ゲスト
(ka0000)
betrayal hospital
マスター:墨上古流人

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/07/05 19:00
- 完成日
- 2014/07/12 04:34
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
◆
風の無い、ある月の夜。
雨上がりの外気は湿度と相まり舐めるように首筋を撫で、
季節外れの震えをもたらす。
帝国の外れの港町、古くも大きく存在感を醸し出す病院がある。
リアルブルーからの転移者が有力者の後援を得て作ったという、国内でも珍しい建築物。
とはいえ、利用者にとっては外見の珍奇さはあまり意味が無い。
日中は市場の競りを終えた者や、船乗員といった労働者で溢れかえる、
言い得て妙だが『賑やか』な病院だ。
そんな静かな病院に向かって駆けるひとつの影。
不規則に走っては歩いてを繰り返す彼を急かすかのように、月は夜道を明るく照らしていた。
「やべやべ、マジで遅刻だよ……今日のシフト確か嫌な先輩と2人なんだよなぁ……」
息も絶え絶えのまま、よろよろと病院の外周に沿って周る若い男。
従業員口のドアを開けて、横手にすぐ現れる警備室のドアを慣れた手つきで、
そろり、そろりと開けてみる。
「すみませーん、遅れましたー……って、あれ」
入退室管理簿等が保管された棚、病院内のあらゆる鍵を保管した金庫、
出入りする業者やスタッフを管理する窓、机、
休憩中にはインスタント食品をすするソファー、
全てが、転移者が語ったリアルブルーの病院施設通りに再現されているらしい。
電源が存在しない電源室など無駄な物も多いが、それも含めてこの病院ではあった。
それら全部が眠っているかのように、静かに、暗い室内だった。
「っかしーなー……休みかな」
部屋に明かりを灯しながら首を傾げ、
出勤簿に書かれた自身の名前の横に、本来の出勤時間をさりげなく書くと、
ロッカーから警備員の制服を適当に取り出して着替え始める。
「……ん?」
ズボンのファスナーをあげたところで、開けたままのドアの方が気になる。
……いや、本当に開けたままだったか?
「俺の着替えなんて覗いてもしょうがないでしょうに……ここに看護士さんはいませんよー……っと」
ふらりとドアノブに手を添えてから、ドアの外に顔を出す。
真っ直ぐと闇に伸びる廊下。
石の床は氷のようで、建物の時間を止めているかのように冷たかった。
『ごとっ』
従業員口側、差し込む月明かりを遮るかのように立つ巨躯の人影。
警戒棒を抜く暇もなく、警備員はその冷たい床に糸が切れたように昏倒してしまった。
◆
「……旗が降りていなかった?」
「普通、日が暮れたら旗を降ろすじゃないですか。でも、今でもまだあがりっぱなんです」
「なんでこんな時間に病院の旗がどうとかわかるんだ。張ってたか。看護師か、看護師フェチか」
「興味ないですしたまたまですし私女ですしフェチはYシャツから見える手首です!!」
「言えばいつでも着てやるぞ」
「白衣のペテン師に用はありませんっ」
コントのような会話が繰り広げられているオフィスの一画。
ブリーフィングルームでもなく、ただの大衆向けに解放された待合室の隅で、
堅いソファーに座って眠そうな顔でコーヒーをすする若い女と初老の男がいた。
「さっきやたら騒いでたのはそれか」
「そうみたいですね。街の特性上、朝早くから患者さんは大勢ですし、早めに解決するといいんですけど……」
「この人数でこの手口だろ。声明がないっつーことは、おおかたタタキってとこじゃねーか」
「この港、そんなにタタキ有名でしたっけ」
「強盗って意味だよ食欲娘」
「ご飯のお代わりは3杯までって決めてます!!」
むきーと絵に描いたように怒る若い女を余所に、
動かしていたメモの手を止める男。
「なんですか、これ」
「さっき偵察が帰ってきたーって話を盗み聞きした。犯人は何人でどういうヤツだとか」
「普通にアウトじゃないですか」
「地獄の沙汰も耳次第ってな」
「タヌキおやじ……ん……?」
「このどうした?」
「いや、うーん……何か違和感……」
「ホック外れたんじゃねーのか」
「そのサラッとセクハラすんのいい加減訴えていいですか。実力行使に」
「ゴングじゃなくてちゃんと目覚ましで起きようぜ……明日遅刻すんなよ」
逃げるようにひらりと椅子から飛び退き、へらっと手を振ると男はそのままハンターオフィスを後にした。
「うーん……ま、いっか。私も自分の仕事しよ」
そして続くように女が後を追う。
明かりの消えないオフィスの奥では、急遽集められたメンバーが、
偵察の報告を元にブリーフィングが行っているところだった。
風の無い、ある月の夜。
雨上がりの外気は湿度と相まり舐めるように首筋を撫で、
季節外れの震えをもたらす。
帝国の外れの港町、古くも大きく存在感を醸し出す病院がある。
リアルブルーからの転移者が有力者の後援を得て作ったという、国内でも珍しい建築物。
とはいえ、利用者にとっては外見の珍奇さはあまり意味が無い。
日中は市場の競りを終えた者や、船乗員といった労働者で溢れかえる、
言い得て妙だが『賑やか』な病院だ。
そんな静かな病院に向かって駆けるひとつの影。
不規則に走っては歩いてを繰り返す彼を急かすかのように、月は夜道を明るく照らしていた。
「やべやべ、マジで遅刻だよ……今日のシフト確か嫌な先輩と2人なんだよなぁ……」
息も絶え絶えのまま、よろよろと病院の外周に沿って周る若い男。
従業員口のドアを開けて、横手にすぐ現れる警備室のドアを慣れた手つきで、
そろり、そろりと開けてみる。
「すみませーん、遅れましたー……って、あれ」
入退室管理簿等が保管された棚、病院内のあらゆる鍵を保管した金庫、
出入りする業者やスタッフを管理する窓、机、
休憩中にはインスタント食品をすするソファー、
全てが、転移者が語ったリアルブルーの病院施設通りに再現されているらしい。
電源が存在しない電源室など無駄な物も多いが、それも含めてこの病院ではあった。
それら全部が眠っているかのように、静かに、暗い室内だった。
「っかしーなー……休みかな」
部屋に明かりを灯しながら首を傾げ、
出勤簿に書かれた自身の名前の横に、本来の出勤時間をさりげなく書くと、
ロッカーから警備員の制服を適当に取り出して着替え始める。
「……ん?」
ズボンのファスナーをあげたところで、開けたままのドアの方が気になる。
……いや、本当に開けたままだったか?
「俺の着替えなんて覗いてもしょうがないでしょうに……ここに看護士さんはいませんよー……っと」
ふらりとドアノブに手を添えてから、ドアの外に顔を出す。
真っ直ぐと闇に伸びる廊下。
石の床は氷のようで、建物の時間を止めているかのように冷たかった。
『ごとっ』
従業員口側、差し込む月明かりを遮るかのように立つ巨躯の人影。
警戒棒を抜く暇もなく、警備員はその冷たい床に糸が切れたように昏倒してしまった。
◆
「……旗が降りていなかった?」
「普通、日が暮れたら旗を降ろすじゃないですか。でも、今でもまだあがりっぱなんです」
「なんでこんな時間に病院の旗がどうとかわかるんだ。張ってたか。看護師か、看護師フェチか」
「興味ないですしたまたまですし私女ですしフェチはYシャツから見える手首です!!」
「言えばいつでも着てやるぞ」
「白衣のペテン師に用はありませんっ」
コントのような会話が繰り広げられているオフィスの一画。
ブリーフィングルームでもなく、ただの大衆向けに解放された待合室の隅で、
堅いソファーに座って眠そうな顔でコーヒーをすする若い女と初老の男がいた。
「さっきやたら騒いでたのはそれか」
「そうみたいですね。街の特性上、朝早くから患者さんは大勢ですし、早めに解決するといいんですけど……」
「この人数でこの手口だろ。声明がないっつーことは、おおかたタタキってとこじゃねーか」
「この港、そんなにタタキ有名でしたっけ」
「強盗って意味だよ食欲娘」
「ご飯のお代わりは3杯までって決めてます!!」
むきーと絵に描いたように怒る若い女を余所に、
動かしていたメモの手を止める男。
「なんですか、これ」
「さっき偵察が帰ってきたーって話を盗み聞きした。犯人は何人でどういうヤツだとか」
「普通にアウトじゃないですか」
「地獄の沙汰も耳次第ってな」
「タヌキおやじ……ん……?」
「このどうした?」
「いや、うーん……何か違和感……」
「ホック外れたんじゃねーのか」
「そのサラッとセクハラすんのいい加減訴えていいですか。実力行使に」
「ゴングじゃなくてちゃんと目覚ましで起きようぜ……明日遅刻すんなよ」
逃げるようにひらりと椅子から飛び退き、へらっと手を振ると男はそのままハンターオフィスを後にした。
「うーん……ま、いっか。私も自分の仕事しよ」
そして続くように女が後を追う。
明かりの消えないオフィスの奥では、急遽集められたメンバーが、
偵察の報告を元にブリーフィングが行っているところだった。
リプレイ本文
◆
湿った夜は雨の香りがわずかに鼻を突き、
重い夜風がルーガ・バルハザード(ka1013)の髪を揺らしていた。
「ぬう、相変わらずよくわからん、面妖な道具よの……モシモシ」
「それは短伝だ、こっちがトランシーバー。短伝は他に持ってきてるやついないから使えねェぞ」
心得があるのか、理解が及ばずしょんもりしているルーガの横で、
しゃがみ込んだサンカ・アルフヴァーク(ka0720)が通信機のレクチャーをしていた。
その横では同じようにリーゼロッテ(ka1864)にトランシーバーの使い方を教えているクロード・オールドマン(ka0365)
「これで連絡を取り合うのね」
「クカカ、まぁ慣れ親しんだ身としちゃあ朝飯前だがね」
今回、ハンター達は強盗が入ったとされる病院に対して、
偵察兼屋上からの潜入班と、偵察の得た情報を元に地上から潜入する班とに分かれて攻略をかけるという作戦だった。
「強盗かー。病院でしかも管理棟で何が目的なんだろー?」
ティエラ=アマト(ka0262)が持参したチョココロネをふにふにと手の中でいじりながら、
ハンター達が抱いていた疑問を口にする。
ここを襲う理由―――それが、彼らの中で謎として残っていた。
「目的は本人に聞いてみるとして……やりやすかった、というのが考えられるわね」
「どういうことですー?」
「犯人側に、内通者がいる可能性ということよ」
「スリーピングテロリスト……なるほど、そんな手段もあるのね」
イシャラナ・コルビュジエ(ka1846)の考察に、ティエラとリーゼロッテが耳を傾ける。
彼女は警備員と人質の数に違和感を感じており、
クロードも地の利がある警備員が敵についたら……という部分は懸念していた。
「なんにせよ、病院で人質とは卑劣な行為です……」
静かな雑木林の中、リーリア・バックフィード(ka0873)の言葉が微かに広がり、消えていく。
今も、冷たい床に転がされて、命が脅かされている者がいる……名家の出の疾影士として、
その足を踏み込むには充分過ぎる理由だった。
「四の五の言ってる状況じゃねェな。考えることは考えた。決めることも決めた。んじゃ、後はきっかりやるだけだ」
サンカが静かに発破をかければ、仲間達は既に準備を終えていた。
「ふむ……あいわかった! ボク達にかかれば何ら問題ないぞ? なあに大船に乗った気でいるがよい!」
ディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271)が元気よく、てってこ病院へと駆けていく。
期待しているぞ、とルーガがその背中に声をかけ、リーリアもその後をついていった。
病院は、尚も掴めそうな程に濃密な静寂を漂わせていた。
◆
「屋上……特に気配はないですね。このまま木を利用して近づいていきましょう」
「1Fも特に問題はなさそうだぞ? このまま警備室まで赤いカーペットを敷いてもいいぐらいだな」
空間把握と視力に自信を持つリーリアが遠目の偵察を行い、
ディアドラが地上の様子を窺っていた。
月明かりを避け、敵が死角を利用する可能性も考慮して慎重に近づいていく。
「リーリア、そろそろ人質の身も心配だ……」
「そうですね、敵のいる場所までわかればよかったのですが……敵がいない場所はわかりましたので」
リーリアが無線に手を付けたその時、ディアドラの視線の先―――警備室のあるドアから、
一人の人影が姿を現した。
特に警戒をするでもなく、銃をスリングでさげたまま、こちらに背を向けて扉を閉めていた。
『BよりAへ。敵1名、外側警備室前扉にて発見しました。警戒はほぼ解いています』
クロードがどうするか聞くよりも早く、サンカとリーゼロッテが物陰から飛び出した。
敵が気づいた頃には、ランアウトでたどり着いたリーゼロッテの刃が喉笛を撫でる所だった。
が、運は敵に味方した。咄嗟に振り上げた木製の銃床にナイフの刃が傷をつける。
ラッキーガードも1回まで。視界が自分の銃で遮られた男は、自身の脇腹へめり込むサンカの刀に言葉を失い、膝をつく。
「防刃か? 贅沢なもん着てんじゃねェか」
「口は堅い方が長生きするわよ。今すぐ殺しても良いのだけれど……」
地面に組み伏し、柔らかい唇へナイフをあてがうリーゼロッテの横で、
駆けつけたクロードとティエラが男を拘束し、番えていた矢を下ろしたイシャラナと速やかに警備室へ運び込んだ。
警備室を捜索している間に、イシャラナが男へすらりと詰め寄る。
既に抵抗する気力もないのか、肝っ玉の無い青い顔をした男を足蹴にして地面に倒すと、
そのまま―――足を下の玉へと移していく。
「さて……定時連絡の方法や他のお仲間の場所……教えてくれないと、踏み潰すわよ……?」
にっこりと、それでいて醸し出す『本気』さに、一瞬だけ、警備室の空気が冷たくなる。
文字通り、直接、体に、聞いてみるイシャラナ。
「あ、もうちょい優しくしてくれたら口も滑るかもしれないだだだだすんません言います! 言いますから!!」
「口を割るのが先が、そっちを割るのが先か……」
クカカと他人事のように笑いながら、警備室の捜索を続けるクロード。
監視モニターがあれば敵を探したいと思っていたが、設備は整っていなかった。
「何故病院なんかを襲ったのだ、カネになるものでもあるというのか?」
「何が欲しかったんですかー?」
ルーガの後ろから、私はいいものみつけましたけど、と言わんばかりのホクホク顔で、
ティエラがLEDライトを3本、うち2本を手の空いていたルーガとクロードに渡す。
「俺らは雇われた野良の賊なんだよ。リーダーは他にやりたい事があるらしいが、薬なんてどこでも需要はあるし、管理職の個室があるこの棟なら金目のモンがあるって言いだだだだだ!」
なおも悶絶する男が涙目になって暴れるが、イシャラナの足技には敵わない。
「次の定期連絡がくる頃には一芝居打ってもらわないとね?」
「定期連絡なんてないっす! なんせもう引き上げる所ですから……!!」
ぴく、とハンター達の動きが止まる。
引き上げとなっては、口封じの為に人質は……
「むぅ、電気室も見ておきたいが……そんな事を言っている暇はないかも知れないな」
「B班、聞こえる? そろそろ敵は撤収らしいの、急いで人質部屋までいって、そこで会いましょう」
リーゼロッテが無線を飛ばし、潜めた了解という声を確認する。
「うーん……マスターキーあれば近道出来ると思ったんだけど、これじゃどこにいるかわかんないじゃん!」
「どこにでもいるかもって事だ。気ィ引き締めとけ」
ティエラが敵の銃を拾い銃床で小突いて男を気絶させた後、サンカが病院の見取り図をひっつかみながら最後に部屋を出た。
階段を偲び駆け昇っている途中、隔靴の音が上から落ちてくる。
「ちょいと道を開けてもらえるかい?」
段差を踏んだ足に力を込め、押し出すようにクロードの機導砲が放たれる。
機導砲は音は出さずに抑えることが出来るが、発光はするので隠密の際は使いどころを選ぶ。
だが、今となっては気にする事はない。
踊り場にいた男は鳩尾へもろに喰らい、そのまま転がり落ちてゆく。
「おっと、降りる人優先だったか」
クロードの視線の先では、擦れ違い様、落ちてくる勢いに駆ける刃を乗せ、リーゼロッテのショートソードが男を一閃した。
血飛沫が飛ばない所を見ればこの男も防刃を着ているのか、だが、全身に衝撃を浴びた男がそのまま動くことはなかった。
◆
「慎重に動くのは慣れませんね」
「うむ。王が忍ぶとは何とも妙な話なのだ」
「あら陛下。高貴な身分の方は大抵『よ』を『しのぶ』姿を持っているものですよ」
「王は王たる事を確と示す事でその責を果たすのだ!」
静かに言葉遊びをしながら、リーリアとディアドラは監視をしていた病棟屋上から管理棟屋上へと移り、
鍵を開けて階段を下りていく。鍵穴は内側にあったのでシーブズツールの出番はなかった。
A班とB班の到着はほぼ同時だった。
サンカがドアを蹴破ったのを合図に、水が流れ込むかのように一斉に部屋へと雪崩れこんだ。
「RUN!」
リーリアがパチンと開いたバタフライナイフを構えて敵に向かって駆け出す。
敵の1人が床に転がる人質に向けていた山刀をリーリアへ構えるが、
たんっ、とダンスステップのような一歩を踏み込んだ後の鋭いスラッシュエッジに武器を弾き飛ばされてしまった。
「月並みですが味方です。ノーブルたる者は民を必ず護りますっ」
人質の方へ向けて一言、今はこれが精一杯の上に立つものとしての気遣いだった。
銃を構え直すよりもリーリアのナイフの方が早い―――巧みに多方向から敵に刃が迫りくる。
咄嗟に、避けた勢いで振り抜こうとした男の蹴りは、ティエラの銃撃に防がれる。
「やっぱり銃はこう使わなきゃ!」
もう少し時間があれば、せっかくの病院、
化学薬品や火薬を用いて簡易スタングレネードを作ろうとしていたが、状況が許さなかった。
その鬱憤も上乗せするかのように、先程敵から奪った銃でトリガーハッピーの片鱗を思う存分発揮していく。
銃撃によって動けない片割れを助けるように、もう片方の敵が銃をティエラへ構えるが、
その射線をディアドラが接近して遮る。
ならばとそのまま引き金を弾くが、体をずらし、ショートソードで敵の銃身を引くように撫でて銃口を逸らす。
そのまま銃身の上で刃を滑らせて、一歩踏み込み、敵の腕へと斬りこみ振りぬく。
「ほら、どうした? もっと気合を入れてかかってくるがいい」
男は斧に持ち替えて上段、切り上げ、袈裟切りと重い一撃を懸命に振っていくが、
ディアドラも負けじといなし、避け、切り返していく。
ディアドラの頬を斧が掠り、血飛沫が目に入ると、その一瞬をついて、思いきり斧をディアドラの足へと振り下ろす。
肉を割き、骨の神経を触る冷たく鋭い痛みがディアドラを襲う。
「慌てるな、すぐに癒してやる」
「大義である、恩に着るぞ!」
すかさずルーガがスタッフをかざしてヒールをかけた。
男としてはルーガを潰しにかかりたいが、前に出るには小さなディアドラという壁が大きすぎる。
一歩でも抜けたかと思えば、ティエラの銃撃が自身の足を狙ってくる。
何度目かの攻防の後、男の片割れがティエラの方へと銃撃を放つ。
ティエラが銃撃に応戦するが、途中で奪った銃の弾が切れた。
すかさずリボルバーを抜くとその隙をついてディアドラの前の男は飛び出した。
が、そこはティエラの代わりにイシャラナの矢が男の太腿を捉える。
ダメ押しでルーガのホーリーライトが男の腹部へとめり込んでいった。
「よそ見していいのかィ?」
片割れの方へ気遣った1発、その1発が命とりだった。
リーリアの引いたバタフライナイフの刃と入れ替わるように、サンカが踏み込んでいく。
防御を捨てて思いきり振りかぶった一撃は、男の肋骨を音を立てて粉砕していく。
奥歯を噛みしめ堪えながら、男は横にスライドしつつ銃撃を並べていく。
そのままリーリアの横凪ぎの一撃を避け、前に抜けようとした。
「おっと、ダンスのパートナーを置いて出てくのはどうなんだい?」
言葉の後、威圧するようにタクトの先端から伸びるレイピア状の機導剣。
慌ててバックステップを踏むのとクロードが剣を押し出すのは同時。
剣の範囲外となれば、光の刃はタクトの先端まで縮まり―――そのまま、膨張する。
放たれた機導砲にそのまま連れさられ、壁に叩きつけられる男。
一条の光を追うように、リーリアとリーゼロッテが前に出る。
動けない男へと、逆手に持たれた二本の刃が振り下ろされる。
獣の牙のように喰いこむ刃に男は苦悶の声をあげ、最後の武器を地に落とした。
戦力が減った隙に、煙草か、硝煙か―――ティエラとクロードが煙のように敵の間をすり抜けて、人質の所へと現れる。
粘着テープのようなものでほぼミイラ状にされており、剥がすのは簡単ではなさそうだ。
一度、そのまま引きずり乱戦から遠ざけようとする。
「させるか……させるかよぉぉぉ!!」
男が取り乱したような声をあげ、振り返り斧を投げる。
ハンター達でもなく、人質の方へ回転しながら飛んでいく重い一撃。
咄嗟の判断、動く小さな的―――だが、狙い澄ますのは一瞬。的を絞れば、後は引き金を弾きまくるだけ。
ティエラの連続した銃撃は斧を空中でジャグリングするように弄び、
弾切れと同時に、空しく地に落ちて行った。
「武器を捨てるとは……勝負ありだ!」
何度目かのルーガの癒しの光を纏ったディアドラが、体を捻って斧を投げた男の隙を突き、
飛び上がると全体重を乗せた豪快な一閃を振り下ろす。
頭部は避けたが体には思いきり喰らってしまい、綺麗に防刃ベストが開きになる。
現れた傷口、そして目に宿した闘志は消え―――最後の武器も地に捨てられてしまった。
◆
「なるほどね……とはいえ、目的も計画も拙いわね」
「動機、わかったんですかー?」
ここはハンターズオフィスの一角、日は昇り賑わい出した受付フロアの隅で、
今回の報酬を受け取ったハンター達が集まっていた。
ティエラがチョココロネを頬張りながら、簡素な報告書を読むイシャラナに問う。
「最後まで立っていたあの男が、内通者、というか首謀者だったと人質の警備員の証言でわかったわよ。
自分の変哲もない人生、環境……それが嫌で、なんとなく力が欲しくて歪虚との契約者になろうとしていたらしいの」
契約者―――精霊との契約を行うように、歪虚に気に入られた者が契約を行う事で、歪虚の力の一部を使役できるようになる。
病院という、人が多く集まる場所。勤め先で、自身の庭のような場所。マテリアル喪失を目的とする歪虚に力を見せつけるには、
打ってつけだと考えたのだ。
「解せぬな……悪しき歪虚に与してまで、何を望むというのか」
腕を組み思慮の面持ちでルーガが唸るように呟いた。
「なんにせよ、歪虚じゃねェし、歪虚もいなかったってんならひと安心だ」
サンカが立ち上がり、そのまま出口へと向かっていく。
「どこ行くんだ?」
「消毒だよ」
背を向けたままひらりと手をあげ、そのまま人混みへと紛れていった。
「傷が治りきっていなかったのか?!」
「そうじゃなくて……酒じゃないかしら」
「人質も薬で眠らされていただけ、怪我がないようでなによりでした」
ディアドラの心配を余所にリーゼが呆れた笑みを零し、リーリアが安堵で胸をなでおろす。
ただの人質事件ではなかった、そして、なんとか解決する事が出来た。
クロードが燻らす煙を通して、人混みをぼんやりと見やる。
霞んだ世界から、はっきりとした輪郭の真実を見抜き、掴み取る。
危険に身を投じるハンター達は、その繰り返しを強いられているのかも知れない―――
湿った夜は雨の香りがわずかに鼻を突き、
重い夜風がルーガ・バルハザード(ka1013)の髪を揺らしていた。
「ぬう、相変わらずよくわからん、面妖な道具よの……モシモシ」
「それは短伝だ、こっちがトランシーバー。短伝は他に持ってきてるやついないから使えねェぞ」
心得があるのか、理解が及ばずしょんもりしているルーガの横で、
しゃがみ込んだサンカ・アルフヴァーク(ka0720)が通信機のレクチャーをしていた。
その横では同じようにリーゼロッテ(ka1864)にトランシーバーの使い方を教えているクロード・オールドマン(ka0365)
「これで連絡を取り合うのね」
「クカカ、まぁ慣れ親しんだ身としちゃあ朝飯前だがね」
今回、ハンター達は強盗が入ったとされる病院に対して、
偵察兼屋上からの潜入班と、偵察の得た情報を元に地上から潜入する班とに分かれて攻略をかけるという作戦だった。
「強盗かー。病院でしかも管理棟で何が目的なんだろー?」
ティエラ=アマト(ka0262)が持参したチョココロネをふにふにと手の中でいじりながら、
ハンター達が抱いていた疑問を口にする。
ここを襲う理由―――それが、彼らの中で謎として残っていた。
「目的は本人に聞いてみるとして……やりやすかった、というのが考えられるわね」
「どういうことですー?」
「犯人側に、内通者がいる可能性ということよ」
「スリーピングテロリスト……なるほど、そんな手段もあるのね」
イシャラナ・コルビュジエ(ka1846)の考察に、ティエラとリーゼロッテが耳を傾ける。
彼女は警備員と人質の数に違和感を感じており、
クロードも地の利がある警備員が敵についたら……という部分は懸念していた。
「なんにせよ、病院で人質とは卑劣な行為です……」
静かな雑木林の中、リーリア・バックフィード(ka0873)の言葉が微かに広がり、消えていく。
今も、冷たい床に転がされて、命が脅かされている者がいる……名家の出の疾影士として、
その足を踏み込むには充分過ぎる理由だった。
「四の五の言ってる状況じゃねェな。考えることは考えた。決めることも決めた。んじゃ、後はきっかりやるだけだ」
サンカが静かに発破をかければ、仲間達は既に準備を終えていた。
「ふむ……あいわかった! ボク達にかかれば何ら問題ないぞ? なあに大船に乗った気でいるがよい!」
ディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271)が元気よく、てってこ病院へと駆けていく。
期待しているぞ、とルーガがその背中に声をかけ、リーリアもその後をついていった。
病院は、尚も掴めそうな程に濃密な静寂を漂わせていた。
◆
「屋上……特に気配はないですね。このまま木を利用して近づいていきましょう」
「1Fも特に問題はなさそうだぞ? このまま警備室まで赤いカーペットを敷いてもいいぐらいだな」
空間把握と視力に自信を持つリーリアが遠目の偵察を行い、
ディアドラが地上の様子を窺っていた。
月明かりを避け、敵が死角を利用する可能性も考慮して慎重に近づいていく。
「リーリア、そろそろ人質の身も心配だ……」
「そうですね、敵のいる場所までわかればよかったのですが……敵がいない場所はわかりましたので」
リーリアが無線に手を付けたその時、ディアドラの視線の先―――警備室のあるドアから、
一人の人影が姿を現した。
特に警戒をするでもなく、銃をスリングでさげたまま、こちらに背を向けて扉を閉めていた。
『BよりAへ。敵1名、外側警備室前扉にて発見しました。警戒はほぼ解いています』
クロードがどうするか聞くよりも早く、サンカとリーゼロッテが物陰から飛び出した。
敵が気づいた頃には、ランアウトでたどり着いたリーゼロッテの刃が喉笛を撫でる所だった。
が、運は敵に味方した。咄嗟に振り上げた木製の銃床にナイフの刃が傷をつける。
ラッキーガードも1回まで。視界が自分の銃で遮られた男は、自身の脇腹へめり込むサンカの刀に言葉を失い、膝をつく。
「防刃か? 贅沢なもん着てんじゃねェか」
「口は堅い方が長生きするわよ。今すぐ殺しても良いのだけれど……」
地面に組み伏し、柔らかい唇へナイフをあてがうリーゼロッテの横で、
駆けつけたクロードとティエラが男を拘束し、番えていた矢を下ろしたイシャラナと速やかに警備室へ運び込んだ。
警備室を捜索している間に、イシャラナが男へすらりと詰め寄る。
既に抵抗する気力もないのか、肝っ玉の無い青い顔をした男を足蹴にして地面に倒すと、
そのまま―――足を下の玉へと移していく。
「さて……定時連絡の方法や他のお仲間の場所……教えてくれないと、踏み潰すわよ……?」
にっこりと、それでいて醸し出す『本気』さに、一瞬だけ、警備室の空気が冷たくなる。
文字通り、直接、体に、聞いてみるイシャラナ。
「あ、もうちょい優しくしてくれたら口も滑るかもしれないだだだだすんません言います! 言いますから!!」
「口を割るのが先が、そっちを割るのが先か……」
クカカと他人事のように笑いながら、警備室の捜索を続けるクロード。
監視モニターがあれば敵を探したいと思っていたが、設備は整っていなかった。
「何故病院なんかを襲ったのだ、カネになるものでもあるというのか?」
「何が欲しかったんですかー?」
ルーガの後ろから、私はいいものみつけましたけど、と言わんばかりのホクホク顔で、
ティエラがLEDライトを3本、うち2本を手の空いていたルーガとクロードに渡す。
「俺らは雇われた野良の賊なんだよ。リーダーは他にやりたい事があるらしいが、薬なんてどこでも需要はあるし、管理職の個室があるこの棟なら金目のモンがあるって言いだだだだだ!」
なおも悶絶する男が涙目になって暴れるが、イシャラナの足技には敵わない。
「次の定期連絡がくる頃には一芝居打ってもらわないとね?」
「定期連絡なんてないっす! なんせもう引き上げる所ですから……!!」
ぴく、とハンター達の動きが止まる。
引き上げとなっては、口封じの為に人質は……
「むぅ、電気室も見ておきたいが……そんな事を言っている暇はないかも知れないな」
「B班、聞こえる? そろそろ敵は撤収らしいの、急いで人質部屋までいって、そこで会いましょう」
リーゼロッテが無線を飛ばし、潜めた了解という声を確認する。
「うーん……マスターキーあれば近道出来ると思ったんだけど、これじゃどこにいるかわかんないじゃん!」
「どこにでもいるかもって事だ。気ィ引き締めとけ」
ティエラが敵の銃を拾い銃床で小突いて男を気絶させた後、サンカが病院の見取り図をひっつかみながら最後に部屋を出た。
階段を偲び駆け昇っている途中、隔靴の音が上から落ちてくる。
「ちょいと道を開けてもらえるかい?」
段差を踏んだ足に力を込め、押し出すようにクロードの機導砲が放たれる。
機導砲は音は出さずに抑えることが出来るが、発光はするので隠密の際は使いどころを選ぶ。
だが、今となっては気にする事はない。
踊り場にいた男は鳩尾へもろに喰らい、そのまま転がり落ちてゆく。
「おっと、降りる人優先だったか」
クロードの視線の先では、擦れ違い様、落ちてくる勢いに駆ける刃を乗せ、リーゼロッテのショートソードが男を一閃した。
血飛沫が飛ばない所を見ればこの男も防刃を着ているのか、だが、全身に衝撃を浴びた男がそのまま動くことはなかった。
◆
「慎重に動くのは慣れませんね」
「うむ。王が忍ぶとは何とも妙な話なのだ」
「あら陛下。高貴な身分の方は大抵『よ』を『しのぶ』姿を持っているものですよ」
「王は王たる事を確と示す事でその責を果たすのだ!」
静かに言葉遊びをしながら、リーリアとディアドラは監視をしていた病棟屋上から管理棟屋上へと移り、
鍵を開けて階段を下りていく。鍵穴は内側にあったのでシーブズツールの出番はなかった。
A班とB班の到着はほぼ同時だった。
サンカがドアを蹴破ったのを合図に、水が流れ込むかのように一斉に部屋へと雪崩れこんだ。
「RUN!」
リーリアがパチンと開いたバタフライナイフを構えて敵に向かって駆け出す。
敵の1人が床に転がる人質に向けていた山刀をリーリアへ構えるが、
たんっ、とダンスステップのような一歩を踏み込んだ後の鋭いスラッシュエッジに武器を弾き飛ばされてしまった。
「月並みですが味方です。ノーブルたる者は民を必ず護りますっ」
人質の方へ向けて一言、今はこれが精一杯の上に立つものとしての気遣いだった。
銃を構え直すよりもリーリアのナイフの方が早い―――巧みに多方向から敵に刃が迫りくる。
咄嗟に、避けた勢いで振り抜こうとした男の蹴りは、ティエラの銃撃に防がれる。
「やっぱり銃はこう使わなきゃ!」
もう少し時間があれば、せっかくの病院、
化学薬品や火薬を用いて簡易スタングレネードを作ろうとしていたが、状況が許さなかった。
その鬱憤も上乗せするかのように、先程敵から奪った銃でトリガーハッピーの片鱗を思う存分発揮していく。
銃撃によって動けない片割れを助けるように、もう片方の敵が銃をティエラへ構えるが、
その射線をディアドラが接近して遮る。
ならばとそのまま引き金を弾くが、体をずらし、ショートソードで敵の銃身を引くように撫でて銃口を逸らす。
そのまま銃身の上で刃を滑らせて、一歩踏み込み、敵の腕へと斬りこみ振りぬく。
「ほら、どうした? もっと気合を入れてかかってくるがいい」
男は斧に持ち替えて上段、切り上げ、袈裟切りと重い一撃を懸命に振っていくが、
ディアドラも負けじといなし、避け、切り返していく。
ディアドラの頬を斧が掠り、血飛沫が目に入ると、その一瞬をついて、思いきり斧をディアドラの足へと振り下ろす。
肉を割き、骨の神経を触る冷たく鋭い痛みがディアドラを襲う。
「慌てるな、すぐに癒してやる」
「大義である、恩に着るぞ!」
すかさずルーガがスタッフをかざしてヒールをかけた。
男としてはルーガを潰しにかかりたいが、前に出るには小さなディアドラという壁が大きすぎる。
一歩でも抜けたかと思えば、ティエラの銃撃が自身の足を狙ってくる。
何度目かの攻防の後、男の片割れがティエラの方へと銃撃を放つ。
ティエラが銃撃に応戦するが、途中で奪った銃の弾が切れた。
すかさずリボルバーを抜くとその隙をついてディアドラの前の男は飛び出した。
が、そこはティエラの代わりにイシャラナの矢が男の太腿を捉える。
ダメ押しでルーガのホーリーライトが男の腹部へとめり込んでいった。
「よそ見していいのかィ?」
片割れの方へ気遣った1発、その1発が命とりだった。
リーリアの引いたバタフライナイフの刃と入れ替わるように、サンカが踏み込んでいく。
防御を捨てて思いきり振りかぶった一撃は、男の肋骨を音を立てて粉砕していく。
奥歯を噛みしめ堪えながら、男は横にスライドしつつ銃撃を並べていく。
そのままリーリアの横凪ぎの一撃を避け、前に抜けようとした。
「おっと、ダンスのパートナーを置いて出てくのはどうなんだい?」
言葉の後、威圧するようにタクトの先端から伸びるレイピア状の機導剣。
慌ててバックステップを踏むのとクロードが剣を押し出すのは同時。
剣の範囲外となれば、光の刃はタクトの先端まで縮まり―――そのまま、膨張する。
放たれた機導砲にそのまま連れさられ、壁に叩きつけられる男。
一条の光を追うように、リーリアとリーゼロッテが前に出る。
動けない男へと、逆手に持たれた二本の刃が振り下ろされる。
獣の牙のように喰いこむ刃に男は苦悶の声をあげ、最後の武器を地に落とした。
戦力が減った隙に、煙草か、硝煙か―――ティエラとクロードが煙のように敵の間をすり抜けて、人質の所へと現れる。
粘着テープのようなものでほぼミイラ状にされており、剥がすのは簡単ではなさそうだ。
一度、そのまま引きずり乱戦から遠ざけようとする。
「させるか……させるかよぉぉぉ!!」
男が取り乱したような声をあげ、振り返り斧を投げる。
ハンター達でもなく、人質の方へ回転しながら飛んでいく重い一撃。
咄嗟の判断、動く小さな的―――だが、狙い澄ますのは一瞬。的を絞れば、後は引き金を弾きまくるだけ。
ティエラの連続した銃撃は斧を空中でジャグリングするように弄び、
弾切れと同時に、空しく地に落ちて行った。
「武器を捨てるとは……勝負ありだ!」
何度目かのルーガの癒しの光を纏ったディアドラが、体を捻って斧を投げた男の隙を突き、
飛び上がると全体重を乗せた豪快な一閃を振り下ろす。
頭部は避けたが体には思いきり喰らってしまい、綺麗に防刃ベストが開きになる。
現れた傷口、そして目に宿した闘志は消え―――最後の武器も地に捨てられてしまった。
◆
「なるほどね……とはいえ、目的も計画も拙いわね」
「動機、わかったんですかー?」
ここはハンターズオフィスの一角、日は昇り賑わい出した受付フロアの隅で、
今回の報酬を受け取ったハンター達が集まっていた。
ティエラがチョココロネを頬張りながら、簡素な報告書を読むイシャラナに問う。
「最後まで立っていたあの男が、内通者、というか首謀者だったと人質の警備員の証言でわかったわよ。
自分の変哲もない人生、環境……それが嫌で、なんとなく力が欲しくて歪虚との契約者になろうとしていたらしいの」
契約者―――精霊との契約を行うように、歪虚に気に入られた者が契約を行う事で、歪虚の力の一部を使役できるようになる。
病院という、人が多く集まる場所。勤め先で、自身の庭のような場所。マテリアル喪失を目的とする歪虚に力を見せつけるには、
打ってつけだと考えたのだ。
「解せぬな……悪しき歪虚に与してまで、何を望むというのか」
腕を組み思慮の面持ちでルーガが唸るように呟いた。
「なんにせよ、歪虚じゃねェし、歪虚もいなかったってんならひと安心だ」
サンカが立ち上がり、そのまま出口へと向かっていく。
「どこ行くんだ?」
「消毒だよ」
背を向けたままひらりと手をあげ、そのまま人混みへと紛れていった。
「傷が治りきっていなかったのか?!」
「そうじゃなくて……酒じゃないかしら」
「人質も薬で眠らされていただけ、怪我がないようでなによりでした」
ディアドラの心配を余所にリーゼが呆れた笑みを零し、リーリアが安堵で胸をなでおろす。
ただの人質事件ではなかった、そして、なんとか解決する事が出来た。
クロードが燻らす煙を通して、人混みをぼんやりと見やる。
霞んだ世界から、はっきりとした輪郭の真実を見抜き、掴み取る。
危険に身を投じるハンター達は、その繰り返しを強いられているのかも知れない―――
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
---|
面白かった! | 7人 |
---|
ポイントがありませんので、拍手できません
現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
MVP一覧
- Blue Bird
イシャラナ・コルビュジエ(ka1846)
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/06/30 23:09:10 |
|
![]() |
相談卓 リーリア・バックフィード(ka0873) 人間(クリムゾンウェスト)|17才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2014/07/05 19:00:16 |