ゲスト
(ka0000)
ジューンブライドを守り抜けっ!
マスター:旅硝子

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/06/29 19:00
- 完成日
- 2014/07/02 04:58
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ゾンネンシュトラール帝国の南方に位置するエーセンブルクの町は、美しい庭園を持つ丘の上の聖堂教会と、近隣の村々へとすぐに出発できるハンターズソサエティの支部を擁する、さほど大きくはないが美しく温かな町である。
『六月の花嫁は幸せになれる』
いつだったか、リアルブルーから来た客人が伝えた言葉にあやかる者も多く、六月の聖堂教会では毎日のように結婚式が行われる。
少し離れた村で生まれ育ったマルゴットも、エーセンブルグの教会での結婚式を夢見た一人にして――夢を叶えた美しい花嫁になるはずだ。
「ああ、本当に綺麗よ、マルゴット」
「本当に。おばあさまの形見のネックレスが、こんなに似合うなんて」
「ありがとう……お母さん。それに、お義母様」
真っ白なウェディングドレスに身を包み、頭には貞淑のベールと花冠。首元を飾るのは、美しい金鎖で小粒のアクアマリンを編み込んだネックレス。それは、濃いめの金髪と水色の瞳を持つマルゴットに良く似合う。
「まぁマルゴット、これからはノイマイスターの一員になるのですからね。私より、向こうのお義母様に先にお礼をおっしゃい」
「いいのですよお母様。確かに私達もマルゴットを我が娘のように思っていますが、ブリッツ家の娘さんであることも間違いないのですもの」
仲睦まじげに笑顔を浮かべる母と、今日から義母となる愛する人の母のやり取りに、マルゴットの瞳が潤む。
(……幸せ、です。今日まで育ててくれたお父様、お母様、それにお義母様もお義父様もお優しい方。そして……大好きなギュンターの、お嫁さんになれるんですもの……)
コンコン、と部屋の中に響くノック。
「マルゴット、準備はできたかい」
「ええ、お父様」
扉を開けた父の姿を認めたマルゴットが、花開くような笑みを浮かべる。
感極まったように最も美しい娘の姿を見つめた父は、少しだけ寂しげに微笑んだ。
「さぁ、行こうか。花婿が、お待ちだよ」
――同刻。
「マルゴットっていやぁあの子だろ? ブリッツ家のあんさんに連れられて、キャンディをよく買いに来てたあのおちびちゃん。それがねぇ……」
「花嫁になるって言うんですからねぇ。私達が年を取るわけだわ」
「しかしあのお嬢ちゃんは可愛かったからなぁ」
「さぞかし美しい花嫁になっているでしょうねぇ」
「まだキャンディ好きだといいんだがなぁ」
「せっかく作った祝福の薔薇キャンディですからねぇ。喜んでもらえると嬉しいわ」
そう言って盛装に身を包み、手に美しい包みを持って教会に向かう老夫婦。結婚式には誰もが立ち合ってお祝いできる形式と聞いて、お祝いに薔薇を象った美しい手作りキャンディを手にやって来たのだ。
最後の仕上げが長引いて少し遅れてしまったが、誓いのキスに間に合うだろうか……そう思って足を速めようとした老夫婦は、次の瞬間はっと立ち止まり、顔を見合わせた。
「ねえあなた、あの森の方から、何か……」
「ああ、教会に向かって……ありゃもしかして、雑魔か!?」
「まぁ! 大変だわ、教会から出てきた人がいたら大変なことに!」
「お前、走るぞ! ほら、手を掴んで!」
老夫婦はぎゅっと手を握り合い、全速力でハンターズソサエティ支部へと駆け込んだ。
「すぐに動けるハンターの方、いらっしゃいますか?」
受付に座っていた少年が、ハンターオフィスに響く声で呼びかける。それに応えたハンター達に、老夫婦が「どうかお願いします」と僅かに震える声で頭を下げた。
「こちらのご夫婦が、聖堂教会の方に雑魔らしき影が向かっていくのを見たとおっしゃるんです」
受付の少年の言葉に、老夫婦が同時に頷く。
「狼に似てたんだけど、体中に刃みたいなのが生えててねぇ」
「数はちょっとわからなかったな。ぱっと見てこりゃいかんと急いで来たんだ」
ありがとうございます、と老夫婦に頷いて少年は、集まったハンター達に向き直る。
「教会内にいる人達は、外に出てこない限り安全でしょう。幸い、今は結婚式の最中で、30分ほどは誰も出てこないと思います。皆さんはその間に、出来るだけ早く雑魔を倒してください!」
よろしくお願いします、と頭を下げた受付の少年に応えて、ハンター達は足早にハンターオフィスを後にした。
『六月の花嫁は幸せになれる』
いつだったか、リアルブルーから来た客人が伝えた言葉にあやかる者も多く、六月の聖堂教会では毎日のように結婚式が行われる。
少し離れた村で生まれ育ったマルゴットも、エーセンブルグの教会での結婚式を夢見た一人にして――夢を叶えた美しい花嫁になるはずだ。
「ああ、本当に綺麗よ、マルゴット」
「本当に。おばあさまの形見のネックレスが、こんなに似合うなんて」
「ありがとう……お母さん。それに、お義母様」
真っ白なウェディングドレスに身を包み、頭には貞淑のベールと花冠。首元を飾るのは、美しい金鎖で小粒のアクアマリンを編み込んだネックレス。それは、濃いめの金髪と水色の瞳を持つマルゴットに良く似合う。
「まぁマルゴット、これからはノイマイスターの一員になるのですからね。私より、向こうのお義母様に先にお礼をおっしゃい」
「いいのですよお母様。確かに私達もマルゴットを我が娘のように思っていますが、ブリッツ家の娘さんであることも間違いないのですもの」
仲睦まじげに笑顔を浮かべる母と、今日から義母となる愛する人の母のやり取りに、マルゴットの瞳が潤む。
(……幸せ、です。今日まで育ててくれたお父様、お母様、それにお義母様もお義父様もお優しい方。そして……大好きなギュンターの、お嫁さんになれるんですもの……)
コンコン、と部屋の中に響くノック。
「マルゴット、準備はできたかい」
「ええ、お父様」
扉を開けた父の姿を認めたマルゴットが、花開くような笑みを浮かべる。
感極まったように最も美しい娘の姿を見つめた父は、少しだけ寂しげに微笑んだ。
「さぁ、行こうか。花婿が、お待ちだよ」
――同刻。
「マルゴットっていやぁあの子だろ? ブリッツ家のあんさんに連れられて、キャンディをよく買いに来てたあのおちびちゃん。それがねぇ……」
「花嫁になるって言うんですからねぇ。私達が年を取るわけだわ」
「しかしあのお嬢ちゃんは可愛かったからなぁ」
「さぞかし美しい花嫁になっているでしょうねぇ」
「まだキャンディ好きだといいんだがなぁ」
「せっかく作った祝福の薔薇キャンディですからねぇ。喜んでもらえると嬉しいわ」
そう言って盛装に身を包み、手に美しい包みを持って教会に向かう老夫婦。結婚式には誰もが立ち合ってお祝いできる形式と聞いて、お祝いに薔薇を象った美しい手作りキャンディを手にやって来たのだ。
最後の仕上げが長引いて少し遅れてしまったが、誓いのキスに間に合うだろうか……そう思って足を速めようとした老夫婦は、次の瞬間はっと立ち止まり、顔を見合わせた。
「ねえあなた、あの森の方から、何か……」
「ああ、教会に向かって……ありゃもしかして、雑魔か!?」
「まぁ! 大変だわ、教会から出てきた人がいたら大変なことに!」
「お前、走るぞ! ほら、手を掴んで!」
老夫婦はぎゅっと手を握り合い、全速力でハンターズソサエティ支部へと駆け込んだ。
「すぐに動けるハンターの方、いらっしゃいますか?」
受付に座っていた少年が、ハンターオフィスに響く声で呼びかける。それに応えたハンター達に、老夫婦が「どうかお願いします」と僅かに震える声で頭を下げた。
「こちらのご夫婦が、聖堂教会の方に雑魔らしき影が向かっていくのを見たとおっしゃるんです」
受付の少年の言葉に、老夫婦が同時に頷く。
「狼に似てたんだけど、体中に刃みたいなのが生えててねぇ」
「数はちょっとわからなかったな。ぱっと見てこりゃいかんと急いで来たんだ」
ありがとうございます、と老夫婦に頷いて少年は、集まったハンター達に向き直る。
「教会内にいる人達は、外に出てこない限り安全でしょう。幸い、今は結婚式の最中で、30分ほどは誰も出てこないと思います。皆さんはその間に、出来るだけ早く雑魔を倒してください!」
よろしくお願いします、と頭を下げた受付の少年に応えて、ハンター達は足早にハンターオフィスを後にした。
リプレイ本文
ハンターオフィスから飛び出した柊 恭也(ka0711)は、すぐさま繋いでいた馬にまたがった。
乗用馬であり、戦闘には慣れていない。しかし今回の馬の役割は、戦いに役立つことではない。
「幸せな結婚式が一転、凄惨な殺人事件とかないわー」
ちょっと新武器の試験も兼ねて、と握り締めるのは、『シルバーマグ』と銘打たれたリボルバー。
「一狩り行こうか……!」
馬腹を蹴れば、馬は一層速くした脚でそれに応えた。
「まったく、せっかくの幸せの門出に邪魔な連中が集まってきやがって……」
ティーア・ズィルバーン(ka0122)はそう舌打ちしてから、老夫婦へと向き直る。
「安心しろご老人。無粋な連中に邪魔はさせないし、あなた達にもしっかりと花嫁を祝福させてやるよ」
そう言って軽く笑んだティーアに、老夫婦は頭を下げる。
「どうかよろしくお願いします」
「どうか、御武運を……!」
深く頷いて、ティーアは一気に走り出す。
「此処に来てから、本格的な依頼は初ですので、きっちり終わらせたいですね」
「初依頼か、なるほど……ふむ、こちらは新調した武器を試すとするか」
アレグザンダー・ブリッグス(ka1346)とバルバロス(ka2119)が、続いて駆け出しながらそれぞれの武器を手に軽く言葉を交わす。
その様子に、シュトライヒ(ka2393)が幼げな顔をニィ、と笑みに染めて。
(キッヒッヒ、ボクの魔法の披露をする時間じゃん? じゃん!?)
彼がこの戦いに赴くのは、もちろん依頼を解決するためだ。
そしてそれと同時に、魔法の威力をさらに磨きたい、自己研鑽の場にもしたいと思っている。
ハンターは、実戦によって強くなるものなのだから。
しゃらり、とその隣で涼やかな金属の触れ合う音が聞こえた。
「人の幸せを邪魔する雑魔なんて許せないっ」
たくさんの飾りを付けた華やかな踊り子の衣装にローブを羽織り、ハル(ka2201)が踊りで鍛えた脚力を存分に発揮する。
「絶対に結婚式の邪魔はさせないよ、守り抜いて見せるんだから!」
真剣な表情で両手のダガーを握り直すハルの表情が――にこ、と緩む。
「そういえば、結婚式なんだから披露パーティなんかもあるよねぇ~。依頼が終わったら参加とかできちゃうのかな? 頑張って依頼こなすんだから参加できちゃうよね♪ えへへ、美味しいお酒とか美味しい料理も沢山食べられるんだろうな~……えへへ♪」
夢見る瞳を揺らしたハルは、はっといいことを思いついたように笑みを浮かべて。
「あ、どうせなら余興として踊りとかも踊っちゃおうかなぁ」
全力疾走を続けながら、ハルは拳を突き上げる。
「よ~し、頑張って盛り上げちゃうぞ~♪」
しかしここまで凄まじい肺活量であった。
「応!」
「お、おう?」
ハンター達の何人かが、それぞれのリアクションでハルへと応える。
「っと、この辺りか……よし、近付く奴らは隠れて、射撃組は準備頼むぜ!」
足を止めたティーアの言葉に、仲間達が了解と頷く。接近戦を行うティーアやバルバロス、ハルは木々の陰、藪の中、それぞれに身を潜ませて。
アレグザンダーが弓に矢を番え、シュトライヒが愉快そうに笑ってからロッドを構える。マテリアルが活性化し、深い集中と共に全身に満ちていく。
聞こえてきたのは馬の足音。顔を上げれば、丘を下り疾走する恭也と馬の姿と共に、5体の雑魔がついに目に入った。
時に輝き、時に赤黒く沈む茨の文様を右半身に這わせ、恭也はすっと銃を構えた腕を上げる。
「さぁて、これで一匹潰せたら楽なんだが!」
雑魔がこちらに頭を向けた瞬間、恭也はシルバーマグの引き金を引く。放たれるのは銃弾だけではなく、マテリアルの力の奔流たる機導砲。
「ギャイン!」
姿の通り狼のような悲鳴を上げて、雑魔の身体が大きく跳ねる。
けれど、その一撃は雑魔に大きな傷を付けたが、倒すには至らなかった。さらに馬が銃声に驚いたのか、鳴き声を上げて怯えを見せる。
「……流石に、軍馬じゃねぇからな」
もう少し敵の群れに撃ち込んでやりたかったが、これ以上やっては馬がパニックを起こす可能性もあるだろう。
幸いにして、雑魔達は既に恭也を敵として認識したらしい、くるりと馬首を巡らせ、雑魔達が迫るのを待って、恭也は馬を走らせた。
馬がやや怯えているようなので、慎重に。大人しい気性ではあるのか、怖がってはいても乗り手を振り落とそうとはせず、一生懸命に駆けてゆく。
雑魔との距離が広がり過ぎず、かといって追いつかれもせぬよう、恭也は丁寧に手綱を取る。
見える仲間達の影は2つ。けれどそれも、計画した作戦通りだ。
振り向けば、距離を少しでも詰めようというのか必死に追ってくる雑魔。
「よっし、あと少し!」
気合を入れ、恭也は強く手綱を握り締めた。
恭也を乗せた馬がアレグザンダーとシュトライヒの間を抜けた次の瞬間、同時に2つの音が駆けた。
「目標視認……当てる!」
「キッヒッヒ!! ボクの魔法を食らってさっさとしになよ!!」
矢が風を切る音。
マテリアルがエネルギーの矢を形成し、飛ぶ音。
それに再び怯えかけた馬の速度を緩め、恭也は急いで飛び降りた。
「っと!」
バランスを崩して、地面に転がる。乗馬はあらかじめ習ってはいたが、走る馬から降りる動きは難しい――けれど、転んだだけで怪我もないのは鍛錬の成果か。
馬はもう少し駆けて、少し離れてた位置で振り向く。近づくことはできないが、主を見捨てる気もないようで、そこにじっと佇んだ。
その様子にほっとした表情を見せ、すぐさま跳ね起きた恭也はシルバーマグを構え直した。
アレグザンダーとシュトライヒに迫りつつある雑魔の背後で、ざっと草が揺れた。
次の瞬間、銀色の模様に総身を一瞬輝かせ、ティーアが藪から飛び出す。淡い銀の光はすぐに消え、けれど灰色だった瞳は蒼に輝いて。
「貴様らのような無粋な連中がこんなとこに来たのが運の尽きだ」
黒漆太刀の鯉口を切り、即座に居合に似た構えから雑魔の脚を狙い抜刀する。
「ギャッ!」
気配に振り向いてはいたが、避けることはできずに雑魔が悲鳴を上げる。
さらにハルが、動物霊の力を借りて高めた脚力で駆け抜け、闘心を燃えたたせてダガーを握った両手を交差させる。僅かに開いた唇からは鋭くなった犬歯が覗き、なびく紫の髪の先が黒に染まる。
さながら二振りのダガーは、一対の牙であった。
己も傷つくことを恐れず、舞うように近づいては離れ、その間に斬りつけ、雑魔を翻弄する。
その隣を、巨体が駆けた。
筋骨は山の如く盛り上がり、俊敏とは言えなくても速度以上の迫力がある。それでも知性なきゆえか怯まず向かってきた雑魔に、バルバロスは大斧ラブリュスを振り下ろす!
「ぶるあぁぁぁあ!!」
粉砕。
斬る、というよりは叩き潰す、と言った方がいいような一撃に、雑魔の身体が一瞬で溶けた。
その代わり、斧の方も地面に思いきり突き刺さっている――が、再び上げた気勢と共に思いっきり引っこ抜く。土が派手に跳ねる。
「さっさとドキナヨ! キッヒッヒ!!」
「ぬおっ!?」
そして後ろからかけられた声に慌てて飛び退く。その場所を駆けて行くシュトライヒのマジックアロー。
さらにティーアがいそいで飛びすざれば、彼が相手をしていた雑魔の眉間を魔力の矢が刺し貫く。
「さあさあショータイムだよ! キッヒッヒ!」
その時には既に次のマジックアローが用意され、的確に敵を射抜いていく。たまに味方にかすりそうだが、意外とコントロールは緻密なのだ。
そして弱った雑魔を、弓に矢を番えたアレグザンダーは見逃さなかった。
すっと息を詰め、動き回る敵に照準を合わせ――放つ!
「ギャウ……ッ!」
体中に生えた刃の隙間から喉笛を射抜かれ、悶絶した雑魔がやがて地面に倒れて消える。
「タンゴ、ダウン……次!」
すぐさまアレグザンダーは、矢筒から取り出した矢を再び番えた。
「グルルルル……」
3体に数を減らした雑魔達の目前に、ティーアとバルバロスがそれぞれ立ちはだかる。
ティーアは素早さとマテリアルを集中させた脚にもの言わせ、雑魔の突進をかわしながら刃の間の肌に的確に太刀を叩きこむ。刻まれた傷は浅く、数も少ない。
対照的にバルバロスは、傷つくことを全く恐れずとにかく斧を振り回す。雑魔が刃をその体に生やすなら、それごと叩き斬ればいい、というように。
かすりもしないことも多いのだが、当たれば必ず大打撃だ。
がきり、と刃がラブリュスを止め――切れず、深い傷が雑魔を襲う。怒りの唸り声を上げた突撃をその身で受けて、バルバロスの紅潮した肌がさらに血の赤に染まる。
そして、最後の1体は。
最後方でシルバーマグを構えていた柊を、狙いに行こうと走り出す――その目前に、相手をしていた雑魔が倒れフリーになったハルが駆け込んだ!
(この作戦、ただでさえ柊への負担が大きいんだから……依頼が終わったら改めて労わってあげるけど!)
ハルを新たな獲物と見て取ったらしい雑魔が、身体を丸めるようにしてその刃を彼女に向ける。横に飛ぶと同時に胸の前でダガーをクロスさせて急所を守ったハルの、腕と脚に灼熱の如き痛みが走った。
「うくっ……!」
それでも、僅かに距離を取って霊力の加護を受け、またすぐさま雑魔へと向き直る。シュトライヒのマジックアローとアレグザンダーの矢が突き刺さり、深く開いた傷をさらに抉るようにハルはダガーを振るう。
ティーアの肌の上を、銀色の模様が明滅する――激しくなる戦いに、制御が利かなくなりつつあるのだ。
全身に巡らせたマテリアルを追うように、輝きが体の隅々まで走って行く。
「獣を狩る銀獣の戦い、魂に刻んで逝きやがれ」
刃に囲まれた喉元を狙い、スラッシュエッジを乗せた太刀が奔る。
声も上げずに、どうと倒れた雑魔が地面に溶けるように消えていく。それと、時を同じくして。
「ぬがあぁぁあ!!」
バルバロスの振り下ろした斧が、雑魔を両断し消し飛ばしていた。
ふん、と鼻から息を吐き、地面に突き刺さった斧を引き抜いて構え直したバルバロスは、ティーアと同時に最後の雑魔へ振り向いた。
いくつもの傷を体に刻まれながら、ハルは牙のようにダガーを振るう。突き出した刃が雑魔の瞳を貫き、鋭い悲鳴を上げさせた。
――動きが止まったところに、銃声。
恭也の銃弾が、反対側の目から頭部を一気に貫いて。
さらにダガーをねじり上げて引き抜いたハルの一撃で、最後の雑魔も塵と化した。
攻撃一辺倒で戦っていたため、傷の深いメンバーもいるが、マテリアルヒーリングによってほとんどの傷は癒すことができた。
「じゃ、俺はもう一狩り行ってくる」
敵の全滅を確かめ、恭也はさっと馬にまたがる。雑魔の来た方向を、念のため調べておこうということだ。
「えー、結婚式行かないの?」
「ほら、硝煙の臭いがするハンターが、楽しいパーティに出るのもあれだろ」
ハルにそう応えて、止める間もなく恭也は再び馬を走らせる。戦いが終わってほっとしたように、馬が恭也の指示に従う。
「お疲れ様ー! 危険なところやってくれて、本当にありがとうねー!」
走り出した背中にかけられたハルの声に、恭也は軽く手をひらひらと振った。
「では、俺はご老人を迎えに行って来る」
「あっ、僕も行くよ。披露宴まではもう少しありそうだし」
「キヘヘッ、それもイイねぇ。魔法を披露したらお腹減っちゃったよ」
そう言ってハンターズソサエティ支部の方に足早に歩き出したティーアに、ハルとシュトライヒが続く。
汚れたコートをアレグザンダーは脱ぎ、荷物にまとめる。そして、戦場となった草原を見渡して。
踏み荒らされてはいるが、雑草は強いものだ、すぐに生えて来るだろう。
教会の庭であれば、そうはいかなかったところ。ハンター達は、たくさんのものを守り抜いたのだ。
満足げに頷いて、アレグザンダーは仲間達の後を追った。
「それでは、花嫁を祝福して来てくれよな、ご老人」
エスコートを終えて、ティーアが笑って一礼する。
「ありがとうございます、ハンターさん方」
「これで、街のみんなもマルゴットちゃん達も安心ですわぁ」
ぺこりと頭を下げた老夫婦を見送って、ティーアは軽く太刀に手を添えて教会の周りを見回る。他に雑魔などが潜んでいないかと、結婚式を守るための気遣いだ。
「……わしのような者が居っては、邪魔になるだろう」
「え~! 祝う人は多い方がいいよ!」
そう教会の扉の傍でバルバロスとハルが押し問答していたところで、ぱっと扉が開く。
慌てて横に飛びのいた2人の前を、参列者たちが通って道の左右に列を作る。舞い散る花びらの中現れたのは、幸せいっぱいの新郎新婦。
ぱっと笑顔で拍手したハルと建物の陰に隠れようとしたバルバロス、そして身綺麗にしたアレグザンダーと自然体のシュトライヒに、ぱぁっと新郎新婦は顔を輝かせて。
「話はキャンディ屋のご夫婦から聞きましたよ、ハンターさん方」
「どうか、披露パーティにご参加ください、お礼をさせていただきたいの」
そう言われてしまえば、バルバロスもううむと唸って着いてくるしかない。
ハンター達が守り切った美しい庭で、披露パーティが始まる。
「女神ユノの祝福があらん事を……」
「ユノ様、ですか?」
尋ね返した花嫁に、アレグザンダーは微笑んで。
「リアルブルーの神様ですが、まあ、いいでしょう?」
ぱっと花嫁の顔が明るくなり、大きく頷く、。
「ええ、リアルブルーの神様にまで加護を頂けるなんて、幸せ者ですわ」
「良かったね、マルゴット。ありがとうございます」
幸せそうな2人の様子に、アレグザンダーの顔も明るい。
「お酒が足りなくなったら、これどうぞ♪」
ハルがたっぷりの酒瓶を差し出せば、酒好きそうな新郎新婦友人の間に歓声が上がる。
――ちなみに踊りの謝礼と、提供された酒の礼とのことで、この街で作った酒を山ほどお土産にもらうことになるのだが。
酒好きの彼女には嬉しい贈り物でもあっただろう。
「あっ、大きいハンターさん!」
「まもってくれてありがとー!」
「おさけ、おしゃくするからおはなしきかせて!」
隅の方でちびちび飲もうとしていたバルバロスは、いつの間にか子ども達に囲まれて困り顔、助け船を出すでもなく、キヘヘとシュトライヒが笑う。
誰かが愉快な音楽を奏でだす。それに合わせてハルが踊れば、宴は盛り上がり大喝采。新郎新婦の仲睦まじきことを祈って、ハルは踊りの最後にぱぁっと花を撒いた。
ブーケトスが行われると聞いて、慌ててアレグザンダーは静かな木陰に避難する。少し遠くから聞こえてくる、女の子達の黄色い歓声。
その楽しげな声は、見回り中のティーアの、そして森から戻って来た恭也の耳にも届いていて。
6月の結婚に幸せを。
そして守り抜いたハンター達に、祝福を!
乗用馬であり、戦闘には慣れていない。しかし今回の馬の役割は、戦いに役立つことではない。
「幸せな結婚式が一転、凄惨な殺人事件とかないわー」
ちょっと新武器の試験も兼ねて、と握り締めるのは、『シルバーマグ』と銘打たれたリボルバー。
「一狩り行こうか……!」
馬腹を蹴れば、馬は一層速くした脚でそれに応えた。
「まったく、せっかくの幸せの門出に邪魔な連中が集まってきやがって……」
ティーア・ズィルバーン(ka0122)はそう舌打ちしてから、老夫婦へと向き直る。
「安心しろご老人。無粋な連中に邪魔はさせないし、あなた達にもしっかりと花嫁を祝福させてやるよ」
そう言って軽く笑んだティーアに、老夫婦は頭を下げる。
「どうかよろしくお願いします」
「どうか、御武運を……!」
深く頷いて、ティーアは一気に走り出す。
「此処に来てから、本格的な依頼は初ですので、きっちり終わらせたいですね」
「初依頼か、なるほど……ふむ、こちらは新調した武器を試すとするか」
アレグザンダー・ブリッグス(ka1346)とバルバロス(ka2119)が、続いて駆け出しながらそれぞれの武器を手に軽く言葉を交わす。
その様子に、シュトライヒ(ka2393)が幼げな顔をニィ、と笑みに染めて。
(キッヒッヒ、ボクの魔法の披露をする時間じゃん? じゃん!?)
彼がこの戦いに赴くのは、もちろん依頼を解決するためだ。
そしてそれと同時に、魔法の威力をさらに磨きたい、自己研鑽の場にもしたいと思っている。
ハンターは、実戦によって強くなるものなのだから。
しゃらり、とその隣で涼やかな金属の触れ合う音が聞こえた。
「人の幸せを邪魔する雑魔なんて許せないっ」
たくさんの飾りを付けた華やかな踊り子の衣装にローブを羽織り、ハル(ka2201)が踊りで鍛えた脚力を存分に発揮する。
「絶対に結婚式の邪魔はさせないよ、守り抜いて見せるんだから!」
真剣な表情で両手のダガーを握り直すハルの表情が――にこ、と緩む。
「そういえば、結婚式なんだから披露パーティなんかもあるよねぇ~。依頼が終わったら参加とかできちゃうのかな? 頑張って依頼こなすんだから参加できちゃうよね♪ えへへ、美味しいお酒とか美味しい料理も沢山食べられるんだろうな~……えへへ♪」
夢見る瞳を揺らしたハルは、はっといいことを思いついたように笑みを浮かべて。
「あ、どうせなら余興として踊りとかも踊っちゃおうかなぁ」
全力疾走を続けながら、ハルは拳を突き上げる。
「よ~し、頑張って盛り上げちゃうぞ~♪」
しかしここまで凄まじい肺活量であった。
「応!」
「お、おう?」
ハンター達の何人かが、それぞれのリアクションでハルへと応える。
「っと、この辺りか……よし、近付く奴らは隠れて、射撃組は準備頼むぜ!」
足を止めたティーアの言葉に、仲間達が了解と頷く。接近戦を行うティーアやバルバロス、ハルは木々の陰、藪の中、それぞれに身を潜ませて。
アレグザンダーが弓に矢を番え、シュトライヒが愉快そうに笑ってからロッドを構える。マテリアルが活性化し、深い集中と共に全身に満ちていく。
聞こえてきたのは馬の足音。顔を上げれば、丘を下り疾走する恭也と馬の姿と共に、5体の雑魔がついに目に入った。
時に輝き、時に赤黒く沈む茨の文様を右半身に這わせ、恭也はすっと銃を構えた腕を上げる。
「さぁて、これで一匹潰せたら楽なんだが!」
雑魔がこちらに頭を向けた瞬間、恭也はシルバーマグの引き金を引く。放たれるのは銃弾だけではなく、マテリアルの力の奔流たる機導砲。
「ギャイン!」
姿の通り狼のような悲鳴を上げて、雑魔の身体が大きく跳ねる。
けれど、その一撃は雑魔に大きな傷を付けたが、倒すには至らなかった。さらに馬が銃声に驚いたのか、鳴き声を上げて怯えを見せる。
「……流石に、軍馬じゃねぇからな」
もう少し敵の群れに撃ち込んでやりたかったが、これ以上やっては馬がパニックを起こす可能性もあるだろう。
幸いにして、雑魔達は既に恭也を敵として認識したらしい、くるりと馬首を巡らせ、雑魔達が迫るのを待って、恭也は馬を走らせた。
馬がやや怯えているようなので、慎重に。大人しい気性ではあるのか、怖がってはいても乗り手を振り落とそうとはせず、一生懸命に駆けてゆく。
雑魔との距離が広がり過ぎず、かといって追いつかれもせぬよう、恭也は丁寧に手綱を取る。
見える仲間達の影は2つ。けれどそれも、計画した作戦通りだ。
振り向けば、距離を少しでも詰めようというのか必死に追ってくる雑魔。
「よっし、あと少し!」
気合を入れ、恭也は強く手綱を握り締めた。
恭也を乗せた馬がアレグザンダーとシュトライヒの間を抜けた次の瞬間、同時に2つの音が駆けた。
「目標視認……当てる!」
「キッヒッヒ!! ボクの魔法を食らってさっさとしになよ!!」
矢が風を切る音。
マテリアルがエネルギーの矢を形成し、飛ぶ音。
それに再び怯えかけた馬の速度を緩め、恭也は急いで飛び降りた。
「っと!」
バランスを崩して、地面に転がる。乗馬はあらかじめ習ってはいたが、走る馬から降りる動きは難しい――けれど、転んだだけで怪我もないのは鍛錬の成果か。
馬はもう少し駆けて、少し離れてた位置で振り向く。近づくことはできないが、主を見捨てる気もないようで、そこにじっと佇んだ。
その様子にほっとした表情を見せ、すぐさま跳ね起きた恭也はシルバーマグを構え直した。
アレグザンダーとシュトライヒに迫りつつある雑魔の背後で、ざっと草が揺れた。
次の瞬間、銀色の模様に総身を一瞬輝かせ、ティーアが藪から飛び出す。淡い銀の光はすぐに消え、けれど灰色だった瞳は蒼に輝いて。
「貴様らのような無粋な連中がこんなとこに来たのが運の尽きだ」
黒漆太刀の鯉口を切り、即座に居合に似た構えから雑魔の脚を狙い抜刀する。
「ギャッ!」
気配に振り向いてはいたが、避けることはできずに雑魔が悲鳴を上げる。
さらにハルが、動物霊の力を借りて高めた脚力で駆け抜け、闘心を燃えたたせてダガーを握った両手を交差させる。僅かに開いた唇からは鋭くなった犬歯が覗き、なびく紫の髪の先が黒に染まる。
さながら二振りのダガーは、一対の牙であった。
己も傷つくことを恐れず、舞うように近づいては離れ、その間に斬りつけ、雑魔を翻弄する。
その隣を、巨体が駆けた。
筋骨は山の如く盛り上がり、俊敏とは言えなくても速度以上の迫力がある。それでも知性なきゆえか怯まず向かってきた雑魔に、バルバロスは大斧ラブリュスを振り下ろす!
「ぶるあぁぁぁあ!!」
粉砕。
斬る、というよりは叩き潰す、と言った方がいいような一撃に、雑魔の身体が一瞬で溶けた。
その代わり、斧の方も地面に思いきり突き刺さっている――が、再び上げた気勢と共に思いっきり引っこ抜く。土が派手に跳ねる。
「さっさとドキナヨ! キッヒッヒ!!」
「ぬおっ!?」
そして後ろからかけられた声に慌てて飛び退く。その場所を駆けて行くシュトライヒのマジックアロー。
さらにティーアがいそいで飛びすざれば、彼が相手をしていた雑魔の眉間を魔力の矢が刺し貫く。
「さあさあショータイムだよ! キッヒッヒ!」
その時には既に次のマジックアローが用意され、的確に敵を射抜いていく。たまに味方にかすりそうだが、意外とコントロールは緻密なのだ。
そして弱った雑魔を、弓に矢を番えたアレグザンダーは見逃さなかった。
すっと息を詰め、動き回る敵に照準を合わせ――放つ!
「ギャウ……ッ!」
体中に生えた刃の隙間から喉笛を射抜かれ、悶絶した雑魔がやがて地面に倒れて消える。
「タンゴ、ダウン……次!」
すぐさまアレグザンダーは、矢筒から取り出した矢を再び番えた。
「グルルルル……」
3体に数を減らした雑魔達の目前に、ティーアとバルバロスがそれぞれ立ちはだかる。
ティーアは素早さとマテリアルを集中させた脚にもの言わせ、雑魔の突進をかわしながら刃の間の肌に的確に太刀を叩きこむ。刻まれた傷は浅く、数も少ない。
対照的にバルバロスは、傷つくことを全く恐れずとにかく斧を振り回す。雑魔が刃をその体に生やすなら、それごと叩き斬ればいい、というように。
かすりもしないことも多いのだが、当たれば必ず大打撃だ。
がきり、と刃がラブリュスを止め――切れず、深い傷が雑魔を襲う。怒りの唸り声を上げた突撃をその身で受けて、バルバロスの紅潮した肌がさらに血の赤に染まる。
そして、最後の1体は。
最後方でシルバーマグを構えていた柊を、狙いに行こうと走り出す――その目前に、相手をしていた雑魔が倒れフリーになったハルが駆け込んだ!
(この作戦、ただでさえ柊への負担が大きいんだから……依頼が終わったら改めて労わってあげるけど!)
ハルを新たな獲物と見て取ったらしい雑魔が、身体を丸めるようにしてその刃を彼女に向ける。横に飛ぶと同時に胸の前でダガーをクロスさせて急所を守ったハルの、腕と脚に灼熱の如き痛みが走った。
「うくっ……!」
それでも、僅かに距離を取って霊力の加護を受け、またすぐさま雑魔へと向き直る。シュトライヒのマジックアローとアレグザンダーの矢が突き刺さり、深く開いた傷をさらに抉るようにハルはダガーを振るう。
ティーアの肌の上を、銀色の模様が明滅する――激しくなる戦いに、制御が利かなくなりつつあるのだ。
全身に巡らせたマテリアルを追うように、輝きが体の隅々まで走って行く。
「獣を狩る銀獣の戦い、魂に刻んで逝きやがれ」
刃に囲まれた喉元を狙い、スラッシュエッジを乗せた太刀が奔る。
声も上げずに、どうと倒れた雑魔が地面に溶けるように消えていく。それと、時を同じくして。
「ぬがあぁぁあ!!」
バルバロスの振り下ろした斧が、雑魔を両断し消し飛ばしていた。
ふん、と鼻から息を吐き、地面に突き刺さった斧を引き抜いて構え直したバルバロスは、ティーアと同時に最後の雑魔へ振り向いた。
いくつもの傷を体に刻まれながら、ハルは牙のようにダガーを振るう。突き出した刃が雑魔の瞳を貫き、鋭い悲鳴を上げさせた。
――動きが止まったところに、銃声。
恭也の銃弾が、反対側の目から頭部を一気に貫いて。
さらにダガーをねじり上げて引き抜いたハルの一撃で、最後の雑魔も塵と化した。
攻撃一辺倒で戦っていたため、傷の深いメンバーもいるが、マテリアルヒーリングによってほとんどの傷は癒すことができた。
「じゃ、俺はもう一狩り行ってくる」
敵の全滅を確かめ、恭也はさっと馬にまたがる。雑魔の来た方向を、念のため調べておこうということだ。
「えー、結婚式行かないの?」
「ほら、硝煙の臭いがするハンターが、楽しいパーティに出るのもあれだろ」
ハルにそう応えて、止める間もなく恭也は再び馬を走らせる。戦いが終わってほっとしたように、馬が恭也の指示に従う。
「お疲れ様ー! 危険なところやってくれて、本当にありがとうねー!」
走り出した背中にかけられたハルの声に、恭也は軽く手をひらひらと振った。
「では、俺はご老人を迎えに行って来る」
「あっ、僕も行くよ。披露宴まではもう少しありそうだし」
「キヘヘッ、それもイイねぇ。魔法を披露したらお腹減っちゃったよ」
そう言ってハンターズソサエティ支部の方に足早に歩き出したティーアに、ハルとシュトライヒが続く。
汚れたコートをアレグザンダーは脱ぎ、荷物にまとめる。そして、戦場となった草原を見渡して。
踏み荒らされてはいるが、雑草は強いものだ、すぐに生えて来るだろう。
教会の庭であれば、そうはいかなかったところ。ハンター達は、たくさんのものを守り抜いたのだ。
満足げに頷いて、アレグザンダーは仲間達の後を追った。
「それでは、花嫁を祝福して来てくれよな、ご老人」
エスコートを終えて、ティーアが笑って一礼する。
「ありがとうございます、ハンターさん方」
「これで、街のみんなもマルゴットちゃん達も安心ですわぁ」
ぺこりと頭を下げた老夫婦を見送って、ティーアは軽く太刀に手を添えて教会の周りを見回る。他に雑魔などが潜んでいないかと、結婚式を守るための気遣いだ。
「……わしのような者が居っては、邪魔になるだろう」
「え~! 祝う人は多い方がいいよ!」
そう教会の扉の傍でバルバロスとハルが押し問答していたところで、ぱっと扉が開く。
慌てて横に飛びのいた2人の前を、参列者たちが通って道の左右に列を作る。舞い散る花びらの中現れたのは、幸せいっぱいの新郎新婦。
ぱっと笑顔で拍手したハルと建物の陰に隠れようとしたバルバロス、そして身綺麗にしたアレグザンダーと自然体のシュトライヒに、ぱぁっと新郎新婦は顔を輝かせて。
「話はキャンディ屋のご夫婦から聞きましたよ、ハンターさん方」
「どうか、披露パーティにご参加ください、お礼をさせていただきたいの」
そう言われてしまえば、バルバロスもううむと唸って着いてくるしかない。
ハンター達が守り切った美しい庭で、披露パーティが始まる。
「女神ユノの祝福があらん事を……」
「ユノ様、ですか?」
尋ね返した花嫁に、アレグザンダーは微笑んで。
「リアルブルーの神様ですが、まあ、いいでしょう?」
ぱっと花嫁の顔が明るくなり、大きく頷く、。
「ええ、リアルブルーの神様にまで加護を頂けるなんて、幸せ者ですわ」
「良かったね、マルゴット。ありがとうございます」
幸せそうな2人の様子に、アレグザンダーの顔も明るい。
「お酒が足りなくなったら、これどうぞ♪」
ハルがたっぷりの酒瓶を差し出せば、酒好きそうな新郎新婦友人の間に歓声が上がる。
――ちなみに踊りの謝礼と、提供された酒の礼とのことで、この街で作った酒を山ほどお土産にもらうことになるのだが。
酒好きの彼女には嬉しい贈り物でもあっただろう。
「あっ、大きいハンターさん!」
「まもってくれてありがとー!」
「おさけ、おしゃくするからおはなしきかせて!」
隅の方でちびちび飲もうとしていたバルバロスは、いつの間にか子ども達に囲まれて困り顔、助け船を出すでもなく、キヘヘとシュトライヒが笑う。
誰かが愉快な音楽を奏でだす。それに合わせてハルが踊れば、宴は盛り上がり大喝采。新郎新婦の仲睦まじきことを祈って、ハルは踊りの最後にぱぁっと花を撒いた。
ブーケトスが行われると聞いて、慌ててアレグザンダーは静かな木陰に避難する。少し遠くから聞こえてくる、女の子達の黄色い歓声。
その楽しげな声は、見回り中のティーアの、そして森から戻って来た恭也の耳にも届いていて。
6月の結婚に幸せを。
そして守り抜いたハンター達に、祝福を!
依頼結果
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MVP一覧
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柊 恭也(ka0711)
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依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 柊 恭也(ka0711) 人間(リアルブルー)|18才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2014/06/28 07:49:48 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/06/24 20:37:11 |