ゲスト
(ka0000)
教えて♪ 巨人の倒し方☆
マスター:赤山優牙

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/03/20 07:30
- 完成日
- 2015/03/22 19:49
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●古都アークエルスにて
王国の北東部の山麓にやや近い場所にある、歴史や魔法など様々な研究を目的とした学術都市だ。
都市の大きな特徴はグラズヘイム王立図書館がある事。
通称グリフヴァルト(文字の森)と呼ばれるこの図書館の歴史は古く、一説には古都が街としてのまとまりを持つことになるより以前、さらには王国が成り立つ前から存在するのではないかと噂されている。
40代位の女性が、その図書館を見上げていた。
幼い1人息子を連れて通ったのは、20年以上昔の話だ。
夫は息子が生まれる直前に事故で亡くなっていた。
「うぅ……」
その頃の息子の顔を思い出し、涙がこぼれる。
1人息子は行商人だった。
ある街道を通っている時に山賊に襲われ命を落とした。
『息子さんは、私達を庇って……』
逃げて来た使用人達は涙ながらに報告に来た。
責任感と正義感ある息子らしいと思う。
「……でも、死ぬ事はないのよ……」
呟いた言葉は静かで悲しみに満ちていた。
せめて、悲劇が繰り返されない様にと、衛兵に取り合ったが、難しいとの返事だった。
その街道は確かに、古都から延びているが、現場は別の貴族が治める領地だからだ。
しかも、その貴族は領地経営に熱心でなく、まず、陳情は聞かないという噂つき。
「もし、また、誰か犠牲者が出たら……」
息子の死は一体なんなのか。
●嘆きの橋
それは古都のとある水路に途中まで架かっている橋だ。
綺麗な半円を描いている石造りの橋には、ある噂がある。
『この橋で嘆けば、その悲しみや苦しみから解放される』
女性が橋を真夜中に訪れたのは初めての事だ。
噂は知っていたし、昼間に近くを通りがかった事はある。
パッと見、作り途中の橋の様だから、気にも留めていなかった。
だが、今は違う。
女性は橋の先端で語りだす。
1人息子が山賊に殺された事。
二度と同じ悲劇を繰り返されたくない事。
だが、自分にはどうしようもない事。
それらを語り終わった時だった。
月明かりの中、対岸の路地から誰かが出てくる。
「貴女の願い、叶える事、できますよ」
ふわふわくるくるの緑髪を持つ、愛らしい少女だった。歳は13歳位だろうか。
ドレス姿が月の銀光の中、神秘的な雰囲気を発していた。
「どういう事?」
「貴女でも山賊を倒せる手段を私は用意ができます」
子供の戯言ではない事を女性は感じた。
同時に、少女の申し出に興味が惹かれる。
「もっとも、その手段を使った場合、貴女の命も……」
きっと、悪い方法なのだろう。
だが、女性にとっては、もはや、善悪はそれほど気にならなかった。
「その話、詳しく聞かせて下さい」
「……では、こちらに」
一礼してから少女は路地の中に入っていった。
女性は、対岸に向かう為、急いで別の橋へと向かうのであった。
●とあるハンターオフィスにて
「むゃ~」
受付嬢が奇声を発していた。
「絶対、用事がないのに、見栄で休んでいる奴がいる!」
以前にも言った事がある台詞を叫ぶ。
あまりの剣幕に、依頼を受けようと近付いたハンターが帰っていった。
「ホワイトデーだからって、休みやがって!」
受付嬢としてその態度は如何なものかと思うが、誰も咎める人はいない。
「おまけに、私に仕事ばっかりまわして、あの上司は私に恨みでもあるのかしら」
受付嬢の手元には、依頼に関する資料とは別の物があった。
表題には『背の高い敵との戦いについての注意事項作成について』と書かれている。
昨今の辺境における怠惰の歪虚との戦闘は受付嬢も耳にしていた。
「まさか、関係ないと思っていたのに、なんで私に……」
新人ハンター向けの教育資料の一部を作る様にと指示されたのだ。
背の高い敵といえば、怠惰の歪虚が真っ先に思い浮かんだ受付嬢であるが、まさか、教育資料を作りますと言って、辺境には行きたくない。
おまけに、背の高い敵と戦った経験もないので、注意事項なんて思い浮かばない。
「そうだ!」
受付嬢は閃いたようだ。
街道に現れた雑魔討伐の依頼を同行すれば、見栄を張って休んだ連中は、出勤を余儀なくされる上に、その雑魔を討伐する上で、ハンターから助言を貰えば、教育資料の作成にも役立てる。
「誰か! この依頼、一緒に行きませんか!」
受付嬢は力一杯叫ぶのであった。
王国の北東部の山麓にやや近い場所にある、歴史や魔法など様々な研究を目的とした学術都市だ。
都市の大きな特徴はグラズヘイム王立図書館がある事。
通称グリフヴァルト(文字の森)と呼ばれるこの図書館の歴史は古く、一説には古都が街としてのまとまりを持つことになるより以前、さらには王国が成り立つ前から存在するのではないかと噂されている。
40代位の女性が、その図書館を見上げていた。
幼い1人息子を連れて通ったのは、20年以上昔の話だ。
夫は息子が生まれる直前に事故で亡くなっていた。
「うぅ……」
その頃の息子の顔を思い出し、涙がこぼれる。
1人息子は行商人だった。
ある街道を通っている時に山賊に襲われ命を落とした。
『息子さんは、私達を庇って……』
逃げて来た使用人達は涙ながらに報告に来た。
責任感と正義感ある息子らしいと思う。
「……でも、死ぬ事はないのよ……」
呟いた言葉は静かで悲しみに満ちていた。
せめて、悲劇が繰り返されない様にと、衛兵に取り合ったが、難しいとの返事だった。
その街道は確かに、古都から延びているが、現場は別の貴族が治める領地だからだ。
しかも、その貴族は領地経営に熱心でなく、まず、陳情は聞かないという噂つき。
「もし、また、誰か犠牲者が出たら……」
息子の死は一体なんなのか。
●嘆きの橋
それは古都のとある水路に途中まで架かっている橋だ。
綺麗な半円を描いている石造りの橋には、ある噂がある。
『この橋で嘆けば、その悲しみや苦しみから解放される』
女性が橋を真夜中に訪れたのは初めての事だ。
噂は知っていたし、昼間に近くを通りがかった事はある。
パッと見、作り途中の橋の様だから、気にも留めていなかった。
だが、今は違う。
女性は橋の先端で語りだす。
1人息子が山賊に殺された事。
二度と同じ悲劇を繰り返されたくない事。
だが、自分にはどうしようもない事。
それらを語り終わった時だった。
月明かりの中、対岸の路地から誰かが出てくる。
「貴女の願い、叶える事、できますよ」
ふわふわくるくるの緑髪を持つ、愛らしい少女だった。歳は13歳位だろうか。
ドレス姿が月の銀光の中、神秘的な雰囲気を発していた。
「どういう事?」
「貴女でも山賊を倒せる手段を私は用意ができます」
子供の戯言ではない事を女性は感じた。
同時に、少女の申し出に興味が惹かれる。
「もっとも、その手段を使った場合、貴女の命も……」
きっと、悪い方法なのだろう。
だが、女性にとっては、もはや、善悪はそれほど気にならなかった。
「その話、詳しく聞かせて下さい」
「……では、こちらに」
一礼してから少女は路地の中に入っていった。
女性は、対岸に向かう為、急いで別の橋へと向かうのであった。
●とあるハンターオフィスにて
「むゃ~」
受付嬢が奇声を発していた。
「絶対、用事がないのに、見栄で休んでいる奴がいる!」
以前にも言った事がある台詞を叫ぶ。
あまりの剣幕に、依頼を受けようと近付いたハンターが帰っていった。
「ホワイトデーだからって、休みやがって!」
受付嬢としてその態度は如何なものかと思うが、誰も咎める人はいない。
「おまけに、私に仕事ばっかりまわして、あの上司は私に恨みでもあるのかしら」
受付嬢の手元には、依頼に関する資料とは別の物があった。
表題には『背の高い敵との戦いについての注意事項作成について』と書かれている。
昨今の辺境における怠惰の歪虚との戦闘は受付嬢も耳にしていた。
「まさか、関係ないと思っていたのに、なんで私に……」
新人ハンター向けの教育資料の一部を作る様にと指示されたのだ。
背の高い敵といえば、怠惰の歪虚が真っ先に思い浮かんだ受付嬢であるが、まさか、教育資料を作りますと言って、辺境には行きたくない。
おまけに、背の高い敵と戦った経験もないので、注意事項なんて思い浮かばない。
「そうだ!」
受付嬢は閃いたようだ。
街道に現れた雑魔討伐の依頼を同行すれば、見栄を張って休んだ連中は、出勤を余儀なくされる上に、その雑魔を討伐する上で、ハンターから助言を貰えば、教育資料の作成にも役立てる。
「誰か! この依頼、一緒に行きませんか!」
受付嬢は力一杯叫ぶのであった。
リプレイ本文
●始める前の事
「皆さん、よろしくお願いします!」
受付嬢兼ハンターのミノリが集まった面々に向かって挨拶をする。
今日はただの雑魔退治だけではない。背の高い敵との戦いについての注意事項を作成する為のものでもある。
「聖地奪還も決まりましたし、多くの方に知って頂く事は必要ですね。可能な範囲でお手伝いさせて頂きます」
ヴァルナ=エリゴス(ka2651)が言った通り、辺境における怠惰の歪虚との戦いは大事な局面へと移っていた。
怠惰の歪虚は巨大であり、通常サイズの敵と注意するべき点も違う。
(……ついでに、新しい剣の試しも兼ねましょう)
彼女の場合、更に、煌剣『ルクス・ソリス』の試し切りも兼ねているようである。
そんなヴァルナの攻撃的な装備とは対照的なのは、全身を覆う金属鎧と巨大な盾で武装しているイーディス・ノースハイド(ka2106) だ。
「私も、喜んで協力しようじゃないか」
戦闘経験が浅い者に対する教育資料にもなるとの事でもあり、その為に受付嬢自身が戦いの場に直接出て、ハンター達から助言を得ようとは、受付の鑑とでも言うべきだなと思う。
もっとも、ミノリ自身にとっては、嫌な上司に対するささやかな復讐でもあるのだが。随分と、好意的にみられているようだ。
「とりあえず、僕も協力するさ」
ハンディライトをくるくると器用に手の上で転がした鈴胆 奈月(ka2802)。
銃も持ってきているので、遠距離戦や後衛目線でアドバイスを送ろうと考えていた。
「楽な巨人の倒し方の方法があるなら、俺が聞きてぇくらいだ。まぁ、説明はするから、あとは見て、やってみな」
ユーロス・フォルケ(ka3862) が、そっけなく言う。
依頼に集まったハンター達は、接近戦が得意な人が多いので、今回は遠距離から狙撃するつもりだ。
受付嬢は放任したかったが、アドバイスは仕事の1つなので、仕方ないと諦めている。
「大物相手なら自分に任せるであります!……自分から見ると大概が大物なのでありますけど」
小柄であるドーラ(ka4322)が軍人口調でビシっと言った後、苦笑を浮かべて補足した。
なるほど、確かに、小柄な彼女から見れば、大概の敵は、自身より背が高い事になる。
という事は、普段から『背の高い敵』と戦っているという事か。
「今日の結果を基に、資料も作成しないといけないとは、受付嬢も大変だな」
ヴァイス(ka0364)が受付嬢に優しく声をかける。
クールに、ポーカフェイスで決めているようだが、ミノリの可愛らしい笑顔に、思わず赤面してしまうのであった。
●戦闘開始
「どんな感じなのかは聞いていたが……実際に会うと、不快な外観だな」
街道に現れた巨人型の雑魔に、鈴胆が呟いた。
幾人かの人間が、それぞれ、足や手、胴等のパーツを構成していて、繋ぎとめる様にスライムが合わさっている姿は不快そのものだった。
一体、どうしてこんな姿になってしまったのか。意図的にこうなったのか、それとも、偶然なのか。
ともかく、巨人型雑魔はハンター達の姿を認めると、一直線に向かってくる。
「巨人ってのは大抵デカくて鈍い。いい的ってヤツだ。だが、その代わりタフだ」
銃を構えるユーロス。銃口をあげて、狙いをつけた。
「まず、狙うのは頭。目と喉と口ん中はだいたい軟らかくできているもんだ」
目を潰せれば、それだけで優位になる場合もある。
ユーロスの射撃に合わせ、鈴胆が、LEDライトを触媒に機導砲を放つ。
「味方を気にせずに上半身を、特に顔等を狙えるのが、後衛の利点だ」
アルケミストデバイスから駆動しているとはいえ、ライトの先から一条の光が放たれる光景は冗談かと思うが、本人は至って真面目な顔で、ミノリに説明をしていた。
「フォルケさんの言う通り、狙いをつけた方が良い場合が多いだろう」
例えば、顔や関節部だ。
相手がタフである以上、効果的にダメージを与えられる場所を狙撃した方が良いという事か。
「まあ、今回は元がスライムだから、目潰しは意味がないかもしれないが……」
ヴァイスも補足しつつ、銃を放つ。
頭部を狙って撃った銃撃は、巨人の『目』に相当する部分を直撃したが、自身が言った通り、効果は望めないだろう。
注意深く仲間の動きを確認する。必要であれば、戦闘のフォローに入るつもりだからだ。
もっとも、その機会はないだろうなと、雑魔の足元に取りついた3人を見て、ヴァイスは思う。
そして、その予想は正しかったのであった。
イーディスが盾を前面に掲げ、巨人の正面に立つ。
自らが、仲間達の盾になるつもりなのだ。
「私からは、防御方法を実践させてもらうよ」
その言葉が雑魔に届いたのか、都合が良い事に雑魔が腕を上段から彼女に向かって振り下ろした。
重装備であるにも関わらず、軌道を見切り、わずかに身体をスライドさせる。
「敵の攻撃は避けるのが一番だけど、重装備を纏っていると機敏な動きは難しいのさ」
そんな事言いつつも、雑魔の初撃は避けた。
「流石にキミに実践しろとは言わないから、目で見て覚えておいて欲しいよ」
戦闘中というのに、受付嬢に振りかえる余裕つきだ。
真似したくても、ミノリの力量では実践はできないだろう。
「相手が攻撃した直後というのはスキだらけだからね、狙えたらカウンターを加えると良いさ」
そう言って、視線を大剣を振るうヴァルナに向けた。
雑魔の足首に叩きこむ。その威力は、体勢を崩すには十分だったようだ。
「武器によっては、長さを活かして、そのまま斬り込みます。腰ぐらいまでなら、この様に届く場合もありますから」
バランスを崩し、片膝をついた雑魔の胴体に対して、再び大剣を叩きつけた。
白く仄光る刀身は雑魔の横っ腹を切り裂く。
だが、雑魔の元はスライムだからか、さほど効果がある様ではない。人であれば、致命傷となる部位でも、この巨人型雑魔にはただの傷の一つの様だ。
「スライム状の敵の場合は、虱潰しで切断していくしかありません」
ヴァルナは説明しつつ、体重移動と巧みな技術で、重いはずの大剣を振り上げた。
雑魔を挟んでヴァルナの反対側で剣を振るうドーラ。
「特定の部位を狙って、執拗に攻撃を繰り返し、最終的には、切断まで攻め続けるであります」
有言実行。
小さきドワーフの戦士は、正確に、雑魔の同じ部位に繰り返し斬撃を与えていた。
そこへ、鈍い音を立てて雑魔が拳を振り落ろす。
「常に視界を広くよく見て、敵の攻撃に注意するのであります!」
一度後ろに下がり、距離を取って雑魔の攻撃を避ける。
虚しく地面を叩いた雑魔の拳が引く隙を突いて、再び前に出ると、同部位を狙った。
●続くアドバイス
戦闘はハンター達に有利に運んでいるのは、明らかだった。
「あの大きさだ。繰出される重い一撃や足で薙ぎ払うだけでも広範囲に被害が及ぶから注意が必要だぜ」
ヴァイスがミノリに敵の攻撃について注意点を述べる。
ミノリは先程からメモを取るので精一杯の様だ。
「巨体故に、それを支える脚部を中心的に狙うことでバランスを崩させ易いな」
前衛が雑魔の足を狙って攻撃している理由を補足する。
雑魔が振り回した腕を掻い潜り、ドーラとヴァルナが雑魔に肉薄した。
「敵の攻撃を、上手く避ける事ができれば、懐にも入り易い」
内側に入りこまれた雑魔だが、気にする事なく、正面に立つイーディスに狙いを定めた。
丸太のよりも太い腕の一撃は、人間一人を、粉砕するのに十分な威力があるはずなのだが……。
「受け止めると决めてしまえば対処は結構容易なのさ」
さすがに振りかえっている余裕はない様だが、雑魔の攻撃を盾で受け流しながら、イーディスは話す。
「その場合は、受け流すのが大事だけど、正面から受け止めないといけない場合は、こうするのさ!」
続く雑魔の攻撃を実践説明の為に敢えて受け止めるつもりの様だ。
雑魔の拳が、彼女に向かって真っ直ぐ伸びる。
「援護するよ」
鈴胆がイーディスの前に、光の壁を出現させた。機導師のスキルである防御障壁だ。
雑魔の拳は光の壁を砕き割る。これで、多少は威力が低下したはずだ。
盾で受け止めたイーディスが、構えた姿勢のまま吹き飛ぶ。
だが、半分はわざとだ。その場で耐えきる事もできただろうが、衝撃を和らげる為に、自身ごと、後方へ受け流したのだ。
「それと、装備だね。相手が大きいと負傷する箇所は上半身が多くなる」
何事も無かったかのように、受付嬢に振りかえる。
装備が重すぎたら、上半身に防具を集中して装備するのもありだよと伝え、前衛に戻って行った。
一時的に正面に立っていたヴァルナが、元の位置に戻る。
「ミノリさん、魔法のタイミングは任せますね。自ら実践してみるのも、資料作成に役立つと思いますよ」
ヴァルナの呼び掛けにミノリは元気よく返事をする。メモ取りで、そんな余裕はなさそうだが。
弱点を探す為にも、足以外の部位を魔法や飛び道具で攻撃するのも良いし、仲間を支援する魔法やスキルの使用タイミングは、先程の鈴胆が使ってみせたように、状況を見極めながら、使っていくしかない。
「意外と説明に困るな」
スキルを使用するタイミングついて、鈴胆はそう言った。
こればっかりは、身体で覚えないと身についていかないものだ。教えようとして簡単に教えられるものでもない。
「あとは……そうだな、油断しない方がいい」
鈴胆が銃を構える。
機導術よりも、射撃の方が効果的と判断したからだろう。
「場合によっては、前衛をスルーして攻撃が届く可能性もあるから」
今の所、雑魔は後衛に攻撃はしてこないが、例えば、岩や木等投げてくる可能性もあるはずだ。
「もっとも、逆に、相手は下を見ている事が多いから、何かしらの手段を用いて頭上からの強襲とか効果あるかもな」
辺境での戦いの折、頭上から奇襲する為に、投石機で射出されたというハンターがいたらしい。
まさか、頭上から襲撃されると思っていなかった怠惰の巨人に対し、効果はあったという。
「あとは、距離にも気をつけろ」
ユーロスがすぐに回避行動に移れるように、立ったまま狙撃を行いつつ、ミノリに助言する。
「アイツらの歩幅は相応に大きい。見誤ると一歩で詰められる」
それは、後衛にとっては致命的な事であるはずだ。
今回、敵は雑魔一体だから良いが、複数体居る場合は特に気をつけなければならないだろう。
「近づかれた時にどうするかは、前の奴らの動きを見てな」
そう言って、視線を前衛のドーラに向けた。
足元への攻撃を繰り返す彼女に対して、雑魔は口から酸を吐いた。
「攻撃の始点が高い場所にある場合は、敢えて、前に出て懐に飛びこむ事で避けるのであります!」
唯でさえ小さい背丈の彼女が雑魔の足元に意を介さず飛びこんでいく。
なかなかできる事ではないが、普段から常に背丈の高い敵と戦う事が多いドーラにとっては慣れた事なのだろう。
強力な酸が、音を立てて大地を焼く。その一方で、ついに、ドーラが一撃が雑魔の足を切断した。
転がる様に地面に倒れ落ちようとした雑魔が、苦し紛れにヴァルナへ頭突きを繰り出す。
「私は、皆を守る盾であり鎧さ」
イーディスが全身を使って、庇いに入る。
渾身の一撃だった雑魔を頭突きを、彼女は、受け止める。
先程のように受け流しはしない。
持てる力で衝撃に耐えきった。それが、彼女だからこそできる防御に特化した戦い方だ。
そして、イーディスが雑魔の攻撃を真っ向から受け止めた理由……。
「イーディスさん、ありがとうございます!」
ヴァルナがイーディスの影から、雑魔の首に目がけて、身体ごと、大剣を突きだした。
イーディスが必ず守り切って、隙を作ってくれると信じていたからこそできた、会心の一撃だ。
攻守の戦闘スタイルが生んだ見事な連携プレー。
雑魔はボロボロとゆっくり崩れていくのであった。
崩れて消えていく雑魔を眺めながら、ヴァイスはある事に気がついた。
巨人型雑魔を構成していた人間は、山賊の風貌であったが、その中に、明らかに一般人の女性と思われる様な人間が居たからだ。
だが、確かめる余裕もなく、それも消え去った。
(一般人と山賊の不釣合いな組み合わせ……そして、スライムか……まさか、な……)
考えすぎかもしれないが、一瞬、脳裏に、ある歪虚と少女の姿が浮かんだヴァイスであった。
●戦闘を終えて
「お疲れ様でした! 皆さん、ありがとうございます」
ニコニコ顔でミノリがお礼を述べる。
結局、彼女はメモを取るだけで微動だにもしなかったが。
「自分の動きが参考になれば、光栄であります!」
「あとは、自分で動いてみればいい」
威勢良く応えるドーラとそっけなく言うユーロス。
ミノリが取ったメモは相当の量だと一目でわかる。意外と勉強家かもしれない。
「クラスごとの特徴を含めた考慮も必要だ」
鈴胆が淡々とつけ加える。
今回の依頼には、魔術師や霊闘士はいなかった。資料作成の際には、その点も考慮しなければならないだろう。
「視点が高い敵には、隠れても実は隠れられていない場合がありますので、ご注意下さい」
ヴァルナも現場で説明しきれなかった事を補足した。
仲間の背に隠れているつもりが、実は見つかっていたとか有り得る事だろう。
「防御特化の場合、装備も重要なのさ」
頑健な兜を取って、一息つきながらイーディスが伝える。
グラズヘイム王国騎士団御用達のブランド「グラズヘイム・シュバリエ」の逸品は、そうそう手に入る物ではないが、その堅牢さには、今回、十分な力を発揮していた。
「素晴らしい資料が出来る事を応援してるぜ」
ヴァイスの言葉にミノリは頷くと、急にハッとした。
「皆さんの助言を簡単にまとめた物を急いで写しました。皆さんには必要ないかもしれませんが、知り合いの方などに役立てて貰えればと思います」
そう言って、走り書きされたメモを、彼らに渡すのであった。
おしまい。
●ミノリメモ
『体格差から繰り出される攻撃は広範囲である場合もある』
『巨体を支える足を集中的に狙う事により、体勢を崩しやすい』
『場合によっては懐に入った方が安全な時もある』
『体格差によって、敵からの攻撃は上半身によりやすい』
『遠距離攻撃は上半身を狙っていける。特に目や喉等柔らかい場所を狙撃できれば効果的』
『敵は下側に意識が向いている事が多い可能性があるので、頭上からの襲撃は有効な時がある』
『視界の広さは敵の方が有利なので、隠れていても見つかる場合がある』
『歩幅は相応にあるので、距離に注意しておかないと、一気に詰められる場合がある』
『特定の部位を狙い続ける方が有利になる場合がある』
『攻撃の始点が高い場合、懐に入り込んで避ける方法もある』
『攻撃後は隙が大きい場合があるので、そこをカウンターする』
『攻守・遠近の連携を大切にする』
「皆さん、よろしくお願いします!」
受付嬢兼ハンターのミノリが集まった面々に向かって挨拶をする。
今日はただの雑魔退治だけではない。背の高い敵との戦いについての注意事項を作成する為のものでもある。
「聖地奪還も決まりましたし、多くの方に知って頂く事は必要ですね。可能な範囲でお手伝いさせて頂きます」
ヴァルナ=エリゴス(ka2651)が言った通り、辺境における怠惰の歪虚との戦いは大事な局面へと移っていた。
怠惰の歪虚は巨大であり、通常サイズの敵と注意するべき点も違う。
(……ついでに、新しい剣の試しも兼ねましょう)
彼女の場合、更に、煌剣『ルクス・ソリス』の試し切りも兼ねているようである。
そんなヴァルナの攻撃的な装備とは対照的なのは、全身を覆う金属鎧と巨大な盾で武装しているイーディス・ノースハイド(ka2106) だ。
「私も、喜んで協力しようじゃないか」
戦闘経験が浅い者に対する教育資料にもなるとの事でもあり、その為に受付嬢自身が戦いの場に直接出て、ハンター達から助言を得ようとは、受付の鑑とでも言うべきだなと思う。
もっとも、ミノリ自身にとっては、嫌な上司に対するささやかな復讐でもあるのだが。随分と、好意的にみられているようだ。
「とりあえず、僕も協力するさ」
ハンディライトをくるくると器用に手の上で転がした鈴胆 奈月(ka2802)。
銃も持ってきているので、遠距離戦や後衛目線でアドバイスを送ろうと考えていた。
「楽な巨人の倒し方の方法があるなら、俺が聞きてぇくらいだ。まぁ、説明はするから、あとは見て、やってみな」
ユーロス・フォルケ(ka3862) が、そっけなく言う。
依頼に集まったハンター達は、接近戦が得意な人が多いので、今回は遠距離から狙撃するつもりだ。
受付嬢は放任したかったが、アドバイスは仕事の1つなので、仕方ないと諦めている。
「大物相手なら自分に任せるであります!……自分から見ると大概が大物なのでありますけど」
小柄であるドーラ(ka4322)が軍人口調でビシっと言った後、苦笑を浮かべて補足した。
なるほど、確かに、小柄な彼女から見れば、大概の敵は、自身より背が高い事になる。
という事は、普段から『背の高い敵』と戦っているという事か。
「今日の結果を基に、資料も作成しないといけないとは、受付嬢も大変だな」
ヴァイス(ka0364)が受付嬢に優しく声をかける。
クールに、ポーカフェイスで決めているようだが、ミノリの可愛らしい笑顔に、思わず赤面してしまうのであった。
●戦闘開始
「どんな感じなのかは聞いていたが……実際に会うと、不快な外観だな」
街道に現れた巨人型の雑魔に、鈴胆が呟いた。
幾人かの人間が、それぞれ、足や手、胴等のパーツを構成していて、繋ぎとめる様にスライムが合わさっている姿は不快そのものだった。
一体、どうしてこんな姿になってしまったのか。意図的にこうなったのか、それとも、偶然なのか。
ともかく、巨人型雑魔はハンター達の姿を認めると、一直線に向かってくる。
「巨人ってのは大抵デカくて鈍い。いい的ってヤツだ。だが、その代わりタフだ」
銃を構えるユーロス。銃口をあげて、狙いをつけた。
「まず、狙うのは頭。目と喉と口ん中はだいたい軟らかくできているもんだ」
目を潰せれば、それだけで優位になる場合もある。
ユーロスの射撃に合わせ、鈴胆が、LEDライトを触媒に機導砲を放つ。
「味方を気にせずに上半身を、特に顔等を狙えるのが、後衛の利点だ」
アルケミストデバイスから駆動しているとはいえ、ライトの先から一条の光が放たれる光景は冗談かと思うが、本人は至って真面目な顔で、ミノリに説明をしていた。
「フォルケさんの言う通り、狙いをつけた方が良い場合が多いだろう」
例えば、顔や関節部だ。
相手がタフである以上、効果的にダメージを与えられる場所を狙撃した方が良いという事か。
「まあ、今回は元がスライムだから、目潰しは意味がないかもしれないが……」
ヴァイスも補足しつつ、銃を放つ。
頭部を狙って撃った銃撃は、巨人の『目』に相当する部分を直撃したが、自身が言った通り、効果は望めないだろう。
注意深く仲間の動きを確認する。必要であれば、戦闘のフォローに入るつもりだからだ。
もっとも、その機会はないだろうなと、雑魔の足元に取りついた3人を見て、ヴァイスは思う。
そして、その予想は正しかったのであった。
イーディスが盾を前面に掲げ、巨人の正面に立つ。
自らが、仲間達の盾になるつもりなのだ。
「私からは、防御方法を実践させてもらうよ」
その言葉が雑魔に届いたのか、都合が良い事に雑魔が腕を上段から彼女に向かって振り下ろした。
重装備であるにも関わらず、軌道を見切り、わずかに身体をスライドさせる。
「敵の攻撃は避けるのが一番だけど、重装備を纏っていると機敏な動きは難しいのさ」
そんな事言いつつも、雑魔の初撃は避けた。
「流石にキミに実践しろとは言わないから、目で見て覚えておいて欲しいよ」
戦闘中というのに、受付嬢に振りかえる余裕つきだ。
真似したくても、ミノリの力量では実践はできないだろう。
「相手が攻撃した直後というのはスキだらけだからね、狙えたらカウンターを加えると良いさ」
そう言って、視線を大剣を振るうヴァルナに向けた。
雑魔の足首に叩きこむ。その威力は、体勢を崩すには十分だったようだ。
「武器によっては、長さを活かして、そのまま斬り込みます。腰ぐらいまでなら、この様に届く場合もありますから」
バランスを崩し、片膝をついた雑魔の胴体に対して、再び大剣を叩きつけた。
白く仄光る刀身は雑魔の横っ腹を切り裂く。
だが、雑魔の元はスライムだからか、さほど効果がある様ではない。人であれば、致命傷となる部位でも、この巨人型雑魔にはただの傷の一つの様だ。
「スライム状の敵の場合は、虱潰しで切断していくしかありません」
ヴァルナは説明しつつ、体重移動と巧みな技術で、重いはずの大剣を振り上げた。
雑魔を挟んでヴァルナの反対側で剣を振るうドーラ。
「特定の部位を狙って、執拗に攻撃を繰り返し、最終的には、切断まで攻め続けるであります」
有言実行。
小さきドワーフの戦士は、正確に、雑魔の同じ部位に繰り返し斬撃を与えていた。
そこへ、鈍い音を立てて雑魔が拳を振り落ろす。
「常に視界を広くよく見て、敵の攻撃に注意するのであります!」
一度後ろに下がり、距離を取って雑魔の攻撃を避ける。
虚しく地面を叩いた雑魔の拳が引く隙を突いて、再び前に出ると、同部位を狙った。
●続くアドバイス
戦闘はハンター達に有利に運んでいるのは、明らかだった。
「あの大きさだ。繰出される重い一撃や足で薙ぎ払うだけでも広範囲に被害が及ぶから注意が必要だぜ」
ヴァイスがミノリに敵の攻撃について注意点を述べる。
ミノリは先程からメモを取るので精一杯の様だ。
「巨体故に、それを支える脚部を中心的に狙うことでバランスを崩させ易いな」
前衛が雑魔の足を狙って攻撃している理由を補足する。
雑魔が振り回した腕を掻い潜り、ドーラとヴァルナが雑魔に肉薄した。
「敵の攻撃を、上手く避ける事ができれば、懐にも入り易い」
内側に入りこまれた雑魔だが、気にする事なく、正面に立つイーディスに狙いを定めた。
丸太のよりも太い腕の一撃は、人間一人を、粉砕するのに十分な威力があるはずなのだが……。
「受け止めると决めてしまえば対処は結構容易なのさ」
さすがに振りかえっている余裕はない様だが、雑魔の攻撃を盾で受け流しながら、イーディスは話す。
「その場合は、受け流すのが大事だけど、正面から受け止めないといけない場合は、こうするのさ!」
続く雑魔の攻撃を実践説明の為に敢えて受け止めるつもりの様だ。
雑魔の拳が、彼女に向かって真っ直ぐ伸びる。
「援護するよ」
鈴胆がイーディスの前に、光の壁を出現させた。機導師のスキルである防御障壁だ。
雑魔の拳は光の壁を砕き割る。これで、多少は威力が低下したはずだ。
盾で受け止めたイーディスが、構えた姿勢のまま吹き飛ぶ。
だが、半分はわざとだ。その場で耐えきる事もできただろうが、衝撃を和らげる為に、自身ごと、後方へ受け流したのだ。
「それと、装備だね。相手が大きいと負傷する箇所は上半身が多くなる」
何事も無かったかのように、受付嬢に振りかえる。
装備が重すぎたら、上半身に防具を集中して装備するのもありだよと伝え、前衛に戻って行った。
一時的に正面に立っていたヴァルナが、元の位置に戻る。
「ミノリさん、魔法のタイミングは任せますね。自ら実践してみるのも、資料作成に役立つと思いますよ」
ヴァルナの呼び掛けにミノリは元気よく返事をする。メモ取りで、そんな余裕はなさそうだが。
弱点を探す為にも、足以外の部位を魔法や飛び道具で攻撃するのも良いし、仲間を支援する魔法やスキルの使用タイミングは、先程の鈴胆が使ってみせたように、状況を見極めながら、使っていくしかない。
「意外と説明に困るな」
スキルを使用するタイミングついて、鈴胆はそう言った。
こればっかりは、身体で覚えないと身についていかないものだ。教えようとして簡単に教えられるものでもない。
「あとは……そうだな、油断しない方がいい」
鈴胆が銃を構える。
機導術よりも、射撃の方が効果的と判断したからだろう。
「場合によっては、前衛をスルーして攻撃が届く可能性もあるから」
今の所、雑魔は後衛に攻撃はしてこないが、例えば、岩や木等投げてくる可能性もあるはずだ。
「もっとも、逆に、相手は下を見ている事が多いから、何かしらの手段を用いて頭上からの強襲とか効果あるかもな」
辺境での戦いの折、頭上から奇襲する為に、投石機で射出されたというハンターがいたらしい。
まさか、頭上から襲撃されると思っていなかった怠惰の巨人に対し、効果はあったという。
「あとは、距離にも気をつけろ」
ユーロスがすぐに回避行動に移れるように、立ったまま狙撃を行いつつ、ミノリに助言する。
「アイツらの歩幅は相応に大きい。見誤ると一歩で詰められる」
それは、後衛にとっては致命的な事であるはずだ。
今回、敵は雑魔一体だから良いが、複数体居る場合は特に気をつけなければならないだろう。
「近づかれた時にどうするかは、前の奴らの動きを見てな」
そう言って、視線を前衛のドーラに向けた。
足元への攻撃を繰り返す彼女に対して、雑魔は口から酸を吐いた。
「攻撃の始点が高い場所にある場合は、敢えて、前に出て懐に飛びこむ事で避けるのであります!」
唯でさえ小さい背丈の彼女が雑魔の足元に意を介さず飛びこんでいく。
なかなかできる事ではないが、普段から常に背丈の高い敵と戦う事が多いドーラにとっては慣れた事なのだろう。
強力な酸が、音を立てて大地を焼く。その一方で、ついに、ドーラが一撃が雑魔の足を切断した。
転がる様に地面に倒れ落ちようとした雑魔が、苦し紛れにヴァルナへ頭突きを繰り出す。
「私は、皆を守る盾であり鎧さ」
イーディスが全身を使って、庇いに入る。
渾身の一撃だった雑魔を頭突きを、彼女は、受け止める。
先程のように受け流しはしない。
持てる力で衝撃に耐えきった。それが、彼女だからこそできる防御に特化した戦い方だ。
そして、イーディスが雑魔の攻撃を真っ向から受け止めた理由……。
「イーディスさん、ありがとうございます!」
ヴァルナがイーディスの影から、雑魔の首に目がけて、身体ごと、大剣を突きだした。
イーディスが必ず守り切って、隙を作ってくれると信じていたからこそできた、会心の一撃だ。
攻守の戦闘スタイルが生んだ見事な連携プレー。
雑魔はボロボロとゆっくり崩れていくのであった。
崩れて消えていく雑魔を眺めながら、ヴァイスはある事に気がついた。
巨人型雑魔を構成していた人間は、山賊の風貌であったが、その中に、明らかに一般人の女性と思われる様な人間が居たからだ。
だが、確かめる余裕もなく、それも消え去った。
(一般人と山賊の不釣合いな組み合わせ……そして、スライムか……まさか、な……)
考えすぎかもしれないが、一瞬、脳裏に、ある歪虚と少女の姿が浮かんだヴァイスであった。
●戦闘を終えて
「お疲れ様でした! 皆さん、ありがとうございます」
ニコニコ顔でミノリがお礼を述べる。
結局、彼女はメモを取るだけで微動だにもしなかったが。
「自分の動きが参考になれば、光栄であります!」
「あとは、自分で動いてみればいい」
威勢良く応えるドーラとそっけなく言うユーロス。
ミノリが取ったメモは相当の量だと一目でわかる。意外と勉強家かもしれない。
「クラスごとの特徴を含めた考慮も必要だ」
鈴胆が淡々とつけ加える。
今回の依頼には、魔術師や霊闘士はいなかった。資料作成の際には、その点も考慮しなければならないだろう。
「視点が高い敵には、隠れても実は隠れられていない場合がありますので、ご注意下さい」
ヴァルナも現場で説明しきれなかった事を補足した。
仲間の背に隠れているつもりが、実は見つかっていたとか有り得る事だろう。
「防御特化の場合、装備も重要なのさ」
頑健な兜を取って、一息つきながらイーディスが伝える。
グラズヘイム王国騎士団御用達のブランド「グラズヘイム・シュバリエ」の逸品は、そうそう手に入る物ではないが、その堅牢さには、今回、十分な力を発揮していた。
「素晴らしい資料が出来る事を応援してるぜ」
ヴァイスの言葉にミノリは頷くと、急にハッとした。
「皆さんの助言を簡単にまとめた物を急いで写しました。皆さんには必要ないかもしれませんが、知り合いの方などに役立てて貰えればと思います」
そう言って、走り書きされたメモを、彼らに渡すのであった。
おしまい。
●ミノリメモ
『体格差から繰り出される攻撃は広範囲である場合もある』
『巨体を支える足を集中的に狙う事により、体勢を崩しやすい』
『場合によっては懐に入った方が安全な時もある』
『体格差によって、敵からの攻撃は上半身によりやすい』
『遠距離攻撃は上半身を狙っていける。特に目や喉等柔らかい場所を狙撃できれば効果的』
『敵は下側に意識が向いている事が多い可能性があるので、頭上からの襲撃は有効な時がある』
『視界の広さは敵の方が有利なので、隠れていても見つかる場合がある』
『歩幅は相応にあるので、距離に注意しておかないと、一気に詰められる場合がある』
『特定の部位を狙い続ける方が有利になる場合がある』
『攻撃の始点が高い場合、懐に入り込んで避ける方法もある』
『攻撃後は隙が大きい場合があるので、そこをカウンターする』
『攻守・遠近の連携を大切にする』
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/03/17 18:55:46 |
|
![]() |
相談 ユーロス・フォルケ(ka3862) 人間(クリムゾンウェスト)|17才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/03/19 22:03:15 |