ゲスト
(ka0000)
霧の墓地で迷子の救出を
マスター:トロバドル

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/03/20 12:00
- 完成日
- 2015/03/24 19:33
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●共同墓地
貧乏くじを引いてしまったサンスは、深く重たい溜息をついた。
「あぁ、くそ……。なんで俺がこんな事を――。いやまぁ……はぁ。俺って運、無さすぎだろ……」
己の不運を呪うように、思わず空を見上げてみるものの、それで何かが変わる事はない。
サンスは昨日、村の仲間達との賭け事に負けてしまい、墓地の掃除を一人でやる羽目になってしまったのだ。
かなりの広さを持つ墓地を、一人で清掃とはまさに罰ゲームらしい。
らしいが、実際にやってみると罰ゲームで済ませられる雰囲気はまったくしない。なにせ、回りには既に息絶えた人間が眠っているのだから。
しかし、文句を口にしても掃除が終わる訳ではない。
サンスが掃除道具を片手に清掃を始めたのは数時間前。なんだかんだとそれなりに作業は進んでいる。
「しっかしなぁ……。もうちょっとこうさ、良い感じに作れないのかね」
サンスは見渡す限りの墓石を見て飽きれに近い息が漏れ出る。
墓石は長方形の石蓋を地面に埋め込むというもので、どこを見ても同じ風景。違うのは石蓋に彫り込まれた文字だけ。
掃除をするというだけなら、さした苦労はない。しかし、雰囲気がどうにも不気味だ。
「いやまぁ、墓地なんだから良い気分で居られる訳はねぇんだがな」
それはもっともだ。墓地が楽しい、などと思う人など先ず居ないだろう。少なくとも、サンスはそうは思わない部類の人間だ。
不気味、と思うのも当然だ。更に、追い打ちをかけるようにして、この墓地は昼夜問わず薄らとした霧に包まれている。
「……な、なんにもないさ。うん、何にもない……何にも、ない――よな?」
サンスは不安を振り切るように辺りを見渡す。
自分を安心させる材料を見つけるように視線を彷徨わせるが、あるのは墓ばかり。いつそこから、得も言われぬ恐怖が生まれ出るのはと考えると、サンスの体は当たり前のように強張った。
「――――。は、早くやっちまおう。そうだ。それがいいさ……あぁ、それで――」
サンスは律儀な男だった。
自分に何度も言い聞かせる。さっさと済ませてしまえばここから逃げ出せる、と。
サンスは言い聞かせるようにして、努めて無心になりながら作業に没頭する。
かねてより、この墓地にはあまり良くない噂がある。墓地なんだからあって当たり前だろと言われればそれまでなのだが、サンスからしてみれば、現場に一人なのだから溜まったもんじゃない。
曰く、動く人影を見た。
曰く、夜ごとにうめく声が聞こえる。
曰く、石蓋が浮いていた。
等々と、子供が好みそうな話題なのだが、見たと言う人の数が村の半数以上も居るのだから、何とも無碍にし難い問題でもある。
「そ、そう言えば……」
サンスは強引に封印していた記憶を、思わず掘り起こしてしまう。
それは以前、村の男達がこの噂の真相を確かめようと立ち上がった時の話だ。
所詮は噂は噂でしかないと鼻で笑ったものだが、それは幽霊などという存在であればの話。もし人の手による、所謂盗掘であるかもしれないと考えると、話は違ってくる。
ならば確かめてやろうじゃないかと、男達は立ち上がったのだ。
数日張り込みをしたが、結果は徒労に終わる。噂は噂でしかなかったのだ。
街に戻ってきた男達の酒盛りが始まると、サンスもそれに便乗した。そんな折に聞いてしまったのだ。
「おらぁさ。夜に誰かが交代で外を見張っててくれたから寝られたけどな? 一人だったら無理だぜぇ?」
と、一人の男がそう言葉を口にすると、他の男達も確かにと頷いた。
しかし、その後にどんちゃん騒ぎだった雰囲気は一転する。
――夜中に交代で見張り? 誰が?
口々にお前だろと言い合うが、誰もが誰も、小屋の中にいたのを確認している。
ならば、夜ごとに感じた気配はなんだったのか。
サンスはそれを聞いた夜、寝る事ができなかった。
「は、はは……なにをそんな。――あ、あり得る訳、ねぇだろ……。ありえる――」
サンスはハッとなる。気づけば、辺りにたちこめる霧が濃くなっている事に。
慌てて腰のベルトに吊り下げてあったランプに明かりを灯すと、僅かばかりの視界が確保できる。
こんな時にと、サンスは舌打ちをした。
と、その時だ。不意に、何か物音が聞こえた。
サンスは振り返る。
そこには――――。
●ハンターズソサエティ
「急ぎの依頼だ。依頼者の慌てっぷりから考えると、事態は俺が思っているよりもずっと困窮しているのかもしれんな」
そう口火を切ったのは受付の男性だ。
テーブルの上で依頼書を回転させると、スッと集まってきたハンター達に差し出した。
「依頼内容は村の墓地で迷子になったサンス、という男の保護だ。それだけならまぁ簡単な依頼なんだがな」
少し肩を竦めると、男性は言葉を続ける。
「その墓地は結構な広さがあって、しかも霧のせいで視界が悪いらしい。一応、所々にランプを吊るしてある支柱に現在位置が書かれてるんだが……」
しかし件の男性は迷った。だが、その迷った理由が今回の依頼に繋がると受付の男は語る。
「問題はその次だ。どうにもその墓地には幽霊が出るらしいんだが、こっちで調べた所、どうやら雑魔が周辺をうろついているらしい」
雑魔が相手となれば、それはハンターの仕事だ。
「雑魔に関しては偶然近くで戦ったというハンターから得た情報がある。墓地の方に向かっていったというから、恐らくはそいつらで間違いないだろう」
依頼書の下部には雑魔の詳細な情報が書かれている。
「現地の状況は最悪なうえに、迷子の男性はどこにいるか判らん。おまけに雑魔までいて、とどめには時間もないと来ている」
いつ迷子のサンスが雑魔に見つかり、殺されるか分からないというのが現状。
うっかり雑魔に見つかってでもすれば、即座に殺されてしまうだろう。そう考えれば、確かに時間はない。
「この墓地、さっきも言ったが、霧がかかっている。普段なら気にするほどでもないらしいんだが、このサンスって村人が行方不明になった辺りから霧が濃くなっているらしい。霧が濃くなるって事自体は村人達からすれば珍しい事じゃないらしいんだがな」
地形の関係か、季節や気象の影響で、この墓地周辺は時折濃霧に包まれる事がある。
最悪な事に、現在はその濃霧に墓地が飲み込まれてしまっている状況だ。
「そんな訳でだ。――厄介な依頼だが、受けるか?」
貧乏くじを引いてしまったサンスは、深く重たい溜息をついた。
「あぁ、くそ……。なんで俺がこんな事を――。いやまぁ……はぁ。俺って運、無さすぎだろ……」
己の不運を呪うように、思わず空を見上げてみるものの、それで何かが変わる事はない。
サンスは昨日、村の仲間達との賭け事に負けてしまい、墓地の掃除を一人でやる羽目になってしまったのだ。
かなりの広さを持つ墓地を、一人で清掃とはまさに罰ゲームらしい。
らしいが、実際にやってみると罰ゲームで済ませられる雰囲気はまったくしない。なにせ、回りには既に息絶えた人間が眠っているのだから。
しかし、文句を口にしても掃除が終わる訳ではない。
サンスが掃除道具を片手に清掃を始めたのは数時間前。なんだかんだとそれなりに作業は進んでいる。
「しっかしなぁ……。もうちょっとこうさ、良い感じに作れないのかね」
サンスは見渡す限りの墓石を見て飽きれに近い息が漏れ出る。
墓石は長方形の石蓋を地面に埋め込むというもので、どこを見ても同じ風景。違うのは石蓋に彫り込まれた文字だけ。
掃除をするというだけなら、さした苦労はない。しかし、雰囲気がどうにも不気味だ。
「いやまぁ、墓地なんだから良い気分で居られる訳はねぇんだがな」
それはもっともだ。墓地が楽しい、などと思う人など先ず居ないだろう。少なくとも、サンスはそうは思わない部類の人間だ。
不気味、と思うのも当然だ。更に、追い打ちをかけるようにして、この墓地は昼夜問わず薄らとした霧に包まれている。
「……な、なんにもないさ。うん、何にもない……何にも、ない――よな?」
サンスは不安を振り切るように辺りを見渡す。
自分を安心させる材料を見つけるように視線を彷徨わせるが、あるのは墓ばかり。いつそこから、得も言われぬ恐怖が生まれ出るのはと考えると、サンスの体は当たり前のように強張った。
「――――。は、早くやっちまおう。そうだ。それがいいさ……あぁ、それで――」
サンスは律儀な男だった。
自分に何度も言い聞かせる。さっさと済ませてしまえばここから逃げ出せる、と。
サンスは言い聞かせるようにして、努めて無心になりながら作業に没頭する。
かねてより、この墓地にはあまり良くない噂がある。墓地なんだからあって当たり前だろと言われればそれまでなのだが、サンスからしてみれば、現場に一人なのだから溜まったもんじゃない。
曰く、動く人影を見た。
曰く、夜ごとにうめく声が聞こえる。
曰く、石蓋が浮いていた。
等々と、子供が好みそうな話題なのだが、見たと言う人の数が村の半数以上も居るのだから、何とも無碍にし難い問題でもある。
「そ、そう言えば……」
サンスは強引に封印していた記憶を、思わず掘り起こしてしまう。
それは以前、村の男達がこの噂の真相を確かめようと立ち上がった時の話だ。
所詮は噂は噂でしかないと鼻で笑ったものだが、それは幽霊などという存在であればの話。もし人の手による、所謂盗掘であるかもしれないと考えると、話は違ってくる。
ならば確かめてやろうじゃないかと、男達は立ち上がったのだ。
数日張り込みをしたが、結果は徒労に終わる。噂は噂でしかなかったのだ。
街に戻ってきた男達の酒盛りが始まると、サンスもそれに便乗した。そんな折に聞いてしまったのだ。
「おらぁさ。夜に誰かが交代で外を見張っててくれたから寝られたけどな? 一人だったら無理だぜぇ?」
と、一人の男がそう言葉を口にすると、他の男達も確かにと頷いた。
しかし、その後にどんちゃん騒ぎだった雰囲気は一転する。
――夜中に交代で見張り? 誰が?
口々にお前だろと言い合うが、誰もが誰も、小屋の中にいたのを確認している。
ならば、夜ごとに感じた気配はなんだったのか。
サンスはそれを聞いた夜、寝る事ができなかった。
「は、はは……なにをそんな。――あ、あり得る訳、ねぇだろ……。ありえる――」
サンスはハッとなる。気づけば、辺りにたちこめる霧が濃くなっている事に。
慌てて腰のベルトに吊り下げてあったランプに明かりを灯すと、僅かばかりの視界が確保できる。
こんな時にと、サンスは舌打ちをした。
と、その時だ。不意に、何か物音が聞こえた。
サンスは振り返る。
そこには――――。
●ハンターズソサエティ
「急ぎの依頼だ。依頼者の慌てっぷりから考えると、事態は俺が思っているよりもずっと困窮しているのかもしれんな」
そう口火を切ったのは受付の男性だ。
テーブルの上で依頼書を回転させると、スッと集まってきたハンター達に差し出した。
「依頼内容は村の墓地で迷子になったサンス、という男の保護だ。それだけならまぁ簡単な依頼なんだがな」
少し肩を竦めると、男性は言葉を続ける。
「その墓地は結構な広さがあって、しかも霧のせいで視界が悪いらしい。一応、所々にランプを吊るしてある支柱に現在位置が書かれてるんだが……」
しかし件の男性は迷った。だが、その迷った理由が今回の依頼に繋がると受付の男は語る。
「問題はその次だ。どうにもその墓地には幽霊が出るらしいんだが、こっちで調べた所、どうやら雑魔が周辺をうろついているらしい」
雑魔が相手となれば、それはハンターの仕事だ。
「雑魔に関しては偶然近くで戦ったというハンターから得た情報がある。墓地の方に向かっていったというから、恐らくはそいつらで間違いないだろう」
依頼書の下部には雑魔の詳細な情報が書かれている。
「現地の状況は最悪なうえに、迷子の男性はどこにいるか判らん。おまけに雑魔までいて、とどめには時間もないと来ている」
いつ迷子のサンスが雑魔に見つかり、殺されるか分からないというのが現状。
うっかり雑魔に見つかってでもすれば、即座に殺されてしまうだろう。そう考えれば、確かに時間はない。
「この墓地、さっきも言ったが、霧がかかっている。普段なら気にするほどでもないらしいんだが、このサンスって村人が行方不明になった辺りから霧が濃くなっているらしい。霧が濃くなるって事自体は村人達からすれば珍しい事じゃないらしいんだがな」
地形の関係か、季節や気象の影響で、この墓地周辺は時折濃霧に包まれる事がある。
最悪な事に、現在はその濃霧に墓地が飲み込まれてしまっている状況だ。
「そんな訳でだ。――厄介な依頼だが、受けるか?」
リプレイ本文
●入口
依頼を受けたハンター達は、濃霧に包まれた墓地の入り口に辿り着く。
キィと音を立てる柵を開くと、途端に肌寒さが背筋を撫で上げた。
ハンター達は互いに頷き合うと、三つの班に分かれる。
それぞれA班、B班、C班と別れ迷子のサンスを探す為の捜索が開始された。
●A班
「――この墓地って禁煙だったりするのかな?」
濃霧に包まれる墓地の中、リーゼリッタ(ka4399)はそう呟きながら、ランプに油を注いでいた。
「少なくとも、墓地で禁煙というのは聞いたことがないな」
サントール・アスカ(ka2820)がそう返すと、リーゼリッタはなるほどと頷いた。
「さてと、じゃまぁ、先ずはここら一帯を探すとするか。――ヨロシク頼むぜ、主よ」
アゼル=B=スティングレイ(ka3150)のその言葉を合図に、三人は周囲の様子を伺う。
それぞれが明かりを手に辺りを見回すも、やはり墓地を包み込む濃霧の影響で視界が悪い。
「おいサンス! 助けにきたぞ! っても、危険だからその場を動くんじゃないぞ!」
アゼルの怒声に近い声が周囲に響き渡る。
帰って来る音を拾おうと耳に意識を集中させるが、届くのは風の音だけ。
「ここにはいない……のかな?」
「もしくは恐怖で声も出ない……とかか?」
リーゼリッタとサントールがそれぞれの考えを口にするが、答えはでない。
少なくとも、アゼルの声に対する応えはないようだ。
となれば、後は地道に探すしかないと、周囲の捜索を開始する。
●B班
「死人が歩いて人を喰う、か。……ここの雰囲気が合わさると、気が滅入る話だな」
イヴァン・レオーノフ(ka0557)は物陰に明かりを向けながら、ふと思いを零した。
「そうね。サンスさんが怖がって隠れているのも判るわ」
周囲に明かりを当てながら、柏部 狭綾(ka2697)は返す。
「――いない、か。どうやらこの区画には居なさそうだな」
十文字 勇人(ka2839)は小屋の扉を3回叩くのが、自分達が助けに来た合図と最初に告げていた。
小屋の扉をノックするも、返事は帰ってこない。
ゆっくりと扉を開くと、中は掃除道具だけ。
「こんな所に隠れようと思うのは、きっと余程追いつめられた時くらいね……」
狭綾は勇人の背中から小屋の中を覗き、思わず口を手で覆った。
「とは言え、こんな状況だ。衝動的にというのも判らなくもないな」
イヴァンもまた、小屋の中を覗いてそんな思いを呟いた。
普段ならあり得ない事も、極限ならばなくはない。
サンスは今そんな状況に置かれているんだと、三人はより捜索に力を入れた。
●C班
「我々はハンターだ! サンス、こちらが見つかるまで絶対に動くな~!」
メリエ・フリョーシカ(ka1991)の良く通る声が濃霧の中に吸い込まれた。
「これできっとサンスさんも逃げたりはしないよね?」
忠告はしたからと、辰川 桜子(ka1027)少し不安な顔を見せた。
「少なくとも、助けに来た人がいるって事は伝わったと思います」
メリエがそう言うと、桜子はほっとした色を浮かべる。
「でも、これでゾンビもこっちに来ちゃう可能性もあるんだよね」
「それならそれでいい、かな? 勿論サンスさんの保護が最優先ですけど」
出来ればサンスの確保が先であってほしいという思いが、二人の中にはある。
「小屋ってこれの事……かな?」
捜索中、桜子はブロックの端で小屋を見つけた。
「……開けて、みましょうか」
メリエがそっと扉を開く。
ライトの明かりが小屋の中を照らすが、結果は物気のから。
二人はサンスの姿が無い事に、思わず落胆の思いを零した。
●A班
次のブロックに移ったA班だったが、濃霧の中現れた異形の影に、緊張が走る。
ゾンビは姿を見せるのと同時に、視界に捕えた敵に襲い掛かった。
「っ!? この程度の攻撃!」
最初に襲い掛かられたのはサントールだった。
大きく振り被った一撃を、ステップを踏む様にして回避すると、返す刀の如く、ノーモーションで拳を叩き込む。
ぐらりと傾くゾンビだが、その程度では倒れない。
「探し物よりもこっちが先に出てくるなんてな! これでも喰らいなっ!」
濃霧の中から出てきたもう一匹に向かってアゼルはホーリーライトを飛ばした。
光弾を真正面から受け、ゾンビはよろめいた。
「背中ががら空きだよっ!!」
素早く背後に回り込んだリーゼリッタは、その手に持つ巨大な斧を振り被ると、迷う事なく振り下ろした。
脳天から股下まで、そして地面に突き刺さる程の一撃は、見事ゾンビの命を奪う。
「それじゃあ辛いだろ? これでトドメをさしなっ!」
続いてアゼルはホーリーセイバーをサントールへと飛ばした。
「助かります! はぁ――せいっ!!」
素早いステップで懐に飛び込むと、サントールは再びノーモーションで拳を打ち込んだ。
ぐらりと体が傾き、無防備となったゾンビ。サントールは狙いを澄ますと、その顎に向かって強烈なアッパーを叩き込む。
顎ごと頭部を粉砕されたゾンビは数歩後退すると、糸の切った人形のように崩れた。
手早くゾンビを処理すると、三人は周囲に気配を飛ばす。
敵が居ない事を確認し、警戒を解いた。
すると、それを見計らったように、トランシーバーからノイズ交じりの声が飛び出した。
●B班
次のブロックを捜索している途中、狭綾は濃霧の中に人影を発見する。
しかし、人の動きとは思えないかくかくとした動作に、咄嗟に弓を構えた。
「止まってください。サンスさん……ではありませんね?」
返答は地の底から響くうめき声だった。
「足止めを頼む。自分が止める――!」
狭綾が弓を射って威嚇射撃をすると、歩みを止めたゾンビにイヴァンは拳を向けた。
一撃、二撃と攻撃を叩き込むが、ゾンビは体のパーツを失いながらも襲い掛かって来る。
「横に飛べっ! ――ふんっ!!」
イヴァンが横に飛ぶと、その残像を貫くように、勇人の拳がゾンビの胸を貫いた。
ガクリと、ゾンビの手が下がる。
やったかと拳を引き抜く勇人だったが、ゾンビは再び意識を戻し、鋭い爪で引っ掻いた。
勇人の拳は胸を突いたようで、実際に少し横にずれていたのだ。
その事に勇人は舌打ちしつつ、闘具でガードする。
「――させない! 一旦距離を取って!」
振り上げられたもう片方の腕を、狭綾の矢が射抜いた。
その隙に勇人が距離を取ると、今度はイヴァンの拳がゾンビを強襲する。
「こういう場合――月並みだが頭を潰せと相場は決まっている!!」
狙いを澄ました一撃。それは確実にゾンビの頭部を捉え、見事に砕いて見せた。
「痛みがないというだけで、ここまで厄介か……」
隠れていた脅威に勇人は眉間に皺を刻む。
戦闘が終わるのを見計らったように、トランシーバーから目標発見の知らせが入った。
●C班
柵を抜けるや否や、メリエは両手をメガホンのようにして叫んだ。
「サンス、もしここに居るのなら声は出さなくていい! 必ず助けるからそこに隠れていろ!」
帰って来る音はないが、メリエは満足気に頷くと肩のライトを確かめてから歩みを進める。
「サンスさん、見つからないけど、ゾンビも見つからないね?」
敷地内に明かりを向けつつ、桜子が呟いた。
「ですね。出来ればサンスさんを助け出すまでは大人しくしていてくれるといいんですけど……」
希望的意見であるのは判っているが、サンスを救うという事を主とするのなら、それがベストであるのは間違いない。
ほどなくして、二人のライトが一つの小さな小屋を映し出す。
濃霧を払い除けるようにして、扉をノックする。
すると、扉の向こうから小さな悲鳴めいた嗚咽が聞こえた気がした。
ハッとなると、
「サンスさんね? 私達、貴方を助ける為にやってきたの!」
桜子がそう言うと、扉が勢い良く開かれた。
中から現れたのは村人達に聞いていた人相と同じ、男性だ。
サンスは飛び出してくると、そのままメリエの腰に泣きつくようにして抱き付いた。
「サンスさんですね? 安全な所まで私達が守りますから、逸れないように付いてきてください。――ぁ、なんならしがみ付いたままでもいいですよ?」
そちらの方が突然いなくなられる心配もないと、メリエがそう告げる。
サンスは恐怖を顔に張り付かせたまま、手を離さなかった。
「これで目的は達成ね。それじゃあ、皆に連絡を入れるわね」
トランシーバーを手に取ると、桜子は他の仲間へと連絡を入れる。
●『第9ブロック』
仲間と合流する予定だった桜とメリエだったが、突然現れたゾンビから逃れる為に、別の区画に逃げていた。
物陰に隠れ、周囲の様子を伺う。
「サンスさん、大丈夫ですから安心してください。 皆、直ぐに来てくれるから、それまでの辛抱です!」
恐慌状態に陥っているサンスを剥げますメリエだったが、不安はまったく取り除けない。
「出来るだけ音を立てないように逃げたけど……大丈夫、だよね?」
濃霧に紛れ、音を消して逃げたが、果たして振り切れたかどうか。それはまだ判らない。
しかし、その不安は的中してしまう。
「――メリエさん、ここは私が。サンスさんを連れて逃げて」
ゆっくりと立ち上がった桜子は、武器を抜いて構える。
現れたのは一体だけだったので、桜子が相手をすればメリエは逃げられる。
メリエは小さく頷くと、サンスを促して立ち上がる。
と、その時だ。
ゾンビが現れた方とは違う道から、人工の明かりが濃霧を散らした。
それを突っ切るようにして、A班、B班の面々が到着した。
口々に労いとサンスを安心させる言葉を告げ、次の行動に移る。
彼らは最初に決めていた通りに、サンスを護衛して逃げるメンバーと、あえて囮となって戦うメンバーに分かれた。
囮役を演じるのはB班だ。遠近に援護とバランスの取れたB班が最適であると判断された。
サンスを外まで送り届けるのは彼を発見したC班の二人で、A班はそれに随伴する護衛だ。
素早くそれらを確認し終えると、早速行動に入る。
「さて……後はこいつらを倒すだけだな」
それぞれのブロックを通り抜けてきた結果、残っているゾンビはC班を追ってきた奴だけだ。
残り後少しと、イヴァンは気合いの入った声で拳を強く握りしめる。
「さっさと終わらせて後を追うとしようか……」
「そうですね。ここで倒してしまえば、村人の安全も確保できますから」
狭綾、勇人もそれに続いて各々の武器を手に構えた。
●『第5ブロック』
彼らの予想は的中した。
もしもの時にと、A班を護衛に付けたのが幸いしたのだ。
「ここは俺達が!」
「おまえらは先にそいつを連れて逃げな!」
サントールとアゼルが叫んだ。
「大丈夫。こんな奴らにあたしらはやられたりしないさ」
くるりと斧を手首で回転させ、肩に担ぐとリーゼリッタはニっと笑ってみせた。
桜子とメリエは頷くと、三人を置いて出口に向かって走り出す。
「――さて、言った手前……ここは通さねえぞ?」
先ほどは使わなかった武器を手に、アゼルは鋭い目つきでゾンビを睨みつける。
「あぁ、そうだな。――やるとするか」
「逃がしはしないよ? あの人だけじゃなく、村人たちの事もあるからね」
ゾンビを残しておいてはまた被害が出る。ならばいっそ、このタイミングで全滅させてしまえば未然に防ぐことが出来る。
彼らはサンスを助けるという主目的をベースにしつつも、もう一つの目的も果たすつもりでいた。
未練がましく生に縋る亡者のうめき声を断ち切るように、三人はゾンビへと襲い掛かった。
●『第2ブロック』
「こ、ここまで来れば、安心……かな?」
「そ、ですね……ふぅ。大丈夫ですか?」
最初は怯えていたサンスも、出口が直ぐそこだと感じると、顔色が若干良くなる。
が、再び青ざめる原因がぬっと濃霧の中から現れた。
「出来れば、これで最後にしてほしいんだけど……」
収めていた武器を再び抜き放ち、桜子が構える。
「――そこに居てください。大丈夫ですよ。絶対にここから先は通しませんから」
メリエもまた、サンスを安全な所で待機させると、自らも武器を手に取った。
現れた敵は一匹。それに対してハンターは二人。負ける道理がない。
二人は一斉に駈け出すと、先手を取ったのは桜子だ。
「私が動きを止めるから、トドメ、お願い!」
そう言って桜子はゾンビの胴体に向けて斬撃を放つ。
踏込からの狙いを澄ました一撃。それはゾンビの胴体を薙ぐが明確なダメージにはならなかった。
しかし、よろめかせた所を、今度は力を込めた剣閃を刻んだ。
「暴食が……。身の程を弁えろ、下級がっ!」
裂帛の一撃。
動きを止めたゾンビなどただの案山子と同じで、渾身の力を込めたメリエの攻撃は外れる理由がない。
頭頂部から真っ二つに割られるかのように、メリエの一撃は股下まで駆け抜けた。
悲鳴もなく、苦痛もなく、ゾンビは二つに裂かれて大地に伏した。
●村への帰還
桜子とメリエはサンスを無事に村へと送り届けた。
「ふぅ。これで一件落着、だね」
「そうですね。――ぁ、皆も戻って来たようです」
桜子の安堵した言葉に同意するメリエ。と、丁度その時に、墓地で奮闘した残りのメンバーも無事に帰還する。
「墓地に居た雑魔は全部蹴散らした。これでこの村に被害が出る事はないはずだ」
「ついでに墓地の周辺も見回ったし、ま、大丈夫だろ」
サントールとアゼルが脅威はさっさと告げると、村人達は揃って安堵の思いを零す。
「さっきまではあんなに怯えてたのに、現金な奴だね」
リーゼリッタの見つめる先には、助け出したサンスの姿がある。
仲間達と再会できたことに笑みを浮かべていた。
「それは自分達がちゃんと助け出せたという証だろう」
「えぇ、そうね。助け出せなければ、彼は今あそこで笑ってはいないんですから」
イヴァンと狭綾の言葉にリーゼリッタはなるほどと頷いた。
「サンスを助け、雑魔も無事撃破した。村の安全も守ったとなれば……満足の行く結果だな」
そう呟く勇人の顔には達成感が滲み出ている。
程よい疲労感に包まれる中、仲間達に茶化され、情けない声を上げるサンスを見て、ハンター達は思わず苦笑いを浮かべるのだった。
依頼を受けたハンター達は、濃霧に包まれた墓地の入り口に辿り着く。
キィと音を立てる柵を開くと、途端に肌寒さが背筋を撫で上げた。
ハンター達は互いに頷き合うと、三つの班に分かれる。
それぞれA班、B班、C班と別れ迷子のサンスを探す為の捜索が開始された。
●A班
「――この墓地って禁煙だったりするのかな?」
濃霧に包まれる墓地の中、リーゼリッタ(ka4399)はそう呟きながら、ランプに油を注いでいた。
「少なくとも、墓地で禁煙というのは聞いたことがないな」
サントール・アスカ(ka2820)がそう返すと、リーゼリッタはなるほどと頷いた。
「さてと、じゃまぁ、先ずはここら一帯を探すとするか。――ヨロシク頼むぜ、主よ」
アゼル=B=スティングレイ(ka3150)のその言葉を合図に、三人は周囲の様子を伺う。
それぞれが明かりを手に辺りを見回すも、やはり墓地を包み込む濃霧の影響で視界が悪い。
「おいサンス! 助けにきたぞ! っても、危険だからその場を動くんじゃないぞ!」
アゼルの怒声に近い声が周囲に響き渡る。
帰って来る音を拾おうと耳に意識を集中させるが、届くのは風の音だけ。
「ここにはいない……のかな?」
「もしくは恐怖で声も出ない……とかか?」
リーゼリッタとサントールがそれぞれの考えを口にするが、答えはでない。
少なくとも、アゼルの声に対する応えはないようだ。
となれば、後は地道に探すしかないと、周囲の捜索を開始する。
●B班
「死人が歩いて人を喰う、か。……ここの雰囲気が合わさると、気が滅入る話だな」
イヴァン・レオーノフ(ka0557)は物陰に明かりを向けながら、ふと思いを零した。
「そうね。サンスさんが怖がって隠れているのも判るわ」
周囲に明かりを当てながら、柏部 狭綾(ka2697)は返す。
「――いない、か。どうやらこの区画には居なさそうだな」
十文字 勇人(ka2839)は小屋の扉を3回叩くのが、自分達が助けに来た合図と最初に告げていた。
小屋の扉をノックするも、返事は帰ってこない。
ゆっくりと扉を開くと、中は掃除道具だけ。
「こんな所に隠れようと思うのは、きっと余程追いつめられた時くらいね……」
狭綾は勇人の背中から小屋の中を覗き、思わず口を手で覆った。
「とは言え、こんな状況だ。衝動的にというのも判らなくもないな」
イヴァンもまた、小屋の中を覗いてそんな思いを呟いた。
普段ならあり得ない事も、極限ならばなくはない。
サンスは今そんな状況に置かれているんだと、三人はより捜索に力を入れた。
●C班
「我々はハンターだ! サンス、こちらが見つかるまで絶対に動くな~!」
メリエ・フリョーシカ(ka1991)の良く通る声が濃霧の中に吸い込まれた。
「これできっとサンスさんも逃げたりはしないよね?」
忠告はしたからと、辰川 桜子(ka1027)少し不安な顔を見せた。
「少なくとも、助けに来た人がいるって事は伝わったと思います」
メリエがそう言うと、桜子はほっとした色を浮かべる。
「でも、これでゾンビもこっちに来ちゃう可能性もあるんだよね」
「それならそれでいい、かな? 勿論サンスさんの保護が最優先ですけど」
出来ればサンスの確保が先であってほしいという思いが、二人の中にはある。
「小屋ってこれの事……かな?」
捜索中、桜子はブロックの端で小屋を見つけた。
「……開けて、みましょうか」
メリエがそっと扉を開く。
ライトの明かりが小屋の中を照らすが、結果は物気のから。
二人はサンスの姿が無い事に、思わず落胆の思いを零した。
●A班
次のブロックに移ったA班だったが、濃霧の中現れた異形の影に、緊張が走る。
ゾンビは姿を見せるのと同時に、視界に捕えた敵に襲い掛かった。
「っ!? この程度の攻撃!」
最初に襲い掛かられたのはサントールだった。
大きく振り被った一撃を、ステップを踏む様にして回避すると、返す刀の如く、ノーモーションで拳を叩き込む。
ぐらりと傾くゾンビだが、その程度では倒れない。
「探し物よりもこっちが先に出てくるなんてな! これでも喰らいなっ!」
濃霧の中から出てきたもう一匹に向かってアゼルはホーリーライトを飛ばした。
光弾を真正面から受け、ゾンビはよろめいた。
「背中ががら空きだよっ!!」
素早く背後に回り込んだリーゼリッタは、その手に持つ巨大な斧を振り被ると、迷う事なく振り下ろした。
脳天から股下まで、そして地面に突き刺さる程の一撃は、見事ゾンビの命を奪う。
「それじゃあ辛いだろ? これでトドメをさしなっ!」
続いてアゼルはホーリーセイバーをサントールへと飛ばした。
「助かります! はぁ――せいっ!!」
素早いステップで懐に飛び込むと、サントールは再びノーモーションで拳を打ち込んだ。
ぐらりと体が傾き、無防備となったゾンビ。サントールは狙いを澄ますと、その顎に向かって強烈なアッパーを叩き込む。
顎ごと頭部を粉砕されたゾンビは数歩後退すると、糸の切った人形のように崩れた。
手早くゾンビを処理すると、三人は周囲に気配を飛ばす。
敵が居ない事を確認し、警戒を解いた。
すると、それを見計らったように、トランシーバーからノイズ交じりの声が飛び出した。
●B班
次のブロックを捜索している途中、狭綾は濃霧の中に人影を発見する。
しかし、人の動きとは思えないかくかくとした動作に、咄嗟に弓を構えた。
「止まってください。サンスさん……ではありませんね?」
返答は地の底から響くうめき声だった。
「足止めを頼む。自分が止める――!」
狭綾が弓を射って威嚇射撃をすると、歩みを止めたゾンビにイヴァンは拳を向けた。
一撃、二撃と攻撃を叩き込むが、ゾンビは体のパーツを失いながらも襲い掛かって来る。
「横に飛べっ! ――ふんっ!!」
イヴァンが横に飛ぶと、その残像を貫くように、勇人の拳がゾンビの胸を貫いた。
ガクリと、ゾンビの手が下がる。
やったかと拳を引き抜く勇人だったが、ゾンビは再び意識を戻し、鋭い爪で引っ掻いた。
勇人の拳は胸を突いたようで、実際に少し横にずれていたのだ。
その事に勇人は舌打ちしつつ、闘具でガードする。
「――させない! 一旦距離を取って!」
振り上げられたもう片方の腕を、狭綾の矢が射抜いた。
その隙に勇人が距離を取ると、今度はイヴァンの拳がゾンビを強襲する。
「こういう場合――月並みだが頭を潰せと相場は決まっている!!」
狙いを澄ました一撃。それは確実にゾンビの頭部を捉え、見事に砕いて見せた。
「痛みがないというだけで、ここまで厄介か……」
隠れていた脅威に勇人は眉間に皺を刻む。
戦闘が終わるのを見計らったように、トランシーバーから目標発見の知らせが入った。
●C班
柵を抜けるや否や、メリエは両手をメガホンのようにして叫んだ。
「サンス、もしここに居るのなら声は出さなくていい! 必ず助けるからそこに隠れていろ!」
帰って来る音はないが、メリエは満足気に頷くと肩のライトを確かめてから歩みを進める。
「サンスさん、見つからないけど、ゾンビも見つからないね?」
敷地内に明かりを向けつつ、桜子が呟いた。
「ですね。出来ればサンスさんを助け出すまでは大人しくしていてくれるといいんですけど……」
希望的意見であるのは判っているが、サンスを救うという事を主とするのなら、それがベストであるのは間違いない。
ほどなくして、二人のライトが一つの小さな小屋を映し出す。
濃霧を払い除けるようにして、扉をノックする。
すると、扉の向こうから小さな悲鳴めいた嗚咽が聞こえた気がした。
ハッとなると、
「サンスさんね? 私達、貴方を助ける為にやってきたの!」
桜子がそう言うと、扉が勢い良く開かれた。
中から現れたのは村人達に聞いていた人相と同じ、男性だ。
サンスは飛び出してくると、そのままメリエの腰に泣きつくようにして抱き付いた。
「サンスさんですね? 安全な所まで私達が守りますから、逸れないように付いてきてください。――ぁ、なんならしがみ付いたままでもいいですよ?」
そちらの方が突然いなくなられる心配もないと、メリエがそう告げる。
サンスは恐怖を顔に張り付かせたまま、手を離さなかった。
「これで目的は達成ね。それじゃあ、皆に連絡を入れるわね」
トランシーバーを手に取ると、桜子は他の仲間へと連絡を入れる。
●『第9ブロック』
仲間と合流する予定だった桜とメリエだったが、突然現れたゾンビから逃れる為に、別の区画に逃げていた。
物陰に隠れ、周囲の様子を伺う。
「サンスさん、大丈夫ですから安心してください。 皆、直ぐに来てくれるから、それまでの辛抱です!」
恐慌状態に陥っているサンスを剥げますメリエだったが、不安はまったく取り除けない。
「出来るだけ音を立てないように逃げたけど……大丈夫、だよね?」
濃霧に紛れ、音を消して逃げたが、果たして振り切れたかどうか。それはまだ判らない。
しかし、その不安は的中してしまう。
「――メリエさん、ここは私が。サンスさんを連れて逃げて」
ゆっくりと立ち上がった桜子は、武器を抜いて構える。
現れたのは一体だけだったので、桜子が相手をすればメリエは逃げられる。
メリエは小さく頷くと、サンスを促して立ち上がる。
と、その時だ。
ゾンビが現れた方とは違う道から、人工の明かりが濃霧を散らした。
それを突っ切るようにして、A班、B班の面々が到着した。
口々に労いとサンスを安心させる言葉を告げ、次の行動に移る。
彼らは最初に決めていた通りに、サンスを護衛して逃げるメンバーと、あえて囮となって戦うメンバーに分かれた。
囮役を演じるのはB班だ。遠近に援護とバランスの取れたB班が最適であると判断された。
サンスを外まで送り届けるのは彼を発見したC班の二人で、A班はそれに随伴する護衛だ。
素早くそれらを確認し終えると、早速行動に入る。
「さて……後はこいつらを倒すだけだな」
それぞれのブロックを通り抜けてきた結果、残っているゾンビはC班を追ってきた奴だけだ。
残り後少しと、イヴァンは気合いの入った声で拳を強く握りしめる。
「さっさと終わらせて後を追うとしようか……」
「そうですね。ここで倒してしまえば、村人の安全も確保できますから」
狭綾、勇人もそれに続いて各々の武器を手に構えた。
●『第5ブロック』
彼らの予想は的中した。
もしもの時にと、A班を護衛に付けたのが幸いしたのだ。
「ここは俺達が!」
「おまえらは先にそいつを連れて逃げな!」
サントールとアゼルが叫んだ。
「大丈夫。こんな奴らにあたしらはやられたりしないさ」
くるりと斧を手首で回転させ、肩に担ぐとリーゼリッタはニっと笑ってみせた。
桜子とメリエは頷くと、三人を置いて出口に向かって走り出す。
「――さて、言った手前……ここは通さねえぞ?」
先ほどは使わなかった武器を手に、アゼルは鋭い目つきでゾンビを睨みつける。
「あぁ、そうだな。――やるとするか」
「逃がしはしないよ? あの人だけじゃなく、村人たちの事もあるからね」
ゾンビを残しておいてはまた被害が出る。ならばいっそ、このタイミングで全滅させてしまえば未然に防ぐことが出来る。
彼らはサンスを助けるという主目的をベースにしつつも、もう一つの目的も果たすつもりでいた。
未練がましく生に縋る亡者のうめき声を断ち切るように、三人はゾンビへと襲い掛かった。
●『第2ブロック』
「こ、ここまで来れば、安心……かな?」
「そ、ですね……ふぅ。大丈夫ですか?」
最初は怯えていたサンスも、出口が直ぐそこだと感じると、顔色が若干良くなる。
が、再び青ざめる原因がぬっと濃霧の中から現れた。
「出来れば、これで最後にしてほしいんだけど……」
収めていた武器を再び抜き放ち、桜子が構える。
「――そこに居てください。大丈夫ですよ。絶対にここから先は通しませんから」
メリエもまた、サンスを安全な所で待機させると、自らも武器を手に取った。
現れた敵は一匹。それに対してハンターは二人。負ける道理がない。
二人は一斉に駈け出すと、先手を取ったのは桜子だ。
「私が動きを止めるから、トドメ、お願い!」
そう言って桜子はゾンビの胴体に向けて斬撃を放つ。
踏込からの狙いを澄ました一撃。それはゾンビの胴体を薙ぐが明確なダメージにはならなかった。
しかし、よろめかせた所を、今度は力を込めた剣閃を刻んだ。
「暴食が……。身の程を弁えろ、下級がっ!」
裂帛の一撃。
動きを止めたゾンビなどただの案山子と同じで、渾身の力を込めたメリエの攻撃は外れる理由がない。
頭頂部から真っ二つに割られるかのように、メリエの一撃は股下まで駆け抜けた。
悲鳴もなく、苦痛もなく、ゾンビは二つに裂かれて大地に伏した。
●村への帰還
桜子とメリエはサンスを無事に村へと送り届けた。
「ふぅ。これで一件落着、だね」
「そうですね。――ぁ、皆も戻って来たようです」
桜子の安堵した言葉に同意するメリエ。と、丁度その時に、墓地で奮闘した残りのメンバーも無事に帰還する。
「墓地に居た雑魔は全部蹴散らした。これでこの村に被害が出る事はないはずだ」
「ついでに墓地の周辺も見回ったし、ま、大丈夫だろ」
サントールとアゼルが脅威はさっさと告げると、村人達は揃って安堵の思いを零す。
「さっきまではあんなに怯えてたのに、現金な奴だね」
リーゼリッタの見つめる先には、助け出したサンスの姿がある。
仲間達と再会できたことに笑みを浮かべていた。
「それは自分達がちゃんと助け出せたという証だろう」
「えぇ、そうね。助け出せなければ、彼は今あそこで笑ってはいないんですから」
イヴァンと狭綾の言葉にリーゼリッタはなるほどと頷いた。
「サンスを助け、雑魔も無事撃破した。村の安全も守ったとなれば……満足の行く結果だな」
そう呟く勇人の顔には達成感が滲み出ている。
程よい疲労感に包まれる中、仲間達に茶化され、情けない声を上げるサンスを見て、ハンター達は思わず苦笑いを浮かべるのだった。
依頼結果
依頼成功度 | 成功 |
---|
面白かった! | 4人 |
---|
ポイントがありませんので、拍手できません
現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
墓地の迷い人を救う為に 柏部 狭綾(ka2697) 人間(リアルブルー)|17才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2015/03/20 02:54:49 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/03/16 23:48:43 |