吾の言葉に露骨に瞳が輝く陽介。浩一は小声で真吾に目を向ける。
「……いつの間にそんなの用意したんだ?」
「嘘も方便……いや、嘘ではないが、根性論で体を壊さない為にもな……」
 ふっと笑みを浮かべる浩一。拳を掲げ「やるかー!」と叫ぶ旭に続き、陽介も跳び上がるのが見えた。

 無理な訓練は成長期の少年に負担をかける。真吾はそれを踏まえ、適切な訓練メニューを提唱する。
 一緒に付き合う事はこの体では出来なかったが、そこは旭がうまくサポートしてくれた。
「どうしたー、もうヘバったのかー!?」
「ま、まだまだー!」
 旭と陽介は延々と港を走って往復している。
「ハンターの基礎は体力と持久力だ! ペースを維持し、少しずつ早くしていくぞ!」
 遠巻きに声を上げる真吾。陽介はフラフラになりながらも何とか旭に食らいついている。
「根性はあるようだな」
「だけど、旭と比べれば体力には雲泥の差がある。これが現役のハンターと一般人の少年の違いなんだけどな」
「俺もあそこまでは走れんよ。腰が痛くてな」
 腰を叩きながらしょぼくれた顔をする浩一に真吾は苦笑を浮かべた。
「そろそろ剣の訓練に移りましょうか」
 フランシスカに渡された木刀を再び握る陽介。
「刀はこう持って、構えはこうです。そして、このように振り上げて、振り下ろす。やってみてください」
 見よう見まねに素振りを繰り返すが、陽介はもうこの時点でクタクタだった。
「まだ大した回数は振っていない筈ですが、その程度ですか。こちらだと更に重いのですが、陽介にはまだ早いようですね」
 ぐぬぬと言った表情で素振りに打ち込む陽介。だがその横顔はただの少年らしからぬ力強さに満ちていた。
「ほわぁ。まだやってるのん?」
 弁当箱を手に驚いた様子のミィナ。随分長引いているので弁当を作ってきたのだが……。
「陽介君は本気のようだね」
「すごい根性なのねん?」
「そうだね。けれど、やっぱり非覚醒者というのが大きな壁になる。それは彼もわかっている筈だけど」
 遠巻きに眺めつつ香澄は目を細める。見ればフランシスカとの訓練は実戦方式に変わったようだ。
 フランシスカは陽介の木刀をいなし、代わりに手足に打ち込んでいく。非覚醒状態で加減もしているが、子供にとってはきつい訓練だ。
「その程度ですか」
「……その程度なのはどっちだ。あんただって本気じゃないだろ!」
 目を細めるフランシスカ。あらためて木刀を構え直すと、真っ直ぐ見つめ返す陽介と向き合う。
「良いでしょう。あなたが本気を望むなら、私も手は抜きません」
 力強く踏み込んだ一撃が陽介の木刀を弾き飛ばす。返す刃は陽介の頭にごつんとめり込み、少年はバッタリと倒れこむのであった。

「無茶をしたな」
 浩一が差し出した救急箱で怪我を手当する遠藤。陽介は座り込んだまま何かを考えこんでいる。
「そろそろ休憩にして、皆でお弁当食べるのーん。ほら、陽介もどうぞ」
 サンドウィッチを差し出しながら笑うミィナ。陽介は礼を言って受け取るが……。
「なあ。やっぱり皆は、おれをハンターにしない為に依頼を受けたの?」
「うん? どうしてそう思うんだい?」
「だって……特訓で手加減したり、わざと意地悪したりしてさ。子供扱いされてる事くらいはわかるよ」
 浩一の問いに寂しげに呟く陽介。真吾はコーヒーの注がれたカップを置き。
「そうじゃない。科学的な特訓は本当に効果的なんだ。ガキにはガキなりの鍛え方がある」
「最初の姉ちゃん? もシスターの姉ちゃんも本当に本気じゃなかったじゃないか!」
「それは……」
「それは、覚醒するって事は、俺達にとっても危ない事だからだ。手加減し損ねたら大怪我させちまうからな」
 フランシスカの言葉を遮り旭は立ち上がる。唐揚げを飲み込むと、自前のレイピアを抜き覚醒してみせた。
 霊闘士として精霊の力を借りた旭は鳥人のような姿に変貌する。それだけでも陽介には衝撃だった。
「見てろ」
 静かな構えから、虚空に一突き。マテリアルの光が迸り衝撃が広がる。
 めくれたキャンプシートを抑えるミィナに軽く謝りながら覚醒を解いた旭は陽介の肩をポンと叩いた。
「基礎訓練は為になったぜ。俺も自分の訓練を見直せたからな」
「……旭兄ちゃん程でも、訓練するの?」
「するさぁ。俺もまだまだ一流のハンターには程遠いしなぁ」
 愕然とした表情の陽介。旭は腰を降ろし。
「精霊と契約してイクシードになるってんなら、いいんじゃねーの? でも覚醒しないまま戦うってんなら、はぐれたゴブリンやらがせいぜいじゃねーかな」
「全員が覚醒者でもまだまだ危険が大きいんだ」
「本物の戦闘だったら、ハグレや隠れてる敵さんもいるんよ。いきなり後ろから致命傷をもらう、なんてこともあり得るのん。後衛だって安全じゃないのん」
 香澄とミィナに言われても、まだ陽介はハンターを諦めきれない。
「何故そこまで拘るんだい? ハンターというのは、そこまで特別な仕事じゃないよ」
 浩一はゆっくりと語る。確かに、飛び込みで日銭を稼げるいい仕事だ。権限も少しはある。
「だがその権限を悪用する者もいる。ハンターというだけで意味も理由もなく戦いに利用されている者も沢山いる。良い事ばかりではないよ」
「ボクたちだけで戦っているわけではないしね。ギルドの職員や色々のな人の手伝いがあって働けるんだ」
「だよな。戦わなくたってソサエティには仕事色々あるだろ」
 香澄と旭の言葉に少年は頷く。
「だけど、いざという時目の前の誰かを守れる力は必要なんだ。おれの父ちゃんも母ちゃんも、おれの目の前で死んじゃった」
 後方支援の必要性は以前別のハンターにも説かれた。一応、理屈は納得しているが。
「いつかまた大切な人がいなくなる。それを怯えて待つだけなんて、おれにはがまんできないよ」
 頬を掻き、真吾は頷く。
「……それなら、護身用に銃を扱うのもいいだろう。だけどな、銃は自分の実力を勘違いさせちまう。下がるべき時まで銃を過信しちゃいけない」
 遠藤から借りた拳銃に装弾されているか確認し、真吾は少年にグリップを握らせる。
「銃を持とうが人は死ぬ。ハンターは助け合いって言ってもそれは最低限自分の面倒を見れる奴の話だ。責任も碌に果たさず周囲に迷惑をかけるのは、ハンターにかぎらずカッコ悪いぞ。だから、銃を覚えても勝手に飛び出したりしないって、俺の目を見て約束出来るか?」
「焦って強い敵に挑んでも危ないだけなのん。ちゃんと確実に強くなれるようにしてほしいんよー」
「わかった。約束するよ」
 少年の答えにミィナも微笑む。香澄は笑顔で頷き。
「可能性は色々ある。いつでもボクは相談に乗るよ。ボクと接近戦でいい勝負出来るようになったら、ハンターになれるように推薦してもいい」
「ほんと!?」
「幸い、この街には色々な人がいる。色々な経験をして感性を磨くんだ。ハンターになる方法も、一つではない」
 浩一の言葉に頷く陽介。もう元気になったのか、立ち上がり拳を握りしめている。
「パンダには白も黒もあるからパンダなんだ。白い部分だけ見ていてはシロクマとかわらん」
「……ちょっと、それは何言ってるのかわかんないけど……」
 陽介の言葉に浩一はしょぼくれた様子で肩を落とす。
「どうやら決意は硬いようですね。その気持は本物です。いつか、報われる日が必ず訪れる事でしょう。私がそうだったように」
 フランシスカは立ち上がり、陽介に木刀を差し出す。
「これは私からの選別です。今後も鍛錬を欠かさないように……」
「いらない!」
「おや。先ほどまで欲しがっていたのに」
「あんたに勝負で勝てるようになったら貰うからいい。だから……勝負から逃げずにまた来いよな! 次は勝つからな!!」
「おやおや」
 無表情に顔を上げるフランシスカ。旭と真吾は顔を見合わせ。
「あいつ、フランシスカの事……」
「若いっていいなあ」
 浩一は目を瞑り呟く。陽介は「バーカバーカ」と言いながらフランシスカから逃げていく。
「簡単に自分をおだてたり、褒めてくれる人は信用ならん。本当に信用すべきは自分に厳しく接してくれる人達……あの子はそれをわかっているのかもしれんな」
「陽介ー、すばしっこくて逃げるの上手なのーん!」
「彼女はずっと褒めてるけど」
「……そういうこともある」
 手を振るミィナに笑う遠藤。浩一はしょぼくれた煙草を取り出し、調子の悪いライターで火を点けるのであった。

依頼結果

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MVP一覧

  • 売れない探偵
    上杉浩一ka0969

重体一覧

参加者一覧

  • 戦地を駆ける鳥人間
    岩井崎 旭(ka0234
    人間(蒼)|20才|男性|霊闘士
  • 幸せの魔法
    ミィナ・アレグトーリア(ka0317
    エルフ|17才|女性|魔術師
  • 戦場の眼となりて
    星見 香澄(ka0866
    人間(蒼)|25才|女性|機導師
  • 売れない探偵
    上杉浩一(ka0969
    人間(蒼)|45才|男性|猟撃士
  • ヒーローを目指す者
    鳴神 真吾(ka2626
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • 幸福な日々を願う
    フローラ・ソーウェル(ka3590
    人間(紅)|20才|女性|聖導士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談所
鳴神 真吾(ka2626
人間(リアルブルー)|22才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2015/02/11 00:52:31
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/02/08 13:46:00