ゲスト
(ka0000)
虹の怪盗
マスター:篠崎砂美

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/07/06 07:30
- 完成日
- 2014/07/13 18:12
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
『今夜、この倉庫にあるお宝をいただく 虹の怪盗』
極彩色の街ヴァリオスの商人コッレツィオの許にそんな予告状が届いたそうです。
これは、今、同盟の各都市で巷を騒がしている自称『虹の怪盗』、アルコバレーノの予告状に違いありません。
「間違いはないんだな」
同盟軍陸軍のアルマート・トレナーレ少佐が、情報屋であるミチーノ・インフォルに念を押しました。今度はボトルレターで情報交換などという回りくどい手は使わずに、街角の辻占いの場でひそひそと話しています。
「あたしの情報を疑うの?」
ミチーノが、ちょっと柳眉の端を吊り上げて言い返します。可愛い顔で凄まれてもあまり迫力はありませんが、怒るということは、予告状が届いたという情報は確かなのでしょう。
「コッレツィオのとこの従業員が騒いでるのは、商工会でも密かな噂よ。もっとも、あいつは評判が悪いから、みんないい気味だと思っているけれど。可哀相なのは、怪盗のおかげで赤字出してる保険屋ね。また今回も持ち出しでしょうね」
「だからといって、見過ごすこともできないだろうが」
「でも、あそこの倉庫街は海軍の管轄でしょう? 陸軍のあなたが手を出してもいいの?」
あからさまにまずいでしょうと、ミチーノが聞き返します。
「うーん、非公式にハンターでも雇うさ。とにかく、奴には何度かおちょくられているんだ、今度こそとっ捕まえてやる」
「まあ、頑張ってね、少佐さん」
意気込む少佐に、ミチーノが気のない応援を送りました。
「警備? そんな物、うちの若いもんで間にあってる。いらんいらん。おい、少佐はもうお帰りだ、お送りしろ」
少佐の申し出に、コッレツィオはにべもありません。
「まったく、変なちょっかい出されると、またいろいろ考えなくてはならんな」
コッレツィオが、少し考え込みました。ちょっと悪い顔です。何か手を回すつもりでしょうか。
「すみませんね。うちのボスはああいう人なんで、今日のところはお帰りを」
「おい、本当にお前たちだけでいいのか?」
どことなく人のよさそうな若者に、少佐が質しました。どう考えても警備が手薄です。
「まあ、ボスはああ言っていますので。それにしても、警備が厳重なここを狙うだなんて、怪盗とかも物好きなものです」
若者が、丁寧に少佐を外へと追い出します。
「畜生、こうなったら、何が何でも現場を押さえてやる」
悔しそうに、少佐が叫びました。
極彩色の街ヴァリオスの商人コッレツィオの許にそんな予告状が届いたそうです。
これは、今、同盟の各都市で巷を騒がしている自称『虹の怪盗』、アルコバレーノの予告状に違いありません。
「間違いはないんだな」
同盟軍陸軍のアルマート・トレナーレ少佐が、情報屋であるミチーノ・インフォルに念を押しました。今度はボトルレターで情報交換などという回りくどい手は使わずに、街角の辻占いの場でひそひそと話しています。
「あたしの情報を疑うの?」
ミチーノが、ちょっと柳眉の端を吊り上げて言い返します。可愛い顔で凄まれてもあまり迫力はありませんが、怒るということは、予告状が届いたという情報は確かなのでしょう。
「コッレツィオのとこの従業員が騒いでるのは、商工会でも密かな噂よ。もっとも、あいつは評判が悪いから、みんないい気味だと思っているけれど。可哀相なのは、怪盗のおかげで赤字出してる保険屋ね。また今回も持ち出しでしょうね」
「だからといって、見過ごすこともできないだろうが」
「でも、あそこの倉庫街は海軍の管轄でしょう? 陸軍のあなたが手を出してもいいの?」
あからさまにまずいでしょうと、ミチーノが聞き返します。
「うーん、非公式にハンターでも雇うさ。とにかく、奴には何度かおちょくられているんだ、今度こそとっ捕まえてやる」
「まあ、頑張ってね、少佐さん」
意気込む少佐に、ミチーノが気のない応援を送りました。
「警備? そんな物、うちの若いもんで間にあってる。いらんいらん。おい、少佐はもうお帰りだ、お送りしろ」
少佐の申し出に、コッレツィオはにべもありません。
「まったく、変なちょっかい出されると、またいろいろ考えなくてはならんな」
コッレツィオが、少し考え込みました。ちょっと悪い顔です。何か手を回すつもりでしょうか。
「すみませんね。うちのボスはああいう人なんで、今日のところはお帰りを」
「おい、本当にお前たちだけでいいのか?」
どことなく人のよさそうな若者に、少佐が質しました。どう考えても警備が手薄です。
「まあ、ボスはああ言っていますので。それにしても、警備が厳重なここを狙うだなんて、怪盗とかも物好きなものです」
若者が、丁寧に少佐を外へと追い出します。
「畜生、こうなったら、何が何でも現場を押さえてやる」
悔しそうに、少佐が叫びました。
リプレイ本文
●打ち合わせ
「よく集まってくれた。これは極秘任務である。これからコッレツィオの倉庫へとむかい、そこで虹の怪盗アルコバレーノをとっ捕まえる」
集まったハンターたちを前にして、アルマート・トレナーレ(kz0044)が言った。
「ふむ、怪盗か。なかなか楽しい響きじゃないか」
「うん、ちょっとわくわくしてきた」
少佐の言葉に、ジョナサン・キャラウェイ(ka1084)とフラヴィ・ボー(ka0698)が目を輝かせた。どうやら、こういったシチュエーションは好きらしい。
「ふーん、怪盗かあ」
話を聞いた トライフ・A・アルヴァイン(ka0657)が、すっと少佐の近くにやってきた。
「やあ少佐、また会ったね。君のハニーとは仲良くやってるかい?」
「なんだそれは?」
言ってから、ああと少佐が気がつく。以前、情報屋のミチーノ・インフォル(kz0047)から虹の怪盗の情報を買ったことがあるのだが、手違いからトライフたちにそのメモが渡ってしまったことがあった。しかし、その時は、しっかりと口止め料を払ったはずなのだが……。
「で、俺なりに酒場で情報を仕入れたんだがな」
結局、そこで分かったのは、怪盗の評判が真っ二つだと言うことだけだ。ある者は悪徳商人からだけ盗む義賊だと言い、ある者は自分勝手の基準で盗みをする犯罪者だと言う。義賊と言っても、別に盗んだ金を市民に配るわけではないので、普通に泥棒らしい。
「それで、調査費のことなんだが……」
どうやら、酒場の飲み代を少佐のつけで済まそうとしたらしいが、当然そんなことができるわけがない。けんもほろろに断られたので、経費として少佐から金をせびろうということらしい。
「そんなもの経費になるか」
さすがに、少佐もそんなものは経費とは認めない。
「まあまあ。私もちょっと調べてきたんだけど、コッレツィオってのは、評判悪いね。最近フィギアの販売に手を出したみたいだけれど、うまくいってないみたいだし。前にフィギアの輸送を受けたときも、商品の扱いがぞんざいだったし」
満月美華(ka0515)が、二人の間に入る形で話を続けた。
「うんうん、あのフィギアは酷かったよねぇ」
天川 麗美(ka1355)も美華の言葉にうんうんとうなずいた。アイドルのアットリーチェちゃんのフィギアだという話だったが、ほとんど歪虚みたいなできだったのだ。
「ああ、その人形もこの倉庫にまだ大量にあるって話だ。今回狙われてるのはその人形らしい。なんでも、プレミア物だという話でな。もっとも、そう言ってるのはコッレツィオだけだが」
少佐が美華を補足した。
「ただ、ここの荷物は高い保険に入ってるって話だけど、あの酷い人形に保険なんてかけるかなあ」
美華たちの目から見ても、あのフィギアは価値があるとは思えない。
「どうせ、保険金詐欺でもしようとしているんだろ」
タバコに火をつけながら、トライフが吐き捨てるように言った。
「確かに、情報を纏めると、わざと怪盗に盗んでもらって保険金をせしめようとしているとしか思えないな」
ライル・ギルバート(ka2077)の言葉に、全員がうなずいた。
「盗む方も、盗まれる方も怪しいと言うことか」
ヒース・R・ウォーカー(ka0145)がつぶやいた。ヘタをしたら、コッレツィオが怪盗とぐるだと言うこともありうる。
「それで、怪盗の予告状とかないのかな。あれば、逃げられても臭いで追跡できたりするかもしれない」
犬を連れてきているキヅカ・リク(ka0038)が少佐に聞いた。
「さすがに、こんなところに証拠品は持ってきていないな。コッレツィオは持っているかもしれないが、俺も見せてもらってはいないからな。とりあえず、コッレツィオは被害者と言うよりも共犯者扱いで考えた方がいいな。奴らに邪魔されないように倉庫に侵入して、怪盗が現れるのを待とう。まあ、本当に現れたらだがな」
そう言って、少佐が作戦の開始を告げた。
●倉庫侵入
「正面出口と裏口に二人ずつ見張りか」
倉庫の出入り口の警備状況を調べたボーがライルとうなずき合った。
「他に出入り口がないか調べてくるかねぇ」
ヒースが、立体感覚を駆使して身軽に屋根へと上りながら進入路がないか調べた。手頃な窓があったので、魔導短伝話で待機している少佐たちに伝えるといったん戻ってくる。
「よし、二手に分かれて侵入するぞ。美華とトライフは外で待機だ」
連絡を受けた少佐が、素早く班分けする。
「出番だねぇ、ナナクロ」
ヒースが、連れてきた猫を使って入り口の見張りの注意を逸らそうとした。
「にゃあ」
行ってきますと、意気揚々と歩いていった猫だったが……。
「猫か?」
「そんな物ほっとけ」
見張りたちは、ただの野良だと思って気にもかけない。
「猫好きに悪人はいない、つまり、逆は悪人だね」
猫が無視されたのが気に障ったのか、ヒースが物陰から一気に見張りに襲いかかった。
「あっ、こら」
少佐が止める間もあらばこそ、ライルとボーも加勢して、見張りたちを一瞬で気絶させる。
「危ない橋を渡る奴らだな。叫ばれてたらどうするつもりだったんだ。よし、とにかく中に入るぞ」
「俺はここで見張りのふりをしていよう」
少佐にうながされると、ライルがここに残ると言った。
縛りあげた部下たちを隠すと、少佐たちは中へと入っていった。
一方、ジョナサンと麗美とリクは、屋根の窓から中へと入っていった。中央以外照明がほとんどないのをいいことに、麗美のロープを伝って下へと下りる。
「見張りを無力化しろ」
上から入った班から、中央にいるお宝周りの見張りの人数を聞いて、少佐が各人に指示を出す。
「はははは、こちらだ」
ボーが、ちょっとノリノリで見張りを挑発した。
「本物の怪盗!? とにかく捕まえろ」
先だって少佐をつまみ出した若者が叫んだ。
「こっちにもいるぞ」
ライトで敵を照らしながら、リクも姿を現した。見張りが二手に分かれて侵入者を追いかける。
「こっちこっち」
倉庫内に均等にばらけた仲間たちで、荷物の間の狭い道を追いかけてくる敵を翻弄する。
「こっちだ」
迷ってキョロキョロしていた見張りを、ボーが一撃で気絶させる。
他の場所では、リクもライトで一瞬敵の視力を奪ってから、銃を突きつけて取り押さえた。
「こっちか……うわっ!」
気配を感じて物陰をのぞき込んだ見張りの一人は、リクが配置しておいた犬に吠えられて、思わず尻餅をついたところを少佐に取り押さえられた。
捕まえた見張りは、ジョナサンと麗美が縛りあげて、隅っこの方に転がしておいた。
「おじさんが三人って、見張りとしては頼りないってかんじぃ?」
ここまでトントン拍子で進んだことに気をよくして、麗美が言った。まだ他に隠れていないかと、ジョナサンと共に床下や壁などに隠し扉などがないか調べて回る。
一方、裏口に回った少佐とボーが、そこの見張りをやっつけて戻ってくる。
入り口横の警備部屋のようなスペースも確認するが、中に人はいなかった。
これで、倉庫は完全制圧だ。
「見張りは全部倒したか?」
「そう思いたいが」
少佐に言われて、ボーが答えた。今のところ、ハンターたち以外に動く影はない。
「一応、念のためにぃ、ねっ」
麗美がお宝の周囲にナッツをばらまいた。もし誰か近づいてくれば、これで分かるだろう。
そして、お宝がよく見える位置に麗美が身を潜める。反対側では、同じようにしてヒースが隠れた。
裏口近くにはリクとジョナサンが目を光らせ、少佐とボーが荷物の上に登って身を潜める。
後は、怪盗がやってくるのを待つだけだ。
●虹の怪盗
「なんだ、見張りはお前一人か。まあいい、様子はどうだ?」
外では、様子を見に来たコッレツィオが、ライルを部下だと思って状況を訊ねていた。
「問題ありません」
「よし、じゃあ、そろそろ始めるぞ」
「はっ!? あっ、いや、はい!」
「おかしな奴だ」
ライルの反応にぶつぶつ文句を言いつつ、コッレツィオが倉庫の中へと入っていった。そのまま、手荷物を持って見張り部屋の中に入って、何やらごそごそと始める。
「いったい何をしているんだ?」
後をつけたライルが、物陰からじっと様子をうかがった。
すると、しばらくして、何やら派手な格好をしたコッレツィオが出てきた。
白いスーツに白いマント、白いシルクハットを被り、白い仮面をつけてステッキを持っている。オシャレというか、小太りのコッレツィオがそんな格好をしても滑稽なだけだ。だが、なぜか、本人はノリノリのようだった。
「はっはははは、虹の怪盗登場! なんだお前たち、拍手せんか!」
自らマントを翻して怪盗を名乗ると、コッレツィオが中央のお宝めがけて小走りに進んでいった。
まさか、本当に怪盗の正体はコッレツィオなのだろうか。
「はははは、全て叩き壊してやる!」
もの凄く似合わないポーズをつけ、ステッキを振り上げながらコッレツィオが駆け出していき、そして豆に足をとられて転んだ。
「捕まえろ!」
少佐の声に、ヒースが飛び出した。緋色の輝きを引いて一気にコッレツィオに辿り着いたヒースが、そのまま馬乗りになって短剣を首筋に押しつけた。
「ひっ、な、なんだ、これは!?」
驚きとも怯えともとれる声をあげるコッレツィオに、リクが静かに銃をむける。それを見て、ヒースが剣を引いた。
「こいつ、コッレツィオだ」
やってきたライルが告げる。
「さて、これはどういうことか説明してもらおうか」
やれやれという感じで、少佐がコッレツィオの前に立った。
「まさか、本当に、あんたが虹の怪盗だなんて言うんじゃないだろうなあ。まあそれでも、俺としてはいいんだが。どれくらい余罪が数えられるかなあ」
ひいふうみいと指を折って、少佐が言った。
「わしが怪盗のわけないだろうが!」
濡れ衣だ、早く開放しろと、コッレツィオが叫ぶが、説得力は皆無だ。
「さっき、このお宝を壊そうとしたな。どうせ保険金詐欺なんだろ」
「ああ、そうだよ。悪いか。その人形を見たら、誰だって、そういうことを考えるわい!」
ボーの言葉に、コッレツィオが開きなおった。
「まあ、この人形だしぃ。他に、密輸品とかはないのかなぁ」
麗美の言葉に、コッレツィオがとぼける。
「どのみち盗難の調査が入るから、密輸品は他の場所に移してるだろ。で、どうしてこんなことしたんだ?」
「人形が売れなかったんだよ。リゼリオで大人気だって言うから、わざわざオリジナルを作ったというのに、そのできだ。倉庫はあっという間に返品の山だし、発注が生きているから、どんどん納品されてきやがる。わざと、モデルのファンに情報を流して壊させようとしたのに、失敗するし……」
しまった、言わなくてもいいことまでと、コッレツィオが苦虫を噛み潰したような顔になる。
「で、結局、自分で壊して、それを怪盗のせいにして保険金をせしめようとしたわけか。じゃあ、怪盗の話もでっちあげか。なんてこった……」
とんだ無駄足だったと、少佐が落胆する。
「ああ、そうだよ。悪いか!」
「悪いだろが! 後できっちり締めあげてやる!」
開きなおるコッレツィオを少佐が小突いた。怪盗を捕まえたならいざ知らず、こんなちんけな犯罪をあげても、今回の独断専行のいいわけになるかどうか。状況はすこぶる悪い。
「で、いったい、どんなに酷い人形なんだ?」
「ああ、見ない方がぁ……」
麗美が止める前に、ボーがフィギアの中味を確かめてしまった。
「見なかったことにしよう……」
即座に、ボーが箱の蓋を閉めた。夢に見そうだ。これは、コッレツィオでなくても壊したくなる。
「なるほど。でもねえ、そんなことのために、人の名前を使わないでほしいなあ」
ふいに若々しい声がして、荷物の山の上に人影が現れた。コッレツィオの部下の若者だ。
「おお、早くわしを助けろ!」
急に元気になって、コッレツィオが部下に命じた。
「やだね」
あっさりと、若者が言い放つ。
「むしろ、名前の使用料を払ってほしいな」
言いつつ、若者が着ていたスーツを脱ぎ捨てた。その下から、コッレツィオがコスプレしていたような、白いマントと仮面の怪盗が現れる。
「ボナセーラ、皆々様」
虹の怪盗アルコバレーノが、優雅に一礼した。
「本物!?」
麗美がちょっと目を丸くする。
「おい、狂言じゃなかったのか!?」
少佐が、コッレツィオを小突いた。
「そんなにいじめないでも……。いや、そのコスプレは酷すぎだから、少しぐらいは叩いてもいいかな。なにしろ、勝手に予告状を使われたものでね。いったい何を企んでいるのかと見に来たんだが。まあ、酷い濡れ衣だな」
困ったもんだと、アルコバレーノが苦笑する。
「それは同意するな。だが、のこのここんなところに出てきたお前も馬鹿だな。もう逃げ道はないぞ」
少佐の言葉に反応して、麗美とジョナサンとボーが機導砲を、リクがリボルバーを怪盗にむけ、ヒースとライルが出口を固める。
「それはどうかな」
そう言ったとたん、アルコバレーノのマントが虹色に輝き、周囲に同化してその姿が見えなくなった。同時に、天井にしかけられていた爆薬が爆発し、もうもうたる白い煙が煙幕となって視界を覆い尽くす。
「それでは、チヴェディアーモ!」
「撃て、撃て!」
少佐が叫ぶが、煙幕の中に何か入っていたらしく、目が痛くてまともに狙いがつけられない。
「怪盗だ!」
かろうじて、リクとボーが魔導短伝話で、外にいる美華とトライフに告げた。
「本当に現れたんだ!」
突然の爆発の中から、夜空にむかって昇っていく色違いの七つ気球を見て、外で待機していた美華が叫んだ。
「ここにもいるわよ!」
ウィンドスラッシュで、逃げる怪盗を撃ち落とす。気球を切り裂かれていくつかの人影が墜落したが、その全てを撃ち落とすことはできなかった。遠ざかる気球が、夜の闇に消えていく。
「落ちた奴は任せておけ」
同じく外で待機していたトライフが、落ちた怪盗を捕まえに走った。やや遅れて、倉庫の中からみんなも飛び出してくる。
だが、墜落した怪盗は、全て人形だった。まんまと逃げられてしまったわけである。
「くそう、せっかく本物が現れたって言うのに……。覚えてろー、次こそは捕まえてやるからなー!」
夜空に、少佐のむなしい叫び声だけが谺した。
「よく集まってくれた。これは極秘任務である。これからコッレツィオの倉庫へとむかい、そこで虹の怪盗アルコバレーノをとっ捕まえる」
集まったハンターたちを前にして、アルマート・トレナーレ(kz0044)が言った。
「ふむ、怪盗か。なかなか楽しい響きじゃないか」
「うん、ちょっとわくわくしてきた」
少佐の言葉に、ジョナサン・キャラウェイ(ka1084)とフラヴィ・ボー(ka0698)が目を輝かせた。どうやら、こういったシチュエーションは好きらしい。
「ふーん、怪盗かあ」
話を聞いた トライフ・A・アルヴァイン(ka0657)が、すっと少佐の近くにやってきた。
「やあ少佐、また会ったね。君のハニーとは仲良くやってるかい?」
「なんだそれは?」
言ってから、ああと少佐が気がつく。以前、情報屋のミチーノ・インフォル(kz0047)から虹の怪盗の情報を買ったことがあるのだが、手違いからトライフたちにそのメモが渡ってしまったことがあった。しかし、その時は、しっかりと口止め料を払ったはずなのだが……。
「で、俺なりに酒場で情報を仕入れたんだがな」
結局、そこで分かったのは、怪盗の評判が真っ二つだと言うことだけだ。ある者は悪徳商人からだけ盗む義賊だと言い、ある者は自分勝手の基準で盗みをする犯罪者だと言う。義賊と言っても、別に盗んだ金を市民に配るわけではないので、普通に泥棒らしい。
「それで、調査費のことなんだが……」
どうやら、酒場の飲み代を少佐のつけで済まそうとしたらしいが、当然そんなことができるわけがない。けんもほろろに断られたので、経費として少佐から金をせびろうということらしい。
「そんなもの経費になるか」
さすがに、少佐もそんなものは経費とは認めない。
「まあまあ。私もちょっと調べてきたんだけど、コッレツィオってのは、評判悪いね。最近フィギアの販売に手を出したみたいだけれど、うまくいってないみたいだし。前にフィギアの輸送を受けたときも、商品の扱いがぞんざいだったし」
満月美華(ka0515)が、二人の間に入る形で話を続けた。
「うんうん、あのフィギアは酷かったよねぇ」
天川 麗美(ka1355)も美華の言葉にうんうんとうなずいた。アイドルのアットリーチェちゃんのフィギアだという話だったが、ほとんど歪虚みたいなできだったのだ。
「ああ、その人形もこの倉庫にまだ大量にあるって話だ。今回狙われてるのはその人形らしい。なんでも、プレミア物だという話でな。もっとも、そう言ってるのはコッレツィオだけだが」
少佐が美華を補足した。
「ただ、ここの荷物は高い保険に入ってるって話だけど、あの酷い人形に保険なんてかけるかなあ」
美華たちの目から見ても、あのフィギアは価値があるとは思えない。
「どうせ、保険金詐欺でもしようとしているんだろ」
タバコに火をつけながら、トライフが吐き捨てるように言った。
「確かに、情報を纏めると、わざと怪盗に盗んでもらって保険金をせしめようとしているとしか思えないな」
ライル・ギルバート(ka2077)の言葉に、全員がうなずいた。
「盗む方も、盗まれる方も怪しいと言うことか」
ヒース・R・ウォーカー(ka0145)がつぶやいた。ヘタをしたら、コッレツィオが怪盗とぐるだと言うこともありうる。
「それで、怪盗の予告状とかないのかな。あれば、逃げられても臭いで追跡できたりするかもしれない」
犬を連れてきているキヅカ・リク(ka0038)が少佐に聞いた。
「さすがに、こんなところに証拠品は持ってきていないな。コッレツィオは持っているかもしれないが、俺も見せてもらってはいないからな。とりあえず、コッレツィオは被害者と言うよりも共犯者扱いで考えた方がいいな。奴らに邪魔されないように倉庫に侵入して、怪盗が現れるのを待とう。まあ、本当に現れたらだがな」
そう言って、少佐が作戦の開始を告げた。
●倉庫侵入
「正面出口と裏口に二人ずつ見張りか」
倉庫の出入り口の警備状況を調べたボーがライルとうなずき合った。
「他に出入り口がないか調べてくるかねぇ」
ヒースが、立体感覚を駆使して身軽に屋根へと上りながら進入路がないか調べた。手頃な窓があったので、魔導短伝話で待機している少佐たちに伝えるといったん戻ってくる。
「よし、二手に分かれて侵入するぞ。美華とトライフは外で待機だ」
連絡を受けた少佐が、素早く班分けする。
「出番だねぇ、ナナクロ」
ヒースが、連れてきた猫を使って入り口の見張りの注意を逸らそうとした。
「にゃあ」
行ってきますと、意気揚々と歩いていった猫だったが……。
「猫か?」
「そんな物ほっとけ」
見張りたちは、ただの野良だと思って気にもかけない。
「猫好きに悪人はいない、つまり、逆は悪人だね」
猫が無視されたのが気に障ったのか、ヒースが物陰から一気に見張りに襲いかかった。
「あっ、こら」
少佐が止める間もあらばこそ、ライルとボーも加勢して、見張りたちを一瞬で気絶させる。
「危ない橋を渡る奴らだな。叫ばれてたらどうするつもりだったんだ。よし、とにかく中に入るぞ」
「俺はここで見張りのふりをしていよう」
少佐にうながされると、ライルがここに残ると言った。
縛りあげた部下たちを隠すと、少佐たちは中へと入っていった。
一方、ジョナサンと麗美とリクは、屋根の窓から中へと入っていった。中央以外照明がほとんどないのをいいことに、麗美のロープを伝って下へと下りる。
「見張りを無力化しろ」
上から入った班から、中央にいるお宝周りの見張りの人数を聞いて、少佐が各人に指示を出す。
「はははは、こちらだ」
ボーが、ちょっとノリノリで見張りを挑発した。
「本物の怪盗!? とにかく捕まえろ」
先だって少佐をつまみ出した若者が叫んだ。
「こっちにもいるぞ」
ライトで敵を照らしながら、リクも姿を現した。見張りが二手に分かれて侵入者を追いかける。
「こっちこっち」
倉庫内に均等にばらけた仲間たちで、荷物の間の狭い道を追いかけてくる敵を翻弄する。
「こっちだ」
迷ってキョロキョロしていた見張りを、ボーが一撃で気絶させる。
他の場所では、リクもライトで一瞬敵の視力を奪ってから、銃を突きつけて取り押さえた。
「こっちか……うわっ!」
気配を感じて物陰をのぞき込んだ見張りの一人は、リクが配置しておいた犬に吠えられて、思わず尻餅をついたところを少佐に取り押さえられた。
捕まえた見張りは、ジョナサンと麗美が縛りあげて、隅っこの方に転がしておいた。
「おじさんが三人って、見張りとしては頼りないってかんじぃ?」
ここまでトントン拍子で進んだことに気をよくして、麗美が言った。まだ他に隠れていないかと、ジョナサンと共に床下や壁などに隠し扉などがないか調べて回る。
一方、裏口に回った少佐とボーが、そこの見張りをやっつけて戻ってくる。
入り口横の警備部屋のようなスペースも確認するが、中に人はいなかった。
これで、倉庫は完全制圧だ。
「見張りは全部倒したか?」
「そう思いたいが」
少佐に言われて、ボーが答えた。今のところ、ハンターたち以外に動く影はない。
「一応、念のためにぃ、ねっ」
麗美がお宝の周囲にナッツをばらまいた。もし誰か近づいてくれば、これで分かるだろう。
そして、お宝がよく見える位置に麗美が身を潜める。反対側では、同じようにしてヒースが隠れた。
裏口近くにはリクとジョナサンが目を光らせ、少佐とボーが荷物の上に登って身を潜める。
後は、怪盗がやってくるのを待つだけだ。
●虹の怪盗
「なんだ、見張りはお前一人か。まあいい、様子はどうだ?」
外では、様子を見に来たコッレツィオが、ライルを部下だと思って状況を訊ねていた。
「問題ありません」
「よし、じゃあ、そろそろ始めるぞ」
「はっ!? あっ、いや、はい!」
「おかしな奴だ」
ライルの反応にぶつぶつ文句を言いつつ、コッレツィオが倉庫の中へと入っていった。そのまま、手荷物を持って見張り部屋の中に入って、何やらごそごそと始める。
「いったい何をしているんだ?」
後をつけたライルが、物陰からじっと様子をうかがった。
すると、しばらくして、何やら派手な格好をしたコッレツィオが出てきた。
白いスーツに白いマント、白いシルクハットを被り、白い仮面をつけてステッキを持っている。オシャレというか、小太りのコッレツィオがそんな格好をしても滑稽なだけだ。だが、なぜか、本人はノリノリのようだった。
「はっはははは、虹の怪盗登場! なんだお前たち、拍手せんか!」
自らマントを翻して怪盗を名乗ると、コッレツィオが中央のお宝めがけて小走りに進んでいった。
まさか、本当に怪盗の正体はコッレツィオなのだろうか。
「はははは、全て叩き壊してやる!」
もの凄く似合わないポーズをつけ、ステッキを振り上げながらコッレツィオが駆け出していき、そして豆に足をとられて転んだ。
「捕まえろ!」
少佐の声に、ヒースが飛び出した。緋色の輝きを引いて一気にコッレツィオに辿り着いたヒースが、そのまま馬乗りになって短剣を首筋に押しつけた。
「ひっ、な、なんだ、これは!?」
驚きとも怯えともとれる声をあげるコッレツィオに、リクが静かに銃をむける。それを見て、ヒースが剣を引いた。
「こいつ、コッレツィオだ」
やってきたライルが告げる。
「さて、これはどういうことか説明してもらおうか」
やれやれという感じで、少佐がコッレツィオの前に立った。
「まさか、本当に、あんたが虹の怪盗だなんて言うんじゃないだろうなあ。まあそれでも、俺としてはいいんだが。どれくらい余罪が数えられるかなあ」
ひいふうみいと指を折って、少佐が言った。
「わしが怪盗のわけないだろうが!」
濡れ衣だ、早く開放しろと、コッレツィオが叫ぶが、説得力は皆無だ。
「さっき、このお宝を壊そうとしたな。どうせ保険金詐欺なんだろ」
「ああ、そうだよ。悪いか。その人形を見たら、誰だって、そういうことを考えるわい!」
ボーの言葉に、コッレツィオが開きなおった。
「まあ、この人形だしぃ。他に、密輸品とかはないのかなぁ」
麗美の言葉に、コッレツィオがとぼける。
「どのみち盗難の調査が入るから、密輸品は他の場所に移してるだろ。で、どうしてこんなことしたんだ?」
「人形が売れなかったんだよ。リゼリオで大人気だって言うから、わざわざオリジナルを作ったというのに、そのできだ。倉庫はあっという間に返品の山だし、発注が生きているから、どんどん納品されてきやがる。わざと、モデルのファンに情報を流して壊させようとしたのに、失敗するし……」
しまった、言わなくてもいいことまでと、コッレツィオが苦虫を噛み潰したような顔になる。
「で、結局、自分で壊して、それを怪盗のせいにして保険金をせしめようとしたわけか。じゃあ、怪盗の話もでっちあげか。なんてこった……」
とんだ無駄足だったと、少佐が落胆する。
「ああ、そうだよ。悪いか!」
「悪いだろが! 後できっちり締めあげてやる!」
開きなおるコッレツィオを少佐が小突いた。怪盗を捕まえたならいざ知らず、こんなちんけな犯罪をあげても、今回の独断専行のいいわけになるかどうか。状況はすこぶる悪い。
「で、いったい、どんなに酷い人形なんだ?」
「ああ、見ない方がぁ……」
麗美が止める前に、ボーがフィギアの中味を確かめてしまった。
「見なかったことにしよう……」
即座に、ボーが箱の蓋を閉めた。夢に見そうだ。これは、コッレツィオでなくても壊したくなる。
「なるほど。でもねえ、そんなことのために、人の名前を使わないでほしいなあ」
ふいに若々しい声がして、荷物の山の上に人影が現れた。コッレツィオの部下の若者だ。
「おお、早くわしを助けろ!」
急に元気になって、コッレツィオが部下に命じた。
「やだね」
あっさりと、若者が言い放つ。
「むしろ、名前の使用料を払ってほしいな」
言いつつ、若者が着ていたスーツを脱ぎ捨てた。その下から、コッレツィオがコスプレしていたような、白いマントと仮面の怪盗が現れる。
「ボナセーラ、皆々様」
虹の怪盗アルコバレーノが、優雅に一礼した。
「本物!?」
麗美がちょっと目を丸くする。
「おい、狂言じゃなかったのか!?」
少佐が、コッレツィオを小突いた。
「そんなにいじめないでも……。いや、そのコスプレは酷すぎだから、少しぐらいは叩いてもいいかな。なにしろ、勝手に予告状を使われたものでね。いったい何を企んでいるのかと見に来たんだが。まあ、酷い濡れ衣だな」
困ったもんだと、アルコバレーノが苦笑する。
「それは同意するな。だが、のこのここんなところに出てきたお前も馬鹿だな。もう逃げ道はないぞ」
少佐の言葉に反応して、麗美とジョナサンとボーが機導砲を、リクがリボルバーを怪盗にむけ、ヒースとライルが出口を固める。
「それはどうかな」
そう言ったとたん、アルコバレーノのマントが虹色に輝き、周囲に同化してその姿が見えなくなった。同時に、天井にしかけられていた爆薬が爆発し、もうもうたる白い煙が煙幕となって視界を覆い尽くす。
「それでは、チヴェディアーモ!」
「撃て、撃て!」
少佐が叫ぶが、煙幕の中に何か入っていたらしく、目が痛くてまともに狙いがつけられない。
「怪盗だ!」
かろうじて、リクとボーが魔導短伝話で、外にいる美華とトライフに告げた。
「本当に現れたんだ!」
突然の爆発の中から、夜空にむかって昇っていく色違いの七つ気球を見て、外で待機していた美華が叫んだ。
「ここにもいるわよ!」
ウィンドスラッシュで、逃げる怪盗を撃ち落とす。気球を切り裂かれていくつかの人影が墜落したが、その全てを撃ち落とすことはできなかった。遠ざかる気球が、夜の闇に消えていく。
「落ちた奴は任せておけ」
同じく外で待機していたトライフが、落ちた怪盗を捕まえに走った。やや遅れて、倉庫の中からみんなも飛び出してくる。
だが、墜落した怪盗は、全て人形だった。まんまと逃げられてしまったわけである。
「くそう、せっかく本物が現れたって言うのに……。覚えてろー、次こそは捕まえてやるからなー!」
夜空に、少佐のむなしい叫び声だけが谺した。
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相談卓 フラヴィ・ボー(ka0698) 人間(リアルブルー)|18才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2014/07/06 00:12:00 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/06/29 23:30:33 |