ゲスト
(ka0000)
【不動】対大型歪虚兵器開発計画
マスター:蒼かなた

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/02/27 22:00
- 完成日
- 2015/03/04 06:24
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●対大型歪虚兵器
冒険都市リゼリオにあるサルヴァトーレ・ロッソ技術開発部。
そこでは様々な研究や技術開発が行われており、多くの発明品を輩出している組織である。
種類は多岐に及んでいて、ライトや眼鏡などの日用品からカップラーメンやポテチなどの食料品。勿論剣や銃などの武具の開発も行われていた。
そしてその兵器を開発している部署の一つのチームで、とあるコンセプトを元に開発を進めているメンバーがいた。
そのコンセプトというのが「非覚醒者でも運用可能な対大型歪虚兵器の開発」である。
これまでも対歪虚を銘打って剣や銃を開発してきたが、最近になって一つの問題が発生した。
辺境にあるCAM稼動実験場、今は「ホープ」と呼ばれるその地に侵攻してきた怠惰眷属の歪虚達だ。
怠惰眷属の歪虚の特徴はその名の通り面倒臭がりであることだが、問題となっているのはその大きさだ。
サイクロプスやトロルと呼ばれるような4メートルを超えるような巨人達を相手にするには人間は非力すぎた。
覚醒者であるハンターであればその体格差を覆すポテンシャルを有しているが、逆に非覚醒者では接近することすらままならない。
非覚醒者が巨人の拳をまともに受ければ文字通り一撃必殺。とてもじゃないがまともに対峙出来る相手ではないのだ。
「そーゆー訳なんで。諸君、非力な我等でもあの糞ったれな巨人共をぶち殺せる兵器を作るぞ」
このコンセプトのチームリーダーとなった男が、数名の仲間の前でホワイトボードを背に腕を組む。
「はい。ファッキンジャイアント共は足元がお留守っぽいんで落とし穴とかどうっすか?」
「積極的な意見感謝する。だが却下だ。自分の墓を掘ってる間に大地の染みになるぞ」
リーダーはホワイトボードに「落とし穴」と書いた後にすぐ大きくバツ印を書いた。
そこから「ひざかっくん」「上空からの爆撃」「もうCAMだけでよくね?」などふざけているのか本気なのかよく分からない意見が数多くでた。
その何れも却下され、リーダーの男は頭を掻きながら仲間を睨みつける。
「お前等、おふざけはその辺にしてそろそろマシな意見を出せ。減給にするぞ」
「まあ、ぶっちゃけると歩兵が大きくて硬い奴を相手にする為の武器って既に発明されてますよね」
珈琲の入ったカップを傾けながら1人のメンバーがそう口にする。
「対戦車兵器ですよ。ロケットランチャーとか、地雷とか、対物ライフルとか」
「なるほど。高威力である程度離れた距離から攻撃できる。非覚醒者での運用もリアルブルーでは実績もあるしな」
リーダーはホワイトボードに対戦車兵器と書いて丸印を加える。
それからメンバーに振り返り手をパンパンと叩く。
「それじゃあまずはお試しも兼ねて対戦車兵器を試作するぞ。まずロッソに現品があるか確認。あとデータベースから設計図を掘り出せ」
ずっとだらだらとしていたメンバーが、相変わらず気の抜けた返事をしながらのろのろと仕事を始める。
「これが終わったら休暇やるから気張れ、諸君」
「それ、前にも聞いて裏切られたばかりなんっすけど」
●実戦投入
ホープで設営されているテントの一つに依頼という形で何名かのハンターが召集された。
今回集められた依頼の名目は「非覚醒者の運用を目的とした対大型歪虚兵器の実戦試験」と少し長い名前である。
「という訳で、集まってくれた諸君にはこの3つの兵器を使って欲しいわけだ」
そう口にしているのはハンターオフィスの職員ではなく、白衣を着た学者風の男。依頼主である技研廠のとある部署のリーダーだ。
「リアルブルー出身の奴なら知ってるかも知れないが、これは対戦車兵器とか言われてたものだ」
1つ目は2つの円錐を合わせたような弾頭に、長さ1メートルほどある筒状の発射器のセット。
2つ目は30センチほどの円盤のような鉄の塊。
3つ目は銃。だが、普段見るものと違いその全長は2メートルほど。かなり無骨でその銃身にはバイポッド(二脚)が取り付けられている。
「使い方は配った資料の通りだ。まあ、ハンターの諸君は頭にインストールされてるはずだし大丈夫だよ、多分」
ふわあっと欠伸をした男は口元を押さえながら続ける。
「生憎と数は用意できなかったんだけどな。だが今回で成果が出たら今後量産される、かもしれない」
今回用意できたのは試作品らしく数も質も中途半端だ。だが、人間相手に使ったらまず原形すら残らない程度の威力はあるらしい。
男はそう説明を終えると、今度は手元にあった別の資料に視線をやる。
「ああ、それと怠惰眷属の歪虚達が南下してきてるらしい。防衛線を張るらしいから、そこでこれを試してきてくれ」
男は気だるげな態度をしながらも、にっこりと笑顔を見せた。
冒険都市リゼリオにあるサルヴァトーレ・ロッソ技術開発部。
そこでは様々な研究や技術開発が行われており、多くの発明品を輩出している組織である。
種類は多岐に及んでいて、ライトや眼鏡などの日用品からカップラーメンやポテチなどの食料品。勿論剣や銃などの武具の開発も行われていた。
そしてその兵器を開発している部署の一つのチームで、とあるコンセプトを元に開発を進めているメンバーがいた。
そのコンセプトというのが「非覚醒者でも運用可能な対大型歪虚兵器の開発」である。
これまでも対歪虚を銘打って剣や銃を開発してきたが、最近になって一つの問題が発生した。
辺境にあるCAM稼動実験場、今は「ホープ」と呼ばれるその地に侵攻してきた怠惰眷属の歪虚達だ。
怠惰眷属の歪虚の特徴はその名の通り面倒臭がりであることだが、問題となっているのはその大きさだ。
サイクロプスやトロルと呼ばれるような4メートルを超えるような巨人達を相手にするには人間は非力すぎた。
覚醒者であるハンターであればその体格差を覆すポテンシャルを有しているが、逆に非覚醒者では接近することすらままならない。
非覚醒者が巨人の拳をまともに受ければ文字通り一撃必殺。とてもじゃないがまともに対峙出来る相手ではないのだ。
「そーゆー訳なんで。諸君、非力な我等でもあの糞ったれな巨人共をぶち殺せる兵器を作るぞ」
このコンセプトのチームリーダーとなった男が、数名の仲間の前でホワイトボードを背に腕を組む。
「はい。ファッキンジャイアント共は足元がお留守っぽいんで落とし穴とかどうっすか?」
「積極的な意見感謝する。だが却下だ。自分の墓を掘ってる間に大地の染みになるぞ」
リーダーはホワイトボードに「落とし穴」と書いた後にすぐ大きくバツ印を書いた。
そこから「ひざかっくん」「上空からの爆撃」「もうCAMだけでよくね?」などふざけているのか本気なのかよく分からない意見が数多くでた。
その何れも却下され、リーダーの男は頭を掻きながら仲間を睨みつける。
「お前等、おふざけはその辺にしてそろそろマシな意見を出せ。減給にするぞ」
「まあ、ぶっちゃけると歩兵が大きくて硬い奴を相手にする為の武器って既に発明されてますよね」
珈琲の入ったカップを傾けながら1人のメンバーがそう口にする。
「対戦車兵器ですよ。ロケットランチャーとか、地雷とか、対物ライフルとか」
「なるほど。高威力である程度離れた距離から攻撃できる。非覚醒者での運用もリアルブルーでは実績もあるしな」
リーダーはホワイトボードに対戦車兵器と書いて丸印を加える。
それからメンバーに振り返り手をパンパンと叩く。
「それじゃあまずはお試しも兼ねて対戦車兵器を試作するぞ。まずロッソに現品があるか確認。あとデータベースから設計図を掘り出せ」
ずっとだらだらとしていたメンバーが、相変わらず気の抜けた返事をしながらのろのろと仕事を始める。
「これが終わったら休暇やるから気張れ、諸君」
「それ、前にも聞いて裏切られたばかりなんっすけど」
●実戦投入
ホープで設営されているテントの一つに依頼という形で何名かのハンターが召集された。
今回集められた依頼の名目は「非覚醒者の運用を目的とした対大型歪虚兵器の実戦試験」と少し長い名前である。
「という訳で、集まってくれた諸君にはこの3つの兵器を使って欲しいわけだ」
そう口にしているのはハンターオフィスの職員ではなく、白衣を着た学者風の男。依頼主である技研廠のとある部署のリーダーだ。
「リアルブルー出身の奴なら知ってるかも知れないが、これは対戦車兵器とか言われてたものだ」
1つ目は2つの円錐を合わせたような弾頭に、長さ1メートルほどある筒状の発射器のセット。
2つ目は30センチほどの円盤のような鉄の塊。
3つ目は銃。だが、普段見るものと違いその全長は2メートルほど。かなり無骨でその銃身にはバイポッド(二脚)が取り付けられている。
「使い方は配った資料の通りだ。まあ、ハンターの諸君は頭にインストールされてるはずだし大丈夫だよ、多分」
ふわあっと欠伸をした男は口元を押さえながら続ける。
「生憎と数は用意できなかったんだけどな。だが今回で成果が出たら今後量産される、かもしれない」
今回用意できたのは試作品らしく数も質も中途半端だ。だが、人間相手に使ったらまず原形すら残らない程度の威力はあるらしい。
男はそう説明を終えると、今度は手元にあった別の資料に視線をやる。
「ああ、それと怠惰眷属の歪虚達が南下してきてるらしい。防衛線を張るらしいから、そこでこれを試してきてくれ」
男は気だるげな態度をしながらも、にっこりと笑顔を見せた。
リプレイ本文
●下準備
優雅に流れるナナミ川。そこに引かれた大規模な防衛線。
その中央の一つの要所にてハンター達が展開する。
「さーて、これで準備万端っす」
川辺に地雷を設置してきた神楽(ka2032)が手についた土をパンパンと払う。
その隣では同じく地雷設置を手伝っていたフェルム・ニンバス(ka2974)が額を拭う。
「ブラフも含めてこんなもんかな。効果があるといいけどよ」
川辺からその周辺にかけて十数個出来ている小さな土の山。本当に埋めてある地雷とは別に、怠惰の歪虚達を騙す為に作った偽装だ。効果の程は分からないが、何もしないよりはマシだろう。
「こちらの地雷も埋め終わったわ」
「これで準備ばっちりだねー☆」
ジーウ=ルンディン(ka3694)とエリス・ブーリャ(ka3419)も地雷を設置し終えて集まる。
「5つだけとは物足りないが、あるだけマシと思うとしよう」
ルナリリル・フェルフューズ(ka4108)がそう心情を吐露する。
試作兵器ということで数が用意できていないことに不満はあるが、威力だけは保障されているのだ。
それに今回の運用で実績を作れば今後改めて量産されて配備される可能性もある。未来への投資と思えば、今回の依頼が重要であることが理解出来るだろう。
「で、敵のほうはまだかい?」
ロケットランチャーの説明資料を片手にジルボ(ka1732)が皆の顔を見やる。
その彼の肩にはパルムが一匹乗っており、世話しなくきょろきょろと周囲を見渡していた。
「拠点の遠見の人が言うにはそろそろらしいけど……」
そう言ってフィドルフ(ka2525)はナナミ川の対岸へと視線を向ける。
その時、試作型ライフルのスコープを覗いていたディディ=ロハドトゥ(ka3695)が銃を構えたままぽつりと呟く。
「来たぞ」
ディディの言葉通り、川の対岸のさらにその先の荒野から僅かに土煙が上がっているのが見えた。
それを確認したハンター達は各々の武器を手にそれぞれの配置へと着く。
――十数分後、激闘が始まった。
●渡河防衛線
一つの轟音が戦場の火蓋を切った。
爆弾でも爆発させたような空気の衝撃が周囲へ拡散し、その間近にいたディディの頬を痺れさせる。
試作ライフルはバイポッドで地面に固定し、伏せ射ちを行ってなおその反動がストックを当てている肩へと伝わる。
それだけの負担を射手に強いた弾丸は周囲の空気を引き裂きながら飛翔し、渡河を始めようとしていた一匹のトロルの腕を捉えた。
「うわっ、えぐいッスね」
川辺の近くで待機していた神楽の視界の先で、腕が半ばから弾けとんだトロルが膝をついて悶えている。
「むぅ、ちょっとずれた」
「ディ、大丈夫?」
「大丈夫。次はちゃんと当てる」
ジーウに肩を叩かれ、少し耳栓を外したディディはその言葉に頷いて見せ、またスコープを覗き込む。
その間に対岸に押し寄せた怠惰の歪虚達は次々と川へと飛び込んでいく。その数は数十、いや百に到達するかという数だ。それによって川は歪虚に埋め尽くされてしまう。
「そんじゃ、俺も参加するか」
その光景を眺めていたジルボは伏せ撃ちの体勢になると手持ちのバッグの上にライフルを固定し、川の中で頭だけを出している歪虚へ向けて引き金を引く。
銃声が響くたびに黒い液体が川の色を染め、力尽きた巨体は川中に沈んでいく。
「それじゃあそろそろオレも加勢しようかな」
「さて、こっちだ。来たまえデカブツ」
「ノロマなお前等が上陸する前にマッハで蜂の巣にしてやるっす~!」
怠惰の歪虚達が川の半ばに差し掛かったところで更に攻撃の手が増える。
川を渡っている所為で下手に身動きの取れない歪虚達は蜂の巣になり、次々に川の流れに負け流されていく。
だが怠惰の歪虚達は数に物を言わせじりじりとこちら側の岸へと距離をつめてきた。
「そろそろこっちに着そうだな。皆、準備はいいかな?」
フィドルフは敵が川の半ばを過ぎたところで皆に目配せをする。
伏せ射ちをしていたディディとジルボは立ち上がりライフルを担ぎ直す。
「次は私の番ね。ディ、後方からの援護お願いね」
「了解。ジウも気をつけて」
ジーウの言葉を受けてディディは後方へと下がっていく。
「さあ、おいでなすったぞ」
ルナリリルは言葉を紡ぎながら徐々に視線を上へと向けていく。
こちら側の岸に近づき川中の歪虚達が徐々にその姿を現し始めた。
「ちょ、こっちにきたっす!たっけて~!!」
上陸したサイクロプスの一匹がその手にする棍棒を地面に目掛けて振り下ろす。
それだけで地面がへこみ、周囲に土煙と石の破片を飛ばすその威力は桁違いだ。
あわやぺっちゃんこかと思われた神楽は、土煙の中から飛び出して地面を一回転した後すぐ立ち上がって走り出した。
それを見たサイクロプスが追撃をかけようとしたところで、突然その顔面に炎の矢が突き刺さり小さな爆発と共に炎が膨れ上がる。
「はいはい、とっとと逃げてくれる?」
その様子を眺めていたフェルムは更に炎の矢を作り出して、近寄ってくる歪虚の軍勢を牽制する。
「うっひゃあ。これだけ多いと選り取り見取りだよね!」
それに加勢するようにエリスの構えた機械的な白い杖からマテリアル弾が放たれ、巨人の一体の肩を貫く。
その一体は怯んだように後ろに下がるが、変わりに無傷のもう二体が前へと進み出てくる。
じりじりと後退を続けるハンター達。このままだと前線が瓦解してしまうかと思われた時、川辺に上がってきた一体のトロルの足元が爆発した。
その爆発は大型歪虚の巨体を一瞬だが宙に浮かせてひっくり返し。そして密集している所為もあって周りの歪虚達も巻き込まれ吹き飛ばされる。
そこから更に連鎖するように一つ、二つと爆発が起こり怠惰の歪虚達の足並みが乱れる。
「ひゅうっ、見たか? お前も大人しくしてねぇとあーやって焼きキノコになるぞ?」
十分な距離を取っていたのに伝わってくる地雷の熱風と爆音にジルボは肩に乗るパルムに話しかける。
そう口にしながらライフルを肩に掛け、背負っていたロケットランチャーを肩に乗せ怠惰の群集にその照準を向ける。
「よく見とけよ、相棒。歴史が変わる瞬間だぜ」
そう言ってジルボは少しだけ重くなっている引き金を思いっきり引いた。
それと同時に背負っている筒の後方から煙と共に熱風が吐き出され、それとは反対側の前方では先端を尖らせた擲弾が勢いよく射出される。
白煙を残しながらまるで吸い込まれるかのように、ソレは鎧を着ている歪虚の腹部へと突き刺さった。
一瞬の眩しい赤い光、そして爆音と衝撃。鎧を砕き、その内部へ千度を超える炎を吐き出す。
蹂躙する炎はそのまま膨れ上がり、着弾した歪虚の上半身を吹き飛ばした。下半身だけとなった歪虚の体はそのまま地面へと倒れて無へと帰っていく。
「たーまやー。すっごい威力じゃん」
それをすぐ近くで見ていたエリスはその一撃の威力を見て手放しに賞賛する。
地雷、そしてロケットランチャーの爆発を受けて次々と前進してきていた怠惰の軍勢の足並みが見るからに鈍るのが分かった。
そして足を止めて棒立ち同然になった一体のサイクロプスの頭に、大きな風穴が空く。
「これで五体……リロードする」
前線から少し後方にある丘の上でディディがライフルの弾装を交換し、レバーを引いて装填を行う。
もはや砲撃とも言っていい弾丸は確実に怠惰の歪虚達に迫り食い千切っていく。
勿論その狙撃に気づいた歪虚達が何もしないわけが無い。一体のトロルが手にしている手斧を振りかぶる。
「ディに手はださせない」
それを察知したジーウが駆け、そのトロルの足首に思い切り剣を叩きつける。
それは防具に阻まれ、僅かな傷にしかならなかったが武器を叩きつけた衝撃は確かに伝わる。
それにより僅かに狙いの逸れた投げ斧はスコープを覗いているディディの真上を通り過ぎて行き、そしてお返しとばかりに大きな銃声が上がりライフルの銃身から火が吹き出る。
「うっひゃー、派手にやってるっすね~。っと、こっちも油断できないっすね、っと!」
神楽は横薙ぎに振るわれた棍棒を盾で受け、受け止めはせずにそのまま受け流すようにして盾を持つ腕を振るう。
腕がびりびりと痺れるが、それだけだ。そのまま盾を持つ腕に力を入れて正面に掲げる。
「効かないっすよ~。ご自慢の力はその程度っすか~」
神楽はにんまりと笑みを浮かべ歪虚を挑発する。それに乗ったのか、複数体の歪虚が神楽へと視線を向ける。
「いや、流石にその数は無理っす!」
神楽が追いかけっこ。否、追いかけられっこを始めてる傍で肩を並べて並ぶ二人が杖を歪虚達に向ける。
「あの地雷っていうの、大した威力だったね。でも俺の火力も負けてないよ」
「フェルムきゅんかっこいいー♪ エルちゃんも負けてられないな!」
赤と無色のマテリアルが巨人達に突き刺さる。だが巨人達は躊躇うように中々前に出てこない。
今フェルムとエリスがいる場所の周囲には盛られた小さな土の山があちこちにある。先ほど足元で爆発した地雷に警戒しているようで二の足を踏んでいるようだ。
「そうやって棒立ちしてたら良い的だがな」
ジルボのライフルも火線に加わり、押し合い圧し合いとなっている団子状態の集団に的確に矢弾を撃ち込んでいく。
そして我慢できなくなり飛び出してきた数匹を連れて本物の地雷の元へと誘導する。
それからほどなくして、本日何度目かの爆音が戦場で鳴り響いた。
紅蓮の炎が真上に昇り、周囲の怠惰の歪虚達を爆炎で包む。
「最後の一発。いかせて貰おうか」
足を吹き飛ばされ倒れるサイクロプス、そして炎に炙られて怯んでいる回りの巨人達。
フィドルフはその中の一体に狙いを定めて、構えたロケットランチャーの引き金を引いた。
飛び出す擲弾に警戒する巨人もいるが、地雷の爆音で耳をやられたのか狙いを定めた歪虚は自分に迫りつつあるものに気づいている様子すらない。
そして着弾、轟音と共にサイクロプスの胸部より上が弾けとんだ。
「やはり的がでかい分狙いやすいみたいだな」
爆発で怯んだ周囲の敵に向けて突撃銃を発砲するルナリリルが崩れて消え行く歪虚の死に様を一瞥して言葉を零す。
実際人を見るだけで襲い掛かってくる習性のある怠惰の歪虚達は、今前線にいる数名に対して集中する為にかなり密集している。
的に向けて引き金を引けば狙わなくても当たる、と言ってもいいレベルである。
「しかしこれでこっちもネタ切れだな……対物ライフルの方は好調のようだが」
今もまた、大きな銃声と共にルナリリルの正面に立ったトロルの頭が柘榴のように弾けとんだ。
「そうだねー。地雷もロケランも使っちゃったし、後は自力で頑張るしかないよね☆」
皆スキルも半分以上を使い切っているが、負傷自体は軽傷なものが多い。
「俺はまだまだいけるっすよ!」
盾を片手に戻ってきた神楽は額から血が流れていたが、それも淡い光に包まれてみるみるうちに塞がっていく。
「私も時間を稼ぐだけならまだなんとかなるわね」
ジーウは多少息は上がっているが、その瞳から闘志は失われていない。背中に守るものがある。それだけで気力が尽きることはない。
少し後ろに視線を向ければ、ディディが手を一度上げて応える。
「それじゃあもう少しアレらの相手をしようか」
歪虚達は次々とナナミ川を渡りこちら側の岸に上がってくる。
この場所の防衛線が突破されるのも時間の問題だろう。だが、今はその時ではない。
●後日談
サルヴァトーレ・ロッソ技術開発部のとある開発室で、椅子に深く腰掛けた男が資料を捲っている。
「あれ、リーダー。それどうしたんっすか?」
「この前試作兵器の実戦テストして貰っただろう? アレを依頼したハンターから上がってきた」
それぞれの兵器の運用方法や、対大型歪虚兵器としての効果。重量の問題や、爆音などによる馬との運用の難しさなど色々な意見がまとめられている。
「へえ、生の声って奴ですね」
単純にその有用性に目を付けて量産化された折には、と言った話も混じっているがそれもまた高評価だったということだろう。
「こっちは写真ですか……おぉう、歪虚が木っ端微塵に」
添えられていた写真を見て研究員の一人が嬉しそうな声を上げる。
「今のところ量産の目処は立ってないが、一応これも纏めて上に報告するかな」
リーダーの男は無精髭の生えた顎を軽く撫でると、力ない笑みを浮かべながら手にしている資料を軽く振った。
優雅に流れるナナミ川。そこに引かれた大規模な防衛線。
その中央の一つの要所にてハンター達が展開する。
「さーて、これで準備万端っす」
川辺に地雷を設置してきた神楽(ka2032)が手についた土をパンパンと払う。
その隣では同じく地雷設置を手伝っていたフェルム・ニンバス(ka2974)が額を拭う。
「ブラフも含めてこんなもんかな。効果があるといいけどよ」
川辺からその周辺にかけて十数個出来ている小さな土の山。本当に埋めてある地雷とは別に、怠惰の歪虚達を騙す為に作った偽装だ。効果の程は分からないが、何もしないよりはマシだろう。
「こちらの地雷も埋め終わったわ」
「これで準備ばっちりだねー☆」
ジーウ=ルンディン(ka3694)とエリス・ブーリャ(ka3419)も地雷を設置し終えて集まる。
「5つだけとは物足りないが、あるだけマシと思うとしよう」
ルナリリル・フェルフューズ(ka4108)がそう心情を吐露する。
試作兵器ということで数が用意できていないことに不満はあるが、威力だけは保障されているのだ。
それに今回の運用で実績を作れば今後改めて量産されて配備される可能性もある。未来への投資と思えば、今回の依頼が重要であることが理解出来るだろう。
「で、敵のほうはまだかい?」
ロケットランチャーの説明資料を片手にジルボ(ka1732)が皆の顔を見やる。
その彼の肩にはパルムが一匹乗っており、世話しなくきょろきょろと周囲を見渡していた。
「拠点の遠見の人が言うにはそろそろらしいけど……」
そう言ってフィドルフ(ka2525)はナナミ川の対岸へと視線を向ける。
その時、試作型ライフルのスコープを覗いていたディディ=ロハドトゥ(ka3695)が銃を構えたままぽつりと呟く。
「来たぞ」
ディディの言葉通り、川の対岸のさらにその先の荒野から僅かに土煙が上がっているのが見えた。
それを確認したハンター達は各々の武器を手にそれぞれの配置へと着く。
――十数分後、激闘が始まった。
●渡河防衛線
一つの轟音が戦場の火蓋を切った。
爆弾でも爆発させたような空気の衝撃が周囲へ拡散し、その間近にいたディディの頬を痺れさせる。
試作ライフルはバイポッドで地面に固定し、伏せ射ちを行ってなおその反動がストックを当てている肩へと伝わる。
それだけの負担を射手に強いた弾丸は周囲の空気を引き裂きながら飛翔し、渡河を始めようとしていた一匹のトロルの腕を捉えた。
「うわっ、えぐいッスね」
川辺の近くで待機していた神楽の視界の先で、腕が半ばから弾けとんだトロルが膝をついて悶えている。
「むぅ、ちょっとずれた」
「ディ、大丈夫?」
「大丈夫。次はちゃんと当てる」
ジーウに肩を叩かれ、少し耳栓を外したディディはその言葉に頷いて見せ、またスコープを覗き込む。
その間に対岸に押し寄せた怠惰の歪虚達は次々と川へと飛び込んでいく。その数は数十、いや百に到達するかという数だ。それによって川は歪虚に埋め尽くされてしまう。
「そんじゃ、俺も参加するか」
その光景を眺めていたジルボは伏せ撃ちの体勢になると手持ちのバッグの上にライフルを固定し、川の中で頭だけを出している歪虚へ向けて引き金を引く。
銃声が響くたびに黒い液体が川の色を染め、力尽きた巨体は川中に沈んでいく。
「それじゃあそろそろオレも加勢しようかな」
「さて、こっちだ。来たまえデカブツ」
「ノロマなお前等が上陸する前にマッハで蜂の巣にしてやるっす~!」
怠惰の歪虚達が川の半ばに差し掛かったところで更に攻撃の手が増える。
川を渡っている所為で下手に身動きの取れない歪虚達は蜂の巣になり、次々に川の流れに負け流されていく。
だが怠惰の歪虚達は数に物を言わせじりじりとこちら側の岸へと距離をつめてきた。
「そろそろこっちに着そうだな。皆、準備はいいかな?」
フィドルフは敵が川の半ばを過ぎたところで皆に目配せをする。
伏せ射ちをしていたディディとジルボは立ち上がりライフルを担ぎ直す。
「次は私の番ね。ディ、後方からの援護お願いね」
「了解。ジウも気をつけて」
ジーウの言葉を受けてディディは後方へと下がっていく。
「さあ、おいでなすったぞ」
ルナリリルは言葉を紡ぎながら徐々に視線を上へと向けていく。
こちら側の岸に近づき川中の歪虚達が徐々にその姿を現し始めた。
「ちょ、こっちにきたっす!たっけて~!!」
上陸したサイクロプスの一匹がその手にする棍棒を地面に目掛けて振り下ろす。
それだけで地面がへこみ、周囲に土煙と石の破片を飛ばすその威力は桁違いだ。
あわやぺっちゃんこかと思われた神楽は、土煙の中から飛び出して地面を一回転した後すぐ立ち上がって走り出した。
それを見たサイクロプスが追撃をかけようとしたところで、突然その顔面に炎の矢が突き刺さり小さな爆発と共に炎が膨れ上がる。
「はいはい、とっとと逃げてくれる?」
その様子を眺めていたフェルムは更に炎の矢を作り出して、近寄ってくる歪虚の軍勢を牽制する。
「うっひゃあ。これだけ多いと選り取り見取りだよね!」
それに加勢するようにエリスの構えた機械的な白い杖からマテリアル弾が放たれ、巨人の一体の肩を貫く。
その一体は怯んだように後ろに下がるが、変わりに無傷のもう二体が前へと進み出てくる。
じりじりと後退を続けるハンター達。このままだと前線が瓦解してしまうかと思われた時、川辺に上がってきた一体のトロルの足元が爆発した。
その爆発は大型歪虚の巨体を一瞬だが宙に浮かせてひっくり返し。そして密集している所為もあって周りの歪虚達も巻き込まれ吹き飛ばされる。
そこから更に連鎖するように一つ、二つと爆発が起こり怠惰の歪虚達の足並みが乱れる。
「ひゅうっ、見たか? お前も大人しくしてねぇとあーやって焼きキノコになるぞ?」
十分な距離を取っていたのに伝わってくる地雷の熱風と爆音にジルボは肩に乗るパルムに話しかける。
そう口にしながらライフルを肩に掛け、背負っていたロケットランチャーを肩に乗せ怠惰の群集にその照準を向ける。
「よく見とけよ、相棒。歴史が変わる瞬間だぜ」
そう言ってジルボは少しだけ重くなっている引き金を思いっきり引いた。
それと同時に背負っている筒の後方から煙と共に熱風が吐き出され、それとは反対側の前方では先端を尖らせた擲弾が勢いよく射出される。
白煙を残しながらまるで吸い込まれるかのように、ソレは鎧を着ている歪虚の腹部へと突き刺さった。
一瞬の眩しい赤い光、そして爆音と衝撃。鎧を砕き、その内部へ千度を超える炎を吐き出す。
蹂躙する炎はそのまま膨れ上がり、着弾した歪虚の上半身を吹き飛ばした。下半身だけとなった歪虚の体はそのまま地面へと倒れて無へと帰っていく。
「たーまやー。すっごい威力じゃん」
それをすぐ近くで見ていたエリスはその一撃の威力を見て手放しに賞賛する。
地雷、そしてロケットランチャーの爆発を受けて次々と前進してきていた怠惰の軍勢の足並みが見るからに鈍るのが分かった。
そして足を止めて棒立ち同然になった一体のサイクロプスの頭に、大きな風穴が空く。
「これで五体……リロードする」
前線から少し後方にある丘の上でディディがライフルの弾装を交換し、レバーを引いて装填を行う。
もはや砲撃とも言っていい弾丸は確実に怠惰の歪虚達に迫り食い千切っていく。
勿論その狙撃に気づいた歪虚達が何もしないわけが無い。一体のトロルが手にしている手斧を振りかぶる。
「ディに手はださせない」
それを察知したジーウが駆け、そのトロルの足首に思い切り剣を叩きつける。
それは防具に阻まれ、僅かな傷にしかならなかったが武器を叩きつけた衝撃は確かに伝わる。
それにより僅かに狙いの逸れた投げ斧はスコープを覗いているディディの真上を通り過ぎて行き、そしてお返しとばかりに大きな銃声が上がりライフルの銃身から火が吹き出る。
「うっひゃー、派手にやってるっすね~。っと、こっちも油断できないっすね、っと!」
神楽は横薙ぎに振るわれた棍棒を盾で受け、受け止めはせずにそのまま受け流すようにして盾を持つ腕を振るう。
腕がびりびりと痺れるが、それだけだ。そのまま盾を持つ腕に力を入れて正面に掲げる。
「効かないっすよ~。ご自慢の力はその程度っすか~」
神楽はにんまりと笑みを浮かべ歪虚を挑発する。それに乗ったのか、複数体の歪虚が神楽へと視線を向ける。
「いや、流石にその数は無理っす!」
神楽が追いかけっこ。否、追いかけられっこを始めてる傍で肩を並べて並ぶ二人が杖を歪虚達に向ける。
「あの地雷っていうの、大した威力だったね。でも俺の火力も負けてないよ」
「フェルムきゅんかっこいいー♪ エルちゃんも負けてられないな!」
赤と無色のマテリアルが巨人達に突き刺さる。だが巨人達は躊躇うように中々前に出てこない。
今フェルムとエリスがいる場所の周囲には盛られた小さな土の山があちこちにある。先ほど足元で爆発した地雷に警戒しているようで二の足を踏んでいるようだ。
「そうやって棒立ちしてたら良い的だがな」
ジルボのライフルも火線に加わり、押し合い圧し合いとなっている団子状態の集団に的確に矢弾を撃ち込んでいく。
そして我慢できなくなり飛び出してきた数匹を連れて本物の地雷の元へと誘導する。
それからほどなくして、本日何度目かの爆音が戦場で鳴り響いた。
紅蓮の炎が真上に昇り、周囲の怠惰の歪虚達を爆炎で包む。
「最後の一発。いかせて貰おうか」
足を吹き飛ばされ倒れるサイクロプス、そして炎に炙られて怯んでいる回りの巨人達。
フィドルフはその中の一体に狙いを定めて、構えたロケットランチャーの引き金を引いた。
飛び出す擲弾に警戒する巨人もいるが、地雷の爆音で耳をやられたのか狙いを定めた歪虚は自分に迫りつつあるものに気づいている様子すらない。
そして着弾、轟音と共にサイクロプスの胸部より上が弾けとんだ。
「やはり的がでかい分狙いやすいみたいだな」
爆発で怯んだ周囲の敵に向けて突撃銃を発砲するルナリリルが崩れて消え行く歪虚の死に様を一瞥して言葉を零す。
実際人を見るだけで襲い掛かってくる習性のある怠惰の歪虚達は、今前線にいる数名に対して集中する為にかなり密集している。
的に向けて引き金を引けば狙わなくても当たる、と言ってもいいレベルである。
「しかしこれでこっちもネタ切れだな……対物ライフルの方は好調のようだが」
今もまた、大きな銃声と共にルナリリルの正面に立ったトロルの頭が柘榴のように弾けとんだ。
「そうだねー。地雷もロケランも使っちゃったし、後は自力で頑張るしかないよね☆」
皆スキルも半分以上を使い切っているが、負傷自体は軽傷なものが多い。
「俺はまだまだいけるっすよ!」
盾を片手に戻ってきた神楽は額から血が流れていたが、それも淡い光に包まれてみるみるうちに塞がっていく。
「私も時間を稼ぐだけならまだなんとかなるわね」
ジーウは多少息は上がっているが、その瞳から闘志は失われていない。背中に守るものがある。それだけで気力が尽きることはない。
少し後ろに視線を向ければ、ディディが手を一度上げて応える。
「それじゃあもう少しアレらの相手をしようか」
歪虚達は次々とナナミ川を渡りこちら側の岸に上がってくる。
この場所の防衛線が突破されるのも時間の問題だろう。だが、今はその時ではない。
●後日談
サルヴァトーレ・ロッソ技術開発部のとある開発室で、椅子に深く腰掛けた男が資料を捲っている。
「あれ、リーダー。それどうしたんっすか?」
「この前試作兵器の実戦テストして貰っただろう? アレを依頼したハンターから上がってきた」
それぞれの兵器の運用方法や、対大型歪虚兵器としての効果。重量の問題や、爆音などによる馬との運用の難しさなど色々な意見がまとめられている。
「へえ、生の声って奴ですね」
単純にその有用性に目を付けて量産化された折には、と言った話も混じっているがそれもまた高評価だったということだろう。
「こっちは写真ですか……おぉう、歪虚が木っ端微塵に」
添えられていた写真を見て研究員の一人が嬉しそうな声を上げる。
「今のところ量産の目処は立ってないが、一応これも纏めて上に報告するかな」
リーダーの男は無精髭の生えた顎を軽く撫でると、力ない笑みを浮かべながら手にしている資料を軽く振った。
依頼結果
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怠惰撃退&試作兵器運用相談所 神楽(ka2032) 人間(リアルブルー)|15才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2015/02/27 21:30:09 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/02/23 16:28:47 |