• 不動

【不動】Achtung!

マスター:稲田和夫

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
少なめ
相談期間
3日
締切
2015/03/15 09:00
完成日
2015/03/25 04:02

このシナリオは1日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 ノアーク・ランタウの北東部。試練の洞窟とも呼ばれるエンシンケ洞窟のやや南東の森林地帯。
 森の中、密かに切り開かれた道を数台の機導トラックが走る。
 慎重に、注意深く周囲を警戒しながら走るその車列の真ん中には一台のトラックに牽引される巨大な荷台と、防水シートをかけられて荷台に横たわるリアルブルーの鋼鉄の巨人、CAMの姿があった。
 人歪虚に対する切り札であるCAMが帝国錬魔院の技術により、マテリアルを用いた魔導エンジンを代替の動力とする事で、ようやくクリムゾンウェストでの実用化に向けて動き出したのは周知の事実である。
 そのCAMが何故、主戦場から離れたこの地域に秘密裏に運ばれているのか……歪虚側がこれを察知すれば大きな興味を持つだろう。
 いや、現にたった今、車列から十分な距離を取りつつも、決して離れずその動向をじっと探る少女がいた。
「革命軍共がCAMを改良したという情報は把握していたけれど……何故、こんなところに?」
『仕掛けるのか? ツィカーデよ』
 少女の羽織った黒いマントの下から、大気そのものを振るわせるような異質な声が響く。
『儂はどちらでも構わんぞ。玩具には興味は無いが、敵としてのアレには、それなりに興が乗らんでもない。あの男が懲りずに作り出した玩具を試すのにも――』
 声が話し終えぬうちに、その歪虚は突然走り出す。それまでの計算された慎重さが嘘のような一途さがそこにはあった。
『何事だツィカーデ!? このまま奴らを見失う心算か!』
「友軍だよ! 気配を感じたの!」
 必死の形相で少女が叫ぶ。
「革命軍の追跡隊が迫っている! このままじゃやられちゃう! 助けなきゃ!」
 およそ、人間には不可能な速度で密生した木々の間を黒い影が駆け抜ける。勢いでマントが翻り、鈍く輝く鋼鉄の腕が顕になる。
『人間共は皆革命軍。そして、我ら歪虚は同胞か。哀れな娘よ』
 その腕自体を覆う、黒い影が嘲笑う。
『だが、その渇望故に儂が力を与え、そしてこの儂を『使う』資格を持つのもまた事実。よかろう。戯れに興じるのもまた一興、せいぜい同胞に憐憫を垂れてやろうぞ、ツィカーデよ!』
 暗い木立の中に、この世のものとも思えぬ昏い哄笑がどこまでも木霊するのであった。



 その巨人は、接近する人間の気配はとうに察していたにもかかわらず、じっとその場に蹲ったまま動こうとはしなかった。
 彼は、他の怠惰の同胞と同じく、先のナナミ河での戦いで人類側の策略に嵌り深手を受けている。だが、逃げようと思えば逃げられないほどの傷ではないのも確かだ。
 なのに逃げようとしないのは、一旦怒りに火が着いた今、彼の行動原理は徹底的に暴れるというただ一点にのみ向けられていたからだ。
 その証拠に、巨人の単眼は怒りに燃えていた。
 人間共の攻勢に押されてここまで配下の手勢と共に退却して来たが、その配下も全て倒された。
 全身に怒りを漲らせた巨体がゆっくりと立ち上がった。
 5m近くはある筋骨隆々とした体は、彼らの指揮官であるヤクシー同様の青白い肌であり、その全身は骨を模した装飾の鎧で覆われている。
 鎧も体も満身創痍ではあるが、武器である巨大な曲刀は未だに健在だ。
 無論、彼とて人類の手強さは身に染みている。
 ここで人間を迎え撃てば、よしんば全員を叩き潰せたとしても、逃げる余力は残るまい。
 だが、彼はその思考を考えるのも面倒だと振り払い――遂に木立の間から姿を現した人間共――あなたたちハンターを睨み据え、凄まじい咆哮を上げた。

「Achtung!」

 その咆哮すら容易くかき消すほどの声が、突如森の中に響き渡った。
 ハンターたちの中にゾンネンシュトラール帝国の出身者か、リアルブルーの独語圏の出身者がいれば、それが「傾注」とか「注目」を意味する軍隊用語だと気付いたかもしれない。
 一体何事かと、人間も歪虚も呆然とする中、木立の奥の闇の中からゆっくりとそれが姿を現した。

 「それ」は一見少女のような姿をしていた。
 にも、かかわらず、それを見たあなたたちハンターも、怠惰の眷属も即座に理解した。
 それが、この戦場には余りに場違いな力を持つことを。
 その場に存在するだけで悪寒さえ感じさせる負のマテリアルは、巨人のそれを容易く呑み込んでしまった。
 暴食の眷属らしい青白い肌。朽ちた軍服。そして、何よりもその通称の由来ともなった、巨大な機械の腕。
 あるいは、余りに名の知れた歪虚故に聞いたことだけはある者もいるかもしれない。
 あるいは、嫉妬に強奪されたCAM巡る戦いで既に直接接触した者もいるかもしれない。

 災厄の十三魔の一人「アイゼンハンダー」

 それが、間違いなくハンターたちの眼前に立っていた。



 誰もが警戒する中、しかしアイゼンハンダーはハンターたちに目もくれずゆっくりと巨人の方へ接近する。そして――
「この分からず屋!」
 いきなり、その鉄の義手で巨人の頬を殴りつけた。
 当然ながら、巨人はそのまま吹っ飛んだ。
 とはいえ、これでも十分に手加減したであろうことは想像に難くない。もし、彼女が本気で殴れば、恐らく巨人は原型をとどめていなかったであろう。
「刺し違えてでも敵を撃滅せんとするその意気や良し! だが、大局を見失うのは兵士としてそれ以上の恥! 既にこの場の戦局は決した! ならば、今は形振り構わず逃げ延びて、次なる戦いに備えて生き延びることこそ兵士の務め……駄目だよ……死んだら駄目なんだよ!」
 意外なことに、身を起こした巨人は神妙にその叱責を受けていた。
 歪虚は七つの眷属に分かれてはいるが、ことさらその眷属同士で反目しあっている訳ではない。
 まして、眷属は違えど、どちらが高位の歪虚かは巨人にとっても自明の理であり、逆らえる筈もなかった。
「革命軍……ッ」
 そして、ようやく自体を理解したあなたたちの方にゆっくりとアイゼンハンダーは顔を向ける。
「もう、お前たちに仲間は殺させない……来い!」
 突然、頭上の木々の中から黒い影が飛び出し、宙返りを決めた後、あなたたちの前に着地した。
 それは、半ば以上朽ち果て、それ自体が内包する負のマテリアルだけで辛うじて形を維持している白骨死体に、無理矢理機械の手足を接続した異形の暴食だった。
「前回の戦いで、このレーザーソード型の有用性は実証済みだ! より強化された軍医殿の新兵器、グレイブワーカーTwin.L.S.が(ツイン・レーザー・ソード)がお前たちを殲滅するっ!」
 機械の両腕の先端から、輝く機導剣が形成される。
 同時に、アイゼンハンダーはようやく、起き上がった巨人を促した。
「撤退を支援する。……さあ、皆の所に帰ろう?」
 その、濁った眼はどこか虚ろで、まるで遠くを見ているようで、そして限りなく優しかった。

リプレイ本文

 巨人の足元でフランシスカ(ka3590)の放った魔法弾が弾けた。
「あら、他人に尻叩かれて尻尾巻いて逃げるの? 流石は怠惰ね、私達に負けるのも道理だわ」
 追い打ちをかけるようにエリシャ・カンナヴィ(ka0140)が嘲笑って見せる。
 巨人の剣を握る手に凄まじい力が籠る。
「自ら進んで生き恥を晒しますか。その刀はお飾りというわけですね」
 と、フランシスカ。
「あなたが一介の兵士なら何も言うことはありません。どこへなりとも逃げ遂せなさい。ですが、あなたが一廉の戦士であるなら、人間如きの相手で無様に敗走し、果たして死した仲間に顔向けできましょうか」
 それでも、巨人が動かないのを見て更に言葉を重ねる。
「……これは失礼。そこにいる「鋼鉄の腕」ですら眷属を捨て駒として扱うのですから、あなたもそうして味方を盾にし、ここまで落ち延びたのでしょう。存分に逃げるがよろしい」
 直後。
 間髪を入れず巨人は「後ろに跳び退いた。
 ハンターたちの誰もが息を飲む。
 巨人は、二人の挑発には耳を貸していなかったのだ。

『儂は貴様の如き弱卒などどうでも良い。……だが、貴様が「儂ら」の意志にそぐわぬ行動を取るのであれば、「癇に障る」とだけ警告しておく』
 
 彼は歪虚の一員として暴食が他の眷属以上に上下関係に喧しいということを認識していた。その意向に逆らってまで戦闘に固執する理由は彼にはなかったのだ。
 エリシャとフランシスカは一瞬躊躇したが、慌てて後を追った。。
「見え透いた挑発など無駄だ革命軍! 味方の命を盾にここまで永らえたからこそ、最早自分の命が自分だけのものでないことを彼は知っている!」
 ツィカーデはそう得意そうに叫んで、すかさず自身も引こうとする様子を見せる。
「くそ……! デスフラグな上に選択肢をミスったっぽいぞ!」
キヅカ・リク(ka0038)が叫ぶ。
 ハンターの作戦は、挑発で巨人が釣り出されることを前提に組まれており、巨人が挑発を無視して逃走した場合の戦術は想定されていなかったのだ。
「とにかく、何とかしてEHだけでも足止めしないと……! このままじゃ二人がバランスの悪いゲームみたいな状況になる!」
「やってみるよ」
 アルファス(ka3312)がEHに語りかける。
「ツィカーデ一等兵! 忘れたのか、君はいつその目を失った!」
「今の私は「鉄の腕」だ! そして、長引く激戦の最中で失った身体のことなど覚えている必要もない!」
 EHは耳を貸す様子もない。
「長引く戦争、か。話し方もハッキリしているし、感情の起伏も豊かだな。死人がベースになっているとは思えん……それほどまでに彼女を人らしくしている意志とは……さて、興味深くなってきたぞ」
 一方、久延毘 大二郎(ka1771)はその眼を好奇心に輝かせる。
「やあ、確かツィカーデ君と言ったね。ちょっとド忘れしてしまった事があるんで聞きたいんだが」
「……なんのつもりだ、叛徒め」
「そう警戒しないでくれたまえ、本当に些細なことなんだ。……今は王国歴何年だったかな?」
 怪訝な表情を見せる少女。
(……過去と今。彼女が生きているのはどちらだ? 答えによっては……)
 大二郎の目が期待に輝く。
「私を愚弄するつもりか!」
 怒鳴りつつも、根が律儀なのか少女は大二郎の問いに素直に応える。彼女の答えは正しい年号だった。
「時間の感覚はずれていない……過去の革命戦争の時代に生きているのではなく、革命戦争がずっと続いている、という認識なのか」
 納得する大二郎。
「君達は上層部の及び腰で歪虚と戦えなかった! それでも君達の使命は領民を守る事だったはず……本当の使命と、敵の姿を思い出せ!」
 ここで、再びアルファスが叫ぶ。
「私の敵はお前たち革命軍だ! 及び腰だと? なら、反乱軍共はなんだ? 奴らこそ、領民を守ると言いながら戦争のために、領民を、国土を蚕食している!」
 一見筋が通っているようにも聞こえる反論に、アルファスは二の句が継げない。
「ねえ、いい事教えてあげるよ。その義手、君の事食物としか思ってないよ」
 今度はリクが口を開いた。
「貴様……何が言いたい」
 リクを睨む少女。
「そいつは君を利用し尽くして、最後には君を完全に取り込むつもりってことだよ……ねぇ、寄生虫さん。その子何人目なの?」
 台詞の後半は義手に向けられたものだった。
「……」
 沈黙。少女は勿論、義手すら何も言わない。
 正解を引き当てたか、とリクが希望的観測を抱いた瞬間。
「可哀そうな人……」
「え……」
 意外なツィカーデの言葉と、何よりその自分を憐れむような目に、思わず目を丸くするリク。
「所詮は、目先の利益と浅薄な大義に踊らされた烏合の衆。だから、仲間を信じる事も出来ない。仲間は利用するだけのものとしか考えていないから、そんな言葉で私が動揺すると思ってしまう……」
「な……違う! 俺は!」
 反論するリクに、少女はきっぱりと断言した。
「これは私の「腕」。一度は倒れかけた私にもう一度力を与え、真の敵と守るべきものを思い出させてくれた私の本当の腕……」
 目を閉じて静かに、断固たる意志で語る少女。
『覚えたか、小童! この娘と儂は最早……む? ツィカーデッ!? 何をする!?』
 と、少女は義手をゆっくりと持ち上げ、表面の装甲にそっと口づけすると、目を見開いて高らかに宣言した。
「私たちは「アイゼンハンダー!」 如何なる力にも、悪意にも屈せず守るべきものを守る鉄の腕(かいな)! ……哀れな叛徒共! 最早お前たちに語ることなど何もない!」
『ツ、ツィカーデェ! と、年頃の娘が何という破廉恥な真似を……聞いておるのかッ!』
 ハンターたちと、ついでに何故か妙に動揺している義手の声をも無視して、少女は一気に駆けだした。巨人を完全に逃がすためにエリシャたちの方へ向かうのだ。
「待て! 彼の名も忘れたのか!」
 前回、EHが動揺したのを見ていたアルファスは再び第一師団副長の名を出して叫ぶ。
「待ちなさい! あなたはいつまで止まった時の中にいるつもりなの?!」
 それでも止まらないEHに咄嗟に銃を抜いて狙いをつけるケイ・R・シュトルツェ(ka0242)。
 しかし、銃口が遠ざかるEHの影を捕えようとした瞬間、彼女の眼前にGWが着地。機導剣を振るう。
「この……!」
 短剣が閃き、GWの腕が金属音と共に弾かれた。発生した刃もケイの頭上の枝を払うに留まる。
「邪魔をしないでっ!」
 そのまま銃を乱射するケイ。しかし、その時にはもうGWはケイの頭上を跳び越え他のハンターに狙いを定めていた。


「はぁっ!」
 EHが機導剣を振るう。基本的な性能は、GWのものと同じらしく、剣の軌道上にあった巨木が伸縮した刃によって綺麗に切断されていく。
「やっぱり只の武器じゃなかったみたいね……だけど!」
 しかし、エリシャは紙一重でこの斬撃を躱し、木々の幹を蹴っては森の中を三次元的な機動で縦横に跳び回る。
『良い! 中々の動きだ! 道草を食った甲斐があったというもの! 所詮は滅びる身で良くぞここまで至った!』
 一方、少女の方もエリシャの方を振り向くと、感心したような表情を見せた。
「確かに……惜しむらくは革命軍であることか……貴様、名はなんと言う?」
 敵を称賛するEH。
 しかし、言い換えればそれは彼らが未だ余裕を残していることの表れでもある。
 そして、エリシャもそれは痛いほど解っている。先刻から、回避に専念することで凶悪な攻撃を何とか避けているのだ。既に疲労は限界に達しようとしている。
 そんな時に、会話で気を惹くには絶好の機会を向こうが提供してくれたのだ。
「ウランゲル師団所属」
 エリシャがそう口にした瞬間、EHの空気が一変した。
 それを好機と捉えたエリシャは更なる効果を狙ったのか、そこで言葉を止めクスッと笑って見せ、こう訂正した。
「ウランゲル皇帝近衛【絶火隊】所属、エリシャ。ツィカーデ一等兵、軍規に則り貴女を処罰します」
「ウランゲル、だと……」
「本来なら貴女は私達と一緒に居たはずなのに、ね。どうして去ってしまったの?」
 畳み掛けるように問うエリシャ。しかし、直後彼女の目が驚愕に見開かれる。
「貴様、反逆者どもの首魁ウランゲルの直属だったのかぁ!」
 ウランゲルは旧政権の皇帝ではなく、革命により旧政権を倒した張本人とその一族の名前である。
 激昂したEHはそれまでとは比べ物にならない速度でエリシャに襲い掛かり義手を振り被った。
 鋼鉄の歯車が不気味に軋みながら回転し、黒とも紫ともつかぬオーラが義手全体を覆う。
「まずい……!」
 本能的に危険を察したエリシャは咄嗟に地面を蹴って大きく飛んだ。
 その足元に鋼鉄の拳が叩きつけられる。
「避けられた……!」
 そうエリシャが呟いた直後、凄まじい爆風がエリシャの背中に直撃した。
 その瞬間、エリシャは誰かの絶対に死ぬなよ、という声が聞こえた気がしたが、それも束の間。
 爆風はすぐにエリシャを飲み込んだ。


 空中から機導剣を長く伸ばして攻撃したGWはそのまま地面に着地しようとする。
 其処を狙って、大二郎がファイアアローを放った。
 だが、GWは大二郎の身体を足場に再度跳躍することによりこれを回避。同時に眼下の大二郎にレーザーの刃を突き刺した。
「ぐっ……ナントカの第三法則の体現者をまた見られるとはね。魔法か科学か……君はどちらに依る者だ?」
 だが、返って好奇心が刺激されたのか、大二郎は嬉しそうに叫ぶ。
「胴体さえ潰せば!」
 今度はリクが胴体を狙って発砲する。
 だが、GWはこれも回避すると、そのままハンターたちの背後に着地する。
「く……動きが素早いとは聞いていたけど……」
 拳銃を撃ちながらケイが叫ぶ。
 確かに、ハンターたちは事前の情報からGWの動きに注意していた。
 だが、このGWにはにハンターたちとの戦闘経験がある。単に、動きに注意して弱点を狙うだけでは決定打に欠けたのである。
 このため、戦闘は不毛な消耗戦に持ち込まれ、四人はじわじわと体力を削られていた。
「このままだと、先行した二人がやばいわね……」
 ケイの額に汗が滲む。
 しかし、チャンスは意外な形で訪れた。
「毘古さん!」
 敵の動きに気付いたアルファスが叫んだ時には、既にGWは大二郎の眼前に迫り、剣を突き刺そうとしていた。
 だが、ここでアルファスが付与したマテリアルの壁が発動。GWの攻撃受け止め砕け散ったのだ。
「感謝だ、アル君」
 大二郎は素早く体勢を立て直すと、何発目かのファイアローを放つ。敵が怯むものと判断していたGWはこれに対応出来ず、直撃を受ける。
「死体らしく……眠っていなさい」
 その隙を逃さず、ケイはマテリアルで強化した弾丸をGWの頭部に撃ち込んだ。
「今だ!」
 怯んだGWにリクが両手の銃の弾丸をありったけ叩き込む。
 こうして、手間取りはしたもののハンターたちはGWを撃破したのであった。


 フランシスカが最後の手段として投擲した斧は、巨人の曲刀に弾かれ、空しく地面に突き刺さった。
 巨人はそれっきり振り返る事も無く走り続け、逃げ切った。元々手負いとは言え相応の力を持っていた巨人はフランシスカ一人で補足し切れる相手ではなかった。むしろ、巨人が逃げに徹していたからこそフランシスカは無事であったのだ。
「マスター……私はまだ未熟だということでしょうか」
 そう呟きつつ、フランシスカが斧を回収しようとした時であった。
「!?……これは!」
 彼女の後方で、凄まじい爆発が起きたのは。
 急いで爆発のあった方向に向かったフランシスカが見た光景。
 それは、凄まじい爆発の跡と無残な姿で横たわるエリシャであった。そして、EHがエリシャに止めを刺そうとしているのを見るや否や、フランシスカは叫んだ。
「満足ですか。貴女の「仲間」とやらは無様に逃げ延びて永らえましたよ。ですが、貴女が捨て駒にした眷属の方はどうでしょうね。……所詮、死体が騙る生命の尊さなどそんなものでしょうが」
「……何を言っている? 貴様は、撤退の時に放置せざるを得なくなった大砲を「仲間」と扱うのか?」
「……良いでしょう。元より貴女と言葉を交わそうなどとは思っていません。災厄の十三魔が一人アイゼンハンダー、この機にその力量を見定めるとしましょう。私がお相手仕ります」
 勿論、フランシスカとて勝てるとは思っていない。
(どれだけ持つかわかりませんけど、せめて仲間が来るまでは……)
 悲壮な決意で武器を構えるフランシシカに、EHはゆっくりと向き直る。
「覚悟の上か……」


 四人が駆け付けた時、フランシスカはまだ立っていた。
 いや、それは最早愛用のフランキスカに寄りかかっている、とした方が正しかっただろう。
 それでも彼女は一歩も退かなかった。
「そこをどけ! 私が殺したいのはウランゲルに仕えていると豪語した反逆者だ!」
「……ですから、それは私を殺してからにすれば良いといっている……!」
 血を吐きながら、持ち前の赤い目で相手を睨むフランシスカ。
「ならば、一思いに止めを刺してやる」
 だが、その瞬間アルファスが叫ぶ。
「教えてくれ! 帝国軍はどれだけ不利に追い込まれた? 君はどこで戦い、どれだけの仲間を失った?」
「また貴様か!? いい加減にしないと……うっ!?」

 ――君はどこで戦い、どれだけの仲間を失った?
 
 アルファスの言葉が反響する。それと呼応するかのように、目の前に血塗れで立ちはだかるフランシスカの姿が、別の少女の姿に変わって行く。

 ボロボロの帝国軍服。

 血を流す片目

 そしてその片腕は、もう――

「あれ……おかしいな……どうして……? 私……まだ……」
 EHは呆然と呟く

「みんな……どうして……」

 気がつけば、周囲には軍服を着た死体がそこかしこに倒れている。 そして、EHは気付いた。倒れているエリシャの姿が彼女の良く知っていた人物の亡骸に変わっているのを。

「……ごめんなさい。私、貴女を……約束したのに……守って……」
 
 虚ろな目で呟くEH。
『潮時だ。ツィカーデよ。任務を失念するな』
 少女ははっと我に帰る。
「そうだ……惑わされるな」
 少女は、自分にそう言い聞かせると、最早ハンターたちを一顧だにせずその場から跳躍して立ち去った。
「やはり……貴女の中で刻は止まった侭。今は無理でも……いつか動かしてあげるわ」
 ケイは、そっと呟くのだった。


「……で、結局この洞窟までそいつに送って貰ったのかい? ……ふん、まあいいさ」
 エンシンケ洞窟の最深部にて、ヤクシーはここまで逃げて来た曲刀の巨人から報告を受けていた。
「それにしても……ガエルといい暴食には妙な連中が多いのかね」

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MVP一覧

  • 《聡明》なる天空の術師
    アルファスka3312

重体一覧

  • 優しさと厳しさの狭間
    エリシャ・カンナヴィka0140
  • 幸福な日々を願う
    フローラ・ソーウェルka3590

参加者一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • 優しさと厳しさの狭間
    エリシャ・カンナヴィ(ka0140
    エルフ|13才|女性|疾影士
  • 夢を魅せる歌姫
    ケイ・R・シュトルツェ(ka0242
    人間(蒼)|21才|女性|猟撃士
  • 飽くなき探求者
    久延毘 大二郎(ka1771
    人間(蒼)|22才|男性|魔術師
  • 《聡明》なる天空の術師
    アルファス(ka3312
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • 幸福な日々を願う
    フローラ・ソーウェル(ka3590
    人間(紅)|20才|女性|聖導士

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/03/14 21:49:50
アイコン 相談卓
エリシャ・カンナヴィ(ka0140
エルフ|13才|女性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2015/03/14 23:06:26