ゲスト
(ka0000)
ぴょんぴょんぴょん
マスター:御影堂

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/02/24 19:00
- 完成日
- 2015/03/04 02:51
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
雪解け、土が顔を出し始めた頃、王国の一部では田畑が動き出す。
ここ、マウンティア農場も例外ではない。
マウンティアは、農場の経営に着手した珍しい商人である。
その商人は、今、体を震わせ蓄えたアゴの脂肪をぷるぷるさせていた。
「ゆゆしき事態といわなければなりませぬぞ」
彼の前には、雇われた農家が数人鎮座していた。
皆、顔色は蒼白。処断を待つ被告人のような、面持ちである。
「ですが、天災のようなものではありますな。その処理は私がいたしましょう」
「本当ですか?」
おずおずと農家の一人が聞き返せば、マウンティアは頷く。
「ただし、作付の遅れは許しません。片がついたら早急に終えることですぞ」
これには、厳しい面持ちを互いに崩さない。
しかし、了承するより他にない。遅れが出れば、困るのは農家も同じであった。
「ところで、報告の限りにわかには信じられぬ部分もありますな。私が直々に見に行くのですぞ」
ずんぐりな体をよいしょと持ち上げ、マウンティアは支度を整える。
農家の顔色は、ついぞ、優れないままだった。
●
遠くまで広がる田園風景。
作付け前のため、茶色い大地の上に白いまんじゅうがいた。
どでかい丸々としたまんじゅうが、いくつも点在しているのだ。
「嘘はついてなかったようですな」
その様子をマウンティアが、苦虫を噛み潰したような表情で眺めていた。
まんじゅうに負けず劣らず、まるっとした体。
その先、頭のてっぺんには何故か、ウサミミが立っていた。
「ところで、このウサミミは必須なのですかな?」
「はい、それがないとこの距離でも全速力で駆けてくるもんで」
恐る恐ると答える農家の頭にも、ウサミミがあった。
そのとき、まんじゅうがぴくりと動き耳を出した。
ふわふわした毛皮を持った巨大ウサギなのである。
「いげね。顔を背けてくだせぇ」
慌てる農家に促され、マウンティアはウサギから視線をはずす。
いぶかしげな表情に急かされ、早口に農家は告げる。
「あいつらと目が合うと、感覚が狂うのでさぁ。用心に越したことはなか」
一筋縄ではいかない相手だと、マウンティアの表情が険しいものになる。
だからといって、なにもしなければ損失が膨らむばかり。
「早速、書状をしたためますぞ」
手飼いの兵士では、敵わぬと判断する。
餅は餅屋、雑魔はハンターと相場が決まっているのである。
雪解け、土が顔を出し始めた頃、王国の一部では田畑が動き出す。
ここ、マウンティア農場も例外ではない。
マウンティアは、農場の経営に着手した珍しい商人である。
その商人は、今、体を震わせ蓄えたアゴの脂肪をぷるぷるさせていた。
「ゆゆしき事態といわなければなりませぬぞ」
彼の前には、雇われた農家が数人鎮座していた。
皆、顔色は蒼白。処断を待つ被告人のような、面持ちである。
「ですが、天災のようなものではありますな。その処理は私がいたしましょう」
「本当ですか?」
おずおずと農家の一人が聞き返せば、マウンティアは頷く。
「ただし、作付の遅れは許しません。片がついたら早急に終えることですぞ」
これには、厳しい面持ちを互いに崩さない。
しかし、了承するより他にない。遅れが出れば、困るのは農家も同じであった。
「ところで、報告の限りにわかには信じられぬ部分もありますな。私が直々に見に行くのですぞ」
ずんぐりな体をよいしょと持ち上げ、マウンティアは支度を整える。
農家の顔色は、ついぞ、優れないままだった。
●
遠くまで広がる田園風景。
作付け前のため、茶色い大地の上に白いまんじゅうがいた。
どでかい丸々としたまんじゅうが、いくつも点在しているのだ。
「嘘はついてなかったようですな」
その様子をマウンティアが、苦虫を噛み潰したような表情で眺めていた。
まんじゅうに負けず劣らず、まるっとした体。
その先、頭のてっぺんには何故か、ウサミミが立っていた。
「ところで、このウサミミは必須なのですかな?」
「はい、それがないとこの距離でも全速力で駆けてくるもんで」
恐る恐ると答える農家の頭にも、ウサミミがあった。
そのとき、まんじゅうがぴくりと動き耳を出した。
ふわふわした毛皮を持った巨大ウサギなのである。
「いげね。顔を背けてくだせぇ」
慌てる農家に促され、マウンティアはウサギから視線をはずす。
いぶかしげな表情に急かされ、早口に農家は告げる。
「あいつらと目が合うと、感覚が狂うのでさぁ。用心に越したことはなか」
一筋縄ではいかない相手だと、マウンティアの表情が険しいものになる。
だからといって、なにもしなければ損失が膨らむばかり。
「早速、書状をしたためますぞ」
手飼いの兵士では、敵わぬと判断する。
餅は餅屋、雑魔はハンターと相場が決まっているのである。
リプレイ本文
●
広大な農地を見据え、佇む数名のハンターたち。
視線の先には、巨大なウサギがのっそのっそとのさばっていた。
「あ、あのヤロー……野菜農家の人に迷惑かけやがて」
怒りを露わに、岩井崎 旭(ka0234)が睨みをきかせる。
人参を食って育ったウサギのくせに、作付の邪魔をするのが許せないのだ。
その隣では、まるごとウサギに身を包むエニグマ(ka3688)がわきゃわきゃしていた。
「キュートでプリティで紳士なナイスガイの変装名人たぁオレサマのことよ」
などとふかしながら、両手をぱたぱたと動かす。
「消滅する可能性が高いって話だけどさー」
エニグマはアキラとは違う感情を視線に込めて、ウサギを見る。
「消滅ってのは口の中でとろけるような食感ってことかもしれねーじゃん!」
重大な事実に気づいたかのように、大仰そうにエニグマは叫ぶ。
エニグマの視線の半分は、食欲で出来ています。
「……」
苦い顔でエニグマを旭は見下ろす。
その視線を知ってか知らずか、エニグマはあれやこれやと妄想を膨らましていた。
旭とエニグマが並ぶ場所の反対側に、なだらかな丘陵があった。
「え……雑魔を食す……ですか?」
中腹に集まるハンターの中で、マナ・ブライト(ka4268)が狼狽の声を上げていた。
エニグマが食べたいといっていたと伝え聞いたのだ。
「穢れを口にする事になってしまい、身体を壊してしまうとおもうのですが……」
難しい顔をしながら、マナはぽつりぽつりと思考を整理する。
「成程、敢えて穢れを体内に入れることでその抗体を作ろうという訳ですね」
ポンと手をうち、「わかりました」と一人完結する。
「万が一の時の治療は任せて下さい!」
勝手に意気込むマナの隣では、エティ・メルヴィル(ka3732)がじっとウサギを眺めていた。
その大きさに息を呑み、白くふさふさした毛並みに思いを馳せる。
「アレをもふもふしたら気持ちいいだろうな~」
言葉尻がすでにふわふわしていた。
まるごとウサギを着ているから、エティの格好もふわふわしていた。
「うーさうーさ、しろまんじゅー! 思いきり、もふもふしてみたいよね」
うんうんと思いっきり首を振って、ウサミカヤ(ka0490)も同意を示す。
そのためのというわけではないが、ウサミカヤはメリケンサックを装備しているのだ。
「……元がウサギであろうとも、雑魔となった以上、退治せねばなるまい」
アバルト・ジンツァー(ka0895)が、フワフワし続ける場を引き締めるように告げる。
「ウサギ狩りか、猟の教本は何度か見たことがあるが」
アバルトに乗っかり、リカルド=イージス=バルデラマ(ka0356)もスッと表情を正す。
「まぁ食えるかどうかは別として、食いたい奴がいるなら素早く倒そうか」
冗談なのか本気なのか、やや反応に困るものいいで遠くを見る。
向こう側、エニグマたちの様子をうかがっているようだった。
「自分も全力を尽くすとしよう」
アバルトはそう告げると、近接組から距離を離す。
射程圏ぎりぎりから、引き絞った弓を放つ。
風を切った弓が、ウサギたちの中心へ飛来する。
「では、始めようか」
着弾と同時に、ウサギたちが耳を立てた。それを合図に戦いが始まった。
●
「ミーミーズーク―さんにーのーりたーいなー」
間延びした声でエニグマが歌うので、旭は全力で背負い走っていた。
覚醒状態の旭は、ミミズクのような姿に翼の幻影を持つのだ。
「とべないのー?」
「無茶いうなよ」
幻影の翼のため、飛ぶことは出来ない。
じゃあ、いいやと途中でエニグマは降り立つ。
ウサギの姿をしたエニグマに、ウサギは興味を示さない。
「……まずいな」
数匹のウサギが旭の方へ顔を向けたのに気づき、とっさに視線を落とす。
そうこうしている間に、エニグマはかなり近い距離まで接近していた。
反対側からウサギの群れを目指す、ウサミカヤとエティも気づかれる気配はない。
エティはまるごとウサギを着ているし、覚醒状態のウサミカヤは横髪がうさみみのように立つのだ。
おまけに瞳は赤くなり、白いしっぽが生える。
ウサギも認めるウサギなのだ。ウサの名前はダテじゃない。
「くれぐれも気をつけて下さい」
マナがそんなウサミカヤに、プロテクションをかける。
全身を覆うだけあって、まるごとウサギの防御はそこそこあるらしい。
「ハイ、ウサギさんだよー。ナーカーマー!」
テンション高くウサミカヤは、ウサギの下へ近づいていく。
気づかれるか気づかれないかのギリギリのところで、
「よーっしやるぞー!」と気合を入れ、戦闘意欲を向上させていた。
ウサミカヤよりは距離を取り、エティは魔導銃をそっと取り出す。
まだウサギたちは、エティのこともウサミカヤのことも敵と認識できていない。
エティより後ろでは、リカルドがアサルトライフルを構える。
さらに距離をとってアバルトが二発目を放つ用意を整えていた。
「それじゃあ、いっくよー」
先手必勝、エティは引き金を引き、一条の光を放つ。
ウサギの反応は遅れたものの、高い跳躍力で光をかわしきる。
「遅れを取るわけにはいかないんで、こっちもな」
リカルドがタイミングを合わせ、弾丸を撒き散らす。
耳元で銃声が響き渡る。
「さすがの軍用小銃、連射力もさることながら、安定性もしっかりしているな。どんどん狙っていこうか」
最初の一撃は、残念ながら感付かれたらしく、跳躍された。
しかし、場をかき乱せば隙が生じるというものだ。
「ウサギさーん! あたしウサギだよー!」
できるだけフレンドリーな声を上げながら、ウサミカヤが拳を振りかざす。
叩き込む拳は友情の証……を軽く通りすぎてウサギの土手っ腹を抉る。
「突然の裏切り……だよな」
最初から敵と思われている旭は、ウサミカヤの攻撃にそんな感想を漏らす。
「っと、そんなこといってる場合じゃないな」
動物霊の力を借り、素早くウサギたちの突撃をかわす。
鋭い後ろ蹴りから繰り出される体当たりも、当たらなければどうということはない。
「っせい!」と一閃、幻影の翼も派手にはためかせて斬りつける。
ウサギが旭を見上げたが、逆に威圧をするように睨み返す。
「その視線、テメーだけが有利だと思うなよ! ウサ公っ!」
だが、ここは相打ち。互いに何も起こりはしない。二体目の体当たりも華麗にかわす。
「ふぎゃ」っと裏切りに怒ったウサギの復讐をウサミカヤは受けていた。
振り上げるような、ウサギの頭突きを喰らったのだ。
痛みをこらえるウサミカヤへ、畳み掛けるような後ろ蹴り。
「同じ大きさだし、仲間なのにー」
今更ではあるが、言ってみる。もちろん、効果はない。
「状況、判断してくださいー」
ひやひやしながら、マナがウサミカヤの生命力を回復する。
そして、ウサミカヤが対峙するウサギに手をかざす。
「魂を汚す悪しき存在よ、光の前に朽ちなさい」
光弾が弾け、ウサギの動きを一瞬止める。
「チャンス!」とばかりにウサミカヤは素早く、背中に飛び乗る。
もふもふが体全身に、感じられる。
ウサミカヤより前に、そのもふもふを堪能していたものがいた。
エニグマである。
ウサギの前に辿り着いたエニグマは迷うことなく、ウサギのお腹にまみれたのだ。
だが、リカルドの弾丸が撒かれた当たりで弾き落とされた。
「らんぼーだな、おまえ」
ぷんすかと怒りを露わにしながら、エニグマはウサギの体当たりを避ける。
洗練された動きで、ウサギの背中を引き裂く。
「オレサマはもふもふが好きです。そのなかでもくまさんがもーっとすきです!」
気合一閃、どぎつい一撃がウサギの腹を襲う。
よろめきながらも反撃に出るが、エニグマはすらりと避ける。
脚に集中させたマテリアルが、エニグマを躍動させるのだ。
「おぉ、あれはおもしろそうだ」
避けながら、視界の端にウサミカヤの姿が見えた。よじのぼり背中のもふもふを堪能している。
素早さなら負けじと、エニグマもささっと上り詰めてみた。
「眺めもいいのだ」
視界が高くなり、意気揚々と蜂蜜を食す。
が、ぐらつきの中でエニグマはコテンと転げた。蜂蜜も少しこぼれてしまう。
「……ハッ……蜂蜜食ってる場合じゃねえ!」
ゆっくりと立ち上がると、もう一度とウサギの背中に足をかけるのだった。
「あまり、危ないことはしてほしくないのですが……」
ウサミカヤに防御力を上げる光をまとわせながら、マナがつぶやく。
何をやっているんだか、とアバルトも苦笑する。
下手に攻撃したら、突発的な事故も発生しかねない。
「なら、先に倒すべきは……と」
リカルドが対峙していたウサギが跳躍していた。
その足元めがけて、弓を射掛ける。
案の定バランスを崩しながら、突撃してきたウサギへリカルドが剣を振るう。
武器を持ち替えて、素早く懐に潜り込んでの一撃。
「ほう、とんでもない威力だな。試作品という割には頭分で回ってはいるがな」
振動する刀を構え直し、再度斬りかかる。
その時、ウサギがリカルドの瞳を見つめた。目と目があい、視界がゆがむ。
「ぐっ……」
ぐにゃりとした感覚が手先に伝わるが、後ろ足を力強く踏切り、刃を届かせる。
「ちょいと五月蠅いのを除けば、まあ、いけるか」
強がるようにウサギへ吐き捨てると、距離を取る。
対象がタブって見えるが、脚をやられたウサギは追いつけないでいる。
射程を保ちつつ、歪みが収まるのを待つ。
同じくエティも、歪みに襲われていた。
「気をつけていたのに」とつぶやくが、時すでに遅し。
相手の動きを注視しいている以上、発生し得ることだった。
接近してきたところへ、機導剣を打ち込もうとして、やられたのだ。
攻撃自体は、狙いがずれたものの、腹を裂くことは出来た。
「動きはだいたい、わかってきてる……大丈夫だもん」
意気込みながら、魔導銃をぐっと握る。
次第にブレが小さくなってきた、これならいける、と思ったところでウサギが弾丸に襲われる。
避けた先を狙って、機導砲を抜き放てば光を浴び、ウサギは地面に落ちる。
「あ、消えていく……」
動かなくなったウサギが大気に溶けこむように消えていく。
「ああ、倒したら消えるみたいだな」とリカルドが答える。
自分が対峙していたウサギは、回復と同時に葬ったようだった。
「まあいい。さっさと終わらせて、兎狩りを再開するか。コッチとしては、兎カレーのために来ているんでね」
軽口を叩きながら、次の相手へ向かっていく。
そのとき、ウサミカヤとエニグマは地面にぽてんと転がっていた。
殴りきったウサギが消えたのだ。
「残るは……」と告げるアバルトの視線の先に、旭がいた。
二匹のウサギがかわるがわる突撃してくるのを、闘牛士のようにかわしては剣を突き立てる。
「モフモフっぷりでは、負けないぜ!」
翼がまるで闘牛士のマントのようにはためく。
飛び込んできたウサギにアバルトの矢が当たり、体勢が崩れる。まずは一体、旭がとどめを刺す。
この段階になれば、ウサミカヤやエニグマ、エティたちも囲うように迫っていた。
一気呵成、ウサギは狩り尽くされるのであった。
●
「やっぱりくまさんがいい」
ふすーと息を吐きながら、クマモードに戻ったエニグマがいう。
目の前には大鍋とウサギ肉が並ぶ。
「俺も取ってきた新鮮なウサギ肉だ」
戦闘が終わってすぐ、リカルドは兎狩りに出かけていた。
見事な手さばきは、コックの経験ゆえであろう。
リカルドの提案でカレー風味の鍋も用意されていた。
「よかった……ウサギ鍋ってあたしのことじゃなくて」
「ヴォイド以上に食べらないよ、それ」
旭がそっとツッコミを入れる。
「ところで、アバルトちゃんはうさみみ付けてなかったねー」
無邪気な様子でエティに聞かれ、アバルトは苦笑いを浮かべる。
「……自分がつけた姿を想像してみろ。紛れも無く視覚兵器だ」
戦う前から味方に要らぬダメージを与えたくなかったという。
しかし、それを聞いてエニグマがそっとうさみみを取り出す。
「戦いが終わった今ならつけられるで」
「……戦いが終わったのならつける必要性もないだろう」
アバルトがそっとうさみみを返す。
やりとりをしている間に、ウサギ肉が煮え立ち、いい匂いが立ち込めてくる。
「……八つ当たりみたいな気がしてかわいそう……」
ふと、エティが感想を漏らす。
「ヴォイドでなくて、安心はしましたけれどね」
マナも気持ちがわからないでないのか、同調する。
雑魔のウサギを殲滅した後も祈りを捧げたマナである。
そろそろ食べられる頃合いだといわれ、ウサギたちへ祈りを捧げた。
「せめて綺麗に食べ尽くして供養代わりにしよう……かな」
「そうしましょう」
エティの言葉にも頷き、肉を取る。
野性味のある肉の味が、口の中に広がる。
「ウサギ……頂きます!」
ウサミカヤもかぶりつき、その味を知る。
ぱさぱさしやすい肉質は、鍋やカレーということでしっとりした食感になっていた。
堪能しながら、ウサギたちに思いを馳せる。
そして、農場の作付は無事に終わったと、後日連絡が入るのであった。
広大な農地を見据え、佇む数名のハンターたち。
視線の先には、巨大なウサギがのっそのっそとのさばっていた。
「あ、あのヤロー……野菜農家の人に迷惑かけやがて」
怒りを露わに、岩井崎 旭(ka0234)が睨みをきかせる。
人参を食って育ったウサギのくせに、作付の邪魔をするのが許せないのだ。
その隣では、まるごとウサギに身を包むエニグマ(ka3688)がわきゃわきゃしていた。
「キュートでプリティで紳士なナイスガイの変装名人たぁオレサマのことよ」
などとふかしながら、両手をぱたぱたと動かす。
「消滅する可能性が高いって話だけどさー」
エニグマはアキラとは違う感情を視線に込めて、ウサギを見る。
「消滅ってのは口の中でとろけるような食感ってことかもしれねーじゃん!」
重大な事実に気づいたかのように、大仰そうにエニグマは叫ぶ。
エニグマの視線の半分は、食欲で出来ています。
「……」
苦い顔でエニグマを旭は見下ろす。
その視線を知ってか知らずか、エニグマはあれやこれやと妄想を膨らましていた。
旭とエニグマが並ぶ場所の反対側に、なだらかな丘陵があった。
「え……雑魔を食す……ですか?」
中腹に集まるハンターの中で、マナ・ブライト(ka4268)が狼狽の声を上げていた。
エニグマが食べたいといっていたと伝え聞いたのだ。
「穢れを口にする事になってしまい、身体を壊してしまうとおもうのですが……」
難しい顔をしながら、マナはぽつりぽつりと思考を整理する。
「成程、敢えて穢れを体内に入れることでその抗体を作ろうという訳ですね」
ポンと手をうち、「わかりました」と一人完結する。
「万が一の時の治療は任せて下さい!」
勝手に意気込むマナの隣では、エティ・メルヴィル(ka3732)がじっとウサギを眺めていた。
その大きさに息を呑み、白くふさふさした毛並みに思いを馳せる。
「アレをもふもふしたら気持ちいいだろうな~」
言葉尻がすでにふわふわしていた。
まるごとウサギを着ているから、エティの格好もふわふわしていた。
「うーさうーさ、しろまんじゅー! 思いきり、もふもふしてみたいよね」
うんうんと思いっきり首を振って、ウサミカヤ(ka0490)も同意を示す。
そのためのというわけではないが、ウサミカヤはメリケンサックを装備しているのだ。
「……元がウサギであろうとも、雑魔となった以上、退治せねばなるまい」
アバルト・ジンツァー(ka0895)が、フワフワし続ける場を引き締めるように告げる。
「ウサギ狩りか、猟の教本は何度か見たことがあるが」
アバルトに乗っかり、リカルド=イージス=バルデラマ(ka0356)もスッと表情を正す。
「まぁ食えるかどうかは別として、食いたい奴がいるなら素早く倒そうか」
冗談なのか本気なのか、やや反応に困るものいいで遠くを見る。
向こう側、エニグマたちの様子をうかがっているようだった。
「自分も全力を尽くすとしよう」
アバルトはそう告げると、近接組から距離を離す。
射程圏ぎりぎりから、引き絞った弓を放つ。
風を切った弓が、ウサギたちの中心へ飛来する。
「では、始めようか」
着弾と同時に、ウサギたちが耳を立てた。それを合図に戦いが始まった。
●
「ミーミーズーク―さんにーのーりたーいなー」
間延びした声でエニグマが歌うので、旭は全力で背負い走っていた。
覚醒状態の旭は、ミミズクのような姿に翼の幻影を持つのだ。
「とべないのー?」
「無茶いうなよ」
幻影の翼のため、飛ぶことは出来ない。
じゃあ、いいやと途中でエニグマは降り立つ。
ウサギの姿をしたエニグマに、ウサギは興味を示さない。
「……まずいな」
数匹のウサギが旭の方へ顔を向けたのに気づき、とっさに視線を落とす。
そうこうしている間に、エニグマはかなり近い距離まで接近していた。
反対側からウサギの群れを目指す、ウサミカヤとエティも気づかれる気配はない。
エティはまるごとウサギを着ているし、覚醒状態のウサミカヤは横髪がうさみみのように立つのだ。
おまけに瞳は赤くなり、白いしっぽが生える。
ウサギも認めるウサギなのだ。ウサの名前はダテじゃない。
「くれぐれも気をつけて下さい」
マナがそんなウサミカヤに、プロテクションをかける。
全身を覆うだけあって、まるごとウサギの防御はそこそこあるらしい。
「ハイ、ウサギさんだよー。ナーカーマー!」
テンション高くウサミカヤは、ウサギの下へ近づいていく。
気づかれるか気づかれないかのギリギリのところで、
「よーっしやるぞー!」と気合を入れ、戦闘意欲を向上させていた。
ウサミカヤよりは距離を取り、エティは魔導銃をそっと取り出す。
まだウサギたちは、エティのこともウサミカヤのことも敵と認識できていない。
エティより後ろでは、リカルドがアサルトライフルを構える。
さらに距離をとってアバルトが二発目を放つ用意を整えていた。
「それじゃあ、いっくよー」
先手必勝、エティは引き金を引き、一条の光を放つ。
ウサギの反応は遅れたものの、高い跳躍力で光をかわしきる。
「遅れを取るわけにはいかないんで、こっちもな」
リカルドがタイミングを合わせ、弾丸を撒き散らす。
耳元で銃声が響き渡る。
「さすがの軍用小銃、連射力もさることながら、安定性もしっかりしているな。どんどん狙っていこうか」
最初の一撃は、残念ながら感付かれたらしく、跳躍された。
しかし、場をかき乱せば隙が生じるというものだ。
「ウサギさーん! あたしウサギだよー!」
できるだけフレンドリーな声を上げながら、ウサミカヤが拳を振りかざす。
叩き込む拳は友情の証……を軽く通りすぎてウサギの土手っ腹を抉る。
「突然の裏切り……だよな」
最初から敵と思われている旭は、ウサミカヤの攻撃にそんな感想を漏らす。
「っと、そんなこといってる場合じゃないな」
動物霊の力を借り、素早くウサギたちの突撃をかわす。
鋭い後ろ蹴りから繰り出される体当たりも、当たらなければどうということはない。
「っせい!」と一閃、幻影の翼も派手にはためかせて斬りつける。
ウサギが旭を見上げたが、逆に威圧をするように睨み返す。
「その視線、テメーだけが有利だと思うなよ! ウサ公っ!」
だが、ここは相打ち。互いに何も起こりはしない。二体目の体当たりも華麗にかわす。
「ふぎゃ」っと裏切りに怒ったウサギの復讐をウサミカヤは受けていた。
振り上げるような、ウサギの頭突きを喰らったのだ。
痛みをこらえるウサミカヤへ、畳み掛けるような後ろ蹴り。
「同じ大きさだし、仲間なのにー」
今更ではあるが、言ってみる。もちろん、効果はない。
「状況、判断してくださいー」
ひやひやしながら、マナがウサミカヤの生命力を回復する。
そして、ウサミカヤが対峙するウサギに手をかざす。
「魂を汚す悪しき存在よ、光の前に朽ちなさい」
光弾が弾け、ウサギの動きを一瞬止める。
「チャンス!」とばかりにウサミカヤは素早く、背中に飛び乗る。
もふもふが体全身に、感じられる。
ウサミカヤより前に、そのもふもふを堪能していたものがいた。
エニグマである。
ウサギの前に辿り着いたエニグマは迷うことなく、ウサギのお腹にまみれたのだ。
だが、リカルドの弾丸が撒かれた当たりで弾き落とされた。
「らんぼーだな、おまえ」
ぷんすかと怒りを露わにしながら、エニグマはウサギの体当たりを避ける。
洗練された動きで、ウサギの背中を引き裂く。
「オレサマはもふもふが好きです。そのなかでもくまさんがもーっとすきです!」
気合一閃、どぎつい一撃がウサギの腹を襲う。
よろめきながらも反撃に出るが、エニグマはすらりと避ける。
脚に集中させたマテリアルが、エニグマを躍動させるのだ。
「おぉ、あれはおもしろそうだ」
避けながら、視界の端にウサミカヤの姿が見えた。よじのぼり背中のもふもふを堪能している。
素早さなら負けじと、エニグマもささっと上り詰めてみた。
「眺めもいいのだ」
視界が高くなり、意気揚々と蜂蜜を食す。
が、ぐらつきの中でエニグマはコテンと転げた。蜂蜜も少しこぼれてしまう。
「……ハッ……蜂蜜食ってる場合じゃねえ!」
ゆっくりと立ち上がると、もう一度とウサギの背中に足をかけるのだった。
「あまり、危ないことはしてほしくないのですが……」
ウサミカヤに防御力を上げる光をまとわせながら、マナがつぶやく。
何をやっているんだか、とアバルトも苦笑する。
下手に攻撃したら、突発的な事故も発生しかねない。
「なら、先に倒すべきは……と」
リカルドが対峙していたウサギが跳躍していた。
その足元めがけて、弓を射掛ける。
案の定バランスを崩しながら、突撃してきたウサギへリカルドが剣を振るう。
武器を持ち替えて、素早く懐に潜り込んでの一撃。
「ほう、とんでもない威力だな。試作品という割には頭分で回ってはいるがな」
振動する刀を構え直し、再度斬りかかる。
その時、ウサギがリカルドの瞳を見つめた。目と目があい、視界がゆがむ。
「ぐっ……」
ぐにゃりとした感覚が手先に伝わるが、後ろ足を力強く踏切り、刃を届かせる。
「ちょいと五月蠅いのを除けば、まあ、いけるか」
強がるようにウサギへ吐き捨てると、距離を取る。
対象がタブって見えるが、脚をやられたウサギは追いつけないでいる。
射程を保ちつつ、歪みが収まるのを待つ。
同じくエティも、歪みに襲われていた。
「気をつけていたのに」とつぶやくが、時すでに遅し。
相手の動きを注視しいている以上、発生し得ることだった。
接近してきたところへ、機導剣を打ち込もうとして、やられたのだ。
攻撃自体は、狙いがずれたものの、腹を裂くことは出来た。
「動きはだいたい、わかってきてる……大丈夫だもん」
意気込みながら、魔導銃をぐっと握る。
次第にブレが小さくなってきた、これならいける、と思ったところでウサギが弾丸に襲われる。
避けた先を狙って、機導砲を抜き放てば光を浴び、ウサギは地面に落ちる。
「あ、消えていく……」
動かなくなったウサギが大気に溶けこむように消えていく。
「ああ、倒したら消えるみたいだな」とリカルドが答える。
自分が対峙していたウサギは、回復と同時に葬ったようだった。
「まあいい。さっさと終わらせて、兎狩りを再開するか。コッチとしては、兎カレーのために来ているんでね」
軽口を叩きながら、次の相手へ向かっていく。
そのとき、ウサミカヤとエニグマは地面にぽてんと転がっていた。
殴りきったウサギが消えたのだ。
「残るは……」と告げるアバルトの視線の先に、旭がいた。
二匹のウサギがかわるがわる突撃してくるのを、闘牛士のようにかわしては剣を突き立てる。
「モフモフっぷりでは、負けないぜ!」
翼がまるで闘牛士のマントのようにはためく。
飛び込んできたウサギにアバルトの矢が当たり、体勢が崩れる。まずは一体、旭がとどめを刺す。
この段階になれば、ウサミカヤやエニグマ、エティたちも囲うように迫っていた。
一気呵成、ウサギは狩り尽くされるのであった。
●
「やっぱりくまさんがいい」
ふすーと息を吐きながら、クマモードに戻ったエニグマがいう。
目の前には大鍋とウサギ肉が並ぶ。
「俺も取ってきた新鮮なウサギ肉だ」
戦闘が終わってすぐ、リカルドは兎狩りに出かけていた。
見事な手さばきは、コックの経験ゆえであろう。
リカルドの提案でカレー風味の鍋も用意されていた。
「よかった……ウサギ鍋ってあたしのことじゃなくて」
「ヴォイド以上に食べらないよ、それ」
旭がそっとツッコミを入れる。
「ところで、アバルトちゃんはうさみみ付けてなかったねー」
無邪気な様子でエティに聞かれ、アバルトは苦笑いを浮かべる。
「……自分がつけた姿を想像してみろ。紛れも無く視覚兵器だ」
戦う前から味方に要らぬダメージを与えたくなかったという。
しかし、それを聞いてエニグマがそっとうさみみを取り出す。
「戦いが終わった今ならつけられるで」
「……戦いが終わったのならつける必要性もないだろう」
アバルトがそっとうさみみを返す。
やりとりをしている間に、ウサギ肉が煮え立ち、いい匂いが立ち込めてくる。
「……八つ当たりみたいな気がしてかわいそう……」
ふと、エティが感想を漏らす。
「ヴォイドでなくて、安心はしましたけれどね」
マナも気持ちがわからないでないのか、同調する。
雑魔のウサギを殲滅した後も祈りを捧げたマナである。
そろそろ食べられる頃合いだといわれ、ウサギたちへ祈りを捧げた。
「せめて綺麗に食べ尽くして供養代わりにしよう……かな」
「そうしましょう」
エティの言葉にも頷き、肉を取る。
野性味のある肉の味が、口の中に広がる。
「ウサギ……頂きます!」
ウサミカヤもかぶりつき、その味を知る。
ぱさぱさしやすい肉質は、鍋やカレーということでしっとりした食感になっていた。
堪能しながら、ウサギたちに思いを馳せる。
そして、農場の作付は無事に終わったと、後日連絡が入るのであった。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/02/21 17:39:38 |
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\ウサギ鍋ときいて/ エニグマ(ka3688) ドワーフ|6才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/02/23 21:03:56 |