●猛吹雪に霞む森の中
　猟師・オズワルドは生きていた。ただし、辛うじてである。
　彼が猟師として山に入るようになってからもう30年にはなるが、これほどの猛吹雪は体験したことが無い。視界は全くと言っていいほど利かず、道は消え、景色は白一色に染まった。なんとか下山しようとしたが、雪が腰まで積もったところで諦めた。現在彼は、適当な木の根元に穴を掘ってビバークし、じっと目を閉じて体力の消費を抑えている。
　おそらく既に夜だろう。しかし吹雪の音は続く。
　何時間そうしていただろうか。オズワルドの耳に、彼の名を呼ぶ声が微かに届いた。冷え固まった手足をもぞもぞと動かし、泳ぐように雪上へ出る。吹雪続けてはいるが幾分かはマシになったようで、東の空を染め上げ始めた朝日によって、昨日よりほんの少しだけ遠くまで見渡せるようになっていた。オズワルドの目に映ったのは、白一色の雪原の彼方に揺れる、数個の灯りだった。
　私を助けに来たのだ――助かった！
　そう確信し、深く息を吐くオズワルド。おそらく猟師仲間たちが自分を捜しに来たのだろうと。はたして、その想像は当たっていた。彼の猟師仲間５人は、帰りの遅いオズワルドがこの悪天候で遭難したと判断。装備を整え、日が出ると同時に捜索を開始したのだった。オズワルドは天候の悪化後、無理に下山しようとせずにその場でビバークすることを決めた為、通常の狩猟ルートから大きく外れるようなことはなかった。これが功を奏し、早々に仲間と巡り合えたのである。
　そうと決まれば、早く仲間に合図を送ろうと、オズワルドは完全に外へ出て、声を上げようとした――その時だった。
　それは雪の中から忽然と出現した。身の丈３～４メートルはあろうかという巨大な影だった。影はその太い腕を振り回し、突然のことに慌てふためく猟師たちを打ち据え、薙ぎ払う。１人が猟銃を構え、吹雪の中に銃声が木霊する。しかし影はものともせず暴虐の限りを尽くし、猟師たちを蹂躙すると、再び雪の中へ見えなくなった。
　揺れる灯りは完全に消えた。
　ただ茫然と遠くの様子を眺めているしか出来なかったオズワルドは、鼻息荒く再び雪の穴へ潜った。たった１つの武器である愛用の猟銃を強く抱きしめ、震えながら外界の音に耳を傾ける。
　寒さが深々と、彼の身体を侵していく――

●オフィス
「朝早く集まっていただいてすみません。しかし今回の依頼は急を要します。説明の終了後、皆さんには現場に急行していただきます」
　慌ただしくやってきた職員は、早口で告げる。
「依頼人は北の村の若い猟師・スコット氏。その方の情報によると、彼の父親であり同じ猟師であるオズワルド氏が、昨日から山で行方不明になっているそうです。山は昨日から大吹雪に見舞われており、おそらくその影響で下山が出来ない状況にあると思われます。皆さんの任務は、オズワルド氏の発見、及び救助です」
　職員はハンター達を見回しながら、ただし、と告げる。
「つい数時間前、今日の早朝未明に、依頼人を含む５名の猟師がオズワルド氏の捜索に向かったそうなのですが、そこで『巨大な氷の怪物』の襲撃を受け、２名が死亡。２名が重傷。依頼人も軽傷を負い、捜索は中止になったそうです。怪物は人型をしており、全身が強固な氷で構成され、猟銃も全く通じなかったとのことです」
　ハンター達の表情が険しくなった。これはただの人名救助ではないことを理解したのだ。
「怪物がアイスゴーレムの類だとしたら、かなり手ごわい相手です。しかも山は未だ吹雪が吹き荒れ、柔らかい雪が２メートル近く積もっている。オズワルド氏は既に遭難してから十数時間が経過しており、時間との戦いでもあります。かなり厳しい任務になると思われますが、お願いしてもよろしいでしょうか」
　職員が尋ねると、ハンター達はもちろんだとばかりに首を縦に振った。
「防寒具はこちらで上下用意してあります。では、ご武運を」
　職員が一礼すると、ハンター達は力強く応え、転移門へと駆けだした。

●吹雪の行軍
　ハンター達は、白く霞む吹雪の中を進んでいた。こちらが遭難してしまわないよう、お互いの姿が確認できる距離を保っている。ソリ、それを引く犬達と馬、その御者を務めるBridget・Ｂ(ka3117)を囲むように、周囲を警戒しながらの前進だった。
　山に入って数十分、今のところは敵の姿は無い。
「想像以上に雪が深いね。歩くのも大変！」
　エリス・ブーリャ(ka3419)が一歩ごとに膝まで埋まってしまう雪に苦労し、よいしょよいしょ言いながら引きぬいて白い息を吐く。鳴神　真吾(ka2626)が肩に積もった雪を掃いながら呟いた。
「こんなところで敵に遭遇したくはないし、捜索も時間がかかる。畜生！　時間との勝負だってのに！」
「ソリが作れなければどうなっていたか……考えるとぞっとしますわね」
　Bridgetが乗るソリは、村にあった荷車と、大きめのスキー板を組み合わせて作った即席の物だ。ここまでの大雪はこの地方では異常であり、専用の犬ゾリは無かったのだ。とはいえソリは、荷物を積んでも問題なく進んでいる。これならばオズワルド氏を収容しても大丈夫だろう。
「敵が出現した地点までは、依頼人達が捜索しているのよね」
　シエラ・Ｒ・スパーダ(ka3139)が白銀の世界に目を凝らす。
「出現地点はどのあたりなのかしら」
「もうそろそろのはずッスよ」
　フレン・ガーランド(ka3847)が、あらかじめ作成しておいた地図と睨めっこしながら言った瞬間だった。
　カレン・ラングフォード(ka3622)は自分の足元が、不気味に蠢くのにいち早く感付いた。即座にその場を離れようと、地面を強く踏みしめる。しかし彼女の足は、踏み込めば踏み込む程、深く積もった新雪に飲み込まれていく。
「なっ……！？」
　慌てて引き抜こうとするも、重い雪がまとわりつき思うようにいかない。地中で蠢いていた巨大なものは、そのままカレンと雪を撥ね飛ばしながら雪上へ姿を現した。
　身の丈４メートル近く。燃え立つような冷気を纏った氷像である。氷同士が擦れるぎしぎしという音を不気味に響かせながら巨大な石柱のような四肢を振るい、積もった雪の中から這い出てくる。アイスゴーレムだ。
「大丈夫か！」
　真吾がカレンのところに駆け寄る。空中に５メートルほど跳ね上げられたカレンは落下の勢いで半分雪に埋まっていたが、大きなダメージも無く、雪から這い出てきた。
「大丈夫……雪が柔らかかったからクッションになったわ。そんなことより敵は――」
　一方のアイスゴーレムは、カレンへの追撃はせず、ターゲットをBridgetと、彼女の乗るソリに移した。突然の襲撃に混乱する動物たちを宥めていた彼女は回避行動をとれず、ソリは止まったままである。アイスゴーレムは一歩一歩近づき、緩慢な動きで腕を振り上げた。カレンは声を上げる。
「まずいわ……ソリを守って！」
「あいあいさーっ！」
　飛び出したのはエリスである。ソリの前に立ちはだかり、ゴーレムの拳をシールドで受けた。アイスゴーレムは拳を弾かれ、後ろによろめく。
「このコンディションじゃ出し惜しみなんてしてらんないね！　真吾ちゃーん！　敵出たんだからもーここで二手に分かれよーよ！」
　オズワルド氏を発見する前に敵と遭遇した場合は二手に分かれ、捜索班は山中でオズワルド氏の捜索。戦闘班は囮となって敵を足止めし、可能ならば撃退する、ということになっていた。真吾が力強く頷く。
「よし！　ではアイスゴーレムは私達が引き受けた！」
「こちらも準備OKですわ」
　馬と犬を落ち着かせたBridgetが手綱を握る。既に荷台に乗っていたフレンがエリスを急かした。
「エリスさんも早く乗るッス！　またゴーレムに狙われる前に！」
「はいはいっと！」
　エリスがソリの後ろに乗ったのを確認し、Bridgetは手綱を振るった。ソリは猛スピードで木立の中へ離れていく。
「さて――アイスゴーレム！」
　真吾はアイスゴーレムを正面から指さし睨みつける。
「雪山の平和を乱し、猟師の命を奪った貴様の悪行、許さんッ！」
　彼の身体を、ヒーローの幻影が包み込む。ゴーレムは真吾の動向に気を取られている。どうやら完全に捜索班のことは意識の外になったらしい。真吾はそれを察し、得意げに名乗りを上げる。
「機導特査！　ガイアードッ！　ゆくぞ！」
　剣をゴーレムの脚に突き立てる。だがその硬質な氷は刃を通さず、表面に僅かな傷をつけただけだった。対するアイスゴーレムは、懐に入った真吾を腕で薙ぎ払おうと、右腕を振り上げた。
「させないわ」
　シエラの魔術によって顕現した石つぶてが、振り上げた腕に命中。アイスゴーレムの右腕は、振り下ろされることなく弾かれた。さらにカレンの魔導銃が火を噴く。炎の如く煌めく弾丸はアイスゴーレムの胴体に命中。白い蒸気が立ち上り、ジュウウウウという音が雪山に響く。
「火が通じればいいのだけど……」
　カレンがそう呟く。やがて蒸気が吹雪に消えると、そこにはアイスゴーレムの健在な姿。カレンの銃撃が命中した胴体の表面は僅かに融解し、てらてらと光っているが、すぐに再び凍りついていく。
　アイスゴーレムは、シエラとカレンを無視して、目の前で剣を振るう真吾を再び狙った。
「来るわよ！」
「ぬおっ！」
　カレンの注意を聞いた真吾はすぐさま回避に移ろうとしたが、やはり足元は新雪。飛び退こうと踏ん張った先から雪に埋もれて抜けなくなってしまう。仕方なく真吾はゴーレムの殴打をシールドで受けた。アイスゴーレムのパンチは、彼を易々と雪から引っこ抜き、体ごと数メートル吹っ飛ばした。さらに追撃しようとするゴーレムの前にカレンが出る。スキルを使用することで、雪上でもなんとか通常程度のスピードを維持出来ている彼女がゴーレムを翻弄しつつ、遠距離からシエラが攻撃を放つ。
「まだいけるかしら？」
　シエラに声を掛けられ、真吾は立ち上がる。
「ああ勿論……この程度、ヒーローにはどうってことはない。だが、一撃が重いな。しかも足元がこれでは、奴の動きが遅いとはいえ避けるのも難しい」
「もうそれなりにこちらの攻撃は命中しているけれど、明確にダメージを受けている様子も無いわ。いずれにせよ、このままではジリ貧ね」
「捜索班が、一刻も早くオズワルド氏を救出することを祈ろう」

●救助隊
「多分、狩猟ルートからそんなに外れてないと思うんだよねー」
　エリスが考える。
「遭難したときに無暗に動いちゃいけないのは絶対分かってると思うからさ。んでこの猛吹雪から身を守る為に、どっかに穴掘って隠れてると思うんだよねー。洞窟なんかもなさそーだし」
「では、狩猟ルート沿いの大きな木の根元などが怪しそうですわね？」
　Bridgetの言葉に、エリスは頷いた。フレンが問いかける。
「じゃあ、もしオズワルドさんが道が分からなくなっちゃって、ルートから外れちゃってた場合はどうするッスか？」
「そーなったら――」
　エリスは渋い顔をした。
「――絶望的だね。そんなに大きい山じゃないとはいえ、隅から隅まで捜索するのは流石に時間がかかるし」
「うう……オズワルドさーん！！」
　フレンが大声を張り上げた。吹雪の音にかき消されないよう、何度も何度も木立へ呼びかける。さらにエリスとBridgetも加わり、フレンの地図に描かれた狩猟ルートに沿って、木の根元をチェックしつつ進んでいく。
　先程のアイスゴーレムを戦闘班が倒すことが出来れば、魔導短伝話で連絡が来るはずだ。それが無いということは、あちらも苦戦しているのだろう。オズワルド氏の体力が持つかどうかというのも勿論あるが、敵の注意を引いてくれている戦闘班の為にも、いち早くオズワルド氏を見つけなければならない。
　どれだけ呼びかけていただろう、フレンの耳が何かを捉えた。
「ちょっと静かに！　……何か聞こえたッス」
　３人で耳を澄ませる。荒れ狂う吹雪の中で、パーンという破裂音が確かに聞こえた。
「これ……銃声ッスよね？」
「ラングフォード様の魔導銃とは違う……おそらく猟銃のものかと」
　Bridgetが冷静に分析する。この天候の中で山に入ってくる猟師が居るとは思えない。つまりこの銃声は、オズワルド氏の猟銃のものに違いない。
　３人は銃声の聞こえた方角へソリを走らせた。銃声は数十秒ごとに響き、その度に進行方向を修正する。オズワルド氏に３人の呼び声が届き、もはや応答する体力も残されていない彼の「私はここにいる」という返答なのか。それとも彼に限界が近づき、最後の望みとして銃声が誰かに届くことに賭けているのか。いずれにしてもオズワルド氏には時間が無い。しかし、彼は生きている。白い世界に響く銃声が、３人を焦らせ、同時に希望を抱かせた。
「多分この辺ッスけど……」
　ソリを停め、雪原に降り立つ。耳を澄ましても、銃声は聞こえない。弾が尽きたのか、それとも――
「……あっ！　あれあれ！　見てあれ！」
　エリスが一本の大木の根元を指さした。雪原から黒い棒が突き出ている。猟銃の銃身だ。そこを、フレンがスコップで丁寧に掘り起こしていく。少し掘ると、人ひとりが入るだけの空洞に、ひげを蓄えた男性が蹲っていた。
「オズワルドさん！？　オズワルドさんッスか！？」
　フレンの呼びかけにも答えない。まだ息はあるが、意識が無いようだった。Bridgetが、ソリを見張っていたエリスに声を掛ける。
「荷台に気付け用のブランデーがありますので、取っていただけますか？」
「ほいほい。あ、飲ませたら逆に血管広がって体温奪っちゃうから、嗅がせるだけね」
「弁えておりますわ」
　Bridgetは酒瓶の栓を抜き、男性の鼻先に持っていって匂いを嗅がせた。すると彼の身体がピクリと反応し、薄く眼を開けた。
「御気を確かに。オズワルド様でいらっしゃいますわね？」
　Bridgetの問いかけに、彼は微かに頷いた。
「もう大丈夫ですわ。貴方様を救助しに参りました」
　その後、オズワルド氏にチョコレートを与え、少しでも体力の回復を図りつつ、Bridgetとフレンで協力して彼の濡れた服を脱がせ、体を毛布で包む。その作業中、オズワルド氏が絞り出すように言った。
「――……スコットは…………息子、は……」
「大丈夫ッス！　息子さんは無事ッスよ！　依頼をくれたのもスコットさんッス！」
「……そうか…………」
　彼は安心したように息を吐いた。
　３人でオズワルド氏の身体をソリに載せると、フレンが魔導短伝話でシエラに連絡を取り、オズワルド氏発見と今から一直線に村へ向かう旨を報告した。
「では、飛ばしますわ」
　Bridgetが手綱を振るうと、ソリは弾かれたように山を下り始めた。

●氷の巨人
「オズワルド氏を発見したと連絡があったわ。今から山を下るそうよ」
　フレンから報告を受けたシエラがそう真吾に告げた。
「そうか！　ならもうひと踏ん張りだな！」
　戦況はあまり変わっていなかった。真吾とカレンが交代で前衛を務め、シエラが後方から魔法攻撃で援護を続ける。３人ともそれなりにゴーレムの攻撃を受けていたが、前衛で敵の攻撃をシールドで受けるしかない真吾が最もダメージが深刻だった。スキルでなんとか動けるカレンが前衛に居る隙に、回復を試みている。
　３人は既にアイスゴーレムの討伐は不可能と判断していた。このまま敵の注意を自分たちに集め、捜索班がオズワルド氏を連れて脱出できるまで持ちこたえられれば成功だ。
「ただこのままだと捜索班の脱出ルートとぶつかる恐れがあるわ。もっと西側に敵を誘導しましょう」
「そうだな。カレン！　交代するぞ！」
「分かったわ！」
　カレンはアイスゴーレムの大振りな蹴りを、事前動作から読んで紙一重で躱し、距離を取りつつ軸足を銃撃。ゴーレムがよろめいた隙に真吾と位置を交代した。下がってきて息を整えている彼女に、シエラは援護攻撃を続けながらオズワルド氏発見の報を知らせる。
「そう、良かった……。敵の攻撃は予備動作の大きい打撃だけだから躱しやすいけれど、足元も不安定だし余計に力を使うから、かなり限界が近かったの」
　ある程度呼吸を整えてから、カレンも援護射撃を開始した。アイスゴーレムを少しずつ、少しずつ脱出ルートから遠ざけていく。数分後、山頂方面の林の中から、ランタンの光が見え隠れし出した。捜索班の犬ゾリだ。シエラが気づいて声を上げる。
「来たわ！　こちらに引き付けて！」
　真吾とカレンが、これが最後とばかりに前に出て、捜索班の通る側と反対方向から敵に猛攻を加える。これに付き合ったアイスゴーレムの背後を、Bridgetの繰る犬ゾリが猛スピードで通過していった。そのまま戦闘区域を離脱していく。
「よっしゃー！　万事おっけー！　救出は成功だよ！」
　ソリからひらりと飛び降りたエリスが、戦闘班に合流してきた。
「こっちは苦戦してるっぽい？」
「救出が完了したならば、私達も撤退するわ」
　シエラが答える。
「前衛の２人はかなり消耗しているわ。私達が殿となって、まず２人を先に」
「おーらいおーらい！」
　エリスが前に出る。真吾とカレンの前に躍り出て、ゴーレムの一撃をシールドで阻む。その間に、２人はなんとか戦闘区域を脱する。続いて残った２人も、シエラの魔法攻撃とエリスの機導砲で牽制しつつ後退する。どうやらゴーレムはある程度離れると追っては来ない様子で、無事全員が雪山から撤退に成功。オズワルド氏を伴っての村への帰還を果たしたのであった。

●数日後
　ハンター達が、亡くなった猟師たちの墓に花を供えていると、依頼人であるスコットがやって来た。
「本当にありがとうございました！」
　そう何度も礼を言う彼の話では、彼の父・オズワルド氏はなんとか一命を取り留め、徐々に回復しているとのことであった。
「元気になってまた山に入れるようになったら、皆さんに獲った獲物を贈るって張り切ってましたよ」
　どうやらオズワルド氏は、まだまだ現役を退く気は無いらしい。その心強い豪胆さに、ハンター達は一安心といったところであった。
　ちなみにあの救出劇の翌日、吹雪は嘘のように止んだ。後日ハンターズソサエティから改めてアイスゴーレムの討伐隊を送ることになっていたのだが、吹雪が止み、雪が融けると、あのゴーレムの巨体は影も形も無く、もう出現することはなかった。異常な猛吹雪と、それに伴うゴーレムの出現、そして突然の消失――最初から最後まで謎の多い事件であった。
　しかし、ハンター達の活躍により、１つの命が救われたことは紛れも無い事実である。
　ハンター達は、もしまた何かあったら必ず駆け付けることをスコットに約束し、また新たな事件に立ち向かうべく、村を後にした。