山岳猟団〜ターニングポイント

マスター:有坂参八

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
4~7人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
6日
締切
2015/03/24 19:00
完成日
2015/04/06 08:08

このシナリオは3日間納期が延長されています。

みんなの思い出

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オープニング


 パシュパティ砦。
 帝国軍の命令に反し、山岳猟団は独断専行を以ってこの砦を占領した。
 朽ち果てた砦の城門で、その傭兵は一人、現れた老人を出迎えた。
「懐かしや。この砦が陥ちたは、儂が幾つの時だったか……白雪の吹き荒ぶ冬の日よ」
「昔話に興味はない」
 傭兵の男は、言い放った。
 鉄仮面の様な仏頂面から、感情は読み取れないが……二人にその必要は、無かった。
「面倒を掛けたかの」
「始末は付けて貰う」
 言葉さえ、それだけで十分。
 傭兵の言葉に、老人は苦笑した。


 シバ(kz0048)の帰還によって、久しぶりに全猟団員が揃うと、すぐに猟団の今後の方針を決める会議が始まった。
 の、だが……
「団長代……今何といった」
 帝国軍正規兵の最先任者ガーハートが、団長代・八重樫 敦(kz0056)に詰め寄った。
 八重樫は会議の冒頭で告げた言葉を、一言一句違えず繰り返す。
「帝国軍を離脱する。猟団は独立義勇軍となり、この砦を拠点として歪虚と戦う」
「何を……何を考えている! 帝国軍が黙っていないぞッ!」
「だからどうした」
 激昂するガーハート。対して八重樫は、取り乱さない。
「そも猟団に対する帝国からの扱いは、最初から何もかもがおかしかった。
 なぜ、統制もできない異人種異文化の混成部隊を作った。
 なぜ、その部隊を最前線に置きながら補給要請の九割以上を無視した。
 なぜ、その結果半数以上の団員が死に、あまつさえ指揮官さえ喪失した時に、正規兵ではなく部外者の傭兵を後任指揮官とした。
 全てが論外だ。今更になって奴らが口を挟んだとして、聞く耳持つ道理など無い」
「……!」
 恐ろしいことに……八重樫が語った内容は、誇張では、ない。
 団員達の脳裏には悪夢が蘇る。劣悪な運用環境、歪虚との闘い、その中で帝国人、部族民、傭兵……多くの戦士が、塵芥の如く死んで行った。
 そこに、シバが口をはさむ。
「今、儂らは市井の商人と独自の取引をし、兵站を確保しておる。これは重い軍規違反だが……帝国軍から正規の補給は未だになく、この不正を行わなければ、我等の補給は途絶えすぐにも死に絶えよう。この意味が、判るな」
「シバ……これは、お前の入れ知恵なのか。この狂気沙汰は!」
 生え抜きの帝国軍人が、部族の投降者を睨んだ。
「そも発端は、お前が帝国軍人でありながら部族へ肩入れした事ではないか。あんな事さえしなければ……」
「あんな事さえしなければ……帝国軍がオイマト族を救っていたか、ハンターと共に?
 そして帝国軍が、猟団に対する数々の仕打ちを改め、『使える駒』として取り立てたか?
 では今からでも遅くはない、責任が儂にあるというなら、この老いぼれを好きに処するがいい。儂は、轡を並べたお主達をは一切恨まぬ」
 老人の自嘲に、ガーハートは、言葉を詰まらせた。
 今、シバを欠けば、あるいは猟団は崩壊するだろう。ようやく本来の目的に進み始めた、この組織が。
「お前は卑怯者だ……私達正規兵を板挟みにして、何が面白い……!」
「すまぬ。しかし恥知らずを承知の上で、敢えて言う。儂を、信じろ。我等の大義を忘れるな」
 『歪虚を討ち、人類の守護者たらん』。
 その理念のもとに猟団は結成され、そして今日まで闘い抜いてきた。
 国も人種も無く、共に屍を超え、死さえ名誉として殉ずる。それは……理想であり、信念であり、妄執。
 ガーハートら帝国軍正規兵は……苦しそうに迷い、惑って、団員達を見た。
 立場は違えど、共に闘った仲間を。
「『部族の文化も生活も、全部捨てて帝国人になりゃ保護してやる』……って言う奴らの、現実がコレだ。それが全てだぁな」
 と、辺境部族出身のある団員が、呟く。
「みんなで戦えば歪虚に勝てるから猟団に来た。もっと歪虚と沢山戦って、勝てるようになるなら、それが正しいって事だろ」
 そう語るのは、ドワーフ達だ。
「俺達ゃ金で戦うクズ傭兵だが、そんでも一番は歪虚をぶっ殺したいってヤツばかりさ。八重樫のオヤッサンは、元々そういうヤツを選んでた」
 傭兵達にも迷いはない。
 だが……
「お前たちは……それでいいかもしれん。だが……だが、私達は……」
 ーー私達は、帝国軍人だ。
 その言葉を……正規兵の誰一人、紡ぐことができなかった。
 揺らぐ想いが、あったからこそ。
「じき、要塞から帝国軍の審問隊が来るだろう。会談を設け、猟団は独立を宣言する」
 恐ろしい計画を淡々と告げる八重樫の目に、迷いはない。
 あるのは『歪虚討つべし』という意思だけ。
「後は、お前達の意思を尊重する。好きに決めろ」
 そう八重樫が告げると、最後にガーハート達正規兵は、その場に同席していたハンターを見た。
 ……これまで幾度も山岳猟団の運命を変えてきた、ハンター達を。


「殺すべきです。あの男を」
 要塞ノアーラ・クンタウ、その執務室。
 その女性は、要塞管理者のヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)にそう告げた。
 辺境帝国軍の最高指揮官は、しかし、回答の言葉を濁した。
「……そう、想いますか。メイ」
 メイ・リー・スー。
 辺境帝国軍の規律維持を目的とした審問部隊『ベヨネッテ・シュナイダー』の審問官であるその女性は、氷の様な表情で答える。
「背信、扇動、命令違反、横領。粛清に値する条件がこれだけ揃って何を迷うのです。既に連中は帝国軍に反旗を翻し、皇帝陛下の威信を傷つけた。それは……奴らの上官である貴方の立場が、傷つくという意味でもある。厳然たる秩序を、示さねばなりません」
「……」
 ヴェルナーは、答えなかった。迷っているのか、あるいは。
 メイは、畳み掛けるように言葉を続けた。
「貴方はこんな蛮族の土地に押し込められていい人間ではない。貴方も『膿』に気づいていない訳ではないでしょう。今、皇帝の周りには……」
「メイ。おやめなさい」
 ヴェルナーは、掌を翳しメイの失言を諌めた。
 懐刀とも言える部下が、皇帝さえ差し置いて自分に殉じている事を、ヴェルナーは気づいていた。
 だからこそ……危険なその言葉の続きを、切った。
 そして、だからこそ。メイは再び、口を開いた。
「……ではベヨネッテ・シュナイダーが、猟団を『審問』します。その上で奴らの言に僅かたりとも落ち度あらば、審問隊の権限に基づきあの男を処分する。宜しいですね」
「貴方に委ねます……どうか、慎重かつ、公正な判断を」
 沈黙の後、ヴェルナーは結論を、審問官に委ねた。
 自分が行くことは出来なかったのだ。
 やるべきことがあった。『膿』の存在と、その正体……
「……ヴェルナー・ブロスフェルト。誰にも貴方を傷つけさせない。その為に、私達の手が濯げぬ血に染まろうとも」
 メイはそう言い残し、執務室を後にした。
 腹心の部下の背中を見送り、ヴェルナーは一人、虚空を見つめて微かな溜息をついた。

リプレイ本文


 要塞ノアーラ・クンタウから来た八人の審問隊がパシュパティ砦に近づいてくる姿を、山岳猟団の帝国軍正規兵達はその屋上、微かに原型を留めた物見台から、見下ろしていた。
 その表情は険しく、彼等は一言も、互いに言葉を交わさない。
 彼等と共に物見台に上がったラシュディア・シュタインバーグ(ka1779)は、その重苦しい沈黙の中……しかし、あえて彼等に声を掛けた。
「皆さんは……何の為に、戦っているのですか」
 突然に切りだされた問に、正規兵達の視線が、ラシュディアに集中した。彼は、構わず続けた。
「……俺は辺境出身で、村を歪虚に滅ぼされました。その時はまだ子供で……大人達に言われるまま逃げたのが、仕方ないとは言え、悔しくて仕方なかった。
 俺は、その復讐の為に戦っています。ありがちな、話ですけど」
「卑屈になる事は無い。立派な、正当な理由だ」
 そう言ったのは、正規兵の最先任者、ガーハートだった。ラシュディアと比べれば親子程も歳が離れた、古参兵だ。
「貴方達は……」
 ラシュディアの視線を見つめ返し、ガーハートは、答えた。
「『歪虚を討ち、人類の守護者足らん』。死んだ前団長が、その大義を果たす為猟団を作った。立場を超え、思想を超え、共に力を合わせて戦う為に」
「……じゃあ、貴方達も」
「そうだ。猟団内の帝国軍正規兵は、ただ命令で配属されただけではない。志願したんだ。人類に殉じる理想に、共感してな」
「『人類に』?」
「そうだ。『人類に』だ」
 微かな違和感と、意味深なやりとり。ラシュディアは、それ以上深くは、踏み込まなかった。
「貴方達がどうするか、俺に決める権利はありません。けど……俺は、信じています。俺達は志を同じくする仲間であり、だからこそ……共に闘えると」
 即応員という立場であるとはいえ、ラシュディアも山岳猟団の団員である。
 その彼の言葉に、ガーハート達は、厳かな沈黙を以て返答した。


 一方、パシュパティ砦最上階の広間では、審問隊の到着を予期して会談の準備が進められ、徐々に参加者の面々も、そこに揃いつつあった。
「ったく、爺さん、一体何考えてんだ。今までやって来た事から考えりゃ危うい立場だってのは解ってんだろーに」
 紫月・海斗(ka0788)は、呆れ半分・心配半分といった具合で、傍らのシバに切り出した。
 多くの紆余曲折があったといえ、この状況を作り出したのは、大部分はシバの仕業と言って差し支えないだろう。
 そのシバは、穏やかに、苦笑を漏らす。
「やらねばならん事がある。儂は、自分が必要だと信ずる事以外は一切しておらんよ」
「……また、死ぬ気じゃねーだろーな?」
 ふと、鋭くなる海斗の瞳。シバも、声を一段低くした。
「死ねぬよ。お主らハンターが、そう願ってくれた命ゆえな」
「頼むぜ、おい。あんたの事だから何か考えてるんだろうが、振り回される身になってくれよ」
「かかか、すまぬな。だが、こんな……こんな糞下らん茶番はもう終わる。もう少しだけ、御前さん方の力と心を貸しておくれ」
 何か、憂いを持っている様なシバに対して……海斗は、深くは踏み込まなかった。
 率直な本心を、素直に見せてくる相手ではないのだから。
 そこに、何やら忙しそうに立ち回っていた天竜寺 詩(ka0396)が、通りかかる。
「シバさん、机にテーブルクロス敷いてもいいかな。まだあんまり綺麗じゃなから、少しでも見栄えよくしたいんだけど……」
 彼女は先程から、砦の厨房……だった場所を借りて何やら作業をしていた。思う所があるらしい。
「おう、是非やっておくれ。男ばかりの猟団員では気も回らんのでな」
 シバは頷くと海斗と共に横に退け、詩の通り道を空ける。
 殺風景だった広間は、会談の場としての体裁を整えつつあった。


 パシュパティ砦の正門の直前に来て、審問隊の指揮官メイ・リー・スーは足を止めた。
 正門の横に立っていたのは、紫髪の女性……Charlotte・V・K(ka0468)だった。
 Charlotteはメイの姿を認めると、彼女を呼び止めて歩み寄り、ある提案を申し出た。
「提案?」
「そう。私は帝国ユニオンの人間。帝国の利益を優先し、行動する」
「……」
 Charlotteの言葉に、審問官は一切感情的な反応を見せなかった。
 交わされる、カミソリの様な鋭い視線。二人は会話を続けた。
 今回の審問の、最大の焦点となるであろう、『その男』の処分について。
「聖地奪還戦を利用するのはどうだろうか。拠点とする砦から目と鼻の先の歪虚の支配地域と化したマギア砦の完全奪還……いや、その総指揮官ガエルソトの首級を上げる事が出来れば、シバくんの罪状の大幅緩和と帝国の非を認めて、支援を確約する」
「…………どうぞ、続けて」
 メイの無表情は、変わらない。Charlotteは続けた。
「それが出来なければ不正の全責任をシバくんに負わせて、スケープゴートにして処罰する。過去に犯したシバくんの背信行為はまったくの私情だ。これは断じて許すわけにはいかず、厳罰に処すべきだ。」
「そうですね」
「大規模作戦である聖地の奪還戦の立案者がこのシバくん。今断罪すれば、作戦に合意したルミナくん…皇帝陛下の顔に泥を塗る事になる。このタイミングは、偶然ではないだろう。非常にクレバーだ」
 Charlotteは拳を握りながら、吐き捨てる様に言った。対する審問官は、彫像の如く、微動だにしない。
「気に食わないね。非常に腹立たしい。このままうやむやには、してはいけない。
 だが……彼を一度泳がせて置いて、その成否によって処分を決めれば、君たちが損をすることは無い。違うかい?」
 聞き終えたメイは、Charlotteを見定める様に目を細め、彼女を見つめた。
 長い沈黙。そして、回答。
「貴方の企図には、審問隊のそれと乖離があります。ですが、今後の審問でそれを提案する事を止めはしません。帝国の利益を優先するというのであれば、その行動はお任せしますし、状況と照らしあわせて有効であると判断すれば、私達も同調しましょう」
 淡々と告げると、メイはすぐにその場を去った。
 一人残されたCharlotteは……じっと、その背を見送った。
 

 パシュパティ砦に入った審問隊を、八重樫らは淡々と迎え入れ、砦最上階の広間へと案内した。
 その場に揃ったのは猟団、審問隊がそれぞれ八人、ハンターが七人。のべ、二十三名。
 ハンターは兎も角として、猟団と審問隊が纏う空気は、およそ会談とは思えぬものだった。
 石造りの円卓を囲む様にして座った彼等は皆、互いの動きを明らかに警戒している。
 多くの者が、机の下で銃や剣に手を掛けているのに気づいて、フラメディア・イリジア(ka2604)は背中に電流が走る様な感覚を覚えた。
(このままじゃと、最悪血を見ることになるかのう)
 表向きは兎も角、現実を見れば両者は、互いを敵と認識している。
 ひとつ間違えれば、即座に最悪の結果が訪れる。
 その結末を回避する方法はあるか? フラメディアは、思考を巡らせ始めた。

 先に口を開いたのは、審問隊のメイだった。
「前置きは不要でしょう。山岳猟団は命令違反を犯しました。これに対し審問隊は然るべき処分を行います。何か申開きはありますか」
 有無を言わせぬ口調。
 八重樫は、円卓の真向かいに座した八重樫もまた、強く静かに応える。
「山岳猟団は既に帝国軍を離脱した。山岳猟団が帝国軍の指揮統制を受ける能動的理由、及び正当性は、もはや存在しない」
 瞬間、室内を殺気が満たす。
 先に動いたのは審問隊だが、猟団員も殆ど同時に動いていた。
 メイが腰の拳銃を、今まさに抜こうとしたその瞬間……
「待ちな」
 動きを止めた猟団、審問隊の双方が声の主に視線を注ぐ。
 直前の制止は、ハンター側から放たれた物だった。
 声の主、アーヴィン(ka3383)は、不機嫌そうに姿勢を崩したまま椅子に腰掛け、彼等の視線を真っ向から受け止めた。
「ちっ……激戦区での仕事にありつけると思ったらこのザマか。本当に歪虚倒す気あんのかよ」
 苛立ちを露わに、アーヴィンは言い放つ。
 なるべく注意を、自分自身に引きつける必要があった。
 そうしなければ、間違いなく次の瞬間にはこの場の誰かが死ぬ。
 訪れた重い沈黙を、フラメディアが努めて穏やかな声色で破った。
「いきなり力に訴えるとは、いささか乱暴ではないかのう」
「審問隊にはその義務と権利があり、山岳猟団はそれに値する罪を認めました。当然の行動です」
 メイの言葉に、ふむ……と、フラメディアが嘆息する。
「まずは、責任の所在をはっきりさせる必要があるのでは」
 それまでじっと黙っていたゲルト・フォン・B(ka3222)が、メイを見つめて言った。
「貴方達に全く落ち度が無いとは、思えない。このままならば心象としては、帝国が悪く見える」
「聞き捨てなりませんが」眉を潜めるメイ。
「まず、帝国軍がまともな輜重や補給をできていなかったのは事実。外人部隊を運用できない国の下で戦うより、独立すれば余程まともに戦える、これも事実。
 猟団のヴォイドを効率的に倒したいという思想も自分勝手な目的ではなく、道理が通っている」
 滔々と語ったゲルトに対し、メイは一呼吸置いてから、答えた。
「貴方の論は猟団が処分を免れる理由に成り得ません。彼等は事実として軍規を侵し、それを認めた。
 ならば、それを処罰しなければ、帝国軍の秩序を乱します」
「……」
 その言葉にぴくりと反応したのは、Charlotteだ。
 先程のやりとりを踏まえて尚、メイは猟団の処分を全くためらっていない……ように見えた。
 それが皇帝自身の意向を否定する可能性があるにも関わらず。
(……この女は何を考えている?)
 逡巡するCharlotteを他所に、今度は海斗が口を開く。
「まぁ……組織ってモンの面倒なトコでよ。上からの命令には従うべし、みてぇなのがルールとして有ったりすんだよな。
 例え理不尽でも逆らえば懲罰だ。その辺は爺さん達も解った上で所属してんだろ?」
「無論。今の状況は、軍規を破るリスクと、それをせずに使い潰されるリスクを天秤に掛けた結果だ」
 海斗に答えたのは八重樫。
 そこに、アーヴィンが続く。
「つまりよ……処罰ってのは抑止力だ。こんな痛いことはされたくない……ってな。
 俺は別に帝国の人間じゃないしな。仕事をしたいならすれば良いさ」
「言われなくとも……」
「でも、だ。まあ老婆心で言うなら、処罰は待ったほうが良いと思うぜ
 あんたらがこの管轄内での基準になるってんなら、次に同じ状況になったやつは、不正してまで戦おうと思うことはないだろう。
 じゃあどうなるか。不正せず死に絶えるか、死ぬ前に脱走するか、処罰される前に独立するか、だ。
 なんせ、こうやって真面目に手順踏んでる連中が処罰されて、不正はほったらかしだからなあ」
「……」
 メイは何かの言葉を呑み込み、押し黙る。
「そもそも、帝国に同化しようとする部族はいなくなるだろう。ハンターがこんなに居るんだ、噂はぱっと広がるだろうぜ。
 秩序をつくるはずのあんたらが、真面目な帝国の軍人を死に至らしめ、悪事を誘発することになる。
 そこはどうするんだい?」
「その問題提起は正しいかもしれませんが、猟団の罪を軽減する理由には成り得ません」
「そういうなら、ここで首謀者全員皆殺しにしたらいい。見届けてやっからさ」
「…………宜しい。そこまで言うならば、ハンターの弁を伺いましょう」
 メイの語調は明らかに苛立っていたが……彼女はひとまず力を抜いて、姿勢を直した。
 他の審問官もそれに倣い、次に猟団員が、それぞれの武器から手を離す。
 会談の空気が一度仕切り直しとなると、見計らっていたように詩が厨房の奥から現れ、猟団員達と共になにやら皿を運んで来た。
 皿に盛られているのは、人参や胡瓜を細長く切った野菜スティック。
 そこに、詩の手製の、マヨネーズが添えられている。
「お話が長引いたら、お腹がすくでしょうから。どうぞ、召し上がって下さい」
「この料理が安全だと証明する手段がありませんが」
「誓って、料理に何かしたりはしませんよ」
 無礼極まるメイの発言に対し、詩は迷わず、一切の屈託ない微笑みと共に答えた。
 それこそが、最大の証明と言わんばかりの、堂々たる態度で。
「不安なら俺の皿と交換してもいいんだぜ、審問官さんよ」
「……結構です。頂きましょう」
 海斗の申し出を断り、メイ達審問官は詩の野菜スティックを、少しずつ食べ始めた。
「改めて、問題点を洗い出してみましょうか」
 そう切り出したゲルトは人参を齧りながら、ほんの少し物足りなさそうな表情を浮かべている。
 これに肉か麦酒でも添えられていれば最高なのだが……と口に出さないのは、時と場所を弁えているが故に。 
 気を取り直して、会談は再開される。
「査問も何も、そもそもの前提、土台、そこが間違ったところから始めっておるということは、良いかの?」
「仰る意味を理解できませんが」
 と、フラメディアに対しメイ。
「統率のとれない混合部隊を作り、さらに補給はなく、最前線送りとなれば、暗に島流し、死刑を言い渡しているようなものじゃろうて。であれば、彼等が生きようと足掻きあらゆる手段に訴えるも自然の理。
 何よりも……そもそもそのように信頼せぬ相手に、情報を教えよう等と思うかの? 審問隊はシバ殿の背信に、随分な処罰を行ったようじゃが……」
「やはり、貴方達は勘違いなさっていますね。信頼がどうという話ではない。
 帝国の人民は皇帝の所有物なのです。貴方はモノとその所有者の間に信頼関係を説くのですか?」
 メイの態度に、流石にフラメディアも、目を見開いた。
 いや、その場の誰もが、だ。
 露悪的な態度で天邪鬼を誘おうとしたアーヴィンでさえ、メイの論理には身を引かせている。
「……本気で言っているんですか」
「冗談で言っている様に見えますか」
 声を低くしたラシュディアに、メイは涼しい顔で回答する。
「だが、もしも仮にそうだとして、帝国は『所有物』を管理しきれていませんよ」
 比較的冷静さを保っていたゲルトが、淡々と突っ込んだ。
「リアルブルーのローマ帝国だって領土が広がりすぎて東西別々に治めようとしたあたりから崩壊した。
 文化も習慣も辺境と違いすぎるし、補給線が伸びきってどうせまともに管理できないならいっそ分けたほうがマシだと思うのですけど……なぜ、彼等をあくまで配下に入れたいのか?
 それをまず、私達ハンターにしっかり説明してほしいです」
「ゾンネンシュトラール帝国は人類の盾なのです。
 辺境部族は弱く、現に自分自身の力で領土の防衛さえできない。それでも生存を望むのなら、強者に跪き従うのは当然の道理でしょう」
「暴論じゃろう、それは」
「……」
 半ば呆れ始めたフラメディアの隣で、Charlotteは苛立たしげに、指で机を打ち始める。
 メイの言葉は、大小複数の矛盾をはらんでいる。
 だが、それでいてこの女の態度はなんだ。なぜこうも居直れる。
「だったら審問官さんよ、聞かせてもらうぜ。
 この件を裁くと言うなら当然調べて有るだろうが、爺さん達にマトモな補給が来なかった理由は何だい?
 救援要請が無視された理由は何だい? 与えられた任務に正当性は有ったのかい?」
 海斗に詰め寄られ、メイはしかし鉄面皮。
「答える義務はありません」
「んなわけ無ぇだろう、答えて貰うぜ。答えられねぇならそれは職務怠慢ってヤツだろ。
 もし、感情だけで決めようと言うならば、爺さん達に分が有る」
 海斗に続き、アーヴィンとCharlotteも疑問を口にする。
「どうも、あんたらちぐはぐだぜ。人類の盾とか謳ってる奴らがどうして、自分の『所有物』を使い潰す様な事をする?」
「……メイ君。君は何かを、隠しているのではないだろうね?」
 メイは……答えない。
 代わりに口を開いたのは……それまで沈黙し続けていた、シバだった。
「猟団への補給停止命令はウランゲル皇帝自身によるもの。即ち……『勅命』なのじゃよ」

「……!?」「何だと」「馬鹿な!」

 その場の誰もがーー審問隊のメイでさえ、瞳を見開き、それぞれに声を上げた。
「審問隊は隠したかった様だがな。猟団が知らぬままとでも思うたか」
「馬鹿な、ルミナ君が……帝国の皇帝がそんな命令を出すものか!」
 Charlotteが、言い放った。それほどに、国内での信頼は厚い指導者なのだ。それが、何故。
「……本当に、そうなのか。メイ君」
 Charlotteに睨まれ、メイは渋い顔で頷いた。
「お疑いであれば、勅書をお見せする事もできますが」
「なぜ隠した!」
「その行動根拠が正統であるからこそ、審問隊はこの事実を伏せたのじゃよ。
 他者に『従え』と脅迫する国家の皇帝自ら、従った者を、協力者や傭兵さえ死地死戦に追い込む暴虐……これが知れ渡ればハンターの言う様に、今後はあらゆる民族が帝国の支配を拒む。信用さえせぬ」
「貴方に憶測を述べる権利はありません」
 口を挟んだシバに、メイは即座に反応した。
「……みんな、一度落ち着いて、話を整理しませんか」
 それまでじっと周囲のやりとりを聞いていたラシュディアの提案。
 そこで、一度全員が、深く息を付いた。
「やれやれ、前提が覆ってしまったのう」と、フラメディア。
「そうだな、少し纏めるか。
 俺たち達は『帝国側も何らかの不正や落ち度がある』という前提でこの事件を観ていた。
 だが、そうではなく、帝国軍側の行動は、全てが勅命に則った正統なものだった……」
 アーヴィンの言葉に、ゲルトが続く。
「だから、帝国軍は猟団を規則に則り処分しようとしている。
 一方猟団は、国ぐるみで自分達をぞんざいに扱う帝国を見限ろうとしていると、そういう状況ですね」
「でも……」
 詩が、か細く吐息を漏らして、言葉を絞り出す。
「帝国の命令が正統なものなら、尚の事。シバさんは……不正の責任を、取らなくちゃいけないと思う。
 どんな理由があれ結果は手段を正当化しない。それを認めたら規則の意味が無くなる。そう思うから」
 詩の視線を、シバはまっすぐに受け止めた。
「……詩よ、訊かせておくれ。
 不正な独自の補給を行わねば、猟団は間違いなく崩壊した。
 そして今、その処分を受けるとすれば、審問隊は儂に死を以て償わせるであろう。それでもなお、責任を取るべきだと思うか」
 詩は…………頷いた。
 シバは、笑った。
「そうか。ならばよい」
「でも」
 すぐさま、詩はメイに向き直る。
「何故本来行うべき補給がきちんと行われなかったのか……皇帝の命令っていうだけじゃ、理由になってない。
 メイさん達はその事について納得いく説明をするべきだし、それが出来ないなら、猟団を責める資格はないと思う」
 じっと聴くメイの視線は冷たい。
 詩は、自分の足から伝わる震えを感じ取った。
 ここから一つでも間違えれば、シバは死ぬ。自分とてどうなるかは判らない。
 それでもーー伝えなければならなかった。事件に関わった者として。
 メイは目を伏せ、数秒沈黙した後……しかし、冷徹な答えを返した。
「貴方が皇帝の御意思を伺う必要も、権利もありません。
 『どんな理由があれ』結果は手段を正当化しないのでしょう。理由を知ろうが知るまいが、同じことです」
「言えない理由があるのですか?」
 ラシュディアの問に、メイは黙った。
「最初から、微かに疑っておったのじゃが……あるいは、歪虚の仕業ではなかろうな? 人を惑わす、なにがしかが噛んでおると」
 フラメディアの言葉に、メイはぴくりと反応し……横目で一度彼女を見た。
 再び重い沈黙を挟んでから、ゆっくりと口を開く。
「『帝国の内部に歪虚など、居る訳がありません。あるとすれば、人間の行いのみ』」
 それは、極めて遠回しな、フラメディアの問への回答だった。
 詩が、はっとなって身を乗り出す。
「ひょっとして……メイさん達も命令の理由は判らなくて、おかしいと思っていたんじゃ。だって、いくら皇帝の命令だからって、酷すぎるもの。皇帝が皆に慕わてる人なら、こんな事しないと思う。
 それに……そうじゃなければ、メイさん達がそれを態々隠す理由も無いんじゃない?」
「メイ君、答えたまえ」
 Charlotteが、苛立つ様に回答を促した。
 メイや、他の審問官は答えない。だが、初めて、戸惑うような表情を見せた。
「先程、『人間のみ』……と言うたが」
「帝国の内部で、なんか命令に齟齬が出てるとか、なのか?」
 焦れたフラメディアの呟きに、海斗が腕組みして続けた。
 そして、メイ。
「『それは私達が疑うべきことではありません。少なくとも、表向きにはあってはならない』」
「……なるほどね」
 と、アーヴィン。
「猟団への補給停止は、皇帝直々の命令。それは明らかに不自然な判断だが、勅命であれば異を唱える事はできない……と」
 一つ一つ思考を整理するラシュディアを尻目に、今度は八重樫が口を開いた。
「帝国本国と辺境帝国軍の間の連絡体制に何らかの問題があることは猟団も察していた。
 だからこそ、意思決定と伝達が不明瞭な組織に命を預ける事はできん。独立には、その意味もある」
「メイさん達も補給停止命令の意図をつかめて居ないとなると……要塞管理者のヴェルナーさんや審問隊は、板挟みの立場になりますね。明らかにおかしな命令を、しかし完全に遂行しなければならない。自分達が、規律を守る部隊であればこそ」
 ゲルトが畳み掛ける。
 メイは、それらのやりとりに対し、沈黙を貫いた。
 許されないのだ。本来皇帝の作った秩序を守る為にある彼等が、皇帝を疑い、また異を唱える事など。
 例え、それがどれほどに不条理をはらんだ命令であっても。
「猟団が窮状にあったとはいえ、ルミナ君からの正式な命令でそうなっていたのなら、少なくともシバ君の行いには弁解の仕様がない。厳罰に処すべきだ」
「けどよ。そうすりゃ部族どころか、もう他のどの民族も帝国に従わないぜ。ありったけ理不尽背負わせた上で、従わなきゃ死刑って事だからな」
 Charlotteの言葉を、海斗が制した。そして彼は、メイを睨みつける。
「兵は道具でも駒でもない、人間だ。生かす為に使うなら大いに結構、喜んで働こう。
 だが殺す為に使う? 『ふざけるな、従えるかバカ野郎』……って、そりゃ当然、そう思うよな」
 そこまで来て、ハンター達は気づく。
 審問隊と山岳猟団、両者の利益は完全に矛盾するのだ。
 山岳猟団の独立をただ認めれば、それは審問隊の失態であり、彼等はヴェルナー共々相応のペナルティを負うだろう。
 しかし、円満な解決の為に猟団に何らかの責任を追わせようとすれば、今度はシバが死が免れず、それ故に帝国の信頼も傷つきかねない。
「なんとか帝国のメンツを潰さない形で、猟団が独立できないかと考えていましたが……」
 ラシュディアが、苦い顔で唸った。
「書類上は、帝国所属のままでいておいて、これからは猟団の方針に配慮した、形だけの「命令」を出すということはできませんか。
 猟団は、帝国からの『補給物資』を条件に対応する……等という関係が保てれば……」
「事実上不可能だ。経緯を踏まえれば、補給を帝国軍に依存する事は、猟団にとってリスク以外の何物でもない。
 猟団からは、帝国に何も求めん。全猟団員を帝国軍より除籍し、今後一切の干渉と妨害を行わないのであればそれでいい」
 ラシュディアの提案を、八重樫は拒んだが、ラシュディアは食い下がった。
 このままでは、最悪の自体が起こりかねない。
「といって、貴方達を止める方法が武力しかなくなれば、お互いにとって不幸な結果となるはずです。人類同士で戦う訳にはいかないでしょう」
「……無論だ」
 そう言って、八重樫は立ち上がった。
「団長代……?」
「だからこそ、力の行使は最小限で済ます。『構え』」
 八重樫の一言で、シバやガーハートを含む猟団員の全員が、瞬時に銃や弓を構えた。
 対面の、審問隊に向けて。
「どういうつもりですか」再び氷の表情を見せるメイ。
「『山岳猟団は圧倒的武力で審問隊を脅し、会談を拒んで追い返した』。これで言い分が立つだろう、要塞に帰れ」
「帝国と事を構えるつもりなのですか」
「互いにそれを望まない事は、はっきりした筈だ。ならば、後はお前達がその結果を回避できるよう行動しろ」
 それが、会談で八重樫が発した最後の言葉となった。
 やがて審問隊が、静かに席を発ち、部屋を後にすると……ハンターも、それに続いた。


「メイさん。さっきのマヨネーズ、美味しかったですか?」
「?」
 砦を出る直前、詩から徐ろに問われ、メイは首をかしげた。
「マヨネーズってお酢と油、本来混ざらない物を混ぜて作るんだよね。二つを結びつける為に、あえて入れるのが、卵」
「……」
「今の猟団と帝国は水と油だと思う。シバさんは二つを結びつける卵になれる人だと私は思うんだ。だから……」
 詩の言葉を、メイは黙って聞いていた。
 氷の様な視線。だが、そこに敵意は無い……様に、思えた。
「卵は、すぐに傷む。貴女が思うより、危険な食べ物ですよ」と、メイ。
「だからこそ、気を使ってあげなきゃ。どんな食材だって、ぞんざいに扱ったら台無しだけど、丁寧に扱えば美味しい料理になるんだよ」
「…………覚えておきましょう」
 時間にしてみれば短くとも、詩にとっては長く感じるやりとりだった。
 メイは彼女に一礼し、踵を返そうしたが……
「まて、メイ・リー・スー」
 メイを呼び止めたのは、会談にも同席していた正規兵ガーハートだった。
「これは国へ返す。持っていけ」
 そう言って彼が指さしたのは、一台の馬車。荷台には鎧や剣等、帝国軍制式の装備だけが、僅かばかりに積まれている。
「私達は道を決めた。国ではなく、信念に殉ずると」
「ガーハートさん……」
 ラシュディアが、帝国軍の正規兵『だった』男を見つめると、彼は微かに笑った。
 帝国軍から支給された、全ての物資を返納する、その意味……
 だが、メイは首を横に振った。
「貴方達はまだ『審問中』の扱いです。正式な処遇が決まるまで、支給の装備は自分で管理なさい」
 彼女なりに、可能性を繋いだのだろうか。鉄面皮から、その心中を伺う事はできなかった。
 去りゆくその背に、ラシュディアは語り掛ける。
「メイさん……不信は、お互いにあるものです。それでも……この地で生きる人として。『歪虚討つべし』、その理念は共有できるものであると、俺は信じています」
 メイは一度だけ、立ち止まり、振り返って、ラシュディアを一瞥し……何かを、言いかけた。言いかけて、やめた。
 そして審問隊はそのまま、パシュパティ砦を去った。
 目的であった『審問と処分』を、達成せずして。
 その姿が見えなくなるまで見送ると、海斗は思わず壁に身を寄せ、大きく溜息を付いた。
「……話を保留させただけでも御の字なのかねぇ。一時でも、全面戦争は引き伸ばされた訳だが」
 腑に落ちない、という感じの海斗に、フラメディアも思わず、腕組みして考えこむ。
「今の情勢を考えれば、最良でないにせよ悪い結果ではなかろう。いま、猟団と帝国が衝突すれば、最後に得するのは歪虚だけじゃ」
「あとは……帝国側の動き次第か。事によっちゃ、最悪はこの後で猟団が帝国軍に攻め滅ぼされかねないぜ。形の上では、猟団が審問隊を追い返してるんだからな」
 アーヴィンは頭を軽く掻きながら、砦の最上階を見上げた。猟団員達は、まだあそこに残っている筈だ。
「つか、シバの爺さんはここまで読んでる気がするんだよなぁ」
 海斗がぼそりと呟くと、Charlotteが彼を見やった。
「私達は、シバ君に踊らされただけだと?」
「んー……」
 海斗の答えは、煮え切らない。
 シバは果たして、この状況を意図していたのだろうか。
 ハンターがここまで『帝国軍の補給の不備』を付かなければ、そこに皇帝の勅命があったことは明らかにならなかったかもしれない。
 もし、そのまま会談が進めば……シバは、どう行動しただろう。猟団を、守り、独立させる為に。
 それを想像した時、一部のハンターは、微かに戦慄の様な感覚を覚えた。
 無論、それは想像にすぎなかったが……十分に現実に成り得た可能性だろう。即ち、シバは……
 だが、それは所詮、想像だ。
 いずれにせよ、猟団は独立した。表向きは、帝国軍と喧嘩別れする形で。
 しかし、問題の根源が突き止められる為の、微かな猶予を残しつつ。
「シバさん……」
 詩もまた、砦の上階を見上げて、小さく呟く。
 シバは言っていた。いずれ全てを明るみに出す、しかしそれには長い時間がかかる、と。
 彼の罪は重い。責任を取れば、死罪か、それに匹敵する重刑を課せられるだろう。
 その時がきたら……果たしてシバは、どうなるのか。どうするのか。
「ですが、過程がどうあれ猟団は帝国の手を離れました。形式上は不法な状態ですが……彼等の『歪虚討つべし』という目的を考えれば、今後は動きやすくなるのでしょう」
 ゲルトは、淡々と自らの見解を述べた。
 既に周囲の猟団員達は、慌ただしく戦の準備を始めていた。当然、歪虚を相手とするべく。
「忙しくなるだろうな、連中は」
 アーヴィンは、誰にも見えぬ様小さく拳を握った。
 聖地奪還戦の開戦からは僅かに出遅れたが……もうすぐ、彼等の戦も始まるだろう。
 それは、アーヴィンが望み、また山岳猟団の団員達が望み続けた戦。
 歪虚を討つための、最も過酷な前線での、最も苛烈な戦。
 『歪虚討つべし』……彼等の理念を実現する、その為の膳立ては今日、全て整ったのだから。

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参加者一覧

  • 征夷大将軍の正室
    天竜寺 詩(ka0396
    人間(蒼)|18才|女性|聖導士
  • 金色の影
    Charlotte・V・K(ka0468
    人間(蒼)|26才|女性|機導師
  • 自爆王
    紫月・海斗(ka0788
    人間(蒼)|30才|男性|機導師
  • 山岳猟団即応員
    ラシュディア・シュタインバーグ(ka1779
    人間(紅)|19才|男性|魔術師
  • 洞察せし燃える瞳
    フラメディア・イリジア(ka2604
    ドワーフ|14才|女性|闘狩人
  • ビキニアーマーマイスター
    ゲルト・フォン・B(ka3222
    人間(紅)|19才|女性|聖導士

  • アーヴィン(ka3383
    人間(紅)|21才|男性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
フラメディア・イリジア(ka2604
ドワーフ|14才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2015/03/23 19:30:19
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/03/19 23:27:14