貴女の為にっ

マスター:石田まきば

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~4人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/03/14 15:00
完成日
2015/03/22 04:17

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●自分の日?

「タングラム様に差し上げるプレゼント、何がいいでしょうか」
 このところ、フクカン(kz0035)が考えるのはそんなことばかりだ。クリスマスは特別に手に入れておいた秘蔵のお酒をAPVのタングラム(kz0016)専用棚に入れておいたし、バレンタインデーにだって、もちろんお手製の大きなハート型チョコレートをおやつ棚に入れておいた。
 直接渡せばいいと言う者も居るだろうが、それだとちょっと違うのだ。
(うまく手渡せないんですよね)
 どうしてか、タングラムの前に居ると肩に力が入ってしまって、いつもならしないミスをしてしまう。
 大好きと伝えることはできるけれど。それ以外は空回ってなんだか、本気に取り合ってもらって居ないような、うーん?
「とにかくっ! 今度のお休みは下調べ、ばっちり決めるんですっ!」
 お祭り騒ぎや、誰かの誕生日……切っ掛けがあれば、タングラムに何かしらプレゼントを用意するのがフクカンの流儀だ。だって大好きって言える機会は多い方がいい。
 今度あるのは、自分の誕生日だ。
(タングラム様の誕生日の時に負けないくらいのサプライズを準備するんです!)
 えいえいおー!
 APVの厨房でお茶菓子の準備をしながら、フクカンは一人張り切っていた。

●黒幕?

 時を少しだけ遡る。
「そういえば、フクカン君ってもうすぐ誕生日じゃなかったかい?」
 APVの一角でそう尋ねたのはシャイネ・エルフハイム(kz0010)。最近色々と出歩く頻度が上がっていたせいか、なんだか久し振りといった風情。暇なときはAPVに居るのではなかったか。
 それはともかく。
「覚えててくださったんですか、ありがとうございます!」
 笑顔で礼を言うフクカンに、そりゃあねと頷くシャイネ。
「……あの時は、ぎゃふんと言う顔は見れなかったしね……」
「どうしたんですか、シャイネさん?」
「いいや、なんでもないよ」
 ぼそりと小さな声でこぼした後、何事もなかったように爽やかに笑うシャイネ。フクカンはフクカンでお茶を淹れるのに忙しく、しっかり聞き取れていなかった。
(((シャイネのやつ、また何か考えてやがるな)))
 周囲に居たハンターのうち何人かは、そのつぶやきを聞き取ってしまったようだけれど。
「それで、フクカン君。今年は何を贈るのか決まったのかい?」
 毎年何をプレゼントするか迷っているのは恒例行事で、シャイネもそれを分かって聞いている。
「それが、まだなんです」
 フクカンのその答えに、笑顔が更に深くなったことに気付いた者は……居たけれど、シャイネの勢いに圧倒されて口には出さない。
「それじゃあ、こんなのはどうだい?」
「何かいい案があるんですかっ? ……あ、でも私、自分で考えたいとも思っていて……」
 一度は明るい表情を見せたフクカンだが、すぐに踏みとどまる。今年はそんなに行き詰っていたのだろうか。
「それは僕も分かっているよ」
 そうじゃないんだ、と優しげな口調で続けるシャイネ。
「タングラム君にふさわしいプレゼントを決めるための、面白い方法を思いついたんだけど……どうかな?」
(((シャイネのやつ、今『面白い』って言ったぞ!)))
 シャイネの言う『面白い』は大体においてシャイネ視点に限られる。それに巻き込まれる周囲にとっては……楽しめるかどうか、そこが境界線だろう。
「どんな方法ですかっ?」
 藁にもすがる思いで飛びついたフクカンは、そんな細かい部分なんて全く気付いていないのだった。

「丸一日、タングラム様観察し放題……♪」
 うっとり……ぐふ、ぐふふ
「はっ! でも確かに普段のタングラム様を改めて見直せば、これまで見えていなかった素敵なお顔が見られるかもしれません!」
 きりっ! ……ふにゃふにゃ、うっとり
「わかってくれて嬉しいよ」
 勿論僕も手伝わせてもらうよ……そんなシャイネの言葉はほとんど耳に入っていないフクカンである。既に思いはタングラムの元へと向かっているようだ。
「はっ! でも、私達だけでタングラム様の様子を追いきれるでしょうか?」
 協力者、という事でシャイネの言葉はしっかり聞こえていたようす。
「そこはほら、彼らが居るじゃないか」
 シャイネが自然な動作で周囲のハンター達を指し示した。
「そうですね! それじゃみなさん、当日はよろしくお願いします!」
 ぺこり
「いやいや、正規の仕事ならまだしも、そんな急に言われたって俺らにも都合って物が」
 咄嗟に突っ込む一人のハンター。周囲の者達もそうだそうだと頷いている。
「それじゃ僕が依頼人という事にしておこうか、フクカン君だと怪しまれるかもしれないからね。……頼めるかい?」
「もちろん、すぐに書類を準備しますね!」
(((ちょっと待てエルフどもっ!?)))

リプレイ本文

●ジャスト・オンリーワン

(タイミング悪く居合わせてしまった自分の不運を嘆きたい気分です)
 メトロノーム・ソングライト(ka1267)はハンターとしての信用とかプライドとか、そういう真面目な理由でここに来ていた。
 あの時オフィスに立ち寄ったのは次の仕事を探そうと思ったからだ。偶然シャイネを見かけて、声をかけようと近寄ったのが運の付きだった……今でもそう思う。
(こういう方だったとは)
 歌い手同士話が弾むかもしれないと思っただけなのに見事に打ち砕かれた。わたしの理想を返せ。
「これは仕事……」
 呪文のように繰り返し肩を落とす。気は進まないがこれは仕事なのだ、依頼人の意向に沿うのが仕事を請けた者の義務だ。
 けれど、その内容は犯罪とも呼べるべきストーキング行為……やはり、許されません!
 視線を上にあげたメトロノームの瞳には覚醒していないはずなのにどこか透き通った光が映った。
(この巡り合わせに意味があるとするなら)
 タングラムさんを魔の手から守ることがわたしに課せられた使命に違いない。

「自分の誕生日なのに憧れの人にプレゼントをあげるのですか……?」
 エルフの人の流儀って変わっていますね、とエルフ達を見て納得した後、花厳 刹那(ka3984)は、メトロノームに借りた服に着替えていた。
「木を隠すには森の中って言うので、エルフっぽい可愛い服貸してください!!」
 見守り隊(刹那命名)には聞き込みと変装と決め台詞が必須という理由で頼んでおいたからである。始めはシャイネかフクカンに頼もうとしていたのだが、体格の面で彼らの服は着れないと判明。同性のメトロノームに白羽の矢が立ったのだ。
 なおメトロノームの苦悩には気付いていない。

「ったくよぉ、何で俺様が仮面女なんざを覗き見なきゃいけねぇんだ、アホらし」
 フクカンがAPVで頑張ってんのは知ってんし、しゃあねぇからなとジャック・J・グリーヴ(ka1305)は自分に言い訳をしている。フクカンに対して負い目のようなものがあるのかもしれない。
「見てろフクカン! てめぇが見た事ねぇ仮面女の顔を見せてやるよ!」

「よろしく、だね」
 改めて握手を求めるエリオット・ウェスト(ka3219)は笑顔を浮かべていたけれど、頭の中はそれとは別に色々と小難しいことを考えていた。
(観察っていい言葉だよね)
 自分で積極的に動かなくてもいい魔法の言葉だ。とはいってもエリオットはこの状況を楽しむ気でいたし、観察者のつもりでいるシャイネのこともしっかり観察対象として計上していた。エルフの生態を知るいい機会だし。

「改めて、見守り隊と言うのならばまず尾行は必須ですよね」
 言いながら刹那の視線がHolmes(ka3813)に向かう。
「探偵小説の探偵って実はちょっとやってみたかったりしたので、今回はいい機会だから存分に……やっちゃおう、と……」
 見れば見るほど探偵なのだ。名前だって……でも、ドワーフさんだって聞いたような。
「追跡こそ探偵の華、確かにそうだね」
 ああ、この仕草とかまさに本から出てきたみたいだ。どうしよう聞いてみたいけれど、でも今は仕事中なわけで我慢、我慢。
「我がユニオンリーダーの素顔に迫ろうじゃないか」
 刹那の視線に気付かない程子供でもない。リアルブルーの出身だとも聞いていて、その視線の意味も察せられる。何よりその視線、それが今Holmesの気分を盛り上げてくれている。
(探偵の甲斐があると言うものだね)
 パイプをくゆらせる仕草は自分でも試行を繰り返したとっておきだ。

●スニーキング・インポッシブル

「ところでさ」
 シャイネの服の裾をひっぱり声を潜めるエリオット。
「タングラム君からフクカン君へプレゼントとか用意してるよね?」
「どっちだと思うかい?」
 くすりと笑って返すシャイネも声は潜めている。フクカンはタングラムに夢中で気付いていないようだ。
「え、まさか用意してないの?」
「プレゼントとして通用するかはフクカン君次第だと思うね」
 エルフって欲がないのかな、それともフクカンが例外的に無欲なのかな。……見てるだけでいいっていうのは、無欲って言うんだっけ?
(観察すればわかるかな)
 その為に居るんだもの、しっかり見識蓄えないとね。

(他の方に気付かれないようにしませんと)
 袖口に仕込んだ小さなメモとパルムを拠り所に、メトロノームは静かに機会を伺っていた。
 タングラムさんに伝えてあげなければ、その正義の心が頭の大半を占めている。接触するにしても、仲間として行動している彼らの視線をかいくぐらなくてはならないのだから。

(仮面女もボケてる様でかなり鋭いからなぁ、普通に覗き見てるだけじゃいつもの顔と変わりゃしねぇ)
 思考を巡らせるジャックの視線の先ではソファで好き勝手にくつろいでいるタングラム。フクカンが散らかったごみを片付けたそうにしているが、皆がそれでは意味がないと諭したり宥めたりしていた。観察体勢として既に十分な機能は果たせていない気もする。
「お」
 そうだよ周りが変わればいいんじゃねぇか。外部からの要因って奴だな。
「閃いたぜフクカン、タングラムの見た事のねぇ顔を見るにはこうだ!」

《俺様ジャック様イケメンステージ概要》
 夕暮れの執務室、ひとり仕事をするタングラム。
 副官は休日で居ないから、業務をすべてこなさなければならないのだ。
 知らずに洩れる溜息。このまま静かな時間が流れると思われたその時。
 窓を突き破って突入する人影!
 マントを翻し飛び散るガラス片を一掃、兜をとって振り向くその口元には麗しの一輪の薔薇!
 こいつは誰だ、イケメンジャック様だ!
 驚くタングラムをすかさず壁に追い詰めるジャック、そのまま勢いよく壁に手をつく様子にタングラムもなすがまま。
 空いた片手で顎を持ち上げれば、タングラムの顔に夕日がかかり、それが熱によるものかどうか判断が出来なくなっている。目にも滴が浮かんでいる気配。
 そこで俺様、トドメのスーパーイケメン台詞!
「俺様に、惚れちまいな☆」
《以上、脳内イメージを特別にわかりやすくお送りいたしました》

「うわああああああ!!」
 閃いたけどコレ俺様恥ずか死ぬヤツだああああああ!!
「えっ! 大丈夫ですかジャックさん?」
 誰もジャックのイメージを読み取れるはずもない。呼びかけられたフクカンは続きがないのでおろおろしている。
 この隙にとメトロノームがミッション発動。無事に接触を果たし戻ってくる。皆ジャックの様子に釘づけだ!
「爆死が怖くてイケメンやってられるかクソッタレ! 貴族は一度コレと決めたら退かねぇ、やってやらぁ!」
 タイミングよくいつもの表情に戻るジャック。
 しっかり見てろよとだけ言いのこし、足早に去っていく。
「なんだったんでしょうかー」
「大丈夫、私達にもわからないから。でも作戦があるみたいだから待ってみよう?」
 フクカンの肩にぽんと手を置いて、刹那が適当なフォローを入れた。

 うず、うずうず
(見覚えあるんだよね)
 うずうずっ……たたっ
「エリオット君?」
 驚いた仲間の声にも振り返らず、ガラクタの山に駆け寄っていくエリオット。その場所はタングラムにとても近い。
(だって気になるじゃないか)
 色々な教育を受けている僕だけど、これはちょっと悔しいなあ、紅界のものなのかな? 誰に聞いたらわかるかな? ここにあるモノは全部集めたのはトップだって話だし。
「ねえねえ、これは何かな?どうやって使うのかな?」
 特に意味不明な物を手に取ってタングラムに声をかける。観察対象? 僕の知識欲の前にそんなもの、どうでもよくなっちゃったよ。
 さっきまで居た場所から放たれる仲間達の視線なんて関係ないし、タングラムの呆れたような顔も気にしないエリオット。
(だってそうだろう、未知の物を未知のままになんてしていたくないんだよ)
 目を輝かせながら答えを急かす少年の情熱は止まる様子がなかった。

 自由すぎる男性陣を見送った後。
「あ、昨日入手したあれ……」
「どうかしたのかい?」
 何かに気付いた様子のメトロノーム。その呟きにHolmesが水を向ける。ぎこちない微笑みが返ってきた。
「いえ、似たようなものがあったな、と」
「そうか。特に問題がないならいいけどね。……それでは、スタンダードに忍び込んでみようか?」
 エリオットの熱意から逃げるのと、自分用の酒瓶を取りにと二つの本音を元にキッチンへと去ったタングラムの背中。それを見ながらHolmesがタイミングを計る。
「そうですね、意外と尾行も簡単……ううん、むしろ尾行の必要がありませんでしたし」
 少し肩を落としているのは刹那。前のめりに尾行方法を予習してきたというのに発揮する機会がなかったのだ。タングラムは今日に限って、なぜかAPVから出なかったので。
「……今日はパルムが多いような気がしないか?」
 刹那の疑問に対してHolmesが謎かける。ぴくりと小さく肩を震わせる者が一人。
(ふむ、彼女か)
 目星をつけはしたものの、それ以上は指摘しない。なぜならここはAPV。ハンター達が集まっている場所の中にあるのだ。パルムだってそこかしこに居ておかしくない。幼生体ならなおさら区別をつけるのは難しい。
(そういうことにしておこうじゃないか)
 確かにこの仕事は探偵の本分だ。けれどお遊び気分の方が強い。
(謎は謎のまま、という方が面白い時もある)
「私の気のせいかもしれないな、忘れてくれ」
 ほうと肩を撫でおろす様子もしっかりと確認。

「タングラムさんのおやつとかちょっとした好みは、フクカンさんも分かってるみたいでしたし。もっと個人的な趣味とかわかればいいのかな」
「であればこそ、行ってみようじゃないか」
 距離が近くなるほど、彼女の執務室でなら面白いものが見られるかもしれないとHolmesが刹那を誘う。
「机の下にでももぐりこめたら身を隠せるかもしれないよ」
「物置とかあるといいんですけど……」
「それくらいあるだろう」
 決まりだね。くすりと微笑みHolmesは足を踏み出した。

●スタンバイ・シャイニングステージ!

 ガシャアァァァァァアン!
「何事ですか!?」
「……ってぇ……おい仮面女! ちょっと顔かせ」
 つかつかつか、ぐい、ドン!
(壁ドン顎くい惚れろ惚れちまえ……あーもうなんだった!?)
 至近距離で俺様恥ずか死にそうです。高まれ助けてイケメンパワー!
「なんなんですか、パンツ捲りにきたですか?」
「タングラム様お怪我ありませんか! って捲ったんですかジャックさん羨ましい!」
 耐えきれずハンター達の制止を振り切って隠れ場所から飛び出していくフクカン。
「たっ確かにスカートは……だから見てねぇって言ってるだろ!?」
 そうじゃねぇってあーもうなるようになれ!?
 ドン!
「仮面女!」
 兜を外し忘れているのでカツアゲにしか見えない二度目の壁ドン。それが合図となったようにもう一人、全身鎧姿の影が執務室へと飛び込んでいく。
(今です)
 モクモクモクモクモク……!
 青白いガスがジャックを中心に立ち上っていく。
「ってちょっと待つのですよ! このまま寝たらどうなるかわかってるんですか!?」
 スリープクラウドの煙だと気づいたタングラムが自分も巻き込まれていることに抗議をあげているが、彼女なら問題なく抵抗できるだろうと踏んで強行する鎧の人物。
「あれ、ジャックさんが二人!?」
 フクカンが更にパニックになっている。新たに表れた影が来ている鎧は、ジャックと同じソリッドハートだったのだ。
(今は全てを終えるのが肝心です)
 今すぐ正体を悟られるわけにはいかない、せめてジャックとフクカンが確実に眠るまでは。
(これくらいのだまし討ちは朝飯前なのです……!)
 兜の下で、メトロノームは固い決意を抱いていた。

●ミキシング・デイリーカオス

「これが向こうの世界の科学知識さ」
 ガラクタの中から見つけ出した重曹とキッチンにあったレモン、砂糖などからエリオット主動で作り上げたソーダ水。それが皆にいきわたったところで改めて皆で同じ卓を囲んだ。
 ジャックだけは誰も起こそうとしなかったので。彼はまだ執務室の床で眠りこけているが。

「えーっと……最後になっちゃたけど、フクカン君には私達からプレゼント!」
 仕切り直しにと、刹那が差し出すのは二つの包み。
「こっちが皆からの分だよ。もう一つ、これは私からのチョコレート♪」
 二人で出かける切欠にしてねと皆の意見で決まったペアチケットだ。
「今日はありがとね♪」
 そう言って笑顔を向ける。
(だから、タングラムさんに怒られるの、頑張って……ってこっそり思っちゃうけど)
 なんだかもうお説教を始めたい人が居るみたいだし。メトロノームの様子をちらりと確認しながら、少しくらい労ってもいいかなと思う刹那だった。

「ふむ、それじゃあボクからもプレゼントだ。タングラム君、フクカン君、二人とも少し屈んでくれるかな?」
 次に声をかけたのはHolmes。頭一つ分小柄な彼女はうまく届かないからと、空いた手で二人を手招く。
 いぶかしげな、もしくは不思議そうな表情だけれど二人とも素直に近寄った。Holmesの実年齢からくるおばあちゃんらしさ、ではなく貫禄を本能的に感じ取ったのだろう。
「そうそう、はい、あーん……っと」
 そのまま口をあけさせて、そこに放り込んだのはキャンディだ。一粒ずつ、口の中で転がす大きさの何の変哲もないお菓子。
(ただのキャンディだけれど、ね)
 特別に高価なわけでも、手作りと言う訳でもない、どこにでもあるような、誰にでも買える品だ。つい最近まで町中をにぎわせていたバレンタインやホワイトデーの時期だけの商品というわけでもない。
「ただ物を渡すだけでは味気ないだろう?」
 意味ありげな視線を向けるHolmes。何事も直接伝えてしまうほうが簡単だという事はHolmesも分かっている。自分だってその方が本来は得意だけれど。
「故に『今この瞬間の飴』をプレゼントとしよう」
 なぞなぞを出して遊ぶ子供のような目と一緒に言葉を添える。
(我ながら実に分かり辛い暗喩だね)
 特別ではなかったものを特別にするのは、ほんの少しの発想だ。そしてその先にある言葉が伝わればいい。是非実際に活用してほしいと思う。
(果たしてどちらが気付くかな?)

「お二人とも、ちょっといいですか」
 そこに正座してくださいと一歩前に出たのはメトロノーム。シャイネとフクカンがぎこちない動きで足を畳む。
「いくら好きという気持ちがあるからって、それを大義名分に女性のプライバシーを覗き見なんてよくないです、不潔です。依頼という皮を被せたって私の目はごまかせませんからね」
 巻き込まれて参加者になったことは棚に上げた。
 彼女のお説教は、空腹の虫が鳴くまで続くことになる。

依頼結果

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MVP一覧

  • アルテミスの調べ
    メトロノーム・ソングライトka1267
  • ノブレス・オブリージュ
    ジャック・J・グリーヴka1305

重体一覧

参加者一覧

  • アルテミスの調べ
    メトロノーム・ソングライト(ka1267
    エルフ|14才|女性|魔術師
  • ノブレス・オブリージュ
    ジャック・J・グリーヴ(ka1305
    人間(紅)|24才|男性|闘狩人
  • 可愛い坊や♪
    エリオット・ウェスト(ka3219
    人間(蒼)|13才|男性|機導師
  • 唯一つ、その名を
    Holmes(ka3813
    ドワーフ|8才|女性|霊闘士

  • シグ・ハンプティ(ka3900
    人間(紅)|22才|男性|猟撃士
  • 紅花瞬刃
    花厳 刹那(ka3984
    人間(蒼)|16才|女性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
シグ・ハンプティ(ka3900
人間(クリムゾンウェスト)|22才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2015/03/14 11:21:12
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/03/09 11:59:29