ゲスト
(ka0000)
氷上の狼
マスター:蒼かなた

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/02/19 12:00
- 完成日
- 2015/02/22 13:14
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●凍りついた湖で
季節は冬。この時期になれば雪も降り積もりいたる所が白銀世界へと変わっていく。
特に北部に位置する地では、場所によっては全てが雪に埋もれてしまうような場所もある。
そういった過酷な地でも人々は逞しく生活している。
小さな村では子供達は雪遊びに興じ。大人達は猟師でもないなら外には出ず、最近この辺境の街に届いた盤上遊戯で睨めっこを続けていた。
そんな村から少し離れた場所には小さな湖があり、完全に凍りついた水面は大の大人が乗っても罅一つ入らないほどに頑丈だ。
今も初老の男が湖の片隅で、その頑丈な氷に拳大ほどの穴を開けて釣り糸を垂らしていた。
手に持つ小さな竿がぴくりと動くと、初老の男はさっと糸を引き上げる。
すると糸の先に小さな魚が3匹ほどぴちぴちと跳ねていた。
男は笑みを浮かべつつ魚を古いバケツに放り込むと、また糸を垂らした。
寒さが厳しい場所だが、こんなのんびりとした時間を過ごせるのは幸福なことだ。
男はそんなことをぼんやりと考えているとまた竿が小さく揺れる。
「ほほっ、今日も大漁の予感がするな」
男は意気揚々と竿を上げようとした。だが、次の瞬間ぐんっと竿がおもいっきりしなる。
男は何事かと思いつつも竿を支えようとしたが、竿は重さに耐え切れずすぐに軽い音と共に折れ、そしてぶつりと糸も切れてしまった。
何だったのかと、男は折れた竿を片手に呆然と立ち尽くす。
そして男は気づいてハッとした表情をした。周りがとても静かなのだ。
冬ということもあり山の動物達も大抵は眠りについているが、それでも僅かには存在している。
少なくともこんなに静かになることはまず無かった。
「オオォォーン!」
突然周囲に響いたのは遠吠えだった。それを聞いた男は慌てて周囲を見渡す。
冬で雪が降っているとはいえここは山の麓に近い。腹を空かせた狼が降りてくることは稀にだがあった。
今回もそうなのかと、男は釣具を一度置き、林に場所を移してから周囲を再度確認する。
すると凍っている湖の上に異様な光景があった。氷が動いているのだ。氷上を滑るようにして氷の塊が移動している。
そんな馬鹿なと目を凝らしてみると、その輪郭がはっきりと見えてきた。
それは一言で言ってしまえば氷で出来た狼だった。角ばり尖った氷が毛並みのように見え、青白い氷の体の中で唯一その目だけが赤く光っていた。
その一体を目にしたところで、また一体、もう一体と姿を現す。
その現れ方も異常だ。凍りついた湖面の氷がバキバキと音を立てながら隆起し、それが氷の狼を形作っていくのだ。
氷でできた狼達は周囲を見渡し、氷の上に鼻をこすりつけ、また耳らしき氷片を揺らす。
それは正しく獲物を探す狼そのもので、男はそれに気づいたところで我に返った。
「ば、化け物だ。すぐ村長に知らせないとっ」
男は氷の狼達に気づかれぬよう村へと急ぎ戻った。
●氷上へのお誘い
今日もハンターオフィスは多くのハンター達で賑わっていた。
冬の雪降る日でも休まず営業。寧ろこんな時期だからこそアレコレとトラブルが起きてハンターの手が必要になるのだ。
そしてとある辺境に現れた歪虚の情報が、早くもこのオフィスに届いていた。
「氷で出来た狼ですか。ほぼ間違いなく歪虚ですね」
オフィスの職員は目撃情報などを確認しつつ、ハンター向けの依頼票を作成していく。
現在目撃されているのはその村の近くにある湖の周辺のみ。その場所から何故離れないのかは不明だ。
しかし何時近くにある村が襲われないとも限らない。速やかに退治を行う必要があるだろう。
「大きさも仕草も狼そのもの。ただ、歪虚である以上何をしてくるか分からないので注意が必要ですね」
注意事項をまとめつつ、オフィス職員は依頼票を作り上げる。
十数分もしないうちに完成したそれを見直し、依頼として申請許可を行おうとしたところでふと一つ思い出し、備考に一文付け加えた。
「凍った湖の氷の上で戦うことになる可能性あり。滑ったり転倒に注意、っと」
季節は冬。この時期になれば雪も降り積もりいたる所が白銀世界へと変わっていく。
特に北部に位置する地では、場所によっては全てが雪に埋もれてしまうような場所もある。
そういった過酷な地でも人々は逞しく生活している。
小さな村では子供達は雪遊びに興じ。大人達は猟師でもないなら外には出ず、最近この辺境の街に届いた盤上遊戯で睨めっこを続けていた。
そんな村から少し離れた場所には小さな湖があり、完全に凍りついた水面は大の大人が乗っても罅一つ入らないほどに頑丈だ。
今も初老の男が湖の片隅で、その頑丈な氷に拳大ほどの穴を開けて釣り糸を垂らしていた。
手に持つ小さな竿がぴくりと動くと、初老の男はさっと糸を引き上げる。
すると糸の先に小さな魚が3匹ほどぴちぴちと跳ねていた。
男は笑みを浮かべつつ魚を古いバケツに放り込むと、また糸を垂らした。
寒さが厳しい場所だが、こんなのんびりとした時間を過ごせるのは幸福なことだ。
男はそんなことをぼんやりと考えているとまた竿が小さく揺れる。
「ほほっ、今日も大漁の予感がするな」
男は意気揚々と竿を上げようとした。だが、次の瞬間ぐんっと竿がおもいっきりしなる。
男は何事かと思いつつも竿を支えようとしたが、竿は重さに耐え切れずすぐに軽い音と共に折れ、そしてぶつりと糸も切れてしまった。
何だったのかと、男は折れた竿を片手に呆然と立ち尽くす。
そして男は気づいてハッとした表情をした。周りがとても静かなのだ。
冬ということもあり山の動物達も大抵は眠りについているが、それでも僅かには存在している。
少なくともこんなに静かになることはまず無かった。
「オオォォーン!」
突然周囲に響いたのは遠吠えだった。それを聞いた男は慌てて周囲を見渡す。
冬で雪が降っているとはいえここは山の麓に近い。腹を空かせた狼が降りてくることは稀にだがあった。
今回もそうなのかと、男は釣具を一度置き、林に場所を移してから周囲を再度確認する。
すると凍っている湖の上に異様な光景があった。氷が動いているのだ。氷上を滑るようにして氷の塊が移動している。
そんな馬鹿なと目を凝らしてみると、その輪郭がはっきりと見えてきた。
それは一言で言ってしまえば氷で出来た狼だった。角ばり尖った氷が毛並みのように見え、青白い氷の体の中で唯一その目だけが赤く光っていた。
その一体を目にしたところで、また一体、もう一体と姿を現す。
その現れ方も異常だ。凍りついた湖面の氷がバキバキと音を立てながら隆起し、それが氷の狼を形作っていくのだ。
氷でできた狼達は周囲を見渡し、氷の上に鼻をこすりつけ、また耳らしき氷片を揺らす。
それは正しく獲物を探す狼そのもので、男はそれに気づいたところで我に返った。
「ば、化け物だ。すぐ村長に知らせないとっ」
男は氷の狼達に気づかれぬよう村へと急ぎ戻った。
●氷上へのお誘い
今日もハンターオフィスは多くのハンター達で賑わっていた。
冬の雪降る日でも休まず営業。寧ろこんな時期だからこそアレコレとトラブルが起きてハンターの手が必要になるのだ。
そしてとある辺境に現れた歪虚の情報が、早くもこのオフィスに届いていた。
「氷で出来た狼ですか。ほぼ間違いなく歪虚ですね」
オフィスの職員は目撃情報などを確認しつつ、ハンター向けの依頼票を作成していく。
現在目撃されているのはその村の近くにある湖の周辺のみ。その場所から何故離れないのかは不明だ。
しかし何時近くにある村が襲われないとも限らない。速やかに退治を行う必要があるだろう。
「大きさも仕草も狼そのもの。ただ、歪虚である以上何をしてくるか分からないので注意が必要ですね」
注意事項をまとめつつ、オフィス職員は依頼票を作り上げる。
十数分もしないうちに完成したそれを見直し、依頼として申請許可を行おうとしたところでふと一つ思い出し、備考に一文付け加えた。
「凍った湖の氷の上で戦うことになる可能性あり。滑ったり転倒に注意、っと」
リプレイ本文
●雪の降る村
依頼を受けたハンター達はすぐさま連絡のあった村へと向かった。
ちらほらと降り注ぐ雪が積もり、視界の八割は白に染まっている。
「なるほど。それで竿が折れて糸も切れたわけだな」
氷狼を目撃した初老の男にリュー・グランフェスト(ka2419)は最初に遭遇した時の話を詳しく聞いていた。
少なくとも竿が折れるような大きな魚が釣れるはずがないこと。そしてよく思い出してみると、確か氷の下に赤い何かが動いていたような気がしたと初老の男は答えた。
「やっぱり氷の中とかを移動したりできるようですね」
「また面倒な能力を持っているようだな」
予想通りだがそれゆえに困った表情をするロジー・ビィ(ka0296)の言葉に、弥勒 明影(ka0189)も賛同し腕を組んで考える。
そこに別の村人に話しにしていっていたカルス(ka3647)が頭を掻きながら戻ってくる。
湖の上を狙撃するポイントを聞きに行って来たのだが、芳しくなかったのだろうか。
「高い、寒い、滑りやすい……こいつは結構な悪条件だぜ」
「はっはっは、湖を見渡せる絶好のポイントを教えて貰ったんだがな。こいつ高いところが苦手なんだと」
どうやら情報はあったようだが、カルスにとってはあまり気が進まない場所にあるらしい。
溜息を吐くカルスに対して、白い毛皮を羽織ったジャンク(ka4072)がからからと笑いながら肩を叩く。
「そんなに広い湖じゃないみたいだからね。俺達3人で十分全体をカバー出来そうだよ」
肩に積もる雪をパンパンと掃いながらネイハム・乾風(ka2961)も少し古い紙切れを片手に戻ってくる。
そこには大まかに湖回りの様子を描いた手書きの地図だった。
「でも何で氷の上から離れないんッスかね? 理由があるのか……」
少し遅れて村に入ったフレン・ガーランド(ka3847)もその話に加わる。
最初に氷狼が発見されて既に2~3日は経っているが村に被害は出ていないらしい。
普通の狼の群れなら、と考えても相手は歪虚だ。常識が通じない可能性も高い。
何にしても用心するにこしたことはないだろう。
「何れにせよ迷惑だとすれば撃退するしかないな。それが私達の仕事だ」
フレンと共にやってきたCharlotte・V・K(ka0468)は手にした袋を皆に向けて差し出す。
中には雪中行軍用のスパイク付きのブーツが入っていた。
「多少重いから動きが鈍るかもしれないが、滑って転ぶよりはマシだろう」
Charlotteは既に履き替えているらしく、彼女の足跡にはスパイクの尖った先端の跡が見て取れた。
「まっ、後はやってみるしかないだろう」
情報も集めた、対策も講じた。作戦もある。それならあとはやるだけだとジャンクは仲間のハンター達に視線を巡らせる。
「おうっ、どんな敵でも俺がぶっとばしてやるぜ!」
「寒いし……さっさと終わらせよう」
「ええ、村の方々が安心して暮らせるように……氷の華と散って頂きましょう」
それぞれの意気込みを持って、ハンター達は村外れの湖へと向かった。
●氷上戦は静かで冷たく
ハンター達が立てた作戦は簡単でシンプルなものだ。囮となる数名が湖の中に入り、氷狼が出てきたところを叩く。
まずは猟撃士のネイハム、カルス、ジャンクはそれぞれの狙撃ポイントへと移動する
それを確認した上で囮となる残りのメンバー凍りついた湖の上へと歩を進める。
雪とは違い、ガツガツと硬い氷を削る感触を足元に感じつつ進んでいく。
見渡す限り、今のところ氷狼の姿は見受けられない。
湖は勿論、周囲の木々が傷つけられた様子も無く、本当に歪虚がここにいるのか不思議になるほどに綺麗で静かな場所だ。
「被害が出る前に終わらす! ……って、思ってたんだけど。いないな、氷狼」
湖の半ばほどまで進んだが一向に歪虚の気配は感じられない。
「気を抜かないようにな。さっきの予測通り、突然足元からがぶりとくるかもしれない」
明影は口元に煙草を咥えながら、白い手袋をしたその手には既にピストルを軽く握っている。
「凍った湖面も綺麗なものッス。特に目立ったものも見当たらないし……まさかこの下が巣になってたりするんッスかね?」
フレンは足をまげてしゃがみ、凍りついた湖面を見る。青みがかった氷は不透明で湖の中までは見通せなかった。
しかし、見えない。隠されているからこそ疑念を払うことはできない。
「―-皆さん」
ぽつりとロジーがこの場にいる仲間全員に声を掛ける。
その声は凛と張っており、彼女自身も手にしている長剣と短剣を構え周囲への警戒を強めていた。
彼女の耳には、先ほどまでは僅かに聞こえていた森の音が聞こえなくなっていた。
情報にあった初老の男性が始めて氷狼と遭遇した時も同じように森から音がなくなった、と言っていたことを彼女は思い出した。
臨戦態勢に入ったハンター達はすぐに肌を刺すような冷気を感じることが出来た。
凍った湖面から白い靄が立ち上ったかと思うと、そこからパキパキと小さな音を立てながら氷が隆起してくる。
1秒もしないうちに大きな氷の塊が2つ。また音を立てながら形を変え、それはやがて狼のような形となった。
そして突然現れた氷狼の赤い瞳がハンター達を捉える。
「ウオォン!」
氷狼が咆える。それは威嚇なのか、少なくとも敵意を持ってその氷狼はハンター達と対峙した。
「うわぁっ!? び、びびって下がったりなんてしないッスよ!」
フレンは手にした薙刀を腰溜めに構え、横薙ぎに振るう。しかし氷狼はそれをひらりと避ける。
そしてその一匹が避けたところで、もう一匹が薙刀を振りぬいた体勢のフレンに飛び掛る。
衝撃を覚悟したフレンだが、突然自分の目の前に光の壁が現れ氷狼の体を受け止める。
攻撃が失敗した氷狼はすぐさま距離を取りハンター達を囲むように氷の上を滑るように走る。
「2匹か。目撃情報より少ないということは……やれやれ、どうやらこっちの実力を測りにきたようだな」
Charlotteは僅かに眉を顰め、手にしていたリボルバーの引き金を絞る。発砲音と共に吐き出された金属弾は狼の体に当たるが、入射角が悪かったのか硬いその氷の毛並みに弾かれあらぬ方向へと跳ね返された。
その瞬間に狼が哂った気がする。酌に触るがその青白い牙で喰らい付かれる気はない。Charlotteはナイフを素早く抜き放つと、飛び掛ってくる牙を受け止めながらその勢いのまま後方へ逸らす。
と、次の瞬間。1つの風切り音がハンター達の耳に入る。
そしてハンター達の周囲を走り、機を窺っていた氷狼の一匹が転倒しそのまま氷の上を数メートル滑った。
倒れた氷狼の胴体には削られた痕が出来ていた。
「ちょこまか動くんじゃねえよ。狙ったところに当たらないじゃねえか」
弓を手にしたカルスが舌打ちをする。狙ったのは頭。しかし動き回る氷狼相手ではピンポイントで当てるのはやはり難しい。
さらに2回の銃声が周囲に響く。その音と共に転倒していた氷狼の前脚と尾の部分が僅かに砕けた。
「削れて舞う氷がキラキラしてとても綺麗だし、狼にはせいぜい踊ってもらおう」
くすりと笑ったネイハムはまた銃のスコープを覗き込み、次の弾丸を撃ち込むべき標的を探す。
そんな2人の様子を木々と雪の中に隠れたジャンクは肩を竦めながら小さくぼやく。
「狩人は獲物と死人よりも静かに潜む……ってのは、どうやら今のところ俺だけみたいだな」
そういう戦い方もあるんだろうと、ジャンクは雪に溶け込むような白い姿のまま次の狙撃地点へと移動を開始した。
歪虚とはいえ僅か2体。それに対して8人いるハンターはあっという間に氷狼を削っていく。
「今度こそっ!」
フレンの振るう薙刀が氷狼の身を削る。しかし一向に致命的なダメージを与えられていない。
氷狼が積極的にせめて来ず、ただハンター達を囲って隙を見せれば牙と爪を振るい、あとは只管周囲を走り回るのだ。
「早くて硬い――そして予想以上に賢い」
狼ということで速さ。氷ということで硬さも予想はできていたが。最後の一つ、賢さは見誤っていたかもしれない。
氷狼達はハンター達が湖の外周にいる仲間からの狙撃の射線を気にしているのを察したのか、ハンター達を巻き込むような射線となる位置に移動して狙撃の機会を潰してくる。
そして力量差が分かっているのか決して無理をして飛び掛ってこない。着実にこちらの疲労を積み重ねようとしている。
「このままなら負けはしないが勝てもしない。しかも敵にはまだ現れてない奴が残っている。さて、どうする?」
近づこうとする氷狼を牽制しながら明影はそう呟き、仲間達に問う。
しかも相手の能力の全容は分かっていないが氷に潜む能力を持っているのは確実だ。
このまま削っていてもどこかのタイミングで逃げられてしまう可能性がある。そうなれば依頼は失敗だ。
「そんなの決まってるだろ。余裕見せてるうちにぶっ飛ばす!」
身の丈近い大きさの戦斧を構え、リューはニッと笑って見せた。
「そうだな。まずは一体、砕くとしよう」
リューの言葉にCharlotteも賛同する。多少強引にでもこの状況を変える。そうすれば活路が見出せるはず。 他のメンバーも頷き、一同は一気に攻勢に出た。
前に出るリュー、ロジー、フレンの後ろで先んじて銃を構えた明影とCharlotteが一匹の氷狼へ狙いを絞る。
「狼とは言え犬の一種なら一つ伏せでも覚えて貰おうか」
「それなら3度回ってワンと鳴くでも構わないな」
拳銃からは鈍色の弾丸と、持ち主の髪と同じような色の紫電が放たれる。
狙われた氷狼は即時回避を試みようとしたが、横合いから地面と水平に疾走してくる矢を伏せて交わしてしまった。
その矢の通過点の先には、矢を放った体勢のカルスがしてやったりといった表情を浮かべていた。
その間に弾丸と紫電が氷狼の体を捉えた。氷狼はダメージが堪えたのかよろりと一歩ふらついて、そこにハンター達は追撃を仕掛ける。
もう1匹の氷狼も仲間の窮地にその進攻を止めようと割り込もうとするが、その一匹はフレンと一発の弾丸がセーブする。
「邪魔はさせないッスよ!」
銃声と共に転倒した氷狼をフレンは薙刀にマテリアルを籠め渾身の一撃を叩き込む。
その身の氷が砕きながら氷狼は氷上で一度バウンドし、そしてすぐに起き上がってフレンを睨みつける。だが、この時点でフレンの今すべきことは完了していた。
痺れて動けない氷狼をリューが間合いに捕らえる。
「ぶっとべっ!」
手にした戦斧を下段に構え、駆け込んだ勢いのまま上段へ向けてかちあげる。
ビシリと音が鳴る。氷狼に対して確かな傷、氷の体に罅が走った。
そして続けざまに。氷上の落ちた氷狼にロジーが迫る。
目にも止まらぬ踏み込みで一瞬で肉薄し、マテリアルを纏い燐光を放つ長剣を氷狼の首筋に振り下ろす。
まるで鉄の塊に剣を叩きつけているような衝撃が手に返ってきたが、それでも構わずロジーは力を籠めて剣を振りぬく。
するとピシリと小さな切れ目が入り、そこから罅はあっという間に広がり、バキンと音を立てて氷狼の首が落ちた。
「まずは一体目です」
●氷に潜む化け物狼
1匹を倒せば残りはもう1匹。
連携をして仕掛ければすぐにでも片が付く。
そう思っていたハンター達だったが、ここにきて漸く。いや、望んではいなかった乱入者が現れた。
ひんやりとした冷気がネイハムを襲う。それが何なのか考える前に、突然自分の真横の雪が盛り上がり氷柱の形を成す。
それは先ほど見た、氷狼が現れる方法そのままだった。
「くそっ」
ネイハムは即座にその場から飛び退く。しかしそれと同時に、そしてネイハムの動きよりも早く形作られた氷狼がその肩に喰らいついた。
防寒用のコートを易々と貫き、氷の牙は鮮血を欲する。食い破られた肩には痛みによる熱さと同時に冷たさも感じる。
流れる血で温かさが失われ、突き刺された氷が急速にネイハムの肩を冷やし凍らせる。
その時、ネイハムに噛み付いていた氷狼の頭に矢がぶつかる。その矢は刺さらなかったものの衝撃で氷狼を弾くには十分な威力があった。
「おい、大丈夫かっ」
矢を放ったのはカルスだった。彼は自分の持ち場から数十メートル離れているネイハムを襲う氷狼を見事射抜いたのだ。
その腕前を賞賛したいところだが、殺しきれてない氷狼も残っていてはその余裕もない。
「手助けが必要かな?」
「どう答えても助けるけどな!」
狙撃をしているメンバーを襲った氷狼の存在を知った他のメンバーも全力で移動しこの場に到着した。
「ちょっと肩が凍っちゃって。温かいお風呂で溶かしたいから早く片付けよう」
ネイハムはスコープを覗くことなく、そのまま氷狼に向けていたライフルの引き金を引いた。
「なるほど。奇襲を掛けようと思ってたら逆にやられちまったか」
己に向かって唸る氷狼を見ながらやれやれと肩を竦めジャンクは溜息をつく。
羽織っていた白い毛皮のコートが一部赤に染まっていた。片腕が冷たさにやられ少し動きは悪いが、走る分には問題ない。
それを確認した瞬間、ジャンクは弾かれるようにして雪の地面を蹴り、仲間の居る湖へと走る。
氷狼はそれを読んでいたのか追走する形でジャンクと並ぶようにして走る。
「ちぃっ!」
飛び掛ってくる氷狼の爪をしゃがんで避ける。だが交わしきれずに頬が裂けてどろりとそこから血が流れる。
「まだリハビリ中なんだ。そんなおじさんに無理を強いるなんて――」
そこまで呟いたところで氷狼は再度ジャンクに飛び掛る。
それに対してジャンクは咄嗟に銃を構えて。
「――少しは丁重に扱えっ!」
そのまま銃床で殴り飛ばした。大したダメージにはならなかったが、意表をつけたのか氷狼はバランスを崩し雪に頭を突っ込んでいる。
「追撃するッス!」
そこで飛び込んできたのはフレンだ。薙刀を上段から思いっきり振り下ろし氷狼に叩き付けている。
さらにロジーも加わり、虚を突かれた氷狼は防戦をしつつその身を少しずつ削られていく。
肩で息をしているジャンクにCharlotteは言葉を掛ける。
「どうやら間に合ったようだな」
「もうちょっと早く助けてくれると嬉しかったんだがね」
「そうか。次は善処するよ」
そんな短い言葉を交わし。2人は銃を構えて同時に引き金を引いた。
●帰り道
歪虚の討伐成功。その報せはすぐに村中に伝わり、今回来てくれたハンター達に村人達は感謝した。
怪我もなく楽勝とはいかなかったが、治療をすればすぐに治る程度で済んだ。そう考えればまずまずの結果だったと言えるだろう。
調査の結果この周囲にはもう歪虚がいないことも分かり、ハンター達は自分のあるべき場所へと帰る。
束の間の休息と、次なる依頼をこなす英気を養う為に。
依頼を受けたハンター達はすぐさま連絡のあった村へと向かった。
ちらほらと降り注ぐ雪が積もり、視界の八割は白に染まっている。
「なるほど。それで竿が折れて糸も切れたわけだな」
氷狼を目撃した初老の男にリュー・グランフェスト(ka2419)は最初に遭遇した時の話を詳しく聞いていた。
少なくとも竿が折れるような大きな魚が釣れるはずがないこと。そしてよく思い出してみると、確か氷の下に赤い何かが動いていたような気がしたと初老の男は答えた。
「やっぱり氷の中とかを移動したりできるようですね」
「また面倒な能力を持っているようだな」
予想通りだがそれゆえに困った表情をするロジー・ビィ(ka0296)の言葉に、弥勒 明影(ka0189)も賛同し腕を組んで考える。
そこに別の村人に話しにしていっていたカルス(ka3647)が頭を掻きながら戻ってくる。
湖の上を狙撃するポイントを聞きに行って来たのだが、芳しくなかったのだろうか。
「高い、寒い、滑りやすい……こいつは結構な悪条件だぜ」
「はっはっは、湖を見渡せる絶好のポイントを教えて貰ったんだがな。こいつ高いところが苦手なんだと」
どうやら情報はあったようだが、カルスにとってはあまり気が進まない場所にあるらしい。
溜息を吐くカルスに対して、白い毛皮を羽織ったジャンク(ka4072)がからからと笑いながら肩を叩く。
「そんなに広い湖じゃないみたいだからね。俺達3人で十分全体をカバー出来そうだよ」
肩に積もる雪をパンパンと掃いながらネイハム・乾風(ka2961)も少し古い紙切れを片手に戻ってくる。
そこには大まかに湖回りの様子を描いた手書きの地図だった。
「でも何で氷の上から離れないんッスかね? 理由があるのか……」
少し遅れて村に入ったフレン・ガーランド(ka3847)もその話に加わる。
最初に氷狼が発見されて既に2~3日は経っているが村に被害は出ていないらしい。
普通の狼の群れなら、と考えても相手は歪虚だ。常識が通じない可能性も高い。
何にしても用心するにこしたことはないだろう。
「何れにせよ迷惑だとすれば撃退するしかないな。それが私達の仕事だ」
フレンと共にやってきたCharlotte・V・K(ka0468)は手にした袋を皆に向けて差し出す。
中には雪中行軍用のスパイク付きのブーツが入っていた。
「多少重いから動きが鈍るかもしれないが、滑って転ぶよりはマシだろう」
Charlotteは既に履き替えているらしく、彼女の足跡にはスパイクの尖った先端の跡が見て取れた。
「まっ、後はやってみるしかないだろう」
情報も集めた、対策も講じた。作戦もある。それならあとはやるだけだとジャンクは仲間のハンター達に視線を巡らせる。
「おうっ、どんな敵でも俺がぶっとばしてやるぜ!」
「寒いし……さっさと終わらせよう」
「ええ、村の方々が安心して暮らせるように……氷の華と散って頂きましょう」
それぞれの意気込みを持って、ハンター達は村外れの湖へと向かった。
●氷上戦は静かで冷たく
ハンター達が立てた作戦は簡単でシンプルなものだ。囮となる数名が湖の中に入り、氷狼が出てきたところを叩く。
まずは猟撃士のネイハム、カルス、ジャンクはそれぞれの狙撃ポイントへと移動する
それを確認した上で囮となる残りのメンバー凍りついた湖の上へと歩を進める。
雪とは違い、ガツガツと硬い氷を削る感触を足元に感じつつ進んでいく。
見渡す限り、今のところ氷狼の姿は見受けられない。
湖は勿論、周囲の木々が傷つけられた様子も無く、本当に歪虚がここにいるのか不思議になるほどに綺麗で静かな場所だ。
「被害が出る前に終わらす! ……って、思ってたんだけど。いないな、氷狼」
湖の半ばほどまで進んだが一向に歪虚の気配は感じられない。
「気を抜かないようにな。さっきの予測通り、突然足元からがぶりとくるかもしれない」
明影は口元に煙草を咥えながら、白い手袋をしたその手には既にピストルを軽く握っている。
「凍った湖面も綺麗なものッス。特に目立ったものも見当たらないし……まさかこの下が巣になってたりするんッスかね?」
フレンは足をまげてしゃがみ、凍りついた湖面を見る。青みがかった氷は不透明で湖の中までは見通せなかった。
しかし、見えない。隠されているからこそ疑念を払うことはできない。
「―-皆さん」
ぽつりとロジーがこの場にいる仲間全員に声を掛ける。
その声は凛と張っており、彼女自身も手にしている長剣と短剣を構え周囲への警戒を強めていた。
彼女の耳には、先ほどまでは僅かに聞こえていた森の音が聞こえなくなっていた。
情報にあった初老の男性が始めて氷狼と遭遇した時も同じように森から音がなくなった、と言っていたことを彼女は思い出した。
臨戦態勢に入ったハンター達はすぐに肌を刺すような冷気を感じることが出来た。
凍った湖面から白い靄が立ち上ったかと思うと、そこからパキパキと小さな音を立てながら氷が隆起してくる。
1秒もしないうちに大きな氷の塊が2つ。また音を立てながら形を変え、それはやがて狼のような形となった。
そして突然現れた氷狼の赤い瞳がハンター達を捉える。
「ウオォン!」
氷狼が咆える。それは威嚇なのか、少なくとも敵意を持ってその氷狼はハンター達と対峙した。
「うわぁっ!? び、びびって下がったりなんてしないッスよ!」
フレンは手にした薙刀を腰溜めに構え、横薙ぎに振るう。しかし氷狼はそれをひらりと避ける。
そしてその一匹が避けたところで、もう一匹が薙刀を振りぬいた体勢のフレンに飛び掛る。
衝撃を覚悟したフレンだが、突然自分の目の前に光の壁が現れ氷狼の体を受け止める。
攻撃が失敗した氷狼はすぐさま距離を取りハンター達を囲むように氷の上を滑るように走る。
「2匹か。目撃情報より少ないということは……やれやれ、どうやらこっちの実力を測りにきたようだな」
Charlotteは僅かに眉を顰め、手にしていたリボルバーの引き金を絞る。発砲音と共に吐き出された金属弾は狼の体に当たるが、入射角が悪かったのか硬いその氷の毛並みに弾かれあらぬ方向へと跳ね返された。
その瞬間に狼が哂った気がする。酌に触るがその青白い牙で喰らい付かれる気はない。Charlotteはナイフを素早く抜き放つと、飛び掛ってくる牙を受け止めながらその勢いのまま後方へ逸らす。
と、次の瞬間。1つの風切り音がハンター達の耳に入る。
そしてハンター達の周囲を走り、機を窺っていた氷狼の一匹が転倒しそのまま氷の上を数メートル滑った。
倒れた氷狼の胴体には削られた痕が出来ていた。
「ちょこまか動くんじゃねえよ。狙ったところに当たらないじゃねえか」
弓を手にしたカルスが舌打ちをする。狙ったのは頭。しかし動き回る氷狼相手ではピンポイントで当てるのはやはり難しい。
さらに2回の銃声が周囲に響く。その音と共に転倒していた氷狼の前脚と尾の部分が僅かに砕けた。
「削れて舞う氷がキラキラしてとても綺麗だし、狼にはせいぜい踊ってもらおう」
くすりと笑ったネイハムはまた銃のスコープを覗き込み、次の弾丸を撃ち込むべき標的を探す。
そんな2人の様子を木々と雪の中に隠れたジャンクは肩を竦めながら小さくぼやく。
「狩人は獲物と死人よりも静かに潜む……ってのは、どうやら今のところ俺だけみたいだな」
そういう戦い方もあるんだろうと、ジャンクは雪に溶け込むような白い姿のまま次の狙撃地点へと移動を開始した。
歪虚とはいえ僅か2体。それに対して8人いるハンターはあっという間に氷狼を削っていく。
「今度こそっ!」
フレンの振るう薙刀が氷狼の身を削る。しかし一向に致命的なダメージを与えられていない。
氷狼が積極的にせめて来ず、ただハンター達を囲って隙を見せれば牙と爪を振るい、あとは只管周囲を走り回るのだ。
「早くて硬い――そして予想以上に賢い」
狼ということで速さ。氷ということで硬さも予想はできていたが。最後の一つ、賢さは見誤っていたかもしれない。
氷狼達はハンター達が湖の外周にいる仲間からの狙撃の射線を気にしているのを察したのか、ハンター達を巻き込むような射線となる位置に移動して狙撃の機会を潰してくる。
そして力量差が分かっているのか決して無理をして飛び掛ってこない。着実にこちらの疲労を積み重ねようとしている。
「このままなら負けはしないが勝てもしない。しかも敵にはまだ現れてない奴が残っている。さて、どうする?」
近づこうとする氷狼を牽制しながら明影はそう呟き、仲間達に問う。
しかも相手の能力の全容は分かっていないが氷に潜む能力を持っているのは確実だ。
このまま削っていてもどこかのタイミングで逃げられてしまう可能性がある。そうなれば依頼は失敗だ。
「そんなの決まってるだろ。余裕見せてるうちにぶっ飛ばす!」
身の丈近い大きさの戦斧を構え、リューはニッと笑って見せた。
「そうだな。まずは一体、砕くとしよう」
リューの言葉にCharlotteも賛同する。多少強引にでもこの状況を変える。そうすれば活路が見出せるはず。 他のメンバーも頷き、一同は一気に攻勢に出た。
前に出るリュー、ロジー、フレンの後ろで先んじて銃を構えた明影とCharlotteが一匹の氷狼へ狙いを絞る。
「狼とは言え犬の一種なら一つ伏せでも覚えて貰おうか」
「それなら3度回ってワンと鳴くでも構わないな」
拳銃からは鈍色の弾丸と、持ち主の髪と同じような色の紫電が放たれる。
狙われた氷狼は即時回避を試みようとしたが、横合いから地面と水平に疾走してくる矢を伏せて交わしてしまった。
その矢の通過点の先には、矢を放った体勢のカルスがしてやったりといった表情を浮かべていた。
その間に弾丸と紫電が氷狼の体を捉えた。氷狼はダメージが堪えたのかよろりと一歩ふらついて、そこにハンター達は追撃を仕掛ける。
もう1匹の氷狼も仲間の窮地にその進攻を止めようと割り込もうとするが、その一匹はフレンと一発の弾丸がセーブする。
「邪魔はさせないッスよ!」
銃声と共に転倒した氷狼をフレンは薙刀にマテリアルを籠め渾身の一撃を叩き込む。
その身の氷が砕きながら氷狼は氷上で一度バウンドし、そしてすぐに起き上がってフレンを睨みつける。だが、この時点でフレンの今すべきことは完了していた。
痺れて動けない氷狼をリューが間合いに捕らえる。
「ぶっとべっ!」
手にした戦斧を下段に構え、駆け込んだ勢いのまま上段へ向けてかちあげる。
ビシリと音が鳴る。氷狼に対して確かな傷、氷の体に罅が走った。
そして続けざまに。氷上の落ちた氷狼にロジーが迫る。
目にも止まらぬ踏み込みで一瞬で肉薄し、マテリアルを纏い燐光を放つ長剣を氷狼の首筋に振り下ろす。
まるで鉄の塊に剣を叩きつけているような衝撃が手に返ってきたが、それでも構わずロジーは力を籠めて剣を振りぬく。
するとピシリと小さな切れ目が入り、そこから罅はあっという間に広がり、バキンと音を立てて氷狼の首が落ちた。
「まずは一体目です」
●氷に潜む化け物狼
1匹を倒せば残りはもう1匹。
連携をして仕掛ければすぐにでも片が付く。
そう思っていたハンター達だったが、ここにきて漸く。いや、望んではいなかった乱入者が現れた。
ひんやりとした冷気がネイハムを襲う。それが何なのか考える前に、突然自分の真横の雪が盛り上がり氷柱の形を成す。
それは先ほど見た、氷狼が現れる方法そのままだった。
「くそっ」
ネイハムは即座にその場から飛び退く。しかしそれと同時に、そしてネイハムの動きよりも早く形作られた氷狼がその肩に喰らいついた。
防寒用のコートを易々と貫き、氷の牙は鮮血を欲する。食い破られた肩には痛みによる熱さと同時に冷たさも感じる。
流れる血で温かさが失われ、突き刺された氷が急速にネイハムの肩を冷やし凍らせる。
その時、ネイハムに噛み付いていた氷狼の頭に矢がぶつかる。その矢は刺さらなかったものの衝撃で氷狼を弾くには十分な威力があった。
「おい、大丈夫かっ」
矢を放ったのはカルスだった。彼は自分の持ち場から数十メートル離れているネイハムを襲う氷狼を見事射抜いたのだ。
その腕前を賞賛したいところだが、殺しきれてない氷狼も残っていてはその余裕もない。
「手助けが必要かな?」
「どう答えても助けるけどな!」
狙撃をしているメンバーを襲った氷狼の存在を知った他のメンバーも全力で移動しこの場に到着した。
「ちょっと肩が凍っちゃって。温かいお風呂で溶かしたいから早く片付けよう」
ネイハムはスコープを覗くことなく、そのまま氷狼に向けていたライフルの引き金を引いた。
「なるほど。奇襲を掛けようと思ってたら逆にやられちまったか」
己に向かって唸る氷狼を見ながらやれやれと肩を竦めジャンクは溜息をつく。
羽織っていた白い毛皮のコートが一部赤に染まっていた。片腕が冷たさにやられ少し動きは悪いが、走る分には問題ない。
それを確認した瞬間、ジャンクは弾かれるようにして雪の地面を蹴り、仲間の居る湖へと走る。
氷狼はそれを読んでいたのか追走する形でジャンクと並ぶようにして走る。
「ちぃっ!」
飛び掛ってくる氷狼の爪をしゃがんで避ける。だが交わしきれずに頬が裂けてどろりとそこから血が流れる。
「まだリハビリ中なんだ。そんなおじさんに無理を強いるなんて――」
そこまで呟いたところで氷狼は再度ジャンクに飛び掛る。
それに対してジャンクは咄嗟に銃を構えて。
「――少しは丁重に扱えっ!」
そのまま銃床で殴り飛ばした。大したダメージにはならなかったが、意表をつけたのか氷狼はバランスを崩し雪に頭を突っ込んでいる。
「追撃するッス!」
そこで飛び込んできたのはフレンだ。薙刀を上段から思いっきり振り下ろし氷狼に叩き付けている。
さらにロジーも加わり、虚を突かれた氷狼は防戦をしつつその身を少しずつ削られていく。
肩で息をしているジャンクにCharlotteは言葉を掛ける。
「どうやら間に合ったようだな」
「もうちょっと早く助けてくれると嬉しかったんだがね」
「そうか。次は善処するよ」
そんな短い言葉を交わし。2人は銃を構えて同時に引き金を引いた。
●帰り道
歪虚の討伐成功。その報せはすぐに村中に伝わり、今回来てくれたハンター達に村人達は感謝した。
怪我もなく楽勝とはいかなかったが、治療をすればすぐに治る程度で済んだ。そう考えればまずまずの結果だったと言えるだろう。
調査の結果この周囲にはもう歪虚がいないことも分かり、ハンター達は自分のあるべき場所へと帰る。
束の間の休息と、次なる依頼をこなす英気を養う為に。
依頼結果
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相談卓 フレン・ガーランド(ka3847) 人間(クリムゾンウェスト)|14才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2015/02/19 10:24:17 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/02/17 07:40:22 |