ゲスト
(ka0000)
かくれんぼ、しましょ?
マスター:水貴透子

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2014/07/03 19:00
- 完成日
- 2014/07/05 13:03
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
僕は、かくれんぼが大好きだった。
友達の中で、僕以上にかくれんぼが上手な子はいない。
いつも、最後まで僕は見つけてもらえない。
……でも、今だけは思う。
誰か、僕を見つけて――……!
※※※
「お願いです、私の息子を助けて下さい……!」
半狂乱になりながら、若い女性は必死でハンター達に懇願する。
「どういう状況ですか? 詳しく聞かせて下さい」
案内人が若い女性をなだめながら問いかけると、6歳の男の子が遊んでいる最中にはぐれてしまったらしい。
それだけなら、まだ迷子だとほほえましい気持ちにもなるのだが、最悪な事に人型の雑魔が徘徊している場所なのだという。
「……以前から、あそこには近づいちゃダメだって言い聞かせていたのに……っ!」
「かくれんぼをして、他の子達は戻ってきたのに、私の子供だけ戻ってこないんです……!」
若い女性はその場に膝折れながら「わあああっ」と大きな声で泣き叫ぶ。
「わかりました、子供の捜索と雑魔の殲滅……その依頼をお受けしましょう。お子さんの特徴は? どの辺ではぐれたのかわかりますか?」
「……私の子供は、声が出せないんです……少し前に身体を壊した時、耳も……まったく聞こえないほどではないのですけど、非常に聞こえにくいんです」
雑魔のいる場所に子供がいるというだけでも大変な事なのに、その子供は助けを呼ぶ声も出せなければ、ハンター達の声も聞こえにくい状況……。
「あの子がいなくなってから半日経っています、どうか、どうか私の子供を助けて下さい……!」
案内人は若い女性から聞いた言葉を軽くまとめ、依頼を頼むハンター達をすぐさま探しに向かった。
「緊急のご依頼です! どなたか、お力をお貸し願えますか!」
友達の中で、僕以上にかくれんぼが上手な子はいない。
いつも、最後まで僕は見つけてもらえない。
……でも、今だけは思う。
誰か、僕を見つけて――……!
※※※
「お願いです、私の息子を助けて下さい……!」
半狂乱になりながら、若い女性は必死でハンター達に懇願する。
「どういう状況ですか? 詳しく聞かせて下さい」
案内人が若い女性をなだめながら問いかけると、6歳の男の子が遊んでいる最中にはぐれてしまったらしい。
それだけなら、まだ迷子だとほほえましい気持ちにもなるのだが、最悪な事に人型の雑魔が徘徊している場所なのだという。
「……以前から、あそこには近づいちゃダメだって言い聞かせていたのに……っ!」
「かくれんぼをして、他の子達は戻ってきたのに、私の子供だけ戻ってこないんです……!」
若い女性はその場に膝折れながら「わあああっ」と大きな声で泣き叫ぶ。
「わかりました、子供の捜索と雑魔の殲滅……その依頼をお受けしましょう。お子さんの特徴は? どの辺ではぐれたのかわかりますか?」
「……私の子供は、声が出せないんです……少し前に身体を壊した時、耳も……まったく聞こえないほどではないのですけど、非常に聞こえにくいんです」
雑魔のいる場所に子供がいるというだけでも大変な事なのに、その子供は助けを呼ぶ声も出せなければ、ハンター達の声も聞こえにくい状況……。
「あの子がいなくなってから半日経っています、どうか、どうか私の子供を助けて下さい……!」
案内人は若い女性から聞いた言葉を軽くまとめ、依頼を頼むハンター達をすぐさま探しに向かった。
「緊急のご依頼です! どなたか、お力をお貸し願えますか!」
リプレイ本文
●子供探しと、雑魔退治
「子供が遊びに行けるような場所に雑魔が出るとは!」
孫六 兼元(ka0256)は強く拳を握りしめながら呟く。
「しかも少年が取り残されているなら捨て置けん!」
雑魔を駆逐し、少年を無事に母親の元に届ける――……と言葉を付け足す。
「厄介な場所を遊び場にしやがって……まぁ、危険さが分からねぇからガキなんだが」
アクアレギア(ka0459)は小さく舌打ちをしながら、ため息を吐く。
「ため息を吐きたくなるのも分かる。子供は探す、雑魔は駆逐する――……両方やらなければならないのがハンターの辛い所だからな」
ロニ・カルディス(ka0551)はアクアレギアのため息を聞き、苦笑気味に言葉を投げかける。
彼は決して余裕を持っているわけではなく、ただ冷静であろうとしているだけ。非常事態だからこそ、冷静さを欠いたら望んでいる結果から遠ざかると思っていた。
「小さな男の子が、こんな夜に森の中でたった一人……」
クレール(ka0586)は泣き喚く母親を見つめ、悲痛な表情を見せながら、ぽつりと呟いた。
(……弟と重ねちゃってる、かな。あの子はもう大きいけど、それでも……)
クレールは手を強く握り締めながら、表情こそ変えなかったけど、彼女の心が一番混乱していると言っても過言ではないほど乱れていた。
(入れ込み過ぎは危険だって分かってる。でも、絶対、助ける……雑魔は全部、斬り伏せる!)
「森と村は、近い。後々のためにも雑魔の排除は必要不可欠だな。ついでに、先日闘ったゾンビとの違いも確認させてもらおうか」
足立 真(ka0618)は前回の戦いを思い浮かべる。雑魔と言っても、幅広く存在しており、それぞれで戦い方なども変わってくるのだから。
(……戦うのは、怖い)
神行寺 尊(ka0709)は小刻みに震える手を誤魔化すように、強く握り締める。
(だけど、子供が襲われそうになってるんだ……怖いけど、俺達が頑張らないと)
唇を噛みしめながら、神行寺は己の心を奮い立たせる。
「危険と言われても実感が伴わなければ聞きはしないのよね」
伴ってからでは遅いのだけど、と言葉を付け足すのはアリス・シンドローム(ka0982)。
「半日……急ぎましょう、まだ間に合うはずよ」
「当然! 絶対に子供を連れて帰らないと!」
アリスの言葉に、強く頷きながら答えるのはユウカ・ランバート(ka1158)だった。
「お兄ちゃん達……ユウ君を助けてね、絶対、助けてね……?」
幼い少年達がハンターの前に現れ、涙をぼろぼろと零しながら懇願して来る。
「おい、ユウ君を助けるために必要だ。時間もねぇ、思い出せる限りでいいから協力しろ」
アクアレギアは子供達に言葉を投げかけ、今回のかくれんぼの内容、今までユウと呼ばれた少年がどんな所に隠れていたのか、それらを聞きだす事にした。
「あぁ、それとハンカチか何かを借りる事は出来るだろうか?」
孫六が少年の母親に話しかけると、母親は不思議そうな表情を向けてきた。
「少年に会えた時、少しでも警戒が解ける要因になればと思うのでな! 少年を捜索する者達に、母親の持ち物を持って行ってもらいたい」
「……そういう事でしたら、これを」
母親が差し出してきたのは、木の実で作った首飾り。
「少し前に、あの子が私に作ってくれた物です。あの子の警戒を解くなら、あの子が私のために作ったものが一番かと思いまして……」
確かに、と母親の言葉を聞いてハンター達は無言のまま頷く。
「急ごう、これ以上遅くなっても良い事は何もないはずだから」
少年の母親、そして子供達、それぞれの視線を一身に浴びながらハンター達は出発した。
●迷子の子供、徘徊する雑魔
「ここからは別れて行動しよう」
目的地である森に到着して、ロニが呟く。
雑魔を退治するため、そして子供を救助するため、ハンター達は班を分けて行動する作戦を立てていた。
囮班として、孫六、ロニ、クレール、足立、神行寺の5名。
捜索班として、アクアレギア、アリス、ユウカの3名。
それぞれの通信手段として、トランシーバーや魔導短伝話を用いる事にしており、囮班、捜索班、共に連絡だけは怠らないように心がけていた。
「ワシらは盛大に音をたてて、雑魔の気を引き寄せるから子供は頼んだぞ!」
孫六は捜索班に告げると「当然だ、面倒だけどな」とアクアレギアが言葉を返してくる。
「行こう、手遅れにならないうちに……!」
神行寺が呟き、ハンター達はそれぞれ別行動を開始した――……。
※捜索班※
「ガキ共から聞いた話だと、森の中に赤い花があるそうだ、その辺でやってたらしいな」
アクレアレギアが森の中を見渡しながら、アリスとユウカに告げる。
「それと今回のガキの隠れ方だが……木の葉に自分の身体を隠したりとしていたらしい」
「アリスも子供達に聞きこんでみたわ。声が出せない、しかも難聴……だとすれば、遊ぶ上で何らかの合図を決めてる可能性が高いから」
「ユウカも聞いたよ、どの辺を探したのかって」
それぞれ子供達から聞きだした情報を共有するため、歩きながら話をする事になった。
「アリスが聞いたのは、手を叩く回数でコミュニケーションを取っていたみたい。YESなら3回、NOなら2回――って感じにね」
「そうなんだ……ユウカが聞いたのは、木の周りとかは探したって言ってた」
「……結局、問題のガキがどの辺にいるか、なんて本人にしか分からないって事か」
アクアレギアは小さくため息を吐く。
これ以降、3人は口を閉ざす。3人が話す声で雑魔を引き寄せてもいけないと思ったから。
(人間って、案外目線より高い位置って意識が向かないものよね。木の葉で自分の身体を隠したりするような子なら、もしかしたら木の上にいるって可能性もあるかも……)
アリスは心の中で呟き、前方や横は勿論、鬱蒼と生い茂る木々の上も注意して見ていた。
そして、しばらく経った頃――……。
3人は子供達がかくれんぼをしていた場所に辿り着いた。
そこには無数の足跡、そして明らかに子供以外の足跡も残されている。
(ちっ、ガキは雑魔と出会ってる可能性が高くなったな……)
しゃがみ込んで、足跡を観察するアクアレギアは小さく舌打ちをした。
そして、ユウカは『ハンディLEDライト』で周りに光源を向ける。もしかしたら、その光に誘われて少年が出てくるんじゃないか、という淡い期待を胸に抱きながら。
「……ねぇ、何か聞こえない?」
アリスの声に、ユウカとアクアレギアは耳を澄ませる。
――ドサッ!
軽い物が落ちるような音が聞こえ、ハンター達がその音の場所に急ぐと――。
「……靴?」
子供用の靴が不自然な形で落ちている事に気づく。
そして、その周りの葉っぱには血痕も残されていた。
「何でこんな不自然に……? まるで上から落ちてきたみたいに……上?」
アクアレギアがハッとした表情を見せ、ユウカ、アリスも同時に上を見る。
すると、今にも落ちてしまいそうな子供の姿を発見した。
「……っ! あぶねぇ!」
ずる、ずる……とゆっくりとずれ落ちる子供に気づき、アクアレギアは身体を動かす。
――ドサッ!
「あ、危なかった……レギア、ナイスキャッチ」
ユウカが呟く。
「予想通り、木の上に逃げていたのね。だから他の子達も気づかなかったんだわ」
「いや、木の上に逃げたのは、恐らく襲われた後だ」
少年の肩の傷を見ながら、アクアレギアは呟く。
「とりあえず、囮班に子供を見つけたって事、伝えるわね」
※囮班※
「鬼さんコチラ! 手の鳴る方へ! ガッハッハ!」
大きな声を出して『ハリセン』で森の木々を叩きながら叫ぶのは孫六。
雑魔が捜索班へ向かわないように、囮班はわざと音をたてながら森の中を歩いていた。
「捜索班の人達、ユウ君を見つける事が出来たかな……」
クレールは『魔導短伝話』を見つめながら、小さなため息を吐いた。
「焦っても仕方ない、まずは冷静に行動する事が大事だろう?」
クレールの肩に手を置きながら、ロニが言葉を投げかける。彼も音を出す工夫を凝らしていて、鈴の音を響かせながら歩いていた。
「……そうだね」
クレールは小さく頷き、目印のために木々にナイフで傷をつける。
「この先に、広場のように開けた場所があるらしい。そこをおびき寄せるポイントにすればいいんじゃないかな」
足立の言葉に「そうだな! 開けた場所の方が戦いやすいからな!」と孫六が言葉を返す。
「何とか、こっちに引き寄せられてくれるといいんだけど」
神行寺は『ランタン』で周りを照らしながら呟く。
その時『魔導短伝話』に、捜索班からの連絡が入ってくる。
「子供を見つけたわ、肩を負傷してるけど命に別状はなさそうよ。ただ、すぐにでも手当てをしたいから、アリス達はこのまま集落の方に向かうわね」
アリスからの通信に、囮班はホッと胸を撫で下ろす。
少年が見つかったという事、命に別状がないという事、残りは雑魔を倒せばいいだけ。
様々な疑問が解け、自分達のやるべき事がしっかりと見えて来たから。
「分かった、俺達はこのまま雑魔退治に専念する。そちらに雑魔が向かわないよう、こちらは派手に音を出すから、気をつけて戻って」
神行寺は手短に呟き、通信を切る。
「無事に子供は見つかったみたいだ、今から集落に戻るって言ってたよ」
神行寺の言葉を聞き、クレールは安堵のため息を吐く。
「無事に見つかって良かった! 後はワシらが頑張るだけだ! ガッハッハ!」
孫六の言葉に、ロニが頷く。
その時、ガサ、と物音が聞こえ、ハンター達は更に警戒を強める。
「……どうやら、今回の相手は腐ってはいないようだ。まぁ、腐る前だろうが」
雑魔の外見を見ながら、足立が苦笑気味に呟く。
「本当は、開けた場所に誘導するつもりだったが……上手く、誘導されてくれないだろうな」
「開けた場所は、ここからすぐのようだし、後退しながら攻撃をすればいいんじゃないか?」
ロニが呟いた瞬間、捜索班の姿がちらりと見える。
「……っ!?」
想像以上にお互いの距離が近かったらしく、捜索班は慌てて子供を庇う。
「くっ……!」
雑魔に近かったのは捜索班、そのせいか3人は雑魔によって攻撃を受けてしまう。
少年を抱えていなければ避けられた攻撃だろうが、最優先事項は少年の命、捜索班3人は自らの身体を持って、雑魔の攻撃を止めた。
「あんたの相手は、そっちじゃないだろう!」
足立は『日本刀』を構え『踏込』を使用して、雑魔に攻撃を仕掛けた。
「これ以上、誰も傷つけさせない……!」
神行寺も『木刀』を構え『闘心昂揚』を使用して、身体能力を上昇させ、雑魔に攻撃を仕掛けた。
「子供を狙うなんて……! 私の前では、させない! 子供を守る時の姉ちゃん、なめんなぁっ!」
クレールは『機導剣』を使用して、雑魔の腕を攻撃する。
「今のうちに早く! ここから抜けて!」
クレールの言葉を聞き、捜索班は傷ついた身体ながらも、しっかりと少年を抱え、集落に向かって駆け出した。
「森の木々を傷つけたくなかったが、相手がお前さんなら話は別だ。思いきりやるぞ!」
孫六は叫び、覚醒を行う。
右の拳から陽炎が立ち上り、その中には鬼の姿が揺らめいている。
「さぁ、今度は此方が鬼になる番だ! 我が右手に鬼は宿れり!」
孫六は『日本刀』を抜き『踏込』を使用した後、『強打』による強力な一撃をお見舞いする。
「あんな子供を……お前達、歪虚の被害者にはさせない」
ロニは低く呟き『ウォーハンマー』を振り上げ『メイスファイティング』を繰り出す。
「はぁっ!」
神行寺と足立は不意打ちで雑魔の足を攻撃して動きを止める。
「つえぇぇあああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
クレールの叫びが森中に響き渡り、ロニ、孫六、足立、神行寺は総攻撃を行い、少年を脅かした雑魔を退治する事に成功したのだった――……。
●依頼、大成功を収めて
「ゆっくり飲め」
少年を集落に連れ帰った後、アクアレギアは所持していたジュースを少年に飲ませていた。
「今回は無事だったが、次は分かんねぇ、ちゃんと気を付けろ」
アクアレギアは気だるげに紙に書くと、少年は居心地悪そうに小さく頷いた。
「一人でよく頑張ったな! だが、お袋さんにあまり心配かけんようにな! ガッハッハ!」
少年の頭を撫でながら、孫六が豪快に笑い、その笑いと同じくらい豪快な文字を見せる。
「お前は賢いな? これからは、近づいてはいけないと言われた場所に近づかないように。今回の事で、どれだけお前の母親が心を砕いたか、その深さを知るといい」
少年と目線を合わせながら、ロニが話しかける。
少年自身も分かっているようで、酷く申し訳なさそうな表情を見せていた。
「肩の傷、少し深いけどちゃんと治るよ。治ったら、また元気に遊んでね。ただし、お母さんを悲しませないように、君は男の子なんだからお母さんを守ってあげなくちゃ」
少年の手を取りながら、少年が聞き取り易いように、クレールはゆっくりと呟く。
「今回は早期発見が出来たから、トランシーバーは必要なかったな」
森に仕掛けていたトランシーバーを回収した後、足立が苦笑気味に呟く。
だけど『必要なかった』というのは結果論であり、今回の任務のためをそれほど真剣に考えていたのだから、決して足立の行動は無駄にはなっていない。
(……俺一人の力じゃないけど、子供を守れたんだ)
神行寺は弱々しくも微笑む少年の姿を見つめながら、心の中で呟く。
(怖かったけど、これから何とかなる……一歩ずつ、前に進んでいけばいいんだ)
神行寺は安堵のため息を漏らしながら、薄く微笑んだ。
「今回は運が良かったとも言えるわね。偶然その子を見つけられて、偶然雑魔と遭遇、偶然囮班もいて、アリス達は集落に向かう事が出来た――……でも、運も実力のうちよね」
「そうだね! 雑魔には会っちゃったけど、こうやってその子を助けられたし、ユウカ達も怪我したけど、重傷ってわけじゃないし! ユウカ達、運が良かったんだよ」
ユウカが元気に答えた時、アクアレギアが「あ」と思い出したように母親に近づく。
「結局、これは使わなかった。そのガキは気ぃ失ってたからな」
アクアレギアは預かった首飾りを母親に返す。
その後、僅かな休息を取った後、ハンター達は報告をするために帰還していった。
END
「子供が遊びに行けるような場所に雑魔が出るとは!」
孫六 兼元(ka0256)は強く拳を握りしめながら呟く。
「しかも少年が取り残されているなら捨て置けん!」
雑魔を駆逐し、少年を無事に母親の元に届ける――……と言葉を付け足す。
「厄介な場所を遊び場にしやがって……まぁ、危険さが分からねぇからガキなんだが」
アクアレギア(ka0459)は小さく舌打ちをしながら、ため息を吐く。
「ため息を吐きたくなるのも分かる。子供は探す、雑魔は駆逐する――……両方やらなければならないのがハンターの辛い所だからな」
ロニ・カルディス(ka0551)はアクアレギアのため息を聞き、苦笑気味に言葉を投げかける。
彼は決して余裕を持っているわけではなく、ただ冷静であろうとしているだけ。非常事態だからこそ、冷静さを欠いたら望んでいる結果から遠ざかると思っていた。
「小さな男の子が、こんな夜に森の中でたった一人……」
クレール(ka0586)は泣き喚く母親を見つめ、悲痛な表情を見せながら、ぽつりと呟いた。
(……弟と重ねちゃってる、かな。あの子はもう大きいけど、それでも……)
クレールは手を強く握り締めながら、表情こそ変えなかったけど、彼女の心が一番混乱していると言っても過言ではないほど乱れていた。
(入れ込み過ぎは危険だって分かってる。でも、絶対、助ける……雑魔は全部、斬り伏せる!)
「森と村は、近い。後々のためにも雑魔の排除は必要不可欠だな。ついでに、先日闘ったゾンビとの違いも確認させてもらおうか」
足立 真(ka0618)は前回の戦いを思い浮かべる。雑魔と言っても、幅広く存在しており、それぞれで戦い方なども変わってくるのだから。
(……戦うのは、怖い)
神行寺 尊(ka0709)は小刻みに震える手を誤魔化すように、強く握り締める。
(だけど、子供が襲われそうになってるんだ……怖いけど、俺達が頑張らないと)
唇を噛みしめながら、神行寺は己の心を奮い立たせる。
「危険と言われても実感が伴わなければ聞きはしないのよね」
伴ってからでは遅いのだけど、と言葉を付け足すのはアリス・シンドローム(ka0982)。
「半日……急ぎましょう、まだ間に合うはずよ」
「当然! 絶対に子供を連れて帰らないと!」
アリスの言葉に、強く頷きながら答えるのはユウカ・ランバート(ka1158)だった。
「お兄ちゃん達……ユウ君を助けてね、絶対、助けてね……?」
幼い少年達がハンターの前に現れ、涙をぼろぼろと零しながら懇願して来る。
「おい、ユウ君を助けるために必要だ。時間もねぇ、思い出せる限りでいいから協力しろ」
アクアレギアは子供達に言葉を投げかけ、今回のかくれんぼの内容、今までユウと呼ばれた少年がどんな所に隠れていたのか、それらを聞きだす事にした。
「あぁ、それとハンカチか何かを借りる事は出来るだろうか?」
孫六が少年の母親に話しかけると、母親は不思議そうな表情を向けてきた。
「少年に会えた時、少しでも警戒が解ける要因になればと思うのでな! 少年を捜索する者達に、母親の持ち物を持って行ってもらいたい」
「……そういう事でしたら、これを」
母親が差し出してきたのは、木の実で作った首飾り。
「少し前に、あの子が私に作ってくれた物です。あの子の警戒を解くなら、あの子が私のために作ったものが一番かと思いまして……」
確かに、と母親の言葉を聞いてハンター達は無言のまま頷く。
「急ごう、これ以上遅くなっても良い事は何もないはずだから」
少年の母親、そして子供達、それぞれの視線を一身に浴びながらハンター達は出発した。
●迷子の子供、徘徊する雑魔
「ここからは別れて行動しよう」
目的地である森に到着して、ロニが呟く。
雑魔を退治するため、そして子供を救助するため、ハンター達は班を分けて行動する作戦を立てていた。
囮班として、孫六、ロニ、クレール、足立、神行寺の5名。
捜索班として、アクアレギア、アリス、ユウカの3名。
それぞれの通信手段として、トランシーバーや魔導短伝話を用いる事にしており、囮班、捜索班、共に連絡だけは怠らないように心がけていた。
「ワシらは盛大に音をたてて、雑魔の気を引き寄せるから子供は頼んだぞ!」
孫六は捜索班に告げると「当然だ、面倒だけどな」とアクアレギアが言葉を返してくる。
「行こう、手遅れにならないうちに……!」
神行寺が呟き、ハンター達はそれぞれ別行動を開始した――……。
※捜索班※
「ガキ共から聞いた話だと、森の中に赤い花があるそうだ、その辺でやってたらしいな」
アクレアレギアが森の中を見渡しながら、アリスとユウカに告げる。
「それと今回のガキの隠れ方だが……木の葉に自分の身体を隠したりとしていたらしい」
「アリスも子供達に聞きこんでみたわ。声が出せない、しかも難聴……だとすれば、遊ぶ上で何らかの合図を決めてる可能性が高いから」
「ユウカも聞いたよ、どの辺を探したのかって」
それぞれ子供達から聞きだした情報を共有するため、歩きながら話をする事になった。
「アリスが聞いたのは、手を叩く回数でコミュニケーションを取っていたみたい。YESなら3回、NOなら2回――って感じにね」
「そうなんだ……ユウカが聞いたのは、木の周りとかは探したって言ってた」
「……結局、問題のガキがどの辺にいるか、なんて本人にしか分からないって事か」
アクアレギアは小さくため息を吐く。
これ以降、3人は口を閉ざす。3人が話す声で雑魔を引き寄せてもいけないと思ったから。
(人間って、案外目線より高い位置って意識が向かないものよね。木の葉で自分の身体を隠したりするような子なら、もしかしたら木の上にいるって可能性もあるかも……)
アリスは心の中で呟き、前方や横は勿論、鬱蒼と生い茂る木々の上も注意して見ていた。
そして、しばらく経った頃――……。
3人は子供達がかくれんぼをしていた場所に辿り着いた。
そこには無数の足跡、そして明らかに子供以外の足跡も残されている。
(ちっ、ガキは雑魔と出会ってる可能性が高くなったな……)
しゃがみ込んで、足跡を観察するアクアレギアは小さく舌打ちをした。
そして、ユウカは『ハンディLEDライト』で周りに光源を向ける。もしかしたら、その光に誘われて少年が出てくるんじゃないか、という淡い期待を胸に抱きながら。
「……ねぇ、何か聞こえない?」
アリスの声に、ユウカとアクアレギアは耳を澄ませる。
――ドサッ!
軽い物が落ちるような音が聞こえ、ハンター達がその音の場所に急ぐと――。
「……靴?」
子供用の靴が不自然な形で落ちている事に気づく。
そして、その周りの葉っぱには血痕も残されていた。
「何でこんな不自然に……? まるで上から落ちてきたみたいに……上?」
アクアレギアがハッとした表情を見せ、ユウカ、アリスも同時に上を見る。
すると、今にも落ちてしまいそうな子供の姿を発見した。
「……っ! あぶねぇ!」
ずる、ずる……とゆっくりとずれ落ちる子供に気づき、アクアレギアは身体を動かす。
――ドサッ!
「あ、危なかった……レギア、ナイスキャッチ」
ユウカが呟く。
「予想通り、木の上に逃げていたのね。だから他の子達も気づかなかったんだわ」
「いや、木の上に逃げたのは、恐らく襲われた後だ」
少年の肩の傷を見ながら、アクアレギアは呟く。
「とりあえず、囮班に子供を見つけたって事、伝えるわね」
※囮班※
「鬼さんコチラ! 手の鳴る方へ! ガッハッハ!」
大きな声を出して『ハリセン』で森の木々を叩きながら叫ぶのは孫六。
雑魔が捜索班へ向かわないように、囮班はわざと音をたてながら森の中を歩いていた。
「捜索班の人達、ユウ君を見つける事が出来たかな……」
クレールは『魔導短伝話』を見つめながら、小さなため息を吐いた。
「焦っても仕方ない、まずは冷静に行動する事が大事だろう?」
クレールの肩に手を置きながら、ロニが言葉を投げかける。彼も音を出す工夫を凝らしていて、鈴の音を響かせながら歩いていた。
「……そうだね」
クレールは小さく頷き、目印のために木々にナイフで傷をつける。
「この先に、広場のように開けた場所があるらしい。そこをおびき寄せるポイントにすればいいんじゃないかな」
足立の言葉に「そうだな! 開けた場所の方が戦いやすいからな!」と孫六が言葉を返す。
「何とか、こっちに引き寄せられてくれるといいんだけど」
神行寺は『ランタン』で周りを照らしながら呟く。
その時『魔導短伝話』に、捜索班からの連絡が入ってくる。
「子供を見つけたわ、肩を負傷してるけど命に別状はなさそうよ。ただ、すぐにでも手当てをしたいから、アリス達はこのまま集落の方に向かうわね」
アリスからの通信に、囮班はホッと胸を撫で下ろす。
少年が見つかったという事、命に別状がないという事、残りは雑魔を倒せばいいだけ。
様々な疑問が解け、自分達のやるべき事がしっかりと見えて来たから。
「分かった、俺達はこのまま雑魔退治に専念する。そちらに雑魔が向かわないよう、こちらは派手に音を出すから、気をつけて戻って」
神行寺は手短に呟き、通信を切る。
「無事に子供は見つかったみたいだ、今から集落に戻るって言ってたよ」
神行寺の言葉を聞き、クレールは安堵のため息を吐く。
「無事に見つかって良かった! 後はワシらが頑張るだけだ! ガッハッハ!」
孫六の言葉に、ロニが頷く。
その時、ガサ、と物音が聞こえ、ハンター達は更に警戒を強める。
「……どうやら、今回の相手は腐ってはいないようだ。まぁ、腐る前だろうが」
雑魔の外見を見ながら、足立が苦笑気味に呟く。
「本当は、開けた場所に誘導するつもりだったが……上手く、誘導されてくれないだろうな」
「開けた場所は、ここからすぐのようだし、後退しながら攻撃をすればいいんじゃないか?」
ロニが呟いた瞬間、捜索班の姿がちらりと見える。
「……っ!?」
想像以上にお互いの距離が近かったらしく、捜索班は慌てて子供を庇う。
「くっ……!」
雑魔に近かったのは捜索班、そのせいか3人は雑魔によって攻撃を受けてしまう。
少年を抱えていなければ避けられた攻撃だろうが、最優先事項は少年の命、捜索班3人は自らの身体を持って、雑魔の攻撃を止めた。
「あんたの相手は、そっちじゃないだろう!」
足立は『日本刀』を構え『踏込』を使用して、雑魔に攻撃を仕掛けた。
「これ以上、誰も傷つけさせない……!」
神行寺も『木刀』を構え『闘心昂揚』を使用して、身体能力を上昇させ、雑魔に攻撃を仕掛けた。
「子供を狙うなんて……! 私の前では、させない! 子供を守る時の姉ちゃん、なめんなぁっ!」
クレールは『機導剣』を使用して、雑魔の腕を攻撃する。
「今のうちに早く! ここから抜けて!」
クレールの言葉を聞き、捜索班は傷ついた身体ながらも、しっかりと少年を抱え、集落に向かって駆け出した。
「森の木々を傷つけたくなかったが、相手がお前さんなら話は別だ。思いきりやるぞ!」
孫六は叫び、覚醒を行う。
右の拳から陽炎が立ち上り、その中には鬼の姿が揺らめいている。
「さぁ、今度は此方が鬼になる番だ! 我が右手に鬼は宿れり!」
孫六は『日本刀』を抜き『踏込』を使用した後、『強打』による強力な一撃をお見舞いする。
「あんな子供を……お前達、歪虚の被害者にはさせない」
ロニは低く呟き『ウォーハンマー』を振り上げ『メイスファイティング』を繰り出す。
「はぁっ!」
神行寺と足立は不意打ちで雑魔の足を攻撃して動きを止める。
「つえぇぇあああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
クレールの叫びが森中に響き渡り、ロニ、孫六、足立、神行寺は総攻撃を行い、少年を脅かした雑魔を退治する事に成功したのだった――……。
●依頼、大成功を収めて
「ゆっくり飲め」
少年を集落に連れ帰った後、アクアレギアは所持していたジュースを少年に飲ませていた。
「今回は無事だったが、次は分かんねぇ、ちゃんと気を付けろ」
アクアレギアは気だるげに紙に書くと、少年は居心地悪そうに小さく頷いた。
「一人でよく頑張ったな! だが、お袋さんにあまり心配かけんようにな! ガッハッハ!」
少年の頭を撫でながら、孫六が豪快に笑い、その笑いと同じくらい豪快な文字を見せる。
「お前は賢いな? これからは、近づいてはいけないと言われた場所に近づかないように。今回の事で、どれだけお前の母親が心を砕いたか、その深さを知るといい」
少年と目線を合わせながら、ロニが話しかける。
少年自身も分かっているようで、酷く申し訳なさそうな表情を見せていた。
「肩の傷、少し深いけどちゃんと治るよ。治ったら、また元気に遊んでね。ただし、お母さんを悲しませないように、君は男の子なんだからお母さんを守ってあげなくちゃ」
少年の手を取りながら、少年が聞き取り易いように、クレールはゆっくりと呟く。
「今回は早期発見が出来たから、トランシーバーは必要なかったな」
森に仕掛けていたトランシーバーを回収した後、足立が苦笑気味に呟く。
だけど『必要なかった』というのは結果論であり、今回の任務のためをそれほど真剣に考えていたのだから、決して足立の行動は無駄にはなっていない。
(……俺一人の力じゃないけど、子供を守れたんだ)
神行寺は弱々しくも微笑む少年の姿を見つめながら、心の中で呟く。
(怖かったけど、これから何とかなる……一歩ずつ、前に進んでいけばいいんだ)
神行寺は安堵のため息を漏らしながら、薄く微笑んだ。
「今回は運が良かったとも言えるわね。偶然その子を見つけられて、偶然雑魔と遭遇、偶然囮班もいて、アリス達は集落に向かう事が出来た――……でも、運も実力のうちよね」
「そうだね! 雑魔には会っちゃったけど、こうやってその子を助けられたし、ユウカ達も怪我したけど、重傷ってわけじゃないし! ユウカ達、運が良かったんだよ」
ユウカが元気に答えた時、アクアレギアが「あ」と思い出したように母親に近づく。
「結局、これは使わなかった。そのガキは気ぃ失ってたからな」
アクアレギアは預かった首飾りを母親に返す。
その後、僅かな休息を取った後、ハンター達は報告をするために帰還していった。
END
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子供を助けるために クレール・ディンセルフ(ka0586) 人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2014/07/03 18:06:05 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/06/30 17:56:52 |