菓子の力?

マスター:香山さくら

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/07/01 07:30
完成日
2014/07/10 22:23

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●辺境の草原
 村の周囲に広がるさほど深くもない森を突っ切ると、疎らに潅木の茂みが散らばる草原が広がる。
 暫く雨が続いた後の晴天でもあり、巣穴にこもっていた小動物でも出歩いていないかと馬首を返して相棒に声をかけた。
「なにか居そうか?」
 遠目が利くことにかけては村でもやつの右に出るものはいない。
 この辺りの小物を狩るなら俺たち二人で十分だ。雑魔共でもうろついているならさすがに分が悪いが、まあ、俺たちなら逃げ切れる。
 獲物には程遠い連中だが見つけたなら放置できる訳もなく、とはいえそれなりの面子でなきゃ逆にこっちが餌になりかねない。
 まだ山の端からいくらも離れていない朝陽に目を眇めながら相棒が首を横に振る。
「いや、動いていそうなやつらはいねえみたいだが……んっ! 何かあるみたいだ」
 手綱を引いて馬首をめぐらす相棒に続いて暫く駆けると、俺にもようやく『何か』とやらが見えてきた。
 黒い球状の……そう、こんな辺境ではめったにお目にかかれないが、チョコトリュフとか言ったっけ……そんな脈絡もない考えが一瞬頭を過ぎる。
 近づいてみると、どうやらサイズを勘違いしていたらしく大き目のりんごほどもありそうだ。
(こいつは一口にゃ入らんな)
 性懲りもなくそんなことを考えながら馬を下りる。
 潅木の茂みの手前に転がる黒い球体に向かって足を踏み出した時、そいつの輪郭がゆらりと動いた気がした。
 背筋を冷たいものが流れる。
(これは……)
 思った瞬間、横合いの茂みから飛び出した影が、黒い球体を掠めて潅木の背後に身を隠した。
 カリカリと固い実を齧る音が響く。突然、潅木の後ろで何かが膨れ上がり、縞模様の毛皮が樹上に現れた。
 潅木越しに振り向いた瞳には剣呑な闇が揺らめいている。
 魅入られたように立ち尽くしていた俺だが、相棒の叫び声でようやく足が動きだす。
 背後の馬に駆け寄り、飛び乗りざまに鞭を入れる。
 相棒と轡を並べて駆ける背後から、潅木が踏みしだかれる音が響く。
 恐る恐る振り返ると、先ほどとは打って変わった緩慢な動きで歩いてくるシマリスの姿が見えた。しかも、先ほどまで動くものの見当たらなかった草原を走り回る小さな姿もいくつか。
(一匹じゃねえ!)
 考えつつ森に飛び込むと、一目散に村を目指した。

●ハンターオフィス
「辺境の村から雑魔の討伐依頼です。普通の倍くらいのサイズ数匹と……更にたまに8倍くらいって……」
 緊急らしい依頼内容を説明しようとして言葉につまる案内係。
 巨大化した雑魔から逃げつつ横目でチラ見した程度だけに、目撃情報はいたって大雑把である。
 村から目的地までは多少腰の引けた目撃者達がなんとか案内することになっているらしい。
「とにかく、よろしくお願いします」
 乏しい情報をハンター達に開示しながらぺこりと頭を下げる案内係であった。

リプレイ本文

●情報収集
 森の中を8人と2頭と1匹が連れ立って進む。
 リアルブルー出身の猟撃士が2人、エルフとドワーフの霊闘士にクリムゾンウェスト出身の聖導士と闘狩人と言う編成のハンター達と、依頼人でもある案内人2名からなる一行である。
 敵を見つけたら安全な場所に退避を、と言うセレン・コウヅキ(ka0153) の勧めに、案内人達は愛馬を引いて来ていた。
 1匹はミリア・コーネリウス(ka1287) が連れてきたドーベルマンだ。
(ふむ……また情報の少ない依頼だな……)
 霧島(ka2263)の思いは同行者達に共通のようで、イリヤ・エインブロウ(ka0897)の声が森に響く。
「『たまに8倍』って何事だよ。俺の知ってるリスと違うんだけど」
 あわてて言い訳を始める案内人達に、
「ま、雑魔相手に突っ込むだけ野暮だよねぇ」
 とへらへら笑い返す辺り、イリヤも別に彼らを責めている訳ではない様子。
「リスがたまに8倍くらい、との事ですが大きくなる際に前兆のようなものがなかったでしょうか? 大きくなったリスだけ何か変な行動をしていたとか? 他に何かこれはおかしいと思う事があれば些細な事でも覚えていれば教えて頂きたいですね」
 セレンの問いに記憶を辿る2人に、イリヤも答えを促す。
「なんでもいいんだよ。妙に馬が怯えてたとか、変なものが落ちてたとかさ?」
 霧島も不足がちな情報を補おうと聞き込みに加わる。
 結果として丸くて黒くて表面のでこぼこした『菓子』らしき物を食べた直後に巨大化したらしいことだけはおぼろげに判明した。
 逃げた本人達は気づかなかったようだが、巨大化したリスが迫って来た時追いつけなかったと言うのも、菓子を奪った素早さを考えれば奇妙。明らかに行動速度が落ちている。
「それのせいでリスが巨大化した、って推理していいのかねぇ?」
 大方に異論はなさそうだ。
「巨大化に割り込んで稲妻の一撃なーんてできるわけないしね、リス君たちには悪いけどお仕事お仕事」 
 情報に耳をそばだてていたティアナ・アナスタシア(ka0546)は、妙な所に得心がいったのかなにやら意味深なことを呟く。
「でも……大きなリスか……こんな状態じゃなければもふもふしたかったなあ」
 微妙に本音も垣間見えるティアナである。
 一方、一際小さな体に、身の丈に余る盾を担いで同行していたノノトト(ka0553)は、大人たちの会話に首を傾げた。
(お菓子っていうのはよくわかんない……)
「リスかぁ……かわいいけど、雑魔なら倒さなきゃ」
 あまり難しいことは覚えられないから、大人のハンターに判断は任せようと考えながらポツリと呟いた。
 無論、あくまでもクリムゾンウェスト的な基準での大人達ではあるが。
 歩きながらの相談の結果は、ティアナとノノトトの2人が巨大リスを足止めしている間に、残りの全員で小型のリスを殲滅することに決まった。

●草原の戦い
 やがて一行の前に視界が開ける。
 波打つように広がる草原は海面の様にも見え、2m程の高さに枝を広げた潅木とその下生えの茂みが草の海に浮かぶ島のように点在していた。
 ある程度距離はあるが、巨大化したリスはどうにかハンター達にも見て取れ……しかも2匹に増えている。
 案内人達は小型のリス3匹程が叢から叢へと走り回っていることを告げると村へと帰って行った。叢や潅木の背後に隠れたままのリスは、さすがに見つけられなかったらしい。
「ふむ……行くか」
 サングラスを外した霧島の瞳が金色に変わっている。ミリアの瞳も赤く染まり、ティアナの黒髪も白く変じていく。
 道中の相談で大型の足止めを担当することになっていたティアナとノノトトは、2匹の分担を決めるとそれぞれの敵を目指して駆け出した。
 小型の殲滅へと向かう手筈のセレン・イリヤ・ミリア・霧島も、案内人が指し示した目標に向けて走り出す。

 巨大リスの一方へと接近したティアナは、持参したナッツの袋を開けて餌をちらつかせながら、普段と打って変わった尊大な口調で誘いをかける。
「さあこい、木偶リスども! 我と少し踊ろうぞ!」
 ゆらゆらと移動していたリスが動きを止め、ギロリとティアナに視線を向けた。鼻をヒクつかせると徐にティアナに向かって歩き始める。
「他愛もない。天上の鎧を我が下に! プロテクション!」
 餌に食いついた以上、仲間達が小型を殲滅するまでこちらは守りを固めて逃げの一手だ。

 もう一人の囮役ノノトトも目標に近づくとスクエアシールドを構えた。大人の半身を覆うための盾も小柄なノノトトにとっては頭まですっぽり覆って余りある。
 目の前に近づいたところで、巨大リスがいきなりスクエアシールドの天辺を両手で掴み覆いかぶさるように噛み付いて来た。
「わわっ、かわいくない! お、おおお、大きいこれ!」
 頭上30cm程にある盾越しに、更に見下ろすようにして盾の縁を齧り続ける巨大リスに思わず叫ぶ。
 実際にはそれほど強い力でもないのだが、幻覚の効果もあるのか意外と圧力が高い。
 ノノトトは『動かざるもの』を発動し守りを固めた。あとは小型殲滅までなんとかこの場で頑張るしかないだろう。

 一行の中で群を抜いて長射程の銃撃が可能な霧島は、敵が集結するのを防ごうと撒き餌をしながら皆とやや離れた場所にいる小型リスの排除を試みていた。
 雑魔とは言え元が動物なら餌で引き付けられないかと考えて、ナッツやチーズを用意してきている。
 餌を仕掛けると、距離をとって敵が寄って来たところを猟銃で狙い撃つ。
 歪虚であれば身の養いなど重要ではないのだろうが、生来の本能は完全に消されてはいないようだ。
「ちょこまかと動き回る……だが、外しはしないぞ」
 ジグザグに走りながら餌を掠め取ろうとする1匹を跳弾で屠ったところで、別のリスが近くの繁みから飛び出してきた。
 とっさに手にした猟銃を突き出す。銃身に噛み付いた相手を振り回しつつ、ホルスターから抜き出したデリンジャーを押し当て、引き金を引いた。
 地に落ち、足を引きずりながら逃げようとする敵に歩み寄り、強弾で止めを刺す。
「さて、こちらは片付いた……次は、あちらか……」
 形を失っていく雑魔に一瞥をくれながら仲間たちへと視線を向けた。

 一方、小型の一群へ近づいたセレンは、更に接近するイリヤとミリアを援護するべく、射程に入った1匹に目掛けオートマチックピストルを撃ち放つ。
 接近戦に向かう2人を射線から外しながらという条件に加えて、リスの動きも思いのほか速く、そう簡単には当たらないようだ。
 数発目の弾丸が小型リスを捉える。
「小さくとも可愛くとも雑魔は雑魔。民に被害が出る前に片付けさせてもらいます」
 一気に動きの鈍くなった敵を、強打を使用して踏み込んだミリアのグレートソードが両断した。
 二つになって地面に落ちた敵が霧散していくのを確かめ、次の目標に向かう。
「火力は期待すんなよ」
 そんな軽口を叩きながら次の獲物へと狙いを定めるイリヤだが、既に闘心昂揚を発動している。
 方向転換して一直線に向かってくる敵に、すれ違いざまクラッシュブロウを載せたスタッフを振り抜く。
 鈍い音と共に撥ね飛ばされるリスの落下地点をセレンが狙い撃った。
 ミリアは移動経路に近い叢をグレートソードで次々に薙ぎ払うとともに、草地にナッツをばら撒いてリスを誘い出そうとする。
 何度目かに撒いた餌に叢から跳び出したリスが食いつく。ナッツごと一刀両断とばかりにグレートソードを振り下ろすが、避けられた刀身は土を撥ね飛ばして地面へと食い込む。
 ミリアがグレートソードを引き抜こうとする隙に、リスは足元を駆け抜けながら鋭い歯でミリアを切り裂いて行った。
 尤も、戦友の加護に守られたのか意外なほどに傷は浅い。ミリアは逃げる敵に向かって引き抜いた剣を横薙ぎに切り払う。
 尻尾を切断され着地のバランスを崩したところへセレンが追い撃ちを掛け、行く手を遮ったイリヤが息の根を止めた。

 囮の一方、ノノトト側の押し合いはほとんど膠着状態のまま推移している。
 時折業を煮やして方向転換しようとする大型に、ラウンデル・ダガーで攻撃しようかと迷うのだが、その度に怖くなってスクエアシールドだけで押さえ込んでいるノノトト。
 近くの叢に背を向けたところで、足元に鈍い痛みを感じた。
 目をやると一匹のリスが噛り付いている。歯を食いしばって痛みを堪えるところへ銃声とともに近くの地面に土煙が上がり、リスが口を放して跳び退った。
 そのまま別の叢に逃げ込もうとした敵だが、走り出した方向が悪い。セレンと霧島の十字砲火を浴びて避けきれず力尽きた。

 他方の囮役ティアナの方はと言えば相変わらず少し離れた所で大型相手に追いかけっこを続けている。
 とは言え、あまりに大型の動きが鈍いため、距離を取りすぎると大型がそっぽを向くことから、撒き餌で気を引いたりすると言う手間はかかっているようだ。
 リス達に合流して連携しようなどと言う知恵がないのが幸いしている。
 とりあえずこちらは差し迫った危険はないように見え、見渡せる限りの範囲内に小型の姿がなくなったことで、一同は怪我をしたノノトトの方へと向かい、大型への集中攻撃が始まった。
 一足先に大型の背後に取り付いたイリヤが、筋力充填を掛けて背中からスタッフで殴りかかる。が、直撃したはずの打撃はなぜか手応えが微妙。尻尾のモフ毛のせいという訳でもなさそうである。
 大型もさしたる痛痒を感じていないらしく、相変わらずノノトトのスクエアシールドに噛り付いたままだ。
「このデカブツ、なんかおかしいぜ」
 集まってきた仲間達へ警告を飛ばす。
 斜め後方に回り込んだセレンはノノトトとイリヤを避けるため、遠射を使って狙いを大抵の生物の急所である頭部へと絞る。たとえイリヤのように攻撃がすり抜けても仲間の頭上を越えるだけ、次は心臓辺でも狙えば良い。
 だが、どうやら狙いは正解だったらしく、頭部を打ち抜かれた巨大リスは弾かれたように倒れる。
 風船が縮むように頭部に向かって小さくなりながらも這って逃げようとするところへ、イリヤが止めを刺した。
 ようやく巨大リスから解放されたノノトトは、ほっとした様子で足の怪我にマテリアルヒーリングを施す。

 1匹目の巨大リスが倒れかけた時点で霧島とミリアはティアナの元へと踝を返していた。
 もう1匹を牽制しながら遠目にこちらの戦況を確認していたティアナも、仲間達の方へと進路を変え走り出す。
 振り返って確認するが、どうやら全てのハンターが同じ方向に揃ったことで脇目も振らずにこちら向かってくるようだ。
 仲間との距離が縮まったと思った矢先、視界の隅に突然動くものが現れた。
 叢に隠れていた小型が1匹一直線にティアナへ向かってくる。続いて銃声の方向へ、更に霧島の銃口の先へと目を向けるともう1匹もこちらに向かう。
 狙われたか。と考えて、2匹の目標が少しズレていることに気づく。
 あわてて辺りに目を配ると、黒い球体が草の上に浮かぶ。一瞬、巨大化という言葉が脳裏を過ぎった。
「我の光の一撃! ホーリーライト!」
 白い輝きが黒い球体を突き抜けると、その外形あっけなく歪み消滅する。同時に、目前に迫っていた小型の1匹が足元を切り裂いた。
 更にもう1匹が躍り上がる。が、続く銃声がその跳躍を弾き飛ばした。
「この程度の怪我、大したことはない……怯まぬ勇気を我に! マテリアルヒーリング!」
 敵はとりあえず次々と参戦する仲間に任せて回復を図る。
 その間にもセレンの銃は無傷の小型を射抜き、駆けつけたミリアが止めを刺す。
 先に弾き飛ばされていた1匹も、少し遅れて到着したイリヤが仕留めた。
 少し離れて立つ霧島は更に先、巨大リスへと照準を合わせている。
 銃声と共に巨体が叢へと倒れこむ。萎んでいく巨体が草陰に吸い込まれていく所へティアナが駆け寄った。
「It is Done……これで終わりだ」
 叢の陰、息も絶え絶えに痙攣する敵に、ティアナはロッドを振り下ろした。

 大小10匹ほどのリスは倒したことになる。
 とりあえずの攻撃は止んでいるようだが、元々依頼人自体も敵の数が把握できている訳ではない。
「念の為に周辺を調査した方が良さそうでしょうか? 他に何かいても村の方達が困るでしょうし」
 セレンの言葉に頷きながら、ミリアも再び周囲の叢をグレートソードで突き回し始める。
 暫く手分けをして周囲を警戒したが、それ以上の雑魔が姿を現すことはなかった。

●帰還
 どうにか一段落が着き、村へと報告に戻る森の中。
「そう言やぁ結局『菓子』は見つからねぇよな」
 周囲の探索も兼ねてなにやら探し回っていたらしいイリヤが仲間達に問いかける。
「あれ、ないのか? なんだよ、もー。俺もお菓子食べたかったよ!」
 などとぶつぶつ文句を言いながら、ふくれっつらになるイリヤに、
「ボクも、お菓子お菓子ってばっかり聞いてたからお腹が空いてお菓子を食べたくなっちゃった」
 と、おっとりと微笑みながら返すノノトト。
 一同の笑い声が森の中に広がっていった。

依頼結果

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 蒼の意志
    セレン・コウヅキ(ka0153
    人間(蒼)|20才|女性|猟撃士
  • ホワイト・ライト
    ティアナ・アナスタシア(ka0546
    人間(紅)|15才|女性|聖導士

  • ノノトト(ka0553
    ドワーフ|10才|男性|霊闘士

  • イリヤ・エインブロウ(ka0897
    エルフ|19才|男性|霊闘士
  • 英雄譚を終えし者
    ミリア・ラスティソード(ka1287
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人
  • 愛憐の明断
    霧島 キララ(ka2263
    人間(蒼)|26才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
セレン・コウヅキ(ka0153
人間(リアルブルー)|20才|女性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2014/07/01 02:32:52
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/06/25 22:36:26