• 不動

【不動】森林運搬部隊強襲

マスター:蒼かなた

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/03/10 07:30
完成日
2015/03/17 06:32

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●偵察
 辺境で発生したマギア砦での籠城戦、そしてナナミ河での撃滅戦。
 帝国軍と辺境の部族達、そしてハンター達の尽力により数々の戦場で激闘が繰り広げられた。
 そんな中、要塞都市ノアーラ・クンタウの北部にて怠惰の歪虚が目撃されたという情報が上がってきていた。
 帝国軍及び部族会議はそれに怠惰の軍勢の何らかの意図があると見て調査を決定した。

 要塞都市ノアーラ・クンタウの北部。辺境では東部に位置するそこは南西部とは違い温暖で緑も多い。
 そして目撃情報があった周辺には多くの森林地帯があり、そこに怠惰の歪虚達が次々と集まっているとのことだ。
「そんでまずは俺達ハンターが偵察ってわけだね」
 森の藪の中に周囲へと視線を配る男が一人。
 艶消しされた鈍色のプレートメイルに身の丈に迫るグレートソードを背負っている。
 名はブレア。この道十数年の熟練ハンターである。
 暫くそこで待機していた彼の元に、木の上から人影が降りてくる。特徴的な尖った耳を見るにエルフの男だ。
「見つけましたよ。ここから北に1kmほど行った場所に集結している広場を発見しました」
 エルフの男が小さな声で呟く。
 数は少なくとも数十。その内半分が傷を負っているようだった。
 また、装備も集められているらしく壊れた武具を修理している様子もあったと言う。
「なるほどね。しかし手負いとはいえ奇襲してもどうにかなる数じゃねーな」
 そう呟いたところでブレアの傍の藪が揺れ、そこから兎の耳がひょこっと生える。
「ふう、ここだったか。ちょっち迷っちゃった」
 そしてすぐに頭を出したのは人間の女性だ。頭から生える兎耳はアクセサリーなのか彼女が頭を揺らす度に左右にゆらゆら揺れる。
「そちらはどうだったんだい?」
「それが聞いてよー。あいつら森の木を根っこから引き抜いててさ。アレが育つのに一体どれだけ……」
「あー、分かった分かった。愚痴は帰ってから聞いてやるから重要なとこだけ話せ」
 ぶーっと唇を尖らせる兎耳の女にエルフの男は苦笑を浮かべ、ブレアはやれやれと溜息を吐く。
「何か新しい道みたいなの作ってた。結構幅も広かったし、何度も使われた様子があったからあの道使って色々運んでるんじゃないかな?」
 その報告を受けてブレアは唸る。その道らしきものは方角的に歪虚達が集まっている広場へと続いているようだ。
「よし、そんじゃその広場と道。詳細を確認してから一旦帰るぞ」
 ブレアはそう言い、頷いた二人と共に森の中を駆けた。

●輸送部隊襲撃作戦
 ハンターオフィスの一つの部屋にてブリーフィングが行われる。部屋に集められたのは数名のハンター達だ。
 そして彼らの前には一人のオフィス職員と、その傍に大剣を背負ったブレアが控えている。
「皆様お集まり頂きありがとうございます。それでは早速ですが説明に入ります」
 オフィス職員が淡々と今回の依頼についてを説明して行く。
 今辺境の地で起きている対怠惰の歪虚の撃退作戦については皆知っているだろう。
 そしてその前線から撤退した怠惰の歪虚達が現在、要塞都市ノアーラ・クンタウの北部に集まりつつあるとの情報がある。
 怠惰の歪虚が何を考えそこに集結しているかは分からないが、何れにせよそこで部隊を再編成し次の行動に移るだろう。
 その行動を起こす前に、可能な限り歪虚へダメージを与えるのが今回の依頼の目的だ。
「そこで、先立って偵察を行ったところ歪虚が集結を行っている場所を発見しました」
 ハンター達に提示された情報によると、そこは鬱蒼と茂る森のほぼど真ん中。
 そしてその場所に集まる怠惰の歪虚の数は百には届かないがそれに近い。修理途中ではあるが武具も多く、またある程度の歩哨を立てて周囲を警戒しているようだ。
 この情報を見る限りでは、とてもではないがここに集まったハンター達だけでどうにか出来るものではない。
「なに、慌てんな。俺達の仕事場はそこよりちょいっと手前だ」
 ハンター達の心境を察したのか、壁に凭れ掛かっていたブレアがそう口にする。
「はい。さらにその広場に向かう道が発見されています」
 オフィス職員がそう言うと、表示されていたマップが少し横にスライドする。そして森の端から先ほどの怠惰の歪虚の集結地点まで青いラインが引かれる。
「このライン上は森の木々が伐採され、簡易ながら道が作られています」
「まっ、怠惰の歪虚は図体がデカイからな」
 この道は移動及び運搬用の道らしく、荷車のようなものを使ったらしい車輪の跡も確認されている。
「皆様にはこの道を通る輸送部隊を襲撃していただきます」
 この道は散発的に怠惰の歪虚が通っており、そして時折荷車を使った輸送部隊の往来が確認されている。
 今回の依頼はその輸送部隊を襲撃し、少しでも相手の戦力を削ぐことだ。
「因みに俺とあと何人かが別働隊で動く。そっちも上手くやってくれよ?」
 そう言ってブレアは挑発的な笑みを浮かべた。

リプレイ本文

●待ち伏せ
 辺境の東部に位置する森。冬という季節であっても葉は落ちておらず、少し先を見るのも難しいほど草葉が生い茂っている。
 そしてその森の中に不自然と言っていいほどに開けた場所、いや道があった。
 木を強引に引き抜いた所為か、へし折られて放置されたらしい根っこの部分があちこちに見受けられる。
 その両端に位置する木々の隙間から、道に向けられる視線が複数あった。
「輸送ねえ……歪虚連中は何を運んでるのかね」
 木に背を預けながらアーヴィン(ka3383)はぽつりと呟く。
 歪虚の生態については謎が多い。今回この森に集っている理由も殆ど分かっていない。
「まっ、それを調べるのも今回の仕事の一つだよ」
 手にしている銃の具合を確かめながら星見 香澄(ka0866)はその呟きに応えを返す。
 アーヴィンは独り言のつもりだったが、その返って来た答えに肩を竦めて応えた。
「しかし負傷兵か……騎士としては見逃すべきなのかもしれないが」
 全身を甲冑で纏ったイーディス・ノースハイド(ka2106)が金属を擦らせる音を僅かにさせながら口元に手を当てる。
「相手は歪虚だ。騎士道を適用させる相手じゃないと思うがね」
「確かに正々堂々の正面対決だけが戦いではないけれど、難しい問題だね」
 アーヴィンの言葉は確かにもっともだが、イーディスは割り切れないのか言葉を濁した。
 そんな会話がされている隣で、アメリア・フォーサイス(ka4111)がトランシーバーに向かって話しかけている。
「こちら異常無しでーす。そちらは?」
『……こっちも同じだ。歪虚の姿はまだ見えないな』
 少し間を置いてトランシーバーから聞こえてきたのは若い男――カルス(ka3647)の声だった。
「そっかー、けどホント遅いよね。じーっと待ってるだけだと何だか肩が凝ってきちゃって」
『…………仕事が終わったらマッサージにでもいけばいいんじゃないか?』
 少し言葉に窮したが、カルスは少し呆れを交えた声でそう応えた。
 アメリア達がいる場所とは反対側の森の中、そこでカルスはトランシーバーを半目で見ながら溜息を吐く。
「仕事の前に溜息なんてどうしたんだい?」
 その様子に紫月・海斗(ka0788)が声をかける。
「いや、何でもない。それより歪虚の影は?」
「まだみたいだな。まあ、待ち伏せは我慢と忍耐だ。時期に来るさ」
 カルスの言葉に海斗は手をひらりと振って見せる。
「このまま来なくてもいいんだけどね」
 そんな言葉を呟いたのは眠たげな目を擦りながら監視をしているエハウィイ・スゥ(ka0006)だった。
「いや、それは不味いだろう。色々と」
「だって眠いしダルいしやる気ないし……」
 海斗の言葉にはぁーっと溜息を吐くエハウィイ。ただその視線は道から外れることはない。
「分かってるよー。いちおー私もハンターで巫女見習いというヤツだし」
 逃げ出すわけにはいかないよねー、とエハウィイは溜息を吐いた。
「なにやら個性的な奴が揃ってるな」
 先ほどのアメリアといい、このエハウィイといい、そう思いながらカルスはここに居るもう一人に視線を向ける。
 そこでは屈伸をしたり伸びをしたりと準備運動をしている岩井崎 旭(ka0234)だった。
「巨人相手に打ち合う。待ちに待った機会だ」
 ただ純粋に戦闘を楽しめる素養があるのだろう。これから始まる巨人との戦いに思いを馳せているようだった。
 個性豊かなメンバーが揃ったハンター達。そして待ち伏せを開始してから3時間程経った頃、道の向こうに動く影が現れた。
 
●強襲
 ガラガラと音が鳴る。目の前に大きな荷車の車輪が回っている。
 そしてそれを引くのは怠惰の歪虚、巨体を持つ一体のサイクロプスだった。
 その周囲には同じサイクロプスやトロルが列を成して歩いている。情報通り負傷しており武器も持たず防具も纏っていない個体が多く見られる。
 そしてその中で一体だけ異様な存在がいた。他の個体とは違い黒い肌を持ったサイクロプスだ。鉄の棍棒を手にし、鉄製の防具を纏っている。
「見るからに偉そうなのがいるなぁオイ」
 木の陰から覗くように見上げる海斗はつい吹きそうになった口笛を口を押さえることで止める。
「見るからにこの輸送部隊の指揮官って感じだな。てなると、狙いはアイツからか」
 カルスの言葉は全てのハンターの共通認識だろう。黒いサイクロプスは明らかに纏う雰囲気が違う。
 『ふふ~、こっちの準備はオッケーです。そっちもオッケーですかー?』
 無線機の向こうからアメリアの声が聞こえてきた。ややテンションが上がっているのかその声色は高揚しているように聞こえる。
 カルスが他の仲間に視線を向けると、皆が一様に頷いた。
「問題ない。作戦開始だ」
 その言葉と共に両方の木々の間から旭とイーディスが飛び出す。それと同時に海斗、香澄、アーヴィン、カルス、アメリアが黒いサイクロプスへ向けて銃と弓による射撃を行った。
『グオオォ!?』
 黒いサイクロプスが突然の痛みに悲鳴を上げる。しかし、放たれた銃弾や矢はその半分が鎧に弾かれており大した傷になっていないように見えた。
 だがそれでも構わず接近した旭は身の丈を超える巨大な斧を振りかぶる。
「さあ、楽しもうぜ、トレークハイトォッ!」
 旭の雄叫びと共に横薙ぎに斧を振るう。それは黒いサイクロプスの具足に叩きつけられた。
 その威力は絶大でその金属製の具足を半ば砕く。しかし、そこで威力は減衰し黒いサイクロプスの肌には僅かな傷しか与えられなかった。
「それならもう一度――」
「いや、下がれっ!」
 もう一振り、そう思い旭が斧を振りかぶったところで海斗が叫んだ。
 その声に旭は半ば反射的に、半ば強引に地面を蹴ってその場から飛び退る。
 次の瞬間に振るわれた棍棒が地面に叩きつけられ、まるで爆弾が爆発したような音と共に地面が抉れ土と煙が周囲に弾け飛ぶ。
 黒のサイクロプスは肩付近に刺さった矢を気にもせず、力任せに棍棒を振りまわす。
「こいつは予想外に手強そうだな」
 黒のサイクロプスの堅牢さにアーヴィンは眉を顰めつつ呟く。
 さらに巨人達は強襲に一瞬浮き足立ったものの狙われたのが黒のサイクロプス一体だけだった所為か、直ぐに襲撃に対応しようと他のサイクロプスやトロル達が武器を手にハンター達に襲い掛かる。
「こりゃ不味いな」
 海斗はそう言ってライフルから刀へと持ち替え迫ってくる巨人達に肉薄する。
 一体のサイクロプスが振るった棍棒を寸でのところで避けると、そのままの勢いで脚部に向けて刀身を振るう。
 だがその手に返って手応えは硬い感触。見るとそのサイクロプスの足には皮製だろうか、あまり良質のものには見えないがしっかりと防具を着けていた。
 だが次の瞬間、数発分の銃声がしてサイクロプスの上半身から血しぶきが舞う。上半身に関しては鎧は纏っていなかったようでそれをまともに受けたサイクロプスは僅かによろける。
「狙撃の醍醐味はワンショットワンキル……とはいかないか~。タフだねやっぱり」
 膝立ちをしていたアメリアはスコープを覗きながら次弾を装填する。そしてもう一度引き金を引く。
 その弾丸は確かにサイクロプスに突き刺さるが、元々狙った場所には当たらず腹部の分厚い脂肪に受け止められてしまった。
 狙いが難しいのも当然、今居るのは森林だ。射程を取ろうと思うと木の枝や葉が視界を奪い、上手く狙いをつけられないのだ。
「ここじゃ駄目だね。ボクも表の舞台に参加しようかな」
 同じく銃を撃っていた香澄は敵の接近に対して銃撃が難しいと判断し、鍵爪のついた機械的な手甲を装着する。
「さて、踊ろうか」
 その言葉と共に香澄の手にした鍵爪に紫電が走る。バチバチと音をたてるそれを接近していた一体のトロルの足へと突き刺した。
 トロルは悲鳴を上げつつ、流れる電流に体を痺れさせ思わず膝をつく。そして動きが止まったところに、その額に稲妻の如く放たれた矢が突き刺さった。
「図体がデカイってのはありがたいぜ。ヘッドショットも狙い易い」
 矢を放った手に赤い稲妻の模様を浮かばせながらカルスは呟く。
 しかし、額を貫かれたはずのトロルは倒れることなく、あろうことか矢が突き刺さったままカルスのいる森の奥へと突撃を始める。
「おいおい、何で生きていられるんだ」
 木々が邪魔して中々こちらに来られない様子のトロル。その異様なタフさに辟易しつつ、カルスはさらに一矢を放つ。
 その頃一方、敵の進路を邪魔する為に正面に立ったイーディスには二体のサイクロプスが襲い掛かっていた。片方は武装しており、もう片方は片腕がない負傷した個体だ。
「巨人の攻撃、如何ほどのものかな?」
 イーディスは巨体から振るわれる石斧に対し、大盾を構えてそれを受ける。
 その衝撃は想像通りに凄まじく、踏みしめていた地面を削りながら後方へと押し出される。
「っ! これは何発も受けるわけにはいかないかな」
 そう口にしている間に、もう一体のサイクロプスの振るう拳がまた大盾に叩きつけられる。
 先ほどよりは弱い。だが鉄槌で殴られたかのような衝撃は気を抜けば吹き飛ばされかねない威力があった。
 その時、構えた盾の向こうから此方に向かい荷車を引いて進んでくる巨人の姿が見えた。
「不味いな。敵はこのまま突破を考えているようだぞ!」
 イーディスの言葉でそのことに気づいたハンター達。それに気づいてそちらに向かおうとするが、それを邪魔するように武装したサイクロプスとトロル、そして指揮官らしき黒いサイクロプスがその進路を塞いできた。
「こいつら、随分と統率が取れてるんだな」
 苦々しく思いながら海斗はそう吐き捨てる。
「それなら速攻で倒すだけだ!」
 斧を構えた旭は立ちはだかる黒いサイクロプスに向けてそれを振るう。黒いサイクロプスはそれに対し鉄の棍棒を構え、それを受け止めてみせた。
 さらにアーヴィンと海斗が追撃をかけようとするが、その射線を遮るようにしてサイクロプスとトロルが接近してきて上手く狙うことができない。
「ちっ、邪魔するな!」
 海斗がショットアンカーの引き金を引くと、射出された錨がサイクロプスの肩に突き刺さる。それを手繰りながら一気にその巨体の上に登り、雷を纏った刀をその肩へと突き刺した。
 サイクロプスは悲鳴を上げながら体を痺れさせる。だが、次の瞬間その痺れる体で肩にいる海斗の体を掴みとった。
「ぐ、あああぁぁぁ!?」
 万力のように締め上げられ、海斗の体の骨が軋み嫌な音をたてる。
「放せ、木偶の坊っ」
 アーヴィンの放つ矢が海斗を掴む腕に突き刺さりその痛みで握る力が緩む。
 その瞬間に海斗はすかさず自分を掴む手に合体剣から取り外した短刀を突き刺した。
 二度目の痛みに手を開いたサイクロプスの手から海斗の体は投げ出され地面に落ちた。何とか受身は取ったものの、折れた骨が内臓を傷つけたのか咳と共に口から血を吐く。
「大丈夫?」
 その海斗に近寄ったエハウィイは首をかしげながら尋ねる。
「見ての通り。ちとヤバイ」
 そう、と呟いたエハウィイは白いメイスを海斗に向ける。その先に淡い光が灯り、その輝きは海斗の体に滲みこむようにして吸い込まれていく。
 すると海斗の体中に走っていた痛みが和らぎ、体も僅かながら自由に動くようになった。
「こいつは助かる。ありがとよ」
「んっ」
 エハウィイは一つ頷くと戦場へと視線を向ける。
 状況は一進一退、どうやら傍観を決め込んでいられるような状態ではない。
 難儀な性格をしているなと自分でも思いつつ、エハウィイも積極的にその戦闘への参加を決めた。
「ボクが先に行く。合わせて!」
「了解っ」
 香澄の言葉に旭が応える。
 香澄が黒いサイクロプスへと駆ける。黒いサイクロプスはそれに気づき棍棒を横薙ぎに振るおうと振りかぶる。
「レディに手を上げるのは許せないな」
 そんな軽口と共に放たれた矢が振りかぶる腕に当たる。それだけでは腕を止めることは出来なかったが、狙いのズレた棍棒は香澄の頭上を通り過ぎた。
 接近に成功した香澄はちらほらと見える鎧の隙間に鍵爪を突き刺し、渾身の雷撃を直接流し込んだ。
 全身に走る雷は鎧を伝わり、熱されて焼かれた肌から煙が上がっている。
「がら空きだぜ!」
 動きの止まった黒いサイクロプスに再び旭が接近する。目標が動かないのならば攻撃に全力を傾けることが出来る。
 マテリアルを注ぎ込んだ腕が膨れ上がり、振りかぶる斧もマテリアルが充填され淡く発光する。
「受けろよ、俺の全力をッ!」
 狙うのは初撃で具足を壊した脚部。振るった斧は黒い足首に真横に叩きつけられる。
 膂力と斧の重量での力任せの一撃。丸太のように太い足首は僅かな抵抗を感じさせるもの、旭はそのまま強引に斧を振りぬく。
『グガアアァァ!?』
 足首を半ば断たれ、黒いサイクロプスは自重を支えきれずに後ろ向きに転倒する。
「よし、トドメを……」
「いや、ここまでのようだ」
 斧を構えなおした旭にアーヴィンが声をかける。
 その視線の先ではアメリアと、彼女に肩を借りているイーディスの姿があった。
「いやー、危なかったよ。ホント死ぬかと思った!」
「面目ない。敵を逃がしてしまった」
 黒いサイクロプスや他の巨人達との戦闘で気づかなかったが、その間に足止めをしていた歪虚達に突破を許してしまっていたのだ。
 現状、黒いサイクロプスはほぼ再起不能だろう。他の巨人達も指揮官がやられた所為か武器を構えたままこちらの様子を窺っている。
 対してこちらは戦闘続行は可能だがそれぞれ怪我を負っており長期戦は難しいと言わざるを得ない。
「引き時か」
「増援がこられても厄介だからな」
 倒しきれなかった。苦い思いを感じながらもハンター達は撤退を決めた。
 巨人達は追ってくることもなく、ハンター達は無事にその場を離脱する。

 数十分後、ハンター達は森の中を駆けているところで近くの茂みから見覚えのある人物が現れる。
 グレートソードを背負った戦士ブレアだった。その体には幾つかの生傷が見て取れる。
「よう、そっちの首尾はどうだった?」
 ブレアの問いにハンター達は言葉を詰まらせる。それを察したブレアはそうかいと呟き、後ろに控える兎耳の女を背負うエルフの男に視線を向ける。
「痛み分け、ってところか。何、命があれば次がある」
 励ましか慰めか、ブレアはそんな言葉がハンター達にかける。
 辺境を蝕む歪虚の脅威。それを今一度感じながらハンター達は一同帰還することとなった。

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参加者一覧

  • もえもえきゅん
    エハウィイ・スゥ(ka0006
    人間(紅)|17才|女性|聖導士
  • 戦地を駆ける鳥人間
    岩井崎 旭(ka0234
    人間(蒼)|20才|男性|霊闘士
  • 自爆王
    紫月・海斗(ka0788
    人間(蒼)|30才|男性|機導師
  • 戦場の眼となりて
    星見 香澄(ka0866
    人間(蒼)|25才|女性|機導師
  • 鍛鉄の盾
    イーディス・ノースハイド(ka2106
    人間(紅)|16才|女性|闘狩人

  • アーヴィン(ka3383
    人間(紅)|21才|男性|猟撃士
  • 赤雷の幻影
    カルス(ka3647
    人間(紅)|22才|男性|猟撃士
  • Ms.“Deadend”
    アメリア・フォーサイス(ka4111
    人間(蒼)|22才|女性|猟撃士

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依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
イーディス・ノースハイド(ka2106
人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2015/03/10 02:33:58
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/03/08 12:25:10