ゲスト
(ka0000)
【偽夜】紡がれざるウタウタウ
マスター:練子やきも

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/04/12 15:00
- 完成日
- 2015/04/19 00:04
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
まどろみから覚め行く意識。目を開けると、一面の黒。所々に漏れる小さな星のような光が、ここがとても広い空間だという事を伝えて来る。
星空を歩いているような感覚になるが、どうやら地面はちゃんとあるようだ。
ふと聞こえた……液体を棒か何かで殴るような音に振り向くと、金属のレリーフで縁を補強された白い板を振り回し、星空の世界で黒い人型の何かと戦う少女の姿があった。流れる黒髪、身に纏ったドレスのフリルまで黒く。白磁の肌だけが浮き上がるように残像を残しながら、両の手に持った板で舞うように殴り付けている。よく見ると、板は持ちやすいよう取手まで付いている。ガチで武器かよそれ。
やがて……倒したのだろうか、砂のように崩れながら地面に散ってゆくそれに一瞥を与えると、少女は無造作にこちらに歩いて来た。どうやら敵意は見えないが……。
「うたう」
近付き、立ち止まった少女の口から紡がれる言の葉。それは唄……?
「うたう……なまえ」
名前だったようだ。こちらが名乗り返すと、頷いた彼女は再度口を開き
「あなた……たたかう?」
細い眉を寄せ、小首を傾げるうたう。単語でしか喋れないのだろうか? と、考えた時、うたうが、先刻黒い人型を殴っていた白い板に文字を書き始めた。握り締めた太めのペンでガシガシと書き殴る様子は、何だか落書きをしているようにも見える。……そして割と時間がかかる。
少し待ちくたびれた頃、妙に満足そうな表情をしながら白い板をこちらに見せて来るうたう。
『紡がなれない 想い 欠片 やっつける やすらぐ 還る』
つむがなれない……? 読みにくい文字を何とか判別する。意味がイマイチわからないが、紡がれない想いの欠片をやっつける? と、安らいでどこかに還る……という事だろうか?
疑問。だがそれを口にする暇もなく、うたうが再びその両手に白い板を構え、前方の黒い地面が揺らいだ。
「よやく まけた かけら」
……どうやらこの黒い人型、欠片は、何かの予約に負けた人の想いの欠片のようだ、……微妙に覚えが無くもないのは気のせいだろうか……?
「おーぴー ぼつ かけら」
なにやら妙に力を込めたうたうが、言葉と共に黒い人型に殴りかかると、白板が放った強い光が球状に集まり、弾ける。
静寂が戻った周囲を見回し、うたうが再度板に文字を書き始めた。
『夢の中 想い 喚び出す やっつける 自由』
読みづらい文字を判読すると、夢の中だから、想いを呼び出したりやっつけたりするのも自由、という事か。
どうせ夢の中なのだ、少しくらい羽目を外しても良いかも知れない。
再び呼び出された黒い人型に『武器』を構えると、寄り添うように横に立ったうたうも、板を構えた。
星空を歩いているような感覚になるが、どうやら地面はちゃんとあるようだ。
ふと聞こえた……液体を棒か何かで殴るような音に振り向くと、金属のレリーフで縁を補強された白い板を振り回し、星空の世界で黒い人型の何かと戦う少女の姿があった。流れる黒髪、身に纏ったドレスのフリルまで黒く。白磁の肌だけが浮き上がるように残像を残しながら、両の手に持った板で舞うように殴り付けている。よく見ると、板は持ちやすいよう取手まで付いている。ガチで武器かよそれ。
やがて……倒したのだろうか、砂のように崩れながら地面に散ってゆくそれに一瞥を与えると、少女は無造作にこちらに歩いて来た。どうやら敵意は見えないが……。
「うたう」
近付き、立ち止まった少女の口から紡がれる言の葉。それは唄……?
「うたう……なまえ」
名前だったようだ。こちらが名乗り返すと、頷いた彼女は再度口を開き
「あなた……たたかう?」
細い眉を寄せ、小首を傾げるうたう。単語でしか喋れないのだろうか? と、考えた時、うたうが、先刻黒い人型を殴っていた白い板に文字を書き始めた。握り締めた太めのペンでガシガシと書き殴る様子は、何だか落書きをしているようにも見える。……そして割と時間がかかる。
少し待ちくたびれた頃、妙に満足そうな表情をしながら白い板をこちらに見せて来るうたう。
『紡がなれない 想い 欠片 やっつける やすらぐ 還る』
つむがなれない……? 読みにくい文字を何とか判別する。意味がイマイチわからないが、紡がれない想いの欠片をやっつける? と、安らいでどこかに還る……という事だろうか?
疑問。だがそれを口にする暇もなく、うたうが再びその両手に白い板を構え、前方の黒い地面が揺らいだ。
「よやく まけた かけら」
……どうやらこの黒い人型、欠片は、何かの予約に負けた人の想いの欠片のようだ、……微妙に覚えが無くもないのは気のせいだろうか……?
「おーぴー ぼつ かけら」
なにやら妙に力を込めたうたうが、言葉と共に黒い人型に殴りかかると、白板が放った強い光が球状に集まり、弾ける。
静寂が戻った周囲を見回し、うたうが再度板に文字を書き始めた。
『夢の中 想い 喚び出す やっつける 自由』
読みづらい文字を判読すると、夢の中だから、想いを呼び出したりやっつけたりするのも自由、という事か。
どうせ夢の中なのだ、少しくらい羽目を外しても良いかも知れない。
再び呼び出された黒い人型に『武器』を構えると、寄り添うように横に立ったうたうも、板を構えた。
リプレイ本文
「いどう かんりょう」
エヴァ・A・カルブンクルス(ka0029) バレル・ブラウリィ(ka1228) アニス・エリダヌス(ka2491) リナリア・リアナ・リリアナ(ka3127) 逢見 千(ka4357) 青霧 ノゾミ(ka4377) 6人のハンター達が夢の中に入って来た事を確認して、少女はハンター達に手伝って貰い、また手を貸す為に、それぞれのハンターへと意識を飛ばす。
ハンター達自身も想いを抱えているようだ、その想いに安らぎを与える事もまた、少女のやるべき事。6箇所に別れれば自分の力は落ちるだろうが、それはハンター達が補ってくれるだろう。
白い板を指で撫でて、うたうは『仕事』を開始した。
●魔法少女リナリア
リアルブルーアニメイションに憧れ抜いて来た私も、ついにこの魔女っ娘の境地に辿り着いた気がするのです! これはきっと、魔女っ娘覚醒一歩手前的な状況なのです。
うたうを眺めて何やらガッツポーズを取りながら感慨深げにしているリナリアの周囲に、大量の人型達が次々と地面から湧き上がると、手を繋ぎ、音のない舞踏会のように踊り始める。そのシルエットはご丁寧に男女に分かれているようだ。
リナリアの脳裏に、聖夜……ヴァレンタイン……ハンカチを噛み締めては涙ぐんだ日々の思い出が蘇る。
込めた握力でギシギシ言い始めている杖を振りかざして、扱い慣れたスキルを……。
「メテオドライヴァー!」
リナリアの喚び出した巨大なアースバレット、というかむしろ巨体な岩石の群れが、踊る人型達をボーリングピンのように弾き飛ばす。
「ブレイジングドラゴン!」
放ったファイアアローが、炎の竜となり人型達を飲み込み、焼き尽くす。
「テンペストディザスター!」
杖をクルリと回してなにやら決めポーズを取ったリナリアの背後で、荒れ狂う暴風が刃となり、人型の影達を切り刻み、黒い粒子へと変えて行った。
「くろれきし……ふえた?」
静寂が戻った黒いセカイの中、なんとなく安全圏っぽいリナリアの隣で、板を地面に置いて指で両耳を塞いだうたうがつぶやいた声は、リナリアの耳には届かなかった。
●ろりこんっぽいバレル
『だ・れ・が! ロリコンかぁーっ!』
黒い人型に向かって踏み込み、金色のバスタードソードを振り下ろしながら叫ぶバレルの隣で、うたうが板で別の人型を叩き伏せながら、興味深そうにバレルの顔を覗き込んだ。
「ろりこん?」
「いや違う! 絶対に! 断じて違う!」
「ろりこん?」
首を傾げ、再度繰り返すうたう。……意味を尋ねているのだろうか?
ゴスロリの格好の幼女から改めて尋ねられて困る言葉としてはかなり上位の単語だと思われる質問に
「……子供好きって事だよ」
何とか無難に答えるバレル。
頭上に ? のマークを浮かべて、逆側に首を傾げるうたう。
その間も、黒い人型は湧き出て来て、その攻撃をいなし、弾き、斬り伏せながら、バレルは自問自答する。
『どいつもコイツも人を何だと……。しかも理由を聞いたら「何となく?」って何だよ!? 何となくロリコンとかにされてたまるか!』
子供好きという答えがお気に召してしまったのだろうか、何故か背中にくっついて来たうたうの体温を感じながら、バレルは再度現れた黒い人型へと走った。
●千のお手伝い
「……ああ……うん、妙に覚えがあるよね……。行きたいのに行けない、戦いたいのに戦えない、もう悔しくって悔しくって!」
予約負けがどうやら千のツボだったようだ。
呟きから語りとなり、叫びとなり、徐々にボルテージが上がっていく千。手にした金色に光る斧槍に力が込もり、振り下ろした斧槍が炎の残光を残しながら眼前に居た黒い人型の影を両断した。
板を構えて、湧き出た人型に向けて走るうたうを追うように走り、斧槍を振り回して、影を貫き、叩き斬る。
扱い慣れた斧槍は普段より軽く、いつもより手に馴染む気がする。
「なんか八つ当たり気味で申し訳ないけど、ストレス発散に付き合って貰うよ!」
一斉に飛びかかって来た黒い人型達を、振り回した斧槍が一斉に粒子に変える。
「まだまだ! 暴れ足りないよ!」
「おかわり」
斧槍を振りながらうたうに告げる千の言葉に、手を振り上げたうたうの合図で再度、次々と湧き上がる人型の影達。◯國無双的に斧槍を振り回し、黒い人型を薙ぎ倒していく千の、ストレス発散の獲物はまだまだたっぷりあるようだ。
●ノゾミと望み
ノゾミはぼんやりと空を眺めていた。視界に広がる満天の星空。
「何やってんの?」
ノゾミの問いに首を傾げるうたう。湧き出た人型の影に向けて板を構えたうたうの横手から、ノゾミの翳した手の先で黒い人型の動きが止まり……砕けた。黒い粒子と共にキラキラと光る氷の粒。
「なんだか、悲しい」
呟いたノゾミに、頷くうたう。
「つむなれない つむぐ」
「そっか」
紡がれないから、紡ぐ。彼女にとってはただそれだけの事なのだろう。
「だったらこういうのもアリなのかな」
何やらキテレツなポーズを取って動かない人型の後頭部を、片手に呼び出したハリセンでスパァーンとはたく。派手に吹っ飛んで粒子に還る人型、どうやらツッコミ待ちだったらしい。
「俺にも何か大切な物とか人とか、あった筈なんだけどな……」
凍らせ、砕く。時にハリセンでツッコミを入れ、歌ってみたり、踊ってみたり、モヤモヤする苛立ちを、適当な方向に向けて叫んでみたり。
いくつの想いを還したのだろうか? その中に、あるいは自分の想いもあったのだろうか……?
微笑んだうたうは、ただ、微笑むだけで、どうやら答える気はないらしい。
「……すっきりした」
戦って、戦って、疲れ果てて寝転がったノゾミ。隣に、うたうも寝転がったようだ。空に広がる満天の星。……もうしばらくは、この失くした記憶もきっと忘れたままでいられるだろう。……夢の中で疲れ果てて眠るというのも乙な物かも知れない。
失った記憶への渇望と苛立ちを疲れで拭い、ノゾミは眠りについた。
●アニスと剣と
「人々の思念が、集まっているのですね」
報われなかった想い達。湧き上がって来た黒い人型達を眺めて、心を痛めるアニスの頭を、うたうがポフンポフンと撫でた。
「大切な感情……でも抱え過ぎると重荷になりますよね」
うたうに微笑みかけながら、板に光の魔法を掛けると、自らも手に持った弓型の杖から光の矢を放ち、湧き出る黒い人型を粒子へと還していく。前に出て戦ううたうの援護をしながら、その目は自身の想い……想い人の姿を探していた。……そして……。
「おかえり……なさい」
言いたかった言葉。言えなかった言葉。瞳に熱い物がこみ上げるが、まだ、駄目だ。
短く刈った髪に、背負った大剣。戦地へと見送った時のままのその姿に向けて、敢えて不得意な武器、剣を抜き、構える。
『彼』もひとつ頷いてから、背負った大剣を構えた。
交わす剣の一振り毎に、悲しみを拭い去る想いを込め、振るう。数合交えた打ち合いの後、光の力を込めたドライブソードが眩い輝きと共に『彼』を両断した。優しく頷きながら消えてゆく『彼』。
戦地へと見送り、帰って来なかった『彼』への想いに自らの手で決着を付けたアニスの頭を、うたうが優しくポフンポフンと撫でる。涙で歪んだ視界が暗くなり、やがてアニスは夢から覚める……。
●エヴァの歌声
「せっかくなんだから、一緒に散歩でもどうかしら?」
星空のような世界に、エヴァの絵心ご刺激されていた。こんな綺麗なんだから、せっかくなのでもっと楽しみたかった。うたうと手を繋いで、クルクル回るように踊るエヴァ。
起きたら忘れずに絵に描かなきゃ。そう思いながら、慣れない動きにつまづきそうになるうたうと、踊り続けていた。
不意に聴こえて来た、声。どこか懐かしいようなその声は……
「……これ、私の声?」
エヴァの前に現れたのは……喋れた頃の、自分。
「久し振りに聞いたから、自分の声だって分からなかったわ」
「声帯が震えて、自分の鼓膜を揺らすのってこんな感じだったのね」
「夢かしら?」
「きっと夢ね」
2人のエヴァが交互に喋り、ふわりと笑いながら、頭をぐるぐる回しながら、喋っている側のエヴァに視線を向けるうたうの頭を優しく撫でる。
「とても優しい夢」
ぺこん。と、うたうが『想い』のエヴァの頭を板で軽く叩くと、満たされたその想いは粒子となって星空に散って行った。
直後に、再度現れた『想い』のエヴァ。声なき声で、歌なき唄で、歌を謡う。声が出なくなった事で捨てて行かざるを得なかった……夢。
「うたう、あなたなら、あの子にどうやって安らぎを与える?」
問うエヴァの言葉に、1秒の迷いもなく板を持ち上げるうたうを見てエヴァの頭に浮かぶ汗。
「うん……そうね。でもあんな可愛い女の子を吹っ飛ばすのは私が辛いわ」
なにやら面白い事を思いついた表情になったエヴァは、うたうの手を取り『想い』の前へ進むと、うたうから白い板を借りて、黒炭と共に差し出す。
座り込んで絵を描くエヴァとエヴァ、その隣で寝転がってガシガシと謎の前衛アートを描くうたう。
3人の、星空の中の即興のお絵描き会は、ぽぺん、と『想い』の頭を叩いたうたうの板で幕を閉じた。
●夢の終わりのウタウタウ
「ゆめ じかん おわり」
うたうの言葉と共に、隣に居たうたうの姿が、そして周囲の景色が、陽炎のように揺らぎ始めた。優しく微笑んで手を振るうたうに手を振り返そうとした所で、自分の手も透けて来ている事に気付く。……どうやら奇妙な夢の時間は終わったようだ。
少しだけスッキリした心と共に、やがて夜が明け……またハンター達の忙しい日々が始まる。
エヴァ・A・カルブンクルス(ka0029) バレル・ブラウリィ(ka1228) アニス・エリダヌス(ka2491) リナリア・リアナ・リリアナ(ka3127) 逢見 千(ka4357) 青霧 ノゾミ(ka4377) 6人のハンター達が夢の中に入って来た事を確認して、少女はハンター達に手伝って貰い、また手を貸す為に、それぞれのハンターへと意識を飛ばす。
ハンター達自身も想いを抱えているようだ、その想いに安らぎを与える事もまた、少女のやるべき事。6箇所に別れれば自分の力は落ちるだろうが、それはハンター達が補ってくれるだろう。
白い板を指で撫でて、うたうは『仕事』を開始した。
●魔法少女リナリア
リアルブルーアニメイションに憧れ抜いて来た私も、ついにこの魔女っ娘の境地に辿り着いた気がするのです! これはきっと、魔女っ娘覚醒一歩手前的な状況なのです。
うたうを眺めて何やらガッツポーズを取りながら感慨深げにしているリナリアの周囲に、大量の人型達が次々と地面から湧き上がると、手を繋ぎ、音のない舞踏会のように踊り始める。そのシルエットはご丁寧に男女に分かれているようだ。
リナリアの脳裏に、聖夜……ヴァレンタイン……ハンカチを噛み締めては涙ぐんだ日々の思い出が蘇る。
込めた握力でギシギシ言い始めている杖を振りかざして、扱い慣れたスキルを……。
「メテオドライヴァー!」
リナリアの喚び出した巨大なアースバレット、というかむしろ巨体な岩石の群れが、踊る人型達をボーリングピンのように弾き飛ばす。
「ブレイジングドラゴン!」
放ったファイアアローが、炎の竜となり人型達を飲み込み、焼き尽くす。
「テンペストディザスター!」
杖をクルリと回してなにやら決めポーズを取ったリナリアの背後で、荒れ狂う暴風が刃となり、人型の影達を切り刻み、黒い粒子へと変えて行った。
「くろれきし……ふえた?」
静寂が戻った黒いセカイの中、なんとなく安全圏っぽいリナリアの隣で、板を地面に置いて指で両耳を塞いだうたうがつぶやいた声は、リナリアの耳には届かなかった。
●ろりこんっぽいバレル
『だ・れ・が! ロリコンかぁーっ!』
黒い人型に向かって踏み込み、金色のバスタードソードを振り下ろしながら叫ぶバレルの隣で、うたうが板で別の人型を叩き伏せながら、興味深そうにバレルの顔を覗き込んだ。
「ろりこん?」
「いや違う! 絶対に! 断じて違う!」
「ろりこん?」
首を傾げ、再度繰り返すうたう。……意味を尋ねているのだろうか?
ゴスロリの格好の幼女から改めて尋ねられて困る言葉としてはかなり上位の単語だと思われる質問に
「……子供好きって事だよ」
何とか無難に答えるバレル。
頭上に ? のマークを浮かべて、逆側に首を傾げるうたう。
その間も、黒い人型は湧き出て来て、その攻撃をいなし、弾き、斬り伏せながら、バレルは自問自答する。
『どいつもコイツも人を何だと……。しかも理由を聞いたら「何となく?」って何だよ!? 何となくロリコンとかにされてたまるか!』
子供好きという答えがお気に召してしまったのだろうか、何故か背中にくっついて来たうたうの体温を感じながら、バレルは再度現れた黒い人型へと走った。
●千のお手伝い
「……ああ……うん、妙に覚えがあるよね……。行きたいのに行けない、戦いたいのに戦えない、もう悔しくって悔しくって!」
予約負けがどうやら千のツボだったようだ。
呟きから語りとなり、叫びとなり、徐々にボルテージが上がっていく千。手にした金色に光る斧槍に力が込もり、振り下ろした斧槍が炎の残光を残しながら眼前に居た黒い人型の影を両断した。
板を構えて、湧き出た人型に向けて走るうたうを追うように走り、斧槍を振り回して、影を貫き、叩き斬る。
扱い慣れた斧槍は普段より軽く、いつもより手に馴染む気がする。
「なんか八つ当たり気味で申し訳ないけど、ストレス発散に付き合って貰うよ!」
一斉に飛びかかって来た黒い人型達を、振り回した斧槍が一斉に粒子に変える。
「まだまだ! 暴れ足りないよ!」
「おかわり」
斧槍を振りながらうたうに告げる千の言葉に、手を振り上げたうたうの合図で再度、次々と湧き上がる人型の影達。◯國無双的に斧槍を振り回し、黒い人型を薙ぎ倒していく千の、ストレス発散の獲物はまだまだたっぷりあるようだ。
●ノゾミと望み
ノゾミはぼんやりと空を眺めていた。視界に広がる満天の星空。
「何やってんの?」
ノゾミの問いに首を傾げるうたう。湧き出た人型の影に向けて板を構えたうたうの横手から、ノゾミの翳した手の先で黒い人型の動きが止まり……砕けた。黒い粒子と共にキラキラと光る氷の粒。
「なんだか、悲しい」
呟いたノゾミに、頷くうたう。
「つむなれない つむぐ」
「そっか」
紡がれないから、紡ぐ。彼女にとってはただそれだけの事なのだろう。
「だったらこういうのもアリなのかな」
何やらキテレツなポーズを取って動かない人型の後頭部を、片手に呼び出したハリセンでスパァーンとはたく。派手に吹っ飛んで粒子に還る人型、どうやらツッコミ待ちだったらしい。
「俺にも何か大切な物とか人とか、あった筈なんだけどな……」
凍らせ、砕く。時にハリセンでツッコミを入れ、歌ってみたり、踊ってみたり、モヤモヤする苛立ちを、適当な方向に向けて叫んでみたり。
いくつの想いを還したのだろうか? その中に、あるいは自分の想いもあったのだろうか……?
微笑んだうたうは、ただ、微笑むだけで、どうやら答える気はないらしい。
「……すっきりした」
戦って、戦って、疲れ果てて寝転がったノゾミ。隣に、うたうも寝転がったようだ。空に広がる満天の星。……もうしばらくは、この失くした記憶もきっと忘れたままでいられるだろう。……夢の中で疲れ果てて眠るというのも乙な物かも知れない。
失った記憶への渇望と苛立ちを疲れで拭い、ノゾミは眠りについた。
●アニスと剣と
「人々の思念が、集まっているのですね」
報われなかった想い達。湧き上がって来た黒い人型達を眺めて、心を痛めるアニスの頭を、うたうがポフンポフンと撫でた。
「大切な感情……でも抱え過ぎると重荷になりますよね」
うたうに微笑みかけながら、板に光の魔法を掛けると、自らも手に持った弓型の杖から光の矢を放ち、湧き出る黒い人型を粒子へと還していく。前に出て戦ううたうの援護をしながら、その目は自身の想い……想い人の姿を探していた。……そして……。
「おかえり……なさい」
言いたかった言葉。言えなかった言葉。瞳に熱い物がこみ上げるが、まだ、駄目だ。
短く刈った髪に、背負った大剣。戦地へと見送った時のままのその姿に向けて、敢えて不得意な武器、剣を抜き、構える。
『彼』もひとつ頷いてから、背負った大剣を構えた。
交わす剣の一振り毎に、悲しみを拭い去る想いを込め、振るう。数合交えた打ち合いの後、光の力を込めたドライブソードが眩い輝きと共に『彼』を両断した。優しく頷きながら消えてゆく『彼』。
戦地へと見送り、帰って来なかった『彼』への想いに自らの手で決着を付けたアニスの頭を、うたうが優しくポフンポフンと撫でる。涙で歪んだ視界が暗くなり、やがてアニスは夢から覚める……。
●エヴァの歌声
「せっかくなんだから、一緒に散歩でもどうかしら?」
星空のような世界に、エヴァの絵心ご刺激されていた。こんな綺麗なんだから、せっかくなのでもっと楽しみたかった。うたうと手を繋いで、クルクル回るように踊るエヴァ。
起きたら忘れずに絵に描かなきゃ。そう思いながら、慣れない動きにつまづきそうになるうたうと、踊り続けていた。
不意に聴こえて来た、声。どこか懐かしいようなその声は……
「……これ、私の声?」
エヴァの前に現れたのは……喋れた頃の、自分。
「久し振りに聞いたから、自分の声だって分からなかったわ」
「声帯が震えて、自分の鼓膜を揺らすのってこんな感じだったのね」
「夢かしら?」
「きっと夢ね」
2人のエヴァが交互に喋り、ふわりと笑いながら、頭をぐるぐる回しながら、喋っている側のエヴァに視線を向けるうたうの頭を優しく撫でる。
「とても優しい夢」
ぺこん。と、うたうが『想い』のエヴァの頭を板で軽く叩くと、満たされたその想いは粒子となって星空に散って行った。
直後に、再度現れた『想い』のエヴァ。声なき声で、歌なき唄で、歌を謡う。声が出なくなった事で捨てて行かざるを得なかった……夢。
「うたう、あなたなら、あの子にどうやって安らぎを与える?」
問うエヴァの言葉に、1秒の迷いもなく板を持ち上げるうたうを見てエヴァの頭に浮かぶ汗。
「うん……そうね。でもあんな可愛い女の子を吹っ飛ばすのは私が辛いわ」
なにやら面白い事を思いついた表情になったエヴァは、うたうの手を取り『想い』の前へ進むと、うたうから白い板を借りて、黒炭と共に差し出す。
座り込んで絵を描くエヴァとエヴァ、その隣で寝転がってガシガシと謎の前衛アートを描くうたう。
3人の、星空の中の即興のお絵描き会は、ぽぺん、と『想い』の頭を叩いたうたうの板で幕を閉じた。
●夢の終わりのウタウタウ
「ゆめ じかん おわり」
うたうの言葉と共に、隣に居たうたうの姿が、そして周囲の景色が、陽炎のように揺らぎ始めた。優しく微笑んで手を振るうたうに手を振り返そうとした所で、自分の手も透けて来ている事に気付く。……どうやら奇妙な夢の時間は終わったようだ。
少しだけスッキリした心と共に、やがて夜が明け……またハンター達の忙しい日々が始まる。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/04/12 14:31:38 |