ゲスト
(ka0000)
ハントorブレイク
マスター:岡本龍馬

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 6~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/03/24 12:00
- 完成日
- 2015/04/01 10:53
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
とある村の村役場。
そこではまさに今、村全体の死活問題について議論が行われているところだった。
「なんとかせねばなるまいな」
「それはわかっているが……」
「先延ばしにしてきたのが悪かったのじゃろうて」
皆なんとかしなければならないことは理解している。
しかし、高齢化の進むこの村の村人たちには成す術がなかった。
「まさかあの崖が崩れるとはな」
「この村の備蓄もそろそろ底が見え始めておる。なにか早急に……」
「それはわかっている!」
やらなければならないことは分かりきっているのに、それをどうやればいいのかわからない。そんなジレンマから、議論は殺伐とした雰囲気をまとっていた。
「いっそのこと、ゴブリンを殲滅するというのはどうだ?」
「誰がやるというんじゃ? この村にはもう老いぼれしかおらんのだぞ」
山に囲まれているこの村には、もともと二本の街道が通っていた。
けれどかれこれ十年ほど前のこと、そのうちの一本の街道沿いにゴブリンが住み着いてしまったのだ。
当初は村人たちでの駆除も考えたようなのだが、ゴブリンの数がその想像を上回っていたために断念されてしまったらしい。
それでも街道はもう一本ある。そして今まではそれを使ってきた。
だが……
「あの瓦礫をどけるっていうのか? それこそジジイには無理な話だろうさ」
「じゃがゴブリンと戦うよりは安全じゃろうて」
つい先日の大雨の日、残された一本の街道の崖が崩落。その瓦礫が道を塞いでしまったのだ。
馬車などは言うまでもなく通れず、人間ですら瓦礫を乗り越えて反対側へ行くのは至難の業である。
その上街道以外のところはほとんど人の手が入っていない山、山、山。
つまるところ、この村に物資を運び込むための経路はすべて断絶されてしまっていた。
「これはもうあやつらに頼るしか……」
「しかし今の我々に用意できる金などたかが知れている」
「じゃが望みはもうそれしかなかろう。このまま考えていても打開策など出んよ」
とうとう誰一人反論の言葉が浮かばず、役場が静寂に包まれた。
●
「……というわけなのですが」
依頼の概要を説明する受付嬢の隣には、その村の者らしき中年の男が立っていた。
おそらくその男はこの依頼を伝えるべく、無理して山を越えてきたのだろう。服のところどころが土で汚れている。
「現地までは彼が案内役を務めてくださるそうです。また、現状を鑑みても、救助が急を要することがうかがえますので、この依頼を受ける方はこちらまでお集まりください」
とある村の村役場。
そこではまさに今、村全体の死活問題について議論が行われているところだった。
「なんとかせねばなるまいな」
「それはわかっているが……」
「先延ばしにしてきたのが悪かったのじゃろうて」
皆なんとかしなければならないことは理解している。
しかし、高齢化の進むこの村の村人たちには成す術がなかった。
「まさかあの崖が崩れるとはな」
「この村の備蓄もそろそろ底が見え始めておる。なにか早急に……」
「それはわかっている!」
やらなければならないことは分かりきっているのに、それをどうやればいいのかわからない。そんなジレンマから、議論は殺伐とした雰囲気をまとっていた。
「いっそのこと、ゴブリンを殲滅するというのはどうだ?」
「誰がやるというんじゃ? この村にはもう老いぼれしかおらんのだぞ」
山に囲まれているこの村には、もともと二本の街道が通っていた。
けれどかれこれ十年ほど前のこと、そのうちの一本の街道沿いにゴブリンが住み着いてしまったのだ。
当初は村人たちでの駆除も考えたようなのだが、ゴブリンの数がその想像を上回っていたために断念されてしまったらしい。
それでも街道はもう一本ある。そして今まではそれを使ってきた。
だが……
「あの瓦礫をどけるっていうのか? それこそジジイには無理な話だろうさ」
「じゃがゴブリンと戦うよりは安全じゃろうて」
つい先日の大雨の日、残された一本の街道の崖が崩落。その瓦礫が道を塞いでしまったのだ。
馬車などは言うまでもなく通れず、人間ですら瓦礫を乗り越えて反対側へ行くのは至難の業である。
その上街道以外のところはほとんど人の手が入っていない山、山、山。
つまるところ、この村に物資を運び込むための経路はすべて断絶されてしまっていた。
「これはもうあやつらに頼るしか……」
「しかし今の我々に用意できる金などたかが知れている」
「じゃが望みはもうそれしかなかろう。このまま考えていても打開策など出んよ」
とうとう誰一人反論の言葉が浮かばず、役場が静寂に包まれた。
●
「……というわけなのですが」
依頼の概要を説明する受付嬢の隣には、その村の者らしき中年の男が立っていた。
おそらくその男はこの依頼を伝えるべく、無理して山を越えてきたのだろう。服のところどころが土で汚れている。
「現地までは彼が案内役を務めてくださるそうです。また、現状を鑑みても、救助が急を要することがうかがえますので、この依頼を受ける方はこちらまでお集まりください」
リプレイ本文
●ハント
瓦礫の山を乗り越えて村へ入った村組は、到着と同時にそれぞれの行動を開始する。
「食料だぜ」
「ありがとうごぜぇやす!」
幸いなことに負傷者はいなかったが、目に見えて村には物資が足りていない。
しかしそれを見越していた木岡 雄二(ka4308)とミオレスカ(ka3496)が情報収集の傍らで食糧を配布していく。
「ところで、ゴブリンについて何か知ってることはねーのか?」
「巣の位置や主な出現場所とかを知りたいのですが」
食糧を受け取った老人は視線を少し遠くへ向けたかと思うと、口を開き始めた。
「あれは確か……」
「収穫はどうかな?」
「村人たちが調べたのも昔のことだからな。今巣がどうなってるかはわからないらしい」
三十分ほどの聞き込みの後、再び集まった一行。
ロイド・ブラック(ka0408)の問いかけに、鹿島 雲雀(ka3706)が答える。
「統率は取れていなかったらしいぜ。……昔は」
「最近、誰も近づいていなかったことが仇となりましたね」
次いで雄二も報告をするが、如何せん情報が古い。ゴブリンという存在がいる以上、無理もないと言えばそれまでなのだが。ミオレスカが残念そうな声をもらす。
「とりあえずはその情報を基にするしかなさそうだ。それに周辺の地形情報についてはあらかた調べがついている。古くとも情報があるに越したことはないからな」
そう言いつつメモを広げるロイド。
そのメモには周辺の地形情報が書きつけられていた。
「……こんなもんだな」
報告に上がった情報を雲雀がメモに書き込むと、良い具合の周辺地図が完成する。
「ではこれを伝えますね」
ミオレスカは地図を受け取ると短伝話を取り出した。
言ってしまえばゴブリン以外の弊害が全くない街道を進む、街道組。
いよいよゴブリンの巣の付近、といったところで待機していると、レイ・T・ベッドフォード(ka2398)のもとにミオレスカからの通信が入った。
『大まかな出没地点は教えてもらえましたが、村の方が対処しようとしたのが十年前ということもあり、今現在どうなっているかは分からないそうです』
「そうですか……。了解しました。私たちのほうも偵察はしたのですが、情報通りゴブリンがいるということくらいしか」
鋭敏視覚とスコープを用いてルイーナ・アンナトラ(ka2669)がゴブリンたちの様子を観察したものの、ただ群れているだけ、という言葉が当てはまるという結論に至った。
リーダー格のような個体や、指揮系統が存在するような素振りは、現段階では確認されていない。
「こちらも間もなく準備が整いますので、また連絡します」
そこでミオレスカとの通信は終了した。
「その情報と大きなズレはないようだな」
「そのようだ」
通信によって手に入った情報と、周囲の状況を吟味していたバルバロス(ka2119)に弥勒 明影(ka0189)が相槌を打つ。
「となると、巣はあのあたりでしょうか?」
「流石に見えねぇな」
レイの示す先へスコープを向けるルイーナだったがこの距離からの確認は難しかったようだ。
「用意はいいですか?」
短伝話を片手にしたミオレスカの確認に、残りのメンバー全員が首を縦に振る。
「安心しろって。確りと退治してきてやるからさ」
心配そうな様子で集まってきていた村人たちも、雲雀の言葉で安心した素振りを見せた。
『……はい、はい。ええ、今から出発します。……?』
「どうしたんだ?」
通信の最後に疑問符を浮かべたミオレスカに雲雀が問う。
「いえ、なんでもないです」
そう返すミオレスカだったが、内心ではレイの言葉、作戦Bとはいったい何だろう。そんなことを考えていた。
「攻撃開始です」
ミオレスカから出発の連絡を受けたことをレイが報告すると、それを契機に街道組はゴブリンとの距離を一気に縮める。そして……
「ぎゃあぁぁ!」
ルイーナの初弾がゴブリンの一匹に命中したことで戦いの幕が切って落とされる。
目視できるゴブリンの数は二十五。それらが一気呵成に襲い掛かってくる。
「流石に数が多い、ですか……」
けれど指揮系統は存在しないようだ。
レイ、ルイーナそして明影。遠距離武器が三枚のこのチームにとって、統率なくバラバラの動きで迫ってくるゴブリンたちはいい的でしかない。
しかし。バラバラだからこそ、と言うべきか、弾の雨を潜り抜ける個体も何体かいる。
そうしてハンターたちの目前まで接近するゴブリンだったが、
「おらぁ!」
バルバロスの一振り、ギガースアックスのクラッシュブロウの前に一撃で沈められていく。
「手ごたえがなさすぎないか?」
すでにその半数を失ったゴブリンはじりじりと後退を始めている。ただの生存本能なのかもしれないが。
そんなゴブリンたちの様子を見つつ明影が煙草をくわえ直す。
そして、背を向け始めるゴブリンも出始めたころ。
「これも、生存競争の一環ってヤツだ。不服だってのなら、神でも恨みな!」
街道の反対側。ゴブリンたちにとって退路を断たれる形でハンターが現れた。
敗走の先頭を行っていたゴブリンが、雄二からの攻性強化を受けた雲雀のグレイシャーの餌食になる。
振り下ろされる強打によって一撃で沈められていくゴブリンたち。それを見て本能的にまずいとでも思ったのか、雲雀を避けるように敗走を始める。
しかしそこへ横薙ぎの一振り。後方へ抜けることにプレッシャーをかけられたゴブリンたちはたたらを踏み、苦渋の策としてそのターゲットを他のハンターへと向けた。
もともと指揮系統がなかったゴブリンたちにとって、場の混乱は命取り以外の何物でもない。
ゴブリンがロイドに向けて突撃をかけてくるが、接触の瞬間に回避行動をとる。
突如標的を失ったゴブリンは、回避前のロイドの後ろにいたゴブリンへ突っ込んでしまう。
……同士討ち。それがロイドの意図的なものであるなど露知らず、二体のゴブリンが取っ組み合いを始める。
「ぎゃっ……!」
ミオレスカの魔導拳銃から放たれるアウトレンジからの攻撃。
対抗策を持たないゴブリンは成す術なくその場に崩れ落ちていく。
レイの開戦の宣言。それから五分とたたずにゴブリンは最後の一匹にまで減っていた。
あえて生かしておいた最後の一匹。
その後を追うと、案の定巣まで案内してくれた。
そそくさと巣穴の中に逃げ込んでいくゴブリン。中からぎゃあぎゃあという声が聞こえているあたり、まだ何体か巣の中にいるのかもしれない。
ルイーナは巣穴の前に立ったかと思うとたいまつとブランデーを取り出した。
また、それを止める者はいない。
「それじゃ、遠慮なく」
注ぎ込まれるブランデー。そして。たいまつが投げ込まれる。
炎は一気に燃え広がり、巣穴を焼く。
「ぅぎゃぁああぁぁああ!」
巣の内側から断末魔の叫びが聞こえてくる。
「これで終わりだな」
巣穴へバルバロスの一振り。ギガースアックスがその入り口を崩壊させる。
中は火の海。さらに入り口は崩れ落ちた。
いつかこの先新たにゴブリンが住み着きでもしない限りは安泰とみて差し支えないだろう。
「侵略者は果たして、どちらの方なのでしょうね……」
そっとつぶやくレイの言葉は、青い空へと吸い込まれていった。
●ブレイク
無事にゴブリンの殲滅作業を終えて村に戻ってきたハンターたちは、一息つくと瓦礫の撤去作業へと取り掛かった。
村組のメンツにはもともとわかっていたことだが、あらためて見ると途方もない量の瓦礫が街道を塞いでいた。石に岩、樹などが土で固められている。まさに壁といった風貌だ。
「これ今日中に終わらないんじゃねーの? まったく出血大サービスだよな、じーさん達も運がいいねぇホント」
「なかなか苦労しそうではあるな」
手始めに、目につく岩をどけていくのだが、雄二のつぶやきに答えるように、流石のバルバロスも苦言を口にする。
「そーいや、ロイドの方の話はどうなったんだ? 人手を借りるってヤツ」
「さぁ、どうだろうか」
辺りを見回してもそれらしき人影がないことに雲雀が気づく。
わからない、といったニュアンスの言葉ではあったが、ロイドにはどこか自信があるようにも思えた。
その後作業は進みかれこれ三分の一程度の撤去が終了した時、一人の男が瓦礫を超えてやってきた。
「どうも。ロイド・ブラック殿の提案に賛同し、ご協力させていただきます」
軍服に身を包んだ男。その口ぶりから、ロイドの説得が成功していたことがうかがえる。
「ただ働きというのに、よく軍が動いたものだな」
「有事の際のために、と言われてしまっては、我々としても動かざるを得ませんよ」
当然とも言える明影の疑問に、こちらも当然、という体で軍の男が返答を返す。
なんでも彼らは山のふもとの街の軍隊であり、念には念を、ということらしい。
「よく来てくれた。よろしく頼んだ」
「ロイド・ブラック殿……交渉上手なようで」
作業の手を止めたロイドが話に混ざってくると、軍の男が苦笑いを浮かべた。
「問題は今目の前にある物のみならず。……将来も、考えておくべきだろうな。俺はそう言っただけだ」
ロイドも小さく笑いを浮かべて答える。
そこからは早かった。軍隊の力は凄まじく、残りの三分の二の瓦礫はみるみるうちに片づけられていく。
両側から片づけられていく瓦礫の山、それは砂の山にトンネルを作る作業にも似ていて。
今までそびえていた瓦礫の壁に穴が開き、向こう側の景色が映る。
「わぁ~!!」
誰からともなくあがる歓声。
時間がたつにつれて下がりつつあった士気も、そこをきっかけに跳ね上がった。
終わりが見えたことで一人一人の作業効率が格段に上がり、残りわずかとなった瓦礫は瞬く間に崩されていく。
大した時間もかけず塞がれていた街道からはきれいに瓦礫が撤去され、そこを通過するにあたる障害はきれいさっぱり取り除かれた。
「それでは私たちはこれで」
「もう帰るのか?」
「目的を達成したら即時撤退。我が軍の基本理念だ」
そう言い残し、軍隊は開通した街道を通る第一号となって帰っていった。
●村一番の別品さん
街道二本共の開通作業を終えてハンターたちが村に戻ると、その入り口にて村人たちが出迎えてくれる。
そして、その先頭にいたのは、一人の老婆だった。
「ほんとうにご苦労様でした」
老婆のお辞儀には気品が感じられる。
「これでたくさん人が通ることになるので、村も賑わいますね」
「そうなってくれるとありがたい限りですね」
ミオレスカの言葉に微笑みを返す老婆。
茜色に染まりだした空。その色を映した老婆の和かな笑みには、朽ちることのない美しさがあった。
瓦礫の山を乗り越えて村へ入った村組は、到着と同時にそれぞれの行動を開始する。
「食料だぜ」
「ありがとうごぜぇやす!」
幸いなことに負傷者はいなかったが、目に見えて村には物資が足りていない。
しかしそれを見越していた木岡 雄二(ka4308)とミオレスカ(ka3496)が情報収集の傍らで食糧を配布していく。
「ところで、ゴブリンについて何か知ってることはねーのか?」
「巣の位置や主な出現場所とかを知りたいのですが」
食糧を受け取った老人は視線を少し遠くへ向けたかと思うと、口を開き始めた。
「あれは確か……」
「収穫はどうかな?」
「村人たちが調べたのも昔のことだからな。今巣がどうなってるかはわからないらしい」
三十分ほどの聞き込みの後、再び集まった一行。
ロイド・ブラック(ka0408)の問いかけに、鹿島 雲雀(ka3706)が答える。
「統率は取れていなかったらしいぜ。……昔は」
「最近、誰も近づいていなかったことが仇となりましたね」
次いで雄二も報告をするが、如何せん情報が古い。ゴブリンという存在がいる以上、無理もないと言えばそれまでなのだが。ミオレスカが残念そうな声をもらす。
「とりあえずはその情報を基にするしかなさそうだ。それに周辺の地形情報についてはあらかた調べがついている。古くとも情報があるに越したことはないからな」
そう言いつつメモを広げるロイド。
そのメモには周辺の地形情報が書きつけられていた。
「……こんなもんだな」
報告に上がった情報を雲雀がメモに書き込むと、良い具合の周辺地図が完成する。
「ではこれを伝えますね」
ミオレスカは地図を受け取ると短伝話を取り出した。
言ってしまえばゴブリン以外の弊害が全くない街道を進む、街道組。
いよいよゴブリンの巣の付近、といったところで待機していると、レイ・T・ベッドフォード(ka2398)のもとにミオレスカからの通信が入った。
『大まかな出没地点は教えてもらえましたが、村の方が対処しようとしたのが十年前ということもあり、今現在どうなっているかは分からないそうです』
「そうですか……。了解しました。私たちのほうも偵察はしたのですが、情報通りゴブリンがいるということくらいしか」
鋭敏視覚とスコープを用いてルイーナ・アンナトラ(ka2669)がゴブリンたちの様子を観察したものの、ただ群れているだけ、という言葉が当てはまるという結論に至った。
リーダー格のような個体や、指揮系統が存在するような素振りは、現段階では確認されていない。
「こちらも間もなく準備が整いますので、また連絡します」
そこでミオレスカとの通信は終了した。
「その情報と大きなズレはないようだな」
「そのようだ」
通信によって手に入った情報と、周囲の状況を吟味していたバルバロス(ka2119)に弥勒 明影(ka0189)が相槌を打つ。
「となると、巣はあのあたりでしょうか?」
「流石に見えねぇな」
レイの示す先へスコープを向けるルイーナだったがこの距離からの確認は難しかったようだ。
「用意はいいですか?」
短伝話を片手にしたミオレスカの確認に、残りのメンバー全員が首を縦に振る。
「安心しろって。確りと退治してきてやるからさ」
心配そうな様子で集まってきていた村人たちも、雲雀の言葉で安心した素振りを見せた。
『……はい、はい。ええ、今から出発します。……?』
「どうしたんだ?」
通信の最後に疑問符を浮かべたミオレスカに雲雀が問う。
「いえ、なんでもないです」
そう返すミオレスカだったが、内心ではレイの言葉、作戦Bとはいったい何だろう。そんなことを考えていた。
「攻撃開始です」
ミオレスカから出発の連絡を受けたことをレイが報告すると、それを契機に街道組はゴブリンとの距離を一気に縮める。そして……
「ぎゃあぁぁ!」
ルイーナの初弾がゴブリンの一匹に命中したことで戦いの幕が切って落とされる。
目視できるゴブリンの数は二十五。それらが一気呵成に襲い掛かってくる。
「流石に数が多い、ですか……」
けれど指揮系統は存在しないようだ。
レイ、ルイーナそして明影。遠距離武器が三枚のこのチームにとって、統率なくバラバラの動きで迫ってくるゴブリンたちはいい的でしかない。
しかし。バラバラだからこそ、と言うべきか、弾の雨を潜り抜ける個体も何体かいる。
そうしてハンターたちの目前まで接近するゴブリンだったが、
「おらぁ!」
バルバロスの一振り、ギガースアックスのクラッシュブロウの前に一撃で沈められていく。
「手ごたえがなさすぎないか?」
すでにその半数を失ったゴブリンはじりじりと後退を始めている。ただの生存本能なのかもしれないが。
そんなゴブリンたちの様子を見つつ明影が煙草をくわえ直す。
そして、背を向け始めるゴブリンも出始めたころ。
「これも、生存競争の一環ってヤツだ。不服だってのなら、神でも恨みな!」
街道の反対側。ゴブリンたちにとって退路を断たれる形でハンターが現れた。
敗走の先頭を行っていたゴブリンが、雄二からの攻性強化を受けた雲雀のグレイシャーの餌食になる。
振り下ろされる強打によって一撃で沈められていくゴブリンたち。それを見て本能的にまずいとでも思ったのか、雲雀を避けるように敗走を始める。
しかしそこへ横薙ぎの一振り。後方へ抜けることにプレッシャーをかけられたゴブリンたちはたたらを踏み、苦渋の策としてそのターゲットを他のハンターへと向けた。
もともと指揮系統がなかったゴブリンたちにとって、場の混乱は命取り以外の何物でもない。
ゴブリンがロイドに向けて突撃をかけてくるが、接触の瞬間に回避行動をとる。
突如標的を失ったゴブリンは、回避前のロイドの後ろにいたゴブリンへ突っ込んでしまう。
……同士討ち。それがロイドの意図的なものであるなど露知らず、二体のゴブリンが取っ組み合いを始める。
「ぎゃっ……!」
ミオレスカの魔導拳銃から放たれるアウトレンジからの攻撃。
対抗策を持たないゴブリンは成す術なくその場に崩れ落ちていく。
レイの開戦の宣言。それから五分とたたずにゴブリンは最後の一匹にまで減っていた。
あえて生かしておいた最後の一匹。
その後を追うと、案の定巣まで案内してくれた。
そそくさと巣穴の中に逃げ込んでいくゴブリン。中からぎゃあぎゃあという声が聞こえているあたり、まだ何体か巣の中にいるのかもしれない。
ルイーナは巣穴の前に立ったかと思うとたいまつとブランデーを取り出した。
また、それを止める者はいない。
「それじゃ、遠慮なく」
注ぎ込まれるブランデー。そして。たいまつが投げ込まれる。
炎は一気に燃え広がり、巣穴を焼く。
「ぅぎゃぁああぁぁああ!」
巣の内側から断末魔の叫びが聞こえてくる。
「これで終わりだな」
巣穴へバルバロスの一振り。ギガースアックスがその入り口を崩壊させる。
中は火の海。さらに入り口は崩れ落ちた。
いつかこの先新たにゴブリンが住み着きでもしない限りは安泰とみて差し支えないだろう。
「侵略者は果たして、どちらの方なのでしょうね……」
そっとつぶやくレイの言葉は、青い空へと吸い込まれていった。
●ブレイク
無事にゴブリンの殲滅作業を終えて村に戻ってきたハンターたちは、一息つくと瓦礫の撤去作業へと取り掛かった。
村組のメンツにはもともとわかっていたことだが、あらためて見ると途方もない量の瓦礫が街道を塞いでいた。石に岩、樹などが土で固められている。まさに壁といった風貌だ。
「これ今日中に終わらないんじゃねーの? まったく出血大サービスだよな、じーさん達も運がいいねぇホント」
「なかなか苦労しそうではあるな」
手始めに、目につく岩をどけていくのだが、雄二のつぶやきに答えるように、流石のバルバロスも苦言を口にする。
「そーいや、ロイドの方の話はどうなったんだ? 人手を借りるってヤツ」
「さぁ、どうだろうか」
辺りを見回してもそれらしき人影がないことに雲雀が気づく。
わからない、といったニュアンスの言葉ではあったが、ロイドにはどこか自信があるようにも思えた。
その後作業は進みかれこれ三分の一程度の撤去が終了した時、一人の男が瓦礫を超えてやってきた。
「どうも。ロイド・ブラック殿の提案に賛同し、ご協力させていただきます」
軍服に身を包んだ男。その口ぶりから、ロイドの説得が成功していたことがうかがえる。
「ただ働きというのに、よく軍が動いたものだな」
「有事の際のために、と言われてしまっては、我々としても動かざるを得ませんよ」
当然とも言える明影の疑問に、こちらも当然、という体で軍の男が返答を返す。
なんでも彼らは山のふもとの街の軍隊であり、念には念を、ということらしい。
「よく来てくれた。よろしく頼んだ」
「ロイド・ブラック殿……交渉上手なようで」
作業の手を止めたロイドが話に混ざってくると、軍の男が苦笑いを浮かべた。
「問題は今目の前にある物のみならず。……将来も、考えておくべきだろうな。俺はそう言っただけだ」
ロイドも小さく笑いを浮かべて答える。
そこからは早かった。軍隊の力は凄まじく、残りの三分の二の瓦礫はみるみるうちに片づけられていく。
両側から片づけられていく瓦礫の山、それは砂の山にトンネルを作る作業にも似ていて。
今までそびえていた瓦礫の壁に穴が開き、向こう側の景色が映る。
「わぁ~!!」
誰からともなくあがる歓声。
時間がたつにつれて下がりつつあった士気も、そこをきっかけに跳ね上がった。
終わりが見えたことで一人一人の作業効率が格段に上がり、残りわずかとなった瓦礫は瞬く間に崩されていく。
大した時間もかけず塞がれていた街道からはきれいに瓦礫が撤去され、そこを通過するにあたる障害はきれいさっぱり取り除かれた。
「それでは私たちはこれで」
「もう帰るのか?」
「目的を達成したら即時撤退。我が軍の基本理念だ」
そう言い残し、軍隊は開通した街道を通る第一号となって帰っていった。
●村一番の別品さん
街道二本共の開通作業を終えてハンターたちが村に戻ると、その入り口にて村人たちが出迎えてくれる。
そして、その先頭にいたのは、一人の老婆だった。
「ほんとうにご苦労様でした」
老婆のお辞儀には気品が感じられる。
「これでたくさん人が通ることになるので、村も賑わいますね」
「そうなってくれるとありがたい限りですね」
ミオレスカの言葉に微笑みを返す老婆。
茜色に染まりだした空。その色を映した老婆の和かな笑みには、朽ちることのない美しさがあった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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![]() |
ハート♡ブレイク(偽) レイ・T・ベッドフォード(ka2398) 人間(リアルブルー)|26才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2015/03/23 23:49:38 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/03/20 02:51:54 |