• 無し

山岳猟団〜ターニングポイント

マスター:有坂参八

このシナリオは3日間納期が延長されています。

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,500
参加人数
現在7人 / 4~7人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
6日
プレイング締切
2015/03/24 19:00
リプレイ完成予定
2015/04/05 19:00

オープニング


 パシュパティ砦。
 帝国軍の命令に反し、山岳猟団は独断専行を以ってこの砦を占領した。
 朽ち果てた砦の城門で、その傭兵は一人、現れた老人を出迎えた。
「懐かしや。この砦が陥ちたは、儂が幾つの時だったか……白雪の吹き荒ぶ冬の日よ」
「昔話に興味はない」
 傭兵の男は、言い放った。
 鉄仮面の様な仏頂面から、感情は読み取れないが……二人にその必要は、無かった。
「面倒を掛けたかの」
「始末は付けて貰う」
 言葉さえ、それだけで十分。
 傭兵の言葉に、老人は苦笑した。


 シバ(kz0048)の帰還によって、久しぶりに全猟団員が揃うと、すぐに猟団の今後の方針を決める会議が始まった。
 の、だが……
「団長代……今何といった」
 帝国軍正規兵の最先任者ガーハートが、団長代・八重樫 敦(kz0056)に詰め寄った。
 八重樫は会議の冒頭で告げた言葉を、一言一句違えず繰り返す。
「帝国軍を離脱する。猟団は独立義勇軍となり、この砦を拠点として歪虚と戦う」
「何を……何を考えている! 帝国軍が黙っていないぞッ!」
「だからどうした」
 激昂するガーハート。対して八重樫は、取り乱さない。
「そも猟団に対する帝国からの扱いは、最初から何もかもがおかしかった。
 なぜ、統制もできない異人種異文化の混成部隊を作った。
 なぜ、その部隊を最前線に置きながら補給要請の九割以上を無視した。
 なぜ、その結果半数以上の団員が死に、あまつさえ指揮官さえ喪失した時に、正規兵ではなく部外者の傭兵を後任指揮官とした。
 全てが論外だ。今更になって奴らが口を挟んだとして、聞く耳持つ道理など無い」
「……!」
 恐ろしいことに……八重樫が語った内容は、誇張では、ない。
 団員達の脳裏には悪夢が蘇る。劣悪な運用環境、歪虚との闘い、その中で帝国人、部族民、傭兵……多くの戦士が、塵芥の如く死んで行った。
 そこに、シバが口をはさむ。
「今、儂らは市井の商人と独自の取引をし、兵站を確保しておる。これは重い軍規違反だが……帝国軍から正規の補給は未だになく、この不正を行わなければ、我等の補給は途絶えすぐにも死に絶えよう。この意味が、判るな」
「シバ……これは、お前の入れ知恵なのか。この狂気沙汰は!」
 生え抜きの帝国軍人が、部族の投降者を睨んだ。
「そも発端は、お前が帝国軍人でありながら部族へ肩入れした事ではないか。あんな事さえしなければ……」
「あんな事さえしなければ……帝国軍がオイマト族を救っていたか、ハンターと共に?
 そして帝国軍が、猟団に対する数々の仕打ちを改め、『使える駒』として取り立てたか?
 では今からでも遅くはない、責任が儂にあるというなら、この老いぼれを好きに処するがいい。儂は、轡を並べたお主達をは一切恨まぬ」
 老人の自嘲に、ガーハートは、言葉を詰まらせた。
 今、シバを欠けば、あるいは猟団は崩壊するだろう。ようやく本来の目的に進み始めた、この組織が。
「お前は卑怯者だ……私達正規兵を板挟みにして、何が面白い……!」
「すまぬ。しかし恥知らずを承知の上で、敢えて言う。儂を、信じろ。我等の大義を忘れるな」
 『歪虚を討ち、人類の守護者たらん』。
 その理念のもとに猟団は結成され、そして今日まで闘い抜いてきた。
 国も人種も無く、共に屍を超え、死さえ名誉として殉ずる。それは……理想であり、信念であり、妄執。
 ガーハートら帝国軍正規兵は……苦しそうに迷い、惑って、団員達を見た。
 立場は違えど、共に闘った仲間を。
「『部族の文化も生活も、全部捨てて帝国人になりゃ保護してやる』……って言う奴らの、現実がコレだ。それが全てだぁな」
 と、辺境部族出身のある団員が、呟く。
「みんなで戦えば歪虚に勝てるから猟団に来た。もっと歪虚と沢山戦って、勝てるようになるなら、それが正しいって事だろ」
 そう語るのは、ドワーフ達だ。
「俺達ゃ金で戦うクズ傭兵だが、そんでも一番は歪虚をぶっ殺したいってヤツばかりさ。八重樫のオヤッサンは、元々そういうヤツを選んでた」
 傭兵達にも迷いはない。
 だが……
「お前たちは……それでいいかもしれん。だが……だが、私達は……」
 ーー私達は、帝国軍人だ。
 その言葉を……正規兵の誰一人、紡ぐことができなかった。
 揺らぐ想いが、あったからこそ。
「じき、要塞から帝国軍の審問隊が来るだろう。会談を設け、猟団は独立を宣言する」
 恐ろしい計画を淡々と告げる八重樫の目に、迷いはない。
 あるのは『歪虚討つべし』という意思だけ。
「後は、お前達の意思を尊重する。好きに決めろ」
 そう八重樫が告げると、最後にガーハート達正規兵は、その場に同席していたハンターを見た。
 ……これまで幾度も山岳猟団の運命を変えてきた、ハンター達を。


「殺すべきです。あの男を」
 要塞ノアーラ・クンタウ、その執務室。
 その女性は、要塞管理者のヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)にそう告げた。
 辺境帝国軍の最高指揮官は、しかし、回答の言葉を濁した。
「……そう、想いますか。メイ」
 メイ・リー・スー。
 辺境帝国軍の規律維持を目的とした審問部隊『ベヨネッテ・シュナイダー』の審問官であるその女性は、氷の様な表情で答える。
「背信、扇動、命令違反、横領。粛清に値する条件がこれだけ揃って何を迷うのです。既に連中は帝国軍に反旗を翻し、皇帝陛下の威信を傷つけた。それは……奴らの上官である貴方の立場が、傷つくという意味でもある。厳然たる秩序を、示さねばなりません」
「……」
 ヴェルナーは、答えなかった。迷っているのか、あるいは。
 メイは、畳み掛けるように言葉を続けた。
「貴方はこんな蛮族の土地に押し込められていい人間ではない。貴方も『膿』に気づいていない訳ではないでしょう。今、皇帝の周りには……」
「メイ。おやめなさい」
 ヴェルナーは、掌を翳しメイの失言を諌めた。
 懐刀とも言える部下が、皇帝さえ差し置いて自分に殉じている事を、ヴェルナーは気づいていた。
 だからこそ……危険なその言葉の続きを、切った。
 そして、だからこそ。メイは再び、口を開いた。
「……ではベヨネッテ・シュナイダーが、猟団を『審問』します。その上で奴らの言に僅かたりとも落ち度あらば、審問隊の権限に基づきあの男を処分する。宜しいですね」
「貴方に委ねます……どうか、慎重かつ、公正な判断を」
 沈黙の後、ヴェルナーは結論を、審問官に委ねた。
 自分が行くことは出来なかったのだ。
 やるべきことがあった。『膿』の存在と、その正体……
「……ヴェルナー・ブロスフェルト。誰にも貴方を傷つけさせない。その為に、私達の手が濯げぬ血に染まろうとも」
 メイはそう言い残し、執務室を後にした。
 腹心の部下の背中を見送り、ヴェルナーは一人、虚空を見つめて微かな溜息をついた。

解説

●概要
山岳猟団と、審問隊『ベヨネッテ・シュナイダー』の会談に同席する

厳密な達成目標はなく、依頼としての難易度は低いです。
極論、会談に同席し、想い想いの反応を取るだけで依頼自体は成功します。
しかしハンターの行動は、今後の彼らの関係や、そのあり方に影響を与え得ます。
その『影響』によって依頼の成功度は変化しますし、また与えようとする『影響』の種類や度合によって行動一つ一つの難易度は大きく上下します。

●背景
多民族部隊・山岳猟団は、今までに複雑な経緯を辿って、辺境帝国軍有数の精鋭部隊へと変貌してきました。
最低限必要な事柄はOP本文に記されていますが、これだけで全ての経緯を把握する事はできないかもしれません。
特に、何かしらの高度な交渉や説得、干渉を行いたい場合は、過去依頼にも目を通す事で成功率が上がるかもしれません。

今回の状況に直接関係している過去依頼は、次の通り。
・要塞の日常(近藤豊SD執筆)
・山岳猟団〜辺境最前線
・【深棲】商と霧と山岳猟団
・戦闘訓練
・山岳猟団〜インターセプト
・【虚動】未来への錯綜
・山岳猟団〜窮鼠殺猫
・山岳猟団〜鳴動

他にも、材料となる情報は様々な場所に散りばめられていますが、使うか使わないかはPC次第です。

●審問隊ベヨネッテ・シュナイダーについて
辺境要塞の規律維持・向上の名目でヴェルナーが結成した、管理組織。
辺境帝国軍内の異分子への調査・処分については、要塞管理者に準ずる高度な権限を持っており、
規律違反者への厳正冷徹な対応から、辺境帝国軍内において畏怖の対象となっています。
【虚道】の事件で帝国への背信を行ったシバ、ひいては猟団とは、かねてより険悪な関係にありました。

●会談参加者
・猟団側、八重樫以下8名(シバ、ガーハート含)
・審問隊、メイ以下8名
・ハンター7名
パシュパティ砦最上階の部屋を閉め切って行います。

●その他
今回は質問にお答えすることができません。
ご注意ください。

マスターより

この依頼をご紹介致します、有坂参八と申します。

私の依頼としては、全てがイレギュラーな形式でのご紹介となりました。
しかしこれが表題通り、山岳猟団のターニングポイント。
そこに善も悪もなく、ハンターを含むあらゆる人間の想いと、行いとが絡み合った上での、一つの決戦の形です。

果たして皆様は、この時、この場所で、何を想い、何を為すのか。
見届けさせて頂きたく想います。

関連NPC

  • 山岳猟団団長
    八重樫 敦(kz0056
    人間(リアルブルー)|46才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
  • 山岳猟団団員
    シバ(kz0048
    人間(クリムゾンウェスト)|90才|男性|霊闘士(ベルセルク)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/04/06 08:08

参加者一覧

  • 征夷大将軍の正室
    天竜寺 詩(ka0396
    人間(蒼)|18才|女性|聖導士
  • 金色の影
    Charlotte・V・K(ka0468
    人間(蒼)|26才|女性|機導師
  • 自爆王
    紫月・海斗(ka0788
    人間(蒼)|30才|男性|機導師
  • 山岳猟団即応員
    ラシュディア・シュタインバーグ(ka1779
    人間(紅)|19才|男性|魔術師
  • 洞察せし燃える瞳
    フラメディア・イリジア(ka2604
    ドワーフ|14才|女性|闘狩人
  • ビキニアーマーマイスター
    ゲルト・フォン・B(ka3222
    人間(紅)|19才|女性|聖導士

  • アーヴィン(ka3383
    人間(紅)|21才|男性|猟撃士
依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
フラメディア・イリジア(ka2604
ドワーフ|14才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2015/03/23 19:30:19
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/03/19 23:27:14