• 不動

【不動】BE SAVED

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/02/28 07:30
完成日
2015/03/07 06:48

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

「なに? 怠惰の歪虚が侵攻を再開したと?」
 帝国ユニオンAPVでエプロンをつけたヴィルヘルミナが険しい表情を浮かべた。隣ではタングラムがやはりエプロン姿でチョコレートを砕いていた。
 伝令にやってきたはいいが首を傾げていた兵士を帰らせるとヴィルヘルミナはエプロン姿のままやや思案する。
「あれで引き下がってくれるとは思っていなかったが……ふむ」
「また前線に向かうつもりですか?」
「ああ。最近は国内でもまたきな臭い動きはあるが、目先の歪虚との闘いに及び腰になっては本末転倒だ。気晴らしも少しは出来た。仕事に戻るとしよう」
 エプロンをばさりと剥ぎ取るとサーコート姿に戻る。そしてそのままAPVに集まったハンター達へ告げた。
「再び怠惰の歪虚が現れたそうだ。我々帝国軍も部隊を派遣する。ついては諸君らにも助力を願いたい」
 ハンターへ直接語りかけるヴィルヘルミナの姿を横目にタングラムはエプロンを畳みながら顎に手をやり思い悩む。
 先のマギア砦の闘いでは多くの戦士達が犠牲となった。別にそれは今更ではなく、これまでもずっとそうだったのだが……。
 歪虚がチンタラ侵攻しているから、時折ポンとヒマが訪れて、何となく少し平和になったような気がするだけ。
 この世界はずっと滅びに瀕していて、戦争の合間の平穏なんて一瞬で崩れ去ってしまう。そう、今のように。
「手の空いている者、腕に覚えのある者は今直ぐ私と共に来て欲しい。タングラム、この場に居ない者にも要請を頼む」
「……え? あ、了解です」
「どうした? また心配事か?」
 茶化すように笑うヴィルヘルミナにタングラムは苦笑を浮かべる。それから何かを確かめるように頷き。
「陛下。今回の作戦には私も同行させてください。私もハンター達と一緒に戦いたいのです」
「それは構わんが……君の仕事はユニオンを守る事だと言うのを忘れたわけではないのだろう?」
 頷くタングラム。そう、ユニオンリーダーというのはただ戦えばいいというものではない。このユニオンという場を管理する為の存在なのだから。
 しかしここ最近、タングラムは自分の立場を見つめなおすような事件に遭遇していた。
 いつまでもこのユニオンにいられるとは限らないのだ。そうなった時、ハンター達に何も伝えきれないままでは悔いが残ってしまう。
「私も私なりに考えているつもりです。今の私に伝えられる事はそう多くはありませんが、ハンター達の手本になれるよう、実際に剣を取らせて下さい」
「……ふむ。まあ、君の行動を制限するつもりはないよ。君は私の部下ではなく、あくまで中立なソサエティ側の人間なのだからね」
 こうして話はまとまった。タングラムが率いる部隊とヴィルヘルミナが率いる部隊、ハンターを二つに分けて闘うのだ。
 慌てて準備するハンター達の中、一人のハンターがタングラムへ歩み寄る。ここ最近色々あったという事は知っていたからだ。
「君も参加するのですか? いやはや、バレンタインどころではなくなってしまいましたね」
 苦笑するタングラム。見れば防具も武器も普段とは少し違う。年季の入った、木製とは思えない美しい武具だ。
「エルフハイム時代に持ち逃げしてきた装備です。手入れしながら革命戦争でも使ってきた物ですから、今回は本気モードという事ですね!」
 明るく笑うタングラムだが、ハンターはむしろ心配そうだ。
「別に死に急いでいるわけではないのですよ。ただ、私は私なりに今出来る事をして、皆に何かを伝えるべきだと思ったのです。長生きというのは皮肉なもので、これまでの日常が当たり前に続くように錯覚してしまう瞬間がある」
 もしかしたら、仲間であるハンターが命を落とすかもしれない。戦場に出ればタングラムとてその例外ではない。
 だがこれがハンターという仕事である以上、危険は避けられないのだ。ならば彼らを守り、共に闘う事で何かを伝えたい。
「終わりというのはいつでも唐突です。だからそれが来る前に、私は君たちをきっと強くしてみせる」
 握手を求め笑うタングラム。ハンターはその手を取り、力強く握り返した。



「総員抜刀! これより敵歪虚群を一掃する!」
 皇帝の号令と共に魔導アーマーも帝国兵も一斉に動き出した。
 タングラム率いるハンター部隊も同じだ。浅瀬を蹴り、水飛沫を上げながら巨人へ向かっていく。
「各員、互いを連携を意識して! 巨人相手にちまちま攻撃した所で効果的な打撃にはならない! まずは相手の動きを封じるのです!」
 帝国兵が次々に発泡し銃弾が巨人に着弾する。が、あまり効果はないようだ。
「遠距離攻撃は敵の顔を狙え! 目を潰せば攻撃性能は大幅に低減する! 近接攻撃は足を! 止めを刺すのは敵を止めてからです!」
 一緒に走りながらハンターは少し首をかしげた。なんかタングラム、口調がちょっと変わってるような……まあいいか。
「魔導アーマーを盾に射撃しつつ陣を組みなさい! 足の早い者は私と共に敵の背後へ! 近接攻撃班は自分が狙われている時は攻撃せず、互いを囮に交互に攻撃しなさい!」
 巨人の振り下ろす棍棒をかわし、股の間を潜りながら足を切りつけるタングラム。振り返ろうとする巨人へ向けたのはトンファーのような装備だ。
 引き金を引くと、先端に備え付けられたアンカーが射出される。巨人の背中に刺さってもダメージは見込めないが、もう一つのトリガーを引くとタングラムの体が空を舞った。
 引き寄せられながら走り、相手の腕に引っ掛け空中で回りこむと首筋に取り付くと同時に刃を突き立てる。
 血飛沫を上げる巨人から飛び降り水飛沫をあげ大地を滑る。軽く血を振るい首を擡げた。
「思い切り首を切ったのに、鈍感ですね」
 巻き戻したアンカーがトンファーに接続される。
 アンカートンファーは錬魔院が作ったガントンファーの改造型試作兵器だ。扱いにはコツがいるが、うまく使えば体格差を埋める手段になる。
 帝国兵が手投げ弾を放り、爆発が起こる。その間にハンターは帝国兵から大型のパイルバンカーを受け取り巨人へ駆け寄る。
 狙いは定石通り足だ。トリガーを引くと発射された杭が肉を引き裂く。それだけではない。五秒後、杭は青い光を撒き散らし爆発したのだ。
 ブラストパイクという、こちらも試作兵器だという。対巨人戦に使えそうなものをカールスラーエの実験場から借りてきたのだ。
「敵増援更に出現! どんどん集まっています!」
「慌てずに各個撃破します。敵はどうせ烏合の衆……仕留め方等幾らでもありますから」
 二対の刃を手の中でくるりと回転させ、タングラムは息を吐く。
「行きましょう。そして必ず……全員、生きて帰ります」
 こんな所で死ぬのはごめんだ。ハンターも武器を握り締め、タングラムに続く。
 必ず生きて帰ろう。きっと待っている仲間の為に、そして何より、自分自身の未来の為に――。

リプレイ本文

●2
「状況開始だ――行こう」
 タングラムと共に派遣されたAPVハンター達は三箇所の防衛地点を設定。
 敵の数は多く、どこからでも向かってくる。柔軟な対応は求められるが、役割を分担する事は必要だ。
 キヅカ・リク(ka0038)の声に続き、タングラムとパープル(ka1067)が前に出る。
 タングラムはマテリアルを帯びると一気に複数の巨人の中へ飛び込む。当然敵は慌てて棍棒を振り下ろすが、タングラムはそれらをあっさり回避。
「うわ、凄い動き……そして隙だらけだ」
 こちらを向いている巨人へ手裏剣を投げつけるキヅカ。狙いは顔で、正確に大きな目を貫く。
 残りは此方を見ていない。パープル(ka1067)はアンカートンファーで巨人の首筋へ取り付く。
 違和感に暴れる巨人に対し、パープルは短剣を突き刺し両足を踏ん張って耐える。かなり余裕を持ってブラストパイクを構えると引き金を引いた。
 飛び降りるとほぼ同時、杭が青い光を巻き上げた。首を抉られた巨人が倒れこむ。
「ブラストパイク、使えそうですね」
「中々タフな戦場だが、俺達が退いたら大変な事になっちまう」
 別の巨人がパープルへ棍棒を振り下ろすが、他のハンター達が遠距離攻撃で支援。魔法や矢が降り注ぐ。
「体の張りどころだ。俺の事は存分に使ってくれ。頼りにしてるぜ、少年」
「こちらこそ」
 ウィンクするパープルにキヅカは頷き返す。

「これは生きて帰るまで禁煙だなァ。行くぜ野郎共! ここが正念場だァ!」
 シガレット=ウナギパイ(ka2884)に続き、仲間達が次々に遠距離攻撃を放つ。
「グラたんだけではなく、ウナギパイさんもやる気に満ちてるね」
「南條……お前はもうちっとやる気出せ」
「人聞きが悪いなぁ。この南條さんの体から溢れ出るやる気がわからないのかい?」
「私も、一生懸命、頑張ります。目に見えるやる気は、ないかもしれませんが」
「……いやァ、普通やる気は目に見えねェから気にすんな」
 南條 真水(ka2377)は機杖に光を収束させ、ミオレスカ(ka3496)は目を見開き、遠き巨人に狙いを定める。
 次々に繰り出される遠距離攻撃が巨人の行動を阻害する。シガレットはAPVハンターの指揮も取り、火力を集中させていく。
「歪虚に、イニシアチブは、渡しません。どんどこ、速攻、です」
 引き金を引きまくるミオレスカ。流石に攻撃が鬱陶しくなったのか、巨人の一体は持っていた棍棒をこちらへ思い切り投擲してきた。
「チッ、下がってなァ!」
 盾を構え前に出るシガレット。その時、側面から放たれた鉄球が棍棒を大きく弾き飛ばした。



●4
「チークタイムだ、踊ってろ!」
 近衛 惣助(ka0510)は接近する巨人に銃を連射し威嚇する。そこへAPVの機導師が機導砲の光を顔目掛けて放った。
 白神 霧華(ka0915)は左右の手に一つずつアンカートンファーを装備、それを手の中でくるりと回す。
「前に出ます。援護はお願いしますね」
 駆け出した霧華にΣ(ka3450)が続く。巨人が振り下ろす棍棒をかわし、二人はアンカーを射出する。
 アンカーに巻き取られながら地べたを滑る霧華。敵はそれを打ち返そうと棍棒で薙ぎ払うが、霧華はもう片方のアンカーを別個体へ打ち込み、急制動で空へ舞い上がった。
 空振りに終わった攻撃の隙にΣがアンカーで取り付く。霧華は背負っていたブラストパイクを片腕で構えると、取り付いた巨人の背中に打ち込んだ。
 更にΣは霧華が飛び降りると、別の巨人から霧華が乗っていた巨人に跳躍。顔を切りつけながら着地を終える。
「集中攻撃だ! あのデカブツの顔を整形してやれ!」
 惣助と聖導士、機導士が同時に放ったマテリアルの光が巨人に着弾。更に闘狩人がブラストパイクを打ち込み巨人を転倒させる。
「持ってきたぞ!」
 闘狩人が投げ渡したのは霧華の刀だ。重すぎるブラストパイクを放り投げ刀を抜いた霧華は倒れた巨人の首を力いっぱい斬りつけた。
「ふうっ。次から次へときりがありませんね」
「状況はこちらが優勢だ。俺達も少し戦線を上げていこう」
 駆け寄ってきた惣助の言う通り、戦況は人類優位に進んでいる。周囲の戦場から敵の増援も懸念されたが、どうやら他の戦場でも人類側が優勢らしい。

「死にたいヤツから前にでろ! 望み通り地獄に送ってやらァ!」
 発砲しながら叫ぶシガレット。彼らの傍には魔導アーマー兵が同行し、盾の役割を果たしている。
「帝国兵さん、ありがとうございます」
「なに、ハンターからの指示に従ってるだけさ」
「これなら、攻撃に、集中出来ます。私も、そろそろ、一人前のハンターとして、頼ってばかりは、いられません」
 シガレット、真水、ミオレスカ達は遠距離攻撃で前線で戦う仲間を援護する。目や足を負傷した個体を魔導アーマー部隊が次々に屠っていく。
 たまにこちらに敵が来ても魔導アーマーが防御してくれる間に一斉攻撃で倒す事が出来る。皆ほどんど負傷はない。
「吶喊は皇帝さんたちがやってくれるみたいだし、こっちは向こうからこぼれたのを確実に処理していこうか」
 真水は肩掛けで背負ったブラストパイクを重そうに背負い直しながらのんびり笑う。
「それにしても、すごい、混戦です。シガレットさん、あそこの帝国兵さん達、怪我してるみたいです」
「ついでだ、味方の治療もしながら前に出るかねェ」
 負傷した帝国兵に襲いかかる巨人へ側面からミオレスカの弾丸が着弾する。続いてAPVハンター達が前に出ると、その隙にシガレットは帝国兵へ駆け寄りヒールを施す。
「うっ、すまない……」
「なァに、お互い様よ。ついでだ、一緒に行こうぜ」

「状況、かなり有利だね。このペースなら皇帝の部隊はもう河での戦いに入ると思う」
 倒れた巨人の上に立ったキヅカはトランシーバーを片手に呟く。あらかた渡河済の巨人は始末してしまったようだ。
「俺達には鋼鉄の守護者と勝利の女神がついてる。これで負けるようじゃ格好つかないぜ」
 白い歯を見せウィンクするパープル。二人のチームにはタングラムが同行している。その戦闘力は非常に高く、また支援も的確だ。
 タングラムを囮にしても、タングラムにアシストさせても巨人を手球に取って闘える。
「後は火力の問題だね」
 そこへ後方から一台の魔導トラックが走ってきた。ドリフト気味に停車したそこからAPVハンターが降りてくる。
「おかわり持ってきたぜ!」
「ありがとう。後方に変わりはない?」
「他の戦域でも大体優勢みたいだ。後方への敵影はないぜ」
 頷きながら装弾済みのブラストパイクを受け取るキヅカ。リロードには工兵の技術が必要なこの武器だが、工兵を前に出さず、車で輸送するという安全策を講じていた。
「タングラム、まだ行ける?」
「勿論です。このまま陛下の部隊を支援しますよ」
 並んだブラストパイクを両腕にがしりと掴むパープルと仲間達に目配せし、キヅカは頷くと走り出した。



●6
「凄いな。行くつもりみたいだ」
 走りながら呟くキヅカ。皇帝達は敵を倒しながら渡河を開始する。
 完全に渡り切るには水深やルートも考える必要があるが、ひとまず河の敵は片っ端から潰していくらしい。
「敵も腰が引けています。今のうちに食えるだけ食っておきましょう」
「自由を守る為だ。歪虚の巨人共には、ここでご退場願おう」
 タングラムは巨人の振り下ろす攻撃を回避、腕を駆け上がり空中を回転しながら鋭く巨人の顔を斬りつける。
 そこへパープルがブラストパイクで足を吹き飛ばし転倒させると、キヅカは一瞥し次の敵へ向かう。
「止めは刺さなくても後続に任せて構わないだろうね。どんどん行こう」
 アンカーを敵の足元に打ち込み、飛沫を上げながら滑るキヅカ。敵の足元に着くのに合わせ、タングラムが短剣を投げつけ巨人の目を潰す。
「うーん。流石ユニオンリーダーというか……」
 怯んだ敵の首にアンカーで移動。ブラストパイクを放ち、更に別個体へアンカートンファーで移動する。
 二体の巨人に迫られたキヅカは使用済みのパイクを投げ捨て、アンカーを打ち込んだまま巨人の首をぐるりと周り、アンカーで首を締める。
「これで死ぬとも思えないけど」
 そこへ巨人達が棍棒を振り下ろす。狙いはあくまでキヅカだが、キヅカは巨人の頭の後ろにいるので、棍棒は巨人の頭をガツンと叩きつけた。
「これでも死ぬとは思ってないけど」
「少年、こいつを使え!」
 車からリロード済みのパイクを二つ持ってパープルが走ってくる。着地したキヅカは投げ渡されたパイクを慌てて受け取り、二人別々の個体を吹き飛ばした。

「さすがは、タングラムさん、ですね。あの動き、目を見張ります」
「素朴な疑問なのだけれど、あの戦闘力ってユニオンリーダーの業務に必要なものなのかい?」
「いやそんな事よりも……ミオレスカ。それどっから持ってきたんだァ?」
 腕組み思案する真水の背後、ミオレスカは魔導アーマーに乗っていた。
「予備機を、届ける途中だったと、言われました。人手が足りないので、と」
「……ま、まあいいかァ。俺達についてた奴は損傷して撤退しちまったしなァ」
 アーマーを操縦したミオレスカはそのまま巨人に物凄い勢いで体当たり、というか衝突する。
「何やってんだァ!?」
「今、マニュアルを、読みますので」
「今ァ!?」
 とは言え巨人は転倒している。真水は倒れた巨人の顔に乗り、ブラストパイクを突きつけた。
「ずっと背負って疲れたし、そろそろ手放したかったんだよね」
 引き金を引くと杭が巨人の顔面を貫き爆発する。同時に真水も背後に吹っ飛び、浅瀬に倒れこんだ。
「うぅ……メガネ、メガネ……」
「何やってンだお前らは……」
 冷や汗を流すシガレット。そこへまた新たに巨人が二体迫ってくる。
「もう魔法が……」
「スキルが使えなくなった奴は俺の銃を使いなァ。ミオレスカ、動けるか!?」
「大体、わかってきました」
 近づく巨人へパイルバンカーを繰り出す。それに伴いシガレットやAPVハンター達が銃撃を行う。
「ウナギパイさん張り切ってるなあ。あともう少しみたいだし、南條さんも頑張ろう」
 機導砲を放ちながらぼやく真水。敵の数は目に見えて減っている。あともう少しの辛抱だ。

 魔導アーマーの上に着地した霧華は巨人の攻撃を盾で受けさせると再び舞い上がった。
 補給車が来るまでブラストパイクは使えない。手元にあるのはアンカートンファーと自前の刀だけだが、霧華はその機動力で敵を翻弄していた。
 巨人の中を飛び回れば、鈍重な巨人はお互いに攻撃を誤射したりする。そこへ惣助ら後衛が遠距離攻撃で隙を作れば、近接攻撃も容易くなる。
「そう簡単にやられてあげるつもりはありませんよ!」
 マテリアルを帯びた刃を首筋に打ち込めば、ブラストパイクがなくとも巨人は倒せる。Σもアンカーで巨人に取り付き、太刀を突き刺したまま走り抜け巨体を切断する。
「大丈夫か、しっかりしろ! こいつの治療を頼めるか?」
 負傷した帝国兵に肩を貸しながら惣助はアサルトライフルを放つ。APVの聖導士は言われた通り帝国兵を治療する。
 ブラストパイクの補給車両が来ると、受け取りついでに負傷兵も車に乗せて避難させた。
「白神さん、ブラストパイクだ!」
 惣助の呼びかけに戻る霧華。ブラストパイクを回収する間は魔導アーマーや帝国兵、惣助が援護する。
「蜂の巣になりたい奴から来い! 俺がいる限り進ませんぞ!」
 狙いすました一撃で巨人の目を潰し、そして棍棒を持った手を撃ち武器を落とさせる。霧華はブラストパイクを担ぐと、アンカーを使って跳躍した。
「折角の新兵器です、有効に使わせていただきます!」
 攻撃も出来ない巨人の胸にアンカーで取り付くと、ぶら下がったままブラストパイクを突きつける。
「頑丈さは分かりましたが、心臓ならばどうです?」
 発射と同時に反動で舞い上がるが、空中を回転しながら地面にアンカーを撃ち、急降下する。水飛沫を上げて着地すると巨人の胸でパイクが爆発した。
「見ろ。奴ら引き返し始めたぞ」
 水の滴る前髪をかきあげながら霧華が目を向けると、惣助の言う通り、巨人達は渡河を中断し対岸へ引き返し始めていた。
「諦めた……という事でしょうか?」
「周囲に目立った敵も居ない。一先ず皆と合流し、次の行動の指示を仰ごう」



●7B
「えーと、見ての通り敵は撤退を開始しました。が、まだナナミ河の対岸にそれなりの規模の部隊が見えます。これをこのまま叩く事になりました」
 一旦河を上がったハンター達は皆疲れきっていた。かくいうキヅカも水浸しの泥まみれで、声には覇気がない。
「うぅむ……タフな決断だな」
「このまま向こう側に渡って敵を叩くって事ですか? 私は構いませんけど、少し休憩が欲しいですね」
「他の戦域でも勝利が収められているので、増援が見込めます。彼らと合流するまで一旦急速を取り、足並みが揃い次第渡河を開始。対岸の敵を殲滅し、安全域を確保するそうです」
 指示書から顔を上げ、パープルと霧華を交互に見やるキヅカ。周囲では魔導アーマーの応急処置や兵士の治療に加え、新たに駆けつけた増援への状況説明が行われている。
「束の間の休息……だね」
「すっかり、お腹がすきました」
「何か食べる物がないか聞いてくるよ」
「では、負傷者さんを、運んで、待ちますので」
 息を吐く真水。ミオレスカと惣助は連れ添って臨時拠点に歩いて行く。
「ふぅ。もうちっと禁煙が続きそうだァ。……どうした南條、少しは座って休んでおけ」
「彼らにとってもささやかな平穏というわけだ。怠惰というからには、普段は寝ているんだろうにね」
「勝手に起きて押し寄せたのは奴らだろうが」
 シガレットと真水のやりとりを他所にキヅカはタングラムを眺めていた。ヴィルヘルミナと向き合い、今後の動きを相談しているようだ。
「勝利の女神に見惚れたかい、少年?」
「まさか」
 視線を反らし、キヅカは歩き出す。
「すぐ次の戦いになります。休んでおいた方がいいですよ」
 肩を竦めるパープル。言われるまでもなく疲れきっている。シガレット達の傍に近づくと、どっかりと腰を下ろした。

 渡河攻撃の指示が下ったのは間もなくしてだったが、増援の勢いもあり、ハンター達が無理な戦いを強いられる事はなかった。
 対岸に屯していた巨人達も人類軍の追撃を受けると次々に四散し、人類は渡河を終え、この場における勝利を掴むのであった。

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MVP一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸ka0038
  • 不屈の鬼神
    白神 霧華ka0915
  • 紫煙の守護翼
    シガレット=ウナギパイka2884

重体一覧

参加者一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • 双璧の盾
    近衛 惣助(ka0510
    人間(蒼)|28才|男性|猟撃士
  • 不屈の鬼神
    白神 霧華(ka0915
    人間(蒼)|17才|女性|闘狩人
  • 紫色の狩人
    パープル(ka1067
    人間(蒼)|30才|男性|闘狩人
  • ヒースの黒猫
    南條 真水(ka2377
    人間(蒼)|22才|女性|機導師
  • 紫煙の守護翼
    シガレット=ウナギパイ(ka2884
    人間(紅)|32才|男性|聖導士

  • Σ(ka3450
    人間(蒼)|17才|男性|疾影士
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 質問卓
鬼塚 陸(ka0038
人間(リアルブルー)|22才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2015/02/27 23:37:10
アイコン 相談卓
鬼塚 陸(ka0038
人間(リアルブルー)|22才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2015/02/28 04:13:15
アイコン 連動先との交信記録
白神 霧華(ka0915
人間(リアルブルー)|17才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2015/02/26 19:12:55
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/02/23 00:29:41