『今夜、この倉庫にあるお宝をいただく　虹の怪盗』

　極彩色の街ヴァリオスの商人コッレツィオの許にそんな予告状が届いたそうです。
　これは、今、同盟の各都市で巷を騒がしている自称『虹の怪盗』、アルコバレーノの予告状に違いありません。

「間違いはないんだな」
　同盟軍陸軍のアルマート・トレナーレ少佐が、情報屋であるミチーノ・インフォルに念を押しました。今度はボトルレターで情報交換などという回りくどい手は使わずに、街角の辻占いの場でひそひそと話しています。
「あたしの情報を疑うの？」
　ミチーノが、ちょっと柳眉の端を吊り上げて言い返します。可愛い顔で凄まれてもあまり迫力はありませんが、怒るということは、予告状が届いたという情報は確かなのでしょう。
「コッレツィオのとこの従業員が騒いでるのは、商工会でも密かな噂よ。もっとも、あいつは評判が悪いから、みんないい気味だと思っているけれど。可哀相なのは、怪盗のおかげで赤字出してる保険屋ね。また今回も持ち出しでしょうね」
「だからといって、見過ごすこともできないだろうが」
「でも、あそこの倉庫街は海軍の管轄でしょう？　陸軍のあなたが手を出してもいいの？」
　あからさまにまずいでしょうと、ミチーノが聞き返します。
「うーん、非公式にハンターでも雇うさ。とにかく、奴には何度かおちょくられているんだ、今度こそとっ捕まえてやる」
「まあ、頑張ってね、少佐さん」
　意気込む少佐に、ミチーノが気のない応援を送りました。

「警備？　そんな物、うちの若いもんで間にあってる。いらんいらん。おい、少佐はもうお帰りだ、お送りしろ」
　少佐の申し出に、コッレツィオはにべもありません。
「まったく、変なちょっかい出されると、またいろいろ考えなくてはならんな」
　コッレツィオが、少し考え込みました。ちょっと悪い顔です。何か手を回すつもりでしょうか。
「すみませんね。うちのボスはああいう人なんで、今日のところはお帰りを」
「おい、本当にお前たちだけでいいのか？」
　どことなく人のよさそうな若者に、少佐が質しました。どう考えても警備が手薄です。
「まあ、ボスはああ言っていますので。それにしても、警備が厳重なここを狙うだなんて、怪盗とかも物好きなものです」
　若者が、丁寧に少佐を外へと追い出します。
「畜生、こうなったら、何が何でも現場を押さえてやる」
　悔しそうに、少佐が叫びました。

　あなたたちは、少佐に雇われたハンターです。
　シナリオの目的は、事件の真相を暴き、それを解決することにあります。
　少佐としては、何とか怪盗を捕まえたいようです。
　怪盗が狙っているお宝は、倉庫に収められた『最近はやっているとても高価な壊れやすい人形』だそうです。どのような物かは分かりませんが、怪盗が狙うぐらいですから、きっともの凄いお宝なのでしょう。もっとも、お宝を守るためには、それが何か分かってないと不利ではありますが。
　それにしても、そんなに凄いお宝というわりには、やたら数があるようにも見えます。これからどこかに出荷するのでしょうか？
　それにしても、お宝が狙われているというのに、コッレツィオは非協力的です。何か理由があるのでしょうか……。
　ＮＰＣは、ガイドに登場している者たちと、コッレツィオの部下たち数人です。それ以外は登場しません。
　倉庫は、海沿いにあり、小さめの体育館程度の広さです。中には、コッレツィオの扱っている様々な商品が納められていて、荷物でちょっとした立体迷路になっています。問題のお宝は、ほぼ中央に積みあげられているようです。
　表と裏の倉庫の入り口と、荷物の周りには見張りがいます。倉庫には、窓やら薄い壁とかありそうです。はたして、怪盗はどこから現れるのでしょうか。そして、怪盗の本当の狙いは……？
　なお、サポート参加の場合は、倉庫の中へ入って直接怪盗を捕まえたりはできません。見張りや、情報集めに同行したり、単独で行ったり、間接的にサポートすることになります。

　いろいろと疑ってかかって、真相を探ってください。
　よく分からなかったら、単純に怪盗を捕まえる行動をすれば何とかはなります。
　まずは、倉庫への侵入方法を考える人、怪盗を待ち構える人、怪盗をつかまえる人、情報を集める人など、手分けをした方がいいでしょう。一人で複数のことを何でもやろうとすると、後手に回って怪盗に出し抜かれます。
　様々な方法と真相が考えられますので、うまく立ち回ってください。