急募!! 清掃と補修のお手伝いを

マスター:トロバドル

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/04/05 19:00
完成日
2015/04/09 19:22

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●ある廃屋
 長い間放置された廃屋を前にして、その家の持ち主である女性は困惑の顔色を浮かべた。
 腕を組んで何度も唸りながらも熟考を繰り返すが、とんとして良い考えに纏まらない。
「これが件の廃屋ですか。――こりゃまた、随分と放置しましたね……」
 人の良さそうな笑みを張りつかせて現れたのは中年の男性だった。横幅のある恰幅の良い体格だが、表情と相まって親しみやすい雰囲気を出している。
「えぇ……でも、このまま放っておくのも勿体ないでしょう? 息子も一人部屋が欲しいと言うし……」
 女性は振り向く事なく、目の前にある問題を少し睨むような視線で溜息を漏らす。
 こうしてしまったのは自分なので誰にも文句は言えないのだが、いざ目の前にすると、やはりどこかに感情をぶつけたくなるのだ。
 それほどに、目の前の建物の現状は酷い。
 しかし、元々の造りがしっかりしているからか、今にも崩れてしまいそうだという気配はまったくしない。
 原因は長い間物置として、そして殆ど触れる事なく放置してしまったことだ。
 周りに生えた伸び放題の草花は壁を伝って屋根にまで届いている。
 人が来ないとあれば動物達の天下であり、ネズミの糞尿の異臭が鼻を突く。
 建物の周囲に林立する木々は自由にその枝を伸ばし、周囲を薄暗くしている。
 中に入れば、大事にしまっておいた大時計が、時を刻むのを放棄している。
 同時に、幾か所か抜け落ちた床板も見え、その先は奈落の底に通じているかのようだ。
 雨風を受け、蔦や泥が張り付いた大きな窓は外界とを遮断するように曇ってしまっている。
 塵も積もれば山となるを体現するかのように、白化粧を施した光景は作業をしようとする手を自然と止めた。
「もうどこから手を付けてよいものか……。それに、2人でやっては終わらない気もしますし……」
「流石にここまでとなると、どうにもなりませんね……」
 この男性は女性の知人で、本日この廃屋の清掃を手伝うつもりでやって来たところだったが、流石に顔をしかめるしかない。
 やれと言われればやるだけなのだが、正直人手不足は否めない。
「せめてもの救いはそこに井戸がある事くらいですかな……」
 気休めでしかない。
 が、水が近くにあると言うのは、清掃という点においては利点になる。本当に気休めでしかないが。
「これはもうあれですな。誰かに頼むしかありませんな」
「誰かって……誰にです?」
「こういう雑務を引き受けてくれる者達がいるのですよ。――もっとも、受けてくれるかどうかは彼ら次第ですが」
 男性の脳裏に浮かぶのはハンター達だ。様々な依頼を受けてくれるとの噂だが、果たして廃屋の清掃まで請け負ってくれるかどうか。
 とは言え、人手を集めるには手っ取り早く、そして仕事もきっちりとこなしてくれるとあれば、良い手であると男性は思い至る。
「そうですか……。いえ、それくらいの事をしないとこれはどうにもならないわね……」
 正直な所、眺めれば眺めるほどに、女性はこれを自分の手でどうにかしてやろうという気持ちが削がれていくのを感じていた。
 出来る事なら、何かしら理由を見つけて今まで通りに見て見ぬふりをし、放置したいという気持ちが湧きだしていた所だ。
 誰か別の、そしてしっかりと作業を終わらせてくれる人がいるのなら、それに頼りたいと思い始める。
「では、私の方で依頼を出してみます」
「えぇ、お願いします……」
 果たしてこの惨状がどうにかなるのか。女性は不安な気持ちで頷き返した。

●ハンターズソサエティ
「これが今回の依頼となります」
 カウンターの奥で制服を隙間なく着込んだ女性が、丸眼鏡を押し上げながら依頼書を提示する。
 理知的に見える彼女が口を開くと、矢継ぎ早に言葉が飛び出した。
「依頼内容はある廃屋の清掃です。依頼主の一人息子が一人部屋を欲しがった為、使っていなかったそこを利用しようとなったようです。
 しかし、人が使用するにはあまりにも混沌としていたのと、人手が足りないという事で今回の依頼が出されたという運びです。
 廃屋と言いますが、しっかりと清掃し、数点補修を行えばちゃんと住めるほどに、作りはしっかりしてるそうです。
 清掃、補修項目は依頼主から提示されており、それらに必要となる素材と道具、修理マニュアルも用意するとの事です。
 現地は開けた平地であり、本来は見通しは良いそうです。ですが、長い間放置してしまったが故に家の周りは草木が壁の様になっているとか。
 依頼主側からは、可能であれば周囲の景観改善も依頼されています。
 また、その家はネズミたちが根城にしているらしく、作業の邪魔になるかもしれない、との事です。こちらも退治、もしくは二度と現れないように対策をしてほしいと依頼されています。
 家の近くには井戸があるそうなので、水が必要ならそこから確保してくれ、と仰っていました」
 女性は一度も言葉を噛むことなく、そしてどもることもなく一気に言い終えると、達成感でまた丸眼鏡をくいっとも持ち上げる。
「あぁそれと――」
 白い手袋をはめた手がつっと自らの服を指さす。
「現場は非常に汚れているそうで、周囲も草花や木々が乱立しているので汚れることは必至だそうです。可能ならば汚れても良い格好で行くことをお勧めします。
 流石に作業服までは支給されないそうなので、その辺りは各自でお願いします
 また、依頼主からの意向で、作業はその日で終わらせて欲しい、との事です。まぁこの辺りは人数に物を言わせれば問題はないでしょう」
 もう一度丸眼鏡を持ち上げると、キラリと煌いた。
「それではこの依頼、お受けしますか?」

リプレイ本文

●午前
「これは逆に趣のあるお家ですねぇ。お手入れすれば立派な景観になる事でしょう。――今から楽しみです」
 鬱蒼とした木々の間に埋もれる建物を見て、藍那 翠龍(ka1848)は楽しそうな顔色を浮かべた。
 木々を利用して家を立てたのか、それとも家が木々に飲み込まれたのか。
 どちらが先か判らない様相の前に、更にマスク代わりの布を超えてくる異臭に、全員が思わず二の足を踏む。
「おぉう……カオスだねぇ……」
「わぁ……どこから手を付けるか……」
 薄暗い中、まるで壁となるように置かれた数々の家具やら道具やら何やら。それらを前にして、メルクーア(ka4005)と浪風 白露(ka1025)は頬を引き攣らせた。
「――これだけ荒れ果てていると、逆に燃えてくるものがあります」
 困難を糧とするか、Hollow(ka4450)は袖をまくって第一歩を踏み出す。
「持ち出せる家具等は一旦外にだしてしまいましょう」
 それに続いたのは真田 天斗(ka0014)だ。天斗の言葉を合図に漸く全員が中へと足を踏み入れる。
「誰か手伝ってくれないか? これを運び出したら奥に入れそうだ」
 メル・アイザックス(ka0520)は通路を塞ぐ巨大な食器棚を前にして、仲間へ協力を仰いだ。流石に一人でどうこうできる大きさではない。
 メルの行動を皮切りに、荷物の搬出作業は開始された。それぞれが協力し合っての作業は、恙なく順調に進む。
 30分ほどもすれば、敷き詰めるように置かれていた邪魔な物は家の前で、まるでフリーマーケットの如く並べられている。
 搬出が終わると、だたっ広い空間が生まれたが、同時に惨状も広がった
「こりゃキツいな。ドアと窓と、開くとことは全部開けちまおう」
 そう言いつつ、ジャック・エルギン(ka1522)が率先して窓を開けるが、回りにひしめくように林立する木々のせいで明かりは殆ど入ってこなかった。
 僅かに差し込んだ隙間光が穴だらけの床や、ネズミの糞尿の汚れ、積り積もった雪のような埃等々を照らしだした。
「……床の掃除……から始めた方がいいかな?」
 流石に窓ふきやらネズミの退治やら床板の補修やらと言う前に、単純に足を置き場もない状態をどうにかしたいと、満月美華(ka0515)は呟く。
「水、汲んできた方がいいな。近くに井戸があるって話だけど……」
 白露が探す間でもなく、家の脇に井戸が鎮座している。ロープを引っ張れば、滑車の回る音と共に地下深くから水を汲み上げた桶が上がってきた。
 水の入ったバケツが一つ、二つと入口に置かれると、ハンター達は目一杯外の空気を吸い込み、雑巾を手に床の清掃に取り掛かった。

「結構面倒くさいわね、窓拭きって」
「あぁ。でも、これを終えればもっと明るくなるからな」
 美華と白露は窓拭き担当として、せっせと手を動かして汚れを拭っていく。
 こびり付いたそれを、白露の機転と知恵で上手く対処し、少しずつではあるが、向こう側が見えるようになってきている。
 それでも、隅の方や大物は依然とそこに居座っているので、美華のぼやきも当然の思いと言えば、当然だった。
 幾らやっても終わる気配のないそれは、まるで無限回路に迷い込んだの如しだ。
 新品だった雑巾も、一度窓を撫でるだけで歴戦のそれのような汚れっぷりを見せる。
 入れ替えたばかりの水も、そんな雑巾を浸せば直ぐに泥水だ。
「魔法も使い様ね」
 美華がそう言いながら力を行使すれば、泥水はたちどころに浄化されて透き通った水へと変貌する。
 白露が清掃に機転を講じたのなら、美華は面倒な過程を省略したと言える。
 上手く歯車がかみ合ったコンビネーションではあったが、やはり長く放置され、積り積もった汚れは手強い。
 雑巾が擦り切れるのが先か、それとも汚れが白旗を上げるのが先か。二人の戦いはまだまだ続く。


 班分ほど床の清掃を終えた頃、危惧していた邪魔者が姿を現した。
 甲高い鳴き声を上げて襲来した小さな襲撃者。その名はネズミ。
「任せましたよ、貴方達」
 天斗はさっそくと、連れてきた猫を放った。
 それに習うように、他のハンター達も猫を床に降ろす。
 流石に直ぐにはネズミを追ってはくれないが、それが猫の習性か、僅かな物音を耳にすると小さなハンター達はその本能を全開にさせる。
 抜き足差し足と歩き回り、やがて見つけたネズミ達を追い立て始める。
 更に、
「急で悪いが立ち退きだぜ。煙たいのが嫌なら、他の物件をあたってくんな」
 ジャックが松明の煙をネズミが逃げ込んだ天井裏へと向けると、ネズミたちの慌てふためく悲鳴が聞こえた。
 下は猫が、上は煙がと、挟撃にあったネズミ達はまるで蜘蛛の子を散らすように逃げていったようだ。
 

 清掃班が精を出している頃、家の外ではHollowが借りた斧を手に、獲物を見据えていた。
 全てを伐採する気はないが、邪魔な物を斬り倒し、余分と思われる枝の間引きを目的に、既に数本の木を切り倒している。
「ふぅ。――これでかなり日当たりが良くなったわね」
 鬱蒼としていた雰囲気は幾分か取り払われ、木陰に包まれた、と言った雰囲気にまで改善された。
 風通りは良くなり、頭上を覆っていた枝と葉の数々は取り除かれたお蔭で、隙間から差し込む陽の光が風に靡く梢に合わせて揺れている。
「これは……使える? こっちはちょっと無理だな」
 その背後で作業をしているのはメルだ。
 使える家具と、そうでない家具を仕分けし、足りない物を新しく作ろうという算段でいる。足りない材料はHollowが伐採した木を材料にするつもりだ。
 借りた道具を手にしてあれこれと悩み考えるメルの表情はんとも楽しげだった。

「っし、そんじゃ始めるか。翠龍、まず床板を外していこうぜ」
「えぇ、了解です。とは言え、どこから手を付けるべきですかね……」
 さっそく床板の交換だと意気込むジャックと翠龍だったが、予想以上に補修箇所が多く、また要補修と思われる部分もそれなりにあり、道具片手にどうするかと思い悩んだ。
「こういう場合、手分けするよりは、一緒にやった方が早いでしょう」
「そうだな。んじゃ、先ずは穴を塞ぐか。そっちの方が他の奴らも行動しやすいだろうしな」
 賛成と、翠龍は首肯した。
 手始めに穴の開いた箇所を補修する為の床板剥がしから始め、予め用意されていた床板を打ち付けるという作業に従事する。
 しかし、ここでまたしてもネズミの邪魔が入る。剥がした所からビックリ箱のように飛び出してくるのだ。
「うぉ!? び、びっくりした――! こ、こんな所まだ隠れてたのか……」
「わざとか故意か。なんであれ、作業の邪魔ですね。ニャコさん、よろしくお願いしますね」
 翆龍はそう言って連れてきた猫に頼むも、人の思い通りに動いてくれないのが猫だ。
 しかし、目の前で動き回る小さな獲物をその瞳に捕えると、ハンターとしての血が騒ぎ出した様子だ。
 滑るような動きで近づくと、やがてネズミを追って床下へと潜って行った。
「後は彼らに任せておきましょう」
 他の猫達もやがてそれに気づくが、わざわざ床下に潜る猫もいれば様子見をする猫もいた。
 まったく興味がないという空気でもないので、ジャックは翆龍の言葉に頷き作業を再開する。

「頑張ってもう一度、時を刻めるようにするわよ~!」
 部屋の一番奥。その壁際に雄々しくも、寂々しく鎮座する大時計。メルクーアはそれの修理を自ら買って出た。
 元々リアルブルーの技術に興味心があったメルクーアからすれば、時計の修理はまさに当たり役だ。
 腕まくりをし、予め用意して貰った材料を手に、故障個所を調べていく。
 一つ一つの部品を磨き、油を塗り、丁寧に修理していくと、先ほどまでの物悲しげさが晴れていくような気配があった。
「ふんふん、なるほどなるほど。――ほほぅ」
 かつての人々が作り上げた技術を確認し、自分の物にしていくように、メルクーアの修理は勉強と並行していた。

●午後
「腰が……腰、痛いわ……うぅ……草むしりって大変ね」
 自分の担当が終わった美華は、人手不足であった景観の改善作業を手伝うべく、草むしりをしている。
 が、屈んでの作業というのは普段使わない筋肉を酷使するもので、一番のダメージを受けたのは腰だった。
「こうして伸びをしても――まったく解れる気がしないな」
 同じく草むしりを手伝っている白露も同様に、腰へのダメージは隠しきれないものになっていた。
 立ち上がって腰の凝りを解す動作は、果たしてこれで何度目か。グッと体を伸ばすたびに、しかめっ面を作っている。
 空を覆っていた木々が減った事で、真上に上がった太陽から燦々と降り注ぐ陽光は、運動によって火照ってきた体には熱く感じ、二人の額からは汗が浮かび、頬を伝った。
「もっと人手がって思っちゃうけど、あっちはあっちだものね」
「清掃待ちだったからな。あっちはここからが本番だろう」
 二人が見つめる先は、家具補修班の姿だ。
 そのまま使える家具、補修が必要な家具、何かに使えそうな家具とが居並んでいる。
 家具に埋もれるようにして作業をしているのは天斗とメル、それに翆龍にHollowの四人だ。
 元々あった家具を補修する事で既に幾つか完成しているが、ベッド回りで作業の手が止まっている。
 普通のベッドにすべきか、何かしら利便性を求めるべきかと、メルは思案中だ。
「やっぱりロフトベッドはあった方がいいか。となると、やっぱりこれを補修した方がいいか……」
 ロフトベッド自体はあるのだが、少し質素過ぎる作りにメルは腕を組んで眉を潜める。
「例えば、これを使うのはどうですか?」
 そう提案したのは天斗だ。
 大きな棚で足りない部分に支柱の継ぎ足しをし、使い道のなかった梯子を掛ければ、見事にロフトベッドの完成だ。
 支柱部分に関して新しく作る必要はあるが、その程度なら素人でも簡単に作る事ができる。
「これを使うのはどうでしょうか? お子さんが使う予定という事ですし」
 Hollowが手にしているのは収納机だ。
 元々はミシン台の横に付いていたものなのだが、取り外して開いたスペースに取り付ければ再び使う事ができる。
「支柱は、こんなのはどうですか」
 別の家具から取り外した長い棒を手にした翆龍。少し長いが、その辺りは調整してしまえば問題はなさそうだ。
 更に、元から支柱として使われていたからか、柱を支えるパーツもある。取り付ければ耐久性も確保できる。
 一気に完成像が見えてきた四人は、それが薄まる前にと早速作業に入った。

「んじゃ、ちょっと屋根に水をぶっかけるから、天井、見ててくれー!」
 バケツ片手に、ジャックは窓から上体を覗かせるメルクーアに叫んだ。ぶんぶんと手を振っているのを確認してから、その手に持ったバケツの中身を、文字通りぶっかけた。
 それを何度か行っていくと、屋根の斜面を水が伝って下に流れていく。それ自体には何も問題はなく、ジャックは別の結果を求めていた。
「オッケ~。漏れてきてないよ~」
「お~、サンキュー。っし、雨漏りは問題なし、だな」
 ジャックが確認していたのは、雨漏りだ。長く放置されていたとあれば、どこかに穴が開いている可能性もあったため、ワザと水をかけた事でそれを確認していたのだ。
 流した後に確認する人が必要だったため、時計の修復中だったメルクーアに頼んだ、と言う訳だ。
 無事雨漏りしていない事を確認できたジャックは、満足げに頷いた。

●夕刻
「これで最後です。最初に訪れた時とはまったく違う雰囲気になりましたね――」
 最後のテーブルを運び終えたHollowは額に浮かんだ汗を拭い、様変わりした建物の中を見て感慨深そうに呟いた。
 補修、作り終えた家具を運び終えると、そこは数時間前まで廃屋だったとは到底思えない景色が広がっている。
 穴だらけだった床は綺麗に補修され、埃の雪化粧とネズミの糞尿による異臭を放っていた姿が嘘のようだ。
 薄暗かった室内は大ガラスの清掃と、木々の間引きによって外光をふんだんに取り込んでいる。
 新しく作られた家具も、利便性とデザイン、更には収納も取り込んだ事で雰囲気作りに一役を買っている。
 見違える程の出来栄えに、作業を終えたハンター達の顔には満足感が滲み出ている。
「――これで、よしっと。さ、起きなさ~い、大時計ちゃん。朝ですよ~……っと」
 メルク―アの声に全員の意識が向く。
 最後の作業を終えたメルク―アがそう呼びかけると、大時計はまるでそれに応えるかのように、チク、タク、と小さな音を立て、再び時を刻み始める。
 ゆらり、ゆらりと振り子が触れる様は、まるで時を刻める事に歓喜しているかのようだ。
「これにて無事に終了……だな」
 メルは外を見て気づいた。先ほどまで真上にあったと思っていた太陽は大きく傾き、空を茜色に染め上げている事に。
 そんなに時間が経っていたのかと気づくと、彼らの体には疲労感が湧き上がった。
「――でも、良い疲労感だ」
 白露は小さく頷いた。重たい腰の痛みも、目の前の光景を見れば吹き飛んでいくというものだ。
「えぇそうね。気持ちの良い疲れね――」
 同意するように美華も頷く。良い仕事を終えた後は気持ちが良いものだと、そう思えばは苦労も吹き飛んでいく。
「貴方達も、お疲れ様でした。お蔭でこの辺りからネズミを一掃する事ができましたよ」
 天斗は連れてきた猫達にも労いの言葉をかける。ネズミというもっとも厄介な敵を、彼らは見事に撃退してくれたのだ。
「ニャコさん達も、お疲れ様。――ん? どうしたんですか、不満そうな顔をして?」
 翆龍もまた、連れてきた猫達を労った。が、時計の修理を終えて戻って来たメルクーアの顔色が優れない事に首を傾げる。
「ブランデー……余らなかった……」
 がっくりと肩を落とすメルクーア。どうやら、ブランデーが余ったら飲もうと思っていたらしい。
 それなりな数を持ち込んだのだが、ネズミの排泄物に、カビやら汚れやらの清掃で全て使い切ってしまったようだ。
「まぁいいじゃねぇか。その分、綺麗になったって事なんだからよ」
 ジャックは気落ちしているメルクーアを慰めつつも、満足の行く出来栄えに小さく頷いた。
 ほどなくして、作業が終わった旨を聞いた依頼主が、その子供を連れてやって来た。
「これは何と言うか……。ありがとうございます。ほら、皆さんにお礼を言って」
 予想以上の出来に、女性は満足した顔色で、促された子供も全身を使って興奮していた。
 そんな姿を見ていれば、体を包む疲れなど一瞬で吹き飛ぶ。
 ハンター達は心地よい達成感に、互いに見合って笑い合った。

依頼結果

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • Pクレープ店員
    真田 天斗(ka0014
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • 《潜在》する紅蓮の炎
    半月藍花(ka0515
    人間(蒼)|17才|女性|魔術師
  • 「ししょー」
    岩井崎 メル(ka0520
    人間(蒼)|17才|女性|機導師
  • 比翼連理・その手を取って
    浪風 白露(ka1025
    人間(蒼)|16才|女性|疾影士
  • 未来を示す羅針儀
    ジャック・エルギン(ka1522
    人間(紅)|20才|男性|闘狩人
  • 後ろの守護龍
    藍那 翠龍(ka1848
    人間(紅)|21才|男性|霊闘士
  • Pクレープ店員
    メルクーア(ka4005
    ドワーフ|10才|女性|機導師
  • 復興の一歩をもたらした者
    Hollow(ka4450
    人間(紅)|17才|女性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/04/02 22:20:20
アイコン 掃除をしましょう
真田 天斗(ka0014
人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2015/04/02 23:42:56