ゲスト
(ka0000)
【MV】板チョコ?いいえ、痛チョコです
マスター:四月朔日さくら

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 寸志
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/02/20 12:00
- 完成日
- 2015/02/28 23:31
このシナリオは4日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
クリムゾンウエストにも、バレンタインの足音が近づいてきています。
ハロウィンやクリスマスのようにリアルブルーからやってきた文化のひとつではありますが、その伝わり方はひとつではありませんでした。
チョコレートを贈る日、気持ちを伝える日、合同結婚式が頻繁に行われる時期、食品業界が活性化する時期……あげればきりがありません。
感情の絆、マテリアルリンクが強まり世の中のマテリアルが活性化すると言われることもありますが、少しばかり別の形……愛情を育む者達を羨み憎むための怪しげな集会が行われ、嫉妬の絆で結束を強めているという噂もあるようです。本当でしょうか?
崖上都市「ピースホライズン」は催し事に力を入れる土地。勿論今は、バレンタインの賑わいで都市中が彩られています。
その中の、ほんの一部だけでも……確かめに行ってみてはいかがでしょうか?
●
バレンタインデーと言えば、女性から男性へと思いを伝える日。
最近は解釈もずいぶん変わってきているけれど、やっぱり誰の足も浮き足立つのがこの季節――だろう。
だけれど、無論例外というのは存在するようで。
●
ピースホライズンの片隅にあるカフェ「ギョーサンアン」。
ここには強面のスキンヘッドマスター・佐藤(仮)がいる物の、妙にヒトに知られる場所にもなってきていた。
マスターのルックスや人間性はもちろんながら、リアルブルーを想起させるようなイベントを折々に開いているからである。
もっとも、そのイベントの発起人はマスターではない。
マスターと縁深いハンターの少女トワ・トモエの仕業である。
そして今日も、トモエは「ギョーサンアン」に遊びに訪れていた。
「バレンタインって言っても、あたしは女子校だったし、友チョコがほとんどだったんだよねぇ」
トモエは元々リアルブルーの女子高生。転移してからはハンター稼業もやっているが、たいていは「最低限の依頼」にしか顔を出さないのだった。まあ、リアルブルーのミドルティーンでは、クリムゾンウェストとずいぶん勝手も違うためにそんなことになってしまうのだろうが。
「せやなぁ、まあバレンタインっちゅーんはあくまで恋愛に限ったイベントちゃうし」
癖のある訛りで佐藤(仮)も頷く。
「でね、ちょっと考えたんだけど」
トモエは口を佐藤の耳元に寄せて、なにやらぼそぼそ。
「……はーん。それはそれで、受けそうやな」
「でっしょー? と言うわけで場所を貸して欲しいんだ」
「よっしゃ、そう言うことなら助けたるで。クリムゾンウェストで痛チョコ作りっちゅう発想はないやろうからな」
●
と言うわけで、ハンターズオフィスに貼られたポスターにはなにやら面白いことが書かれていた。
「痛チョコ作りませんか」
痛チョコというのは、チョコレートでイラストを描く……というのを更に発展させたものであるらしい。
ポスターには、ホワイトチョコと食紅で彩られ作られた『痛チョコ』の実物も飾られている。それに書かれているのは、「ギョーサンアン」のマスター佐藤(仮)をコミカルにデフォルメしたイラストだ。
実在の人物でも良いし、無論二次元のキャラクターでもかまわない。
さあ、君ならどんな痛チョコを作る?
ハロウィンやクリスマスのようにリアルブルーからやってきた文化のひとつではありますが、その伝わり方はひとつではありませんでした。
チョコレートを贈る日、気持ちを伝える日、合同結婚式が頻繁に行われる時期、食品業界が活性化する時期……あげればきりがありません。
感情の絆、マテリアルリンクが強まり世の中のマテリアルが活性化すると言われることもありますが、少しばかり別の形……愛情を育む者達を羨み憎むための怪しげな集会が行われ、嫉妬の絆で結束を強めているという噂もあるようです。本当でしょうか?
崖上都市「ピースホライズン」は催し事に力を入れる土地。勿論今は、バレンタインの賑わいで都市中が彩られています。
その中の、ほんの一部だけでも……確かめに行ってみてはいかがでしょうか?
●
バレンタインデーと言えば、女性から男性へと思いを伝える日。
最近は解釈もずいぶん変わってきているけれど、やっぱり誰の足も浮き足立つのがこの季節――だろう。
だけれど、無論例外というのは存在するようで。
●
ピースホライズンの片隅にあるカフェ「ギョーサンアン」。
ここには強面のスキンヘッドマスター・佐藤(仮)がいる物の、妙にヒトに知られる場所にもなってきていた。
マスターのルックスや人間性はもちろんながら、リアルブルーを想起させるようなイベントを折々に開いているからである。
もっとも、そのイベントの発起人はマスターではない。
マスターと縁深いハンターの少女トワ・トモエの仕業である。
そして今日も、トモエは「ギョーサンアン」に遊びに訪れていた。
「バレンタインって言っても、あたしは女子校だったし、友チョコがほとんどだったんだよねぇ」
トモエは元々リアルブルーの女子高生。転移してからはハンター稼業もやっているが、たいていは「最低限の依頼」にしか顔を出さないのだった。まあ、リアルブルーのミドルティーンでは、クリムゾンウェストとずいぶん勝手も違うためにそんなことになってしまうのだろうが。
「せやなぁ、まあバレンタインっちゅーんはあくまで恋愛に限ったイベントちゃうし」
癖のある訛りで佐藤(仮)も頷く。
「でね、ちょっと考えたんだけど」
トモエは口を佐藤の耳元に寄せて、なにやらぼそぼそ。
「……はーん。それはそれで、受けそうやな」
「でっしょー? と言うわけで場所を貸して欲しいんだ」
「よっしゃ、そう言うことなら助けたるで。クリムゾンウェストで痛チョコ作りっちゅう発想はないやろうからな」
●
と言うわけで、ハンターズオフィスに貼られたポスターにはなにやら面白いことが書かれていた。
「痛チョコ作りませんか」
痛チョコというのは、チョコレートでイラストを描く……というのを更に発展させたものであるらしい。
ポスターには、ホワイトチョコと食紅で彩られ作られた『痛チョコ』の実物も飾られている。それに書かれているのは、「ギョーサンアン」のマスター佐藤(仮)をコミカルにデフォルメしたイラストだ。
実在の人物でも良いし、無論二次元のキャラクターでもかまわない。
さあ、君ならどんな痛チョコを作る?
リプレイ本文
●
甘い匂いの漂う季節。
チョコレートのイベントと聞いて喜び勇んでやってきたのは、リシェル=アルエターニア(ka2637)だった。食欲だけは人一倍、そうなれば当然こんな美味しいイベントに飛びつかないはずがない。
「……えっと、痛チョコ? 板チョコじゃなくて……それを作ればいいのか……相変わらず変わった依頼を出す店だね」
そんなことをひとりごちるのは以前ハロウィンの時にも『ギョーサンアン』を訪れたことのあるルゥルゥ・F=カマル(ka2994)。
「あ、久しぶりー!」
トワ・トモエが嬉しそうに手を振ると、ルゥルゥの方も少し気恥ずかしそうに、しかしちゃんと振り返した。
「チョコレートの作り方は付け焼き刃で練習したくらいでね。……でもお世辞にもうまくは作れなかったから、次はうまく作りたいなと……よかったら教えてもらっていいかい?」
「もちろん!」
むろんプレゼント相手である恋人兼雇い主に尋ねればきっと懇切丁寧に教えてもらえるのだろうが、渡す相手に教えてもらうのもどうにも気が引ける、ということらしい。耳打ちされたそれを聞いて、トモエがきゃっと顔を赤らめる。
(こういうのはなんていうのかな……なんだかピュアでいいよねっ)
腐ってはいないが薄ぼんやりとした知識は少女漫画やらで十分にあるトモエ、なんだか話を聞いているだけでもお腹いっぱいな気分らしい。
そしてその一方、ルゥルゥの渡したい相手であるソレイル・ラ=ジャンティ(ka3083)は、ニコニコとそのそばで笑う。
「なるほど、痛チョコ……面白そうですね」
ルゥルゥよりもなんとなくノリノリの気がするのは気のせいだろうか、いや気のせいではない気もする。
「ね、ルゥちゃん?」
ルゥルゥにちょっと小首を傾げて尋ねてみれば、ルゥルゥはこくこくっと頷いてみせるばかり。そんな様子もなんだか可愛らしくて、トモエはまた笑った。
(ふむ、リアルブルーには興味深いイベントが有るのだなぁ……誕生日以外にも物を贈るとは。しかもチョコレートとは)
姉御肌でどちらかというと柔軟な思考を持つ(逆に言えばちょいとばかり変人扱いされやすい)ヴィジェア=ダンディルディエン(ka3316)はそんなことを思いながらほくそ笑む。
(甘党にはたまらんイベントだな……もっとも、貰えるかどうかは本人次第のようだが。まあ今回は趣旨がやや異なるのかな、痛チョコとは名前からして興味深い。楽しませていただこう)
ヴィジェアはそんなことを思いながら、マスターである佐藤(仮)をじっと見やる。
(己の造形技術とセンスが問われるらしいが……ふむ)
どうやら彼女の胸に、ピピッと来るものがあったらしい。小さくほくそ笑むと、髪の毛を軽くかきあげた。
その一方でなんだか考えこんでるのはルーチェ=リュシェール (ka4155)。
(なんだかぁ、甘いお菓子が食べられるって聞いたんだけどぉ。自分で作るんだねぇ)
それはそれで楽しみではあるらしい。甘党というよりどちらかと言うと腹ペコ属性の彼女は、チョコ作りにも興味津々だ。
「でも、痛チョコってリアルブルーのお菓子なのかしらぁ?」
思わずトモエに尋ねてみる。と、トモエは少し悩んでから、
「チョコレートそのものは同じなんだけど、それに絵を描いたり、文字を書いたりして楽しむの。コミカルな絵のほうが楽しまれたりもするし、結構奥が深いんだよ」
そう言って説明をする。ルーチェはなるほどぉ、と頷いて、
「じゃあ後で作り方も教えてくれるかなぁ? 順番でいいからぁ」
「了解!」
トモエも頼まれるのは嫌じゃない。楽しそうに頷いて、参加者の様子を見る。
「ところで外国のお菓子作りに興味があって参加したんだけど、痛チョコてどういうこと? 針でも入れるの?」
いやそれは物理的に痛いだけである。
そんなことを思っているのはリアルブルーから転移してきた一族の娘だが、今は天涯孤独の身分という複雑な環境を背負った紅緒(ka4255)。リアルブルーの血は流れているものの、知識面では疎いらしい。佐藤(仮)の説明を軽く聞いて彼女はこくこくと頷く。
「なるほど、とりあえずは決められたお題でチョコのお菓子を作れってことね。あたしの実力を思い知らせてやるわ」
ふふっと軽く微笑む彼女だが、どこか不安がよぎる佐藤(仮)であった。
そして、双子の姉妹も参加していた。北条・真奈美(ka4064)と北条・佳奈美(ka4065)である。どこか幼気なツインテールのほうが姉の真奈美、クールなストレートロングのほうが妹の佳奈美だ。
リアルブルー出身ということもあってか、痛チョコに対する飲み込みも早かった二人。作るものもおおよそ決まっているらしく、二人でひとつの痛チョコを作ると言っていた。
どんなチョコを作るかはまだナイショ――ということだが、佳奈美が何やら楽しそうにしているあたり、なんとなく読めたような気がする。
まあ経緯はともかくレクチャーも終わり、いよいよ痛チョコづくり開始である。
●
リシェルは漂うチョコの香りに始終ニコニコと笑顔を浮かべながら、何やら描いている。
見れば参加者それぞれや、マスターである佐藤(仮)、そしてトモエの二頭身ディフォルメイラスト。
決して絵はうまい方ではないのだが、特徴をつかむのがうまいようで、髪型や服装、そんなところをちゃんと見ればどれが誰かを判別するのは結構たやすい。顔の造形は基本的におなじになってしまうが、それもセンスの一つだろう。技巧にこだわる方でもないので、教えられた手順通りにてきぱきと仕事をこなしていく。
「あー、なるほど。これなら誰が誰だかすぐわかるね!」
トモエも思わず感嘆の声。
(ん……なかなか、難しいな)
狐と猫の可愛らしいデフォルメイラストを描いているのはルゥルゥ。しかしかなり苦戦しているようだ。できるだけ、動物たちが仲睦まじくしているようにしたいため、寄り添い合うように描き、さらに相合マフラーを描き足す。以前ソレイルにしてもらったことを思い出し、ほんのりと顔が赤くなった。
そう、彼女の中ではソレイルが狐、猫はルゥルゥ自身。
これを相手にあげようというのだから、当然下手なりとも心をこめて書きたいところだ。食紅をうまく使って狐を黄色、猫を赤く着色する。
一応出来上がってあとは冷やすわけだが……微妙に材料が余っている。
(どうしようかなぁ……あ、そうだ)
ついでというわけではないが、思い立って作ったのは――ピンク色のハートをだいて丸まった、赤い猫。
(わかりやすすぎるかなぁ?)
作ったはいいものの、なんだか気恥ずかしい。それでもなんだか嬉しい気分になって、微笑んだ。
一方ソレイルはと言うと。
はじめは白い板状のチョコに、デフォルメした自分とルゥルゥのキャラを描いて、自分がルゥルゥをもふもふしているようにしようと思ったのだが――
(これ、絵じゃなくてもいいのかな……)
想い合っている同士、考えることは似ているらしい。リア充爆発しろと何処かから聞こえる気もするが、まあそれは置いといて。
結局、ホワイトチョコで自分自身、そしてミルクチョコでルゥルゥのデフォルメ細工を作ることに決めたらしい。
あれ、じゃあ痛チョコは?
そちらはそちらで計画があるらしい。キッチンの奥に引っ込んでいる佐藤(仮)のスキンヘッドを思いながら、彼は手を動かし始めた。
ちなみに。
佐藤(仮)のチョコを作ったのはまだいる。恐ろしい(?)ことに。
ヴィジェアは佐藤(仮)のチョコレートをバリエーション豊かに作っていく。ヴィジェア曰く、
「印象深い御仁は大好物」
なのだとか。確かにスキンヘッドの強面では、インパクトがでかい。
笑う佐藤(仮)、踊る佐藤(仮)、アフロな佐藤(仮)、まるごとうさぎ着用の佐藤(仮)……だんだんイロモノ路線になっているが、まあ本人のセンスでもけっこうやってしまいそうな姿なので、チラリと脇で見ていたトモエのほうが笑いを堪えるのに必死だったという。しかも妙にリアルな描写のため、余計に苦しんだのは言うまでもない。
しかもヴィジェア、非常に集中して作成しているため、そんなトモエの様子もあまり気づいていないっぽい。時折とる喫煙休憩以外はずっと集中しているのだから、恐れ入るというわけだ。
さて双子はと言うと――佳奈美がモデル役、真奈美が作成担当ということらしい。ポーズの指定は真奈美のもの。
「ポーズとかに関してはマナ姉の指示に任せるけど…だからって変な格好させるんじゃないわよ?」
佳奈美が一応釘を刺すが、その辺は慣れたもの。
「大丈夫、あたしに任せてぇっ♪ 素敵な痛チョコにするから♪」
が――実際に真奈美が作っているのはポーズこそ同じだがなんと裸婦絵。むろん蔵倫という眼に見えない壁が発動する――かと思いきや、佳奈美が姉の妙に興奮している様子に気づいて確認、そして思い切り罵声を投げかける。さらにぽかぽかと殴る。
「なんで裸婦絵なんか描いてるのよこのド変態!」
しかし真奈美も慣れたもので、むしろそれに対して興奮している始末。
「もういい、私が作る方に回るから、マナ姉はそこで見てなさい!」
結果的に作成担当とモデルを交代することで落ち着いたが……この二人、姉妹故に考えることは同じというかなんというか。簡単にいえば佳奈美の作ったのも真奈美の裸婦絵で――はい蔵倫発動。
当然他の参加者は若干引き気味――なのは仕方がなかった。うん。
(でも作り方はわかったけれどぉ、モデルは何にしようかしらぁ……得意なのはタロットと占星術だしぃ……)
ルーチェはデザインがなかなか決まらないらしい。しかしふっと昔聞いたことを思い出した。
リアルブルーにはこの季節、「シリウス」という星が見られること。
ある国ではその星が天狼と呼ばれているということ。
「んー……狼みたいなのを、作ってみようかしらぁ」
狼ならふさふさした毛の持ち主だし、ホワイトチョコで毛並みを表現するのも面白いだろう。かっこよく描くのは難しいので、可愛らしさ重視で。
なんだかそんなふうに考えたら、だんだん面白くなってきたらしい。フワーッと、ルーチェも笑顔になった。
ところで紅緒はその……何だ、料理の腕は決して悪くない。悪くないのだが、造形センスが皆無である。ハートや星を書いても必ず歪み、得体のしれない物体になってしまう有り様である。
でも、動物のゆるキャラ風なら、あるいはなんとかなるかもしれない――そう思って描いたそれは。
――ハイ残念でした――
犬も猫も牛も羊も、どれもこれも、全部足が妙に長い芋虫のような、まさしくクリーチャーと呼ぶにふさわしい物体になっている。区別ができるのが紅緒だけということなのだから、これは……うん、言葉にできない。
覗きに来たヴィジェアはともかく、巴も素で驚いたくらいである。しかし負けず嫌いの紅緒は、このくらいでめげたりはしない。優れたものをあるままに認め、そして同時に『自分だって負けていないもの』と向上心を燃やすタイプ――それが紅緒という少女なのだ。まあ、意地になっているのだと、そう言えなくもないが。
(うーん、それなら自分の顔なら……)
見慣れているし、造形しやすいだろうと思ってこちらにも手を付けたが。
目は黒塗りの歪な丸、口は歪んだ半開きの楕円、髪はうねる若布のごとし。正直なところシュールレアリズムと言われる部類にはいってもおかしくないくらいのシロモノにも見えるが、本人にとっては会心の出来栄えということで笑顔を浮かべていた。
ちなみに喜怒哀楽を表現するために複数作ったところ、誰かが夢に出てきそうだと漏らしたという。
●
そんなこんなでチョコ作成も終わり、佐藤(仮)の入れてくれたホットチョコレートでブレイクタイム。
こんな心遣いも出来る人物なのだが、何分強面なのがすべてにおいてマイナスになっているらしい。
しかし、ヴィジェルの作った佐藤(仮)チョコの数々に、誰もが声を失ったのは、仕方のない話だろう。それは、とてもとても繊細かつ大胆に作られていたからだ。
「バレンタインとは婦女子が男性にチョコを送るイベントと聞いたのでな」
佐藤(仮)に渡されたのは、満面の笑みを浮かべた彼自身の顔のチョコ。正直、勿体無くて食べられないような見事な出来栄えだ。
「あ。僕も、こんなものを作ったんです」
ソレイルが手渡したのは、スキンヘッドの男がニヒルな笑みを浮かべているチョコ。ややリアルよりなのは、彼への感謝の気持なのだろうが――正直無駄にリアルすぎて色々とぶち壊しムード。しかしこれも彼の作戦なのだというのだから、なかなかの策士である。ちょん、とルゥルゥの肩をつつき、
「はい、ルゥちゃんには……コレ」
みんなの気がそれているうちに、とばかりにかわいくラッピングされた包みを渡す。中には自分とルゥルゥのデフォルメされたチョコ細工、丸まっている彼女をもふもふしているデザインというなかなかにリア充爆発しろなデザイン。もちろんその場で開けるわけには行かないけれど、ルゥルゥもちょっと顔を赤らめて頷く。よほど驚いたらしい。
「ん……一緒にいるって決めたから、な」
ルゥルゥもそっと、ハートをだいて丸まった猫の痛チョコのはいった袋をつきだした。ソレイルも驚いたようだが、微笑んでくれたのはやはり嬉しいからだろう。
「そう言えばトモエさん。リアルブルーのバレンタインというのはどんな感じなのです?」
尋ねたのはリシエルだ。トモエは考えながら、
「最近はチョコを友だちにあげたり、逆に男性が女の子にあげたりするのもポピュラーになってるけど、面白い日だよ。マンガのキャラにチョコをあげたりする人も多いしねっ」
経験者は語る、らしい。
リシエルの作ったチョコは仲間たちのキャラクター以外にも花やいちごなどの可愛らしいもの。出来栄えは優れているというより可愛らしい。
「私のチョコはぁ、可愛くしたからぁ。狼というよりも、子犬っぽくなってないかなぁ?」
たしかに可愛らしいが、これはこれでありだと思う、というのがマスターの意見。あまりリアルすぎてもこういうのは怖いものだ。
紅緒のチョコは――あえて言葉にすまい。
味自体は悪くないので、それは救いなのだろうが。
そして北条姉妹のチョコは――色んな意味で、没収されることとなった。
まあ、うん仕方がないね。蔵倫発動だからね。
でも、楽しかったと言ってくれる声が多くて、トモエも佐藤(仮)も満足気。
またなにか面白いことがあれば一緒にやろうねと、そんな笑顔を浮かべて誰もが心をあたたかにして、痛チョコ大会は終わったのだった。
甘い匂いの漂う季節。
チョコレートのイベントと聞いて喜び勇んでやってきたのは、リシェル=アルエターニア(ka2637)だった。食欲だけは人一倍、そうなれば当然こんな美味しいイベントに飛びつかないはずがない。
「……えっと、痛チョコ? 板チョコじゃなくて……それを作ればいいのか……相変わらず変わった依頼を出す店だね」
そんなことをひとりごちるのは以前ハロウィンの時にも『ギョーサンアン』を訪れたことのあるルゥルゥ・F=カマル(ka2994)。
「あ、久しぶりー!」
トワ・トモエが嬉しそうに手を振ると、ルゥルゥの方も少し気恥ずかしそうに、しかしちゃんと振り返した。
「チョコレートの作り方は付け焼き刃で練習したくらいでね。……でもお世辞にもうまくは作れなかったから、次はうまく作りたいなと……よかったら教えてもらっていいかい?」
「もちろん!」
むろんプレゼント相手である恋人兼雇い主に尋ねればきっと懇切丁寧に教えてもらえるのだろうが、渡す相手に教えてもらうのもどうにも気が引ける、ということらしい。耳打ちされたそれを聞いて、トモエがきゃっと顔を赤らめる。
(こういうのはなんていうのかな……なんだかピュアでいいよねっ)
腐ってはいないが薄ぼんやりとした知識は少女漫画やらで十分にあるトモエ、なんだか話を聞いているだけでもお腹いっぱいな気分らしい。
そしてその一方、ルゥルゥの渡したい相手であるソレイル・ラ=ジャンティ(ka3083)は、ニコニコとそのそばで笑う。
「なるほど、痛チョコ……面白そうですね」
ルゥルゥよりもなんとなくノリノリの気がするのは気のせいだろうか、いや気のせいではない気もする。
「ね、ルゥちゃん?」
ルゥルゥにちょっと小首を傾げて尋ねてみれば、ルゥルゥはこくこくっと頷いてみせるばかり。そんな様子もなんだか可愛らしくて、トモエはまた笑った。
(ふむ、リアルブルーには興味深いイベントが有るのだなぁ……誕生日以外にも物を贈るとは。しかもチョコレートとは)
姉御肌でどちらかというと柔軟な思考を持つ(逆に言えばちょいとばかり変人扱いされやすい)ヴィジェア=ダンディルディエン(ka3316)はそんなことを思いながらほくそ笑む。
(甘党にはたまらんイベントだな……もっとも、貰えるかどうかは本人次第のようだが。まあ今回は趣旨がやや異なるのかな、痛チョコとは名前からして興味深い。楽しませていただこう)
ヴィジェアはそんなことを思いながら、マスターである佐藤(仮)をじっと見やる。
(己の造形技術とセンスが問われるらしいが……ふむ)
どうやら彼女の胸に、ピピッと来るものがあったらしい。小さくほくそ笑むと、髪の毛を軽くかきあげた。
その一方でなんだか考えこんでるのはルーチェ=リュシェール (ka4155)。
(なんだかぁ、甘いお菓子が食べられるって聞いたんだけどぉ。自分で作るんだねぇ)
それはそれで楽しみではあるらしい。甘党というよりどちらかと言うと腹ペコ属性の彼女は、チョコ作りにも興味津々だ。
「でも、痛チョコってリアルブルーのお菓子なのかしらぁ?」
思わずトモエに尋ねてみる。と、トモエは少し悩んでから、
「チョコレートそのものは同じなんだけど、それに絵を描いたり、文字を書いたりして楽しむの。コミカルな絵のほうが楽しまれたりもするし、結構奥が深いんだよ」
そう言って説明をする。ルーチェはなるほどぉ、と頷いて、
「じゃあ後で作り方も教えてくれるかなぁ? 順番でいいからぁ」
「了解!」
トモエも頼まれるのは嫌じゃない。楽しそうに頷いて、参加者の様子を見る。
「ところで外国のお菓子作りに興味があって参加したんだけど、痛チョコてどういうこと? 針でも入れるの?」
いやそれは物理的に痛いだけである。
そんなことを思っているのはリアルブルーから転移してきた一族の娘だが、今は天涯孤独の身分という複雑な環境を背負った紅緒(ka4255)。リアルブルーの血は流れているものの、知識面では疎いらしい。佐藤(仮)の説明を軽く聞いて彼女はこくこくと頷く。
「なるほど、とりあえずは決められたお題でチョコのお菓子を作れってことね。あたしの実力を思い知らせてやるわ」
ふふっと軽く微笑む彼女だが、どこか不安がよぎる佐藤(仮)であった。
そして、双子の姉妹も参加していた。北条・真奈美(ka4064)と北条・佳奈美(ka4065)である。どこか幼気なツインテールのほうが姉の真奈美、クールなストレートロングのほうが妹の佳奈美だ。
リアルブルー出身ということもあってか、痛チョコに対する飲み込みも早かった二人。作るものもおおよそ決まっているらしく、二人でひとつの痛チョコを作ると言っていた。
どんなチョコを作るかはまだナイショ――ということだが、佳奈美が何やら楽しそうにしているあたり、なんとなく読めたような気がする。
まあ経緯はともかくレクチャーも終わり、いよいよ痛チョコづくり開始である。
●
リシェルは漂うチョコの香りに始終ニコニコと笑顔を浮かべながら、何やら描いている。
見れば参加者それぞれや、マスターである佐藤(仮)、そしてトモエの二頭身ディフォルメイラスト。
決して絵はうまい方ではないのだが、特徴をつかむのがうまいようで、髪型や服装、そんなところをちゃんと見ればどれが誰かを判別するのは結構たやすい。顔の造形は基本的におなじになってしまうが、それもセンスの一つだろう。技巧にこだわる方でもないので、教えられた手順通りにてきぱきと仕事をこなしていく。
「あー、なるほど。これなら誰が誰だかすぐわかるね!」
トモエも思わず感嘆の声。
(ん……なかなか、難しいな)
狐と猫の可愛らしいデフォルメイラストを描いているのはルゥルゥ。しかしかなり苦戦しているようだ。できるだけ、動物たちが仲睦まじくしているようにしたいため、寄り添い合うように描き、さらに相合マフラーを描き足す。以前ソレイルにしてもらったことを思い出し、ほんのりと顔が赤くなった。
そう、彼女の中ではソレイルが狐、猫はルゥルゥ自身。
これを相手にあげようというのだから、当然下手なりとも心をこめて書きたいところだ。食紅をうまく使って狐を黄色、猫を赤く着色する。
一応出来上がってあとは冷やすわけだが……微妙に材料が余っている。
(どうしようかなぁ……あ、そうだ)
ついでというわけではないが、思い立って作ったのは――ピンク色のハートをだいて丸まった、赤い猫。
(わかりやすすぎるかなぁ?)
作ったはいいものの、なんだか気恥ずかしい。それでもなんだか嬉しい気分になって、微笑んだ。
一方ソレイルはと言うと。
はじめは白い板状のチョコに、デフォルメした自分とルゥルゥのキャラを描いて、自分がルゥルゥをもふもふしているようにしようと思ったのだが――
(これ、絵じゃなくてもいいのかな……)
想い合っている同士、考えることは似ているらしい。リア充爆発しろと何処かから聞こえる気もするが、まあそれは置いといて。
結局、ホワイトチョコで自分自身、そしてミルクチョコでルゥルゥのデフォルメ細工を作ることに決めたらしい。
あれ、じゃあ痛チョコは?
そちらはそちらで計画があるらしい。キッチンの奥に引っ込んでいる佐藤(仮)のスキンヘッドを思いながら、彼は手を動かし始めた。
ちなみに。
佐藤(仮)のチョコを作ったのはまだいる。恐ろしい(?)ことに。
ヴィジェアは佐藤(仮)のチョコレートをバリエーション豊かに作っていく。ヴィジェア曰く、
「印象深い御仁は大好物」
なのだとか。確かにスキンヘッドの強面では、インパクトがでかい。
笑う佐藤(仮)、踊る佐藤(仮)、アフロな佐藤(仮)、まるごとうさぎ着用の佐藤(仮)……だんだんイロモノ路線になっているが、まあ本人のセンスでもけっこうやってしまいそうな姿なので、チラリと脇で見ていたトモエのほうが笑いを堪えるのに必死だったという。しかも妙にリアルな描写のため、余計に苦しんだのは言うまでもない。
しかもヴィジェア、非常に集中して作成しているため、そんなトモエの様子もあまり気づいていないっぽい。時折とる喫煙休憩以外はずっと集中しているのだから、恐れ入るというわけだ。
さて双子はと言うと――佳奈美がモデル役、真奈美が作成担当ということらしい。ポーズの指定は真奈美のもの。
「ポーズとかに関してはマナ姉の指示に任せるけど…だからって変な格好させるんじゃないわよ?」
佳奈美が一応釘を刺すが、その辺は慣れたもの。
「大丈夫、あたしに任せてぇっ♪ 素敵な痛チョコにするから♪」
が――実際に真奈美が作っているのはポーズこそ同じだがなんと裸婦絵。むろん蔵倫という眼に見えない壁が発動する――かと思いきや、佳奈美が姉の妙に興奮している様子に気づいて確認、そして思い切り罵声を投げかける。さらにぽかぽかと殴る。
「なんで裸婦絵なんか描いてるのよこのド変態!」
しかし真奈美も慣れたもので、むしろそれに対して興奮している始末。
「もういい、私が作る方に回るから、マナ姉はそこで見てなさい!」
結果的に作成担当とモデルを交代することで落ち着いたが……この二人、姉妹故に考えることは同じというかなんというか。簡単にいえば佳奈美の作ったのも真奈美の裸婦絵で――はい蔵倫発動。
当然他の参加者は若干引き気味――なのは仕方がなかった。うん。
(でも作り方はわかったけれどぉ、モデルは何にしようかしらぁ……得意なのはタロットと占星術だしぃ……)
ルーチェはデザインがなかなか決まらないらしい。しかしふっと昔聞いたことを思い出した。
リアルブルーにはこの季節、「シリウス」という星が見られること。
ある国ではその星が天狼と呼ばれているということ。
「んー……狼みたいなのを、作ってみようかしらぁ」
狼ならふさふさした毛の持ち主だし、ホワイトチョコで毛並みを表現するのも面白いだろう。かっこよく描くのは難しいので、可愛らしさ重視で。
なんだかそんなふうに考えたら、だんだん面白くなってきたらしい。フワーッと、ルーチェも笑顔になった。
ところで紅緒はその……何だ、料理の腕は決して悪くない。悪くないのだが、造形センスが皆無である。ハートや星を書いても必ず歪み、得体のしれない物体になってしまう有り様である。
でも、動物のゆるキャラ風なら、あるいはなんとかなるかもしれない――そう思って描いたそれは。
――ハイ残念でした――
犬も猫も牛も羊も、どれもこれも、全部足が妙に長い芋虫のような、まさしくクリーチャーと呼ぶにふさわしい物体になっている。区別ができるのが紅緒だけということなのだから、これは……うん、言葉にできない。
覗きに来たヴィジェアはともかく、巴も素で驚いたくらいである。しかし負けず嫌いの紅緒は、このくらいでめげたりはしない。優れたものをあるままに認め、そして同時に『自分だって負けていないもの』と向上心を燃やすタイプ――それが紅緒という少女なのだ。まあ、意地になっているのだと、そう言えなくもないが。
(うーん、それなら自分の顔なら……)
見慣れているし、造形しやすいだろうと思ってこちらにも手を付けたが。
目は黒塗りの歪な丸、口は歪んだ半開きの楕円、髪はうねる若布のごとし。正直なところシュールレアリズムと言われる部類にはいってもおかしくないくらいのシロモノにも見えるが、本人にとっては会心の出来栄えということで笑顔を浮かべていた。
ちなみに喜怒哀楽を表現するために複数作ったところ、誰かが夢に出てきそうだと漏らしたという。
●
そんなこんなでチョコ作成も終わり、佐藤(仮)の入れてくれたホットチョコレートでブレイクタイム。
こんな心遣いも出来る人物なのだが、何分強面なのがすべてにおいてマイナスになっているらしい。
しかし、ヴィジェルの作った佐藤(仮)チョコの数々に、誰もが声を失ったのは、仕方のない話だろう。それは、とてもとても繊細かつ大胆に作られていたからだ。
「バレンタインとは婦女子が男性にチョコを送るイベントと聞いたのでな」
佐藤(仮)に渡されたのは、満面の笑みを浮かべた彼自身の顔のチョコ。正直、勿体無くて食べられないような見事な出来栄えだ。
「あ。僕も、こんなものを作ったんです」
ソレイルが手渡したのは、スキンヘッドの男がニヒルな笑みを浮かべているチョコ。ややリアルよりなのは、彼への感謝の気持なのだろうが――正直無駄にリアルすぎて色々とぶち壊しムード。しかしこれも彼の作戦なのだというのだから、なかなかの策士である。ちょん、とルゥルゥの肩をつつき、
「はい、ルゥちゃんには……コレ」
みんなの気がそれているうちに、とばかりにかわいくラッピングされた包みを渡す。中には自分とルゥルゥのデフォルメされたチョコ細工、丸まっている彼女をもふもふしているデザインというなかなかにリア充爆発しろなデザイン。もちろんその場で開けるわけには行かないけれど、ルゥルゥもちょっと顔を赤らめて頷く。よほど驚いたらしい。
「ん……一緒にいるって決めたから、な」
ルゥルゥもそっと、ハートをだいて丸まった猫の痛チョコのはいった袋をつきだした。ソレイルも驚いたようだが、微笑んでくれたのはやはり嬉しいからだろう。
「そう言えばトモエさん。リアルブルーのバレンタインというのはどんな感じなのです?」
尋ねたのはリシエルだ。トモエは考えながら、
「最近はチョコを友だちにあげたり、逆に男性が女の子にあげたりするのもポピュラーになってるけど、面白い日だよ。マンガのキャラにチョコをあげたりする人も多いしねっ」
経験者は語る、らしい。
リシエルの作ったチョコは仲間たちのキャラクター以外にも花やいちごなどの可愛らしいもの。出来栄えは優れているというより可愛らしい。
「私のチョコはぁ、可愛くしたからぁ。狼というよりも、子犬っぽくなってないかなぁ?」
たしかに可愛らしいが、これはこれでありだと思う、というのがマスターの意見。あまりリアルすぎてもこういうのは怖いものだ。
紅緒のチョコは――あえて言葉にすまい。
味自体は悪くないので、それは救いなのだろうが。
そして北条姉妹のチョコは――色んな意味で、没収されることとなった。
まあ、うん仕方がないね。蔵倫発動だからね。
でも、楽しかったと言ってくれる声が多くて、トモエも佐藤(仮)も満足気。
またなにか面白いことがあれば一緒にやろうねと、そんな笑顔を浮かべて誰もが心をあたたかにして、痛チョコ大会は終わったのだった。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/02/17 23:25:28 |