骸の騎士道

マスター:蒼かなた

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/03/26 19:00
完成日
2015/03/31 14:13

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●死して尚矜持は残るか?
 周囲を森に囲まれたとある廃村。
 人が居なくなって久しいはずの一つの家に明りが灯っていた。
 家の中では十数人の男達が火を囲みながら酒盛りをしているようだ。
 男達の格好は一言で言えば汚く、その傍の床や壁際には剣や槍が転がっている。
「ククッ、簡単な仕事だったな」
「ああ、しかし馬鹿な奴だよな。抵抗しなけりゃ命までは取らなかったのによ」
 男達は山賊。今日も彼らの縄張りを通りかかった旅人を殺害し荷物を強奪していた。
「ところであの噂知ってるか?」
「噂? 何だそりゃ」
「ああ、仕入れに町に言った時に聞いたんだがな」
 男は仕入れたばかりの噂話を語り始める。
 ここ最近、この近くに謎の騎士団が現れるらしい。団とは言っても5~6人らしいが。
「おい、騎士ってそれヤバイんじゃないか?」
「いやいや、それがな。どうも普通の騎士じゃないみたいなんだよ」
 男は話を続ける。その騎士達を見つけたとある旅人がいた。
 場所は夜の森の中。声を掛けようと思ったが、ふととあることに気づいてそれを思いとどまる。
 暗い森の中だっていうのに明りの一つも点けていなかったらしい。それで旅人は物影に隠れながらよく見てみるとその騎士達の身につけてる鎧はボロボロで、武器以外の物は何も持っていなかったそうだ。
 そしてそのまま騎士達は一言も言葉を発さず、金属の擦れる音だけを鳴らしながら森の奥へと消えていったらしい。
「そっちには町も村も何もないはずなのにな」
「なんだそりゃ。幽霊でも見たわけか?」
「さあな。ただのホラ話かもな」
 語り終えた男は酒の入った杯をぐいっと呷り、聞いていた男は眉を顰めたまま干し肉を齧る。

 ――ッ……

 その時家の外で物音がしたような気がした。家の中にいた男達は互いに顔を見合わせる。
「何だ今の?」
「ああ、ローランが用をたしに行ってるからアイツだろ」
「おーい、どうした。足にでも引っ掛けたか?」
 部屋にいる男達はゲラゲラと笑いを上げる。そのまま宴会を続けようと部屋の中が騒がしくなった時、突然扉が破られた。
 それと同時に飛び込んで来たのは肩口から袈裟斬りにされた男だった。目を大きく見開き、既に死んでいることが分かる。
「ろ、ローラン!?」
「糞がっ。誰がやりやがった!」
 男達は一斉に立ち上がり各々の武器を手にして扉へと向ける。
 ガシャリと金属が擦れる音がした。そして数秒と経たずそこに鉄色の鎧が現れる。
「騎士だとっ。何でこんな山奥に!」
 現れたのは数人の鎧姿の騎士だった。フルフェイスの兜と全身甲冑、そして手にしているのは剣と槍。
「む、迎え撃て野郎共ぉ!」
 男の怒号と共に開始される戦闘。打ち合わされる金属音。破壊される壁や床。
 闇夜に響く戦闘音は十数分後、ぱったりと止んだ。

 ――ガシャッ……

 その後に鳴るのは金属の擦れる音のみ。

●ハンターオフィス
「こちらが今回の依頼です」
 オフィス職員が端末を弄ると、集まったハンター達の目の前にホログラムウィンドウが浮かび上がる。
 そこに写し出されたのは何枚かの写真。小屋の中で何名もの男が殺されている画像だった。
 それとは別に一枚だけ、森の中で撮ったのであろう写真が一枚。そこには木々の隙間を縫ったその奥に鎧姿の騎士が写っていた。
「推定ですが、恐らく歪虚だと思われています」
 事件のあった場所の近くでは最近森を彷徨う騎士達の目撃情報が相次いでいる。この写真もそんな目撃者がパルムに撮らせた一枚らしい。
「また写真からこの鎧について確認した所、数十年前にとある騎士団が使用していたことが判明しました」
 その騎士団はとある歪虚絡みの事件で壊滅し、現在は存在していないことも分かっている。
 過去に死んだ騎士達が今歪虚となり森を徘徊し人を襲う。今回は殺されても仕方ないと言われるような悪人だったが、次の被害者が誰になるかは分からない。
 歪虚である以上、討伐は決定事項だった。
「目撃情報によると一体だけ他とは違う騎士が居たとのこと。十分に注意してください」

リプレイ本文

●騎士が徘徊する森
 鬱蒼と茂る森の中。視界はお世辞にも良好とは言えない。
 足元には苔むした石が転がり、所々に泥濘が点在していた。
 その一つの泥濘でパシャリと水が跳ねる。
「今回の歪虚は騎士の亡霊らしいな」
 周囲を警戒しながらディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271)はそう言葉を零した。
「主君や誓いを守ってこそ騎士と言えるが、今回の連中の主君は何者なのだろうな」
 誰に言うだけでもなくそう続ける。
 歪虚となっている以上、ただその姿だけが騎士の形をしているだけかもしれない。
 だが、歪虚となってももしかすれば何らかの意志が残っているのかもしれない。
 それこそ、騎士の誓いとも言える何かが。
「まあ、どんなに高潔な心を持っていようが死んで害を成すなら駆除するだけよ」
 遥・シュテルンメーア(ka0914)淡々とした声色でそう告げる。
「そうだな。姿形は騎士とはいえ、中身は死人だ。ならば斬る」
 夕鶴(ka3204)も遥に同意するように頷く。
 騎士の死骸や魂が歪虚化したのか、はたまたただ鎧だけが動いているのかは分からないがやることは変わらないだろう。
 人を仇なす前に災厄の芽を摘み取る。夕鶴は手にしている仕込杖の柄を握りその決意を再確認した。
「皆、こっちに来てくれないか」
 その時、少し離れた場所でイレーヌ(ka1372)が声を上げ皆を呼ぶ。
「何か見つけたのかい?」
「ああ、これだ」
 イレーヌが示したそこには泥濘に残る足跡が残っていた。サイズと形を見る限りグリーヴのもの。それが複数人分ある。
「向かってる方向は同じなのね。あら、新しいものと古いものもあるかしら?」
 遥の言葉通り全ての足跡が一定の方向を向いており、その足跡も一部は乾いているものもある。
「何度もこの場所を通っているってことか?」
「同じルートを歩いているとなると、巡回でもしているのかもな」
 ディアドラの言う通り騎士という名で考えればそうかもしれない。
「騎士としての名残か。しかし、こんな森の深くでは意味があるとも言えないが……いや、ある意味それが幸いだったのかもな」
 これがもっと森の浅い場所、人の良く使う山道付近だったとしたらもっと犠牲者が出ていたかもしれない。
「この足跡、追ってみたほうがいいかしら?」
「いや、これ以上森の奥に行くと戻るときに日が暮れる。一度戻ろう」
 遥の言葉にイレーヌは冷静にそう応える。気づけば木々の枝葉の隙間から零れる光も僅かに赤みが差していた。
 と、その時である。彼女達の持つトランシーバーが音をたてた。

 数分前。もう一方の捜索班も同じく森の中で足跡を発見していた。
「足跡一杯だねぇ。ずっとこの辺ぐるぐるしてるのかなぁ」
 メオ・C・ウィスタリア(ka3988)は左手に持つ鷹のパペットと一緒にその足跡を覗き込む。
 その足跡は統一されており、向かっている方向は迷うことなく真っ直ぐ進んでいる。
「方角としては……あの廃村の裏手あたりに向かってるね」
 規則性を持って残っているその足跡を見てイーディス・ノースハイド(ka2106)はそう判断した。
「やっぱりあの廃村に何かあるのかな? もしかして、護ってるとか」
「その通りかもしれません」
 超級まりお(ka0824)は顎下に手を当てて悩むようなポーズを取る。
 そのまりおに同調するようにエルディン(ka4144)は言葉を続けた。
「何か知ってるのかな?」
「あまり情報は残っていませんでしたが。数十年前にこの周辺で歪虚の群れの襲撃があり、多くの犠牲者が出たそうです」
 時間もなく詳細までは調べられなかったが、その事件によりあの村も廃村へと追いやられる事が分かった。
 もしかすれば目撃されている歪虚の騎士達もあるいはその時の犠牲者なのかもしれない。
「死して尚、何かを守ろうとする意志は尊敬に値するけれどね」
 歪虚となった身ではいつその刃が善良な市民に向けられないとも分からない。
 そうなる前に止める。それが同じ騎士としてのイーディスの想いだった。
「ねえねえ、ところでさ。何か静かじゃないー?」
「そういえば……」
 メオの言葉に一同は周囲の様子を窺う。
 薄暗い森の風景は変わっているようには見えない。だが、周囲に感じていた森に生きるもの達の気配が薄れていることに気づく。
 そして耳を澄ませば、僅かながらに耳慣れた音。森の中では普通は聞くことのない金属が擦れ鳴る音が耳に届いた。
「おでまし、かな?」
「どうやらそのようですね」
 金属音は段々とハンター達の元へと近づいてきている。
 エルディンは素早くトランシーバーを取り出してもう一つの班へと報告を行った。
 そして数秒もしないうちに木々の隙間から鈍色をした金属甲冑がその姿を現した。
「おー、出た出た。本当に騎士だねぇ」
 メオの言葉通り薄汚れてはいるものの見た目は一般的な甲冑の騎士に他ならない。
 しかし、よく見ればその鎧の隙間からは人のものとは思えない黒いナニかが見え隠れしていた。
 そして何より現れた五体の騎士達の中で、その中央にいる騎士は異様だった。
 右腕部の鎧は壊れ、その腕は肥大化した筋肉の塊となり、手があるはずの部分はに手の平はなく、変わりにバスターソードのものらしき刃が突き出している。
「で、どうしよっかー?」
「ここでは戦いにくいですし、村まで誘き寄せるのが一番ですね」
「ならば、その為にも一度剣と盾を合わせた方がよさそうだね」
 ハンター達が戦闘体制に入ると同時に、その戦意を感じ取ったのか歪虚騎士達も次々に武器を構えだす。
 先に動いたのは歪虚騎士達のほうだった。向けられた敵意にほぼ条件反射といっていい反応で各々の武器を手にハンター達に襲い掛かる。
「っ! 思ったより俊敏だね」
 一歩前に出たイーディスが突き出された槍を盾で受け上方へと弾き返す。
 だがその隙を突くようにしてさらに一本の剣がイーディスの盾を持つ腕を斬りつけた。もっともその剣はイーディスの鎧に弾かれその表面に僅かな傷を作るに止まった。
「騎士と言うだけあって連携は流石だねぇ。じゃあメオさんも連携しちゃうよー」
 そう言葉にしながらメオはイーディスの背後から飛び出し、目の前にいる歪虚騎士の頭部目掛け横薙ぎに戦斧を振るった。
 甲高い金属同士が打ち合う音と共に、その歪虚騎士のヘルメットがへこみ、そのまま首があらぬ方向に曲がる。
「おろ? 手応えあり……というかありすぎー?」
 不可思議な手応えにいぶかしむメオの前で、首が折れ曲がった騎士はその手で自分の頭を掴み強引にそれを正しき位置へと戻す。
「歪虚なら何でもありだと分かってはいたが。ここまでとは……」
 同じく間近で見ていたイーディスもその異様な光景に思わず眉を顰める。
「とにかく一当ては済みました。早く廃村で他と合流しましょう」
「賛成! ここ足が滑りそうで危なすぎだよ」
 エルディンの言葉に振り回された槍を屈んで避けたまりおも賛成の声を上げる。
「満場一致のようだね」
「はーい。すたこらさっさだよー」
 ハンター達は一同歪虚騎士達と距離を取り、廃村へ向けて一斉に走りだす。
 歪虚騎士達はそれを迷うことなく追うが、その俊敏さの割には足は早くは無いようだ。
 決戦の場へと歪虚騎士達を誘うため、ハンター達はそのままオレンジ色に染まりだした森の中を駆けた。

●騎士との戦い
 イーディス達が歪虚騎士を誘導して廃村に飛び込んだ時、そこには夕暮れで染まる朽ちた家々と、赤々と燃える大きな焚火が目に入った。
「遅い。待ちかねたぞ」
「申し訳ありません。少し道に迷いました」
「うむ、それなら仕方がないな。許す!」
 焚火の前で腕を組んで待っていたディアドラと森から抜け出してきたばかりのエルディンがそんな会話をしたところで、ハンター達と歪虚騎士が改めて対峙する。
 合流したハンター達に一度足を止めた歪虚騎士達だったがそれも一瞬。寧ろ先ほどまでより苛烈にハンター達に襲い掛かる。
「こいつら結構連携するから気をつけてね!」
 まりおはその一言と共に上段から振るわれた剣をかわし、甲高い音をたてる振動刀を歪虚騎士の腕目掛け振りぬく。
 僅かな抵抗と共に甲冑の腕部は裂け、その中にあるナニかを斬りつけた。だがそこからは血液のようなものは一切零れ落ちない。
 だが、怪しげな黒い靄のようなものがその傷口から漏れ宙へと上がっていくのが見て取れる。
「漏れ出る黒い靄、不浄の証か?」
 夕鶴も突かれた槍で浅い傷を作りながらもその懐に入り、剣を叩きつけるようにして打ち下ろす。
 その一撃は歪虚騎士の頭を叩き、ヘルメットが首部分から内部へと陥没した。
 だが歪虚騎士はそれを気にせずさらに槍を振り回し、腹部を殴られる形となった夕鶴は後ろに飛んで距離を取る。
「ああ、頭への攻撃はあまり意味がないようです。先ほども折れ曲がった首を普通に元に戻していました」
「けほっ……それは先に言って欲しかったな」
 僅かに咳き込む夕鶴にエルディンは杖を向ける。
「慈愛と博愛をもってこの者を癒したまえ」
 杖の先から放たれる淡い光が夕鶴の体に当てられると、走っていた痛みが和らいでいく。
「他に言い忘れは?」
「これ以上は特にありません」
「ならよし!」
 首を横に振ったエルディンを視界の端に捉え、夕鶴は剣を手にまた歪虚騎士に向かった。
「ああもう。悪いけどサッサと成仏してくれるかしら?」
 別方では、迫ろうとしていた歪虚騎士に遥は機械的な杖を向ける。それと同時に放たれたマテリアルの一条の光が歪虚騎士の肩に直撃し、その場で蹈鞴を踏ませた。
「本当に最悪ね。いい? 私、オカルトって実は大嫌いなの」
 理解不能。証明不可能。歪虚と言う説明し難い存在に嫌悪を持つ遥はそれを隠さず表情にだし、こりずに此方へと一歩踏み出した歪虚騎士に更に光の一撃を浴びせ転倒させる。
「では、こいつらは任せたぞ」
「まかせたぞー」
 その脇をすり抜けるようにしてイレーヌ、そしてメオがパペットでオウム返しするように声を掛ける。
「お早めにね。あとこれもどうぞ」
 通り抜け様に遥が杖を振るった先にいたメオの体にマテリアルのエネルギーが充填される。
「もっとも、こちらが先にこいつらを倒しちゃうかもしれないけどね」
 起き上がってきた歪虚騎士に遥はまた手にしている杖を向けた。

 今歪虚騎士長と戦っているのはイーディスであった。剣と盾がぶつかりあい激しく火花が散っている。
「やはり他の騎士より重い……何より、剣筋が鋭い!」
 自分は仲間の為の盾。その心情で望んだ相手だったが、その一撃はもし防御に注力していなければ盾が弾かれかねない威力があった。
 しかもその一撃が途絶えることなく連撃で繰り出されるのだ。一切の溜めの動作もない。カウンターを狙うにしてもそれは危険な賭けになるだろう。
 さらにもう一撃。歪虚騎士長が剣を振り上げたところでその大剣に光弾がぶつかりその一振りを押しとどめた。
「いっとーりょうだーん!」
 さらに掛け声と共にメオが飛び掛り戦斧を叩きつける。鈍い感触と金属が軋む音、そして両者は弾かれ互いに後方へと跳ねるようにして飛んだ。
「んー、両断は出来なかったかぁ」
 腕を斬り落とすつもりで放った一撃だったが、それに反応した歪虚騎士長に大剣で受け止められてしまった。
「死ぬ前はさぞ腕の立つ騎士だったのだろうな」
「ああ、出来ることなら一騎打ちを願いたいところだが。やはり歪虚相手ではそうも行きそうにない」
 歪虚騎士長は何も語らない。そして迷わず目の前にいるハンター達を排除にかかる。
 また始まった連撃をイーディスが盾で受け止め、その衝撃で痺れ始める腕にイレーヌの回復魔法がかけられる。
 メオも僅かな隙を狙い攻撃を仕掛けるが、どの方向、どのタイミングでも即座に反応しその攻撃を大剣で受け止める。
「強いなー。メオさん自信失くしちゃいそう。諦めないけどぉ」
「それならば助力するよ」
 既に何度目の剣戟を防いだだろうか。無数の傷が出来た盾を構えるイーディスが、その一撃を受けた瞬間にその剣を強く押した。
 歪虚騎士長の剣が弾かれ、僅かにその体が浮き無防備を晒す。
「繋げる」
 そこに駄目押しとばかりにイレーヌの放った光弾が大剣にぶつかりさらにバランスを崩させる。
 勿論メオもその千載一遇のチャンスを逃すことはなかった。
 地面に足跡を残すような踏み込みと共に、大きく振りかぶり体の捻りを加えた横薙ぎの一撃が歪虚騎士長の胴体を捉えた。
「っ! 痛いなぁ……」
 メオの放った強烈な一撃で歪虚騎士長の鎧の胴部分を大きく切断していた。
 だが体勢を崩していて尚振るったその大剣がメオの左腕を斬りつけていた。
「一筋縄ではいかない、か」
 太陽は時期に沈む。だが、ハンター達の戦闘はまだ終わりそうになかった。

●廃村と墓
「その御魂に遺した誇り……確かに貰い受けた」
 夕鶴が頬についた血を拭う。先ほど剣を振り下ろた歪虚騎士は腕を落とされ、それと同時に崩れ落ちた。
 そして彼女の目の前でその甲冑の隙間から黒い靄が零れ、空気に溶けるようにして消えていっている。
「お疲れ様です。怪我を治療しましょう」
「ありがとう……あっちは、終わりそうだな」
 エルディンに癒しの光を向けられた視界の向こうでは、遥とまりおそしてディアドラが加勢し6対1となって攻め落とされている歪虚騎士長の姿があった。
 そして今盾に剣戟を防がれ、二つの刃に腕を落とされ、二条の光に膝をつかされた歪虚騎士長の前に王を自称するものが立つ。
「成れの果てとはいえお前も騎士。それなら大王であるボクが幕を引いてやろう」
 突き出された細剣が砕かれた鎧の内部のナニかに突き刺さり、横に払われると同時に血が噴き出るように黒の靄が溢れ出す。
 歪虚騎士はそのまま暫し膝立ちのまま静止し、黒い靄が途切れたときに糸の切れた人形のように地面へと崩れ落ちた。

「ゆっくり休んでねー、騎士さーん」
 メオは目の前の簡素な墓に言葉をかける。
 歪虚騎士達を倒した後、その中にあったナニかは消えてなくなり最後には傷ついた武器と鎧だけが残った。
 ハンター達はそれらをまとめ廃村の一角に埋め騎士達の墓を作った。
「まあ、これで騎士達も成仏するんじゃない?」
 オカルトは信じていない。だが何となく口をついて遥の口からそんな言葉が零れた。
「何れにしろ彼らがもう戦う必要はないさ。後は私達に任せて、安心して眠って欲しい」
 イーディスは小さな花束をその墓に供え、亡き騎士達への手向けとする。
 日の暮れた廃村で揺れる火が名も知らぬ騎士達の墓を照らす。
 彼らは感謝の言葉も遺恨の念も残さなかった。残るのは今回僅かばかりに関わったハンター達の記憶にだけ。
「彼らの魂が神の御許に届きますように……」
 そして最後に、エルディンの捧げる祈りの言葉がじんわりとハンター達の心に広がった。

依頼結果

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 大王の鉄槌
    ディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271
    人間(紅)|12才|女性|闘狩人

  •  (ka0824
    人間(蒼)|16才|女性|疾影士
  • Pf. M.A.D
    遥・シュテルンメーア(ka0914
    人間(蒼)|17才|女性|機導師
  • 白嶺の慧眼
    イレーヌ(ka1372
    ドワーフ|10才|女性|聖導士
  • 鍛鉄の盾
    イーディス・ノースハイド(ka2106
    人間(紅)|16才|女性|闘狩人
  • 質実にして勇猛
    夕鶴(ka3204
    人間(紅)|18才|女性|闘狩人
  • たかし丸といっしょ
    メオ・C・ウィスタリア(ka3988
    人間(蒼)|23才|女性|闘狩人
  • はぷにんぐ神父
    エルディン(ka4144
    人間(紅)|28才|男性|聖導士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
イーディス・ノースハイド(ka2106
人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2015/03/26 01:37:23
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/03/21 20:40:53