天空の襲撃者

マスター:植田誠

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/07/03 07:30
完成日
2014/07/09 00:40

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 ゾンネンシュトラール帝国南部。帝都に通じる街道を3台の荷馬車が行く。
 南部には北部程ではないものの規模の大きい鉱山が存在している。この隊商はそこで取れた資源を運んでいる最中なのだ。
「しっかし軍も当てになりませんよねぇ」
 若い御者は荷馬車の手綱を握りながら、隣に座る隊商のリーダーに言った。
「なんでしたっけ? 戦闘の被害が大きくて回復がおっつかないから護衛に割く人員がいないでしたっけ。まったく……」
「まぁこのルートは比較的安全だから9割方大丈夫だろう」
「でもですよ? 人々の安全を守るのが軍の仕事ってやつじゃ……ん?」
 ふと、二人の上に影が落ちる。急に日が陰ったのだろうか。だが、今日は雲一つない快晴だったはず……そう思い御者は頭を上げた。
「……あれは?」
 その時御者が見たのは鳥……ではなかった。その影の主は確かに鳥の形をしてはいた。但し、前半分だけだ。胴体から後ろ脚に至るまでは獅子の体。
「グリフォン……グリフォンじゃないですか、あれ? うわぁ……フェルゼン・ヴィーゼにしかいないと思ってましたけど、こんなところにもいるんですねぇ。ねぇリーダー……」
 どこか感嘆したような口調で話す御者だったが、リーダーの方はというと表情が一変していた。
「あの……」
「逃げろ」
「え?」
「いいから早く逃げろってんだよ!」
 言うが早いか、リーダーは御者から鞭をひったくり、馬を打つ。二度三度と鞭打つたび、どこかのんびりした足取りだった馬はぐんぐん加速していく。
「道が荒れてやがるな。これじゃ追いつかれるか……くそ! 1割の方を引いちまうとは……」
「ど、どうしたんですかリーダー!」
「『どうしたんですか』じゃねぇ! このままじゃ食われるぞ!」
「食われる……? 食われるって、グリフォンにってことですか? そんな……」
「……そうか、お前野生のグリフォンを見たのは初めてだったか。じゃあ覚えておけ、グリフォンの主食は肉だ! 馬肉を最も好むらしいが、野生のグリフォンは肉なら区別しない! なんでもいいんだ! 分かるか!?」
「なんでも…………?」
 考え込む御者。だが、普段から冷静なリーダーの慌てようと今の行動から、すぐに答えが浮かぶ。
「もしかして、肉って……」
「……状況が呑み込めたらしいな。そうだ、人の肉だって、例外じゃない」
「た、大変じゃないですか!」
「だから逃げるんだよ! 頼むぞ!」
 そう言ってリーダーは鞭と手綱を御者に返し、地図を開く。
「近くに森があるな。そこまで逃げ込めばなんとかなるか……よし」
 ルートを御者に指示しながらリーダーは後方を確認する。2頭のグリフォンはこちらを追いかけてきていた。
 リーダーは舌打ちしつつ懐からトランシーバーを取り出した。先日リゼリオに立ち寄った際購入したものだ。
「備えあれば、ってな……聞こえてるか?」
 トランシーバーに向かってリーダーは声を上げる。
「もう状況は分かってるな。これから俺達は近くの森まで逃げ込む。そこまで行けばあのグリフォンも諦めるだろう。あんたらにはそれまでグリフォンの行動を妨害してくれればいい」
 グリフォンの動きを逐一気にしながらリーダーは続ける。
「それじゃ頼む! 先に言っておくが、落ちるなよ!」
 そう言ってリーダーはトランシーバーを切る。
 こうして、トランシーバーの向こう側……隊商に雇われたハンターたち馬車を守るべく各々武器を構えた。

リプレイ本文


 荷馬車は全速力で街道を駆け抜ける。その荷台ではグリフォンを迎え撃つべく、ハンターたちが各々戦闘の態勢を整えていた。
 先頭の荷馬車に乗るのは2人。
「安全な旅と思っていたんだが、まさかグリフォンとはな……」
「確かに、グリフォンは手強い……まして2頭だ。振り切るのは賢明な判断だろう」
 矢を番えグリフォンの接近を待つアバルト・ジンツァー(ka0895)の横で、ノート(ka2372)は拳銃を取り出す。敵は飛んでいるのだ。遠距離攻撃が可能な装備を準備しておくのは賢明な判断だろう。
「こーいうの、何て言うんだったかしら……窮鼠猫缶を開ける?」
「……ひょっとして窮鼠猫を噛むって言いたいの?」
「ちょっ、ちょっと言い間違えただけよ!」
 その後ろ、中央の荷馬車にはやや顔を赤らめながら強がるフランキスカ・コルウス(ka0626)と、冷静にグリフォンとの接触時間を割り出そうとしている橘 遥(ka1390)がいた。
 そして、最後尾……今現在、最もグリフォンと近い位置にいるのは4人。
「……よし、オッケーだよ!」
「ありがとうございます」
 丁度、ソフィア =リリィホルム(ka2383)がミイシェ・カルミア(ka2125)に攻性強化をかけ終わったところだった。
「次はボルディアさんね」
「おう、頼むぜ!」
 攻性強化は3度しか使用できない。ソフィアはそれをミイシェ、ボルディア・コンフラムス(ka0796)、そして自分自身に使用するつもりだった。
「ごめんね、攻性強化も回数が限られてるから……」
「大丈夫……」
 鎮西 八葉(ka2408)は謝るソフィアにそう告げ、弓を構える。
「それにしてもグリフォンかぁ、正直闘り合いたいっちゃ闘り合いたいんだけどなー」
「そうだな。できれば私の手で討ち取ってみたいけど……」
 どこか残念そうなボルディアに同意するかのように八葉も呟く。
「でも、今回はみんなを守る。それが、最優先事項」
 八葉はそう言いながら、重心を低く取る。激しく揺れる荷台、張りが強い分制度に難がある武器。それらの条件を加味しながら、矢を番える。
「さぁ、楽しい射撃の始まりだ。諸々こぞりて、敵を撃とう」
 グリフォンが射程内に入るまで何秒もかからなかった。


 グリフォンは様子を窺うかのように、高度を保ちながら馬車の跡を追いかけてくる。
(一体、どの荷馬車を狙ってくるのか……)
 遠距離攻撃を行う手段を持たない遥。その分、同じ荷馬車に乗るフランキスカや御者への護衛に専念できる。とはいえ、それは敵が近づいてきたらの話だ。近づかれるまでは何もできない。だからこそ敵が遠い間、必死に動きを予測する。それは先頭のノートも同様だった。拳銃があるとは言え、その射程は弓には及ばない。
「どう?」
「……荷物がある分やっぱりこちらが遅いわね。20秒もしないで上を取られるかもしれないわ」
「そう……それなら、見合っていてもしょうがないわね……」
 まず仕掛けたのはフランキスカ。瞳にマテリアルを込め自身の射撃精度を高め……
「当たれ!」
 番えた矢にマテリアルを強く込めて放つ。矢は風を切り裂きグリフォンに迫る。その狙いは翼。だが、グリフォンは体を傾けるだけで矢を躱す。
「さて、せいぜい嫌がらせをして時間を稼ぐことにしよう」
 先頭の荷馬車からアバルトもマテリアルを込めた矢を放つ。だが、躱される。距離が離れていることも理由の一つだろうが……グリフォンの機動力は非常に優れている。部位をピンポイントに狙っても、そう簡単には当てられない。
「……距離がある内は、ダメージを与えることを優先しよう、そうしよう」
 今度は最後尾から矢が飛ぶ。八葉の狙いは比較的当てやすいと思われる胴体。グリフォンは大きく羽ばたき、自身の位置を大きくずらして躱す。
 やはり当たらない……いや、先程までと比べると回避行動が大きくなっている。
「小さい動きでは回避しきれなくなってきた……という事か」
 新たに矢を番えながら呟くアバルト。ハンターたちは同じグリフォンを連続して狙い続けている。その甲斐あってか、グリフォンが余裕を持って回避することが出来なくなってきているのだ。
「よっしゃ! このまま畳み掛けちまえ!」
「ええ……当たってください!」
 ボルディアの声にこたえるかのように、集中したミイシェが魔法の矢を放つ。グリフォンはなんとか躱す……だが、次の瞬間空中で大きく仰け反る。
「そこに来るのは分かってたよ!」
 ミイシェの魔法を回避する、その動きに合わせたソフィアの機導砲が直撃したのだ。
「まだまだ行くよ。デバイス、スタンバイ!」 
 この攻撃で態勢を崩したグリフォン。それを見逃すハンターたちではない。アバルト、フランキスカの矢が、立て続けに翼を掠め、ミイシェの魔法、ソフィアの機導砲が胴を穿つ。
 連続で直撃を受けたグリフォンは、このままではじり貧になるとでも判断したのだろうか。急降下しながら最後尾の荷馬車へ突撃してきた。
「……っ! 来ないでください!」
 ミイシェが迎撃の為に放った魔法を回避、その回避直後を狙うようにソフィアが機導砲を放つ。機導砲はグリフォンの翼を掠める。しかし速度は落ちない。
(実際に近づいてきているのを見ると、やっぱり怖いですね……でも、必ず守って見せます!)
 そう決意を胸に、ミイシェはナイフを手に取る。
「おいおい、一人でかっこつけんなよ」
 そのミイシェの前に、太刀を構えたボルディアが壁となって立ち塞がった。
「餅は餅屋ってな! さぁ来いクソ鳥!」
 動物霊の力を瞳に宿し、接近するグリフォンを威圧するボルディア。
(来るなら来い……その喉笛かっきってやるぜ)
 いつでも懐に飛び込めるような態勢を取るボルディア。その隙のない視線に気圧されたのかグリフォンは不意に速度を落とした……だけではない。そのまま荷馬車にたどり着くことなく、地面に落ちる。
「……ありゃ? こいつは……」
「近づいていた分……」
 不思議そうな顔を浮かべたボルディアの後ろから声。八葉だ。
「近づいた分、当たりやすくはなってたからな」
 見ると、グリフォンの翼を矢が突き刺さっている。八葉が打ったものだろう。
「おお、さすがだね~」
 グリフォンが突っ込んできた際、ちゃっかりボルディアの後ろに隠れていたソフィアがそう感嘆の声を上げる。
「おまえ、いつの間に……っと、それよりグリフォンは……」
「まだ息があるけど……」
 見ると、地に落ちたグリフォンはなんとか立ち上がろうとしていた。だが、かなりの傷を負ったと見える。これ以上戦闘は出来ないだろう。
「実際目の前に来ると……やっぱり怖かったです」
「まぁ、もう放っておいてよさそうね。それより……」
 少し安堵した表情を見せたミイシェだったが、すぐに気を引き締める。ソフィアはすでに先頭の馬車へとタクトの先を向けていた。
 もう一頭のグリフォンは先頭の荷馬車に乗ったハンターと戦闘を行っていた。


 時間は後方の荷馬車に乗ったハンターがグリフォンを撃墜する少し前。
「前に出られたわ! 気を付けて!」
 遥が声を上げる。グリフォンの片割れは、完全に前へ出ていた。
「訓練が足りないとかそんなこと言ってらんないわね……」
 フランキスカは銃に持ち替える。慣れない武器ではあるが、威力と手数はこちらの方が上だ。
「ギリギリまではこのまま……いざとなったら頼む」
「了解した」
 アバルトは最低射程までグリフォンが入り込むまで迎撃を続けるつもりだ。それを見たノートは、牽制に使っていた拳銃をしまい、太刀を構える。グリフォンが突撃してきた時、その身を持って迎撃するために。
「……来るぞ!」 
 隊商のリーダーが声を上げるのと、グリフォンが方向転換したのはほぼ同時だった。
「近づかせないわ!」
 フランキスカは接近を妨げるように拳銃を連射する。グリフォンはそれを掻い潜りながら先頭の荷馬車。その馬を鉤爪が狙う。
「飛び道具は趣味に合わなかったが……そこならこいつが届くぞ」
 危険を感じたか、飛び退いたグリフォン。瞬間、先ほどまでグリフォンがいた空間がノートの太刀によって切り裂かれる。爪での攻撃の為に一瞬減速したから、躱すことが出来た。
「良い勘をしている……だが、これで終わりだな」
 ノートの呟き……これはハッタリではなかった。
 持ち替えを終えたアバルト、それにフランキスカもリロードを済ませ射撃。慌てて振り返り距離を取ろうとするグリフォンだったが、この時点で後方にいたグリフォンを落としたハンターたちが後方から射撃。
 後は、最初の再現だ。集中された攻撃の前に回避行動虚しく被弾を重ね、グリフォンはやがて力なく落下する。ただ……隊商の前方で戦っていたからか、このまま落ちられると馬車にぶつかるところだ。
「……そこで落ちられたらちょっと面倒ね」
 御者に回避を指示していたノート。その背に真ん中の荷馬車にいるはずだった遥の声が聞こえた。
 振り向くと、そこには脚にマテリアルを集中することで跳躍した遥の姿。馬車間の距離が詰まっていたことと、ストライダーの持ち味たる機動力があるからこそ可能な手だ。遥は、そのまま手に持った鞭を落下してきたグリフォンに打ち付け、落下位置をずらすことに成功した。
 地面に落ちるグリフォン。荷馬車はそれを横目に突っ走り、すぐに森へと入った。


 森の中に入って少し走ったところで、荷馬車は止まっていた。
「飛んでったわ……追ってはこないみたい」
「……まだ飛ぶ力が残されてたのね」
 2頭のグリフォンが飛び去っていくのを、フランキスカは遠目で確認した。飛んで行ったという事実に、遥は驚きながら溜息を吐く。これでとりあえずの急場は脱したと考えていいだろう。
「今回みたいなことがあると……せめて射撃くらいはどんなものでも扱えるようにしとくべきかしらね……」
 若干安堵しつつ、フランキスカは一人呟いた。
 グリフォンが飛び去るのをアバルトも確認していた。
「まぁ森の中に入ってしまえばこちらの物か。見通しも悪いし、わざわざ追おうという気も起こさないんだろう」
「グリフォンも鳴かずば撃たれまい……」
「いやいや、飛んでっただけよ?」
 手を合わせて南無南無と念仏でも唱えるかのような仕草をする八葉に遥がツッコミを入れた。
「しかし、今度会ったら焼き鳥にして食ってやるからな!」
 結局、直接剣を交えることがなかったからか、どこかボルディアは欲求不満そうだ。
「ハハハ! まぁ、今回みたいに襲われたら焼き鳥でもなんでもしてやってくれ。ただ、こっちから襲ったら帝国の第五師団あたりにしょっ引かれるから、気を付けろよな?」
 そんなボルディアに隊商のリーダーが笑いながら答えた。グリフォンはいわゆる幻獣だ。その個体数も多いとは言えない。だが、その戦闘力は希有なものだ。だからこそ、野生グリフォンの保護を行っている。もちろん、それだけでは軍として運用するには全く足りていない。
「その為のフェルゼン・ヴィーゼ……というわけですね」
「ま、そういうことだな。詳しいことは軍関係者じゃない俺には分からねぇが」
 依頼前、ミイシェはグリフォンに関して少し調べていた。
 その時に名前が挙がったのがこの『フェルゼン・ヴィーゼ』……いわゆるグリフォン牧場だ。ここでは南部国境要塞を拠点とする帝国軍第五師団管理の下、グリフォンの養殖が行われている。
「さて、話は良いが、そろそろ出発しないか?」
「ん、そうだな」
 ノートに促される形で、隊商は再び移動の準備を始めた。
「それにしても……」
「ん? どうした?」
 考え込むソフィアに気付いたリーダーは尋ねてみた。すると……
「グリフォンも撃退できたし、依頼は大成功ってことだよね?」
「あぁ、そう言っても過言じゃないだろう」
「じゃあ、この鉱物資源……追加の成功報酬ってことで少し分けて貰ったり……」
「それとこれとは話が別だ」
「だよね~」
 そのやり取りを見ていたハンターたちの間に笑いが起きた。
 こうして、ハンターたちの活躍によって、無事積荷は守られたのであった。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 玻璃から辿る手
    フランキスカ・コルウス(ka0626
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • 孤高の射撃手
    アバルト・ジンツァー(ka0895
    人間(蒼)|28才|男性|猟撃士

  • 橘 遥(ka1390
    人間(蒼)|21才|女性|疾影士

  • ミイシェ・カルミア(ka2125
    人間(紅)|18才|女性|魔術師

  • ノート(ka2372
    ドワーフ|30才|男性|闘狩人
  • 大工房
    ソフィア =リリィホルム(ka2383
    ドワーフ|14才|女性|機導師

  • 鎮西 八葉(ka2408
    人間(蒼)|17才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
アバルト・ジンツァー(ka0895
人間(リアルブルー)|28才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2014/07/03 00:31:24
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/06/28 23:48:41