【アルカナ】 恋人叫ぶは憎悪の嬌声

マスター:桐咲鈴華

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2015/04/13 09:00
完成日
2015/04/16 06:21

みんなの思い出

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オープニング



 辺境の地の一角。日は落ち、夜の闇が森を静寂に染め上げる。
 鳥の声すら聞こえない暗闇の中、葉のざわめきの隙間から、高い金切り声のような音が響く。

 ずるり、ずるり

 森の中に聞こえる異質な音。湿った何かを引きずるような音が、静寂の森の中に響く。
 月明かりがその姿を照らす。露わになったのは、人間の男の顔と、人間の女の顔。

 次に露わになったのは、まるで融け合ったかのように歪に融合した男女の肉体の上半身。
 そして下半身は粘性の肉塊に覆われ、そこから無数の人間の腕や脚。そして翼のような肉塊が生えている。肉塊は心臓のようにドクン、ドクンと鳴動しながら体液を滴らせ、おぞましいその姿の本体であろう男女の顔は苦悶の表情で白目を剥いていた。
 
『ア……ア……』
『オ…………ァゥ……』

 人の声とは思えぬ、しかし確かに人が発する声で呻き声をあげるその物体は、ずるり、ずるりと身体を引きずり、再び森の闇の中へと消えていった。




「……森の中で、行方不明者……ですか」
 ハンターオフィスの中、不審な事件が相次いでいると聞かされたエフィーリア・タロッキ(kz0077)は受付嬢から話を聞いていた。
「ええ。辺境に住まう村人が、森の中で行方不明になっているとの情報があります」
 話によれば、その異変は数日前からあったそうだ。山菜を採りにいったまま戻って来ない村人が増えてきており、不審に思った村の住民はハンターオフィスへと依頼を出したのだと言う。
「情報は、どうなってますか?」
「今のところ、行方不明になった人が立て続けにいるだけです。捜索に行った人も未だ戻って来なくて、村長は森への立ち入りを禁止し、ハンターに協力を仰いだらしいですね」
「……」
 その言葉を聞いたエフィーリアは考えこむ。彼女は『アルカナ』と呼ばれる歪虚群の情報を集めている。『アルカナ』は彼女らの部族が長年に渡って封印を守り続けてきた歪虚であり、近年その封印が綻び、断片が漏れだしているとのこと。故にエフィーリアはその情報を集めるべく、不審な事件を一つひとつ、当たっていると言うのだ。
「……行方不明になった者のリストなどは、ございますか?」
「はい、用意しています」
 エフィーリアは差し出されたリストをくまなく見ていく。そして、ある共通点を見つけた。
「……全員、独り身ですか」
「ええ。何れも配偶者がいない方や、身寄りのない方ですね。……それが、何か?」
 エフィーリアは思う所があったようで、伝承の書かれた本を取り出し、ページをめくる。
「……現時点ではまだ何も確かなことはありませんが、もし、この事件に『アルカナ』が関わっているとすれば……恐らく」
 ページをめくる手が止まる。そこに記されていた名前を、受付嬢は声に出して読み上げる。
「『The Lovers』……」
「……『愛を渇望する狂気の恋人』……そう伝えられています。見るもおぞましき姿のそれは、『独りの人間』に対して異常なまでの憎悪を見せ、その身に取り込んで捕食してしまうという歪虚です」
「独りの、人間ですか?」
「はい。……肉体的、精神的なつながりを持たない者。そう認識した者に対しての攻撃性能は、『アルカナ』の中でも随一。危険極まりない歪虚です」
 受付嬢は息を呑む。
「しかし、それを証明するのはどうやって? 本当に、恋人同士とか、家族同士じゃないといけないのでしょうか」
「……必ずしもその必要はありません。簡単な方法があります。Loversの前で『手を繋いでいればいい』のです。そうすればLoversは相手を『独りではない』と見なし、通常の歪虚程度の戦闘力に収まるはずです。……しかし、ひと度手を放してしまえば……恐ろしい相手となるでしょう」
「変わった性質を持ってるんですね……だけど、もしこれが相手なら……。行方不明になった村人は、既に」
 受付嬢はそこから先は口にしなかった。エフィーリアは申し訳無さそうに押し黙り、やがて切り出す。
「……何にせよ、放置できる状況ではありませんね。……ハンターを募って頂けますか」
 受付嬢は頷き、依頼書を作成するのだった。今回の募集案件も、特殊な事例になりそうだと受付嬢は思うのだった。 

リプレイ本文

●森の中に棲まう恋人

 辺境のとある森。一寸先すら闇に鎖されているような暗さで、静けさが辺りを支配している。そんな場所へ、此度ハンター達は訪れた。
「うわ、話には聞いてたけど不気味な森だなぁ……あんまり長居したくないね」
「ですわね、エニアさん、足元にはお気をつけて……」
 探索するのは十色 エニア(ka0370)とUisca Amhran(ka0754)。暗い森を慎重に、一歩一歩歩いてゆく。
「……静かな森だ。鳥の声すら聞こえない。……一層、不気味だな」
 オウカ・レンヴォルト(ka0301)が呟く。時折吹き抜ける風が木の葉を揺らす音と、自分たちが立てる音以外、何も聞こえない。
「エフィーリアの話じゃ、そろそろ目標のポイントだ。……本当に彼女の言った『恋人(Lovers)』が居るなら、いつでも手を繋げるようにしておかないとな」
 柊 真司(ka0705)が辺りを注意しながら地を踏みしめる。エフィーリアの話では、『恋人』が潜んでいるとすれば、この近くだという話だが……。
「……みんな」
 シェリル・マイヤーズ(ka0509)が声を発する。森の中から感じる異様な雰囲気を、彼女は感じ取ったらしい。
 ハンター達がその方向を見る。すると暗い森の中から闇がずるりと蠢き、それは現れた。上半身は融け合った男女。下半身は無数の腕が絡み合ったような肉塊が鼓動を刻みながら、体液を滴らせている。広げられた翼のような形の肉塊。それはまるで翼の生えたハートから生えた恋人が抱き合っている姿を、おぞましく、冒涜的にしたような姿だった。
『オオ、アァォ……』
『ウァ、エア……』
 嘔吐くような呪うような、おおよそ正気の人間が発するようなものではない声を発しながら、それはハンター達を捉えた。
「出やがったっ! 皆、手を!」
 真司の言葉で、それぞれ予め打合せたペア同士で手を繋ぐ。エニアはUiscaと、オウカはシェリルと手を繋いだ。
「嫌な見た目だねぇ……恋人の名には、相応しくねぇな」
 クリスティーナ=VI(ka2328)は、『恋人』の姿を見て苦笑しながら呟く。恋人という言葉とその名に矜持を持つ彼にとって、その姿は相容れぬものであった。
「ところで柊、普通に繋ぐのと指を組んで繋ぐのとどっちがいい?」
「気色悪いこと言ってんじゃねぇ!」
 冗談めかして言うクリスティーナの手を乱暴に取る真司。それぞれのペアが手を繋ぐと、『恋人』の発していた憎悪のような気配が僅かになりを潜める。
「これが『恋人』か。聞きしに勝るおぞましさ、だな」
「……融け合う程、傍にいるのに……苦しいの?」
 その悍ましい見た目に、オウカとシェリルはそれぞれの感情を吐露する。『恋人』は呻き声をあげ、呪詛を唱えるような声色を発しながら、ハンター達に襲いかかってきた。


●二人三脚で

 『恋人』は肉塊の翼を羽撃かせて、低空を浮遊する。翼から体液が跳ね飛び、周囲に赤い跡を作りながら飛来した。
「来るぞ!」
「うん……!」
 オウカが叫ぶ。『恋人』は男女の手を広げると、それぞれの手の爪が紅く長く伸びる。振り下ろされたその腕をシェリルが躱すと、入れ替わるように前に出たオウカが拳銃を突き出し、射撃する。その弾丸は身を引いた『恋人』の身体を滑って、明後日の方向へと飛んだ。
「硬い……それに、体液が庇護膜のようになってるのか?」
「なら、これで……」
 繋いだ手とは別の手で懐から手裏剣を取り出したシェリル。投擲したそれは『恋人』の下半身あたりに突き刺さった。……ように見えた。
 その手裏剣を掴み返す腕が下半身の肉塊から現れた。正確には掴んでいる訳ではなく、掌に抉り込むように突き刺さっているのだが、見たところ大したダメージは与えられていない。その手を皮切りに様々な腕がずるりと肉塊から這い出し伸びてきて、ハンター達を襲う。
「悪いが、そうは問屋が卸さねぇ」
 クリスティーナと手を繋ぐ真司が前に出て防護障壁を展開。無数の腕は光の障壁に激突し、ベタベタとした赤い手痕を残す。
 同時にUiscaとエニアの方にも、無数の腕が襲いかかる。腕は木々や地面に激突しては、突き立てられた爪でそれらを抉り取っていく。
「あれには、絶対に捕まりたくないね……イスカさん、来るよ!」
「ええ、合わせますよ」
 エニアが手を引いてUiscaの身体を引き寄せ、入れ替わるようにUiscaがステップを踏んでくるりと、エニアごと自分達の身体を回転させる。その動きはまるで二人でダンスを踊ってるように鮮やかだった。
「1」
「2の」
「「3!」」
 声を合わせ、くるりと身を翻しながらそれぞれ申し合わせたタイミングで魔法を詠唱。それぞれが水塊と光球を飛ばし、『恋人』を攻撃する。強力な魔法攻撃に、『Lovers』の肉体は大きく削られた。『恋人』は叫び、削られた肉塊を弾けさせて肉塊の弾丸を二人へと飛ばす。
「イスカさん、危ないっ!」
「っ!」
 エニアが力を込めてUiscaの手を引き寄せ、自ら前に踊り出る。自らに纏う風が攻撃の軌道を僅かに逸し、直撃を免れた。
「ぺっぺ、気持ち悪……」
 その時に爆ぜた飛沫が顔にかかり、エニアは顔を顰める。引き寄せられたUiscaは、ぽつりと声を漏らした。 
「……普段あまり気にしていませんでしたが、エニアさんって男の方なんですよね……」
「へっ? あ、ああそうだね。こうしてるのは、彼氏さんには申し訳ないけど……」
 照れくさそうに悪びれるエニアに、Uiscaは優しく首を横に振り、エニアのきめ細やかな手を握り返す。
「いいえ、貴方の絆を感じて、安心してます。巫女は、祖霊と人をつなぐ存在ですが、人と人を繋ぐ存在でもあるんです。……例え離れていても、彼や姉様の愛は変わらず私を守ってくれる筈ですから」
 Uiscaは再び、『恋人』の方を向く。エニアもまた、彼女の意思を受け取ったか、共に向き直った。
「だから、歪んだ愛をもつあなたのような歪虚には、決して負けませんっ!」
「よーく言った。俺も負けてられねぇな」
 その発言と共に前に出たのはクリスティーナだ。日本刀を携え、前に踏み込む。振るわれる『恋人』の腕は、入れ替わるように前に出た真司が障壁を展開してガードし、その隙に再度入れ替わったクリスティーナがマテリアルを込めた一閃を振り抜き、その腕を斬り飛ばした。
「恋は、愛は、もっと美しく幸福なものなんだ。お前みたいなのにゃあ、相応しくねぇ」
 『恋人』を見据えて言うクリスティーナ。軽いように見えるが、その眼差しには熱い想いが込められている。同じく『恋人』の暗示する名を持つ者として、目の前の異形などに負けてはいられないのだ。

 耐えず繰り広げられる攻防。斬っても穿っても、下半身の肉塊から新たな腕が生えてくる『恋人』。ハンター達は互いに手を繋ぎあったままの戦いを余儀なくされ、防戦しながらも確実に『恋人』にダメージを与えてゆく。無尽蔵に見えた『恋人』も流石に消耗しているのか、襲い来る手の数が少しずつ少なくなっているように見えた。
「……」
 そんな様子を、シェリルは観察していた。伸びる腕、渇望するかのように嗚咽する人の顔。それらは悍ましくもどこか寂しげだったと、彼女は感想を抱いた。
(……独りが憎いのは、独りになりたいから? ……愛に飢えるのは、愛してないから?)
 シェリルは思う。なぜ『恋人』は互いに融け合うような姿をしているのに、『独り』を狙うのか。隣に居る人物だけでは、不満なのだろうかと。
(……こいつは)
 シェリルは、手を繋いで戦うオウカを見る。気心知れた、大切な友達。もし独りで戦えたなら、隣に居る彼を危険に遭わせたりしない。大事で、大切だから、傍に居たいとも、独りで居たいとも思う。……そんな気持ちとは違う、新たに芽生えた感情がシェリルの口を動かした。
「……オウカ。手……離しても、いい?」
 その提案にオウカは目を見開く。依頼前にエフィーリアから、念を押して注意されていた事を、あえて提案するシェリルに驚きを見せるオウカ。だが、シェリルの眼差しを見てオウカは決意を固める。
「……俺も、往く。タイミングは、任せろ」
 承諾したオウカ。装備を刀に切り替えてマテリアルを込めた雷撃を放ち、『恋人』を麻痺させる。それを確認すると、互いにタイミングを合わせて、

 手を、離した。


『オ、』
『ア、オ』
『『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオァァァァァァァァァァ!』』

 ビリビリと空すら震えるほどの、耳を劈く悲鳴。爆音のように響く、金切り声にも似た絶叫は、周囲のハンター達をまとめて怯ませた。
「ぐあぁっ……!?」
「く、っ、耳が」
 何もなかった森に、耳鳴りが起きるほどの大音響を響かせた『恋人』は突如としてその肉塊からさっきの数倍はあろうかという手を展開させながら、手の離れた二人に凄いスピードで迫った。消耗していたとは思えない程の変貌ぶりだった。その身体を覆っていた麻痺すら気にならないといった風に、襲いかかる。
「なん……っ!? まずい!」
 咆哮に怯んでいたエニアが、Uiscaが、慌てて『恋人』に対して魔法を唱える。放たれた水塊と光球は展開された腕の一部を消し飛ばすが、そんなもの気にした様子もなく『恋人』はオウカとシェリルに突っ込んでいく。
 伸びた手が激突し、掴み抉りを繰り返して二人へと迫る。通り道の木々がなぎ倒され、地面が抉られていくその様子はまるで嵐のようだった。
「シェリル、オウカ!」
 真司が叫ぶも、腕の暴風雨へと突っ込んでいくシェリルとオウカの脚に迷いはない。マルチステップによって回避を試み、るも、雨のように飛来する腕を躱し切れはしない。肉体を捕まれ、爪を突き立てられ、裂傷を身体の各所に受けながら、それでも二人は前へと進む。
「寂しい、二人……その憎しみ、受け止めてあげる……っ」
 シェリルとオウカは懐に入ると刀を構え、息を合わせて『恋人』の上半身と下半身の付け根を狙おうとして……

『ケテ……』
「……?」

 突如聞こえた、細々しい声に気を取られた。

『タスケテ』
『ヒトリハイヤダ』
『サビシイ、テヲニギッテ』
『コドクノママ、シヌノハイヤダ』

 その声は、『恋人』の肉塊から、囁くように聞こえてきた。様々な声。様々な感情。シェリルは、気づいた。その声は……。

「……まさか、まだ……中に、いるのか……?」

 オウカが呟いた途端、展開された無数の腕が、今度は肉体を抉るのではなくシェリルとオウカの身体を捕まえた。

 それは『恋人』の取り込まれた、『独り』の者達の腕だと二人は気付いた。
 『恋人』は、『独り』を許せなかった訳ではない。『恋人』の中で、独りで死んだ者達の怨念が、同じく独りでいる相手を引き込み、『独り』でなくなろうとしていた。『独り』で生きている者に対しての怨嗟そのものだったのだ。

「助けなきゃ!」
 エニアが叫び、Uiscaと共に走りだす。ファイアエンチャントをクリスティーナの刀にかけ、クリスティーナが襲い来る腕を切り飛ばして前進する。
「早く、手を繋ぐんだ!」
 真司が更に防御障壁をかけてオウカ、シェリルを援護する。二人を掴む腕の一部が障壁と相殺し、僅かに拘束が緩むも、引きこもうとする腕の膂力に逆らえず、オウカとシェリルは、それぞれ腕と脚を肉塊に取り込まれた。
「ぐああああああっ!」
「う……あぁっ……!」
 ジュウウッ、と嫌な音が聞こえる。取り込まれたオウカの腕やシェリルの脚が、消化され始めているのだった。
「いけません!」
 Uiscaが慌ててヒールを行う。これによって消化されるスピードは低下し、二人は何とか脱出する事に成功した。二人が再び手を繋ぐと、『恋人』の腕の動きは収縮した。
「動きが鈍くなった、今だ!」
 真司の声でクリスティーナが、エニアが、それぞれ刀と魔法による攻撃を加える。衝撃を受けた『恋人』は大きく吹き飛ばされ、ハンター達との距離を開ける。
「……アレには、もう気持ちでは『繋がり』は示せないって訳か。……外から見て、『独り』の相手を、取り込もうとしてる……」
「……っ」
 オウカが分析し、シェリルは悔しそうに唇を噛む。彼らの試みは、失敗に終わったのだった。
 それぞれが手を繋ぎ、『独り』の者が居なくなったこの場に、先ほど聞こえた『恋人』の中から聞こえる声が、静かに響いていた。
『タスケテ……ダレカ……ツナガッテ……』
『ヒトリ、イヤダ……シニタクナイ……ヒトリデ……』
「……終わらせましょう。これ以上、本当に『独り』のままでいさせる訳にはいきません」
 Uiscaが言い、皆が頷く。動きが緩慢になったそこへエニアとUiscaの魔法が、クリスティーナの斬撃が繰り出される。既に妄執だけで動いていた『恋人』は、立て続けに繰り出される攻撃に為す術もなく、動かなくなった。

『……恋人ガ、ホシカッタ……。ヌクモリガ、ホシカッタ……』
 
 誰の者でもない、無機質な声は『恋人』本体のものか。はたまた、取り込まれた人たちの怨念の集合体か。どれとも判断のつかぬ声と共に、その身体が虚空へと溶けて消えていった。


●心と体の傷痕

 かくして、アルカナの一体である『Lovers』の断片は討伐された。犠牲者を取り込み、更なる怨念を増大させていく、悲しき恋人。Uiscaは取り込まれた人たちの事を想い、夜空にバラードを捧げた。
(……『二人』に捧げる唄は、あの悲しい存在には合わないよね……)
 予め考えていたテーマは、今回の存在とはかけ離れていた。Uiscaは、どんな時も、見えない絆を信じる歌を夜の闇に響かせた。
 オウカとシェリルの腕と脚は重症だった。消化されかけており、肉の殆どが溶けてしまっている。応急処置は済ませたが、回復には時間を要するだろう。
「……お互い、バカだね……」
「……そうだな。だが」
 自らの提案が失敗して落ち込むシェリルの頭をオウカはぽんぽんと優しく叩いた。
「……目に見える形だけが、つながりじゃあない。……俺もそう思ったからこそ、お前の提案に乗ったんだからな」
 彼らは示したかった。手を繋ぐだけ、目に見えるものだけが繋がりではないと。だが、そんな熱い想いは、憎悪と悲しみの塊には最早届かなかったのだった。
「だけど、諦めたくないな。……だって、想いが通じないままなんて、悲しすぎるわよ」
 真剣な面持ちで、エニアが呟く。届かなかった想い。されど、この気持ちは決して間違いじゃない。彼らはそう信じたかったから。

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MVP一覧

  • オールラウンドプレイヤー
    柊 真司ka0705
  • 緑龍の巫女
    Uisca=S=Amhranka0754

重体一覧

  • 和なる剣舞
    オウカ・レンヴォルトka0301
  • 約束を重ねて
    シェリル・マイヤーズka0509

参加者一覧

  • 和なる剣舞
    オウカ・レンヴォルト(ka0301
    人間(蒼)|26才|男性|機導師
  • 【ⅩⅧ】また"あした"へ
    十色・T・ エニア(ka0370
    人間(蒼)|15才|男性|魔術師
  • 約束を重ねて
    シェリル・マイヤーズ(ka0509
    人間(蒼)|14才|女性|疾影士
  • オールラウンドプレイヤー
    柊 真司(ka0705
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • 緑龍の巫女
    Uisca=S=Amhran(ka0754
    エルフ|17才|女性|聖導士
  • 【Ⅵ】愛にこの身を捧ぐ
    クリスティーナ=VI(ka2328
    人間(紅)|49才|男性|闘狩人

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 【質問宅】※実際にやるかは別(
十色・T・ エニア(ka0370
人間(リアルブルー)|15才|男性|魔術師(マギステル)
最終発言
2015/04/09 21:35:18
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/04/09 14:23:00
アイコン 相談卓
Uisca=S=Amhran(ka0754
エルフ|17才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2015/04/12 23:02:30