特命・肖像画を奪還せよ

マスター:青木川舟

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/03/28 19:00
完成日
2015/04/05 14:18

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●特命ハンター非公式依頼
「やあ、どうも。すみません、このようなところで」
 あるハンターは、馴染みのソサエティ職員に呼び出され、大衆向けの居酒屋にやってきた。先に席についていた職員に迎えられ、ハンターはその向かいに腰を下ろす。飲み物を頼み、2、3の世間話を挟んだところで、職員は本題を口にした。
「今回お呼びしたのはですね、ちょっと相談……というか、聞いてもらいたい話があったのですよ。先日ソサエティに来た、とある依頼についてなのですがね――」
 普通、依頼の話ならオフィスですればいい。2人はちょくちょくオフィスで顔を合わせているのだから。だというのにわざわざ外に呼び出して話をするということは――表立って話が出来ない。ソサエティに露見すると都合が悪いということか。
 ハンターがそう尋ねると、職員は頷いた。
「結論から言いましょう。今回の依頼は『盗み』です」
 盗み――つまりは窃盗だ。当然犯罪行為に当たる。
 ハンターが怪訝な顔になったのを見て、職員は口調を早める。
「もちろん、ただの犯罪行為の片棒担ぎの依頼なら断って通報しますよ。ソサエティは何でも屋ではないのだから。しかし今回の件については、おそらくあなたなら興味を持つのではないかと思ってそうしなかったのです」
 ハンターは少し考えて、とりあえず話を急かした。職員は待ってましたとばかりに饒舌になる。
「依頼主はクラウス・フォン・アーデルハイツという若い貴族です。貴族と言っても、いわゆる没落貴族というやつで、暮らしぶりは質素なもののようですがね。昨年、両親のアーデルハイツ卿と御夫人を相次いで病で失い、一人息子だった依頼主はそれを機に、屋敷や保有する調度品、美術品などを売り払い、街に出てきたそうなのです。しかしその際、1つだけ彼が手放すことを躊躇い、手元に残していた物があったのです」
 職員は一旦酒をあおり、間を置いた。
「ジョルジオ・アンジェローニ――芸術に興味が無くても聞いたことあるでしょう。4世紀も前に活躍した大芸術家。彼の描いたアーデルハイツ家の祖先、セバスティアン・フォン・アーデルハイツの肖像画が、代々家宝として受け継がれてきていたのです。それだけは、依頼主は手放すことが出来なかった。ところが、現在その肖像画は彼の手元には存在しない。盗まれてしまったのです」
 盗まれた? ハンターがそう訊き返すと、職員は頷いて続けた。
「移住のごたごたの最中に、数名の強盗に襲われたそうです。強盗は初めから狙っていたかのように、他の金品には一切手を付けず、アンジェローニの肖像画だけを奪っていきました。依頼主はご自分の人脈を駆使して辛抱強く調査を続け、強奪の主犯が豪商のステファン・ノーレッジ氏であると結論付けたそうです。ここまでの話は、全て裏付け調査も済んでいます。事実だと考えていいでしょう」
 ハンターはなるほど、と頷いた。話が見えてきた。つまり依頼の『盗み』とは、そのアンジェローニの肖像画を、豪商ノーレッジから奪い返せということだろう。しかしそんなことはしなくても、そこまで調べが付いているのなら、あとは警察に任せればいいではないか、と考えるのは当然の思考だろう。そう職員に尋ねると、職員は首を横に振った。
「その手は既に失敗しています。ノーレッジという男は毛皮の取引で一代で財を築き上げた成金商人なのですが、かなり後ろ暗いこともやっているという噂は尽きないのです。それでものうのうと商売を続けられているのは、警察の上層部と賄賂で繋がっているからなのですよ。ですからいくら依頼主がノーレッジの悪行を訴えても、もみ消されてしまう。没落貴族の依頼主では、そこまでが精一杯だった。そこで最後の手として、ハンターズソサエティに頼ったのです」
 しかしこの依頼、相手が悪であろうと『窃盗』には変わりない。ソサエティが表立って公式にこの依頼を受諾するのは、今後ソサエティ自身の首を絞める可能性がある。だからこの依頼を受けた職員は、ソサエティを通さず、個人的にこの話を馴染みのハンターに持って来たのであった。
「この件はなるべく表ざたにはしたくありません。ハンターズソサエティの関与が疑われるのも避けたいですし、依頼人の立場も危うくなります。行動中は可能な限り相手を傷つけず、痕跡も残さないのが理想です。モノが帰って来た場合、依頼人は美術館に肖像画を売却し、そこから正規の報酬と同額を支払うとおっしゃっています。いかがです? 内容はグレーですが、興味をそそられるのではないですか、あなたなら」
 職員に見つめられ、ハンターは小さく息を吐き、一口飲み物をあおった。

リプレイ本文

●獅子身中へ
「屋敷の周りをうろうろしてみたんだが」
 西日が世界を橙に染め始めるころ、ユーロス・フォルケ(ka3862)が話を切り出した。
「人気の無い部屋の窓から入るのが一番だと思う」
「じゃあ俺がピッキングするッス。ガラス割って音たてたり、痕跡残したりはなるべく無い方がいいッスから」
 高円寺 義経(ka4362)の提案に、シャリファ・アスナン(ka2938)が頷く。
「壊さないに越したことはないしね。荷車の方は?」
 そう尋ねると、天ヶ瀬 焔騎(ka4251)が、万全だ、と呟いた。
「屋敷の裏手で待機しておく。呼ばれればいつでも突入しよう……」
「ねぇねぇ~、あたし達のお話は聞いてくれないのぉ? 頑張ったんだよぉ~。ねーカナちゃん♪」
 北条・真奈美(ka4064)が能天気に甘えるような声で会話に割り込んできて、北条・佳奈美(ka4065)の腕に絡みついた。
「マナ姉、順番順番。大丈夫だから」
「えっと……じゃあ、屋敷であったこと、教えてくれる?」
 シャリファに尋ねられ、佳奈美は報告を始めた。

 北条姉妹がノーレッジの屋敷を訪れると、初老の使用人が笑顔で2人を迎え入れた。
「うわぁー! 広ぉ~い♪」
 玄関ホールは3階まで吹き抜けになっており、そこだけで民家が1軒収まりそうな空間が広がっていた。屋敷はそこを中心として、左右に広がるような形をしており、その両側に向かって左右対称に1対の階段が伸びている。
 2人は1階の応接間へ通された。高級そうな椅子とテーブル、大きな暖炉、そして壁に掛けられた絵画の数々。見回してみたが、そこに依頼主が求める肖像画は無かった。
 数分後、がっしりした体格の中年男性が部屋へやって来た。
「お待たせして申し訳ありません。私がノーレッジです」
 ノーレッジはにこやかな表情を浮かべ、年下の2人に対しても物腰柔らかな態度を崩さない。
「真奈美ですぅ♪ 今日はぁ、貴重な時間を割いてくれてぇ、ありがとうございまぁーす♪」
「妹の佳奈美です。こちらはお時間いただいたお礼です」
 佳奈美は持参した酒とツナ缶を差し出した。
「ほう、ありがとうございます。せっかくですから飲みながらお話しましょう」
 しばらくリアルブルーの話を交えつつ酒を愉しんだ後、ノーレッジはブランデーグラスを傾けながら切り出した。
「結論を申し上げましょう。お2人に役立つような情報は、私は持ち合わせておりません。しかし私にはそれなりの人脈があります。もしかしたら、あなた達が欲する情報を持っている人間を探すことが出来るかもしれない」
「本当!?」
 佳奈美が思わず身を乗り出す。しかしノーレッジは鋭い目で彼女を見据えた。
「ただし、私は商売人です。あなた方に情報を提供するにも、それ相応の対価を戴きたい。金品でも、有益な情報でも、何でも構いませんが、私にとって価値のある何かを戴かなければ割に合わない」
 今日割いた時間の分は戴いたお土産で回収出来ましたがね、とノーレッジは冗談めかした。
「……お話しした通り、私達は殆ど着の身着のままで転移してきたから、財産も大して持ってないし、あなたが知らない情報を知っているとも思えないの」
「でもぉ、あたし達ならぁ、相応の代価は支払えると思うよぉ♪」
 北条姉妹は怪しく微笑みながらスッと立ち上がり、その豊満な肉体を蠱惑的に揺らしながらノーレッジの傍らまで歩み寄ると、椅子に座っている彼の両ももの上に、片側ずつ腰かけた。
「おや、これは……悪い気はしませんがねぇ。私のような老いぼれに」
「んふふぅ、あたし達ぃ、おじ様もだぁーい好きなんだよぉ。ねーカナちゃん♪」
 真奈美がノーレッジの左腕を大きな両胸に挟み込むように抱き、彼の胸板を人差指で円を描くようにそっと撫でながら言う。さらに佳奈美も攻勢を仕掛ける。ノーレッジの身体にしな垂れかかりつつ、彼の耳元で甘えるように囁く。
「むしろ勢い任せの若い男より、あなたのような経験豊富な男性の方が魅力的だわ。その落ち着き様、さぞ多くの女を手籠めにしてきたのでしょうね」
「否定はいたしません」
「あたし達に協力するって約束してくれるならぁ~、リアルブルーに帰るまでぇ、2人揃って専属契約してあげてもいいよぉ~♪」
「ふふふ……なるほど、それはまた魅力的な提案ですな。しかしもしかしたら、あなた方を手放したくないばかりに肝心の情報を与えないままでいるかもしれませんよ?」
「でもぉ……それも悪くないかもぉ♪」
「意地悪な人ねぇ。あら、グラスが空よ」
 佳奈美は空になったノーレッジのグラスに酌をする。
「これはどうも。美しい女性と飲む酒は格別ですな」
「うふふふ。それにしてもこのグラス、一見シンプルだけど細かい装飾が綺麗ね。お高いものかしら」
「おや、お目が高い。私、このような調度品や美術品にはこだわる質でしてね。屋敷中のもの合わせていくら注ぎ込んだのか、数えるのが怖いくらいです」
「すごぉい♪ 見てみたいなぁ~」
「では後ほど、ギャラリーをご案内いたしましょう」

「その後、1階に3部屋もあるギャラリーを案内してもらったけど、例の肖像画は見当たらなかったわ。1階は割と自由に出入りできたし、あとは使用人の作業場くらいしかなかったから、肖像画があるなら2階か3階ね」
 真奈美の報告を受け、焔騎が尋ねた。
「……他に美術品を蒐集している場所について言及はなかったか?」
「『これでもコレクションのほんの一部』みたいなことは言ってたけど、具体的には……というか、絵は屋敷中に飾られていたわね。どんな悪いことをすればそんなに稼げるのかしら」
「でもぉ~、ダンディで素敵な人だったよぉ♪ あたし本当に愛人になってもいいかもぉ~」
 佳奈美の言葉に真奈美は答えず、しかし怪しく笑みを浮かべた。

●作戦開始
 2階の無人のゲストルーム。そのバルコニーに、シャリファ、義経が闇夜に紛れて潜んでいた。見回りの灯りが過ぎ行くのを見計らいで鍵を開け、音も無く部屋へ侵入。この部屋にも絵は飾ってあるが、どれもお目当てのものではない。
 廊下に人の気配が無いのを確認し、そっと扉を開く。2人は目を合わせて頷き合うと、シャリファはこのまま2階の探索へ。義経は3階へと向かった。
 一方ユーロスは、庭から屋敷の中を観察していた。見回りの灯りは、3階、2階、1階と巡回し、1階の端で消えた。屋敷の裏手へ回り、先に侵入した2人と同じバルコニーの窓から忍び込む。忍び足で1階へと降り、先程灯りが消えた場所へ。すると暗い廊下の中、扉の隙間から灯りの漏れている部屋を見つけた。彼は廊下に置いてある石膏像の裏へ身を顰めると、トランシーバーを取り出した。
「使用人の詰所を見つけた。1階の端だ。何かあったら連絡する」

 シャリファの居る2階は廊下の両側に部屋があるが、屋敷の裏手側は全てゲストルームであることは外から見て分かっている。ゲストルームに盗んできた絵は置かないだろうと考えたシャリファは、その反対側の部屋を端から見ていくことにした。
 周囲を確認し、扉を開けて中へ滑り込むように入る。その部屋はゲストルームよりもかなり広く、大きなテーブルが真ん中に置かれている。壁にはやはりたくさんの額縁。
(晩餐室ってやつかな?)
 シャリファは暗闇の中、壁の絵の調査を開始した。

 3階にたどり着いた義経が最初に侵入した部屋は、どうやらギャラリーのようだ。おそらく1階は客に見せる為のもの。見せられないものはこちらにあるはずである。ギャラリーは3階にも3部屋あった。義経はその全てに忍び込んで絵を1つ1つチェックしたが、依頼人の探す肖像画は見当たらない。
 諦めず次の部屋へ向かおうとしたとき、トランシーバーからユーロスの叫ぶような小声が聞こえてきた。
「見回りが出てきた……! 3階に向かってるぞ……!」
(なっ!? もうッスか!?)
 事前の情報ではもう少し猶予があったはずだが、いろいろ周囲を嗅ぎまわったことで警戒されてしまったのかもしれない。
 義経はまだギャラリーの中に居た。今から外へ出て見回りと鉢合わせするのはマズイ。彼は裸の男が仁王立ちしている大きな石像の台座の影にしゃがみ込み、息を殺す。待つこと十数秒、外からドアが開いた。
(入ってくるな……入ってくるな……入ってくるな……!)
 義経はじっと念じた。見回りは扉から頭だけを覗かせて灯りで室内を照らしながら見回し、やがてドアを閉めて立ち去っていった。義経が隠れている像以外は、ほとんど絵が壁にかかっているだけの部屋である。それで十分だと見張りは判断したのだろう。
(ふう……助かった。さて、奴が2階へ降りたら次の部屋にいくか)

 2階の遊戯室にいたシャリファも、ビリヤード台の影に臥せ、じっと気配を殺していた。しばらくすると、ドアの前に人の気配が立ち、見回りが扉を開けて室内へ入ってきた。遊戯室はギャラリーと違い、ビリヤード台やダーツ、ルーレット付きのカジノ台、各種ボードゲームなど、大きな物品がたくさん置いてある。ちゃんと部屋中を巡りながら、侵入者を探すだろう。シャリファの位置では、見つかるのは時間の問題だった。
(仕方ない……)
 シャリファは見回りが自分の近くまで寄ってくるのを待ち構え、背後から襲い掛かった。
「だっ――」
 見回りの使用人が叫び声を上げる前に締め落とし、意識を飛ばす。そいつはその場に転がしておき、トランシーバーのスイッチを入れる。
「ごめん、仕方なく見回りを気絶させた」
「まずいな。詰所には他にも何人か居る。見回りが戻らないと怪しまれるぞ。時間が無い」
 ユーロスがそう焦り気味に言うのを、義経が遮る。
「見つけたッス……! 場所は3階、ノーレッジの寝室!」

 頬を叩かれてノーレッジが目覚めると、既にナイフが眼前に突きつけられていた。
「声を出すな」
 シャリファに脅され、彼は無言で周囲を見渡す。
「さあ……腕を出してくれ。こちらも穏便に済ませたいんだ……」
 焔騎の言葉に素直に従うノーレッジ。焔騎は彼の手足をロープで縛り、猿轡を噛ませる。
「まだ暗い……もう一眠りでもしていろ。朝になれば使用人に見つけてもらえるだろう。さて、絵の方に移ろうか……」
 暗闇の中で、布とロープで手早く肖像画を固定していく焔騎。それを横目に、扉の脇で警戒中の義経がトランシーバーの向こうのユーロスに囁く。
「間もなく運び出すッス。そっちは大丈夫ッスか?」
「ああ――いや待て。使用人がもう1人出てきた。見回りが戻らないことに気づいたらしい。西側の階段で3階に行こうとしてる。反対側から急いで脱出しろ」
「了解ッス! 2人とも聞こえたッスか?」
「ちょっと待って。この絵かなり大きいし、正面玄関から脱出するのはどうかな。バルコニーから下ろしてると時間もかかるし大変だと思うんだけど」
 既に絵の梱包を終え、焔騎と一緒に担ぎ上げたシャリファが言った。
「確かに……どうだ、いけると思うか?」
 焔騎がユーロスに尋ねた。トランシーバーからは、監視場所を移動するガサゴソという音のあと、彼の声が届く。
「――ああ、今のところ玄関ホールは無人だからいけなくもない。だがいつ他の使用人が出てくるか分からないから、とりあえず急いで1階と2階の中間の踊場まで行ってくれ。そこなら直接は見えない。とにかく今は3階に向かってる奴に見つかる前にその場を離れろ」
「分かったッス」
 義経が先行してルート警戒、2人はその後に続き、小走りで部屋を出た。東側の階段を一気に下り、玄関ホール手前の踊場で、黒い布に包まれた肖像画に身を隠す。
「踊り場に着いたッス。状況はどうッスか?」
「大丈夫だ。誰も居ない」
 ユーロスからのOKが出た。義経はさっそく立ち上がろうとするが、焔騎が呼び止める。
「荷車が裏手のバルコニーの側に置かれたままだ……。俺が先に行って正面に回してくるから……先導を代わってくれないか」
「分かったッス」
 焔騎に頼まれ、義経が運び手を交代。シャリファと共に絵を担ぎ上げる。焔騎がトランシーバーに呟く。
「……いつでもいけるぞ」
「よし……GO!」
 ユーロスの合図で焔騎はホールを駆け抜け、玄関へ。扉にたどり着くと、中から鍵を開けて一足先に外へ。少し遅れて絵を持つ2人が開いた扉を潜った。その時には既にその場に焔騎は居ない。2人は立ち止まらずに門から出て、焔騎が向かったであろう屋敷の裏手へ向かう。その途中で荷車を引いた焔騎と合流。絵を荷車に載せて、迅速に現場を脱した。
 その様子を確認したユーロスも、縛られたノーレッジが発見されたらしく騒がしくなった3階あたりを尻目に玄関からこっそり脱出したのであった。

●名画を名画足らしめているもの
 ノーレッジ邸から絵画が強奪された件については、一切表ざたにはならなかった。侵入した下手人がハンターズソサエティのハンター達であることも露見はしなかったらしい。姿は見られたものの、スキルを使うことは無かったため普通の盗人と思われたのかもしれない。
 ソサエティの仲介の下、肖像画は信用のおける大きな都市の美術館へと売却された。
「この度は、本当にありがとうございました」
 その美術館の展示室、他のジョルジオ・アンジェローニ作品と並んでも一層威厳を放つ肖像画の前で、依頼人であるクラウス・フォン・アーデルハイツが、最後まで護衛を買って出た焔騎に礼を述べる。焔騎は慇懃にそれを受けた。
「こちらこそ、これほどの名画を救い出すことが出来て感銘の至り……その礼、他の者にも伝えておきましょう。本当に素晴らしい絵です。描かれた人物の威厳がにじみ出てくるような……今更ですが、本当に売ってしまって良かったのですか……?」
「ええ、もう私にはこの絵を守っていく力はありません。この美術館まではノーレッジの手も届きません。警察に訴え出たとしても、逆に奴の悪行のボロが出るだけでしょう」
 クラウスは吹っ切れたように微笑んだ。
「あの絵は我がアーデルハイツ家の誇りでした。だから最初は手放せなかった。でも失って気づいたのです。どんなに落ちぶれようと、誇りはこの胸にあるのだと」
「なるほど……」
 その誇りの糧となれて幸いだ――そう呟いて、焔騎はクラウスに別れを告げた。

依頼結果

依頼成功度成功
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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 森の戦士
    シャリファ・アスナン(ka2938
    人間(紅)|15才|女性|疾影士
  • たたかう者
    ユーロス・フォルケ(ka3862
    人間(紅)|17才|男性|疾影士
  • 能力者
    北条・真奈美(ka4064
    人間(蒼)|21才|女性|霊闘士
  • 艶色夜顔
    北条・佳奈美(ka4065
    人間(蒼)|21才|女性|疾影士
  • 炎滅の志士
    天ヶ瀬 焔騎(ka4251
    人間(紅)|29才|男性|聖導士
  • 現代っ子
    高円寺 義経(ka4362
    人間(蒼)|16才|男性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/03/24 11:05:23
アイコン 作戦相談卓
高円寺 義経(ka4362
人間(リアルブルー)|16才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2015/03/28 17:23:57