ゲスト
(ka0000)
マダムの冒険
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/03/09 22:00
- 完成日
- 2015/03/14 18:46
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●マダムの思い出
居間に一人たたずむ喪服の老婦人はつぶやく。
「あなた……あの子の方が先に逝ってしまったのよ。あの子は歪虚から私たちを守ってくれたのかもしれないけれど……寂しいわ」
居間の暖炉の上におかれた古びた兜を見つめる、そこに語る相手である夫がいるように。
王国に歪虚が押し寄せたとき、長男は領地にとどまり、次男が戦場に向かった。
領内は多少の混乱はあったがひどいことにはならず、家族はみな次男の帰りを待ちわびていたが、戦闘で命を落としたという知らせが伝えられた。
彼女の悲しみは深かった。そして、次男の残された妻と生まれて間もない子を不憫にも思った。
「これからどうしたらいいのか、迷うの」
長男が見ている領内は、何もなければ平穏であろう。次男の妻がとどまりたいと言うなら、面倒見ることも可能である。
しかし、歪虚の動き、国内の政治の事、不安定要素が多く存在している。
「何もできない私……あなたがいたからやってこれたのよね」
くすっと老婦人は兜に笑いかける。
「デートと称して、夜に出かけたのは楽しかったわ」
老婦人の目の前には彼に手を引かれ歩いた林がよぎる。昼間見るのと異なる世界に驚き、彼のぬくもりに緊張と興奮を覚え、こっそり出てきたことへの罪悪感と開放感……いろんな気持ちが今でも蘇る。
「もう一度……見たいわ」
老婦人の胸には、今を逃すと行く機会がなくなるという焦りが生じた。
●依頼を出しに
ハンターズソサエティの支部にゆっくり歩く影が入ってきた。
受付の職員が顔を上げると、おっとりとした雰囲気の小柄な老婦人が立っていた。
「依頼をしたいのだけど、こちらでよろしいかしら?」
上品な言葉遣いに、貴族かしらと想像する。
椅子を勧めるとゆっくりと座る彼女を見届け、依頼内容等を聞く姿勢に入った。
「こういうところは初めてで緊張しちゃうわ」
周囲を見ている老婦人の表情は緊張と程遠く、子どもや孫を見るような優しい目とほほ笑みが浮かんでいる。
「どういったご用件ですか?」
「ダイオタと言いますの。一応、小さいながらも領地を預かり……もう、息子が見ているのでわたくしは何もすることはないからいるだけなのだけど」
「は、はい」
話が長くなるのか、家柄の話から来るのだろうかと職員は身構える。
「主人が亡くなったのはもう五年前。あの人が武者修行といってハンターをしていたときに、わたくしと出会ったのよ」
恋愛話がこの職員は好きであったため、目が輝いてしまう。
貴族の可憐な娘と荒事もいとわないハンターとの出会い、いや、ハンターの方が貴族でダイオタが村娘だったかもしれない……など職員の頭の中は想像でいっぱいになっていく。
しかし、職員は「今は仕事だ」と心の中で言い聞かせ、関係ないことまで聞き出しそうとする気持ちを静める努力をした。
「あの人が見せてくれた世界があるの。もう一度見たいと思ったのよ。そこで、ハンターの方に護衛を依頼したいのよ」
「おうちの方は同行されるのですか?」
護衛か侍女が付いてくるのかもしれないと考えるが、今ダイオタの背後に誰かいる様子もない。
「そんなに大きな家ではないから、一人でできることはします。私の勝手に付き合わすわけにはいかないもの、町の警備で手一杯なのに」
ダイオタは仕方がないわとほほ笑む。
「分かりました……。あと一つ、見せてくれた世界というのは……?」
職員はどんなものかという好奇心と依頼書に記載するため尋ねる。
「夜、歩くことなんてあまりないでしょう? 町や集落の中だってあまりなかったから……。あの人が一緒なら怖くなく、美しい世界だったの。ハンターの方なんて見慣れているから、詰まらないと思うかもしれないけれど、わたくしは一人でも多くの人に見せたい光景よ」
ダイオタはその時感じた闇の中に降る光の美しさを詩のように語ってくれたため、職員は仕事を忘れうっとりする。
「なんだか、私も行きたくなってきました」
「そう? あなたも来る? 本当はもう一度夫と……大きくなった子たちも連れて行きたかったけれど、なかなかうまくいかないものね……。それに、今を逃したら、行く機会がないと思うの」
ダイオタは寂しそうにつぶやいた。
職員は「私は仕事がありますから。感想、ぜひ聞きたいです」と応えながら、聞き取った依頼を手早く紙にまとめた。
居間に一人たたずむ喪服の老婦人はつぶやく。
「あなた……あの子の方が先に逝ってしまったのよ。あの子は歪虚から私たちを守ってくれたのかもしれないけれど……寂しいわ」
居間の暖炉の上におかれた古びた兜を見つめる、そこに語る相手である夫がいるように。
王国に歪虚が押し寄せたとき、長男は領地にとどまり、次男が戦場に向かった。
領内は多少の混乱はあったがひどいことにはならず、家族はみな次男の帰りを待ちわびていたが、戦闘で命を落としたという知らせが伝えられた。
彼女の悲しみは深かった。そして、次男の残された妻と生まれて間もない子を不憫にも思った。
「これからどうしたらいいのか、迷うの」
長男が見ている領内は、何もなければ平穏であろう。次男の妻がとどまりたいと言うなら、面倒見ることも可能である。
しかし、歪虚の動き、国内の政治の事、不安定要素が多く存在している。
「何もできない私……あなたがいたからやってこれたのよね」
くすっと老婦人は兜に笑いかける。
「デートと称して、夜に出かけたのは楽しかったわ」
老婦人の目の前には彼に手を引かれ歩いた林がよぎる。昼間見るのと異なる世界に驚き、彼のぬくもりに緊張と興奮を覚え、こっそり出てきたことへの罪悪感と開放感……いろんな気持ちが今でも蘇る。
「もう一度……見たいわ」
老婦人の胸には、今を逃すと行く機会がなくなるという焦りが生じた。
●依頼を出しに
ハンターズソサエティの支部にゆっくり歩く影が入ってきた。
受付の職員が顔を上げると、おっとりとした雰囲気の小柄な老婦人が立っていた。
「依頼をしたいのだけど、こちらでよろしいかしら?」
上品な言葉遣いに、貴族かしらと想像する。
椅子を勧めるとゆっくりと座る彼女を見届け、依頼内容等を聞く姿勢に入った。
「こういうところは初めてで緊張しちゃうわ」
周囲を見ている老婦人の表情は緊張と程遠く、子どもや孫を見るような優しい目とほほ笑みが浮かんでいる。
「どういったご用件ですか?」
「ダイオタと言いますの。一応、小さいながらも領地を預かり……もう、息子が見ているのでわたくしは何もすることはないからいるだけなのだけど」
「は、はい」
話が長くなるのか、家柄の話から来るのだろうかと職員は身構える。
「主人が亡くなったのはもう五年前。あの人が武者修行といってハンターをしていたときに、わたくしと出会ったのよ」
恋愛話がこの職員は好きであったため、目が輝いてしまう。
貴族の可憐な娘と荒事もいとわないハンターとの出会い、いや、ハンターの方が貴族でダイオタが村娘だったかもしれない……など職員の頭の中は想像でいっぱいになっていく。
しかし、職員は「今は仕事だ」と心の中で言い聞かせ、関係ないことまで聞き出しそうとする気持ちを静める努力をした。
「あの人が見せてくれた世界があるの。もう一度見たいと思ったのよ。そこで、ハンターの方に護衛を依頼したいのよ」
「おうちの方は同行されるのですか?」
護衛か侍女が付いてくるのかもしれないと考えるが、今ダイオタの背後に誰かいる様子もない。
「そんなに大きな家ではないから、一人でできることはします。私の勝手に付き合わすわけにはいかないもの、町の警備で手一杯なのに」
ダイオタは仕方がないわとほほ笑む。
「分かりました……。あと一つ、見せてくれた世界というのは……?」
職員はどんなものかという好奇心と依頼書に記載するため尋ねる。
「夜、歩くことなんてあまりないでしょう? 町や集落の中だってあまりなかったから……。あの人が一緒なら怖くなく、美しい世界だったの。ハンターの方なんて見慣れているから、詰まらないと思うかもしれないけれど、わたくしは一人でも多くの人に見せたい光景よ」
ダイオタはその時感じた闇の中に降る光の美しさを詩のように語ってくれたため、職員は仕事を忘れうっとりする。
「なんだか、私も行きたくなってきました」
「そう? あなたも来る? 本当はもう一度夫と……大きくなった子たちも連れて行きたかったけれど、なかなかうまくいかないものね……。それに、今を逃したら、行く機会がないと思うの」
ダイオタは寂しそうにつぶやいた。
職員は「私は仕事がありますから。感想、ぜひ聞きたいです」と応えながら、聞き取った依頼を手早く紙にまとめた。
リプレイ本文
●夜の散歩
日中の温かさが徐々に消えていく夜のはじめ、指定した場所でダイオタはハンターたちを笑顔で迎えた。彼女はリュックを背負い、柔らかそうな布で包んだ荷物を抱えている。
「こんばんば。星も月もきれいですね」
鈴木悠司(ka0176)は寒さを吹き飛ばすような笑顔で声を掛けた。
「夜の散歩とはエラくロマンチックじゃねーか」
ヤナギ・エリューナク(ka0265)はダイオタの手を取り、優雅な挨拶をする。
「こんばんは! ボクはアルカ。よろしくね、ダイオタ」
アルカ・ブラックウェル(ka0790)の元気な声と笑みに、ダイオタはまぶしそうに目を細める。
「亡くなった旦那様との思い出と聞きました。素敵ですね。ダイオタさんのお散歩が無事に終了するように私も精一杯尽力させていただきますね」
ふんわりと周りを包み込むような温かさで日下 菜摘(ka0881)は挨拶をする。
「一人でも多くの人に見せたい光景……ですか? どのような景色でしょうか、興味があります」
天央 観智(ka0896)にダイオタは「秘密」と応えた。
「……おフトンちゃんでいいです、よろしく……」
雪村 練(ka3808)は巨大なベーコンエッグ柄の布団を巻きつけもぞもぞ動く。
「ダイオタ、この子連れて行きたいんだけど……ダメかな?」
アルカは連れている馬を恐る恐る示す。
「問題ないわ、あの人だって馬を連れて行ったもの。乗るのはちょっと危険だからやめた方がいいわ」
アルカはほっとするとダイオタが持っている荷物が気になった。
「その荷物は? 重そうだけど……」
「そうなのよ。夫の兜、いつも暖炉の上だから忘れていたわ。あの人はこんな重い物を頭に着けていたのよね」
亡くなった夫が戦いに赴くときにかぶっていた兜。これがあったから生き延びられたとはいえ、筋力がなければ非常に重い物品。
「旦那さんも一緒に連れて行くんだね!」
「大切なものとは分かりますけど、これをお持ちだと余分に体力を使ってしまいます。こちらで持たせていただけないでしょうか?」
ダイオタは寂しそうな顔に一瞬なるが、菜摘の言葉に一理あるのでお願いする。
荷物をハンターが持つか馬に載せるかダイオタに尋ねると、「あの人馬好きだったから載せてあげて」と返ってきた。
「背中の荷物も馬で運ぶと身軽になれますよ?」
「あらあら、そうね。お言葉に甘えようかしら」
ダイオタは観智にリュックを預ける。
顔合わせも終わり出発しようとしたとき、これまで以上に冷たい風が吹きぬけていく。
「ダイオタさん、寒くないですか?」
悠司は尋ねたが、すでにヤナギがファー・マフラーと白いコートをかけてあげていた。
同時に差し出された練のブランケットにダイオタは触れ、温かさに微笑む。
「まあまあ、みなさん、ありがとう」
「さ、お姫様、行こうぜ」
ヤナギはダイオタの手を取った。
「うふふ、年は取ってみるものね、そのように言われるなんて」
ダイオタは楽しそうに歩き始めた。
●風が走る
草地が広がる街道は白と黒の世界であった。
天には昇り始めた月と負けずに輝く星が浮かぶ。紺碧の空は白く染める光が、地表に降り注ぎ黒と白のグラデーションを作り、草地を立体的に浮かび上がらせる。
街道に落ちている石が光を受け反射しているのか、細い一つの線として浮かぶ。
風がザーという音を立てる。街道の両脇に続く草地を撫で、枯れている草や芽吹き始めた草を揺らしていく。風が収まるとカサカサと言う音に変化し、徐々に消え……再び大きな音になる……。
風が指揮を行い、草たちが奏でる曲のようだ。
一行は街道に出てすぐに気付いた、明かりを持たずとも景色が見えるということに。もちろん、昼と比べれば、はっきりしないが。
灯りをできる限り点けたくないというダイオタの意向がなければ、点けることを考えるだろう、人間の夜目には限度があるから。
「明かりもなく夜道を行く、なかなかない経験」
観智は手にしているが電源は入れていないライトを弄んだ。
「天文観察?」
練は空を見上げる。
「星は月があると見えないんだよね」
アルカは月と星を眺める。
「ダイオタさんが旦那さんと出かけたときも、こんなきれいな夜だったんですか?」
悠司の質問にダイオタはにこりとする。
「夜に出かけるなんて初めてで何もかもがきれいだったわ」
うっとりしているダイオタの目には、思い出の風景が写っているのかもしれない。
「旦那様はどんな方だったんですか?」
戦場では前に立つ人物だっただろうと、菜摘は兜から推測した。
「背は高くて、がっちりとしていて……あなたとは正反対ね」
ダイオタの手をとって歩くヤナギはすらりとしたタイプである。
「残念だ、レディの好みじゃなくて」
「あらあら? あの人に会う前はあなたのようなタイプにあこがれたわよ」
ゆるゆると進むと雑木林が目の前に迫った。
「そろそろ、雑木林だね。見通し悪いから注意だ。明かりは……目印にされるかもしれないけど」
悠司は少し先を歩き、気配を探る。ランタンの火は点けるか悩んでいたが、最小限に落とし、必要な時に使えるようにしてある。
雑木林は隠れるところが草原以上にある。
漠然と何かいる、というのは悠司をはじめ何人か気付いている。敵対するものか、臆病な動物たちかまでは分からない。注意は必要なのは間違いなかった。
●光が踊る
木漏れ日ならぬ木漏れ月。
雑木林で明かりが不要かは半信半疑であったハンターたちは息をのんだ。
雑木林を走る道に、スポットライトのような光が道を示すように点々と落ちている。
道の左右の灌木に何か潜んでいないか疑うと明かりが必要な気にもなるが、強い光は不要なモノも呼び込む可能性があるため、ギリギリまで五感を頼ることを選ぶ。
「歩くのに困らないとは聞いていましたが」
菜摘はほうと溜息をつく。
「うわあ」
感嘆の声を上げアルカは飛び跳ねるように光を踏み、木々を見上げると光と闇が踊っているのが良くわかった。
「あの人と馬にも乗っていたのよ」
「なら、馬に乗った方がいいんじゃねーの?」
練の指摘にダイオタが指さして答えを示す。
道にはみ出る枝がある。細い物はしなやかに突き出し、太い物は重さのために上の方から垂れ下がっている。
「私は枝を避けたのだけど、後ろにいたあの人……顔で枝を受けたのよ。途中から降りて歩いたのよ」
ダイオタはくすくすと笑う。
「レディ以外見てなかったんだな」
ヤナギが見ると、ダイオタは頬を赤らめて微笑んでいた。
このまま穏やかに散歩が進むと思われたが、何かが近付いているのに気付いた。
練がダイオタの後ろ守り、銃を持った観智が用心のため警戒をする。ヤナギと菜摘がもしもの最終砦としてダイオタの一番側にいる。
悠司とアルカは気配を感じるところに、一気に駆けていく。
戦闘やそれにより生き物が死んだ場合、ダイオタに見せたくないし悟らせたくないと、悠司をはじめとする仲間の思いの結果である。敵対する生き物であれば、離れたところにいる間に排除するつもりであった。
問題のあるところにあと一息というところで、悠司とアルカは様子をうかがう。
相手が気付いたのか、低いうなり声が聞こえた。歪虚や亜人という様子はうかがえず、夜行性の動物だろうと推測できるが、確認するまで用心は必要だ。
ランタンの火を強くし、獣の方に突き出した。
獣は狼であり、突然の明かりに動きを止めた。
「こっちから行くよ!」
アルカが武器を構え踏み出した瞬間、狼は逃げて行った。空腹過ぎるということもなく、正常な思考の獣だったらしい。
拍子抜けをしたが、二人は警戒を維持する。これが引き金に別の生き物が来るかもしれないから。
悠司が明かりを掲げたまま、ダイオタたちを待ち、五分ほどで合流できた。
「お怪我は?」
この程度で後れを取りはしないだろうが菜摘が尋ねる。
悠司とアルカは異口同音にないと応えた。
それから再び一行は進むと、ダイオタが足を止めた。
「このあたりで横に入るのよ」
示した所に、人が通るらしい狭い道ができている。誰も来ないところではないというのが分かった。
●天が水に
道の先には大きめの池があり、木々が途切れた場所だった。
休憩と言うことで切株にダイオタは腰を下ろした。彼女が元気な様子を見せているので、体調を心配する一行は安堵する。
「ん」
ダイオタの膝に練がブランケットを掛ける。練が温めていたおかげで、ダイオタの冷えた足元もふんわりとぬくもりが包み込んだ。
「これ食べる?」
持参してきた食べ物を勧める。
「ボクも持ってきたよ」
アルカも色々と持っていた。
「あら、ありがとう」
少しずつ口に含んだダイオタは池に目を向ける。
池に月が写る。
ただ、それだけの景色かも知れないが、時間が合わないと見られない陰影がここにあった。
天の光は地に降り、木々の陰を作る。水面に落ちた光は、天で直接見るのとは異なり、揺らぎ形を幾重にも変える。
明かりがないと五感が研ぎ澄まされるため、遠くで動く動物の音や声も聞こえる。それだけではなく、木の穴に住んでいるだろうリスの寝息も聞こえてきそうなほどだった。
アルカが包みを渡すと、兜を取り出し、顔が出る部分を池の方に向ける。
「みなさんは若いし、あの人みたいハンターなんですもの、夜に出ることもあって……ごめんなさいね、わがままに付き合ってもらって」
「そんなことないよ。ボクも子供の頃、ひいばあちゃんが星読みのために夜連れ出してくれた時はドキドキしたもん。それと同じでダイオタと一緒にわくわくしてる」
アルカは笑う。
「ダイオタさんと来なければ、月光に照らされた世界をじっくり感じることはありませんでした」
菜摘は光が踊る水面に視線を向けた。
「あらあら、優しいわね」
うふふとダイオタは笑いながら、兜を撫でた。
「怖くなかったんですか、明かりなくて?」
悠司はランタンをいたわるようになでながら尋ねた。
「悠司、鈍い」
「なっ」
ヤナギに指摘されて悠司はむっとした。
「一緒の方がいたから、関係なかったんですね」
菜摘が答えを横から告げると、肯定するようにダイオタは笑う。
「夜がこんなに明るくて楽しいって、知らなかったわ。あの人が教えてくれたの」
「そして、ダイオタさんが僕たちに教えたわけですね」
観智は池を眺め、耳を澄まして林の音を聞く。。
「そう? 続いているのね、ずっと」
ダイオタは嬉しそうに微笑むが、そこには少し影が濃かった。
一行はしばらく池に浮かぶ空の景色を眺め、物思いにふける。
「あら? そろそろ行かないと」
ダイオタはあわてて兜を包み、アルカはそれを受け取り馬に固定する。ヤナギが手を差し出た手を借り、ダイオタがすっと立ち上がった。
他愛のない会話をしつつ一行は進む。兜の主とのなれ初め、どんな人だったのかなど思い出話を。
思い出を話す彼女の姿は、恋する若い娘であるようだった。時々悲しそうな顔になるのは、夫がいないからだろうと一行は考えた。
なお、ゆるりゆるりと歩く中、再びひやりとした瞬間はあったが大したことなく過ぎる。
ムササビと思われる動物が、木の上から滑空して横切ったのだった。
●朝日と海
雑木林を抜けると、空は少しだけ明るくなっていた。
夜明けが近付いている。
「あらあら、急がないと」
ダイオタが少し急ぎ足になったため、ヤナギは転ばないようにとしっかり腰を支える。
海から強い風が吹いている。
岬先端に向かうにつれ、木々もなくなり、歩く者に容赦なく風が当たる。
風を少しでも遮ろうとアルカが馬と共に風上に立つ。
「ダイオタさん、少し、ペースを落とした方が良いかもしれません」
菜摘が心配して声を掛けるが、風と波の音がかき消す。何かあれば支えられるように、ヤナギの反対側に立つ。
岬の先端まで半ばまで来たとき、風の向きが変わった。
ダイオタは風にふわりと舞いかかるが、ヤナギが抑えており転倒せず耐える。
道幅があるため、ダイオタを四方から囲む陣形で登っていく。
前を進んでいた悠司は、先端まで来たため、ダイオタの視界から外れるように脇に避け海を見る。
ダイオタが岬の高い所まで来たとき、スーと白い光が海の上を走った。
明るくなっていたとはいえ、鋭い光に目がくらむ。慣れると、規則正しく打ち寄せる波が、白く輝くのが分かる。
「リアルブルーでも、なかなか見なかったな」
観智は夜明けに対する畏怖と安堵が心に生じる。
「……初日の出か貫徹か」
練が言うとおり、街中で見るとしたらその二つ位だろう。
「ご来光、として拝みたくなる気持ちが分かります。確かに、これは一見の価値が十分にあります」
菜摘は夜の明かりなしでの散歩、天の光の推移、日常にありふれている事こそ美しいことはあると感じた。
「ダイオタ、思い出の景色? あっ……旦那さんも」
アルカが兜の包みを渡すと、ダイオタはしゃがみ、光を見つめながら兜を抱きしめる。ダイオタの頬は濡れ、朝日に輝く。
「ダイオタさんが今でも想っている人……大切な人……俺にはまだいないけど……」
誰かを思い、誰かに思われる存在になれるか、と悠司は考える。
空は藍から青、オレンジ、白が混ざる。刻一刻どころか一秒ごとに空の色は変わっていく。
「一日の始まりは時計がゼロ時を打ってからか、日が昇ってからかというが」
「日が昇ってからだよ!」
観智のつぶやきにアルカは当然と告げる。
生まれ変わっていく空を前に、観智はアルカの答えに同意する。理屈や理論ではなく、体験することが重要だ。
「あなたはどこにいるのかしら? そこにはあの子もいるのかしら?」
ダイオタはつぶやく。
風の音が彼女の声をどこかに運ぶ。
「レディの側にいるさ」
ヤナギは楽器を取り出すとかき鳴らした。低音で優しくゆったりとした響きが風に乗る。風と波に伴奏を付けるような音。
「悠司、付き合えよ。これに歌声を乗せられるのはお前ェしかいねー」
即興音楽に耳を傾け、悠司は声を乗せた。
夜明けの光の下、演奏者も聞く者も気分が高揚していく。
アルカは曲を聞くうちに体が動き、祈るように舞う。
ダイオタに付き添う菜摘は景色を心に刻む。
観智は変化する空気に、見えない精霊の存在を意識した。
心地良い疲労と音楽に練は船を漕ぐ。
「ありがとう、みなさん」
ダイオタは涙をぬぐい、つぶやいた。
日中の温かさが徐々に消えていく夜のはじめ、指定した場所でダイオタはハンターたちを笑顔で迎えた。彼女はリュックを背負い、柔らかそうな布で包んだ荷物を抱えている。
「こんばんば。星も月もきれいですね」
鈴木悠司(ka0176)は寒さを吹き飛ばすような笑顔で声を掛けた。
「夜の散歩とはエラくロマンチックじゃねーか」
ヤナギ・エリューナク(ka0265)はダイオタの手を取り、優雅な挨拶をする。
「こんばんは! ボクはアルカ。よろしくね、ダイオタ」
アルカ・ブラックウェル(ka0790)の元気な声と笑みに、ダイオタはまぶしそうに目を細める。
「亡くなった旦那様との思い出と聞きました。素敵ですね。ダイオタさんのお散歩が無事に終了するように私も精一杯尽力させていただきますね」
ふんわりと周りを包み込むような温かさで日下 菜摘(ka0881)は挨拶をする。
「一人でも多くの人に見せたい光景……ですか? どのような景色でしょうか、興味があります」
天央 観智(ka0896)にダイオタは「秘密」と応えた。
「……おフトンちゃんでいいです、よろしく……」
雪村 練(ka3808)は巨大なベーコンエッグ柄の布団を巻きつけもぞもぞ動く。
「ダイオタ、この子連れて行きたいんだけど……ダメかな?」
アルカは連れている馬を恐る恐る示す。
「問題ないわ、あの人だって馬を連れて行ったもの。乗るのはちょっと危険だからやめた方がいいわ」
アルカはほっとするとダイオタが持っている荷物が気になった。
「その荷物は? 重そうだけど……」
「そうなのよ。夫の兜、いつも暖炉の上だから忘れていたわ。あの人はこんな重い物を頭に着けていたのよね」
亡くなった夫が戦いに赴くときにかぶっていた兜。これがあったから生き延びられたとはいえ、筋力がなければ非常に重い物品。
「旦那さんも一緒に連れて行くんだね!」
「大切なものとは分かりますけど、これをお持ちだと余分に体力を使ってしまいます。こちらで持たせていただけないでしょうか?」
ダイオタは寂しそうな顔に一瞬なるが、菜摘の言葉に一理あるのでお願いする。
荷物をハンターが持つか馬に載せるかダイオタに尋ねると、「あの人馬好きだったから載せてあげて」と返ってきた。
「背中の荷物も馬で運ぶと身軽になれますよ?」
「あらあら、そうね。お言葉に甘えようかしら」
ダイオタは観智にリュックを預ける。
顔合わせも終わり出発しようとしたとき、これまで以上に冷たい風が吹きぬけていく。
「ダイオタさん、寒くないですか?」
悠司は尋ねたが、すでにヤナギがファー・マフラーと白いコートをかけてあげていた。
同時に差し出された練のブランケットにダイオタは触れ、温かさに微笑む。
「まあまあ、みなさん、ありがとう」
「さ、お姫様、行こうぜ」
ヤナギはダイオタの手を取った。
「うふふ、年は取ってみるものね、そのように言われるなんて」
ダイオタは楽しそうに歩き始めた。
●風が走る
草地が広がる街道は白と黒の世界であった。
天には昇り始めた月と負けずに輝く星が浮かぶ。紺碧の空は白く染める光が、地表に降り注ぎ黒と白のグラデーションを作り、草地を立体的に浮かび上がらせる。
街道に落ちている石が光を受け反射しているのか、細い一つの線として浮かぶ。
風がザーという音を立てる。街道の両脇に続く草地を撫で、枯れている草や芽吹き始めた草を揺らしていく。風が収まるとカサカサと言う音に変化し、徐々に消え……再び大きな音になる……。
風が指揮を行い、草たちが奏でる曲のようだ。
一行は街道に出てすぐに気付いた、明かりを持たずとも景色が見えるということに。もちろん、昼と比べれば、はっきりしないが。
灯りをできる限り点けたくないというダイオタの意向がなければ、点けることを考えるだろう、人間の夜目には限度があるから。
「明かりもなく夜道を行く、なかなかない経験」
観智は手にしているが電源は入れていないライトを弄んだ。
「天文観察?」
練は空を見上げる。
「星は月があると見えないんだよね」
アルカは月と星を眺める。
「ダイオタさんが旦那さんと出かけたときも、こんなきれいな夜だったんですか?」
悠司の質問にダイオタはにこりとする。
「夜に出かけるなんて初めてで何もかもがきれいだったわ」
うっとりしているダイオタの目には、思い出の風景が写っているのかもしれない。
「旦那様はどんな方だったんですか?」
戦場では前に立つ人物だっただろうと、菜摘は兜から推測した。
「背は高くて、がっちりとしていて……あなたとは正反対ね」
ダイオタの手をとって歩くヤナギはすらりとしたタイプである。
「残念だ、レディの好みじゃなくて」
「あらあら? あの人に会う前はあなたのようなタイプにあこがれたわよ」
ゆるゆると進むと雑木林が目の前に迫った。
「そろそろ、雑木林だね。見通し悪いから注意だ。明かりは……目印にされるかもしれないけど」
悠司は少し先を歩き、気配を探る。ランタンの火は点けるか悩んでいたが、最小限に落とし、必要な時に使えるようにしてある。
雑木林は隠れるところが草原以上にある。
漠然と何かいる、というのは悠司をはじめ何人か気付いている。敵対するものか、臆病な動物たちかまでは分からない。注意は必要なのは間違いなかった。
●光が踊る
木漏れ日ならぬ木漏れ月。
雑木林で明かりが不要かは半信半疑であったハンターたちは息をのんだ。
雑木林を走る道に、スポットライトのような光が道を示すように点々と落ちている。
道の左右の灌木に何か潜んでいないか疑うと明かりが必要な気にもなるが、強い光は不要なモノも呼び込む可能性があるため、ギリギリまで五感を頼ることを選ぶ。
「歩くのに困らないとは聞いていましたが」
菜摘はほうと溜息をつく。
「うわあ」
感嘆の声を上げアルカは飛び跳ねるように光を踏み、木々を見上げると光と闇が踊っているのが良くわかった。
「あの人と馬にも乗っていたのよ」
「なら、馬に乗った方がいいんじゃねーの?」
練の指摘にダイオタが指さして答えを示す。
道にはみ出る枝がある。細い物はしなやかに突き出し、太い物は重さのために上の方から垂れ下がっている。
「私は枝を避けたのだけど、後ろにいたあの人……顔で枝を受けたのよ。途中から降りて歩いたのよ」
ダイオタはくすくすと笑う。
「レディ以外見てなかったんだな」
ヤナギが見ると、ダイオタは頬を赤らめて微笑んでいた。
このまま穏やかに散歩が進むと思われたが、何かが近付いているのに気付いた。
練がダイオタの後ろ守り、銃を持った観智が用心のため警戒をする。ヤナギと菜摘がもしもの最終砦としてダイオタの一番側にいる。
悠司とアルカは気配を感じるところに、一気に駆けていく。
戦闘やそれにより生き物が死んだ場合、ダイオタに見せたくないし悟らせたくないと、悠司をはじめとする仲間の思いの結果である。敵対する生き物であれば、離れたところにいる間に排除するつもりであった。
問題のあるところにあと一息というところで、悠司とアルカは様子をうかがう。
相手が気付いたのか、低いうなり声が聞こえた。歪虚や亜人という様子はうかがえず、夜行性の動物だろうと推測できるが、確認するまで用心は必要だ。
ランタンの火を強くし、獣の方に突き出した。
獣は狼であり、突然の明かりに動きを止めた。
「こっちから行くよ!」
アルカが武器を構え踏み出した瞬間、狼は逃げて行った。空腹過ぎるということもなく、正常な思考の獣だったらしい。
拍子抜けをしたが、二人は警戒を維持する。これが引き金に別の生き物が来るかもしれないから。
悠司が明かりを掲げたまま、ダイオタたちを待ち、五分ほどで合流できた。
「お怪我は?」
この程度で後れを取りはしないだろうが菜摘が尋ねる。
悠司とアルカは異口同音にないと応えた。
それから再び一行は進むと、ダイオタが足を止めた。
「このあたりで横に入るのよ」
示した所に、人が通るらしい狭い道ができている。誰も来ないところではないというのが分かった。
●天が水に
道の先には大きめの池があり、木々が途切れた場所だった。
休憩と言うことで切株にダイオタは腰を下ろした。彼女が元気な様子を見せているので、体調を心配する一行は安堵する。
「ん」
ダイオタの膝に練がブランケットを掛ける。練が温めていたおかげで、ダイオタの冷えた足元もふんわりとぬくもりが包み込んだ。
「これ食べる?」
持参してきた食べ物を勧める。
「ボクも持ってきたよ」
アルカも色々と持っていた。
「あら、ありがとう」
少しずつ口に含んだダイオタは池に目を向ける。
池に月が写る。
ただ、それだけの景色かも知れないが、時間が合わないと見られない陰影がここにあった。
天の光は地に降り、木々の陰を作る。水面に落ちた光は、天で直接見るのとは異なり、揺らぎ形を幾重にも変える。
明かりがないと五感が研ぎ澄まされるため、遠くで動く動物の音や声も聞こえる。それだけではなく、木の穴に住んでいるだろうリスの寝息も聞こえてきそうなほどだった。
アルカが包みを渡すと、兜を取り出し、顔が出る部分を池の方に向ける。
「みなさんは若いし、あの人みたいハンターなんですもの、夜に出ることもあって……ごめんなさいね、わがままに付き合ってもらって」
「そんなことないよ。ボクも子供の頃、ひいばあちゃんが星読みのために夜連れ出してくれた時はドキドキしたもん。それと同じでダイオタと一緒にわくわくしてる」
アルカは笑う。
「ダイオタさんと来なければ、月光に照らされた世界をじっくり感じることはありませんでした」
菜摘は光が踊る水面に視線を向けた。
「あらあら、優しいわね」
うふふとダイオタは笑いながら、兜を撫でた。
「怖くなかったんですか、明かりなくて?」
悠司はランタンをいたわるようになでながら尋ねた。
「悠司、鈍い」
「なっ」
ヤナギに指摘されて悠司はむっとした。
「一緒の方がいたから、関係なかったんですね」
菜摘が答えを横から告げると、肯定するようにダイオタは笑う。
「夜がこんなに明るくて楽しいって、知らなかったわ。あの人が教えてくれたの」
「そして、ダイオタさんが僕たちに教えたわけですね」
観智は池を眺め、耳を澄まして林の音を聞く。。
「そう? 続いているのね、ずっと」
ダイオタは嬉しそうに微笑むが、そこには少し影が濃かった。
一行はしばらく池に浮かぶ空の景色を眺め、物思いにふける。
「あら? そろそろ行かないと」
ダイオタはあわてて兜を包み、アルカはそれを受け取り馬に固定する。ヤナギが手を差し出た手を借り、ダイオタがすっと立ち上がった。
他愛のない会話をしつつ一行は進む。兜の主とのなれ初め、どんな人だったのかなど思い出話を。
思い出を話す彼女の姿は、恋する若い娘であるようだった。時々悲しそうな顔になるのは、夫がいないからだろうと一行は考えた。
なお、ゆるりゆるりと歩く中、再びひやりとした瞬間はあったが大したことなく過ぎる。
ムササビと思われる動物が、木の上から滑空して横切ったのだった。
●朝日と海
雑木林を抜けると、空は少しだけ明るくなっていた。
夜明けが近付いている。
「あらあら、急がないと」
ダイオタが少し急ぎ足になったため、ヤナギは転ばないようにとしっかり腰を支える。
海から強い風が吹いている。
岬先端に向かうにつれ、木々もなくなり、歩く者に容赦なく風が当たる。
風を少しでも遮ろうとアルカが馬と共に風上に立つ。
「ダイオタさん、少し、ペースを落とした方が良いかもしれません」
菜摘が心配して声を掛けるが、風と波の音がかき消す。何かあれば支えられるように、ヤナギの反対側に立つ。
岬の先端まで半ばまで来たとき、風の向きが変わった。
ダイオタは風にふわりと舞いかかるが、ヤナギが抑えており転倒せず耐える。
道幅があるため、ダイオタを四方から囲む陣形で登っていく。
前を進んでいた悠司は、先端まで来たため、ダイオタの視界から外れるように脇に避け海を見る。
ダイオタが岬の高い所まで来たとき、スーと白い光が海の上を走った。
明るくなっていたとはいえ、鋭い光に目がくらむ。慣れると、規則正しく打ち寄せる波が、白く輝くのが分かる。
「リアルブルーでも、なかなか見なかったな」
観智は夜明けに対する畏怖と安堵が心に生じる。
「……初日の出か貫徹か」
練が言うとおり、街中で見るとしたらその二つ位だろう。
「ご来光、として拝みたくなる気持ちが分かります。確かに、これは一見の価値が十分にあります」
菜摘は夜の明かりなしでの散歩、天の光の推移、日常にありふれている事こそ美しいことはあると感じた。
「ダイオタ、思い出の景色? あっ……旦那さんも」
アルカが兜の包みを渡すと、ダイオタはしゃがみ、光を見つめながら兜を抱きしめる。ダイオタの頬は濡れ、朝日に輝く。
「ダイオタさんが今でも想っている人……大切な人……俺にはまだいないけど……」
誰かを思い、誰かに思われる存在になれるか、と悠司は考える。
空は藍から青、オレンジ、白が混ざる。刻一刻どころか一秒ごとに空の色は変わっていく。
「一日の始まりは時計がゼロ時を打ってからか、日が昇ってからかというが」
「日が昇ってからだよ!」
観智のつぶやきにアルカは当然と告げる。
生まれ変わっていく空を前に、観智はアルカの答えに同意する。理屈や理論ではなく、体験することが重要だ。
「あなたはどこにいるのかしら? そこにはあの子もいるのかしら?」
ダイオタはつぶやく。
風の音が彼女の声をどこかに運ぶ。
「レディの側にいるさ」
ヤナギは楽器を取り出すとかき鳴らした。低音で優しくゆったりとした響きが風に乗る。風と波に伴奏を付けるような音。
「悠司、付き合えよ。これに歌声を乗せられるのはお前ェしかいねー」
即興音楽に耳を傾け、悠司は声を乗せた。
夜明けの光の下、演奏者も聞く者も気分が高揚していく。
アルカは曲を聞くうちに体が動き、祈るように舞う。
ダイオタに付き添う菜摘は景色を心に刻む。
観智は変化する空気に、見えない精霊の存在を意識した。
心地良い疲労と音楽に練は船を漕ぐ。
「ありがとう、みなさん」
ダイオタは涙をぬぐい、つぶやいた。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/03/04 23:13:03 |
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【相談卓】 アルカ・ブラックウェル(ka0790) 人間(クリムゾンウェスト)|17才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/03/09 03:36:41 |