ゲスト
(ka0000)
お猫様露天漫遊
マスター:霜月零

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 3日
- 締切
- 2015/02/27 15:00
- 完成日
- 2015/03/08 08:45
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
のどかな、とてものどかな村だった。
山間とはいえ、斜面がなだらかなせいか道はとうの昔に整備されていたし、麓の町までの往復もさほど難なくこなせた。
村人達が丹精こめて育てた果樹園では、毎年たわわに柑橘類が実っていた。
裕福とまではいかないものの、食うに困るほど貧困に陥ることもない、そんな小さな村だった。
「困ったべ~」
村人が、溜息と共にそんな言葉を漏らす。
彼が見つめる先には、温泉があった。
ほかほかと湯気が立ち上り、2月の寒さを癒してくれそうな暖かい空気が回りに満ちている。
そう、その村で温泉が見つかったのは、半年ほど前の事だった。
たまたま局地的な地震が起き、亀裂から温泉が湧き出したのだ。
果樹園の手入れの合い間合い間に村人総出で温泉を掘り広げ、少しずつ少しずつ露天風呂を作り上げていった。
そしてついに完成したのだが……。
にゃーーーーーーーーーーーーーん♪
村人の目の前には、温泉にどーんと浸かる巨大猫が。
いや、猫と呼ぶにはあまりにも大きすぎるだろう。
大人が10人同時に入ることが出来る広さのある湯船に、一匹でぎゅうううっと詰まっている、いや、浸かっているのだから。
「おそらくは幻獣様じゃろうのぅ……」
村の長老が杖をつきながら村人の傍による。
そしてその足元には、大小さまざまのお猫様が嬉しそうに擦り寄ってきていた。
にゃぁんにゃぁんにゃぁん。
にゃーにゃーにゃー。
なぁん♪
村人も長老も思わず目じりをほころばせかけるが、ぷるぷると頭を振る。
「むぅう、幻獣大猫様につられて、日に日に野良猫が増えていっておる。このままでは、猫たちに村を占拠される日も遠くないのぅ……」
村長の呟きに、村人もうんうんと頷いている。
お猫様は可愛い。
幻獣大猫様も可愛い。
三毛猫も縞猫も雉猫もトラ猫も斑猫も黒猫も。
みんなみんな愛らしい。
だがしかし、ここは果樹園で生計を立てている小さな村。
猫村では決してないのだ。
そして大量のお猫様たちを養えるほど裕福でもなし。
露天風呂で収入をえられるようになればまた話は変わってくるのだが、幻獣大猫様が占拠している今、収入は見込めない。
そしてさらに問題がある。
温泉が湧き出たことで、舞い上がった村長が、半年前についうっかり出来心で麓の町の町長に借金を申し入れてしまっていたのだ。
『温泉整備の為に、少しばかり、工面してもらえぬかのぅ?』
そんな村長の申し出を、町長は二つ返事で頷いた。
ただし、『温泉をいつでも使わせてくれるなら』という条件付で。
そしてそんな町長が、明後日この村を訪れることになっているのだ。
一週間前、露天風呂が出来上がった瞬間に町長に連絡を入れてしまっていて、まだ完成していないという嘘はつけない。
かといって、幻獣大猫様が浸かっているので入れないとも言いづらい。
「せめて、完成直後に浸かってくれていればのぅ。町長殿に連絡をいれずにおいたのじゃが……」
後悔先に立たず。
幻獣大猫様はわれかんせずでどっぷりと湯船に詰まって、いや、浸かっている。
「そもそも、猫って水が嫌いなはずだべ。みんな猫じゃないのかもしれないだべ~」
集まってくる野良猫たちですら、お湯を怖がる様子がない。
幻獣大猫様は明らかに常軌を逸する大きさだったから幻獣であるとめぼしがついたのだが、他の野良猫たちはこれといって大きさといい行動といい、普通の猫と変わりない。
村人達が毎日持ち寄る餌を、皆で分け合っておいしそうに食べている。
「幻獣大猫様に、退いて頂くしかないのかのぅ」
一時的でよいのだ。
出来ればずっと退いていて欲しいのだが、わがままは言うまい。
町長が来る明後日の夜だけ、移動していて欲しいのだ。
「なぁ、おおぬこさま、少しの間、移動してくれねぇだべか~?」
村人が説得するも、暖簾に腕押し床に釘。
なんとなく会話が通じていそうなのだが、退いてくれる気配はまるでなし。
「困ったのぅ」
ここ一週間で何度目かわからない溜息を、長老と村人は深く吐くのだった。
山間とはいえ、斜面がなだらかなせいか道はとうの昔に整備されていたし、麓の町までの往復もさほど難なくこなせた。
村人達が丹精こめて育てた果樹園では、毎年たわわに柑橘類が実っていた。
裕福とまではいかないものの、食うに困るほど貧困に陥ることもない、そんな小さな村だった。
「困ったべ~」
村人が、溜息と共にそんな言葉を漏らす。
彼が見つめる先には、温泉があった。
ほかほかと湯気が立ち上り、2月の寒さを癒してくれそうな暖かい空気が回りに満ちている。
そう、その村で温泉が見つかったのは、半年ほど前の事だった。
たまたま局地的な地震が起き、亀裂から温泉が湧き出したのだ。
果樹園の手入れの合い間合い間に村人総出で温泉を掘り広げ、少しずつ少しずつ露天風呂を作り上げていった。
そしてついに完成したのだが……。
にゃーーーーーーーーーーーーーん♪
村人の目の前には、温泉にどーんと浸かる巨大猫が。
いや、猫と呼ぶにはあまりにも大きすぎるだろう。
大人が10人同時に入ることが出来る広さのある湯船に、一匹でぎゅうううっと詰まっている、いや、浸かっているのだから。
「おそらくは幻獣様じゃろうのぅ……」
村の長老が杖をつきながら村人の傍による。
そしてその足元には、大小さまざまのお猫様が嬉しそうに擦り寄ってきていた。
にゃぁんにゃぁんにゃぁん。
にゃーにゃーにゃー。
なぁん♪
村人も長老も思わず目じりをほころばせかけるが、ぷるぷると頭を振る。
「むぅう、幻獣大猫様につられて、日に日に野良猫が増えていっておる。このままでは、猫たちに村を占拠される日も遠くないのぅ……」
村長の呟きに、村人もうんうんと頷いている。
お猫様は可愛い。
幻獣大猫様も可愛い。
三毛猫も縞猫も雉猫もトラ猫も斑猫も黒猫も。
みんなみんな愛らしい。
だがしかし、ここは果樹園で生計を立てている小さな村。
猫村では決してないのだ。
そして大量のお猫様たちを養えるほど裕福でもなし。
露天風呂で収入をえられるようになればまた話は変わってくるのだが、幻獣大猫様が占拠している今、収入は見込めない。
そしてさらに問題がある。
温泉が湧き出たことで、舞い上がった村長が、半年前についうっかり出来心で麓の町の町長に借金を申し入れてしまっていたのだ。
『温泉整備の為に、少しばかり、工面してもらえぬかのぅ?』
そんな村長の申し出を、町長は二つ返事で頷いた。
ただし、『温泉をいつでも使わせてくれるなら』という条件付で。
そしてそんな町長が、明後日この村を訪れることになっているのだ。
一週間前、露天風呂が出来上がった瞬間に町長に連絡を入れてしまっていて、まだ完成していないという嘘はつけない。
かといって、幻獣大猫様が浸かっているので入れないとも言いづらい。
「せめて、完成直後に浸かってくれていればのぅ。町長殿に連絡をいれずにおいたのじゃが……」
後悔先に立たず。
幻獣大猫様はわれかんせずでどっぷりと湯船に詰まって、いや、浸かっている。
「そもそも、猫って水が嫌いなはずだべ。みんな猫じゃないのかもしれないだべ~」
集まってくる野良猫たちですら、お湯を怖がる様子がない。
幻獣大猫様は明らかに常軌を逸する大きさだったから幻獣であるとめぼしがついたのだが、他の野良猫たちはこれといって大きさといい行動といい、普通の猫と変わりない。
村人達が毎日持ち寄る餌を、皆で分け合っておいしそうに食べている。
「幻獣大猫様に、退いて頂くしかないのかのぅ」
一時的でよいのだ。
出来ればずっと退いていて欲しいのだが、わがままは言うまい。
町長が来る明後日の夜だけ、移動していて欲しいのだ。
「なぁ、おおぬこさま、少しの間、移動してくれねぇだべか~?」
村人が説得するも、暖簾に腕押し床に釘。
なんとなく会話が通じていそうなのだが、退いてくれる気配はまるでなし。
「困ったのぅ」
ここ一週間で何度目かわからない溜息を、長老と村人は深く吐くのだった。
リプレイ本文
●
「おっきいねこさんだ……! もっふりもっふり?」
鏡 優真(ka0294)は幻獣大猫様を見つめて、青い瞳をきらきらと輝かす。
いまだかつてない大きさの大猫様は、露天風呂にでーーんと詰まっている。
優真はててててーっと駆け寄って、村人が止めるまもなくぎゅううううううぅっと大猫様を抱きしめた。
「むにゅんってしてますね! 水に濡れているはずなのにもふもふなの。もっふ~」
露天風呂の岩淵の上に乗り、両手を広げて抱きしめるというよりも大猫様に埋もれている優真は、とても幸せそう。
「予想以上に、詰まってるわね。この大猫様は」
フローレンス・レインフォード(ka0443)は軽く溜息。
温泉も好きだが猫も好きなフローレンスだが、温泉にむっちりと詰まっている大猫様は想定外。
この大きさだと触れ合うというよりは優真と同じく埋もれそうだ。
「猫さん、いっぱい……可愛い……」
フローレンスの背に隠れるように、ちょっとだけ顔を覗かせながら、ブリス・レインフォード(ka0445)は周囲のお猫様たちをじっと見つめる。
大猫様も好みなのだが、大猫様に惹かれるように集まってきている野良猫様たちも、ブリスの瞳には幸せの結晶に見えた。
自分達に対してまったく敵意がないことを即座に見抜いた野良猫様たちが、ブリスの周囲に続々と集まってくる。
そっと屈んで、ブリスは茶トラの喉を撫でてみる。
ころんと転がって、もっと撫でてとねだる茶トラ。
「可愛い……もっと……」
もふもふもふもふ、もふもふもふもふっ。
ブリスは決してフローレンスから離れはしないのだが、全力で野良猫様たちをもふりだす。
「猫さんいっぱいでいい所なのだ。このままでもいっそいいと思うのだー♪」
ネフィリア・レインフォード(ka0444)は妹が野良猫様に夢中なのを見て、より一層ご機嫌。
お手伝いに来たはずなのだが、きっときのせい。
「ところで、あそこで誰か既に寝ているようなんですが」
志乃原・勇雅(ka1411)が大猫様を指差す。
優真に抱きしめられながらどっちりと湯船に詰まっている大猫様の腕の中。
よくみると、ミウ・ミャスカ(ka0421)が気持ちよさそうに眠っている。
「気持ちよさそうに眠ってらっしゃいますね」
クリスティーネ=L‐S(ka3679)がそっと大猫様に近づき、眠っているミウ覗き込む。
大猫様はその間もまったく微動だにしない。
もしかしたら眠っているのかも?
「温泉……拡張……ブリスも一緒に……」
ミウをうらやましそうに見つめるブリスに、フローレンスはこくりと頷く。
(可愛い妹達の為にも、しっかりとこの状況を打開しないとね)
たとえどんなにみっちりぎっちり大猫様が詰まっていても、だ。
●
「待ちなさいな。あなた達も手伝ってくれるわよね?」
フローレンスは露天風呂から帰りかけた村人達を前に、軽い偏頭痛を覚える。
呼び止められた村人たちは困り顔で何かもにょもにょ呟いているのだが、よく聞こえない。
恐らく、自分達には無理だといっているのだろうが。
(果樹園も大変だとは思うけど、私達だけで出来ることは限られているし)
フローレンスはすっと村人の一人に寄り添う。
「な、なんじゃね?」
頬を染め、しどろもどろになる村人をじっと見つめ、耳元に口を寄せる。
「ねぇ? 生活がかかっているのでしょう。いろいろと、ね?」
ふぅっ。
村人がフローレンスの吐息にあわあわしだす。
動機がはげしいのか、胸を押さえ、それでもそこから動けない。
「皆で協力しないと、この窮地は脱出できないわ。協力してくれるわよね?」
じっと村人の瞳を見つめるフローレンス。
もう声も出ずにこくこくと頷く村人。
「わかってくれて嬉しいわ。頑張りましょうね」
にっこりと微笑むフローレンスに、逆らう村人はもういなかった。
「魚とかも、もうちょっと工夫したほうがよさそうですね。もっとおいしくなるように」
勇雅が手荷物の中から牛乳とミネラルウォーターを取り出す。
(台所は、宿屋のを借りればよさそうです)
村人に断りを入れてから、勇雅は露天風呂のすぐ隣の宿屋で調理を始める。
先に魚をミネラルウォーターでさっと下茹でし、独特の臭みを取り、次いで牛乳で茹でた魚を本格的に煮込み始める。
宿屋にある調味料で味を調えれば、勇雅風ミルクフィッシュの完成だ。
「凄くいいにおいだよね」
香ばしい香りに釣られて、野良猫様たちと一緒にネフィリアも着いてきた。
野良猫をもふっていたから、そのまま野良猫たちに誘導された形だ。
「味見してみます? 猫達用だけど、人が食べてもまずまずのお味だと思います」
小皿に取り分けて、野良猫用とネフィリアように分けて勇雅はミルクフィッシュを差し出す。
ネフィリアはちょっとだけ匂いをかいで、嬉しそうに頬張りだした。
「おいしく食べてもらえると、作った甲斐があります」
わらわらよってくる野良猫たちと、嬉しそうなネフィリアをみて、勇雅は満足げに頷いた。
「大猫様、こちらにいらっしゃいませんか? ほら、リボンですよ~」
ひらひら、ひらひら。
クリスティーネは竿の先につけたフリルリボンを、大猫様の前でひらひらさせてみる。
大猫様は『ん?』といった表情で片目を開けた。
「こちらへいらっしゃいませんか? 沢山の玩具と、おいしいお食事がありますよ」
ひらひら、ひらひら。
クリスティーネは大猫様へ優しく語りかけながら、フリルリボンを揺らして誘いをかける。
むっちりと温泉に埋まっていた大猫様が、動いた。
ざばーっと、盛大な音を立てて、湯船のお湯が石畳に溢れ流れた。
「ほへー? 大きい猫さん、移動する~?」
腕の中でちゃっかり寝続けていたミウも目を覚まし、大猫様にぎゅうっとしがみ付く。
「退かないと駄目かな……あっ、ほんと?」
背中にぎゅうっとくっついていた優真が退こうとすると、大猫様が長い尻尾で優真を支えて立ち上がる。
「……二足歩行」
ブリスがこくりと頷く。
大猫様はクリスティーネに誘導されて、腕にはミウを、背中には優真をつれたまま、露天風呂から移動する。
ずっと温泉につかっていたはずなのにもふもふの毛が濡れていないのは、やはり幻獣だからなのだろうか。
大猫様はクリスティーネの用意したボールと、勇雅が用意したミルクフィッシュ、それと優真が村人から借りた毛糸玉の前にどっしりと腰を下ろす。
「おさかな好き? ツナ缶もあるんだよ」
一瞬でミルクフィッシュを平らげる姿を見て、背中にくっついていた優真がツナ缶を差し出す。
大猫様は器用にも肉球でめきょっと缶を開け、一瞬で一缶平らげる。
「ほら、ツナ缶追加だよー。美味しいんだよー」
腕の中のミウも、ツナ缶を取り出して、こちらはミウが缶の蓋を開けてお皿に盛り付ける。
「野良猫さんもたべるー?」
ふと視線を感じ、ミウは野良猫達にもツナ缶を振舞う。
「大猫様ね、プレゼントがあるんだよ」
すりすりと大猫様に頬ずりをしながら、優真はぽけっとから自分とおそろいのリボンを取り出し、大猫様のふさふさの毛にキュッと結びつける。
大猫様の耳の下に結ばれたそれは、友情の証だ。
「えへへ、僕とお揃いだよー」
ちょっと照れくさそうに笑う優真を、大猫様はごろごろと喉を鳴らして歓迎する。
(今のうちに、作業を進めれそうね)
フローレンスは説得した村人達をくいっと手招きする。
「温泉増設案は、勇雅にいい考えがあるのよね?」
「はい。とりあえず温泉のお湯をですね、パイプを通して新しい湯船に通してかけ流しの湯を作ればそんなに手間がかからないんじゃないかと思います」
いいながら、勇雅はレジャー用ゴムボートを差し出す。
「ちょうどいいことに、ボク、 レジャー用ゴムボート持ってきてるので、それを湯船の代わりにでも」
「なるほどね。最終手段としてはそれでいけそうね。かけ流しの案はそのままに、出来ればもう一つ湯船を増設できれば理想よね」
「ここに……窪み……」
ブリスが露天風呂の斜め裏側、巨木の陰になっている斜面を指差す。
そこには、人間二人が入れそうなぐらいの丁度良い窪みがあった。
「この露天風呂より低い位置だし、パイプからお湯を流すのも簡単そうですね」
木の枝に勇雅がパイプをかけてみる。
枝が支えになって、少し固定すれば露天風呂のお湯を流すことは出来そうだった。
「そうと決まれば、話は早いわ。ブリス、それとネフィも、作業を手伝って頂戴」
大猫様にくっついているネフィリアを手招きし、フローレンスは村人達に必要な素材指示する。
「長老様、わたしからもお願いがあるのです」
大猫様が玩具で十分楽しみ、うとうととまた眠り始めたのをみて、クリスティーネが長老に声をかける。
「どうかしましたかのぅ?」
「大猫様に露天風呂の外に留まって頂く為に、温室を作って頂きたいのです」
「ほぅ、それにはどんな効果がありますかのぅ?」
「玩具は、一時的には大猫様を露天風呂の外に誘導できました。でも、すぐに露天風呂に戻ってしまわれては、今後、露天風呂での収入は見込めないでしょう。ですから、大猫様にずっと露天風呂の外にいても居心地の良い空間を作ってあげることが、この件の解決に繋がると思うのです」
「ふむ……」
「この露天風呂と宿屋を繋ぐように、風除けの囲いを作り、そこにも温泉の湯を引き込めれば、暖かな空間を演出できると思います」
クリスティーネはわかりやすく地面に簡易的な図を描く。
将来的にはきちんと改良して、足湯なども作れれば、猫と戯れながら温泉を楽しめる村となるのではないか。
クリスティーネの説明に村長はうんうんと大きく頷いた。
●
「おおー。すばらしい眺めではないかね!」
ぽっちゃりと、これまた人の良さそうな町長が露天風呂の前で歓声を上げる。
大猫様は、風除けの囲いの中にいて、町長からは見えていない。
「こちらへ」
案内されるままに、町長は露天風呂の斜め下、小さなかけ湯へ。
その足元にはこれまた沢山の野良猫たち。
にゃーにゃーと鳴きながら擦り寄る姿に、町長は嬉しそうに目じりを綻ばす。
(町長も猫好きー? もしかしたら、大猫様と一緒に入れたら、もっと喜ぶかもー?)
ミウが眠たい瞳をこすりながら、その様子にそんな事を思う。
一応、町長には幻獣大猫様のことはまだ伏せてあったりするのだ。
「おお、いい湯じゃないか! 眺めといい、このかけ湯といい、最高だね」
寄ってくる猫に「一緒に入ってみるかね?」と町長は声をかけている。
――……きっと、大丈夫。
――そうかしら。大きすぎるような気もするけれど。
――明らかに猫好きですね。
――猫さんと温泉に入れるなんて、極楽なんだよ。
――僕とおそろいのリボンもつけてあげたし、大猫様ほんと可愛いんだよ。
――ずっと隠し通すことは困難です。町長はきっとこれからも温泉にいらっしゃるでしょうし、最初にお見せしてしまったほうがいいような気がします。
ハンター達は顔を見合わせ、頷く。
「こっちの温泉もあったかいのだ♪」
ネフィリアが町長を肉球で手招き。
「おお、先ほどの大きな露天風呂のほうかね? うむ、そちらも入ってみよう」
町長にバスタオルを渡し、ネフィリアが町長と一緒に露天風呂へ。
その間に、フローレンスとクリスティーネは大猫様を露天風呂へ誘導。
ブリスと優真、そしてミウは大猫様にぎゅうっと抱きついて、安心安全を全身でアピール。
「こ、これは?!」
「この村の守り神、大猫様です。大猫様は、このように村の野良猫達に慕われ、人にも優しく、そのぬくもりを分けてくれているのです」
「なんと、そのような存在がいたとは」
唖然とする町長に、「湯冷めする前に、一緒に露天に浸かってみて」とフローレンスが促す。
おっかなびっくり、町長は大猫様の浸かる湯に足をつける。
すると、大猫様の尻尾がくるっと町長を巻き取り、一緒にお湯の中へ。
「これはこれは、ずいぶんと人好きの守り神様ですな!」
もっふりとした尻尾を撫でながら、町長はご満悦。
その様子に、フローレンスはほっと胸をなでおろす。
「共存共栄できるのは、素晴らしいことだわ」
それに何より、二人の妹の喜びようが、フローレンスには何より嬉しい。
(町長が帰られた後にでも、ゆっくり温泉につからせていただこうかしらね)
そんな事を思いながら、フローレンスは野良猫達をお湯がかからない場所へ玩具で誘導する。
大猫様は大胆だから、動くと水飛沫が飛ぶのだ。
そして勇雅は、空いたかけ湯へ浸かって見る。
(眺めが本当にいいですね。猫たちが傍にいてくれるのも)
じんわりと身体の芯から暖かさが滲み出し、肩にかかる湯は二日間の労働の疲れを一気に癒してくれそうだった。
「おっきいねこさんだ……! もっふりもっふり?」
鏡 優真(ka0294)は幻獣大猫様を見つめて、青い瞳をきらきらと輝かす。
いまだかつてない大きさの大猫様は、露天風呂にでーーんと詰まっている。
優真はててててーっと駆け寄って、村人が止めるまもなくぎゅううううううぅっと大猫様を抱きしめた。
「むにゅんってしてますね! 水に濡れているはずなのにもふもふなの。もっふ~」
露天風呂の岩淵の上に乗り、両手を広げて抱きしめるというよりも大猫様に埋もれている優真は、とても幸せそう。
「予想以上に、詰まってるわね。この大猫様は」
フローレンス・レインフォード(ka0443)は軽く溜息。
温泉も好きだが猫も好きなフローレンスだが、温泉にむっちりと詰まっている大猫様は想定外。
この大きさだと触れ合うというよりは優真と同じく埋もれそうだ。
「猫さん、いっぱい……可愛い……」
フローレンスの背に隠れるように、ちょっとだけ顔を覗かせながら、ブリス・レインフォード(ka0445)は周囲のお猫様たちをじっと見つめる。
大猫様も好みなのだが、大猫様に惹かれるように集まってきている野良猫様たちも、ブリスの瞳には幸せの結晶に見えた。
自分達に対してまったく敵意がないことを即座に見抜いた野良猫様たちが、ブリスの周囲に続々と集まってくる。
そっと屈んで、ブリスは茶トラの喉を撫でてみる。
ころんと転がって、もっと撫でてとねだる茶トラ。
「可愛い……もっと……」
もふもふもふもふ、もふもふもふもふっ。
ブリスは決してフローレンスから離れはしないのだが、全力で野良猫様たちをもふりだす。
「猫さんいっぱいでいい所なのだ。このままでもいっそいいと思うのだー♪」
ネフィリア・レインフォード(ka0444)は妹が野良猫様に夢中なのを見て、より一層ご機嫌。
お手伝いに来たはずなのだが、きっときのせい。
「ところで、あそこで誰か既に寝ているようなんですが」
志乃原・勇雅(ka1411)が大猫様を指差す。
優真に抱きしめられながらどっちりと湯船に詰まっている大猫様の腕の中。
よくみると、ミウ・ミャスカ(ka0421)が気持ちよさそうに眠っている。
「気持ちよさそうに眠ってらっしゃいますね」
クリスティーネ=L‐S(ka3679)がそっと大猫様に近づき、眠っているミウ覗き込む。
大猫様はその間もまったく微動だにしない。
もしかしたら眠っているのかも?
「温泉……拡張……ブリスも一緒に……」
ミウをうらやましそうに見つめるブリスに、フローレンスはこくりと頷く。
(可愛い妹達の為にも、しっかりとこの状況を打開しないとね)
たとえどんなにみっちりぎっちり大猫様が詰まっていても、だ。
●
「待ちなさいな。あなた達も手伝ってくれるわよね?」
フローレンスは露天風呂から帰りかけた村人達を前に、軽い偏頭痛を覚える。
呼び止められた村人たちは困り顔で何かもにょもにょ呟いているのだが、よく聞こえない。
恐らく、自分達には無理だといっているのだろうが。
(果樹園も大変だとは思うけど、私達だけで出来ることは限られているし)
フローレンスはすっと村人の一人に寄り添う。
「な、なんじゃね?」
頬を染め、しどろもどろになる村人をじっと見つめ、耳元に口を寄せる。
「ねぇ? 生活がかかっているのでしょう。いろいろと、ね?」
ふぅっ。
村人がフローレンスの吐息にあわあわしだす。
動機がはげしいのか、胸を押さえ、それでもそこから動けない。
「皆で協力しないと、この窮地は脱出できないわ。協力してくれるわよね?」
じっと村人の瞳を見つめるフローレンス。
もう声も出ずにこくこくと頷く村人。
「わかってくれて嬉しいわ。頑張りましょうね」
にっこりと微笑むフローレンスに、逆らう村人はもういなかった。
「魚とかも、もうちょっと工夫したほうがよさそうですね。もっとおいしくなるように」
勇雅が手荷物の中から牛乳とミネラルウォーターを取り出す。
(台所は、宿屋のを借りればよさそうです)
村人に断りを入れてから、勇雅は露天風呂のすぐ隣の宿屋で調理を始める。
先に魚をミネラルウォーターでさっと下茹でし、独特の臭みを取り、次いで牛乳で茹でた魚を本格的に煮込み始める。
宿屋にある調味料で味を調えれば、勇雅風ミルクフィッシュの完成だ。
「凄くいいにおいだよね」
香ばしい香りに釣られて、野良猫様たちと一緒にネフィリアも着いてきた。
野良猫をもふっていたから、そのまま野良猫たちに誘導された形だ。
「味見してみます? 猫達用だけど、人が食べてもまずまずのお味だと思います」
小皿に取り分けて、野良猫用とネフィリアように分けて勇雅はミルクフィッシュを差し出す。
ネフィリアはちょっとだけ匂いをかいで、嬉しそうに頬張りだした。
「おいしく食べてもらえると、作った甲斐があります」
わらわらよってくる野良猫たちと、嬉しそうなネフィリアをみて、勇雅は満足げに頷いた。
「大猫様、こちらにいらっしゃいませんか? ほら、リボンですよ~」
ひらひら、ひらひら。
クリスティーネは竿の先につけたフリルリボンを、大猫様の前でひらひらさせてみる。
大猫様は『ん?』といった表情で片目を開けた。
「こちらへいらっしゃいませんか? 沢山の玩具と、おいしいお食事がありますよ」
ひらひら、ひらひら。
クリスティーネは大猫様へ優しく語りかけながら、フリルリボンを揺らして誘いをかける。
むっちりと温泉に埋まっていた大猫様が、動いた。
ざばーっと、盛大な音を立てて、湯船のお湯が石畳に溢れ流れた。
「ほへー? 大きい猫さん、移動する~?」
腕の中でちゃっかり寝続けていたミウも目を覚まし、大猫様にぎゅうっとしがみ付く。
「退かないと駄目かな……あっ、ほんと?」
背中にぎゅうっとくっついていた優真が退こうとすると、大猫様が長い尻尾で優真を支えて立ち上がる。
「……二足歩行」
ブリスがこくりと頷く。
大猫様はクリスティーネに誘導されて、腕にはミウを、背中には優真をつれたまま、露天風呂から移動する。
ずっと温泉につかっていたはずなのにもふもふの毛が濡れていないのは、やはり幻獣だからなのだろうか。
大猫様はクリスティーネの用意したボールと、勇雅が用意したミルクフィッシュ、それと優真が村人から借りた毛糸玉の前にどっしりと腰を下ろす。
「おさかな好き? ツナ缶もあるんだよ」
一瞬でミルクフィッシュを平らげる姿を見て、背中にくっついていた優真がツナ缶を差し出す。
大猫様は器用にも肉球でめきょっと缶を開け、一瞬で一缶平らげる。
「ほら、ツナ缶追加だよー。美味しいんだよー」
腕の中のミウも、ツナ缶を取り出して、こちらはミウが缶の蓋を開けてお皿に盛り付ける。
「野良猫さんもたべるー?」
ふと視線を感じ、ミウは野良猫達にもツナ缶を振舞う。
「大猫様ね、プレゼントがあるんだよ」
すりすりと大猫様に頬ずりをしながら、優真はぽけっとから自分とおそろいのリボンを取り出し、大猫様のふさふさの毛にキュッと結びつける。
大猫様の耳の下に結ばれたそれは、友情の証だ。
「えへへ、僕とお揃いだよー」
ちょっと照れくさそうに笑う優真を、大猫様はごろごろと喉を鳴らして歓迎する。
(今のうちに、作業を進めれそうね)
フローレンスは説得した村人達をくいっと手招きする。
「温泉増設案は、勇雅にいい考えがあるのよね?」
「はい。とりあえず温泉のお湯をですね、パイプを通して新しい湯船に通してかけ流しの湯を作ればそんなに手間がかからないんじゃないかと思います」
いいながら、勇雅はレジャー用ゴムボートを差し出す。
「ちょうどいいことに、ボク、 レジャー用ゴムボート持ってきてるので、それを湯船の代わりにでも」
「なるほどね。最終手段としてはそれでいけそうね。かけ流しの案はそのままに、出来ればもう一つ湯船を増設できれば理想よね」
「ここに……窪み……」
ブリスが露天風呂の斜め裏側、巨木の陰になっている斜面を指差す。
そこには、人間二人が入れそうなぐらいの丁度良い窪みがあった。
「この露天風呂より低い位置だし、パイプからお湯を流すのも簡単そうですね」
木の枝に勇雅がパイプをかけてみる。
枝が支えになって、少し固定すれば露天風呂のお湯を流すことは出来そうだった。
「そうと決まれば、話は早いわ。ブリス、それとネフィも、作業を手伝って頂戴」
大猫様にくっついているネフィリアを手招きし、フローレンスは村人達に必要な素材指示する。
「長老様、わたしからもお願いがあるのです」
大猫様が玩具で十分楽しみ、うとうととまた眠り始めたのをみて、クリスティーネが長老に声をかける。
「どうかしましたかのぅ?」
「大猫様に露天風呂の外に留まって頂く為に、温室を作って頂きたいのです」
「ほぅ、それにはどんな効果がありますかのぅ?」
「玩具は、一時的には大猫様を露天風呂の外に誘導できました。でも、すぐに露天風呂に戻ってしまわれては、今後、露天風呂での収入は見込めないでしょう。ですから、大猫様にずっと露天風呂の外にいても居心地の良い空間を作ってあげることが、この件の解決に繋がると思うのです」
「ふむ……」
「この露天風呂と宿屋を繋ぐように、風除けの囲いを作り、そこにも温泉の湯を引き込めれば、暖かな空間を演出できると思います」
クリスティーネはわかりやすく地面に簡易的な図を描く。
将来的にはきちんと改良して、足湯なども作れれば、猫と戯れながら温泉を楽しめる村となるのではないか。
クリスティーネの説明に村長はうんうんと大きく頷いた。
●
「おおー。すばらしい眺めではないかね!」
ぽっちゃりと、これまた人の良さそうな町長が露天風呂の前で歓声を上げる。
大猫様は、風除けの囲いの中にいて、町長からは見えていない。
「こちらへ」
案内されるままに、町長は露天風呂の斜め下、小さなかけ湯へ。
その足元にはこれまた沢山の野良猫たち。
にゃーにゃーと鳴きながら擦り寄る姿に、町長は嬉しそうに目じりを綻ばす。
(町長も猫好きー? もしかしたら、大猫様と一緒に入れたら、もっと喜ぶかもー?)
ミウが眠たい瞳をこすりながら、その様子にそんな事を思う。
一応、町長には幻獣大猫様のことはまだ伏せてあったりするのだ。
「おお、いい湯じゃないか! 眺めといい、このかけ湯といい、最高だね」
寄ってくる猫に「一緒に入ってみるかね?」と町長は声をかけている。
――……きっと、大丈夫。
――そうかしら。大きすぎるような気もするけれど。
――明らかに猫好きですね。
――猫さんと温泉に入れるなんて、極楽なんだよ。
――僕とおそろいのリボンもつけてあげたし、大猫様ほんと可愛いんだよ。
――ずっと隠し通すことは困難です。町長はきっとこれからも温泉にいらっしゃるでしょうし、最初にお見せしてしまったほうがいいような気がします。
ハンター達は顔を見合わせ、頷く。
「こっちの温泉もあったかいのだ♪」
ネフィリアが町長を肉球で手招き。
「おお、先ほどの大きな露天風呂のほうかね? うむ、そちらも入ってみよう」
町長にバスタオルを渡し、ネフィリアが町長と一緒に露天風呂へ。
その間に、フローレンスとクリスティーネは大猫様を露天風呂へ誘導。
ブリスと優真、そしてミウは大猫様にぎゅうっと抱きついて、安心安全を全身でアピール。
「こ、これは?!」
「この村の守り神、大猫様です。大猫様は、このように村の野良猫達に慕われ、人にも優しく、そのぬくもりを分けてくれているのです」
「なんと、そのような存在がいたとは」
唖然とする町長に、「湯冷めする前に、一緒に露天に浸かってみて」とフローレンスが促す。
おっかなびっくり、町長は大猫様の浸かる湯に足をつける。
すると、大猫様の尻尾がくるっと町長を巻き取り、一緒にお湯の中へ。
「これはこれは、ずいぶんと人好きの守り神様ですな!」
もっふりとした尻尾を撫でながら、町長はご満悦。
その様子に、フローレンスはほっと胸をなでおろす。
「共存共栄できるのは、素晴らしいことだわ」
それに何より、二人の妹の喜びようが、フローレンスには何より嬉しい。
(町長が帰られた後にでも、ゆっくり温泉につからせていただこうかしらね)
そんな事を思いながら、フローレンスは野良猫達をお湯がかからない場所へ玩具で誘導する。
大猫様は大胆だから、動くと水飛沫が飛ぶのだ。
そして勇雅は、空いたかけ湯へ浸かって見る。
(眺めが本当にいいですね。猫たちが傍にいてくれるのも)
じんわりと身体の芯から暖かさが滲み出し、肩にかかる湯は二日間の労働の疲れを一気に癒してくれそうだった。
依頼結果
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相談なのです。 志乃原・勇雅(ka1411) 人間(リアルブルー)|11才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/02/27 02:39:42 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/02/27 02:39:52 |