腹ペココボルドに門は厚く

マスター:練子やきも

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/03/20 15:00
完成日
2015/03/26 23:47

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

「ヴァ〜ン? やァ〜んのがゴゥルゥアァ〜!」
 人間同士でも言葉として認識されるか微妙な言語でコボルドを威嚇する男が居た。
「グァッ! ガーッ! グァグァッ!」
 威嚇されたコボルドの方も負けじと怒鳴り返す。男の持っている魚籠が欲しい様子で、引く気も無いようだ。

●遡ることしばし
「いやー、今日は大漁だったな。……これならチビ共も腹一杯食えんだろ」
 海際の小さな忘れられた漁村で、孤児達と暮らすその男は、最近あまり良い食事にありつけていない子供達の為に、少々離れた秘密の釣り場まで釣りに行った帰りにコボルドと遭遇したのだった。

「ぜぁー、ぜぁー、フン! コボルドごときに負けてらルェっかよァ〜!」
 辛うじてコボルドを撃退して気勢を上げるその男は、そのまま子供達の待つ村へと帰る。子供達の笑顔を想像してニマニマと笑いが込み上げて来る男だったが、迂闊さからだろうか、それとも何か他の理由でもあったのか、そのコボルドにトドメを刺していなかった事を、男がその時気にする事は無かった。

●晩餐の後で
「コボルドだとぁ!? 何匹居やがんだ?」
 久し振りにみんながお腹一杯食べる事のできた夕食が終わった頃、村の大人が慌てた様子で走って来て、男に手伝いを要請する。コボルドの群れが村へと移動して来ているらしい。コボルドに村を蹂躙させる訳にはいかない。男は、扱い慣れた木刀を片手に、村の入り口へと走り出した。
「まだ充分時間はある、村の壁はコボルド程度だったら破られる事はねぇ、とにかく門を破られねーようにしとけば、きっと救援が来っから、それまでぜってー守り通してくれ!」
 村の大人達、と言っても今は出稼ぎや漁に出ていたりで5人程しか残って居ないのだが……集まっている彼等と作戦を立てるが、男とて実戦の経験がそうあるという物でもなく。
「いや、救援って言ってもアテはあるのか?」
 村の大人のもっともな反論に一瞬固まり、覚悟を決める。
「オ、オレが行くさ! たかがコボルドの10や20、どってこたぁねーぜ!」
 男が救援を呼びに行き、その救援が来るまで村の門を閉じてひたすら守りに徹する。方針が決まり、慌ただしく準備が始まる。

 暫しの後、2キロ程離れた街のハンターオフィスに駆け込んだ男から、緊急の依頼が届けられた。村がコボルドの群れに襲われていると言う。一刻を争う事態に、オフィスは俄かにざわめいた。

リプレイ本文

 岩場の向こうに、前方……凡そ500メートル程の距離で、大暴れしているコボルドがひたすら村の門に攻撃しているのが見える。
 ある者は噛みつき、ある者は引っ掻き、石を投げる。そんな事してもそうそうどうにかできるとはあんまり思えないのだが、一念が岩を穿つという事もありえなくはない、あまり放っておける状況でもなさそうだ。
 トランシーバーの周波数の調整を済ませたアレグラ・スパーダ(ka4360)が仲間に話しかける。
「コボルドとは言え、数が多いですね。門も少しは持つでしょうが、急いだ方が良さそうです」
「前にあれの倍くらいのコボルドの群れと戦ったんだが、頭からつま先まで真っ赤にされたからな、油断はするなよ」
 体験談? を語るレイオス・アクアウォーカー(ka1990)だが、その全身は色彩的な趣味もあって元から真っ赤だったりもする。
「村を襲うコボルドは許せないの! ファリスが退治するの!」
 プリプリ怒っているファリス(ka2853)が、頬を膨らませながら、手に持った杖……燭台を振り回す。
「そうね、オイタが過ぎる子達にはお仕置きしなくっちゃね☆」
 その隣ではエミリオ・ブラックウェル(ka3840)が、ファリスに頷きながら戦闘の準備を再度確認していた。

「君、メオさんと一緒に来てねー、色々と手伝って欲しいんだ」
「君、ってなんかむず痒いな……あぁ、そういや名乗って無かったっけか、俺はチーグマ、チーターのように速く、クマのように力強く……なる男だ!」
「あーうん、わかった覚える覚える」
 一応メモを取りながらも、微妙に棒読みなメオ・C・ウィスタリア(ka3988)だった。
「でさ、コボルドに気付かれずに村に入れる抜け道とかないかなー?」
 メオの質問にチーグマが首を捻る。捻る。……そろそろその首が普通は曲がってはいけない角度になりかけた所で
「抜け道、抜け道……ねーけど! ちょっと待っててくれ、俺が壁ぶち破って抜け道作ってやるぜ! だから村の奴らの事は頼んだぞ!」
「アホか!」
 走り出そうとしたチーグマに冬樹 文太(ka0124)が後ろから蹴りを入れる。村を守りたければ本気で考えろ、と言うつもりだったのだが……こいつたぶん本気で、考えさせたらあかんやつや。
「ちゃんとカチ込ませてやるから大人しく待ってろよ……。ま、別に無茶しようが自分の村だから勝手だ。死ぬ様な事さえしなけりゃ俺が治してやるからよ」
 クルス(ka3922)がチーグマの肩をポンポンと叩き落ち着かせる。
「そうだね。大人しく身を引いてれば良かった、と思い知らせてやろう」
 チーグマに微笑みかける霧雨 悠月(ka4130)。自分の村の為に熱くなれるのは嫌いではなかった。

●開戦
 左右と後方から挟み撃ちにする事にしたハンター達はそれぞれの配置へと移動し、暴れるコボルド達が門を攻撃する音がだんだんと大きくなって来る。
 最初に動いたのは左側、レイオスとファリスだった。
「これでも食ってやがれ!」
 実食的な意味を込めた台詞と共に、コボルドの群れの中央目掛けて、干し肉を投げ付けるレイオス。
 1番近くに居たコボルドがその声に振り向き……飛んで来る干し肉を瞬時に捕捉したコボルドが、キラーンと輝いた瞳の残光を靡かせながら飛び上がり、喰らい付く!
 何事かと振り向く周りのコボルドを尻目に、手に入れた干し肉を独り占めするべく走り出すコボルド。
「……先ずは眠らせるの!」
 レイオスの干し肉で端っこに集まったコボルド達をファリスのスリープクラウドの白い霧が包み、干し肉を咥えた者を含めた数匹以外のコボルド達が次々と崩れ落ち、眠りに付いた。周りに敵の多い状況ではすぐに起きるのだろうが、時間稼ぎとしてはこの上ないだろう。そして眠った仲間の横を走り抜けた1匹のコボルドは、そのまま岩伝いに駆け出した。

「さあ……君達の中にも戦士は居るのかな?」
 右側では、岩陰から駆け出した悠月の刃が手近なコボルドを袈裟懸けに斬り倒した。
 どうやら戦士の矜持を持つコボルドは居ないらしい。悠月の方に振り向き、敵が1人と見て一斉に襲い掛かって来るコボルド達の攻撃を躱し、捌く。

「じゃ、始めるとするか」
「……先ずは数を減らすべきですね」
 クルスの放った、黒い澱のような塊がコボルドを貫き、アレグラの銃弾がマテリアルの輝きを纏って、門に投石していたコボルドを撃ち抜く。
 ここに来てようやく敵勢力と呼べる物が現れた事に気付いたコボルドの群れ。残ったコボルド達は、ハンターの数が少ないと見て戦闘を考えたようだ。姿を見せているレイオスと悠月に一気に殺到する、残りのコボルド達。

「流石に数が多いですね、援護、お願いします」
 これ以上待つ必要は無いと判断したアレグラがトランシーバーで援護要請し、後続組がそれに応える形で行動を開始した。

「メオ、死ぬなよ」
 走り出すメオに親指を立てて笑いかけながら、コボルドに囲まれたレイオスと悠月へと岩陰から援護射撃を始める文太。
「はいはーい、逃がさないわよー☆」
 羊飼いの笛のように指揮の音を奏でる文太の射撃に合わせて、エミリオが別の岩陰から無骨な銃声の協奏曲を開始する。
「いくよー、ホットドッグ」
 文太とエミリオの放つ銃声に見送られながら、エミリオの掛けた攻性強化の淡い光に包まれた大斧をかついだメオの、気の抜けた掛け声に合わせて、メオとチーグマを乗せた黒い軍馬が嘶きと共にコボルドの群れを蹴散らしながら門の前まで走り込む。
「もー負けねーぞァ! ゴルァー!」
 馬から飛び降りざまにコボルドへ蹴りを入れたチーグマは、囲まれたコボルドの数が多い悠月の手伝いに入るようだ。

●turn・2
 コボルドに囲まれたレイオスだったが、ファリスの所に向かわせる訳には行かない。
「まだまだ足りねーぜ! まとめてかかって来やがれ!」
 身体を掠める一撃もあったが、厚い装甲がコボルドの爪をあっさりと弾き返し、返礼とばかりに強打したドライブソードの腹での一撃がコボルドを弾き飛ばし、ボーリングのように転ばせる。
「させないの!」
 振り抜いた剣で僅かに体勢が崩れたレイオスに更に襲い掛かるコボルドを、ファリスの燭台から放たれた風の刃が微塵に刻み、返り血がレイオスを更に赤く染め上げる。
「私も手伝うわねー☆」
 走り込みながらナックルを構えたエミリオの、そのナックルが瞬間光を放ち、マテリアルの剣となってコボルドを切り裂く。戦いに慣れて居ないであろうチーグマも気になるが、仲間に任せておけば大丈夫。そう信じて、エミリオはレイオスの側に立った。

 ホットドッグから降りたメオはコボルドを殴りつけるように薙ぎ払い門を護っていた。斧が一閃する毎にコボルドが跳ね飛び、その横で見事な蹴りを放つホットドッグ。
 物理的な壁となって門を塞ぐメオと黒い馬の姿に少しずつ下がっていくコボルド達。

 他方では地を駆けるケモノとなった悠月が、八方から襲い来るコボルドの爪を、牙を。躱し、弾き、叩き斬る。高揚した戦意がその身のマテリアルを高め、悠月の動きを加速する。
 その悠月の攻撃の隙を狙うコボルドにすかさず文太の銃が火を吹き、移動を封じる。
「……逃がすかよ」
 文太の瞳には、悠月の腕から流れる赤い物が映っていた。コボルドの攻撃が掠めた傷。……絶対に護る。静かな怒りに燃える文太の銃が、再度火を吹いた。

「悠月、手伝うぜ」
 声を掛けながら前に出たクルスが、襲い掛かって来たコボルドを円盾で弾き、体勢を崩した所にすかさずレイピアの突きでトドメを刺しながら、さり気なく悠月と互いの背後を守る位置に立った。
「俺も手伝うぜ!」
「いやお前はいいよ少しは大人しくしてろって!」
 コボルドに噛み付かれ、引っ掻かれながら走って来たチーグマに、コボルドをいなしながらヒールを掛けるクルス。


「逃げ出しましたね」
 コボルドの動きを冷静に見極めながら銃撃を繰り返していたアレグラの言葉を待っていたかのように、先を争い逃走を始めるコボルド達。

「1匹居たら30匹居るって聞くからな。逃がすかよ!」
「次にこんな事が起きないように、倒せる時にきちんと倒しておくの」
「……逃がしません」
 傷だらけになりながら後を追おうとするチーグマの横を置い越すように銃弾が、魔法が、コボルドの背を貫きその数を減らす。
 数を1桁まで減らした腹減りコボルド達だったが、殲滅するには至らなかった。逃げ出した彼等はまたそのうち増えて悪さを始めるのかも知れない。
「まぁ、その時はまたぶっ潰してやるだけさ。何度でもな」
 クルスの声が岩だらけの荒野に響く。……世にハンターの仕事は尽きまじ、と言った所だろうか。

●劇的?
「壁がいくら頑丈でも、門が弱けりゃ意味がないやろ」
「そうだね、僕達も手伝うよ」
 文太と悠月の一声で急遽始まった門の補修作業。
 コボルドが再度攻めて来ないとも限らない事もあり、見張りを立てるついでに門の補修を手伝う事になった。
 見張りに立ったアレグラとクルスの周りに子供達が集まり、話を聞きたがる。
「……えーと、その……」
 矢継ぎ早に紡ぎ出される子供達の質問に、しどろもどろになるアレグラ。
(こういう多数との戦いは勘弁して下さい……)
 答える側から繰り出される疑問に、徐々に追い詰められていくアレグラ。……とりあえず、見張りの役目はクルスに任せるしかないようだ。

「おっちゃんら、コボルドとの戦い結局全部俺とハンターさん達にやらせてんだから、修理ぐらいはキッチリ働いてくれよな!」
 ブツブツ文句を言いながらもきっちり材木を運ぶチーグマの隣で、村の大人達も少しバツが悪そうではあるがホッとした表情で作業を続けていた。
 メオもこちらでホットドッグと一緒に荷物を運んでいる。
 門の地面スレスレの部分や施錠部分に入る文太チェックに従い、なんという事でしょう! といった風情に強化されていく門。
 にこやかに働く悠月の力もあり、作業はかなりの短時間で完了を迎えた。


「チーグマちゃん、これで子供達に甘いお菓子でも作ってやんなさい♪ 甘い物は疲れた体にイイのよー☆」
 チーグマの暮らす孤児院では、エミリオが蜂蜜を子供達に振舞っていた。
 相当訓練されているらしく、一斉に頭を下げてお礼を言う子供達と、何故かそこに混ざっているファリス。
「ありがとうなのー」
 エミリオから渡された蜂蜜を片手に、ウサギのぬいぐるみを抱き締めながらとてとてと走って行き、子供達と一緒にクッキーを焼き始める姿に違和感が全く無かったりする。ちょっと焦がしてしまったりするのもご愛嬌、と言った所か。
 その姿を眺めながら、真面目そうな表情になり尋ねるチーグマ。
「……ところでよ、ハンターになればいつもこんな感じに良いもん食えたりすんのか?」
 顔を見合わせるエミリオ達。
「お金にはなるかも知れないけど、それは命を懸けた報酬、って事になるのよー?」
 クッキーの型を抜きながら、表情だけ真面目にチーグマの質問に応えるエミリオ。
「まぁ、やってみれば分かるんじゃねーか?」
 あっさりと答えるレイオス。軽口だが、ハンターになる理由なんてそんな物だ、と理解しても居た。
「うっし! 俺もハンターになるぜ! ガキ共にうまいもん一杯食わしてやるんだ!」
 まばらに拍手してそのまま蜂蜜クッキーを作りに戻った子供達の背中を見送りながら、新しくなった門の前で決意表明するチーグマ。
 街に戻る一行について歩きながらしつこくハンターの仕事について尋ねるチーグマの声を辺りに響かせながら、一行の仕事は完了する事となった。

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MVP一覧

  • 弾雨のイェーガー
    冬樹 文太ka0124
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカーka1990
  • 感謝のうた
    霧雨 悠月ka4130

重体一覧

参加者一覧

  • 弾雨のイェーガー
    冬樹 文太(ka0124
    人間(蒼)|29才|男性|猟撃士
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカー(ka1990
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人
  • 新航路開発寄与者
    ファリス(ka2853
    人間(紅)|13才|女性|魔術師
  • 愛しき陽の守護星
    エミリオ・ブラックウェル(ka3840
    エルフ|19才|男性|機導師
  • 王国騎士団非常勤救護班
    クルス(ka3922
    人間(紅)|17才|男性|聖導士
  • たかし丸といっしょ
    メオ・C・ウィスタリア(ka3988
    人間(蒼)|23才|女性|闘狩人
  • 感謝のうた
    霧雨 悠月(ka4130
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • 海読みの射手
    アレグラ・スパーダ(ka4360
    人間(紅)|21才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/03/17 20:07:05
アイコン 相談卓
クルス(ka3922
人間(クリムゾンウェスト)|17才|男性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2015/03/20 10:26:13