ナイト・ウォーカー

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/03/17 12:00
完成日
2015/03/25 04:26

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 帝国領内には、革命戦争の際、ゴーストタウンと化してしまった町村が点在している。
 その場所が戦場になったからというよりは、帝都から地方へ権力者達によって追いやられていた人々が下克上を夢見た結果、自然とそうなったものである。
 権力者達から開放された人々は商人として成り上がりを、或いは兵士として名を上げる為に帝都へ向かったという。
 今では帝都周辺に密集した人口は地方の過疎化を加速させる一方で、小さな村や町は合併や解散も珍しくない。そうすると町の形を残した無人地帯が成立する。
 カルステン・ビュルツが足を運んだのも山の麓にある小さな鉱山町だった。マテリアル鉱石の産出地だったらしいが、見ての通り小さな規模で、あらかた仕事を終えた事もあり人々が去ってしまった場所だ。
「真新しい車輪の跡……やはり人の出入りがある、か」
 青年は帝国と反政府組織の正面衝突を避ける為、長らく不平不満を訴える民と行動を共にしてきた。
 彼自身、革命によって追いやられる側となった身分だった事もあり、基本的に民衆側に肩入れしてきた。が、最近はどうにも庇いきれない事件も増えてきている。
「ヴルツァライヒ……」
 その組織の詳細は闇に包まれている。だが暗がりを歩く者達の間では知らないときたらモグリというくらいには有名になってきた。
 革命後間もなくから存在したともされているが、組織の構成員も目的もはっきりしていない。
 これまでは目立つような行動も見られなかったのだが、ここ最近は民衆を扇動し、幾つかの事件を起こしていると実しやかに噂されている。
「いや、もしかしたらこれまでの事件もこいつらが……」
 帝国はどうにも恨みを買いやすい国だ。どの方向からの憎しみなのかもわからないので、摘発は雲をつかむような話である。
 何より、直接的な行動に出ている組織員はめったに捕まらない。殆どは現地調達した一般人を使った事件で、鎮圧した所で表面の灰汁を取ったに過ぎなかった。
 このゴーストタウンに先の補給基地襲撃事件の扇動者がいると聞いて調査に来たカルステンはいわば先のお礼参りをするつもりだったのだが、油断ならない相手だという事も承知している。
「槍一本で世の中どうにかできるなら、とっくにやってるしな……」
 物陰に隠れて様子を伺っていたそこへ、一人の人影が走ってくるのが見えた。
 見ればどうやら女。身を隠すような素振りも見えない。夜も遅いのに随分薄着だ。それも、あまり見慣れない独特な衣装である。
 青年は腕組み思案する。怪しい。どう見ても怪しい。怪しいが、もしかしたら困っている人かもしれない。
「何より女だ」
 女を助けないというのはだめだ。それは男のやることじゃない。
「おい、お前」
 声をかけながら道に立ちふさがると、女は肩で息をしながらカルステンを見つめた。
「ああ……! どこのどなたか存じませんが、どうかお助け下さい……!」
「何があった?」
「私は旅の踊り子……しかしキャラバンを賊に襲われ、男達は殺され、女達はここで賊の慰み者に……。なんとか私だけ命からがら逃げ出してきたのです」
「それでそんな目のやり場に困る……じゃない。わかった。俺は冒険者だ、腕には覚えがある。仲間達はどこにいるんだ?」
「まあ、なんと心強い……! こちらでございます!」
 道を引き返す女に続いて走るカルステン。すると前方から全身鎧姿の大男が走ってくるのが見えた。
「むう! 見つけたぞ、この雌狐めぇ! 今日という今日は断じて許さんぞぉ!」
 大男は右手に持った大きなメイスを振り回し突進してくる。カルステンは女を庇い、背負っていた槍を両手で構えた。
「なんだあのおっさんは……まあいい、あんたは安全な所に隠れ……るぉっ!?」
 反応出来たのは運、それとあまりにも殺気が濃すぎたからだ。
 女が背後からカルステンへ繰り出した短剣は脇腹を掠める程度に終わった。咄嗟に横へ跳んだカルステンに女は掌で短剣を回し。
「あら~? 避けちゃいましたか。凄いですね~」
「フェノンノ! 貴様、まただまし討ちなぞ! 誇りを持たぬ傭兵め! ……すまぬな見知らぬ武人よ。ワシは止めようとしたのだが」
 冷や汗を流すカルステン。どうでもいいが、短剣で斬りつけられた部位が酷く熱い。意識もだんだん朦朧としてきた。
「毒か……」
「はい~。あそこから避けるなんて凄いですけど、もうおしまいです。たっぷり可愛がってから殺してあげますね」
 丸く大きな眼鏡を取り出しながらゆるい口調で笑う女は先ほどまでとは全く別人のようだった。
「どうやって俺の侵入を感知しやがった」
「あなたが知らない術もこの世界には沢山あるんですよ~」
 フードを払った女は長い耳を露わにする。
「エルフ……」
 女は大男が背負っていた無骨なククリ刀を受け取ると、カルステンに突きつける。
「まずは足、もらいますね~」
 次の瞬間、柔らかい笑みを浮かべていた女の表情が引きつった。手を止めると大男に目を向ける。
「侵入者です。全員覚醒者とは驚きですね」
 間もなくして複数の人影が駆けつける。女の言う通り全員覚醒者、即ちハンターであった。
「場所と時間は伝えてたあった。まあ、来るかは賭けだったが」
「面白い! この鉄壁の豪腕の守護者のとげ付き鉄球の盾の鉄壁のレガースが相手をしてやろう!」
「レガースさん、そろそろ名乗りは統一してくださいね~」
 そんなやりとりの隙を見てククリ刀を蹴り、背後へ跳ぶカルステン。着地は上手く行かなかったが距離を取る事は出来た。
「心配しなくても人質に取ったりしませんよ~。その人達とあなたが親しい間柄にあるとは限らないし、私、見ての通り正々堂々が好きなんです~」
「貴様、毎回だまし討ちしておるではないか!」
「クライアントからはそう悪くない額を貰っています。縁もゆかりも恨みもありませんが、いっぱい血を流して死んでくださいね」
 カルステンは眉を潜める。おかしい。
 これだけの人数差がありながらこの余裕。腕に覚えがあるのはわかるが、幾らなんでも劣勢の筈。
「気をつけろ。まだ何か隠しているかもしれねぇ……」
 ハンターは頷くと武器を構える。女は剣を指先で撫でながら笑みを作り、大男は頭上に掲げたメイスを大地に振り下ろし雄叫びを上げた。

リプレイ本文

「既に潜入には気づかれていたか……でも、ビンゴだったみたいだね」
 鳳 覚羅(ka0862)に続きハンター達がカルステンを庇うように立ちはだかる。八城雪(ka0146)は首を傾げ。
「じょーきょーが良く分んねーけど、とりあえず、アイツら敵、です?」
「見るからに一般人という様相ではありませんから、そうなるでしょうね……」
 口元に手を当て、値踏みするようにマッシュ・アクラシス(ka0771)が応える。
「ところで……カルステンはどうして倒れてやがるんだ?」
 ヴォルフガング・エーヴァルト(ka0139)の視線にぎくりと背筋を震わせる。
「見た所相手は無傷の様だし……色仕掛けでもされて毒を盛られでもしたか。前回も色仕掛けでもしていれば早かったのかねぇ?」
 Charlotte・V・K(ka0468)の言葉に何も言い返せずに肩を落とすカルステンであった。
「まあま、それだけ旦那が強そうだったって事でさあ。だからこそ奇襲するんでござんしょう?」
 帽子の鍔を指先で持ち上げウォルター・ヨー(ka2967)が笑う。慰めるつもりはないが、これも仕事だ。
「細かい事はわからねえが、あいつらをぶっとばさなければならないのはわかった。だがその前に一つ確認してえ事がある」
 春日 啓一(ka1621)は二人を指差し。
「あんたら……歪虚じゃねえよな? 快楽殺人鬼で確かナナ・ナインってのがいたけど、そういうのとはちげーよな? まだ人間だよな?」
「当然であろう!」
「あら、それはどうかしら~? そもそも、歪虚は人間ではないのですか?」
「は? 歪虚は歪虚だろ?」
「どうでしょう? 歪虚も人間かもしれませんよ?」
 フェノンノの返しに“?”を浮かべまくる啓一。ルピナス(ka0179)はくすくすと笑い。
「春日くん、敵の口車に乗せられちゃだめだよ。ああいう性格の人にまともに付き合っちゃね」
「あら~? あなたも似たような感じじゃないんですか?」
「だからこそ忠告しているんじゃないか。重みがあるでしょ?」
 口元に人差し指を当て笑うルピナス。啓一は頭を振って拳を構える。
「ったく、考えんのも面倒だ。四の五の言わずかかってこいよ」
「せっかちな男の子も嫌いじゃありませんよ」
 にっこり笑って剣を振るうフェノンノ。素早く駆け出すその足が戦闘開始の合図だ。

 ハンター達はフェノンノとレガース、二人にそれぞれ向かい分断を図る。
 フェノンノの剣を拳で弾く啓一。ルピナスが振動刀を振るうが、フェノンノはするりと身をかわす。
 反撃を阻害したのはヴォルフガングの銃弾だ。続いて啓一が拳を繰り出すと、しゃらりと女は距離を離す。
「へぇ。鮮やかな身のこなし……まるで踊っているかのようだ」
「ふわふわしていてやり辛えが……この感じ、何らかの武術体系を汲んでるな」
「わかるのか?」
「型から動き出して型に戻ったろ」
 言われてみるとそうかもしれない。啓一の言葉に納得してヴォルフガングは刃を向ける。
「女と戦るのは余り好きじゃねぇが……そこで毒を喰っている阿呆を助ける為には、身柄の拘束が第一義になるんで、悪く思うなよ?」
「俺と同じ疾影士かな? 毒なんかで遊ばなくても十分戦えるだろうに」
「動けない男の子を切り刻むのは快感ですよ~?」
「それは随分なことだね。動けなくなった相手を斬るなんて、楽しくないでしょ」
「趣味が合わずに残念です。相互理解の為には“実践”が必要でしょうか?」
「そうだね。それじゃあ――踊ろうか」
 ルピナスに笑い返し、フェノンノはゆるりと前進する。

 一方、レガースと対峙する雪はハンマーを掲げ、予告ホームランの構えを取る。
「こっちは、鉄槌の狂犬の破壊者の釘バットの鉄槌の雪が相手、です」
「貴様……できるな」
 レガースと二人で何かが通じあっているが、覚羅は苦笑を浮かべ。
「いや、わかりあってどうするの……というか釘バット持ってないし」
「そこはいわねー、お約束、です」
「差当り、事情なりと伺いましょうかね」
 サーベルを抜くマッシュ。レガースはメイスを肩に載せ鼻息を吹き出す。
「我が正義の鉄槌を受ける覚悟があるというのなら、相手になろう! ゆくぞぉっ!」
 突進するレガースが狙うのはマッシュだ。雪より後ろに居たのにスルーして走ってくるのでマッシュはわずかに驚いた後、盾を手に背後へ跳んだ。
 かすったメイスはそのまま大地を粉砕。マッシュは着地し、埃を払う。
「何故私まっしぐらなのです……」
「おなご相手に本気が出せるか! 貴様その格好、武芸者であろう!」
「えーと……俺は?」
「貴様の格好は……なんだかよくわからん!」
 冷や汗を流す覚羅。マッシュも困ったように肩を竦め。
「別に私は武官であったつもりはありませんが……」
 次の瞬間、背後から雪のハンマーがレガースの背中に減り込んだ。
 激しい衝撃につんのめって顔から転がるレガース。
「二人共、オレはすげーことに気づいた、です。こいつ……アホ、です」
「見ればわかります……」
「油断はしないようにね。まだ何をしてくるかわからないから」

「それにしても、なぁんで逃げないんでやすかね?」
 戦闘開始後、カルステンに付きながらウォルターは周囲を眺めていた。
 奇襲に失敗し、今も数で押されている敵二人が、逃げずに戦う理由……。
「ところで旦那、気分は如何で? この指何本に見えやす?」
「二本だろ……それがどうした?」
「毒ってなあ、ただ殺すばかりが能じゃねえんで。旦那を操ったり暴れさせたりされちゃあ怖いんでね」
 どうやらカルステンに精神異常は見られない。確認を終え仲間の加勢に向かおうとするウォルターを突然Charlotteが突き飛ばした。
 銃声と共に煉瓦の影に弾丸が減り込む。Charlotteはライフルを構え反撃、ウォルターはカルステンを引きずって物陰に押し込んだ。
「伏兵でさあ! 南西、二階建て屋根の上!」
 ウォルターの叫びに仲間が反応する。丁度後ろ側から挟撃するような狙撃だ。
「そこか……読んでいたよ」
 銃撃戦を行いながら走り出すCharlotte。家の傍に積んであった古ぼけた木箱を踏み台に屋根の上に移動すると、狙撃手は隠れる事を諦め何かを投擲した。
「手榴弾か……!」
 慌てて物陰から飛び出すCharlotte。
 手榴弾だとわかったのはそのシルエットに覚えがあったから。この銃声は魔導銃ではない。
「元ご同業、か」

 フェノンノの動きは素早く流麗だ。外見からは想像も出来ないような実戦経験を感じる。
 繰り出されるククリ刀をヴォルフガングはよく見て防ぐ。連撃は鋭く、受けに回れば反撃出来ない。
 ルピナスは銃撃、啓一は殴りかかりヴォルフガングから引き剥がす。フェノンノはくるりと回りながら、手にとったナイフを投擲した。
 身をかわすルピナス。ヴォルフガングは剣で弾くが、体に刃がかすめてしまう。
「毒か……」
「まだいっぱいありますよ~」
 新しいナイフを取り出し投げつけるが、啓一はこれを拳で弾き飛ばす。
「動けるか?」
「まだなんとかな。この女、加減をして戦うには厄介な相手だぜ」
「仕方ねえ。一か八かやってみるか」
 啓一は真正面から走り出す。フェノンノはククリ刀を振り下ろすが、啓一はこれを二つの拳で挟むように受け止めた。
 すかさずヴォルフガングが発砲すると剣を手放し跳ぶ。そんなフェノンノの背後に回り込んだルピナスの一撃が女の足を切り裂いた。

「その鎧ごと、叩き潰してやる、です」
 煉瓦を踏み砕き突撃した雪がレガースにハンマーを振り下ろす。
 ハンマーは鎧に対して相性がいい。レガースが盾で受けても尚、ダメージは免れない。
「キミの相手はこっちだよ。え~と、鉄壁の豪腕の守護者のとげ付き鉄球の盾の鉄壁のレガースとやら」
 覚羅の放つ電撃がまた効果的だった。よろめくレガースにマッシュは盾を構え体当りすると、その巨体を転がす事に成功する。
「その鎧ごと、叩き潰してやる、です」
「よ、よせ……話せばわかる!」
 倒れたレガースにハンマーを叩きつける雪。マッシュは盾を見つめ。
「鉄の塊を叩いてはサーベルが刃こぼれしそうです……これで構いませんか」
「俺は元々鉄拳だからね」
「ま、まて……ぐわあああーっ!」
 倒れたレガースを袋叩きにする三人。すっかり伸びたレガースに三人は小さくため息を零した。

 爆発をくぐり抜け、狙撃手は小銃を連射しながら距離を詰める。Charlotteと狙撃手、それぞれの弾丸が肩を互いに貫いた。
 狙撃手はナイフを抜き、そのままCharlotteへ迫る。繰り出された一撃を銃を横にして受けた時、民家の壁を蹴上がり舞い上がったウォルターが狙撃手へ斬りかかった。
「すまない、助かった」
「流石に一人きりにするってわけにもいきやせんしねえ……おっ?」
 ウォルターの刃はの額を切りつけ、フードを剥がしていた。
「美人だ!! 今晩空いてたら一緒にどぉ!?」
 女の銃をかわしナイフで接近戦に持ち込むウォルター。しかし女は接近戦でも引けを取らない。
「マーシャルアーツか……下がれ!」
 繰り出される拳が青く光り輝くと、雷撃が迸る。バック転で距離を取ったウォルターは口笛を吹き。
「今の技は……」
「ああ。機導術だ」
 雲の切れ間から差し込んだ月光が照らしだした姿にウォルターは驚いた。
 何故ならば銃を向け合う二人の姿は、服装から雰囲気まで良く似ていたから。
「姉さん、知り合いで?」
「いいや。だがどいつもこいつも全く嘆かわしい。何をしにこの世界に来たというのだ」
 その時だ。一台の魔導トラックがクラクションを鳴らしながら突っ込んできたのは。

「何です……?」
 振り返るマッシュ。雪は仰向けに倒れたレガースの腹の上に座り、覚羅は兜を外し人相を記憶していた。
 トラックはドリフト気味に突っ込んでくると、レガースを跳ね飛ばした。慌てて飛び退く三人の前で荷台が開くと、腐った肉の匂いが雪崩れ込んでくる。
「まさか……雑魔なのか!?」
 驚きながら覚羅は機導剣でゾンビを切り払う。放り出された無数のゾンビは這いずったり立ち上がり、ハンター達に近づいてくる。
「何の騒ぎだ?」
 奪ったククリ刀を放り投げながら振り返った啓一へゾンビが掴みかかる。ヴォルフガングはこれを銃で撃ち抜き背中合わせに構えた。
「これはまた随分と……望まれない観客が増えたものだね?」
 フェノンノは新たなナイフを取り出しルピナスへ刃を振るう。その一瞬、これまでに感じなかったような強い悪寒を覚えた。
「お兄さんとはまた今度」
 女はいつの間にか治癒した足を拭い、血に染まった指でルピナスの頬を撫で跳躍。トラックの上に飛び乗った。
 見ればレガースには鎖をつけている。雪はゾンビをハンマーで薙ぎ払いながら舌打ちし。
「なんで、反政府組織がゾンビ使ってんだ、です」
「逃さないよ! 機械仕掛けの身体には、こういう使い道もある!」
 覚羅はゾンビを機導剣で切り払い、右腕を射出する。それはトラックの窓を突き破り、運転手を殴り飛ばした。
 しかし運転手は首があらぬ方向へ曲がったままアクセルを踏み込む。違和感に駆け出す覚羅の足元へ、頭上から煙幕弾が投げ込まれた。
「これはリアルブルーの……!?」
「ゾンビはこちらを音や匂いで探知しているようですね……」
 組み付くゾンビを切り払うマッシュ。視界が張れた時には既にトラックは遠く、残されたゾンビは次々にハンターへと襲いかかった。



 結論から言うと、町にヴルツァライヒの手がかりは残されていなかった。
「……となると。カルステンさんはここが拠点だと、何処で聞いたのですか?」
 マッシュの問いにカルステンは立ち上がる。麻痺毒の効果は既に切れ初めていた。
「俺のいた村を唆した奴を、更に唆した奴を追いかけて、苦し紛れに奴が吐いたのがこの場所だったが……」
「露骨に罠ではありませんか……」
 呆れた様子のマッシュの声にカルステンは目を逸らす。
「旦那さ、何をそんな泡食って襲われてるわけ? ただの偶然じゃないんじゃないの? 例えば、途中で知っちゃいけない事を知ったとかさ」
 ウォルターの言葉を確かめるように目を瞑るカルステン。だが今は思い当たらない。
「流石は実態の見えない組織と言うべきか……それにしても腑に落ちない事もある」
「ええ……。あのエルフの女性、技術は一流とは言えプロの仕事としては雑味が残ります」
 Charlotteの言葉に同意するマッシュ。
「編成も意味不明だね。エルフ、騎士……三人目はリアルブルー人だったんだんでしょ?」
 とりあえず三人共顔は覚えたが、調べて何が出てくるかはわからない。覚羅はそれよりも。
「あのトラックだ。運転手も含め、ゾンビだったんじゃないかな?」
「レガースって野郎は、少なくとも人間だった、ですが」
 雪もレガースの顔はバッチリ確認した。凄く特徴的な髭だったので多分忘れられない。
「結局、あいつらも歪虚だったって事なのか? 歪虚も人間じゃないのかとかわけわからん事を抜かしていたが……」
「あながち的外れじゃないのかもしれないね」
 啓一に続きルピナスが振り返る。彼女の血はとても冷たかった。それに最後に感じたのは負のマテリアルだったように思う。
「ゾンビに囲まれていたから、正確にとは言えないけどね」
「そもそも、カルステンの旦那は本当に何も知らないんですかねえ?」
 ウォルターの言葉に視線が集中する。
「連中と共謀したってのもありえない話じゃないんじゃない?」
「確かに、女に騙されたというよりは説得力のある話だ」
 ヴォルフガングは以前カルステンの実力をしっかり確認している。それを思えばウォルターの主張はまともに思えた。
「くぅぅっ、何も反論できねぇっ」
「このまま手ぶらで帰るのもなんですし、カルステンの旦那にご同行願いやすかね?」
「ふむ。それもそうだな。詳しい話も訊きたい所だ」
 Charlotteとヴォルフガングに左右から捕縛され冷や汗を流すカルステン。
「オイ」
「安心して下せえ、旦那。とある桃色髪の貴族筋からのお願いでしてね。悪いようには致しやせん」
 連れて行けと言わんばかりに頷くウォルター。ヴォルフガングとCharlotteはカルステンを引きずっていく。
「わかっているよカルステンくん。共謀だったから色仕掛けに騙されたのだろう」
「お前が女に極度に弱いとは思ってないぜ」
 遠ざかるカルステンを見送り、雪は溜息を一つ。
「アホばっか、です」
「さて……どうしましょうか?」
「とりあえずやれるだけやってみようか。まだ道は続いているからね……」
 覚羅は破損した車の部品を握り締め、轍を見つめる。
 ゾンビの匂いは強烈で愛犬の嗅覚を乱してくれたが、追いかけるとなれば話は別だ。
 トラックがどこへ向かったのか、追跡出来るかもしれない。
 覚羅とマッシュは頷き合い、闇に続く道を歩き出した。

依頼結果

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MVP一覧

  • 金色の影
    Charlotte・V・Kka0468
  • 勝利への雷光
    鳳 覚羅ka0862

重体一覧

参加者一覧

  • Stray DOG
    ヴォルフガング・エーヴァルト(ka0139
    人間(紅)|28才|男性|闘狩人
  • バトル・トライブ
    八城雪(ka0146
    人間(蒼)|18才|女性|闘狩人
  • その心演ずLupus
    ルピナス(ka0179
    人間(紅)|21才|男性|疾影士
  • 金色の影
    Charlotte・V・K(ka0468
    人間(蒼)|26才|女性|機導師
  • 無明に咲きし熾火
    マッシュ・アクラシス(ka0771
    人間(紅)|26才|男性|闘狩人
  • 勝利への雷光
    鳳 覚羅(ka0862
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • 破れず破り
    春日 啓一(ka1621
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人
  • ミストラル
    ウォルター・ヨー(ka2967
    人間(紅)|15才|男性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 作戦相談場所
Charlotte・V・K(ka0468
人間(リアルブルー)|26才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2015/03/17 00:42:51
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/03/13 00:50:59