啄木鳥の一撃

マスター:赤山優牙

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/04/13 07:30
完成日
2015/04/17 00:36

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●王国内のとある山にて
 その山は、それほど高い訳ではなかった。
 なだらかな斜面の草原のど真ん中に、まるで誰かが盛った様な感じの山だった。
「かかれー!」
 隊長の合図と共に、兵士達が山道を登る。
 途中、険しい傾斜もあり、馬を使えない所や、両手を使って登らないと上がれない場所もあるので、兵士達は大変だ。
 必死に岩を乗り越えていると、乾いた音を立てて飛翔物が上から降ってくる。
「う、うわぁー!」
 頭上から飛んでくるのは、矢や石だ。
 たちまち、数人の兵士が負傷した衝撃で山道を転がり落ちる。
「おのれ! ゴブリン共めっ!」
 隊長が悔しそうに山を見上げる。
 見晴らしが良いので見張り陣地として、元々は機能していたのだが、昨年の歪虚の進攻の際、放棄されたのだ。
 歪虚がこの陣地を攻める事はなかったが、どういうわけか、ゴブリンが住みついてしまった。
「た、隊長! これ以上はダメです!」
「仕方ない……一度、退くぞ!」
 陣地を占拠していると思われるゴブリンは30体程。
 対して、ゴブリン討伐には、民兵が混じっているとはいえ、50人はいる。
 それなのに、攻め落とせずに苦労しているのである。
「長期戦になればなるほど、こちらが不利とは……」
 陣地には山の上というのに井戸があり、放置された備蓄庫には食糧も残っており、絶賛籠城向きである。
 ゴブリンはただ防御に徹し、数を増やしていけばいいだけでだ。
 対して、討伐隊は、疲労や消耗が激しい。
 おまけに、援軍と言えば……。
「……なるほど。状況は分かりました」
 王都から派遣された騎士が一人。
 しかも、戦場で戦えるのかって位、痩せていた。

●軍師騎士
 その痩せた騎士は、『軍師騎士』と呼ばれていた。
 本人が好きで名乗っているわけではない。堅実な働きと柔軟で、かつ、奇抜な策で、数々の活躍をしているからだ。
 昨年の歪虚との戦いで、一夜にして城を建てたとか、最近では、狡猾なゴブリンを巣穴まで追い詰め撃滅したとか噂がある。
「では、作戦を説明します」
 地図を差す痩せた騎士。
 隊長は憮然とした表情。そして、兵士達は心配そうな表情を浮かべている。
「陣地に至る正面の山道は、途中で険しい事もあります。なので、無理に攻める事は止めたいと思います」
 兵士達にどよめきが起こる。
 攻めなければ、陣地を取り返す事ができない。
「強力な一隊を用い、裏側から奇襲を仕掛け、ゴブリンを山から降ろさせます」
 山道を降りた草原の所をビシっと差した。
「ここで、コの字型で待ち構え、ゴブリンを迎撃します。慌てて逃げてくる最中でしょうから、決定的な打撃を与えられるはずです」
「奇襲を仕掛けるのは誰なんだ?」
 隊長が冷たい目を向ける。
「ハンター達にお願いします」
「それじゃ、最初から、ハンター共に陣地を攻めさせればいいじゃないか」
 馬鹿にした様な態度で隊長は痩せた騎士に言い放つ。
 しかし、痩せた騎士は怒りもせずに丁寧に返した。
「陣地が戦場となれば、陣地を修復せねばなりません。歪虚への備えにも、そして、復旧でどこも物資が不足している中、なるべく無傷で陣地を奪還したいのです」
 そう言われてしまえば、隊長は反論する術を無くし、黙った。
 噂では、この痩せた騎士は一度も実戦を経験した事がないという。
 そんな者に、指揮されるのは現場一辺倒でやってきたこの隊長には受け入れ難い事だった。

●騎士の想い
 痩せた騎士は作戦室から、割り当てられた自室へと戻ってきた。
 そして、大きくため息をつく。
 隊長や兵士達の雰囲気を見ていれば、なんとなく空気を読める。
「しかし、誰かがやらなきゃ……」
 先の戦いからの復興の為に、どこも人手不足だ。
 普段ならば、騎士団から討伐隊が派遣されていたことだろう。
「それにしても、裏側から奇襲って言っても……」
 窓から見える山は林で囲まれている。
 所々、崖の様になっている所もあるので、裏側から登るのは苦労する事だろう。
(またも、ハンターの皆さんに負担をおかけして申し訳ない……)
 軍師騎士などと呼ばれているが、滑稽な事だと思った。
 作戦の立案できる。しかし、実行するには、作戦を実行できる実力を持つ人がいなければ成り立たない。そして、自分では到底できないとも思っている。
 今までの成功は、ハンター達の活躍によるものだ。
 だから、自分が称賛を受けるのはおかしい。
「ハンターの皆さん、どうか、ご無事で……」
 山へと向かったハンター達に向かって、痩せた騎士は祈るのであった。

リプレイ本文

●ハンター達、登攀する事
 急峻……という言葉は、こういう事かと、バルバロス(ka2119)は感じながら、頭上の岩を掴む。
「フヌゥ!」
 怪力任せに身体を引き上げる。
 続けて、根のわずかな隙間に足をひっかけた。
 あり余る怪力と持ち前の器用さを見せて、山を登っていくこのドワーフを上に見ながら、クドリャフカ(ka4594)は、先頭を行かずに良かったと思う。
「これが邪魔だね、切っておくよ」
 行く手を遮る根の一部をナイフで切り取った。
 チタン合金製の硬度の高い逸品だ。簡単には折れる事はないので、必要に応じてナイフを突き立て、足場代わりにもなる。
 見下ろせば、絶景。
 これが依頼による山登りの最中でなければ、風景画を描くのに絶好なのだが……。
「この先は左側を通った方が良さそうだね」
 最後尾を行くアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)が先に登る二人に声をかけた。
 今回の依頼では、彼女は人型の妖精を連れてきている。
 妖精が先の地形を確認して、その情報を元に、ルートを選択していた。
 ハンター達は山頂の陣に向かっていた。
 正規のルートはゴブリンが待ち構える陣地の正面の為、使用できない。奇襲してゴブリンを陣地から追い出すには、相手の意表を突く必要がある。
「ロープ、降ろすぞ」
 バルバロスがロープを垂らす。
「ん、ありがとね」
 ロープの有る無しでは、やはり、違う。
 クドリャフカはロープに掴むと足場にしていたナイフを引き抜いた。
「大丈夫そうだね」
 その様子を見てアルトもロープに手を伸ばした。
 最後尾についたのは、万が一でも、上から落下物があった場合、受け止めようとも思ったからだ。
 この作戦の最大のポイントは、如何に奇襲を成功させるかだ。音を立ててゴブリンに見つかってしまっては意味がない。
「二人とも良い顔だぞ」
 ロープを伝って登る二人の女性の顔を見て、バルバロスがそんな言葉をかけた。
 少しでもゴブリンから発見されにくくする為に、露出している肌や顔、衣服に泥を塗り、カモフラージュしているからだ。
「私は平気」
「ボクも気にしないな」
 クドリャフカとアルトが乙女の欠片も見せずに返事をする。
 物心付いた頃から戦場にいたり、傭兵として生き残る訓練をしていたりすると、色々な意味で頼もしくなるものなのか。
「後、少しだな」
 僅かなスペースに三人が集まった。
 木々の隙間に目指す陣地の見張り塔が見える。
「放置した陣地にゲリラや民兵が入り込む……よくある話だね」
 見張り塔を注視しつつ、クドリャフカが言った。
 今回、ハンター達が攻め寄せる陣地は元々、人間が使用していたものだ。今は醜悪なゴブリンの根城と化している。
 この位置からでも、見張り塔にはゴブリンの姿が確認できた。
「A班との連絡が取り次第になるかな」
 アルトが言っているのは、戦闘開始のタイミングについてだ。
 二つの班に分かれ、別々に行動している。双方の班が見つからずに山を登れれば奇襲効果もあがるはずだし、もし、片方の班が見つかったとしても、見つかった方に注意が向けられる為、見つからなかった班で奇襲はできる。
「戦闘が開始すれば、ワシらができる事は単純じゃがな」
 バルバロスの言う通り、奇襲が成功すれば、後は、醜いゴブリンを挽肉にしていくだけの事。
 アルトは頼もしいドワーフの台詞に頷くと、魔導短伝話を手に取った。

「こっちはもう少し時間かかる。休憩しててくれ」
 魔導短伝話を耳に当てながら言ったのは、ヴェンデルベルト(ka3717)だ。
 木々の幹と根が生い茂る崖の中、彼はサバイバルの技術を活かし、枝を払ったり、ロープを手早く結んだりとして、後続が登り易くしている。
 こうして、できる限り時間がかからないようにしていたのだが、慣れない登攀の為か、こちらの班はわずかに遅れていた。
 時間がかかればかかるほど、ゴブリンに見つかる可能性がある。
「あちらは早いですねぇ」
 山登りの最中というのに、おっとりのんびりとした声で素直を感想をつくシルディ(ka2939)。
 木の根を足場として上から垂らしたロープに掴まった。
 濃い土緑色のマントを羽織って地面と同化しているようにも見える。
「さすが、アルトね」
 同じようにマントに身を隠して、登っているのは、シエラ・ヒース(ka1543)だ。
 見知った仲が同じ依頼に加わっているのは頼もしい。
 その時、先頭のヴェンデルベルトが振り返った。
 カモフラージュの為、彼は顔に隙間なく泥を塗っている。衣服やロープなども泥色という徹底ぶりだ。
(この先は……)
 シエラはとっさに決めていた合図を出す。彼はそれに従い、ルートを少し変えて登り始めた。
 木々の状態や目の良さを活かして、登り口を考えながら進んでいる。ゴブリンからの発見を遅らせると同時に、足場が得やすいようにと、木々の多い方を探している。
 そのおかげなのか、多少時間がかかっても、上の陣地に動きはない。
「見つかってはいないようですね」
 ようやく、開けた場所に出て、木の幹に身を隠しながら、シルディが静かに呟いた。
「ルートも大きくズレなかったようだな」
 ヴェンデルベルトが、最後に登ってくるシエラに手を貸しながら言った。
 二つの班は、それぞれ別のルートから登った。上手く挟撃できれば、ゴブリンはより一層混乱するに違いない。
「万が一、見つかった時は囮になるつもりだったけどね」
 シエラが油断なく頂上の陣地をみつめる。ゴブリンの見張りは気がついていないようだ。というか、明後日の方向を見ていて油断しきっている。
「山の下に待ちかまえている友軍への追い込み。うっかり、殺しすぎないように気をつけないといけませんねぇ」
 派手な音を出す花火の類を確認するシルディ。
 奇襲時に、これと銃撃によって、ゴブリンの混乱を誘うつもりなのだ。
「さて……アイツらをどうするか、だな」
「見張り台の上まで届く武器を持っているのは、向こうの班にいる、クドリャフカだけね」
 ヴェンデルベルトとシエラが、そんな言葉を交わす。
 見張り台のゴブリンは2体。シルディの持つ拳銃は、見張り台下まで行けば届くだろうが……。
「むしろ、襲来を知らせた方が効果的じゃないでしょうか」
 シルディの台詞に、それもそうねとシエラが追随した。
 この作戦は、奇襲そのものではなく、奇襲して、ゴブリンを山の下で待ち構えている友軍に敗走させるのもポイントなのだ。
「それなら、タイミングを合わせて突入だな」
 ヴェンデルベルトが背負っていた長剣を腰に付け替えた後、魔導短伝話を耳に当てた。
「待たせたな。こちらの準備は整った」
 ハンター達はそれぞれが、獲物を構えた。

●啄木鳥の一撃
「それじゃ打つよ……」
 リアルブルー製の重厚なライフルのスコープを覗き、自身のマテリアルを集中させるクドリャフカ。
 戦闘開始は彼女の初弾から始まる。
 見張り台にいる2体が、お互い姿を視界から外した瞬間を狙う。
「ハートショット、エイム」
 放たれた銃弾に込められたマテリアルが一瞬輝いた様にも見えた射撃は、正確にゴブリンの急所を貫いた。
 仲間達が一斉に最後の傾斜を駆け上がって行く。腰ほどの高さの柵など、妨害がなければ簡単に乗り越えられるだろう。
 ライフルから排出される薬莢が、緩やかな曲線を描いて地面に落ちる間に、クドリャフカは生き残っているもう1体に狙いをつけた。
 ゴブリンは鐘を必死に叩いている。彼女が知るよしもないが、それは襲撃の合図ではなく、異常を知らせる合図であった。
「ツー」
 次の射撃は、ゴブリンの喉を直撃し、醜い頭が胴体と離れ、見張り台から落ちて行った。
 奇襲は成功だ。次の射撃ポイントに移る為、彼女はライフルを背負い、山頂へと向かう。

 派手な花火の音が響く。
 異常を知らせる鐘に何事かと小屋から飛び出したゴブリンは、花火に驚いて恐慌状態になっている。
 襲撃だと気がついた何体かが逆襲を試みるが、気がついた時には、その数は減っていた。
「頭目格はいなそうね」
 ゴブリンの背後から首を掻っ切るシエラ。愛用しているドリルナックルは音がするので、今回は曲刀を持ってきて、断末魔さえもあげさせず仕留めている。
 立ち向かってくるゴブリンがまとまる前に各個に撃破する為だ。
「そろそろ、大声出してもよさそうだな」
 ヴェンデルベルトも同様だった。派手に音を出しているのは、シルディが主で、ある意味、彼が囮になっているというのもある。
 騒ぎを聞きつけ向かっていくゴブリンを背後から斬り伏せるだけの仕事と化していた。
「さて、お山の大将も今日までですよぉ?」
 不敵な笑みを浮かべて拳銃を連発するシルディ。彼は十分に自らの役割を果たしていた。
「おっと。そっちは出口じゃないですよ」
 陣地の門じゃない方角へ逃げようとするゴブリンを見つけて、その先の地面を銃撃する。
 更に行く手にヴェンデルベルトが立ちはだかる。
「オレぁ、仕事はきっちりとこなす主義でね! 悪いが……こっちには行かせねぇぜ?」
 慌ててゴブリンは向きを変えて出口に向かって走り出した。
 武器さえ持っていない。逃げる敵はそのまま放置。逃げてもその先には兵士達が待ち構えているからだ。
「いよいよ、追い込み猟の開始ね」
 シエラは魔導短伝話を手に取った。

「フヌォォォ!」
 巨大な斧がうなりをあげて宙を裂く。
 それは、巨人の手斧に無理矢理、持ち手をつけて人が扱えるようにと整えられているが、その大きさ、重量は人が扱える代物ではない。
 そんなものを担いで山を登って来たバルバロスが、雄叫びをあげていた。
 おまけに顔は泥だらけなので、ゴブリンから見れば、魔獣が出たと思っているのではないだろうか。雄叫びだけで我先に逃げ出すゴブリン。
 もし、バルバロスに誤算があるとすれば、それは恐れの余り、彼に立ち向かってくるゴブリンがいなかった事だろうか。
「えぇーい! これでは、挽肉ができんぞぉ!」
 渾身の力でゴブリンを粉砕する所を見せれば、更に恐怖を与える事ができる……はずなのだが。
「バルバロスさん、そろそろ追い込みを!」
 アルトが逃げて行くゴブリンの背中を切りつけながら、声をかける。
 彼女は疾影士としての特性を活かし、逃げるゴブリンに効果的な攻撃を繰り返していた。
「よし! 門はどっちだ!」
「そういえば……」
 猛るドワーフの言葉に、アルトは青くなった。そういえば、陣地の構造の確認を……。
 その時、魔導短伝話が鳴った。
「ゴブリンを追い込むわ」
 シエラからの連絡だった。
「陣地の構造って分かる?」
「任せて。ちゃんと確認済みよ」
 ホッとするアルト。現在位置を伝える。
「私より、アルトの方が門に近いわね。先回りして、門を開けて欲しいわ」
 門の位置と開門する為の手順を教えてもらう。
「ありがとう、シエラさん」
「いいのよ。お互いで補うのが、私達、ハンターでしょ」
 アルトは嬉しそうに魔導短伝話を切ると、刀を構える。
 これが、ハンター達の持つ力だ。
 脚にマテリアルを集中させて、走り出す。彼女の赤い髪が一陣の風となった。

●陣地に残る鬼
「向こうにも手柄を渡さないと。拗ねられても面倒だからね」
「士気の下がっている兵士の皆さんには丁度いいでしょうからねぇ~」
 クドリャフカとシルディが、門の所で、山を降りる仲間達に向かって言った。
 二人は陣地に残り、残ったゴブリンがいないか徹底的に調べるつもりだからだ。
「まだ、息があるわね」
 瀕死のゴブリンにナイフを突き立てて、確実に息の根を止める。
 慈悲……ではなく、万が一でも生き残っては禍根が残る恐れがあるからだ。
 念入りに小さい倉庫も確認してまわる。
「面倒はゴメンだからね。掃除は丁寧に」
 不気味な笑みは恐ろしさを感じさせる。もし、生きているゴブリンがいたら、それだけで失神してしまうのではないだろうか。
「同感ですね。災厄の芽は小さいうちに潰してしまいましょう」
 穏やかそうな顔が変わらないながらもシルディは物足りなさそうに拳銃をくるくるっと回して見せた。
 ゴブリンは1匹みかけたら30匹はいると思えというほど、繁殖力が高い。
 せっかく取り返した陣地も、生き残りが隠れていたら、再び増えてしまう。
「さて、生き残りはいませんかね」
 両足が潰されて無力化されたゴブリンは怯える目でシルディが構えなおした銃口をみつめた。
 奇襲を受けるまで、自分達こそが、最凶だと思い込んでいたが、今、このゴブリンは思い直した。
 本当の鬼が、今、目の前にいるのだと。

●戦いを終えて
 山を下ったゴブリンは20匹程度。
 ほぼ全てが武器らしい武器を持たずに山から転がり落ちるように降りて来たという。
 ハンター達が後ろから挟撃するまでもなく、兵士達は苦も無く全てを討ち取る事ができた。
「……認めないといけないな。騎士殿」
 不遜な態度だった隊長が丁寧に痩せた騎士に頭を下げた。
「いえ、この勝利は、皆さんのおかげです」
 あまりの態度の変わりっぷりに、騎士が慌てる。
 そこへ、山からハンター達が降りて来た。
「ヌゥゥ! ゴブリン共は既に全滅かぁ!!」
 バルバロスが辺りに散らばるゴブリンの死骸を見て叫んだ。
 なにか、まだまだ、戦い足りない様子だ。
「ハンターの皆さん!」
 騎士が駆け寄ってきた。
 そして、4人の姿を確認する。
「皆さんご無事で……後の2人はいずこに?」
 依頼の内容よりも真っ先に無事を確認する辺り、この騎士の性格がうかがい知れる。
「大丈夫よ。陣地で『掃除』しているわ」
「そう……あ。なるほど。さすが、百戦錬磨の皆さんです。慣れてますね」
 シエラの言葉の意味をすぐに理解して、心配そうな表情を浮かべていた騎士は笑顔になった。
 そして、姿勢を正し、ハンター達に改めて礼をする。
「とても危険な任務を遂行して下さいまして、誠にありがとうございます」
 間違いなくここまで完璧な完勝になったのは、奇襲のおかげだ。
 兵士達は士気も上がり、陣地もほぼ無傷。今後の活動においてもそれは重要な意味を持つ。
 畏まった騎士の肩をポンポンとヴェンデルベルトが叩く。
「作戦を考えるのが軍師の仕事、ならばそれを完遂するのはオレ達の仕事、ってな」
 グッと親指を立てる。
「多少、無茶でも実行できそうな部隊がいれば任せるのは悪い事ではないと思うよ」
 アルトが爽やかな笑顔で追随する。
「皆さん……」
 騎士がハンター達を見渡す。
「さし当たって、報酬をケチらないでくれるならいくらでもお手伝いはするよ。傭兵としてね」
「残念ながら、報酬については、団長に確認を……」
 アルトの言葉に騎士が生真面目に答える。
「それは、戦い甲斐がある事じゃの! がんばれ!!」
 冗談と共に、バンバンと背中を力強く叩くバルバロスの勢いに耐えきれず、騎士は思わずバランスを崩して転んでしまうのであった。


 おしまい。

依頼結果

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MVP一覧

  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニka3109
  • 傭兵魂
    ヴェンデルベルトka3717

重体一覧

参加者一覧

  • 縁を紡ぐ者
    シエラ・ヒース(ka1543
    エルフ|20才|女性|霊闘士
  • 狂戦士
    バルバロス(ka2119
    ドワーフ|75才|男性|霊闘士
  • おっとり紳士
    シルディ(ka2939
    エルフ|22才|男性|疾影士
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
    人間(紅)|21才|女性|疾影士
  • 傭兵魂
    ヴェンデルベルト(ka3717
    ドワーフ|34才|男性|闘狩人
  • 遥か遠きプレアデス
    クドリャフカ(ka4594
    人間(蒼)|17才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
ヴェンデルベルト(ka3717
ドワーフ|34才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2015/04/13 00:13:40
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/04/08 23:38:07