ゲスト
(ka0000)
急募 ドラゴン退治?
マスター:御影堂

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/03/11 22:00
- 完成日
- 2015/03/19 10:42
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
ドラゴン討伐依頼。
その響きだけで、冒険心はくすぐられ、にやりと笑みがこぼれる。
力強く羽ばたく翼、岩をも砕く牙や爪。炎を吐いて、近寄る愚か者を焼き尽くす。
ましてや、依頼主はドラゴンに支配された町ゴラと書かれているのである。
強敵との戦いに思いを馳せ、ロマン溢れる、この依頼を受けることだろう。
●
「町長……」
ゴラの町、町長の家に設けられた会議室に数人が集まっていた。
奥に座る町長へ、渋い顔で男が呼び掛ける。
「いかに本当のこととはいえ、あの書き方はまずいですよ」
「本当のことなら、問題ないではないか」
しれっとした表情で、町長は答える。
「ドラゴンに支配、ねぇ」
年嵩の男が失笑し、窓から外を見やる。
人の足ほどはあろう蜥蜴が、家々の壁や地面をはい回っていた。
酒場つきの宿屋には、名物ドラゴン料理の幟が見える。
そして、目の前に置かれた蜥蜴の塩漬け……お茶うけである。
「嘘はいっておらん」
「確かに我らの町では、蜥蜴をドラゴンと呼びますけど」
「ドラゴンってか、蜥蜴がなきゃ肉食えないし、ある意味支配されてますけど」
「だったら、何が不満なのだ」
そういわれると、答えることができない。
何より、あの化け物を退治して欲しいのは間違いないのだから。
●
そいつらは、住人が蜥蜴を取る荒野にのさばっていた。
通常の蜥蜴より十倍大きい化け物蜥蜴だ。
これだけ大きいと、肉質も固く、食えたものではない。
「だめだ。近づけない」
荒野を望める高台に、自警団員が戻ってきた。
蜥蜴を取るべく果敢に挑戦したのだが、大蜥蜴を前にして戻ってきたのだ。
鎧のような鱗、鞭のようにしなる尻尾。しかも、尻尾を切り離して飛ばしてくる。
「このままでは、まずいな」
「蜥蜴が足りなくなる」
ゴラの町で、蜥蜴は貴重なタンパク源なのだ。
そして独特な味わいから、ゴラの住人で蜥蜴肉を偏愛している者は多くいる。
在庫が少なくなるに連れて、次第に蜥蜴の値段が上がってきていた。
「蜥蜴……食いたい」
「落ち着け。町の蜥蜴は、まだいるんだよな?」
「だが、だいぶ数は減ってきている。俺らが警らして密猟を防がないとまずいな」
荒野の蜥蜴とゴラの町にいる蜥蜴に変わりはない。
しかし、虫を食べてくれる蜥蜴は町中では重要な役割を果たしていた。
虫を介する疫病を防ぐために、それなりの数が必要なのである。
「隊長たちが町長に依頼の出し方がまずいんじゃねーかって言いに行ったらしいが」
「んなことより、騙されてでも蜥蜴退治に来てくれねぇとまずいだろ」
そういいながら町の中へ戻る。
いつもは充満している鼻をくすぐる香辛料と焼ける肉の匂いが、今日はしなかった。
ドラゴン討伐依頼。
その響きだけで、冒険心はくすぐられ、にやりと笑みがこぼれる。
力強く羽ばたく翼、岩をも砕く牙や爪。炎を吐いて、近寄る愚か者を焼き尽くす。
ましてや、依頼主はドラゴンに支配された町ゴラと書かれているのである。
強敵との戦いに思いを馳せ、ロマン溢れる、この依頼を受けることだろう。
●
「町長……」
ゴラの町、町長の家に設けられた会議室に数人が集まっていた。
奥に座る町長へ、渋い顔で男が呼び掛ける。
「いかに本当のこととはいえ、あの書き方はまずいですよ」
「本当のことなら、問題ないではないか」
しれっとした表情で、町長は答える。
「ドラゴンに支配、ねぇ」
年嵩の男が失笑し、窓から外を見やる。
人の足ほどはあろう蜥蜴が、家々の壁や地面をはい回っていた。
酒場つきの宿屋には、名物ドラゴン料理の幟が見える。
そして、目の前に置かれた蜥蜴の塩漬け……お茶うけである。
「嘘はいっておらん」
「確かに我らの町では、蜥蜴をドラゴンと呼びますけど」
「ドラゴンってか、蜥蜴がなきゃ肉食えないし、ある意味支配されてますけど」
「だったら、何が不満なのだ」
そういわれると、答えることができない。
何より、あの化け物を退治して欲しいのは間違いないのだから。
●
そいつらは、住人が蜥蜴を取る荒野にのさばっていた。
通常の蜥蜴より十倍大きい化け物蜥蜴だ。
これだけ大きいと、肉質も固く、食えたものではない。
「だめだ。近づけない」
荒野を望める高台に、自警団員が戻ってきた。
蜥蜴を取るべく果敢に挑戦したのだが、大蜥蜴を前にして戻ってきたのだ。
鎧のような鱗、鞭のようにしなる尻尾。しかも、尻尾を切り離して飛ばしてくる。
「このままでは、まずいな」
「蜥蜴が足りなくなる」
ゴラの町で、蜥蜴は貴重なタンパク源なのだ。
そして独特な味わいから、ゴラの住人で蜥蜴肉を偏愛している者は多くいる。
在庫が少なくなるに連れて、次第に蜥蜴の値段が上がってきていた。
「蜥蜴……食いたい」
「落ち着け。町の蜥蜴は、まだいるんだよな?」
「だが、だいぶ数は減ってきている。俺らが警らして密猟を防がないとまずいな」
荒野の蜥蜴とゴラの町にいる蜥蜴に変わりはない。
しかし、虫を食べてくれる蜥蜴は町中では重要な役割を果たしていた。
虫を介する疫病を防ぐために、それなりの数が必要なのである。
「隊長たちが町長に依頼の出し方がまずいんじゃねーかって言いに行ったらしいが」
「んなことより、騙されてでも蜥蜴退治に来てくれねぇとまずいだろ」
そういいながら町の中へ戻る。
いつもは充満している鼻をくすぐる香辛料と焼ける肉の匂いが、今日はしなかった。
リプレイ本文
●
「……なーんか納得いかなーい!」
ゴラの町郊外の荒野で、フレアティラミス(ka0011)が叫ぶ。
視線の先にいるのは、オオトカゲの雑魔たちだ。
「ドラゴンに支配された町っていくから楽しみにしてたのに、ドラゴンに支配されているっていうのは蜥蜴に囲まれている生活の事だし、討伐するべきドラゴンは蜥蜴型の雑魔なんてさっ!」
聞かされていた情報との違いに、フレアティラミスはまくしたてる。
その隣では、リュー・グランフェスト(ka2419)も
「蜥蜴かよ」とぼやいていた。
ドラゴン退治と聞いて、張り切っていたのだが肩透かしをくらった形だ。
それでも雑魔なら退治しなければならないと、刀を握り直す。
「こんなんに負けてたまるかよ」
「そうよ、八つ当たりしてやるわ!」
リューとともに、フレアティラミスも気を取り直す。
一方で桐壱(ka1503)はのんきに、お酒を飲みながら蜥蜴の姿を眺めていた。
「あら? ずいぶんと可愛いドラゴンさんですねぇ?」
ゆっくりとした口調は、酔っているわけでなく、生来のものだ。
そんな桐壱に、J・D(ka3351)は声を荒げる。
「おい、戦い前に飲酒とは、余裕じゃねぇか。影響出ねぇうちに、止めておけよ」
「これくらいなら、何の問題もないですよぉ」
始まるときには止めることを約束させ、J・Dも屯する蜥蜴たちを見やる。
「デカブツの相手をしたお次のゴトがまたデカブツ退治ときやがった。マァ、こっちのデカブツの方が可愛げがあるがね」
そうですよぉと頷く桐壱の隣で、城戸 慶一郎(ka3633)が嘆息する。
「普通の十倍近い蜥蜴なら、俺には十分ドラゴンだ」
尻尾を飛ばす蜥蜴と聞けば、なおさらである。
おぼろげな知識で思い浮かべるドラゴンに比べれば、危険はなさそうであるが。
「そう思えば戦いも気楽に……ならんな。せめて、気合は入れるとしよう」
「そうだぜ。蜥蜴相手に負けてられるか!」
「本物のドラゴンに会うためにも、こんな奴らは、さっさと倒すんだから!」
気合満々な二人に気圧されつつ、慶一郎も準備にかかる。
フレアティラミスが自警団員から聞き出した情報を元に、蜥蜴穴の位置を確認する。
「それにしても、みなさん知らなかったのね」
アリエスタ(ka4140)が意外そうな顔で、話し合いに合流する。
知っていたのかといわれれば、うんと頷く。
「あちこち旅をしているもの。勿論、知っているわ」
そして、町の人から聞いたドラゴンと蜥蜴の色の違い等も語る。
倒してはいけないものは、はっきりとわけるのだ。
もっとも、今は巣穴から顔を出すことすらないのだという。
「あのお料理がたべられなくなってしまうなんてあってはいけないわ」
蜥蜴の話の最中に、力強くアリエスタは告げる。
「んに? 蜥蜴の肉?」
「えぇ、美味しいわよ」
反応を示したフレアティラミスはしばし、考え、
「そ、そんなんでわたしは釣られないからねっ!」と謎の宣言をしていた。
「さて、これが件の巣穴か」
ドラゴンに感知されるギリギリのラインで、ハガクレ・フルマル(ka2126)がしゃがみこむ。
片足を突っ込みそうな大きさの穴が空いていた。
「……穴っぽこひらいてると、ほじほじしたくなるよな」
そっと日本刀を巣穴にねじ込もうとしたところで、後ろから蹴り上げられた。
「ガキみてえな事やってねぇで、前に出やがれ、前に」
蹴りあげたJ・Dは重ねていう。
「お前ェサンの持ち場だろうが」
「ちょ、やめ……冗談だっつーの! あぶねぇだろうが、テメェ耳長ァ!」
「戦いが始まるってェんだ、ぼうっとしてるお前ェサンが悪い」
「後で、なんかこう……なんかしらしてやるからな! 覚えてろよ!」
吠え掛かりながら、前へ行くハガクレに桐壱が緑の風をまとわせる。
「ふふ、J・Dさん。引率の先生みたいですねぇ」
「先生らしく、お酒も没収してやろうかい?」
「ここからはまじめにいきますよぉ」
怒られて桐壱はスタッフを持ち直す。
「こんな調子で、大丈夫なのか」
緊張感のない面々に、心なしか胃が痛む慶一郎なのであった。
●
それでも、戦闘となれば顔つきは変わるものだ。
前衛を担うのは、フレアティラミス、リュー、そしてハガクレだ。
フレアティラミスが聞いたという巣穴の多い場所や、穴同士の間隔を気にしつつ前へと進む。
全力で駆けていると、足元がおろそかになりがちである。
「ミスるわけにはいかないからな」
慎重さを忘れず、進む三人の視界にドラゴンはいた。
まるでサソリのように、近しい三匹がしっぽを上げる。
「自警団員の方が言っていたとおりね」
前衛からやや離れてアリエスタがつぶやく。
ドラゴンは、尻尾を射出するときサソリのような姿勢になる。
「……巣穴を避けて……っと。あ」
フレアティラミスが巣穴を避けたところで、その体勢に気づいた。
射出された尻尾は速度を上げて、目前に迫る。
「……っ」
穴に気を取られ、腕を掠めていく。
守りを固めていたが、戦場が荒れていると戦いにくい。
ハガクレはその穴を上手く避け、尻尾も風の護りが効いて逸れていった。
「きやがれ! 弾き返してやる!」
力強く告げるリューは、尻尾の弾丸を胸元で受けとめていた。
シールドを用い、タイミングを見計らって弾き落とす。
「さぁ、次はどうするんだ?」
挑発する用意に刃を向けながら、リューはさらに進む。
前衛が進むのに引っ張られる形で、後衛もやや前進する。
「よう、そこから先は穴だらけだ。逆の方向に寄せてくんな」
巣穴の密集地帯から引き離すように、J・Dは引き金を引く。
弾丸を前にドラゴンは一瞬動きを止めたが、効果は見られなかった。
「おいおい、つれないねェ」
「意外とすばしっこいようだな」
慶一郎もマテリアルを込め、射撃精度を上げるがドラゴンの動きを止めるには一歩足りない。
あるいは、弾丸程度では何も感じないのかもしれないが。
「私が攻撃するなら、尻尾も届くところになるのよね……」
悩ましげにアリエスタは、自身にプロテクションをかける。
彼女の用いる魔法、ホーリーライトの射程はドラゴンの尻尾より若干短い。
「前に出る皆様の活躍に期待ね」
「尻尾は生えてくるんですよねぇ?」
「そろそろ、ね」
話している間に、ドラゴンに前衛が肉薄する。
ぬるりとドラゴンの尻尾跡から、次の尻尾が生えてきていた。
●
「気持ち悪い生え方をするわね」
間近で目撃したフレアティラミスは、顔をしかめる。
ゆっくりと生えるのではなく、一気に生えてくる過程は見ていて気持ち良いものではない。
「悪いけど、飛ばす前に切り落とすわよ」
言うと同時に、日本刀を居合い斬りの如く振るう。
マテリアルを込めた一撃であったが、尻尾の根元を庇うようにドラゴンはぬるりと避けてみせた。
「ちょっと、何で避けるのよ!」
避けるものは避けるのだ。
「しっかしまぁ、これがドラゴンね……しっかりと避けやがるし、威厳もねぇな」
竜殺しにしては、報酬が報酬だと思っていたら案の定であった。
だからこそ、ハガクレはこの依頼を受けたのであるが。
「撃つ前に切り落としたいところだが、さて」
空を切った刃を構え直し、ドラゴンを見下ろす。
対峙している相手だけでなく、前衛が接敵していない二体も気にかけなければならなかった。
「あっちの尻尾は落ちたか」
ちらりと見れば、リューの目の前で尻尾が宙を舞っていた。
尻尾を落とされたドラゴンが身を捩った瞬間、頭を弾丸が撃ちぬいた。
ライフルのスコープから目を離し、J・Dが唸る。
「んー、しぶといやつだ」
マテリアルを感覚に集中させ、撃ちぬく瞬間に弾丸にも込めた。
ドラゴンは風前の灯であったが、悪あがきにリューへと顎を向けた。
しかし、その牙が届くことはない。
「終わらせられるなら、終わらせる」
慶一郎が放った弾丸が、ドラゴンの脚を撃ちぬく。
体勢の崩れたドラゴンはそのまま地に伏せると、動かなくなった。
「……奥にも二体いるようだな」
視界に不穏な影が映り、慶一郎は目を細める。
確認されていた五体に加え、二体のドラゴンが見つかったのだ。
ならば、早いこと倒すにこしたことはない。
「っと、しまった」
リューの視線の先で、ドラゴンが尻尾を飛ばす。
後衛を狙った尻尾は、空中で切り落とされていた。
「こんなところですかねぇ」
桐壱が合わせるように風刃を放っていたのだ。
狙われていたアリエスタが胸をなでおろし、光弾を放つ。
ハガクレの攻撃を避けた直後のドラゴンが、その攻撃をもろに受ける。
「尻尾が再生するより早く倒せばいいわけですけれど……」
と思案するアリエスタであったが、桐壱はしれっと風刃でとどめを刺しながら告げる。
「倒せるなら、倒したほうがよいですよねぇ」
「そういうことだな」
飛んできた尻尾を切り払い、ハガクレは次の標的へ足を進める。
同じころ、J・Dの弾丸でフレアティラミスが対峙するドラゴンの尻尾がはじけ飛んでいた。
「さんざんバカにしてくれたわね! 終わらせるわよ」
実は、三度尻尾への攻撃を避けられていた。
町人への恨みと、コケにされた恨みを込めて一閃――ドラゴンの背に深々と刃が刺さる。
マテリアルの込められた武器は、そのままドラゴンの身を断ち切った。
「さ、次よ。次」
切り替え早く、フレアティラミスは次の目標を探すのだった。
●
「動くなよって」
J・Dの弾丸が一匹のドラゴンをその場に縫い止める。
その間にリューが攻めこむ。攻撃を重視した構えから、刀を振り上げる。
避けようとしたところへ、慶一郎が狙いをつける。
慶一郎の弾丸は牽制の一手、これによりドラゴンの動きが止まる。
「くらええええ!」
一気に振り下ろした刃が、ドラゴンを一刀両断にする。
刃を振り払い、視線を移せばハガクレがもう一体に接敵していた。
ハガクレの刀は、ドラゴンを捉えることが出来ない。
「妙にスバシッコイな、ほんと」
もう一振りも避けられ、ハガクレは毒づく。
だが、避けた先を狙って桐壱は風刃を放つ。
「まずは一太刀、ですねぇ」
「そして、二撃目ね」
合わせるようにアリエスタが、光弾を飛ばす。
脚を穿たれ、ドラゴンの身体が傾く。
「尻尾ごとぶった斬ってやるよ」
洗練された一撃。
尻尾の付け根から、頭の方へハガクレの刃が滑る。
振り切ると同時に、ドラゴンは唸り声を上げて倒れるのだった。
残る二体の内、一体はリューとフレアティラミスに挟まれていた。
プレテクションをかけつつ近づこうとするアリエスタを尻尾が狙おうとする。
リューはぐっと前に踏み出し、至近距離で尻尾を受け止めた。
「ここが踏ん張りどころだな」
シールドで弾いた尻尾は地面を転がる。
返すようにフレアティラミスとリューの刃が交差する。
とどめを刺したのは、桐壱だった。
「残りも、終わりみたいですねぇ」
戦闘が終わりそうだとわかると、酒を取り出す。
J・Dは残り一体の動きを封じていて、気づかない。
「お、フルマルさんが決めたようですねぇ」
くぴっと酒を飲み下しながら、桐壱は告げる。
倒れたドラゴンたちは、溶けこむように消えていった。
●
「おうオッサン、ドラゴンとか言うからワクワクしちゃっただろーがコラ。俺のワクワク返せコラ」
報告に訪れた町長の家で、ハガクレは啖呵を切っていた。
「そうよそうよ。ドラゴン退治って聞いたから、依頼を受けたのに!」
本気にしていたフレアティラミスも、加わってまくし立てる。
その様子をお酒を飲みながら、桐壱が眺める。
「いいんですかねぇ、あれ」
「無理もねェ話だからなァ。度が過ぎるようなら止めるさ」
隣で受け答えるJ・Dも肩をすくめる。
ここまで迫られると思っていなかったが、町長にも策は合ったらしい。
ご馳走をご用意していると言った途端、ハガクレは溜飲を下げた。
一方で、フレアティラミスは声を上げる。
「そんなのにつられたりはしないからねっ!」
暗転。
「あら、なかなかいけるじゃない」
フレアティラミスは上機嫌で、蜥蜴料理に舌鼓を打っていた。
「これはいいおつまみですねぇ。お酒もおいしく頂けますよぉ」
「俺の手柄だぞ、キリーチ」
「いちゃもんつけてただけだろ」
満足そうな桐壱に、ハガクレが鼻を鳴らす。
J・Dが調子に乗らないよう、釘を差していた。
「名物だけあって、旨いな。仲間にも食わせてやりたいから、貰って行くぜ」
「これが食べたかったのよね」
リューとアリエスタも、独特の香辛料で味付けされた蜥蜴肉を美味しく頂く。
鳥に近く、やや筋肉質な味わいだ。
「あら、食べないの?」
アリエスタは離れた位置に座る慶一郎を見やる。
一人だけ席を外して、皆の様子を眺めていた。
「いえ……遠慮しておきます」
料理を薦めてくる町長にもそう告げて、慶一郎は座っていた。
パンをつまみながら、並べられた料理を遠目に眺める。
「蜥蜴を食べる……うん、無理だ」
姿そのままというわけではないが、さっき戦ったばかりである。
その姿が思い出されて、余計に食べる気が失せていた。
「次は絶対に、ドラゴンと出会うんだからね!」
「ドラゴンですかぁ、本当にいるのですかねぇ」
「いるに決まってるじゃない!」
やけ食い気味に、フレアティラミスは蜥蜴を食する。
まだ見ぬドラゴンに夢を抱いて、ドラゴンもどきの肉を食うのだ。
「蜥蜴肉で精をつけて、次の仕事も頑張ろう、ぜ」
ニヒルな笑顔を浮かべて、J・Dは励ましの言葉を贈る。
そんな面々を眺めつつ、町長は思う。
ドラゴン推しでより町の活性化を狙えるのではないだろうかと。
「あんまり、ややこしいことはしないほうがいいと思うがな」
その表情を察して、慶一郎がぼそりと呟くのであった。
「……なーんか納得いかなーい!」
ゴラの町郊外の荒野で、フレアティラミス(ka0011)が叫ぶ。
視線の先にいるのは、オオトカゲの雑魔たちだ。
「ドラゴンに支配された町っていくから楽しみにしてたのに、ドラゴンに支配されているっていうのは蜥蜴に囲まれている生活の事だし、討伐するべきドラゴンは蜥蜴型の雑魔なんてさっ!」
聞かされていた情報との違いに、フレアティラミスはまくしたてる。
その隣では、リュー・グランフェスト(ka2419)も
「蜥蜴かよ」とぼやいていた。
ドラゴン退治と聞いて、張り切っていたのだが肩透かしをくらった形だ。
それでも雑魔なら退治しなければならないと、刀を握り直す。
「こんなんに負けてたまるかよ」
「そうよ、八つ当たりしてやるわ!」
リューとともに、フレアティラミスも気を取り直す。
一方で桐壱(ka1503)はのんきに、お酒を飲みながら蜥蜴の姿を眺めていた。
「あら? ずいぶんと可愛いドラゴンさんですねぇ?」
ゆっくりとした口調は、酔っているわけでなく、生来のものだ。
そんな桐壱に、J・D(ka3351)は声を荒げる。
「おい、戦い前に飲酒とは、余裕じゃねぇか。影響出ねぇうちに、止めておけよ」
「これくらいなら、何の問題もないですよぉ」
始まるときには止めることを約束させ、J・Dも屯する蜥蜴たちを見やる。
「デカブツの相手をしたお次のゴトがまたデカブツ退治ときやがった。マァ、こっちのデカブツの方が可愛げがあるがね」
そうですよぉと頷く桐壱の隣で、城戸 慶一郎(ka3633)が嘆息する。
「普通の十倍近い蜥蜴なら、俺には十分ドラゴンだ」
尻尾を飛ばす蜥蜴と聞けば、なおさらである。
おぼろげな知識で思い浮かべるドラゴンに比べれば、危険はなさそうであるが。
「そう思えば戦いも気楽に……ならんな。せめて、気合は入れるとしよう」
「そうだぜ。蜥蜴相手に負けてられるか!」
「本物のドラゴンに会うためにも、こんな奴らは、さっさと倒すんだから!」
気合満々な二人に気圧されつつ、慶一郎も準備にかかる。
フレアティラミスが自警団員から聞き出した情報を元に、蜥蜴穴の位置を確認する。
「それにしても、みなさん知らなかったのね」
アリエスタ(ka4140)が意外そうな顔で、話し合いに合流する。
知っていたのかといわれれば、うんと頷く。
「あちこち旅をしているもの。勿論、知っているわ」
そして、町の人から聞いたドラゴンと蜥蜴の色の違い等も語る。
倒してはいけないものは、はっきりとわけるのだ。
もっとも、今は巣穴から顔を出すことすらないのだという。
「あのお料理がたべられなくなってしまうなんてあってはいけないわ」
蜥蜴の話の最中に、力強くアリエスタは告げる。
「んに? 蜥蜴の肉?」
「えぇ、美味しいわよ」
反応を示したフレアティラミスはしばし、考え、
「そ、そんなんでわたしは釣られないからねっ!」と謎の宣言をしていた。
「さて、これが件の巣穴か」
ドラゴンに感知されるギリギリのラインで、ハガクレ・フルマル(ka2126)がしゃがみこむ。
片足を突っ込みそうな大きさの穴が空いていた。
「……穴っぽこひらいてると、ほじほじしたくなるよな」
そっと日本刀を巣穴にねじ込もうとしたところで、後ろから蹴り上げられた。
「ガキみてえな事やってねぇで、前に出やがれ、前に」
蹴りあげたJ・Dは重ねていう。
「お前ェサンの持ち場だろうが」
「ちょ、やめ……冗談だっつーの! あぶねぇだろうが、テメェ耳長ァ!」
「戦いが始まるってェんだ、ぼうっとしてるお前ェサンが悪い」
「後で、なんかこう……なんかしらしてやるからな! 覚えてろよ!」
吠え掛かりながら、前へ行くハガクレに桐壱が緑の風をまとわせる。
「ふふ、J・Dさん。引率の先生みたいですねぇ」
「先生らしく、お酒も没収してやろうかい?」
「ここからはまじめにいきますよぉ」
怒られて桐壱はスタッフを持ち直す。
「こんな調子で、大丈夫なのか」
緊張感のない面々に、心なしか胃が痛む慶一郎なのであった。
●
それでも、戦闘となれば顔つきは変わるものだ。
前衛を担うのは、フレアティラミス、リュー、そしてハガクレだ。
フレアティラミスが聞いたという巣穴の多い場所や、穴同士の間隔を気にしつつ前へと進む。
全力で駆けていると、足元がおろそかになりがちである。
「ミスるわけにはいかないからな」
慎重さを忘れず、進む三人の視界にドラゴンはいた。
まるでサソリのように、近しい三匹がしっぽを上げる。
「自警団員の方が言っていたとおりね」
前衛からやや離れてアリエスタがつぶやく。
ドラゴンは、尻尾を射出するときサソリのような姿勢になる。
「……巣穴を避けて……っと。あ」
フレアティラミスが巣穴を避けたところで、その体勢に気づいた。
射出された尻尾は速度を上げて、目前に迫る。
「……っ」
穴に気を取られ、腕を掠めていく。
守りを固めていたが、戦場が荒れていると戦いにくい。
ハガクレはその穴を上手く避け、尻尾も風の護りが効いて逸れていった。
「きやがれ! 弾き返してやる!」
力強く告げるリューは、尻尾の弾丸を胸元で受けとめていた。
シールドを用い、タイミングを見計らって弾き落とす。
「さぁ、次はどうするんだ?」
挑発する用意に刃を向けながら、リューはさらに進む。
前衛が進むのに引っ張られる形で、後衛もやや前進する。
「よう、そこから先は穴だらけだ。逆の方向に寄せてくんな」
巣穴の密集地帯から引き離すように、J・Dは引き金を引く。
弾丸を前にドラゴンは一瞬動きを止めたが、効果は見られなかった。
「おいおい、つれないねェ」
「意外とすばしっこいようだな」
慶一郎もマテリアルを込め、射撃精度を上げるがドラゴンの動きを止めるには一歩足りない。
あるいは、弾丸程度では何も感じないのかもしれないが。
「私が攻撃するなら、尻尾も届くところになるのよね……」
悩ましげにアリエスタは、自身にプロテクションをかける。
彼女の用いる魔法、ホーリーライトの射程はドラゴンの尻尾より若干短い。
「前に出る皆様の活躍に期待ね」
「尻尾は生えてくるんですよねぇ?」
「そろそろ、ね」
話している間に、ドラゴンに前衛が肉薄する。
ぬるりとドラゴンの尻尾跡から、次の尻尾が生えてきていた。
●
「気持ち悪い生え方をするわね」
間近で目撃したフレアティラミスは、顔をしかめる。
ゆっくりと生えるのではなく、一気に生えてくる過程は見ていて気持ち良いものではない。
「悪いけど、飛ばす前に切り落とすわよ」
言うと同時に、日本刀を居合い斬りの如く振るう。
マテリアルを込めた一撃であったが、尻尾の根元を庇うようにドラゴンはぬるりと避けてみせた。
「ちょっと、何で避けるのよ!」
避けるものは避けるのだ。
「しっかしまぁ、これがドラゴンね……しっかりと避けやがるし、威厳もねぇな」
竜殺しにしては、報酬が報酬だと思っていたら案の定であった。
だからこそ、ハガクレはこの依頼を受けたのであるが。
「撃つ前に切り落としたいところだが、さて」
空を切った刃を構え直し、ドラゴンを見下ろす。
対峙している相手だけでなく、前衛が接敵していない二体も気にかけなければならなかった。
「あっちの尻尾は落ちたか」
ちらりと見れば、リューの目の前で尻尾が宙を舞っていた。
尻尾を落とされたドラゴンが身を捩った瞬間、頭を弾丸が撃ちぬいた。
ライフルのスコープから目を離し、J・Dが唸る。
「んー、しぶといやつだ」
マテリアルを感覚に集中させ、撃ちぬく瞬間に弾丸にも込めた。
ドラゴンは風前の灯であったが、悪あがきにリューへと顎を向けた。
しかし、その牙が届くことはない。
「終わらせられるなら、終わらせる」
慶一郎が放った弾丸が、ドラゴンの脚を撃ちぬく。
体勢の崩れたドラゴンはそのまま地に伏せると、動かなくなった。
「……奥にも二体いるようだな」
視界に不穏な影が映り、慶一郎は目を細める。
確認されていた五体に加え、二体のドラゴンが見つかったのだ。
ならば、早いこと倒すにこしたことはない。
「っと、しまった」
リューの視線の先で、ドラゴンが尻尾を飛ばす。
後衛を狙った尻尾は、空中で切り落とされていた。
「こんなところですかねぇ」
桐壱が合わせるように風刃を放っていたのだ。
狙われていたアリエスタが胸をなでおろし、光弾を放つ。
ハガクレの攻撃を避けた直後のドラゴンが、その攻撃をもろに受ける。
「尻尾が再生するより早く倒せばいいわけですけれど……」
と思案するアリエスタであったが、桐壱はしれっと風刃でとどめを刺しながら告げる。
「倒せるなら、倒したほうがよいですよねぇ」
「そういうことだな」
飛んできた尻尾を切り払い、ハガクレは次の標的へ足を進める。
同じころ、J・Dの弾丸でフレアティラミスが対峙するドラゴンの尻尾がはじけ飛んでいた。
「さんざんバカにしてくれたわね! 終わらせるわよ」
実は、三度尻尾への攻撃を避けられていた。
町人への恨みと、コケにされた恨みを込めて一閃――ドラゴンの背に深々と刃が刺さる。
マテリアルの込められた武器は、そのままドラゴンの身を断ち切った。
「さ、次よ。次」
切り替え早く、フレアティラミスは次の目標を探すのだった。
●
「動くなよって」
J・Dの弾丸が一匹のドラゴンをその場に縫い止める。
その間にリューが攻めこむ。攻撃を重視した構えから、刀を振り上げる。
避けようとしたところへ、慶一郎が狙いをつける。
慶一郎の弾丸は牽制の一手、これによりドラゴンの動きが止まる。
「くらええええ!」
一気に振り下ろした刃が、ドラゴンを一刀両断にする。
刃を振り払い、視線を移せばハガクレがもう一体に接敵していた。
ハガクレの刀は、ドラゴンを捉えることが出来ない。
「妙にスバシッコイな、ほんと」
もう一振りも避けられ、ハガクレは毒づく。
だが、避けた先を狙って桐壱は風刃を放つ。
「まずは一太刀、ですねぇ」
「そして、二撃目ね」
合わせるようにアリエスタが、光弾を飛ばす。
脚を穿たれ、ドラゴンの身体が傾く。
「尻尾ごとぶった斬ってやるよ」
洗練された一撃。
尻尾の付け根から、頭の方へハガクレの刃が滑る。
振り切ると同時に、ドラゴンは唸り声を上げて倒れるのだった。
残る二体の内、一体はリューとフレアティラミスに挟まれていた。
プレテクションをかけつつ近づこうとするアリエスタを尻尾が狙おうとする。
リューはぐっと前に踏み出し、至近距離で尻尾を受け止めた。
「ここが踏ん張りどころだな」
シールドで弾いた尻尾は地面を転がる。
返すようにフレアティラミスとリューの刃が交差する。
とどめを刺したのは、桐壱だった。
「残りも、終わりみたいですねぇ」
戦闘が終わりそうだとわかると、酒を取り出す。
J・Dは残り一体の動きを封じていて、気づかない。
「お、フルマルさんが決めたようですねぇ」
くぴっと酒を飲み下しながら、桐壱は告げる。
倒れたドラゴンたちは、溶けこむように消えていった。
●
「おうオッサン、ドラゴンとか言うからワクワクしちゃっただろーがコラ。俺のワクワク返せコラ」
報告に訪れた町長の家で、ハガクレは啖呵を切っていた。
「そうよそうよ。ドラゴン退治って聞いたから、依頼を受けたのに!」
本気にしていたフレアティラミスも、加わってまくし立てる。
その様子をお酒を飲みながら、桐壱が眺める。
「いいんですかねぇ、あれ」
「無理もねェ話だからなァ。度が過ぎるようなら止めるさ」
隣で受け答えるJ・Dも肩をすくめる。
ここまで迫られると思っていなかったが、町長にも策は合ったらしい。
ご馳走をご用意していると言った途端、ハガクレは溜飲を下げた。
一方で、フレアティラミスは声を上げる。
「そんなのにつられたりはしないからねっ!」
暗転。
「あら、なかなかいけるじゃない」
フレアティラミスは上機嫌で、蜥蜴料理に舌鼓を打っていた。
「これはいいおつまみですねぇ。お酒もおいしく頂けますよぉ」
「俺の手柄だぞ、キリーチ」
「いちゃもんつけてただけだろ」
満足そうな桐壱に、ハガクレが鼻を鳴らす。
J・Dが調子に乗らないよう、釘を差していた。
「名物だけあって、旨いな。仲間にも食わせてやりたいから、貰って行くぜ」
「これが食べたかったのよね」
リューとアリエスタも、独特の香辛料で味付けされた蜥蜴肉を美味しく頂く。
鳥に近く、やや筋肉質な味わいだ。
「あら、食べないの?」
アリエスタは離れた位置に座る慶一郎を見やる。
一人だけ席を外して、皆の様子を眺めていた。
「いえ……遠慮しておきます」
料理を薦めてくる町長にもそう告げて、慶一郎は座っていた。
パンをつまみながら、並べられた料理を遠目に眺める。
「蜥蜴を食べる……うん、無理だ」
姿そのままというわけではないが、さっき戦ったばかりである。
その姿が思い出されて、余計に食べる気が失せていた。
「次は絶対に、ドラゴンと出会うんだからね!」
「ドラゴンですかぁ、本当にいるのですかねぇ」
「いるに決まってるじゃない!」
やけ食い気味に、フレアティラミスは蜥蜴を食する。
まだ見ぬドラゴンに夢を抱いて、ドラゴンもどきの肉を食うのだ。
「蜥蜴肉で精をつけて、次の仕事も頑張ろう、ぜ」
ニヒルな笑顔を浮かべて、J・Dは励ましの言葉を贈る。
そんな面々を眺めつつ、町長は思う。
ドラゴン推しでより町の活性化を狙えるのではないだろうかと。
「あんまり、ややこしいことはしないほうがいいと思うがな」
その表情を察して、慶一郎がぼそりと呟くのであった。
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相談卓 フレアティラミス(ka0011) 人間(クリムゾンウェスト)|15才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/03/09 20:58:07 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/03/07 02:26:14 |