ゲスト
(ka0000)
【不動】機動兵器武装開発意見調査会
マスター:のどか
- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
- 500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/02/22 07:30
- 完成日
- 2015/03/05 07:20
このシナリオは2日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
蒸気工場都市「フマーレ」。
多くの工場や企業がひしめき合う「職人の街」であるが、その一角に軍需産業地帯が存在していた。
同盟軍で使われる装備品等の開発・生産を行う一帯は、一見厳格な空気に満ちた、街の工場街とは若干違った雰囲気を放っている。
そんな中に、大きな空き倉庫が1つ、ぽつりと存在していた。
元は何に使われていたのかも定かでは無い。
ただ、長い事誰も使われた事は無く、かつ今も使おうと目をつけている企業も居ない、それだけは確かな場所。
だだっ広いだけのフロア、ムダに高い天井。
これを埋め尽くすだけの品がここに置かれたのだとしたら、その中から必要なものを探すのにどれだけの手間が掛かる事だろう。
今までの所持者もそんな「ムダ」の使い道に困ったのか、過去の持ち主も長い期間使用することも無く、ただこうしてガワだけが寂しく放置されていた。
「これはこれは。よく、このような物件が残っていたものですね」
そんな倉庫内に響く、一人の青年の声。
声の主、エヴァルド・ブラマンデは頭上に走る天井の梁の高さ、そのフロアのだだっぴろさ、それこそムダに重くてでかい入り口の扉などを見渡しながら、関心したように唸る。
「残ってたんじゃねぇ、使い道が無かったんだ。アンタも貿易やってたなら分かってくれると思うが、広すぎる倉庫は逆に役に立たねぇもんだ」
そんなエヴァルドの横で豪快な笑いを浮かべたフランコ・カルヴィーニは隅々を指し示すように手を広げながら、彼へ同意を求めるように切り返す。
「確かに、在庫管理も一苦労です。しかし――」
そう、エヴァルドは一度は頷いて見せるも、手元に抱えた資料に目を通しながら再び倉庫内へと視線を移す。
「――今回扱う案件から考えれば、これほどベストな環境は他に無いでしょう」
エヴァルドの持つ資料の見出しには、こう書かれていた。
――CAM/魔導アーマー、両機動兵器武装開発環境の設立について。
「しかし、これだけ大きな事によく踏み切りましたね、フマーレは」
「はは、こちとらヴァリオスさんと違って、面倒な確執は無いもんでね。サンドラさんとの話し合いで、すんなりと決まったんだ」
サンドラ――サンドラ・ボナッタというのは、フマーレの工場代表の女社長。
一方のフランコは労働者の代表であり、街を上げた事業は経営者と労働者との間で意見をすり合わせてから行動に移るのが、ここフマーレの特色であり鉄則である。
「確かに……確執は面倒なものです」
自分はその当事者であるわけなのだが……そう思いながらも、エヴァルドは噛み砕いたような苦笑を返す。
自覚ある当事者がいちいち目くじらを立てる必要も無い。しかし、フランコは何とも怖いところをビシビシと切り込んでくるものだ。それでもどこか憎めなくもあり、冗談で済ませられてしまうあたり、彼の良さであり人柄なのだろう。
「軍に資料を提出したりしなきゃならねぇらしいから本稼動は随分先の事になりそうだが、この場所だけはもう押さえてある。だからやれる事からどんどん始めていって良いとサンドラさんからのお達しが出てる。人力で出来るもんなら、開発も進めてもらって構わねぇと。だが、俺には何から始めたら良いかさっぱりでね。職人連中もやる気だけはあるんだが、巨大兵器なんていったい何を作ったら喜ばれるもんやら」
「なるほど、それで私が呼ばれたわけですね」
エヴァルドは今回の計画に対し、出資者としてその名乗りを上げていた。
その実用性は未知数ではあるものの、将来性は十二分にある。投資としては大きな買い物であるが、文字通り「未来への投資」と考えれば、それが様々な形で戻ってくるものだと確信を得られれば乗らない手は無い。
少し込み入った話をすれば、ヴァリオスの老人達は様子見を決め込んでいる。彼にとって、今が絶好の機会でもあった。
が、そんな出資者である自分が、職人事情に関しては文献で読んだ知識程度しか持っていない自分が、何故こうして現地に呼ばれたのか……その意味をなんとなく察し、同時に大きなチャンスをその脳裏に感じ取っていた。
「でしたら、現場の人間に聞いてみるのが一番でしょう」
そう、エヴァルドは柔らかい物腰で答えた。
「現場? リアルブルーから来た戦艦や特機隊だかの人間でも呼ぼうってのかい?」
「いえ、その辺りはアポイントを取るのにも中々面倒でしょうし、正しく『実情を知る』とは言い難い部分もあるかと思います」
「じゃあ、誰を呼ぶってんだ?」
しかめっつらで腕を組んで唸るフランコを前に、エヴァルドはニッコリと商人のそれらしい微笑を浮かべて演説でもするかのように手を広げてみせる。
「もっと適した人材――常日頃、それこそ今、この瞬間も機動兵器の存在を必要とする局面に立たされている人たち。彼らの意見を聞くのが適当、かつ広い見識を得られるかもしれないと思いませんか?」
あくまで問いかけるように、エヴァルドは語る。
そう言われてフランコもようやく意見の一致に至ったのか、パンと手を打って大きく頷いた。
「ああ、それがいい! 彼らなら間違いない!」
それから、ほぼエヴァルドの担当受付嬢となりつつあるルミ・ヘヴンズドアの下に、その話が舞い込んできたのは言うまでも無い。
多くの工場や企業がひしめき合う「職人の街」であるが、その一角に軍需産業地帯が存在していた。
同盟軍で使われる装備品等の開発・生産を行う一帯は、一見厳格な空気に満ちた、街の工場街とは若干違った雰囲気を放っている。
そんな中に、大きな空き倉庫が1つ、ぽつりと存在していた。
元は何に使われていたのかも定かでは無い。
ただ、長い事誰も使われた事は無く、かつ今も使おうと目をつけている企業も居ない、それだけは確かな場所。
だだっ広いだけのフロア、ムダに高い天井。
これを埋め尽くすだけの品がここに置かれたのだとしたら、その中から必要なものを探すのにどれだけの手間が掛かる事だろう。
今までの所持者もそんな「ムダ」の使い道に困ったのか、過去の持ち主も長い期間使用することも無く、ただこうしてガワだけが寂しく放置されていた。
「これはこれは。よく、このような物件が残っていたものですね」
そんな倉庫内に響く、一人の青年の声。
声の主、エヴァルド・ブラマンデは頭上に走る天井の梁の高さ、そのフロアのだだっぴろさ、それこそムダに重くてでかい入り口の扉などを見渡しながら、関心したように唸る。
「残ってたんじゃねぇ、使い道が無かったんだ。アンタも貿易やってたなら分かってくれると思うが、広すぎる倉庫は逆に役に立たねぇもんだ」
そんなエヴァルドの横で豪快な笑いを浮かべたフランコ・カルヴィーニは隅々を指し示すように手を広げながら、彼へ同意を求めるように切り返す。
「確かに、在庫管理も一苦労です。しかし――」
そう、エヴァルドは一度は頷いて見せるも、手元に抱えた資料に目を通しながら再び倉庫内へと視線を移す。
「――今回扱う案件から考えれば、これほどベストな環境は他に無いでしょう」
エヴァルドの持つ資料の見出しには、こう書かれていた。
――CAM/魔導アーマー、両機動兵器武装開発環境の設立について。
「しかし、これだけ大きな事によく踏み切りましたね、フマーレは」
「はは、こちとらヴァリオスさんと違って、面倒な確執は無いもんでね。サンドラさんとの話し合いで、すんなりと決まったんだ」
サンドラ――サンドラ・ボナッタというのは、フマーレの工場代表の女社長。
一方のフランコは労働者の代表であり、街を上げた事業は経営者と労働者との間で意見をすり合わせてから行動に移るのが、ここフマーレの特色であり鉄則である。
「確かに……確執は面倒なものです」
自分はその当事者であるわけなのだが……そう思いながらも、エヴァルドは噛み砕いたような苦笑を返す。
自覚ある当事者がいちいち目くじらを立てる必要も無い。しかし、フランコは何とも怖いところをビシビシと切り込んでくるものだ。それでもどこか憎めなくもあり、冗談で済ませられてしまうあたり、彼の良さであり人柄なのだろう。
「軍に資料を提出したりしなきゃならねぇらしいから本稼動は随分先の事になりそうだが、この場所だけはもう押さえてある。だからやれる事からどんどん始めていって良いとサンドラさんからのお達しが出てる。人力で出来るもんなら、開発も進めてもらって構わねぇと。だが、俺には何から始めたら良いかさっぱりでね。職人連中もやる気だけはあるんだが、巨大兵器なんていったい何を作ったら喜ばれるもんやら」
「なるほど、それで私が呼ばれたわけですね」
エヴァルドは今回の計画に対し、出資者としてその名乗りを上げていた。
その実用性は未知数ではあるものの、将来性は十二分にある。投資としては大きな買い物であるが、文字通り「未来への投資」と考えれば、それが様々な形で戻ってくるものだと確信を得られれば乗らない手は無い。
少し込み入った話をすれば、ヴァリオスの老人達は様子見を決め込んでいる。彼にとって、今が絶好の機会でもあった。
が、そんな出資者である自分が、職人事情に関しては文献で読んだ知識程度しか持っていない自分が、何故こうして現地に呼ばれたのか……その意味をなんとなく察し、同時に大きなチャンスをその脳裏に感じ取っていた。
「でしたら、現場の人間に聞いてみるのが一番でしょう」
そう、エヴァルドは柔らかい物腰で答えた。
「現場? リアルブルーから来た戦艦や特機隊だかの人間でも呼ぼうってのかい?」
「いえ、その辺りはアポイントを取るのにも中々面倒でしょうし、正しく『実情を知る』とは言い難い部分もあるかと思います」
「じゃあ、誰を呼ぶってんだ?」
しかめっつらで腕を組んで唸るフランコを前に、エヴァルドはニッコリと商人のそれらしい微笑を浮かべて演説でもするかのように手を広げてみせる。
「もっと適した人材――常日頃、それこそ今、この瞬間も機動兵器の存在を必要とする局面に立たされている人たち。彼らの意見を聞くのが適当、かつ広い見識を得られるかもしれないと思いませんか?」
あくまで問いかけるように、エヴァルドは語る。
そう言われてフランコもようやく意見の一致に至ったのか、パンと手を打って大きく頷いた。
「ああ、それがいい! 彼らなら間違いない!」
それから、ほぼエヴァルドの担当受付嬢となりつつあるルミ・ヘヴンズドアの下に、その話が舞い込んできたのは言うまでも無い。
リプレイ本文
●
「本日は辺境の情勢が芳しくない中、わざわざフマーレまでお集まり頂きまして、誠にありがとうございます。世界の未来のために、是非とも知恵をお貸し頂ければと思います」
フマーレの軍需産業地帯にそびえる一棟の空き倉庫に、エヴァルド・ブラマンデ(kz0076)の柔らかい声が響き渡った。
彼の横にはフマーレ労働者代表のフランコ・カルヴィーニが、どこか満足げな表情を浮かべながら立っている。
それもそのはず。今回、起動兵器の装備開発工場を立ち上げるに当たって、延べ25人ものハンターが意見聴取のために集ってくれたのだ。
「俺達だけじゃどうも巨大兵器ってヤツのイメージが沸かなくってな……ハンターさん達の力を、ひとつ貸して貰いたい!」
そう言って、ブラックボードを基点に車座になって座るハンター達を前にして、フランコは深々と頭を下げた。
「それじゃあ、早速始めて行きましょうっ。意見のある方は手を上げてくださいねっ♪」
司会役にオフィスから借り出されたルミ・ヘヴンズドア(kz0060)がチョーク片手にそう切り出して、会は始まった。
●
最初に手を上げたレホス・エテルノ・リベルター(ka0498)は、ルミに指名されるとぴょんと立ち上がって挨拶する。
「よろしくお願いするよ。まず提案するのは魔導アーマー・CAMのどちらでも共有して使えるものを作る事、かな。それぞれ別個に作ってたら人手も時間も掛かるしね」
「なるほど、それはごもっともな意見ですね。共通して使う事ができるのであれば、それに越した事はありません」
エヴァルドのコメントにレホスは小さく頷いた。
「その上で提案するのはシールドとアーマーかな。覚醒者で寄って集ってボコボコにした例もあるし……この世界で使っていく分には、強度面で少し不安があるのかも」
そう出た言葉は、おそらく彼女が蒼の世界でパイロットであった事にも起因している。
「それは私も共感できるよ」
レホスの意見に続くように、イーディス・ノースハイド(ka2106)が名乗りを上げた。
「きゃむってのは何度か見たけど、その時は盾を持って無かったし、甲冑――装甲だっけ。それも動きやすさの方を優先してるように見えたんだよ。誰でも素早さに任せた戦いが得意な訳じゃない。鎧や盾で攻撃を受け止めながら戦うのだって、戦い方の1つだと思うのさ」
その意見は元王国騎士団であった彼女なりの戦場観から来ているのだろう。
言いながらガチャリと自らの重厚な金属鎧を揺らしてみせた。
「では、とりあえず引き続き、共通装備に関して意見のある方、お願いしまーす☆」
黒板に書きとめられた意見の見出しに『両用案』と付け加えられ、議論は継続する。
「防御面に関する話が続いているので、少し武器にも話を移してみましょう。自分が提案するのは連装型のロケット砲です」
そう意見するのは、クラーク・バレンスタイン(ka0111)。
彼もレホスと同じく、元パイロットの経緯を持つ。
「敵は基本的に小型で、かつ数で圧して来る事が多いです。面制圧ができるような兵器を数多く揃えておく、と言う事は重要なんじゃないかと思います」
「私もそのアプローチは考えておりました」
クラークの意見に賛同するように、只野知留子(ka0274)が手を上げる。
「ただ、私のはどちらかと言えばマシンガンのようなものでなぎ払う案です。事の早急性を考えれば、ハンターが使用するようなサイズの火器でも構わないでしょう。それらを多数纏めて搭載。一斉に撃ち放つと言うものです」
既にある技術で作ることが可能な分、比較的安価かつ容易に作れるのでは、と知留子は付け加える。
「そんな私の案は、歩兵との連携を強固にするという目的を想定しています。背部に歩兵輸送用のコンテナのようなものを取り付ける、という案もございますね」
知留子がそう言うと、なるほど、と頷きながら数人のハンターが一斉に手を上げた。
ルミはとりあえず順番に、と念を押してから、まずそのうちの一人を指名する。
「輸送装備と言うのは、私も同じ事を考えていました。ああ、でも、私はCAMでの使用を想定してですが……CAMの足なら馬車などより速く、悪路にも強いため、兵員の輸送に適しているのではと考えています」
そう、おっかなびっくりと口にした栂牟礼 千秋(ka0989)は、それから……と口を開いた。
「昔の戦争では、通信機の有無が勝敗に決定的な要因を与えていたと聞きます。ですから、可能な限り長距離に通信できる装置を積んでみては如何でしょう」
そう言って、おずおずと腰を下ろす。
「通信装備……現在使用可能なもの以上の距離で通信が可能となれば、船や輸送隊での使用にも転用できるかもしれませんね」
その意見に、比較的好意を示したのはエヴァルド。同盟軍でさえ、海軍の旗艦にのみ配備されている代物である。
貿易商であった視点からか、船上での通信手段という点に立ってその話を受け止めたよう。
「では、私の番ですね。私は千秋さんとは逆に、魔導アーマー用のコンテナを考えておりました」
続いて立ち上がった音桐 奏(ka2951)が、そのトレードマークである帽子を正しながら話を続ける。
「純粋な戦闘兵器であるCAMと異なり、魔導アーマーにある豊富な発展性に私は目を付けています。あれだけどっしりとした佇まいですから、将来的に走行の安定性はおそらくCAMと比べ物にならないのではと」
「確かにカニみてぇなあの姿は安定してそうだな」
魔導アーマーの姿を思い浮かべているのか、天井の梁を見つめながらフランコがそう呟いた。
「ですので輸送はもちろん、例えば負傷兵に応急手当を施すような救護コンテナ。通信機器などを積んだ指揮コンテナ。そういった活用性を見出せるのでは、と考えています。リアルブルーにもそういった用途の車両は多数存在していますしね」
一方、強力な武器やその装甲で自衛を行える分、リアルブルーのそれよりもより一層活躍できるのではと彼は言う。
そんな奏の後に立ち上がった、大柄な軍人の風体の男。
君島 防人(ka0181)は、話が少し前後するが……と言い添えて口を開いた。
「先ほど知留子が言っていた『歩兵との連携』、これは大事な概念だと俺も考えている。現状のこの世界では、リアルブルーでの対VOID戦の如く『CAM編隊での物量戦』が挑めるとは考え難い。機動兵器と歩兵で相互に死角や弱点を補うような運用が中心になると、俺は考えている」
その前提の上で、と防人は言葉を続ける。
「まずは通信設備。特に戦域が広大な多方面作戦などでは、通信を歩兵の代わりに担うだけでも戦場の負担は大きく変わるだろう。さらに、低火力高連射速度の火器。これは数の敵を圧倒すると言うよりは、素早い敵の足を止めるためのもの。動きが鈍った敵を小回りの聞く歩兵が仕留める、そんな運用を期待できると考えている」
なるほど、防人の意見はより密接に「機動兵器と歩兵との連携」を意識したものであり、今の世界情勢と絶妙にマッチしていると言える。
「ところで、スペルランチャーの応用で歩兵を守る結界のようなものも作れないだろうか。機導師のスキルの応用のようなものだ」
「スペルランチャー……ああ、確か帝国の技術屋がそんな事を言っていたな」
フランコは記憶を思い起こすように眉を顰めると、ぼりぼりと頭を掻いてみせる。
「俺は詳しくないからこの場では何とも言えないが、技術交流とかできるかなぁ」
そう言葉を濁すフランコであるが、どうやら今この場で答えは出せないと言うのが本心らしい。
「機導師のスキルの応用と言えば、機導砲のようにマテリアルのエネルギーを撃ち出す武装は作れないだろうか。共に魔導エンジンで動かす事になるようだから、そのエネルギーを打ち出すイメージだな」
「それは良いですね。対大型歪虚や攻城戦での戦果が期待できそうです。下手に生身の人間を巻き込まないよう、修練は必要になるかもしれませんが……」
防人の意見から発展するように口にした柊 真司(ka0705)の提案に、静架(ka0387)が相槌を打つ。
弾薬を必要としないエネルギー兵器。
実用されれば、それほど便利なものも無いだろう。
「ハンターさんが無意識にやってる『マテリアルをダメージに変換する過程』をどう再現するかだなぁ……それができれば、不可能では無いかもしれん」
腕を組んで考え込むようにしながら、フランコが答える。
「元から実現できるかどうかは置いた意見だ。技術者達に期待してるぜ」
そう真司が締めくくり、話題は一端終了となった。
入れ違いに、手を上げた少女、Jyu=Bee(ka1681)は勢いよく立ち上がると、その勢いのままに口を開いた。
「コンテナの話に戻るけど、接続をCAMのアタッチメントの規格にしたら便利だと思うのよ。規格が一緒なら取り外しも楽だろうし、先にコンテナに物を積めてCAMが受け取るだけっていう時間の短縮もできると思うの」
そうコンテナ案に補強を加えると、Jyu=Beeはさらに提案を続けた。
「あと、話は変わるけど土木工事用の装備とかってどう? シャベル型のブレードとか、ハンマーとか、ピッケルとか、人間が使うものをそのまんま大きくしただけで良いのだけれど」
「ああ、それは自分も考えていた所です。陣地を構築したりする際に、あのサイズの人手が増えるのであれば、より充実した作業内容が期待できるかもしれません」
その提案にクラークも、賛同の意思を示す。
「どうせならもっと単純に鈍器になる工具とかどうかな? Jyu=Beeさんがハンマーを例に挙げてたけど、他にもスパナとか。刃こぼれの心配が無い方がメンテナンスも楽だろうし、長く使って行ける気がするんだよ」
そう意見を広げるマコト・タツナミ(ka1030)。
魔導アーマーの発展に興味深々である彼女にとって願ってもない会に、控えめながらもどこか意気揚々とした雰囲気を醸し出している。
「それならばボクも一つ意見がある。クレーンなんてどうだろう。リアルブルーでの大規模な工事には必要不可欠だと聞くぞ。籠城戦や要塞戦の際に大規模な設備を整えることができるであろう」
ディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271)はその小さな手をうんと広げながら、このように大きいものを、と示して見せた。
「用途は違うかもしれませんが、似たような案でしたらわたくしも」
ディアドラに続くように刻崎 藤乃(ka3829)が挙手、立ち上がる。
「わたくしの考えていたものは単純に作業アームのようなものですが、その先端を様々な用途によって付け替えられるようにするんですの。それで高所作業を行ったり、時には武器を保持して第3の手のように使ったり……直接戦闘能力を高めるというよりは、汎用性を高めるためですわね」
「クレーンの先に武器を、と言うのはいい案だな。有事には兵器として使える、と言うのは重要な点だとボクも思うぞ」
ディアドラは藤乃の案に共感するように頷きながらも、そう意見を纏める。
かつて王国で大規模な篭城戦というものを経験したハンター達は、同意するようにそれらの意見に頷いているように見えた。
●
工具関連の話題が一通り落ち着いて、一端ガレージ内が静かになった。
ここからどう話を広げていこうか、皆少々決めあぐねている様子だ。
「じゃあ、ちょっと話題を変えてみましょうか。今度はCAMと魔導アーマーのどちらかに是非っていう案、って感じですっ。もちろん引き続き両用案でも構いませんよ♪」
そう、話題を切り替えるように提案するルミ。
すると、その機会を待っていたかのように、いくつか手が上がった。
「はい、じゃあ兵庫さん!」
一番に指名され、榊 兵庫(ka0010)はゆっくりと立ち上がり小さく頬を掻いた。
「とりあえず……操縦席を覆う装甲だろうかな。ああ、魔導アーマーのことだ」
最後にそう付け加え、皆一様に何の事かを理解する。
「確かに、現状では少々無用心ですよね」
納得したように頷く奏。
どうやら、今の空を見上げるコックピットに少々不安を感じているようだ。
「機械は壊れてもいくらでも取り返しはつく。だが、人命はそうではあるまい」
とは言え、それが中々難しい事もパイロットであった兵庫は理解していた。
CAMの完全密閉型のコックピットの成立には、外のメインカメラと同調したヘッドマウント型のディスプレイの存在による所が大きい。
同じものを作ろうとは言わないが、今ある技術でどこまでできるのか。
技術屋ではない兵庫には流石にそこまでは分からないが、人命第一に考える思考はとても重要な事だ。
「それと、CAMの近接兵装と言えばナイフやカタナが主流だが、槍などの長柄武器も役立つかもしれない」
それは槍術を得意とする彼自身の希望でもあり、「個人的な希望でもあるのだがな」と苦笑してみせた。
「俺もいくつか良いか。CAMの武装に関してだ」
そうゆったりとした趣で立ち上がるシガレット=ウナギパイ(ka2884)。
愛用であるシガレットを加えると、静かに語り出した。
「まずは現行のCAMのライフルやガトリング……既に歪虚相手にも、俺達相手にも手堅い実績があるこれらの火器はできるだけ早く量産の体制を作る事が必要だと思っている。その上で、だ」
あくまでそれは前置きだ、としてシガレットは一つ紫煙の息を吐く。
「以前、俺の渾身の一撃が、あのアイゼンハンダーの義手に傷一つ与えられない事があった。それが、今の人間の限界だ。だから、俺達に出来ない事――俺達の扱えない武器を活用できる起動兵器に、十三魔に通用する火力が欲しい」
そう言って、1枚の図案を懐から取り出して見せた。
「リアルブルーの狙撃銃だ。貫通力と殺傷力に優れた、『ヒト』でなく『モノ』を仕留めるための銃らしい。こいつを機動兵器サイズにしたものならば、ヤツらにも太刀打ちできるかもしれねェ」
「随分とでかい銃だな……分かった。これは俺の方で預かって、技術屋の連中に見せてみよう」
フランコは図面を受け取ると、そのまま大事に懐へとしまい込む。
それを実現できるかどうかはフマーレの技術屋の腕次第、なのだが。
「それに加えてだ。どれだけ強力な兵器があっても当てられなければ意味がねぇ。ヤツ等の動きを一瞬でも止めるようなものが欲しい。ワイヤーでも手錠でも、形状はなんでも構わねェんだがな」
そう一気に言い終えると、一息つく様に再び高い天井向かって紫煙を吹かす。
「ロープやネットのようなものなら俺も考えたぜ。ただ使用用途は少し違うな」
シガレットが腰を下ろした後に、入れ替わるようにリュー・グランフェスト(ka2419)が立ち上がった。
「俺はむしろ、大きな敵を相手するためにそう言うものが欲しいと思ったんだ。縛って動きづらくする事で、俺達みたいな歩兵のハンターが少しでも戦いやすくなるようにしたり、巨体をよじ登ったりとかできるようにな」
そう、高い天井を指し示しながら、大きな敵との戦闘を示唆する。
「歪虚や機械にのみ作用する魔力なりを込められるなら更に良いんだが……流石にそこまでは難しいか?」
「歪虚にだけ作用するような術、なんて言うのはあまり聞いたことが無いですね……」
オフィスで扱っていた過去の依頼を思い返しながら、ルミは小さく唸る。
リューは「あくまでダメ元だから」と言葉を返すと、付け加えるように口を開いた。
「敵にもでかいのはいるんだし、盗まれる事だってない訳じゃない。単独で便利なものよりも、俺達みたいなハンターとの協同を視野にいれた装備が良いと思うぜ」
リューのその言葉には、既に歪虚の手によってCAMが数機奪われている現状も顧みているものであった。
こちらのCAMが使えると言う事は、歪虚のCAMでも使えると言う事。
規格を同じくする事の長所であり、懸念点でもあった。
●
「さっき十三魔の話が出たけれど、それならオレからもいくつか言わせて欲しいぜ」
そう意気揚々と手を上げたレオーネ・インヴェトーレ(ka1441)は、自分の記憶を思い起こすように小さく唸ってから口を開く。
「オレはずっと『CAM=強力』そういう印象を頭の中に持ってたんだけど、ガルドブルムを見てその見方が変わったんだ。ヤツらのようなとにかく堅い敵を相手にするには、今あるCAMのライフルやナイフじゃ力不足。火力だ、火力が足りねぇ! もっと強力な……リアルブルーの『ミサイル』みたいな大火力が、今後絶対必要になると思うんだ!」
そう、声を荒げて力説するレオーネ。
その言葉には十三魔と直に相対した人間が感じている、どこか不安にも似た感情が滲み出ていた。
「ガルドブルムに勝てる武器が欲しい。大砲を起動兵器で使用できるようにしたり、単純に重さでぶつける斧やポールアームみたいなものでもいい。力が欲しいんだ!」
そう言って大きく頭を下げると、そのまますとんと地面に座り込んだ。
「職人がどれだけの事ができるかはわからないけどよ、その心意気は確かに伝えておこう」
必死さが伝わったのか、フランコも比較的真面目な様子でそう答えた。
目標があるのであれば、職人達はそれに向けて力を尽くす事ができるのだから。
「火力ってんなら俺にも案があるぜ」
そう言ってジャック・エルギン(ka1522)がすくりと立ち上がる。
「所謂ライフルみたいな火砲は優れた兵器だと思うが、すぐに作れるものじゃないと見た。で一方、俺が提案するのは弩砲(バリスタ)だ」
そう言って、ジャックはその手でパチンコのようなしぐさを取って見せた。
「弩砲なら製造方法は固まってるし、機械式を上手く組み込みゃ、結構な威力と射程が望めるんじゃないかと思ってるんだが、どうよ」
そう、主催者側に伺いを立てるジャック。
「確かに、かなり実用的な案ですね。懸念があるとすれば、矢でしょうか。アタッチメントを一つ犠牲にして矢筒を設けるか、あるだけ数発限りにするか」
「おう、もっと意見が欲しいならいつでも言ってくれよ。手を貸すぜ」
そう言って、物理的な部分での気さくな笑みを浮かべながらジャックは静かに腰を下ろした。
「うーん……少し、変化球でもいいだろうか?」
「と、言うと?」
自分でもやや意見に迷いがあるかのように首を傾げながら、キヅカ・リク(ka0038)は立ち上がり、その脳裏にあるアイディアを伝えようと言葉を捻る。
「まず一つ、シールドなんだけど。こう、各辺に同じ種類のシールドを連結できるようなものを想像していたんだ。繋げて壁のように使ったり、足場の無い場所で橋のように使ったり」
そう、自分の手を盾に見立てて上下左右にくっつけるようにして説明する。
「あと、少し用途は限定的になるかもしれないけれど、探知機みたいなものが欲しいと思った。設置して地面の振動を計測するようなものや、水面に浮かべる水中用ソナーのようなもの」
「ソナー……それは一体、どういうもんなんだ?」
リクの言葉に、フランコは興味深げに尋ね返す。
「一般的なのは音波を出して、その反応を見るものが多いだろうけれど、この世界であればマテリアルの変動を感知したりできるとより便利だろうかな? それで水中の敵の位置なんかが分かるんだ」
「ほう、リアルブルーじゃそういうものもあるんだな」
「ちなみに、魚を探すのにも向いているから漁船なんかにも転用できるハズだ。振動の計測に関しては、大きな敵の接近や、地中からの奇襲なんかにも対応できるようになると考えている」
まさに今戦っている怠惰の軍勢との戦いで役に立つかもしれない、と彼は言葉を加える。
「面白そうだが、いまいちイメージが沸かないな……少しずつ実験していくか、既にその技術を持ってるヤツの力が必要かもしれねぇ」
アゴに生えた無精ひげを摩りながらフランコはそう答えを返した。
「探知機なら、錬魔院のマテリアル観測装置を使う事ってできないでしょうか?」
そう声を上げたのは、水城もなか(ka3532)である。
「あれを使ってレーダー機能を強化・拡張して警戒や偵察を行えるような補助装置を提案したいんです。魔導型CAMは現在、クリムゾンウェストにおいてかなり機動性の高い機体ですし、有用性は高いと思うのですが」
「錬魔院が絡んでるとなると、そちらも技術交流が出来るかどうか次第だな」
彼女の提案に、フランコはスペルランチャーの時と同じような反応を示す。
「もしかしたら院の方で自主的に作っちまう可能性のほうが高いかも分からんな。試験用に機体を融通して貰う関係で、全く関わりが無いわけでもないし、あっちに話を通してみるのもアリかもしれん」
「なるほど、そういう手もありますか。技術は確立しているわけですし、開発にはそう時間は掛からないと思ってます。よろしくお願いします」
そう言ってぺこりとお辞儀をすると、もなかはその場に座ろう……として、思い出したようにもう一度立ち上がった。
「ああ、あともう一つ。魔導アーマーなんですけれど、CAMのスナイパーライフルを改良して、キャノン砲なんて作れないでしょうか。安定しそうな形をしていますし、火砲は良く合うと思うんです」
「おう、それならCAMの武装を融通して貰えれば、すぐに取り掛かれるかもしれないな」
その言葉を聞いて、今度こそ「よろしくお願いします」と頭を下げてもなかは腰を下ろした。
「あの、今の意見にちょっとだけ関連して、いいですか?」
そう、ミオレスカ(ka3496)はおどおどと手を上げて見せる。
「はい、もちろんですよ♪」
ルミに指名され、ゆっくり立ち上がると、やはりどこか緊張した様子で口を開いた。
「スナイパーライフルとかの話が今も、先ほども少し出てましたけれど……その命中精度を上げる案、なんてどうでしょうか」
そう言ってミオレスカは自分の足元を指差す。
「猟撃士だから分かるんですが、射撃には姿勢保持が大事です。銃が、手が、体がぶれないこと。それだけで命中精度はぐんと上がります。そのために、姿勢を固定するためのユニットを作ってみてはどうかなと」
言いながら、射撃姿勢を取ってみせた自分の体を指し示し、説明を加える。
「言うなれば猟撃士のスキル『シャープシューティング』を物理的に体現してしまうんです。あれだけの巨大兵器で、アウトレンジから一射必中。それができれば、戦局は一気に有利になることでしょう」
「身体を動かさないようにしちゃう訳ですね。その間を狙われたら怖いでしょうけど、アウトレンジなら関係ない……のかな?」
「それこそ護衛に付くハンター達の腕の見せ所、だと思います」
ルミの問いかけに、ミオレスカはコクリと小さく頷いてそう答えた。
●
「さてとっ……中々案も出揃って来ましたが、武装案が少し銃器に傾倒している感じでしょうか? せっかくの意見会ですし、他に接近戦用の武器の案はありませんか?」
自らの書いたボードの内容を見返しながら、ルミがそう問いかけると、ティーア・ズィルバーン(ka0122)がビシリとその手を上げて応えた。
「現物を持ってきてるんだがよ、これをCAMサイズで再現できないか?」
そう言って彼が傍らに取り出したのは、試作振動刀「オートMURAMASA」。
モーターによる超音波振動で切り裂く、クリムゾンウェストでは最新鋭の技術が使われた一品だ。
「こいつ自身もまだ試作品だが、ある程度技術はできてるんだろう。だとしたら転用もしやすいんじゃねぇか?」
「ほう、面白いモンもあるんだな。そう言うの、職人のヤツらは喜びそうだ。後で話を振っておこう」
これはフランコが興味を持ったようで、どこか楽しげに言葉を返す。
「ああ、頼むぜ。他には聖導師のプロテクションみたいなバリアとか考えてみたが、これは機導砲と同じで、マテリアルの変換システムが出来てからでないと厳しいか?」
「そうだな、そいつは実現できても少し時間が掛かるかもしれねぇ」
「そうか。なら当面は盾で何とか、だろうなぁ……」
そう、自らも考え込むようにティーアは眉を顰める。
が、しばらくしてひらひらと手を振ると静かに腰を下ろした。
「ま……そんな所だな。悪いな、CAM用ばかりで。俺、もう一個の方はあまり興味なくてな」
リアルブルーの人間故に、CAMへの期待が高いのか。ティーアはそう言って「よろしく頼むぜ」と話題を区切った。
「実物、と言うなら俺のも見てくれないか」
そう、後に続くように春日 啓一(ka1621)が手に持った大きな箱を皆の見える位置へと下ろして見せた。
金属の箱に銃床が取り付けられたデザイン。
ショップへ通うハンターならば目にした事がある人も居るだろう。
パイルバンカーだ。
「提案するのは見ての通りの『パイルアーム』だ。剣やナイフを持っても、肉薄するほどに接敵されればなかなか思うように振り回す事もできない場面もあるだろう。そこで腕などにこいつを取り付けておく。奥の手のような扱いにはなるが、超至近戦で光ると思っている」
このサイズでそれなりの威力を持つのだから、それをCAMの腕に取り付けるサイズまで大きくすれば、それだけ火力も乗るだろう、と彼は言い加えた。
「この場でバラして構造まで見てもらっても良いんだが、どうする?」
「いえ、ハンター様の大事な装備ですから大事になされてください。必要になれば、私のルートを使って仕入れる事も可能ですので」
そうエヴァルドに柔らかに断られて、啓一はやや残念そうな表情を浮かべながらも、持ち入ったパイルを手元へと下げた。
パイルであれば、形によっては一種の暗器のような使い方も期待できるかもしれない。
「ああ、少し話はズレるかもしれないけど、加速装置付きの翼とかどうかな。飛ぶ用でなく、その翼を刃にするんだ。急接近してすれ違い様に切るような感じだね」
そう、リクは何かを思い浮かべるように提案を追加する。
「あー、良いですね。ロマンって感じですね~」
何故かルミがうんうん頷きながら、同意を示してみせた。
リアルブルーのテレビ番組にそういうのがあったらしい。
「あの、武器とはちょっと離れちゃうんですが、その加速装置というのは私も一つ思うところがあります!」
そうハキハキとした口調でクレール(ka0586)が立ち上がった。
「おう、やっぱり居たな。相変わらず、こういう技術の現場にゃ目がねーな」
「ジャックさんこそ、血が騒ぐと言うものですよ」
彼女の姿を目に留めると、ジャックは苦笑しながら声を掛けた。
クレールもまたそれに応えるように笑みを浮かべるも、すぐに、真面目な表情へと戻す。
「かつてCAMが小型の歪虚の群れに取り付かれた時、戦いづらそうにしていたのが記憶に残っています。そこで、敵に囲まれても、無理にでも振り切れるような急加速装置が欲しいと思ったんです」
そう、自らの経験を振り返りながら彼女は口にした。
「空圧式、火薬式、魔導式……それぞれに長所短所はあると思いますが、どれでも構わないと思います。任意のタイミングで発揮して、機体を急加速できるようなブースターがあればなと。リクさんの案のように、間合いを詰めるのにも使えるでしょうしね」
そう提案しながらも、自らでうんと首を捻る。
「ただ、操縦者にかなりの負担が掛かってしまう気がするんですよね。先に、操縦者の衝撃対策が必要になるかな……」
そう、自らでもまた問題点を見つけていくのは職人肌からだろう。
彼女自身の言うとおり、多少の開発のための順序は必要になってくるのかもしれない。
「さて……僕で最後でしょうか」
そうゆったりと立ち上がった天央 観智(ka0896)は白衣の襟を正すと、小さく礼をしてみせる。
「僕からはCAMを歪虚に操られた観点からの意見を言わせて頂きます。発想としてはリューさんのそれに近いのかもしれません」
不意に名前が出て、リューはドキリとその目を丸くした。
「ただ、僕の案はもっと直接的です。というのも『覚醒者にしか扱えない武器』を作ってみてはどうか、というものです」
「ほう、覚醒者のみに……ですか」
その他の意見には無かった方面からのアプローチに、エヴァルドも興味がある様子で観智へ続きを促した。
「魔導短伝話というものがあるでしょう。あのような形で、マテリアルを扱えるものでしか使えない細工を施すのです」
イメージが伝わればよいのですが、と観智は苦笑気味に付け加える。
「武器自体は何でも良いと思います。ただ、その起動にマテリアルが必要であれば、敵の手に渡った所で脅威にもならないと目しています。負のマテリアルが、我々の使うマテリアルと別物である事が前提とはなりますが……」
その事に関して答えられる者は居なかった。
なぜならば、歪虚そのものに関する研究はそう進んでは居ないのだから……
●
「うん、さすがハンターさん達だ。今日は呼んで正解だったな!」
びっしりと開発案で埋め尽くされたボードを眺めながら、フランコは満足げな笑みを浮かべた。
このメモボードはそのまま配属される職人達に見せるのだと言う。
「これだけの沢山の意見を出して頂いてありがとうございましたっ。きっと、今後の戦いに役立つ事になるって、ルミちゃんはそう思いますっ! 今日は本当に、集まってくれてありがとうー☆」
そうルミがぺこりとお辞儀をすると、どこからとも無く拍手が起こった。
その拍手はガレージへと響き渡り、まるでこれから始まる本格的な開発のスタートを祝福するかのような余韻を残し、会は閉会を告げたのであった。
「本日は辺境の情勢が芳しくない中、わざわざフマーレまでお集まり頂きまして、誠にありがとうございます。世界の未来のために、是非とも知恵をお貸し頂ければと思います」
フマーレの軍需産業地帯にそびえる一棟の空き倉庫に、エヴァルド・ブラマンデ(kz0076)の柔らかい声が響き渡った。
彼の横にはフマーレ労働者代表のフランコ・カルヴィーニが、どこか満足げな表情を浮かべながら立っている。
それもそのはず。今回、起動兵器の装備開発工場を立ち上げるに当たって、延べ25人ものハンターが意見聴取のために集ってくれたのだ。
「俺達だけじゃどうも巨大兵器ってヤツのイメージが沸かなくってな……ハンターさん達の力を、ひとつ貸して貰いたい!」
そう言って、ブラックボードを基点に車座になって座るハンター達を前にして、フランコは深々と頭を下げた。
「それじゃあ、早速始めて行きましょうっ。意見のある方は手を上げてくださいねっ♪」
司会役にオフィスから借り出されたルミ・ヘヴンズドア(kz0060)がチョーク片手にそう切り出して、会は始まった。
●
最初に手を上げたレホス・エテルノ・リベルター(ka0498)は、ルミに指名されるとぴょんと立ち上がって挨拶する。
「よろしくお願いするよ。まず提案するのは魔導アーマー・CAMのどちらでも共有して使えるものを作る事、かな。それぞれ別個に作ってたら人手も時間も掛かるしね」
「なるほど、それはごもっともな意見ですね。共通して使う事ができるのであれば、それに越した事はありません」
エヴァルドのコメントにレホスは小さく頷いた。
「その上で提案するのはシールドとアーマーかな。覚醒者で寄って集ってボコボコにした例もあるし……この世界で使っていく分には、強度面で少し不安があるのかも」
そう出た言葉は、おそらく彼女が蒼の世界でパイロットであった事にも起因している。
「それは私も共感できるよ」
レホスの意見に続くように、イーディス・ノースハイド(ka2106)が名乗りを上げた。
「きゃむってのは何度か見たけど、その時は盾を持って無かったし、甲冑――装甲だっけ。それも動きやすさの方を優先してるように見えたんだよ。誰でも素早さに任せた戦いが得意な訳じゃない。鎧や盾で攻撃を受け止めながら戦うのだって、戦い方の1つだと思うのさ」
その意見は元王国騎士団であった彼女なりの戦場観から来ているのだろう。
言いながらガチャリと自らの重厚な金属鎧を揺らしてみせた。
「では、とりあえず引き続き、共通装備に関して意見のある方、お願いしまーす☆」
黒板に書きとめられた意見の見出しに『両用案』と付け加えられ、議論は継続する。
「防御面に関する話が続いているので、少し武器にも話を移してみましょう。自分が提案するのは連装型のロケット砲です」
そう意見するのは、クラーク・バレンスタイン(ka0111)。
彼もレホスと同じく、元パイロットの経緯を持つ。
「敵は基本的に小型で、かつ数で圧して来る事が多いです。面制圧ができるような兵器を数多く揃えておく、と言う事は重要なんじゃないかと思います」
「私もそのアプローチは考えておりました」
クラークの意見に賛同するように、只野知留子(ka0274)が手を上げる。
「ただ、私のはどちらかと言えばマシンガンのようなものでなぎ払う案です。事の早急性を考えれば、ハンターが使用するようなサイズの火器でも構わないでしょう。それらを多数纏めて搭載。一斉に撃ち放つと言うものです」
既にある技術で作ることが可能な分、比較的安価かつ容易に作れるのでは、と知留子は付け加える。
「そんな私の案は、歩兵との連携を強固にするという目的を想定しています。背部に歩兵輸送用のコンテナのようなものを取り付ける、という案もございますね」
知留子がそう言うと、なるほど、と頷きながら数人のハンターが一斉に手を上げた。
ルミはとりあえず順番に、と念を押してから、まずそのうちの一人を指名する。
「輸送装備と言うのは、私も同じ事を考えていました。ああ、でも、私はCAMでの使用を想定してですが……CAMの足なら馬車などより速く、悪路にも強いため、兵員の輸送に適しているのではと考えています」
そう、おっかなびっくりと口にした栂牟礼 千秋(ka0989)は、それから……と口を開いた。
「昔の戦争では、通信機の有無が勝敗に決定的な要因を与えていたと聞きます。ですから、可能な限り長距離に通信できる装置を積んでみては如何でしょう」
そう言って、おずおずと腰を下ろす。
「通信装備……現在使用可能なもの以上の距離で通信が可能となれば、船や輸送隊での使用にも転用できるかもしれませんね」
その意見に、比較的好意を示したのはエヴァルド。同盟軍でさえ、海軍の旗艦にのみ配備されている代物である。
貿易商であった視点からか、船上での通信手段という点に立ってその話を受け止めたよう。
「では、私の番ですね。私は千秋さんとは逆に、魔導アーマー用のコンテナを考えておりました」
続いて立ち上がった音桐 奏(ka2951)が、そのトレードマークである帽子を正しながら話を続ける。
「純粋な戦闘兵器であるCAMと異なり、魔導アーマーにある豊富な発展性に私は目を付けています。あれだけどっしりとした佇まいですから、将来的に走行の安定性はおそらくCAMと比べ物にならないのではと」
「確かにカニみてぇなあの姿は安定してそうだな」
魔導アーマーの姿を思い浮かべているのか、天井の梁を見つめながらフランコがそう呟いた。
「ですので輸送はもちろん、例えば負傷兵に応急手当を施すような救護コンテナ。通信機器などを積んだ指揮コンテナ。そういった活用性を見出せるのでは、と考えています。リアルブルーにもそういった用途の車両は多数存在していますしね」
一方、強力な武器やその装甲で自衛を行える分、リアルブルーのそれよりもより一層活躍できるのではと彼は言う。
そんな奏の後に立ち上がった、大柄な軍人の風体の男。
君島 防人(ka0181)は、話が少し前後するが……と言い添えて口を開いた。
「先ほど知留子が言っていた『歩兵との連携』、これは大事な概念だと俺も考えている。現状のこの世界では、リアルブルーでの対VOID戦の如く『CAM編隊での物量戦』が挑めるとは考え難い。機動兵器と歩兵で相互に死角や弱点を補うような運用が中心になると、俺は考えている」
その前提の上で、と防人は言葉を続ける。
「まずは通信設備。特に戦域が広大な多方面作戦などでは、通信を歩兵の代わりに担うだけでも戦場の負担は大きく変わるだろう。さらに、低火力高連射速度の火器。これは数の敵を圧倒すると言うよりは、素早い敵の足を止めるためのもの。動きが鈍った敵を小回りの聞く歩兵が仕留める、そんな運用を期待できると考えている」
なるほど、防人の意見はより密接に「機動兵器と歩兵との連携」を意識したものであり、今の世界情勢と絶妙にマッチしていると言える。
「ところで、スペルランチャーの応用で歩兵を守る結界のようなものも作れないだろうか。機導師のスキルの応用のようなものだ」
「スペルランチャー……ああ、確か帝国の技術屋がそんな事を言っていたな」
フランコは記憶を思い起こすように眉を顰めると、ぼりぼりと頭を掻いてみせる。
「俺は詳しくないからこの場では何とも言えないが、技術交流とかできるかなぁ」
そう言葉を濁すフランコであるが、どうやら今この場で答えは出せないと言うのが本心らしい。
「機導師のスキルの応用と言えば、機導砲のようにマテリアルのエネルギーを撃ち出す武装は作れないだろうか。共に魔導エンジンで動かす事になるようだから、そのエネルギーを打ち出すイメージだな」
「それは良いですね。対大型歪虚や攻城戦での戦果が期待できそうです。下手に生身の人間を巻き込まないよう、修練は必要になるかもしれませんが……」
防人の意見から発展するように口にした柊 真司(ka0705)の提案に、静架(ka0387)が相槌を打つ。
弾薬を必要としないエネルギー兵器。
実用されれば、それほど便利なものも無いだろう。
「ハンターさんが無意識にやってる『マテリアルをダメージに変換する過程』をどう再現するかだなぁ……それができれば、不可能では無いかもしれん」
腕を組んで考え込むようにしながら、フランコが答える。
「元から実現できるかどうかは置いた意見だ。技術者達に期待してるぜ」
そう真司が締めくくり、話題は一端終了となった。
入れ違いに、手を上げた少女、Jyu=Bee(ka1681)は勢いよく立ち上がると、その勢いのままに口を開いた。
「コンテナの話に戻るけど、接続をCAMのアタッチメントの規格にしたら便利だと思うのよ。規格が一緒なら取り外しも楽だろうし、先にコンテナに物を積めてCAMが受け取るだけっていう時間の短縮もできると思うの」
そうコンテナ案に補強を加えると、Jyu=Beeはさらに提案を続けた。
「あと、話は変わるけど土木工事用の装備とかってどう? シャベル型のブレードとか、ハンマーとか、ピッケルとか、人間が使うものをそのまんま大きくしただけで良いのだけれど」
「ああ、それは自分も考えていた所です。陣地を構築したりする際に、あのサイズの人手が増えるのであれば、より充実した作業内容が期待できるかもしれません」
その提案にクラークも、賛同の意思を示す。
「どうせならもっと単純に鈍器になる工具とかどうかな? Jyu=Beeさんがハンマーを例に挙げてたけど、他にもスパナとか。刃こぼれの心配が無い方がメンテナンスも楽だろうし、長く使って行ける気がするんだよ」
そう意見を広げるマコト・タツナミ(ka1030)。
魔導アーマーの発展に興味深々である彼女にとって願ってもない会に、控えめながらもどこか意気揚々とした雰囲気を醸し出している。
「それならばボクも一つ意見がある。クレーンなんてどうだろう。リアルブルーでの大規模な工事には必要不可欠だと聞くぞ。籠城戦や要塞戦の際に大規模な設備を整えることができるであろう」
ディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271)はその小さな手をうんと広げながら、このように大きいものを、と示して見せた。
「用途は違うかもしれませんが、似たような案でしたらわたくしも」
ディアドラに続くように刻崎 藤乃(ka3829)が挙手、立ち上がる。
「わたくしの考えていたものは単純に作業アームのようなものですが、その先端を様々な用途によって付け替えられるようにするんですの。それで高所作業を行ったり、時には武器を保持して第3の手のように使ったり……直接戦闘能力を高めるというよりは、汎用性を高めるためですわね」
「クレーンの先に武器を、と言うのはいい案だな。有事には兵器として使える、と言うのは重要な点だとボクも思うぞ」
ディアドラは藤乃の案に共感するように頷きながらも、そう意見を纏める。
かつて王国で大規模な篭城戦というものを経験したハンター達は、同意するようにそれらの意見に頷いているように見えた。
●
工具関連の話題が一通り落ち着いて、一端ガレージ内が静かになった。
ここからどう話を広げていこうか、皆少々決めあぐねている様子だ。
「じゃあ、ちょっと話題を変えてみましょうか。今度はCAMと魔導アーマーのどちらかに是非っていう案、って感じですっ。もちろん引き続き両用案でも構いませんよ♪」
そう、話題を切り替えるように提案するルミ。
すると、その機会を待っていたかのように、いくつか手が上がった。
「はい、じゃあ兵庫さん!」
一番に指名され、榊 兵庫(ka0010)はゆっくりと立ち上がり小さく頬を掻いた。
「とりあえず……操縦席を覆う装甲だろうかな。ああ、魔導アーマーのことだ」
最後にそう付け加え、皆一様に何の事かを理解する。
「確かに、現状では少々無用心ですよね」
納得したように頷く奏。
どうやら、今の空を見上げるコックピットに少々不安を感じているようだ。
「機械は壊れてもいくらでも取り返しはつく。だが、人命はそうではあるまい」
とは言え、それが中々難しい事もパイロットであった兵庫は理解していた。
CAMの完全密閉型のコックピットの成立には、外のメインカメラと同調したヘッドマウント型のディスプレイの存在による所が大きい。
同じものを作ろうとは言わないが、今ある技術でどこまでできるのか。
技術屋ではない兵庫には流石にそこまでは分からないが、人命第一に考える思考はとても重要な事だ。
「それと、CAMの近接兵装と言えばナイフやカタナが主流だが、槍などの長柄武器も役立つかもしれない」
それは槍術を得意とする彼自身の希望でもあり、「個人的な希望でもあるのだがな」と苦笑してみせた。
「俺もいくつか良いか。CAMの武装に関してだ」
そうゆったりとした趣で立ち上がるシガレット=ウナギパイ(ka2884)。
愛用であるシガレットを加えると、静かに語り出した。
「まずは現行のCAMのライフルやガトリング……既に歪虚相手にも、俺達相手にも手堅い実績があるこれらの火器はできるだけ早く量産の体制を作る事が必要だと思っている。その上で、だ」
あくまでそれは前置きだ、としてシガレットは一つ紫煙の息を吐く。
「以前、俺の渾身の一撃が、あのアイゼンハンダーの義手に傷一つ与えられない事があった。それが、今の人間の限界だ。だから、俺達に出来ない事――俺達の扱えない武器を活用できる起動兵器に、十三魔に通用する火力が欲しい」
そう言って、1枚の図案を懐から取り出して見せた。
「リアルブルーの狙撃銃だ。貫通力と殺傷力に優れた、『ヒト』でなく『モノ』を仕留めるための銃らしい。こいつを機動兵器サイズにしたものならば、ヤツらにも太刀打ちできるかもしれねェ」
「随分とでかい銃だな……分かった。これは俺の方で預かって、技術屋の連中に見せてみよう」
フランコは図面を受け取ると、そのまま大事に懐へとしまい込む。
それを実現できるかどうかはフマーレの技術屋の腕次第、なのだが。
「それに加えてだ。どれだけ強力な兵器があっても当てられなければ意味がねぇ。ヤツ等の動きを一瞬でも止めるようなものが欲しい。ワイヤーでも手錠でも、形状はなんでも構わねェんだがな」
そう一気に言い終えると、一息つく様に再び高い天井向かって紫煙を吹かす。
「ロープやネットのようなものなら俺も考えたぜ。ただ使用用途は少し違うな」
シガレットが腰を下ろした後に、入れ替わるようにリュー・グランフェスト(ka2419)が立ち上がった。
「俺はむしろ、大きな敵を相手するためにそう言うものが欲しいと思ったんだ。縛って動きづらくする事で、俺達みたいな歩兵のハンターが少しでも戦いやすくなるようにしたり、巨体をよじ登ったりとかできるようにな」
そう、高い天井を指し示しながら、大きな敵との戦闘を示唆する。
「歪虚や機械にのみ作用する魔力なりを込められるなら更に良いんだが……流石にそこまでは難しいか?」
「歪虚にだけ作用するような術、なんて言うのはあまり聞いたことが無いですね……」
オフィスで扱っていた過去の依頼を思い返しながら、ルミは小さく唸る。
リューは「あくまでダメ元だから」と言葉を返すと、付け加えるように口を開いた。
「敵にもでかいのはいるんだし、盗まれる事だってない訳じゃない。単独で便利なものよりも、俺達みたいなハンターとの協同を視野にいれた装備が良いと思うぜ」
リューのその言葉には、既に歪虚の手によってCAMが数機奪われている現状も顧みているものであった。
こちらのCAMが使えると言う事は、歪虚のCAMでも使えると言う事。
規格を同じくする事の長所であり、懸念点でもあった。
●
「さっき十三魔の話が出たけれど、それならオレからもいくつか言わせて欲しいぜ」
そう意気揚々と手を上げたレオーネ・インヴェトーレ(ka1441)は、自分の記憶を思い起こすように小さく唸ってから口を開く。
「オレはずっと『CAM=強力』そういう印象を頭の中に持ってたんだけど、ガルドブルムを見てその見方が変わったんだ。ヤツらのようなとにかく堅い敵を相手にするには、今あるCAMのライフルやナイフじゃ力不足。火力だ、火力が足りねぇ! もっと強力な……リアルブルーの『ミサイル』みたいな大火力が、今後絶対必要になると思うんだ!」
そう、声を荒げて力説するレオーネ。
その言葉には十三魔と直に相対した人間が感じている、どこか不安にも似た感情が滲み出ていた。
「ガルドブルムに勝てる武器が欲しい。大砲を起動兵器で使用できるようにしたり、単純に重さでぶつける斧やポールアームみたいなものでもいい。力が欲しいんだ!」
そう言って大きく頭を下げると、そのまますとんと地面に座り込んだ。
「職人がどれだけの事ができるかはわからないけどよ、その心意気は確かに伝えておこう」
必死さが伝わったのか、フランコも比較的真面目な様子でそう答えた。
目標があるのであれば、職人達はそれに向けて力を尽くす事ができるのだから。
「火力ってんなら俺にも案があるぜ」
そう言ってジャック・エルギン(ka1522)がすくりと立ち上がる。
「所謂ライフルみたいな火砲は優れた兵器だと思うが、すぐに作れるものじゃないと見た。で一方、俺が提案するのは弩砲(バリスタ)だ」
そう言って、ジャックはその手でパチンコのようなしぐさを取って見せた。
「弩砲なら製造方法は固まってるし、機械式を上手く組み込みゃ、結構な威力と射程が望めるんじゃないかと思ってるんだが、どうよ」
そう、主催者側に伺いを立てるジャック。
「確かに、かなり実用的な案ですね。懸念があるとすれば、矢でしょうか。アタッチメントを一つ犠牲にして矢筒を設けるか、あるだけ数発限りにするか」
「おう、もっと意見が欲しいならいつでも言ってくれよ。手を貸すぜ」
そう言って、物理的な部分での気さくな笑みを浮かべながらジャックは静かに腰を下ろした。
「うーん……少し、変化球でもいいだろうか?」
「と、言うと?」
自分でもやや意見に迷いがあるかのように首を傾げながら、キヅカ・リク(ka0038)は立ち上がり、その脳裏にあるアイディアを伝えようと言葉を捻る。
「まず一つ、シールドなんだけど。こう、各辺に同じ種類のシールドを連結できるようなものを想像していたんだ。繋げて壁のように使ったり、足場の無い場所で橋のように使ったり」
そう、自分の手を盾に見立てて上下左右にくっつけるようにして説明する。
「あと、少し用途は限定的になるかもしれないけれど、探知機みたいなものが欲しいと思った。設置して地面の振動を計測するようなものや、水面に浮かべる水中用ソナーのようなもの」
「ソナー……それは一体、どういうもんなんだ?」
リクの言葉に、フランコは興味深げに尋ね返す。
「一般的なのは音波を出して、その反応を見るものが多いだろうけれど、この世界であればマテリアルの変動を感知したりできるとより便利だろうかな? それで水中の敵の位置なんかが分かるんだ」
「ほう、リアルブルーじゃそういうものもあるんだな」
「ちなみに、魚を探すのにも向いているから漁船なんかにも転用できるハズだ。振動の計測に関しては、大きな敵の接近や、地中からの奇襲なんかにも対応できるようになると考えている」
まさに今戦っている怠惰の軍勢との戦いで役に立つかもしれない、と彼は言葉を加える。
「面白そうだが、いまいちイメージが沸かないな……少しずつ実験していくか、既にその技術を持ってるヤツの力が必要かもしれねぇ」
アゴに生えた無精ひげを摩りながらフランコはそう答えを返した。
「探知機なら、錬魔院のマテリアル観測装置を使う事ってできないでしょうか?」
そう声を上げたのは、水城もなか(ka3532)である。
「あれを使ってレーダー機能を強化・拡張して警戒や偵察を行えるような補助装置を提案したいんです。魔導型CAMは現在、クリムゾンウェストにおいてかなり機動性の高い機体ですし、有用性は高いと思うのですが」
「錬魔院が絡んでるとなると、そちらも技術交流が出来るかどうか次第だな」
彼女の提案に、フランコはスペルランチャーの時と同じような反応を示す。
「もしかしたら院の方で自主的に作っちまう可能性のほうが高いかも分からんな。試験用に機体を融通して貰う関係で、全く関わりが無いわけでもないし、あっちに話を通してみるのもアリかもしれん」
「なるほど、そういう手もありますか。技術は確立しているわけですし、開発にはそう時間は掛からないと思ってます。よろしくお願いします」
そう言ってぺこりとお辞儀をすると、もなかはその場に座ろう……として、思い出したようにもう一度立ち上がった。
「ああ、あともう一つ。魔導アーマーなんですけれど、CAMのスナイパーライフルを改良して、キャノン砲なんて作れないでしょうか。安定しそうな形をしていますし、火砲は良く合うと思うんです」
「おう、それならCAMの武装を融通して貰えれば、すぐに取り掛かれるかもしれないな」
その言葉を聞いて、今度こそ「よろしくお願いします」と頭を下げてもなかは腰を下ろした。
「あの、今の意見にちょっとだけ関連して、いいですか?」
そう、ミオレスカ(ka3496)はおどおどと手を上げて見せる。
「はい、もちろんですよ♪」
ルミに指名され、ゆっくり立ち上がると、やはりどこか緊張した様子で口を開いた。
「スナイパーライフルとかの話が今も、先ほども少し出てましたけれど……その命中精度を上げる案、なんてどうでしょうか」
そう言ってミオレスカは自分の足元を指差す。
「猟撃士だから分かるんですが、射撃には姿勢保持が大事です。銃が、手が、体がぶれないこと。それだけで命中精度はぐんと上がります。そのために、姿勢を固定するためのユニットを作ってみてはどうかなと」
言いながら、射撃姿勢を取ってみせた自分の体を指し示し、説明を加える。
「言うなれば猟撃士のスキル『シャープシューティング』を物理的に体現してしまうんです。あれだけの巨大兵器で、アウトレンジから一射必中。それができれば、戦局は一気に有利になることでしょう」
「身体を動かさないようにしちゃう訳ですね。その間を狙われたら怖いでしょうけど、アウトレンジなら関係ない……のかな?」
「それこそ護衛に付くハンター達の腕の見せ所、だと思います」
ルミの問いかけに、ミオレスカはコクリと小さく頷いてそう答えた。
●
「さてとっ……中々案も出揃って来ましたが、武装案が少し銃器に傾倒している感じでしょうか? せっかくの意見会ですし、他に接近戦用の武器の案はありませんか?」
自らの書いたボードの内容を見返しながら、ルミがそう問いかけると、ティーア・ズィルバーン(ka0122)がビシリとその手を上げて応えた。
「現物を持ってきてるんだがよ、これをCAMサイズで再現できないか?」
そう言って彼が傍らに取り出したのは、試作振動刀「オートMURAMASA」。
モーターによる超音波振動で切り裂く、クリムゾンウェストでは最新鋭の技術が使われた一品だ。
「こいつ自身もまだ試作品だが、ある程度技術はできてるんだろう。だとしたら転用もしやすいんじゃねぇか?」
「ほう、面白いモンもあるんだな。そう言うの、職人のヤツらは喜びそうだ。後で話を振っておこう」
これはフランコが興味を持ったようで、どこか楽しげに言葉を返す。
「ああ、頼むぜ。他には聖導師のプロテクションみたいなバリアとか考えてみたが、これは機導砲と同じで、マテリアルの変換システムが出来てからでないと厳しいか?」
「そうだな、そいつは実現できても少し時間が掛かるかもしれねぇ」
「そうか。なら当面は盾で何とか、だろうなぁ……」
そう、自らも考え込むようにティーアは眉を顰める。
が、しばらくしてひらひらと手を振ると静かに腰を下ろした。
「ま……そんな所だな。悪いな、CAM用ばかりで。俺、もう一個の方はあまり興味なくてな」
リアルブルーの人間故に、CAMへの期待が高いのか。ティーアはそう言って「よろしく頼むぜ」と話題を区切った。
「実物、と言うなら俺のも見てくれないか」
そう、後に続くように春日 啓一(ka1621)が手に持った大きな箱を皆の見える位置へと下ろして見せた。
金属の箱に銃床が取り付けられたデザイン。
ショップへ通うハンターならば目にした事がある人も居るだろう。
パイルバンカーだ。
「提案するのは見ての通りの『パイルアーム』だ。剣やナイフを持っても、肉薄するほどに接敵されればなかなか思うように振り回す事もできない場面もあるだろう。そこで腕などにこいつを取り付けておく。奥の手のような扱いにはなるが、超至近戦で光ると思っている」
このサイズでそれなりの威力を持つのだから、それをCAMの腕に取り付けるサイズまで大きくすれば、それだけ火力も乗るだろう、と彼は言い加えた。
「この場でバラして構造まで見てもらっても良いんだが、どうする?」
「いえ、ハンター様の大事な装備ですから大事になされてください。必要になれば、私のルートを使って仕入れる事も可能ですので」
そうエヴァルドに柔らかに断られて、啓一はやや残念そうな表情を浮かべながらも、持ち入ったパイルを手元へと下げた。
パイルであれば、形によっては一種の暗器のような使い方も期待できるかもしれない。
「ああ、少し話はズレるかもしれないけど、加速装置付きの翼とかどうかな。飛ぶ用でなく、その翼を刃にするんだ。急接近してすれ違い様に切るような感じだね」
そう、リクは何かを思い浮かべるように提案を追加する。
「あー、良いですね。ロマンって感じですね~」
何故かルミがうんうん頷きながら、同意を示してみせた。
リアルブルーのテレビ番組にそういうのがあったらしい。
「あの、武器とはちょっと離れちゃうんですが、その加速装置というのは私も一つ思うところがあります!」
そうハキハキとした口調でクレール(ka0586)が立ち上がった。
「おう、やっぱり居たな。相変わらず、こういう技術の現場にゃ目がねーな」
「ジャックさんこそ、血が騒ぐと言うものですよ」
彼女の姿を目に留めると、ジャックは苦笑しながら声を掛けた。
クレールもまたそれに応えるように笑みを浮かべるも、すぐに、真面目な表情へと戻す。
「かつてCAMが小型の歪虚の群れに取り付かれた時、戦いづらそうにしていたのが記憶に残っています。そこで、敵に囲まれても、無理にでも振り切れるような急加速装置が欲しいと思ったんです」
そう、自らの経験を振り返りながら彼女は口にした。
「空圧式、火薬式、魔導式……それぞれに長所短所はあると思いますが、どれでも構わないと思います。任意のタイミングで発揮して、機体を急加速できるようなブースターがあればなと。リクさんの案のように、間合いを詰めるのにも使えるでしょうしね」
そう提案しながらも、自らでうんと首を捻る。
「ただ、操縦者にかなりの負担が掛かってしまう気がするんですよね。先に、操縦者の衝撃対策が必要になるかな……」
そう、自らでもまた問題点を見つけていくのは職人肌からだろう。
彼女自身の言うとおり、多少の開発のための順序は必要になってくるのかもしれない。
「さて……僕で最後でしょうか」
そうゆったりと立ち上がった天央 観智(ka0896)は白衣の襟を正すと、小さく礼をしてみせる。
「僕からはCAMを歪虚に操られた観点からの意見を言わせて頂きます。発想としてはリューさんのそれに近いのかもしれません」
不意に名前が出て、リューはドキリとその目を丸くした。
「ただ、僕の案はもっと直接的です。というのも『覚醒者にしか扱えない武器』を作ってみてはどうか、というものです」
「ほう、覚醒者のみに……ですか」
その他の意見には無かった方面からのアプローチに、エヴァルドも興味がある様子で観智へ続きを促した。
「魔導短伝話というものがあるでしょう。あのような形で、マテリアルを扱えるものでしか使えない細工を施すのです」
イメージが伝わればよいのですが、と観智は苦笑気味に付け加える。
「武器自体は何でも良いと思います。ただ、その起動にマテリアルが必要であれば、敵の手に渡った所で脅威にもならないと目しています。負のマテリアルが、我々の使うマテリアルと別物である事が前提とはなりますが……」
その事に関して答えられる者は居なかった。
なぜならば、歪虚そのものに関する研究はそう進んでは居ないのだから……
●
「うん、さすがハンターさん達だ。今日は呼んで正解だったな!」
びっしりと開発案で埋め尽くされたボードを眺めながら、フランコは満足げな笑みを浮かべた。
このメモボードはそのまま配属される職人達に見せるのだと言う。
「これだけの沢山の意見を出して頂いてありがとうございましたっ。きっと、今後の戦いに役立つ事になるって、ルミちゃんはそう思いますっ! 今日は本当に、集まってくれてありがとうー☆」
そうルミがぺこりとお辞儀をすると、どこからとも無く拍手が起こった。
その拍手はガレージへと響き渡り、まるでこれから始まる本格的な開発のスタートを祝福するかのような余韻を残し、会は閉会を告げたのであった。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 イーディス・ノースハイド(ka2106) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/02/21 11:45:17 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/02/21 21:34:09 |